Category Archives: 大学入試制度

東大が無理で京大?まだ偏差値で選んでるの?

自分は、京大独特の校風に憧れる者が京大に行くのだと思っていました。なので、「東大が無理だったから京大に行った」という京大出身者の発言を聞いたときにはかなりビックリしました。東大と京大とでは入試問題の出題傾向が異なりますが、同じ学力の人が東大と京大を考えたときに、京大の方が合格しやすいものなのでしょうか?湯川秀樹博士が京大出身だったから、京大行くんじゃなかったの?(ちなみに、湯川博士がノーベル賞研究を行ったのは阪大教員時代)

東大を選ぶ理由・京大を選ぶ理由

「昆虫の研究者になりたかったので京大を目指すべきか迷いましたが、塾で密かに好きだった女の子が東大を受験しそうだと知り、最終的に僕も東大に決めて。それなのに、その子は別の大学を受けていた(笑)」(2012/11/25 12:00 桝 太一アナ ~東大現役合格、理系大学院まで行って、なぜテレビの世界に? プレジデントFamily 2012年12月号 President ONLINE)

山極:自分のやりたいことではなく偏差値で大学・学部を選ぶ学生も多い。

(大学と高校の対話を始めよう 京都大学総長と首都圏進学校校長座談会 第1回 2016年2月23日 大学ジャーナル ONLINE)

堺屋太一が目指したのは東大であった。‥大学の難易度と自分の成績とを見比べて、あれこれ考えるといったことは、堺屋太一の人生には似つかわしくない。目標を決めたら、あとは達成されるまで努力をすればいい。それだけのことなのだ。(三田誠広『堺屋太一の青春と70年万博』35ページ)

関西圏では…東大派の灘と西大和を除けば…有力校の実力者はむしろ京大を選ぶ方が多いです。‥他の地方旧帝も似たようなものです。地方では東大に行ける学力があっても最寄の旧帝に行く人は普通にいます。‥東大断トツ難易度は…【模試の上での神話】なんですね。実際、東大は地元占有率の高い関東ローカルな大学です。他の地方旧帝と比べても地元占有率の高さは大して変わらない。‥大切なのは合格最低ラインではなく、優秀層の方がどれだけいるかです。優秀層の分布では東大と地方旧帝は上下に別れるのではなくソコソコ被ります。(回答 Gilbert Blytheさん 2021/8/29 ID非公開さん 2021/8/26 東京大学に行ける学力があるけど、京大や一橋、早慶の方が魅力的だからそっちに行くという受験生はいますか? YAHOO!JAPAN知恵袋

関連記事 ⇒ 東大に来て良かったと思う理由

東大にしろ、京大にしろ、「自分は偏差値が十分高いから京大でなく東大を受けよう」とか、「自分の偏差値じゃ東大には届かないから京大」などという観点で大学を志望することを必ずしも是としていないと思います。人間が一人ひとり異なるのと同じで、大学も大学ごとに校風というものがあるので、感覚的に合う合わないということが出てくるのです。まあ東大か京大を志望している人であれば、自分の学力に見合った大学を選ぶというのが現実的な話ではあるのでしょうが、東大と京大を偏差値の数字だけで見るのは危険です。住むにしても東京と京都では街の雰囲気も全く違いますし、東大と京大の学風も異なります。それぞれの街や大学の魅力に魅かれて集まってくる人間のタイプも自ずと異なってくることでしょう。

東大生早慶大生と話していて感じたことですが、彼らは東京に暮らし、普段から通勤電車では社会人にまみれて、せわしなく働く大人を見ています。そして、大人に影響され、いい意味でも悪い意味でも社会にもまれています。しかし、京大生はほとんどが大学近くに下宿を構え、自転車で通学しています。せわしなく働く大人を見ることもなく、観光地特有ののんびりした雰囲気の中で学生生活を過ごします。これによって、京大生は我が道をいくような独特の性質に形作られているのだと思います。(京都大学の特長 京大塾

日本においては、まだまだ多くの受験生が、「自分の偏差値はこの辺だから、このあたりは狙えるかな・・・」といった、偏差値的な視野で進学先を選びがちです。そういった指標で大学に来ると、やはり「思っていたのと違う」「目的がみつからない」など、いわゆるミスマッチングという残念な結果にもなる可能性が大きい。(北野 正雄 京都大学 教育担当理事・副学長 京大の「実は!」Vol.42「京都大学の特色入試の実は!」京都大学)

 

高校生・受験生は偏差値の高低だけで志望する大学を選ぶかもしれませんが、大学側は大学が提供する教育環境、教育リソース、校風を気に入ってくれた人に来て欲しいのです。年収の多い少ないだけで配偶者を選ぶと、幸せな結婚生活にならないかもしれないのと同じこと(想像)。

これは別に理想論を言っているわけではなく、大学側が本気であることを示すために、京大は学力試験に基づく一般入試以外に、受験生と大学との相性を重視する「特色入試」の制度を実施しています。

京都大学特色入試

本学は、平成28年度入学者選抜から高等学校における幅広い学習に裏付けられた総合力と学ぶ力および高い志を評価し、個々の学部が定めたカリキュラムと教育コースを受けるにふさわしい学力と意欲を備えた者を選抜する「京都大学特色入試」を導入しました。

高大接続型」特色入試を受験される皆さんへ 特色入試 京都大学)

特色入試合格者の声:

  • 最初知ったときは、全く挑戦することは考えていませんでした。次元が違うだろうな~と。‥ 選抜要項の「求める人物像」を見てびっくり!自分がやりたいことも、求められている資質も、何もかもがぴったりだったんです。
  • 実は僕は学校の成績は全然ダメで・・・。正直、一般入試での現役合格はムリだったと思います。特色入試だから受かったと思っています。
  • 僕の場合は、実際のところ一般入試でも京大合格はほぼ確実と言われていました。なので、逆に特色入試で受かるとは思っていませんでしたね。

Vol.42 京都大学の特色入試の実は!

  1. 令和4年度 京都大学特色入試選抜要項(PDF)

 

京都大学だけでなく、東京大学も一般入試とは別の観点から入学者を選抜するための推薦入試制度を一部で取り入れています。

東京大学 学校推薦型選抜

東大の推薦入試では、一般入試で入った場合とは2つ大きな違いがあります。一つは、入学時に進学する学部が決まっているというところ。二つ目は、専門教育が早期から受けられるというところです。

  • 総合型という学生像をメインに据えながらも、一方で学生の多様化も重視する。ここが、推薦入試を理解するポイントになります。
  • 近年、東京大学では学生の画一化がみられる。具体的にいうと、首都圏出身者が半分私立高校卒が3分の2男子が8割という状況です。‥ 東大としてもこの偏りをなくし、多様化を進めるためにさまざまな努力を重ねてきました。その努力、試みの1つが、推薦入試導入ということになります。
  • 多様化という問題をクリアするには、「前期日程試験」よりもさらに前に、「前期日程試験」とは異なる入試を行うのがいいのではないか。それによって従来の総合型とは違う強みを持つ学生を取り、多様化を図ろう。そのような判断にいたったわけです。
  • 「推薦入試」は、各学部が入学者を選抜する、いわば「学部入試」の方法をとっています。ですから、各学部が設定した要件・条件にかなうかどうか、そこが鍵となる選抜が行われるわけです。
  • 学部(・学科)が決まって入学するわけですから、自分が望む学部・学科に、赤点さえとらなければ進学できる
  • 自分が進みたい道ははっきりしているのだから、少しでも早く専門のことをやりたい、早く先の授業を聞きたい、先輩たちと一緒に研究室に入って何か体験してみたいという人もいるはずです。

引用元:東京大学が推薦入試を導入した狙いと、その魅力をじっくり聞いてみた―特集:よくわかる東大推薦入試(1)2019.03.02 キミの東大

 

京大 x 東大 = がくぼ

【オリジナル曲】学歴の暴力【デモ音源】2021/07/06 学歴の暴力

  1. 学歴の暴力@violenceofgkrk:京大卒のえもり えも@emofairystar1と、東大卒のなつぴ なつ@natsupikkkの2人からなるユニット。

参考

  1. 悠仁さまが“初めての東大出身の天皇”になられる可能性を検証 推薦入学が本命か 1/20(木) 5:56 デイリー新潮 秋篠宮家悠仁さまは目下、筑波大附属高校に進学すると見られている。そんな中、3年後には推薦で東大に入学する可能性が浮上しているのだという。‥さる東大教授はこう話す。「生き残りに必死なのは東大も同じです。将来、天皇になられる方であれば喜んで受け入れると思います」
  2. 近大流最強コミュニケーション戦略 産学連携 伝わらなければただの自己満足  2018年9月15日 産学官連携ジャーナル 受験生は、教員の論文を読んで大学を選びません。いい授業(教育)、研究だからという理由でもありません。イメージで選ぶのです(近大総務部長の世耕石弘氏)

海外の大学へ進学:徳島の高校からスタンフォード大学に合格した松本杏奈さん

どんなことでも前例がないことをやるのは非常に難しいものです。日本人初のF1ドライバー中嶋悟 、セリエA初の日本人プレーヤー三浦知良など、パイオニアが道を切り開くことで、そうか可能なのかと多くの人が気付きます。東大合格者を一人も出したことがない高校からたった一人東大を志望して、実際に合格するのも、周囲の人には想像できないくらいの想像力を要することでしょう。ましてやそれが海を越えて海外の大学への進学となるとなおさらです。

最近は、世界的にみたら東大や京大は一流とは言えないので東大京大よりも海外の一流大学に学部から入るという選択がいい、みたいな若干煽りが入ったような物言いをみることがあります。そこで紹介されている合格者は、たいていの場合、東大京大にごっそり合格するような超進学校出身の生徒であって、多くの高校生にとってはやはり例外と映るのではないでしょうか。

さて、日本の高校から海外の大学へ進学することに現実味がなかなか感じられないこのご時世に、徳島県の(田舎の?)高校からスタンフォード大学に合格した松本杏奈さんがニュースになりました。その後、合格体験をまとめた書籍も出版されて、メディアからは社会現象のような扱われ方をしたと思います。

世界的名門スタンフォード大へ 「夢実現のため」選んだアメリカ 2021/06/14   FNNプライムオンライン

 

【全編無料】親の教育意識をどうアップデートすべきか?つるの剛士氏、松本杏奈氏らが徹底討論! 2021/08/18 NewsPicks /ニューズピックス

  1. 正解も前例も、自分で作ればいい。”可能性”のオルタナティブを見つけ出す力─松本杏奈さんインタビュー2021.7.19 あしたメディア 最初は、「徳島から出るな」とか、「無理だ」とかって言われて、誰も味方になってくれなかったんです。
  2. 徳島からスタンフォード合格の18歳が実践した「可能性をつぶす大人に負けない“自己肯定感”の育て方」 2021.07.16  現代ビジネス すべての人から反対されましたね。そもそも、私の周囲の大人たちは、「システム上、日本人がアメリカの大学を受験することができる」ということさえ知らなかったんです。いくら私が「できる」と説明しても、‥
  3. ほぼ日の学校 徳島の『問題児』がスタンフォード大学に入ったわけ。松本杏奈さん 徳島県の徳島文理高等学校を卒業して、今年の秋からスタンフォード大学に入学します。
  4. 徳島から「超名門スタンフォード合格」女子の正体「日本の高校生」に希望、松本杏奈という未来 2021/08/06 制作:東洋経済education × ICT編集チーム 米国の大学を目指すと宣言したときには、周囲からは「現実を見ろ」「諦めることを学べ」と言われた。‥ 19校に出願して、6校に合格、実は13校は不合格だったのです。

合格した大学は、上の記事によれば、

  1. カリフォルニア大学サンタバーバラ校
  2. カリフォルニア大学バークレー校
  3. ケースウェスタンリザーブ大学
  4. ローズハルマン工科大学
  5. ボストン大学
  6. スタンフォード大学

の6大学だそうです。

スタンフォード大学の生活紹介

松本さんは、機械工学をやるつもりで入学そうですが、学生生活が始まっていろいろな授業を受講したりいろいろな人々に知り合って、下の動画のインタビューの時点ではもっと人間よりの方向に志望する専攻が変わったそうです。スタンフォード大学の生活、なんか、とても楽しそう。このインタビュー聞いていると、自分も大学生からやり直したくなりました。

【Z世代対談】徳島から米スタンフォードへ。松本杏奈「日本社会には希望が必要」 2021/12/27 NewsPicks /ニューズピックス

 

書籍と批判的アマゾンレビューとSNSアカウント削除

本の中のコネもお金も英語力もない「3ない」状態からのスタンフォード大学合格という売り文句が実際とは違うのではないかという批判があったようで、誹謗中傷という言葉がトレンド入りしていたことから本人がSNSのアカウントを削除したというニュースを知りました。

出版された書籍、松本 杏奈 (著)『田舎からスタンフォード大学に合格した私が身につけた 夢をつかむ力 』(2022/4/22 KADOKAWA)

  1. 徳島県から「3つの逆境」を乗り越えスタンフォード大合格の松本杏奈氏、初の著書が4月22日(金)に発売! 株式会社KADOKAWA 2022年4月25日 11時00分 prtimes.jp

について書かれたアマゾンレビューのうちの一つがSNS削除の要因の一つになったようです。その長大は批判的レビューを自分も読みましたが、レビューに書かれたことは確かに批判的な語調でしたが、スタンフォード合格を勝ち取るに至った様々な戦略が詳細に説明されていて、それはそれで、海外の大学を受験する人にとって貴重な情報源になると思える内容でした。しかし、この長大なレビューに書かれた内容は事実に反するとして松本 杏奈さんが情報開示請求の意思を示したところ、レビューを書き込んだ人はそのレビューを削除したようです。そして、その後、松本 杏奈さんもSNS(ツイッター)のアカウントを削除してしまったという経緯があるようです。こうなると、一体何が真実なのかわからなくなりますね。松本さんに関する事実関係がどうだったのかは別として、この長大なレビューには日本の高校生が海外の大学に合格するための具体的な戦略がかなり細かく書かれていて、(批判的な語調を除外すれば)それ自体が一つの海外の大学への留学ガイド(事例紹介)みたいに感じられました。

今回の騒動をみたときに、自分はビリギャルを思い出しました。あれも、低偏差値から慶應義塾大学に合格できたということでセンセーショナルでしたが、低偏差値といいつつ実は進学校の出身ではないかといった批判があったように思います。

  1. ビリギャル小林さやかさんの話、世の本質を掴んでて泣いた 午後4:14 · 2022年5月1日   濱井正吾(9浪はまい)@『浪人回避大全』4/26発売 @hamaishogo1111

高校が進学校であっても、勉強を全然してこなかった生徒がいきなり難関大学を目指して合格するためには大変な努力を要するという内容で、自分はあの本を読んだときには、ある意味、当たり前のこと(それなりの大学に合格するためにはそれなりの勉強が必要)が書いてあるだけだと感じました。ただ、当たり前と言ってしまうと売れないので、ギャップを感じさせるような売り方になったのだろうと理解しています。

  1. 底辺から這い上がった…的な物語を自称するビリギャルは私立中高1貫校出身で、暴走族から大学生になった吉野敬介は逗子開成出身で、自称苦労人上野千鶴子は親にマンション買って貰ってるし、徳島スタンフォードの松本杏奈は進学校出身&親が大学教授。良い悪いは別にして、世の中そういうものだよな 午前8:14 · 2022年5月3日 rei@サブアカウント @Shanice79540635

ネットで飛び交っている情報が本当ならば、今回の松本さんの件は、実はお父さんが大学教授なのだそうです。それを知ってなるほど、と合点がいきました。やはり徳島の田舎と言っていても実は世界を見せてやれる人が身近にいたのねということです。世間一般の感覚からすれば、大学教授を父親に持つというのは普通とは言えないと思いますし、それを伏せて、普通の田舎の家庭で育ったとアピールするのであれば、それはマーケティングの戦略だと思います。

今回の松本杏奈さんの件も、削除されずに残っている他のアマゾンレビューを読むと、セルフプロデュース力が高すぎるという趣旨のものがありました。研究の世界にいて、セルフプロデュース力の高い人が研究者として生き残っている現実を見ている身としては、それはことさら批判すべき対象たりえないのではと思います。

本を読むときに、ページの隅々までその読者にとっての最適解が書いてあると期待して読むのは間違っているのではないでしょうか。所詮、他人の成功事例なのですから、自分がそのままマネできるわけもないですし、自分の生き方のヒントになることが一つでも得られれば、その本は有益だったと言えます。

 

松本杏奈さんの略歴

https://monsterex.info/2020/anna-matsumoto/ に紹介されている略歴を見ると、非常に活動的なことがわかります。なるほど、アメリカの大学のようにアドミッション入試の場合にはアピールすべきことがたくさん必要なわけですが、こういった活動はかなりアピールするんじゃないかと思います。当たり前といえば当たり前ですが、なんの準備もなく突然ポンとアメリカの大学を受けて入ったわけでは全然ないのですね。こういったことも、後に続く人のために役立つ情報なのではないかと思います。

JAPAN MENSA会員
フジテレビ「99人の壁」出演
・Oxford International Program 2018
Asian Science Camp 2019 日本代表
東京大学グローバルサイエンスキャンパス第1期生
国立情報学研究所グローバルサイエンスキャンパス「情報科学の達人」プログラム第1期生
東京2020オリンピック聖火リレー サポートランナー

参考

  1. atelier basi 海外大学への進学が注目を浴びる中でも、地域によっては未だ海外進学が現実的な選択肢として捉えられず、周囲の応援を得にくいのが現状です。情報を得る上で対策塾や先輩の存在は不可欠ですが、それを得られるかどうかは経済的・地理的状況に依拠しており、全ての受験生に保障されているわけではありません。 そんな高校生の悩みを解消したい。一人一人の独創性を受け入れ育み合う空間で、自ら納得のゆくまで考え抜いた目標の実現を、経済的・地理的条件に関わらず伴走したい。似た環境から進学した先輩に相談できる場を。それぞれの個性を「生かす」受験サポートを。同じ試練を乗り越えようとしている仲間がいるコミュニティーを。受験生だった私たちが欲しかった場所を無償かつオンラインで。それが atelier basi です。(atelier basi:about)

共通試験第2回(令和4年度)における阿鼻叫喚

令和4年度(2022年度)第2回共通試験解答速報

  1. 共通テスト開津速報2022 東進ハイスクール予備校
  2. 2022年度 大学入学共通テスト 問題・解答速報 毎日新聞(ベネッセ・駿台 データネット)
  3. 2022年度 大学入学共通テスト 問題と解答 朝日新聞分析データ:代々木ゼミナール
  4. 河合塾

第2回(2022年度)共通試験 総括

共通試験を終えた受験生へ

 

ガンバレ!受験生

数学IAの難しさについて

数学IIBの難しさについて

数学IIB第4問について


 

 

共通試験の本来の目的について

 

歪められた英語の出題傾向について

日本の英語教育の未来について

 

数学の出題方法について

 

 

共通試験の英語に対する今後の現実的な対応方法について

国語の総括

物理基礎について

日本史Bについて

現代社会について

生物基礎について

政治経済について

 

情報関係基礎について

数学IAの問題に取り組む花子さんと太郎君の脳内について

受験生の災難

大学入学共通テストへの記述式問題および英語民間検定試験の導入を断念することが正式に決まる

今更感がありますが、産経新聞(7/30(金) 22:38 YAHOO!JAPAN)に、

共通テスト「記述式」正式断念 今後は個別試験の充実課題

という記事が出ていました。長年の改善で一定の評価を得ていたセンター試験を廃止して、共通テストに鞍替えし、それを機会に英語試験を民営化したり、記述式問題を取り入れるという目論見でしたが、あまりにも杜撰なやり方のため関係者から猛反発が生じ、ついに断念される運びとなりました。

ヤフーニュース記事に寄せられたコメントを読んでみると、記事の本文には書かれていない裏事情を指摘するものが多くて、実情を理解する上でたいへん参考になります。624件ものコメントがありますが、なるほどと思ったコメントの内容の一部を紹介します(太字強調は当サイト)。

 

食いものにされる公教育

一番の問題点は、日本の教育を良くするためでもなく、高校生のためでもなく、文科省と癒着している一部の企業に丸儲けさせるために仕組まれた改革の様相であったことです。そのことは、上のヤフージャパンの記事に対するコメントでも指摘されていました。

委託先のベネッセで,学歴不問で採点者を低賃金で集めたスタッフで採点して採点ミスがあってもわからないシステムとは,なかなか素晴らしい事業であった。pop*****

東大を受験する高校生の答案を、二流大学の学生にアルバイトで添削させようとしていたのだから、潰れて当然。goz*****

これ、やめるにあたってベネッセ何千億円キャンセル料払ったんだよな。ipa*****

ベネッセに採点丸投げして儲けさせる意図が丸見えだった。yw1***** 9時間前

結局、共通テストの記述式はベネッセと文科省の癒着の産物でしかなかったので、やめて正解だと思います。ars*****

今の制度でほぼ問題ないのに、民間テスト(ベネッセ)の参入のための制度変更だろ!kur*****

50万人の答案を2週間足らずで公平な採点をしようと考えれば採点チェックが複数回必要な記述式が無理なことは明らか。大学生がアルバイトで添削しているベネッセに丸投げしようというアイデアそのものがお友だちへの利益誘導でしかない。ss4*****

まだ岡山の企業、ベネッセ共通テストe-ポートフォリオClassiGTECで巨額の税金や受験生・保護者のカネが流れたままあいまいになっていることが清算されていない。pas*****

赤字だったベネッセが、巻き返しのために、文教族議員を接待漬けにし、時にお金を握らせて記述式が良い、という風にして進めてきただけの話。最初から、誰も高校生、受験生のことなんなか1ミリも考えていない。pxd*****

関連記事⇒「文科省=ベネッセ」のズブズブな関係

 

破壊される日本

センター試験の作問・実施のオペレーションは、長年の間に素晴らしい完成度に達していました。社会のあらゆるところできっちりとした仕事がなされる古き良き時代の日本でした。オリンピックの運営もそうですが、近年の政治はそういうものを破壊することばかりに血道を挙げてきた。prara

自分も上の意見と同意見です。積み重ねられてきた努力の賜物を、その価値が理解できない愚かな政治家によって壊されているように思います。

関連記事⇒アベシンゾーの破壊的行為の忘備録

センター試験の質の高さ

改革の口実として、センター試験では真の実力が測れないと、さんざん悪く言われたと思いますが、自分はベネッセの模擬試験などと比べれば比較にならないくらい質の良い問題が揃っていたのではないかと思います。センター試験の英語の問題は、今の自分でどれくらい解けるかと思って試しに解いたりしたことがあります。そのたびに、出題に関しては感心していました。内容的に面白いと思えるものが出題されているからです。GTECやTOEICは、テストのためのテストに過ぎず、全く何の興味も掻き立てられません。

センター試験が非常に優れた基礎学力判定能力をもった良い試験であることも多くの心ある有識者には明白な事実である。gai*****

ベネッセ模試がやたらと「生徒のレポート」や「発表」という謎な文章を読ませて、そこに書いてあることは何ですか、とか無駄に面倒な問題ばかり増えてます。こねくり回した文章によりページ数増えて、本当に疲れます(←日本史です)。chi*****

記述=思考という短絡さ。多肢選択型の問題だと思考力が試せないというのは、全くの事実誤認。どんな問題だって思考しなければ解けるわけがない。drt*****

 

共通試験の本来の役割

大学一次試験は、共通一次試験、センター試験、大学共通テストと変更されてきた歴史がありますが、その役割は変わっていません。国立大学において、しっかりと学力をみるための試験が行えるように、予め受験者数を絞るという趣旨だったと思います。

共通第一次学力試験は、国公立大学の入学志願者に対し、各大学が実施する試験に先立ち、全国同一期日に同一問題で行われる試験であり、これによって、高等学校の段階における一般的かつ基礎的な学習の達成程度を問う良質な問題を確保しつつ、各大学がそれぞれの大学、学部等の特性に応じて行う第二次試験との適切な組合せによって、受験生の能力・適性を多面的・総合的に評価しようとするものであって、一回の学力試験に偏った従来の方法を改め、きめ細かで、丁寧な入試の実現を目指したものであった。

共通一次試験導入の狙い(文科HPより)mas***** | 9時間前

今でこそ「センター利用」などといって、私立大学がセンター試験だけで合否を判定したりする例も増えてきましたが、本来は記述式がメインの2次試験と組み合わせて効果的に大学入学志望者を選抜するためのものでした。ですから、受験者数が非常に多い一次試験に記述式問題を導入するのは、採点の大変さを考えればほとんど不可能だったと思います。

そんなことが分かってたから何十年も前に完全マークシートの共通1次をはじめて
記述は各大学が2次試験でという形にしたんちゃうん e*******y

上のコメントは、本当に全くその通りとしか言いようがありません。共通一次試験が導入された経緯を考えたら、今回のように記述式導入などという発想はありえなかったはずです。動機が不純だったことは明かでしょう。

膨大な人数の試験を行う際に重要なのは、「短期間で、公平に、客観性のある結果を提示できる」ということではないか。… 無能な政治家の空論で教育現場を混乱させないでいただきたい。shi*****

そもそも「記述式以前に一旦篩かけする」って形で浸透してたのにそこへ「記述式も混ぜる」って時点で無茶苦茶なんですよね s*******

共通一次もセンター試験も、元は国公立大学の二次試験への一次テストなので「基本が出来てて一定以上の学力があるか」さえわかれば良い。思考力だの読解力だの記述力だのは二次試験で各大学が判定すること。… 私立が入試に利用するから変更する気なら、そんなのは本末転倒である。Pink diamond

センター試験は、効率的かつ合理的に生徒を選別するもので、思考力や人間力を問うのは既に私立公立問わず2次試験であります。アーサー

センターで基礎的な学力は測れたマーク式で採点の公平性も保たれていた
記述式やら面接やらは各大学が必要とすれば二次試験で課せていたし、多くの大学が記述式を採用していた。バランスがとれてよかったと思う。aba*****

そもそも、一次試験の趣旨からすると記述式を導入する理由が全くなかったんですね。それを強行しようとしたのですから、愚かとしか言いようがありません。

 

記述式問題の採点の難しさ

河合塾で模試を受けた。試験後すぐに先生が解説をしたのだが、ある国語の問題で私の解答を模範として読んでくれた。しかし、戻ってきた答案用紙には×がついていた。採点をするのはアルバイトの大学生らしく長文の解答が理解できないんですよ。記述問題の採点者には解答者をはるかに超える能力が要求されるんです。top*****

高校の入試で、500人規模の採点でも、3日かかっている。50万人なんて、採点者が確保できないし、記述となれば採点基準はぶれまくる。3人でやっても、いちいち基準と突き合わせて、基準を更新していくのだから。大規模入試には記述は不可能。skz*****

関連記事⇒大学入学試験の答案はどのように採点されているのか?

 

一番の被害者は高校生・受験生

振り回された受験生の時間を返して欲しいです。2019年度高校卒の者です。センター試験最後の年でしたが、明らかに共通テストを意識した問題であり、傾向と対策が難しいものとなりました。… 利権や政治家の都合で受験生を振り回さないでください。hot*****

子供が最後のセンター試験を受験しました。傾向がかなり変わっていて模試でとってきた点数よりはるか下回り、涙を流していました。コロナ対応も、学術会議も今の利権ありきの能無し政権に振り回されっぱなし。ayk*****

 

責任の所在

これほど悪影響を与えておいて、誰も責任を取らないというのはあり得ないのではないでしょうか。

40万人の答案を短期間で公平に採点することに対する技術的課題だと思うが、過去採用を決めた時は可能だとして、今回は出来ないとした。何が変わって判断が変わったのかを明確にしてくれ。yui*****

共通テストの「記述式」は議論になった当初から「絶対無理」という声が現場では圧倒的だった。そのような声を無視して無駄な金をつぎ込んできた人たちの責任です。neg*****

責任取るなら大臣は辞任するくらいの事案だと思うが。pip*****

当時の大臣導入を進言したなんとか委員会の長も表に出て謝ったらどうだい?tan*****

ベネッセをやTOEICやら民間業者を儲けさせるためでしよう。文科省って三流官庁だから、儲けさせて天下り先確保に必死で、それに子供が振り回せられる構図。tadmjg

この少し考えればメチャクチャ無理があって現実不可能なのこ愚策・方針を推し進めた,文科省の官僚に責任を取らせるべきだ!!a_o*****

常識的に不可能なことを、企業に丸投げしてあたかも実現可能なようなことを言って入試改革を強行しようとしたのですから、本当に無責任極まりない行為です。

センター試験廃止は結局なんだったのか

始めから笑えるほどの机上の空論だった。やろうとしたことが時間と金の無駄使いの大問題。kih*****

結果的にテストの名前だけが変わっただけになったアホな改革。msd*****

教育ビジネスで利権を貪る官僚と政治家、犠牲となる受験生の構図だな。kan*****

大阪大学が物理入試出題ミスの検証結果を公表


追記20180411

問1について

物理の問題では問4,5が話題になっていましたが、問1についても正答が選択肢に無いという指摘がありますので紹介しておきます。

2017年物理の出題ミスで話題になった問題〔3〕Aの問4について解 説を書きました。 なお,この問題には,問1も出題ミスではないかという疑惑があります。問1については,大阪大学へ問い合わせをし回答を得ていて,それを掲載しています。問1の大阪大学による検証結果は,まさかこんな回答をするとはというびっくりする内容でした。(引用元:記事 大阪大学2017年物理出題ミス問題の解説と,さらなる出題ミスの疑惑  乱数と暗号の部屋(暗号工房)

弁明「問1は選択肢に正解がない」 に対する抗議にお答えします 。2018/3/11

脱帽 これは 苦しい! 問1は、いったい何を試したかったのでしょうか?

(引用元:冨田 博之 京都大学名誉教授のウェブサイト)

 


2017年2月25日に実施された大阪大学入学試験前期「物理」の問題で出題ミスがあり、1年近くも経った2018年1月6日に30名もの追加合格者が出ました(⇒記事)。ところが、ある意味、それ以上に世間を驚かせたのは、阪大が2018年1月12日に公表した言い訳でした。阪大は、はじめに正答とした解答が誤答だったとは決して認めず、それを本来の答えとした上で別の解も正答として認めるというのです。(⇒記事)。物理を捻じ曲げ、大学入試の出題のルールをも投げ捨てたこの説明は、物理の専門家や教育者をはじめとして世の中の多くの人を憤激させました。当然、検証委員会がこれを正すのだろうと思っていたのですが、期待は見事に裏切られました。また、出題ミスに組織として対応する体制が作られていなかったわけですから、組織としての責任が厳しく問われるべきです。しかしながら、2018年3月23日公開の報告書において、検証委員会は責任を全て問題作成者と通報を受けた現場の人間に押し付け、阪大執行部には高評価を与えました。

○ 被処分者等
① 大学院理学研究科教授(50歳代)平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における科目責任者…訓告
② 大学院理学研究科教授(50歳代)平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における副責任者…訓告
③ 教育・学生支援部長(50歳代) …厳重注意
④ 教育・学生支援部入試課長(40歳代) …厳重注意
⑤ 教育・学生支援部入試課課長補佐(50歳代) …厳重注意
⑥ 教育・学生支援部入試課係長(40歳代) …訓告 (引用元:処分の公表について

入試問題に関する誤り判明後の対応について
入試担当理事に第一報が入って以降、総長のリーダーシップのもと、大学としての対応は迅速であると同時に、合否判定に必要な手続きを慎重に踏んでおり、特段の問題点や課題はなかった。(引用元:検証報告書

阪大のこのような体質に対する批判的なコメントがいくつか目に留まったので紹介します。

3月23日付で大阪大学の「事案検証委員会」の検証結果が公表されました。いったい何を検証されたのか、すでに報じられている事実経過を羅列しただけで、1月12日のふざけた 「 解説 」 は不問に付されたままです。 これでは役員がいくら深々と頭を下げられても、白々しく映ってしまいます (引用元⇒検証「この大学では、間違ったときの世間の目の眩ませ方を学生に教えている!」 冨田 博之 京都大学名誉教授)

阪大は追加合格者に金銭的な保障をするといいます。それはそれで良いニュースだと思ったのですが、なんとその財源は阪大職員に寄付を募って賄う方針です。役職ごとに目安となる金額が通知されたそうで、このやり方だと任意の寄付というよりも、強制的な徴収に近いのではないでしょうか?この発表に対しても激しい批判が湧き起こりましたが、結局、撤回するつもりはなさそうです。

参考

Ⅱ 事案の概要 2. 経緯
(1)平成29 年2 月25 日に理科(物理)の試験が実施され、答案採点が行われた後、3 月9
日に合格発表が行われた。
(2)同年6 月10 日、大阪大学を会場として「物理教育を考える会Ⅰ」(大学入試問題検討会)
(以下「考える会」という。)が開催され、出席者から理科(物理)の問題〔3〕A の問4 に
ついて複数の解答があり得るのではないか等の指摘がなされた。この指摘に対し、参加し
ていた当該年度の理科(物理)の科目責任者は、大阪大学の解答例を正答として示した。
(3)同年8 月9 日、外部者から理学研究科学務係に、理科(物理)の問題〔3〕A の問4 及び
問5 の問題設定に不自然さがあるので、問4 の解答を教えてほしい旨メールにて連絡があ
った。翌10 日、同メールは、教育・学生支援部入試課(以下「入試課」という。)入試第一
係から、科目責任者及び副責任者(CC で同報)に転送され、本学の解答例で回答してよい
か照会がなされた。
8 月21 日、入試課入試第一係は、同外部者に、メールで、大阪大学の解答例を回答した。
8 月23 日、同外部者から、再度、大阪大学の解答には理論的な誤りがある旨とその理由
を記載したメールがあったが、大阪大学はこれに返信をしなかった。
(4)同年12 月4 日、上記(3)とは別の外部者から入試課入試第一係に、理科(物理)の問題
〔3〕A の問4 及び問5 に疑問がある旨及びその具体的な問題点を指摘するメールが届いた。
12 月12 日、入試課入試第一係は、同外部者に、メールで、大阪大学の解答例を回答し
た。
12 月15 日、同外部者から具体的説明を求める旨のメールがあった。
12 月19 日、大阪大学は、当該指摘が正しいことを確認したため、対応を協議し、同月20
日、同外部者に指摘が正しかったことをメールで回答した。
(5)同年12 月21 日から採点のやり直しを行った上、同月27 日から28 日の間に関係学部
において再度の合格者判定を行った。
平成30 年1 月6 日、大阪大学は、30 名を新たな合格者に、9 名を第一志望学科合格者に
それぞれ決定し、当該受験生等への連絡が行われるとともに、上記一連の事実と経緯等を
公表した。

(引用元:検証報告書

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて大阪大学2018年3月23日(金)
  2. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りに関する検証報告書(公表用)(3月23日追記)
  3. 大阪大学入試に係る問題再発防止対策検討委員会報告書(3月23日追記)
  4. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りに係る補償の基本的な考え方について(3月23日追記)
  5. 処分の公表について(3月23日追記
  6. 平成30年度一般入試(前期日程)における再発防止の強化策について(2月20日追記)
  7. 参考資料(2月20日追記)
  8. 入学等の意向確認状況について(2月1日追記)
  9. 事案検証委員会等の設置について(1月12日追記)
  10. 役員報酬の自主返納について(1月12日追記)
  11. 理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)

報道

  1. 阪大入試ミス、問題作成責任者の教授ら処分 外部指摘3回も「自信があった」 (産経WEST 2018.3.24 07:51更新) 大阪大は23日、昨年2月の一般入試の物理科目でミスがあり30人が入学できなかった問題で、物理の問題作成責任者と副責任者のいずれも50代の教授2人を訓告処分とした。
  2. 大阪大、教授ら6人処分 入試ミス問題 (YOMIURI ONLINE 2018年03月24日) 大阪大は23日、昨年の入試ミスを受け、物理の試験問題作成責任者と副責任者の理学部教授2人を訓告とするなど計6人を処分した。
  3. 大阪大 入試ミス6人処分 外部指摘、対応ルールなし 検証結果公表 (毎日新聞2018年3月24日 大阪朝刊) 大阪大の昨年の一般入試の物理で出題ミスがあり、今年に入って30人を追加合格とした問題で、阪大は23日、「関係した教員の問題だけではなく、組織としてのルールがなかったことに大きな原因がある」とする検証結果を公表した。
  4. 阪大、入試ミスで教授ら処分=「組織のルール欠如が原因」(時事ドットコムニュース 2018/03/23-20:18) 大阪大は23日、昨年2月に実施した入学試験の物理であった出題ミスを受け、科目責任者の50代の大学院理学研究科教授ら6人を訓告や厳重注意処分とした。

以前の報道

  1. 阪大 入試出題ミス、学長が卒業式で謝罪 (毎日新聞2018年3月22日 16時44分 最終更新 3月22日 16時49分) 大阪大の西尾章治郎学長は22日、大阪市中央区の大阪城ホールで開かれた卒業式で、昨年の入試での出題ミスについて、「大変なご心配とご迷惑をお掛けしました」と謝罪した。
  2. 「大阪大学」入試ミス 発覚までに3度指摘(News 24 2018/01/08)

 

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阪大が2017年入試物理出題ミスを解説

阪大2017年入試「物理」出題ミスを2018年1月6日に公表した大阪大学が、正答が3つあるという主張に関して1月12日に追加説明を公表しました。模範解答および採点にあたっての考え方が、非常に詳細に述べられています。

しかし、”問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。”と言いつつ、”A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。”という説明自体、ロジックが完全に破綻しています。

矛盾した説明しかできないということは、つまりは、この説明は苦し紛れでつくっただけで、本当のことを伝えていないということでしょう

音叉とは、軸についている二本の腕が振動することにより、ある特定の振動数をもつ音波を発生する装置である。音叉の腕の振動の様子(モード) にはさまざまなタイプがあり、主に、二本の腕が互いに逆向きに振動するモード(以下、「逆位相振動モード」と呼ぶ、A-I. で設定した振動モード) と二本の腕が同じ向きに振動するモード(以下、「同位相振動モード」と呼ぶ) がある。音叉の基本的な振動モードは一般に逆位相振動モードであり、逆位相振動モードの方が実験的に観測されやすいと思われる。ただ音叉の振動を実験的に観測した著者による参考文献Russell, D. A. (2000). \On the sound eld radiated by a tuning fork.” American Journal ofPhysics, 68(12), 1139-1145. https://doi.org/10.1119/1.1286661 および同著者によるWeb ページhttp://www.acs.psu.edu/drussell/Demos/TuningFork/fork-modes.html によると、同位相振動モードで振動している様子も実際に観測されている。音叉を一つ定めたとき、同位相振動モードおよび逆位相振動モードはどちらもその音叉に対して可能な振動モードであるが、一般にそれぞれ異なる振動数の音波を発生する(前述の参考文献)。問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。

A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。しかし、問5においては同位相振動モードで振動していることを前提として問題が作られていた。

理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)(大阪大学) (一部を抜粋。太字強調は当サイト)

阪大がこのよう模範解答を公表したことは、非常に歓迎すべきで、高校生、受験生の物理の勉強にも有益でしょう。しかし、出題ミスの釈明部分に関して言えば、全くなんの正当化にもなっていません。

〔3〕Aの問題文中には、、音叉に複数の振動モード(同位相または逆位相)が存在するという記述はありません。この物理の問題は、音叉がどのように振動して音を出すのかという予備知識を受験生に要求しておらず、むしろ、A-Iで受験生を誘導するような形で、逆位相振動モードによって音が発生する様子を図で丁寧に説明していたわけです。音叉の振動モードの可能性を複数考えると答えが一つに定まらないため、出題者の意図として、この段階で問題の条件設定をそのように絞ったということのはずです。ですから、受験生にしてみれば、A-Iでの誘導に則って、A-III問4も音叉が「逆位相振動モード」で音を発生させているという前提で解くのが当然でしょう。

A-Iの中で音叉が「逆位相振動モード」で音を出すことを丁寧に説明して受験生を誘導しておきながら、突然、A-IIIでは「同位相振動モード」で考えた答えのほうが「正答」で、「逆位相振動モード」で考えた答えも追加で正答とする阪大の態度は、矛盾しています。当然、外部からの最初の2回の指摘を却下した理由として、「同位相振動モード」で考えた答え2d=(n-1/2)λが正答だからというロジックは成り立ちません。

この追加説明は、物理の説明に関する部分は納得のいくものですが、出題ミスに関する釈明としては全く説得力がないと思います。大問のなかで分かれている小問ごとに、実は問題設定はバラバラなんですよというのは、これまでの入試の出題方法の常識を否定するような主張です。

 

阪大の追加説明に対する世の中の反応

 

阪大はなぜ誤りを認めないのか

問5との整合性を考えて問4を同位相振動モードと考え直した受験生がいたであろうという配慮から、そのような答えに3点を与えるのはやむを得ないかもしれません。しかし、本来あるべき採点、すなわち、問4で同位相振動モードで考えた解答(=誤答)は0点(配点3点)、逆位相(=正答)で考えた答えに3点、問5は設問の矛盾から問題が成立しないので全員に4点(配点4点)として採点をやり直せば、1月6日の追加合格者30人以外にも、もっと多くの合格者が出るはずです。出題ミスに伴う変則的な採点方法のせいで、問4、問5を一番正しく答えた人の中に不利益を被る人が出たという批判を恐れるあまり、阪大は誤答を頑なに認めないのかもしれません。

210ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/12(金) 22:44:07.38ID:???
この言い訳見苦しすぎるよね。
素直に間違えちゃったゴメンちゃいって言えないのかと

 

214ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 01:11:11.78ID:???>>215
阪大さん恥の上塗りをしてしまったね。 都合のいい論文必死でググったんですね。

 

218ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 09:14:15.03ID:???
まあそうしないと、今まで正解した人を不正解にしなきゃいけないもんな。
そうすると合格のラインが下がって、新たな合格者が30人じゃ効かないw

 

227ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 12:05:09.78ID:???>>228
合格者を不合格にできないけど、それは表立って言えないから捻り出された理屈じゃない?

 

232ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 13:29:08.05ID:???
それまでの解答を不正解にすると、合格ラインが下がり、逆転合格者が
さらに増えることになる。それをふせぐために両方正解にし、30名で抑えた
というのが真相だろう。

 

279ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/15(月) 00:47:01.66ID:KVLUo8Ec
物理的正しさとは関係なく一度正答とし合格として入学を認め9ヶ月経過したものを不合格にはできん。むりやりのコジツケせずにそう弁明すればいいのに。

 

(引用元:阪大入試出題ミス https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/sci/1515285792/ 投稿の一部のみ)

 

参考

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて 大阪大学 2018年1月6日(土)(1月12日追記)
  2. 高校物理における音波の解説 (PDF) 2018年1月12日 京大理 佐々真一
  3. 仕方がないので,昨日の阪大の発表を受けた小論を作成しました。
  4. Vibrational Modes of a Tuning Fork (acs.psu.edu)

 

その他のツイート

上で紹介した以降も、阪大の1月12日の説明の矛盾を指摘するツイートが多数発信されているので、目に留まったものを挙げておきます。

  1. ぼくには(もちろん、ミスがないのがベストだが、ミスをしてしまったなら)A の方が B よりもずっとずっとマシに思える。 本気で B を主張するなら、今後、阪大の入試では全てが明示的に書かれていない限りは断りなく状況をどんどん変更するということにならないか?
  2. 阪大の追加説明では、 A「音の反射について勘違いしていたお恥ずかしい」 と認めればいいところを、 B「勘違いはしていない。問1で音叉の(通常の)振動の仕方を述べたが、問4,5では(極めて珍しい)別の振動の仕方をすると断りなく状況を変更した」 としている。
  3.   で音叉モードの説明が追加されているけど、仮にそれが通るとしたら、 今度は、なぜ問5を問題文の不整合と見なし一律加点扱いにしたかの説明が要るね。 追加説明の理屈では、問題5は問題1とは独立であり、前文と整合していれば良く、実際は整合している考え方に見える。
  4. モードによって振動数が変わるから阪大の言い訳は間違ってるわけだけど、おそらくこの調子だと「ⅠとⅢで音叉の振動数は同じと書いたが、同じ音叉を使ったとはどこにも書いていない。ⅢではⅠとは別の音叉を実験に使うことを前提として作問した」って言いそう(笑)
  5. なので阪大の説明は後付っぽくて、多分真相は「どっかの位相をπ間違えてました」なんだろう。そうすると2d=(n-1/2)λが不正解っぽくなってくるが、同相モードの別音叉を使っているという解釈をすると一応は辻褄が合うのでこれも正解にしたいということなのだろう。理由はともあれ採点方針は妥当と思う。
  6. 音叉の振動モードで残るのは基音と倍音だけ。それ以外は周波数も違うし、音量も少なく、すぐに減衰してしまう。 特に重心が動くモードの減衰はとても速いだろう。  
  7. Hal TasakiさんがMasaki Oshikawaをリツイートしました 強く賛成。 昨日の資料の(嘘であることが見え見えの)異常な言い訳に固執しても得るものは何もない。むしろ、あんな「バレバレの後出し」を認めたら試験、というか、論理的な対話そのものが成立しなくなる。
  8. 昨年の阪大入試物理の件、続報 阪大の見解が公表されていますが、問題の前半での導入と矛盾しています。常識的にも、試験という限定された舞台での「お約束」としても、これはあり得ないでしょう。こんな話が通るようでは(入試に限らず)試験というものが成立しなくなる。
  9. 公式暗記やパターン処理でも多くの入試問題は解ける。でもそのような表面的思考では解けず、現象を真摯に受けとめ基本法則から丁寧に考えなければ解けない問題が良問。今回の阪大のやつは実は良問だったのに、作題者自身がハマったとはね。
  10. 阪大物理入試採点ミスの件、当局の内容の解説として「音叉の二本の枝が逆位相で振動するモードと同位相で振動するモードがある」とされる過去の論文を論ってるが、オリジナルの解答を正解に含めるための強烈な後付け対策のような気がしてならない。
  11. まとめると,大阪大学が想定した同位相振動モードは,音叉部分の重心が左右に揺れるので,音叉がある別の物体に固定されていないと発生しないし,その物体と共振しないと音が減衰する.したがって,地面に反射壁と音叉とマイクロフォンが固定された状況では発生しない.力学的に無理.
  12. 返信先: さん あまり波動は得意でないので誤りかもしれませんが、リード文に「音叉は逆向きに振動する」と書いてある以上その下で解くべきですよね? だとしたらこの解説は模範解答を無理矢理正当化したように感じます
  13. 返信先: さん、さん それにモードが
  14. 異なると振動数が変わるはずなので,問5で500Hzが使えなくなります。
  15. 音叉の同位相モードを最初に前提していた、という説明をしたのね。逆位相モードをA-Iで問うていて続くA-IIIでは一転して暗黙に同位相を前提にするのは不自然すぎる。壁の反射と同じく、他の振動モードを考えるならもっと多様な位相ずれも同時に考慮する必要があるわけで、むーん。
  16. 大阪大学の入試の物理の問題。阪大解説では、音叉の振動モードを持ち出して、苦しい説明をしています。一番大きい振動は基本波で、逆相振動です。同相振動は、高次のモードで、振幅はかなり小さくなります。問題では、音が強くなる位置を問うているので、基本波で逆相振動以外には有り得ません。
  17. 阪大物理の追加説明 A-I で設定した仮定を A-III で逆にしても正解って、酷すぎる。
  18. 当の阪大が紹介している外部サイトで同位相モードの振動数は基本振動と振動数が異なる。で、大問の冒頭部で「500Hzの音を発する音叉」といわれたものが基本振動数500Hzのものと同位相モード振動数500Hzのものの少なくとも2つあって使い分けられているとか誰がまともに信じるかボケ
  19. 阪大から、「答えが二つあること」の解説がでた。 まさかの(僕が音叉のことをよく理解していないときに可能性の一つとして適当に書いた)表と裏での密度波の位相の反転を根拠にしていた。うーむ。
  20. 大阪大学の言い訳がひどいと物理屋の間で話題に(togetter)
  21. ”なおAとBは独立した内容の問題である。”と但し書きがある以上、Aの中の実験I,II,IIIで使われた音叉の振動モードは同一であると受験者が理解するのが当然。阪大の後出し説明は、詭弁ではないか。 阪大2017年入試「物理」出題ミスの真相

 

報道

  1. 阪大 入試ミス 「解説」ミス?でさらに疑念 物理問題 (毎日新聞2018年2月17日 01時21分 最終更新 2月17日 01時47分) 大阪大にミスを指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「条件の修正がない以上、問4も(1)のタイプしか考える余地はない」と指摘する。大学で物理学を研究するある男性教授は「前の問題文で示した設定を、続く設問で説明なく覆すのは、非常識を通り越して異常だ」と批判した。 さらに、(2)のタイプの振動は、根拠にした00年の学術論文などによると「(1)よりも振動数は低くなる」とあり、ここでも矛盾が生じる。東京大の押川正毅教授(理論物理学)は「冒頭で500ヘルツとあるので、この音波が全ての問題に適応されると解釈せざるを得ない」とし、大阪大の解説について「この理屈が認められるなら、問題で与えた設定と異なる勝手な条件で考えた解答も全て正解とせざるを得なくなる」と指摘した。
  2. 入試ミスの阪大、音叉の振動はAとBのモードあるのに… (朝日新聞DIGITAL 2018年1月13日07時21分 (会員限定記事)石倉徹也、後藤一也、合田禄):”大阪大が入試ミスで本来合格の30人を不合格にしていた問題で、阪大は12日、設問の誤りについての説明資料を発表した。一般的でないケースを前提に問題が作られ、その場合の解答のみ当初正しいとしていた。”

更新・変更 20180301 毎日新聞2018年2月17日の記事があることに気付いて追加

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2020年新入試英語はマーク式と民間の両試験

2020年度から大学入試制度が激変します。知識偏重の入試から、思考力や判断力を問う入試へと変革させることが狙いだそうですが、出題内容だけでなく受験の形式も大きく変わるため、過渡期に大学を受験する生徒にとっては、試験準備のための精神的な負担が非常に大きくなりそうです。1日も早く、最終的な試験の形式が確定してほしいものです。

これまでの「大学入試センター試験」は、2020年度からは「大学入学共通テスト」に取って代わられます。大学入学共通テストの英語は、2024年度からは民間の資格・検定試験が使われます。2020~2023年度の過渡期は、民間の資格・検定試験と現行のマーク式が併用され、大学がどちらかを選べるというものでした。しかしながら、今回のニュースによれば、2017年10月12日に行われた国立大学協会の理事会で、全国立大が足並みをそろえて両試験を課すべきだという結論になったようです。

出題傾向の異なる2つの試験の受験を課するとなると、2020~2023年度の受験生には大きな負担を強いることになりそうです。

共通テストの英語に、民間の試験を活用するとして8つほど候補が挙げられていますが、実際にどの試験が採用されるのかすらまだ明らかになっていません。

英語はコミュニケーション能力を重視し、「読む・聞く」の2技能だけを測っていた試験を廃止し、4技能を測るため英検やTOEICなどの民間試験を使うことになる。どの団体の試験を認めるかは、今年度中にも決める。(朝日新聞DIGITAL 2017年7月10日23時27分 センター試験後継テストの英語、完全民間移行は24年度 )

実施に当たっては、英検やTOEICなどの資格・検定試験のうち、必要な水準や要件を満たす試験をセンターが認定。(時事ドットコムニュース 2017/07/10-15:04民間試験・マーク式併存=センター後継、英語で4年間-文科省

大学入試センター試験に代えて2020年度に始まる「大学入学共通テスト」の英語について、国立大学協会の理事会は12日、従来型のマークシート式と実用英語技能検定(英検)などの民間試験の両方を全国立大82校の受験生に課す方針を決めた。(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2017年10月13日 06時00分国立大英語「マーク式と民間」必須…新大学入試 )

共通テストの英語は24年度から民間の資格・検定試験に全面移行する。実用英語技能検定(英検)やTOEICなどの採用が検討されている。(日本経済新聞 2017/10/13 11:07マーク式と民間試験が必須に 国立大入試の英語 20~23年度

共通テストの英語は4技能(読む・聞く・話す・書く)を総合的に測るため、英検やTOEFLなどの民間試験を活用し、高校3年の4~12月に受ける。(2017年10月13日 23時07分 毎日新聞/ @niftyニュース新テスト:国立大、英語2試験「負担大」 高校側の反発も )

英語については、これまでの「読む・聞く」に加え「話す・書く」をあわせた4技能を評価することを目的とし、実用英語技能検定(英検)やTOEIC、TOEFLなど英語能力をはかる10種類の民間試験の中から、大学入試センターが「認定試験」として選定。(日本経済新聞 第321回 2017/5/20 6:00 大学入試、民間試験活用に賛成ですか )

 

文科省のウェブサイトを見ると、平成29年度英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第1回)配付資料 の中で、主な英語の資格・検定試験として、英検など以下の8つが紹介されています。

  1. Cambridge Englishケンブリッジ大学英語検定機構
  2. 英検(公益財団法人日本英語検定協会
  3. GTECベネッセコーポレーション Berlitz International ELS Educational Services ※CBT:一般財団法人進学基準研究機構(CEES)と共催)
  4. IELTSブリティッシュ・カウンシル 公益財団法人日本英語検定協会等)
  5. TEAP /TEAPCBT (公益財団法人日本英語検定協会
  6. TOEFL iBT (テスト作成: ETS 日本事務局: 国際教育交換協議会(CIEE)
  7. TOEIC L&R (テスト作成: ETS 日本事務局: 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)
  8. TOEIC S&W (テスト作成: ETS 日本事務局: 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)

TOEICは内容がビジネスマン向けで、アカデミックな内容に乏しいため、高校生が学校で学ぶべき内容とはとても言い難く、大学入試のための共通テストには不向きでしょう。TOEFLは海外の大学に進学するときに外国人に課せられるテストで、そもそも大学で学ぶのに必要な英語力を問うものですから、共通テストにふさわしい性格を備えています。

 

参考

  1. 平成29年度英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(文部科学省) 議事録(平成29年9月7日(木曜日)13時~15時)
  2. 英語4技能試験情報サイト 資格・検定試験 懇談会:”平成26年12月、文部科学省にて「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」(以下、連絡協議会)が発足致しました。「英語4技能資格・検定試験懇談会」は、連絡協議会に参加する6つの試験運営団体が集まり、教育関係者、受験者、保護者等に、ポータルサイトの運営や指針作り等を通して、適正かつ包括的な英語4技能試験の内容・レベル・活用事例等の情報提供を行うことを目的とした懇談会です。参加団体(50音順):グローバル・コミュニケーション&テスティングケンブリッジ大学英語検定機構国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部、一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)、公益財団法人 日本英語検定協会、株式会社 ベネッセコーポレーション
  3. 大学入試新テスト、認定した民間試験を全国の公立高校で一斉実施か (fourskills.jp 2017.06.22)
  4. 文部科学省英語教育改革PM葛城崇が語る、高大接続最終報告に託した5つの願い (fourskills.jp 2016.03.31)
  5. 安河内哲也が語る、2020年4技能入試で日本人の英語学習は激変する! (fourskills.jp 2015.09.07)
  6. 資料1 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会の設置について (文部科学省 平成 29年 9月 7日) 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会委員 名簿【50音順】

青山 智恵   ケンブリッジ大学英語検定機構 試験開発部門 日本統括マネージャー
阿部 恵    独立行政法人国立高等専門学校機構 八戸工業高等専門学校総合科学教育科教授
石鍋 浩    港区立御成門中学校校長
圓月 勝博   同志社大学副学長・文学部教授、日本私立大学団体連合会(一般社団法人日本私立大学連盟教育研究委員会委員)
奥田 吾朗   大阪国際大学短期大学部理事長、日本私立短期大学協会副会長
尾関 直子   明治大学国際日本学部教授、大学英語教育学会副会長
川越 豊彦   荒川区立尾久八幡中学校校長、全日本中学校長会総務副部長
川嶋 太津夫  大阪大学高等教育・入試研究開発センター教授(センター長)、一般社団法人国立大学協会入試委員会専門委員
小林 真記   神田外語大学准教授、日本私立大学団体連合会(日本私立大学協会)
塩崎 修健   公益財団法人日本英語検定協会教育事業部部長
柴田 洋三郎  公立大学法人福岡県立大学学長、一般社団法人公立大学協会副会長
鈴木 厚人   公立大学法人岩手県立大学盛岡短期大学部学長、全国公立短期大学協会
田代 桂子   株式会社大和証券グループ本社 取締役兼専務執行役、公益社団法人経済同友会 教育問題委員会委員
多田 幸雄   株式会社双日総合研究所相談役、長崎大学経済学部客員教授
田原 正夫   公立大学法人首都大学東京 東京都立産業技術高等専門学校校長、全国公立高等専門学校協会副会長
根本 斉    国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部事業統括本部長
長谷川 知子  一般社団法人日本経済団体連合会教育・CSR本部長
平方 邦行   工学院大学附属中学校・高等学校校長、日本私立中学高等学校連合会常任理事
松本 茂    立教大学グローバル教育センター長
三橋 峰夫   一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)R&D室室長
宮本 久也   東京都立西高等学校校長、全国高等学校長協会会長
村田 圭治   近畿大学工業高等専門学校校長、日本私立高等専門学校協会理事
安河内 哲也  一般財団法人実用英語推進機構代表理事
山﨑 昌樹   株式会社ベネッセホールディングス取締役・株式会社ベネッセコーポレーション副社長
山本 廣基   独立行政法人大学入試センター理事長
吉田 研作   上智大学言語教育研究センター教授

大学入学センター試験は廃止、大学入学試験制度を抜本的に改革

文部科学省の中央教育審議会は、平成26年12月22日に「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜 の一体的改革について」という答申を取りまとめました。、現行の大学入試センター試験を廃止して、新たな試験制度を導入するなど非常に大きな転換を図ろう とするものです。

教育改革を行う場合、そもそもどのような人材を育てたいのかを明確にする必要があります。

高等学校教育、大学教育を通じて育むべき「生きる力」を、それを構成する「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」それぞれについて捉え直すと、以下のように考えることができる。

① 豊かな人間性
高等学校教育を通じて、国家及び社会の責任ある形成者として必要な教養と行動規範
を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、国、地域
社会、国際社会等においてそれぞれの立場で主体的に活動する力を鍛錬すること。

② 健康・体力
高等学校教育を通じて、社会で自立して活動するために必要な健康・体力を養うととも
に、自己管理等の方法を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させ
るとともに、社会的役割を果たすために必要な肉体的、精神的能力を鍛錬すること。

③ 確かな学力
学力の三要素を、社会で自立して活動していくために必要な力という観点から捉え直
し、高等学校教育を通じて(ⅰ)これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体
性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと、(ⅱ)
その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成
果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと、(ⅲ)さらに
その基礎となる「知識・技能」を習得させること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、これらを総合した学力を鍛錬すること。

本答申における「学力」とは、上記の三要素から構成される「確かな学力」のことを指す。なお、特に「多様性」については、生徒、学生に、多様性を受容し尊重する力を
育んでいく必要があるが、そのためには、高等学校や大学の側において、多様な生徒、学生が多様な環境の中でともに学ぶことのできる場を用意する必要がある。
(中略)
また、グローバル化の進展の中で、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくためには、国際共通語である英語の能力を、真に使える形で身に付けることが必要であり、単に受け身で「読むこと」「聞くこと」ができるというだけではなく、積極的に英語の技能を活用し、主体的に考えを表現することができるよう、「書くこと」「話すこと」も含めた四技能を総合的に育成・評価することが重要である。また、英語のみならず、我が国の伝統文化に関する深い理解、異文化への理解や躊躇交流する態度などが求められることにも留意が必要である。(答申6-7ページ)

ここで示された人間像はまさに科学者になるために必要なものです。現行の高校教育、大学入試、大学教育をくぐってきた研究者は、非常に恵まれない環境で育ってきたということでしょうか?

現行の高校教育、大学教育、大学入試制度の何が問題なのでしょうか?一口に高校、大学、と言っても生徒や学生の学力には非常に大きな幅があるため、答申では「選抜性が高い大学」と「選抜性が中程度の大学」といった表現を用いて、個々のケースを分析しています。

学校の教育方針が選抜性の高い大学への入学者数を競うことに偏っている場合には、高等学校教育が、受験のための教育や学校内に閉じられた同質性の高い教育に終始することになり、多様な個性の伸長や幅広い視野の獲得といった、多様性の観点からは不十分なものとなりがちである。こうした教育では、大学入試に必要な知識・技能やそれらを与えられた課題に当てはめて活用する力は向上させられたとしても、自ら課題を発見し解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力や、主体性を持って、多様な人々と協働しながら学んだ経験を生徒に持たせることはほとんどできない。そうした生徒がそのまま選抜性の高い大学に入学した場合、一定の知的な能力を持っていたとしても、主体性を持って他者を説得し、多様な人々と協働して新しいことをゼロから立ち上げることのできる、社会の現場を先導するイノベーションの力を、大学において身に付けることは難しい。(答申4ページ)

ペーパーテストで測れるのが人間の能力のごくごく一部であることは間違いないでしょう。

大 学入学者選抜については、前述のように、知識の記憶力などの測定しやすい一部の能力や、選抜の一時点で有している能力の評価に留まっていたり、丁寧な評価 よりも学生確保が優先されるなど、高等学校教育で培ってきた力や、これからの大学教育で学ぶために必要な力を評価するものとなっていない。そうした背景に は、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等の多様な背景を持つ高校生一人ひとりが、高等学校までに積み上げてきた多様な経験や能力 を度外視し、18歳頃における一度限りの一斉受験という画一化された条件において、知識の再生を一点刻みで問う問題を用いた試験の点数による客観性の確保 を過度に重視し、そうした点数のみに依拠した選抜を行うことが「公平」であるという、従来型の「公平性」の観念が社会に根付いていることがあると考えられ る。(5ページ)

しかし大学入試に要求される公平性を考えたときに、ペーパーテストほど公平なものはありません。人間が人間を選ぶ面接試験でどれだけ公平性が確保できるのでしょうか?実は、人生における最初で最後の、全ての人にとって最も公平な機会が大学入学試験(ペーパーテスト)だったという見方もできます。

ペーパーテストは知識の記憶力を測定しているとか、受験テクニックがないとだめとかまことしやかに言われますが、それはテストそのものよりもむしろ勉強のやり方に問題があります。同じ問題を解くにしても、暗記や(ありもしない)「受験テクニック」に頼るより、その場で問題に向き合って、自分の頭で考えて解くような学習を普段から心がけたほうが楽ですし、そうしている生徒のほうが結果的に良い成績を収めるものです。

センター試験が廃止され、代わりに”「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する”(答申10ページ)新テストとして、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)が導入される予定です。大学入学者選抜では、この新テスト導入だけでなく、さらに多様な資料を選抜時の判断材料として利用することを大学に要求しています。

具体的な評価方法としては、下記②に示す「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明す る資料などを活用することが考えられる。「確かな学力」として求められる力を的確に把握するためには、こうした多元的な評価尺度が必要である。各大学はその教育方針に照らし、どのような評価方法を組み合わせて選抜を行うかを、応募条件として求める「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績の具体的提 示等を含め、アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められる。その際、英語については、高等学校教育において育成された「聞くこと」「話す こと」「読むこと」「書くこと」四技能を、大学における英語教育に引き継いで確実に伸ばしていくことができるよう、アドミッション・ポリシーにおいても四技能を総合的に評価することを示すこととし、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における英語の扱いも踏まえつつ、四技能を測定する資格・検定試験 の更なる活用を促進すべきである。(12ページ)

大学入試で面接、集団討論、プレゼンテーションの配点が高いと、おとなしい性格の人や人前で緊張しやすい人は不利になるかもしれません。

新しい大学入学希望者学力評価テスト(仮称)がどのようなものになるのか、その青写真が答申では示されています(下では一部を紹介)

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の在り方
◆ 「知識・技能」を単独で評価 するのではなく、「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」 (「思考力・判断力・表現力」)を中心に評価
◆ 「教科型」に加えて、現行の教科・科目の枠を越えた「思考力・判断力・表現力」を評価するため、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題す る。… 将来は「合教科・科目型」「総合型」のみとし、教科・科目に必要な「知識・技能」と「思考力・判断力・ 表現力」を総合的に評価することを目指す。
◆ 多肢選択方式だけではなく、記述式を導入
◆ 年複数回実施
◆ 「1点刻み」の客観性にとらわれた評価から脱し、… 段階別表示による成績提供
◆ CBT方式での実施
◆ 特に英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「読む」「聞く」だけではなく 「書く」「話す」も含めた英語の能力をバランスよく評価
◆ 選抜性の高い大学が入学者選抜の評価の一部として十分活用できる水準の、高難度の出題を含む
◆ 社会人等を含め誰でも受検可能
◆ 入学希望者の経済的負担や受検場所、障害者の受検方法を考慮

 センター試験では、そもそも思考力や論理的な判断力などを問うために十分練られた問題が出題されてきたわけで、思考力を判断するのはセンター試験ではできないので新テストを作るといわんばかりの表現は、ミスリーディングです。解答者によく考えさせるような良問を出す大学もあれば、問題のための問題でしかな くて解くのも時間の無駄という問題を出している大学もあります。そういう中にあって、センター試験は良問が揃っているといえるでしょう。これをわざわざ廃止して別のテストを導入する必要性が明確ではありません。

大学がペーパーテスト以外の多様な尺度で受験生を選抜するにしても、それが学力の低下と引き換えになっては困ります。少なくとも、将来研究職や技術職に就く人には一定の水準の学力が要求されます。また、大学入学試験で有利になるからという理由でボランティアをやったり、何か一芸に秀でるように習い事をしたりするのは全くお勧めできないことですが、入試改革にあわせてそのような風潮が今後広まってしまうかもしれません。

多様な生徒を受け入れるためのAO入試のはずが、「AO入試突破専用のワンパターンな思考法」しか持たない学生ばかり集まってしまったら本末転倒です。「ペーパーテストでしか能力を発揮できない頭の良さ」を持った学生ばかりという議論と大差なくなります。

参考

  1. 新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)(文部科学省 中央教育審議会 平成26年12月22日)
  2. 【アンケート結果】センター試験廃止に賛成or反対? (教員STATION 2014/02/21):”在学中に複数回の試験を行うことで、生徒が部活動などに集中することができなくなり、受験勉強ばかりの学校生活になってしまう恐れはあるという意見が出ています。”
  3. 「万能細胞」小保方晴子さんは早稲田大理工卒 出身者は「私大初のノーベル賞だ」「慶応に一矢報いた」大はしゃぎ(JCASTニュース 2014/1/30):”多様な人材を入学させる機会として各大学が採用している「AO入試」だが、一芸に秀でてはいるものの授業についていく学力のない人物が「もぐりこむ」仕組みだとして批判的な見方もある。”
  4. 受験を知らない子供たち、懸念は学力低下より突破力 (東洋経済2011年01月26日):”基礎学力の低下も確かにあるが、企業の採用担当者が首をかしげるのは、コミュニケーション能力や競争心のなさ.”
  5. 大学にとって必要悪以下のAO・一芸入試学力のない学生を大学に入れることの危険性を認知せよ (JBPRESS 2014.12.05):”研究倫理崩壊事件の類はすべからく、そういう基礎能力のない人、本来研究職にいてはいけない種類の人間、独自の開発能力に欠ける人材が、何か作ったようなポーズを取るウソの上に発生していることに、注意しなければなりません。”
  6. 日本のAO入試はなぜ上手くいかないのか(人類応援ブログ 2014年11月25日):”しかし問題なのは、この「履歴書のキラキラ」がお金で買えてしまう構造を持っていることです。”
  7. AO義塾:”AO入試において、慶應合格者数 塾・予備校No.1へ!(当塾調べ、2013年11月現在)”
  8. リメディアル教育(高等学校課程の補修教育に限る)について アンケート調査回答票(内閣府)   1.北海道大学~23.東京外国語大学  24.東京学芸大学~45.愛知教育大学 46.名古屋工業大学~68.香川大学  69.愛媛大学~86.政策研究大学院大学
  9. 名古屋大学 教養教育院 e-learning サイト 名大生によるe学習コミュニティ形成
  10. 東北大学学習支援センター SLA 主に学部3年生~院生の学生がSLAとして、全学教育を受ける学部1・2年生の学習サポートを行っています。
  11. 鹿児島大学 H26年度新入生対象 補習教育のお知らせ 高等学校までの学習内容を復習し、大学の授業にスムーズに移行していただくために、補習教育を実施しています。
  12. 中堅文科系大学におけるリメディアル科目はどうあるべきか 桃山学院大学総合研究所紀要 第35巻第3号 (PDF)
  13. 約半数の大学で高校の補習授業 「達成度テスト」導入で揺れる大学の現状を専門家が解説(ベネッセ2013/12/26):”国立でも82大学中57大学で行われているのですから、既に珍しいことではなくなっています。”
  14. 「学力低下」に悩む大学たち 高校レベルの補習4割 (JCASTニュース2010/6/2):”大学が本当に問題としているのは、いわゆる『学力』がないということではありません。今の学生が受動的で、自分で考える姿勢がないということが真の問題です。”
  15. ノーベル賞根岸氏「受験地獄万歳」にネットも沈黙 (WEB R25 2010.10.14):”「私は日本の(悪名高い)受験地獄の支持者だ」→「高度な研究になればなるほど、基本が大事になるから。それをたたきこんでくれたのが、日本の教育だった」”