目次
- 1 24時間、戦えますか?
- 2 議論の始まり
- 3 議論のかみ合わなさについて
- 4 「研究者という人生」と「研究者という職業」の違いについて
- 5 研究者は無意識の世界でも研究を続けていることについて
- 6 研究というものについて
- 7 24時間研究することについて
- 8 1日24時間が研究成果の十分条件ではないことについて
- 9 研究で結果を出すための必要条件について
- 10 研究者の研究スタイルは人それぞれで多様性があることについて
- 11 自分の研究のスタイルは自分の自由意志によって選べられるべきことについて
- 12 アカデミック・ハラスメントの危険性について
- 13 極論に走らないことの重要性について
- 14 研究者の家族について
- 15 ドイツ人の研究スタイル
- 16 SNSで消費される時間について
- 17 研究の真実
24時間、戦えますか?
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研究者は24時間、研究をやるべきなのか、やらないべきなのか、SNSで激論が戦わされていました。こういう議論は、研究者という職業に興味がある学生を不安がらせるようですので、論点を整理しておきます。
議論の始まり
深夜や休日に研究するのは学生だけでなく教員も基本的に禁止すべきという意見(*)が2024年12月25日にX上で投稿されたことが発端でした。
*このアカウントの所有者はポストを表示できるアカウントを制限しているため、このポストを表示できません。
その後、それに対する反対意見やその反対意見に対する反対意見などが噴出しました。
学生や研究者がサラリーマン化したらもう終わり。職場にいようといなかろうと、24時間ずっと考え続けて、ある日突然閃めくのが研究。そして、その多くは間違いだっとわかって振り出しに戻る。それの繰り返し。 https://t.co/nhC8iJcRZX
— KonagayaAkihiko (@AkihikoKonagaya) December 26, 2024
最近はワークライフバランスが大切なので「深夜や休日に研究しないといけないアカデミアはNG」なんですよ。そんなことしなくてもいいようにしないのは非人道的でそういう環境を作ってこなかったシニアは若手に憎悪されています。
— 田口善弘@発言は私の個人としての見解であり中央大学やその機関の意見を代表するものではありません (@Yh_Taguchi) December 27, 2024
議論のかみ合わなさについて
一つの主張のようにみえていくつかの部分に分かれており、それのどこにカチンとくるかで、反論の内容にバリエーションが生まれているようです。また、企業研究者vs.アカデミア研究者の感情的な対立や、定職についている研究者vs.大学院生など、さまざまな構図が見受けられました。自分の所属する業界やキャリアパスにおける位置が異なれば当然、考え方も違うわけで、それで多くの人を巻き込んだ嚙み合わない議論が続いたようにも感じました。
多数の意見が何かズレているとゆうか、、言葉をそのまま鵜呑みにしすぎでは??
研究者の考えるは、本気で24時間考えているわけではなくて純粋な知的好奇心をもって自発的に考える(考えちゃう)営みなんよね。
立場があるから生活の営みを軽んじていい話ではない。なぜそんな話になるかわからない。
— ririka (@XmzdaM) December 29, 2024
研究者のワークライフバランスの話題で例の件が批判されるのは「サラリーマン化したら終わり」という表現であって「24時間ずっと考え続け」の部分ではないんだよね.それ以外の価値観を「終わり」と全否定している排他的思考は,賛同者以外を敵に回すリスクがある.
— M. Morise (忍者系研究者) (@m_morise) December 28, 2024
「研究者という人生」と「研究者という職業」の違いについて
アカデミアの研究者しか自分は知りませんが、皆さん基本的に研究者を職業とはとらえていない人のほうが多数派に見えます。研究者=研究人生、です。でなければ、研究で成果が出せるかどうかに関して何の保証もなく、薄給で成果が出たとしてもその先の定職も保証されていないようなハイリスクローリターンの職業を選ばないでしょう。
研究者というライフスタイルと研究者という職業があり,前者は24時間やめられないってことはよくわかる.
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) December 29, 2024
研究に24時間没頭すべきかどうか、いろいろな意見が見受けられますが、24時間ずっと考え続けたくなるような研究テーマを選んでそれに取り組めるのが理想的だと思います。それを一生続けることに価値を見出す人が、研究者という人生を選んでいる。そこまででなくても職に就けさえすれば生きていけるが。
— 博士(理学) (@scitechjp) December 29, 2024
研究者は無意識の世界でも研究を続けていることについて
24時間といいつつ、お前寝てるやろ!みたいな反論も多数ありましたが、夢の中で実験してたり、夢の中で結果が出たり(起きてみたら、ナンセンスなものに過ぎなかったりですが)することもあります。
なんかバズってる
学生や研究者は、問題なり自分の着想について意志を持って24時間ずっと考え続けているのではなく、それらが24時間ずっと頭の片隅でぐるぐる廻ってるのです。わからないことを飼っておける能力。それがなんかの拍子にジャンプアップする。そういう思い入れがあるかどうかじゃない? https://t.co/ah29oDbXvy— ランボオ@Dr. Gen-ichi KONISHI (@Alc_Rimbaud) December 29, 2024
これは誇張だが、一抹の真実を言ってる。明らかに24時間働き続ける必要はない。1日の単位では詰めたり抜いたりするが、数年の単位で考え続えて、突然閃く。閃くのはくつろいでる時だったりする。思考は時間管理できないという意図かと推察する。セレンピディティーは待ち構えているところに現れる。 https://t.co/nlCfJ0Rzwg
— はじめまして 平岡です (@HiraokaYasushi) December 28, 2024
私はというと、サラリーマンなので、24時間研究のことを考えてます。でも、1日の中で濃淡があって、他のことに意識を向けたほうが、閃きのようなものが生まれるので、心を自由にしているときはあります。筋トレと同じで、ずっとテンションかかってても効果ないんですよね私は。
— ポンヌフ@光と闇のバイオ技術 (@pontneuf_pe) December 29, 2024
研究というものについて
やっぱり研究を、通常の職業の職務と同列に語るのは無理なんじゃないでしょうか。
だから「9時5時以外は思考するな」なんてあり得ないし、「24時間実験しろ」もあり得ない。かけた時間が必ずしも成果に繋がらないのが研究の面白いところでもあり、子育て女性研究者でも大きな成果を出せる良い点でもある。
— Prof. Keiko Torii (@KeikoUTorii) December 29, 2024
24時間研究することについて
てゆーか、研究者って24時間研究のことを考えてるのが普通だと思ってたけど違うの?
実験結果の解釈や改善なんて常日頃考えてるし、ワイは朝に風呂入っている時間にいちばんアイデア浮かぶし、研究のことが頭から離れることなんて早々にないけど
元部以蔵みたいなスタイルが研究者で普通だと思ってた
— 金曜日の使者 (@happy_friday072) December 29, 2024
ただ、研究が好きと常日頃から言ってる人が24時間研究のことを考えてなかったら、なんでやねんとは思う。
お前は誰かを好きになったら24時間ずっとその人のことを考えてしまわないのか?研究が好きとはそういうことだぞ?と思ってしまうな。
仕事としての研究は知らん。— モリジムソン (@piimandaisuki24) December 29, 2024
1日24時間が研究成果の十分条件ではないことについて
研究のことだけ24時間考えて、何も成果が出ずに消えていった研究者をたくさん見てきました。成果にコミットする覚悟は必要ですが、その道はきっとそれぞれです。
— ポンヌフ@光と闇のバイオ技術 (@pontneuf_pe) December 29, 2024
研究で結果を出すための必要条件について
まだ研究の進め方が体得できていない段階では、がむしゃらになる時期が絶対に必要だと自分は思います。研究に限らず新しいことを学ぶのって、そういうものなのでは。
僕は大学院に入って約1年ですが、24時間ずっと考え続けるという狂気がないと研究では結果が出ないと感じます。
行き詰まった時には閃きを探しに少し別のことも考えてみる必要がありますが、ワークライフバランスとか考えてやってても結果は出ないと思います。 https://t.co/2hANRAWBDB
— Tomo | 核融合スタートアップ志望の大学院生 (@Kawatomo_fusion) December 27, 2024
研究者の研究スタイルは人それぞれで多様性があることについて
生活スタイルだけでなく、研究アプローチに関しても多様性があるのが研究のいいところで、自分の能力が劣っているとこは他人の力を借りたり、そもそも不得意なことで勝負しなければよかったり、いろいろやりようがあります(生命科学の実験系の場合)。
研究者のあるべき姿なんて人それぞれでいいんだけど、四六時中研究のこと考えてるのならツイッターなんてしてる暇ないだろうとは思った
— にりつ (@niri2chem) December 28, 2024
サラリーマンのような研究者がいてもいいし仙人のような研究者がいてもいい、研究者はこうあるべきだと押し付けるのがダメ、という簡単な話なのにね
— さのたけと (@taketo1024) December 28, 2024
研究のことを24時間考えていようが、働いてる時間だけ考えていようが本人の自由にさせてくださいって思うのは私だけ?
その人のスタンスじゃん??#なんかみた
— asa.taku一生助教。研究も教育も好き。 (@asataku13) December 29, 2024
最近の通知で、研究者は24時間常に研究のことを考えるべき、みたいな意見への議論が活発ですが、人それぞれと思います。分野でも違うし、その時その人の状況によっても違う。
個人的には24時間考えていた時期もあるし、全く忘れてのんびり入浴しているタイミングで研究のアイディアが浮かぶことも。— D. Kitakoshi (@dkitakosi) December 29, 2024
自分の研究のスタイルは自分の自由意志によって選べられるべきことについて
当たり前だけど、研究は悲壮感持って24時間やるようなものでもないし、仕事なので割り切ってやるって感じでもない。どんなやり方をするかを誰かに強制するようなものでもない。
— じゅんさま (@junsama48) December 29, 2024
アカデミック・ハラスメントの危険性について
沼研のやり方が当然という人がいたら怖いでしょうね。
24時間営業の研究室、上に立つ人が是とするのは問題かな。圧力になりうるので。独身の院生が好きでやる分には良いけど。
— マリアンヌ (@Marianne5843) December 28, 2024
学生さんにそれを求めたらただのハラスメントでしょう。研究者が自分で勝手にやるのは自由ですが、他の研究者に求めることでもないですね。
— 博士(じろう)ちゃん (@phdocchan) December 28, 2024
「指導放置で自死する院生もともと研究向いてない」「研究者たるもの24時間365日研究のことだけ考えろ(それ以外は許さん)」と大学教員・研究者がのたまうのを見聞きするたび、日本からアカハラがなくなる日はいまだ遠いと絶望感に襲われる。
— すゑの (@sueno_oneus) December 28, 2024
まさにこういう系の研究者と仕事をしたことがありますが、自身が24時間研究に時間を使えるせいか、他人の時間を奪うという感覚が希薄で、限られた時間で仕事をやるという概念もないため部下は大変でした
無駄な説教に何時間も付き合わされたり、ものすごい量の雑用を振られたり https://t.co/plDR81KyZ5
— いさ ちょむ (@isachom) December 28, 2024
極論に走らないことの重要性について
特に家族がいて研究職に就いている場合には、バランスの良さが結果的に研究の持続性にもつながると思います。
研究者は24時間研究を頑張るべきも、WLBにベストを尽くすべきもどちらも呪いの言葉だと思う。私は「そのどちらつかずの屑」という自己認識でこの数年生きている。
— 相澤 真一 (Shinichi Aizawa) (@isaactruth) December 29, 2024
研究者の家族について
大学の先生が本を書いたときに、たいてい「この本を忍耐強くしていてくれた妻に捧げる」と書いています。つまりは、そういうことです。
田口教授のおっしゃる通りです。さらに加えると、家族、家庭が犠牲になるスタンスはもう許されないです。今までは、ほんとんどの場合に、奥様方がモノスゴーク我慢していことに気づかないと、研究者と言えど家庭を持つことすらできないでしょう。
— 糸竹 匠 Takumi Itotake (@taktakdegozaru) December 28, 2024
ドイツ人の研究スタイル
知り合いのドイツ研究者、無茶ハードワーカーやし、人それぞれやと思うけど。。
— 山田です (@sato_dehanai) December 29, 2024
ドイツ、ポスドクまではそれなりにポジション取れるみたいだけどPIになるのはマジで無理ゲーすぎるみたいで、うちの機関では異常業績のスター研究者しかPIとして残れてない模様
— ㅏ゛ィ≠ ∃ (@jo4igy) December 29, 2024
SNSで消費される時間について
24時間といいつつ、お前今SNSやってるやろ!というシニカルな意見も。
24時間研究しているのに、何故Twitter見ているんですか?
— sigeL⊿ (@sio2sigel) December 29, 2024
24時間研究するか否かをSNSで議論して年末の貴重な休みを消費している人たち…
— MR_PiXie (@Ryj_Myzk) December 29, 2024
脳はオモテで意識に関与しているだけでなく、同時にウラでは潜在意識として働いている脳もあります。SNSをやっている最中にも無意識にさまざまなアイデアと研究のアイデアとの結合が生じているかもしれません。
研究の真実
24時間研究のことを考えるな!
研究に24時間お前のことを考えさせろ!!— 汚ディーン@山岳環境研究者 (@gl_odean) December 28, 2024
ムズイよね、研究者もオンオフ切り替えて、仕事中以外は仕事のこと考えないって話もわかりますが、24時間そのこと考える気狂いでないと研究職のような仕事では大成できないってのも一面の真実ですし。
— ないさす (@ras_nisus) December 28, 2024
自分は個人的には、以下の文章が気に入っています。だからといって家族をないがしろにしていいわけではないのですが。
「朝起きた時に,きょうも一日数学をやるぞと思ってるようでは,とてもものにならない。数学を考えながら,いつのまにか眠り,朝,目が覚めたときは既に数学の世界に入っていなければならない。どの位,数学に浸っているかが,勝負の分かれ目だ。数学は自分の命を削ってやるようなものなのだ」佐藤幹夫先生(佐藤超関数や概均質ベクトル空間の理論の創始者)
数学は体力だ! 木村 達雄 数学系教授(当時) 初出: 筑波フォーラム 45, 104-107, 1996年11月 https://nc.math.tsukuba.ac.jp/column/emeritus/Kimurata/