2020年度から大学入試制度が激変します。知識偏重の入試から、思考力や判断力を問う入試へと変革させることが狙いだそうですが、出題内容だけでなく受験の形式も大きく変わるため、過渡期に大学を受験する生徒にとっては、試験準備のための精神的な負担が非常に大きくなりそうです。1日も早く、最終的な試験の形式が確定してほしいものです。
これまでの「大学入試センター試験」は、2020年度からは「大学入学共通テスト」に取って代わられます。大学入学共通テストの英語は、2024年度からは民間の資格・検定試験が使われます。2020~2023年度の過渡期は、民間の資格・検定試験と現行のマーク式が併用され、大学がどちらかを選べるというものでした。しかしながら、今回のニュースによれば、2017年10月12日に行われた国立大学協会の理事会で、全国立大が足並みをそろえて両試験を課すべきだという結論になったようです。
出題傾向の異なる2つの試験の受験を課するとなると、2020~2023年度の受験生には大きな負担を強いることになりそうです。
共通テストの英語に、民間の試験を活用するとして8つほど候補が挙げられていますが、実際にどの試験が採用されるのかすらまだ明らかになっていません。
英語はコミュニケーション能力を重視し、「読む・聞く」の2技能だけを測っていた試験を廃止し、4技能を測るため英検やTOEICなどの民間試験を使うことになる。どの団体の試験を認めるかは、今年度中にも決める。(朝日新聞DIGITAL 2017年7月10日23時27分 センター試験後継テストの英語、完全民間移行は24年度 )
実施に当たっては、英検やTOEICなどの資格・検定試験のうち、必要な水準や要件を満たす試験をセンターが認定。(時事ドットコムニュース 2017/07/10-15:04民間試験・マーク式併存=センター後継、英語で4年間-文科省)
大学入試センター試験に代えて2020年度に始まる「大学入学共通テスト」の英語について、国立大学協会の理事会は12日、従来型のマークシート式と実用英語技能検定(英検)などの民間試験の両方を全国立大82校の受験生に課す方針を決めた。(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2017年10月13日 06時00分国立大英語「マーク式と民間」必須…新大学入試 )
共通テストの英語は24年度から民間の資格・検定試験に全面移行する。実用英語技能検定(英検)やTOEICなどの採用が検討されている。(日本経済新聞 2017/10/13 11:07マーク式と民間試験が必須に 国立大入試の英語 20~23年度 )
共通テストの英語は4技能(読む・聞く・話す・書く)を総合的に測るため、英検やTOEFLなどの民間試験を活用し、高校3年の4~12月に受ける。(2017年10月13日 23時07分 毎日新聞/ @niftyニュース新テスト:国立大、英語2試験「負担大」 高校側の反発も )
英語については、これまでの「読む・聞く」に加え「話す・書く」をあわせた4技能を評価することを目的とし、実用英語技能検定(英検)やTOEIC、TOEFLなど英語能力をはかる10種類の民間試験の中から、大学入試センターが「認定試験」として選定。(日本経済新聞 第321回 2017/5/20 6:00 大学入試、民間試験活用に賛成ですか )
文科省のウェブサイトを見ると、平成29年度英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第1回)配付資料 の中で、主な英語の資格・検定試験として、英検など以下の8つが紹介されています。
- Cambridge English(ケンブリッジ大学英語検定機構)
- 英検(公益財団法人日本英語検定協会)
- GTEC(ベネッセコーポレーション Berlitz International ELS Educational Services ※CBT:一般財団法人進学基準研究機構(CEES)と共催)
- IELTS(ブリティッシュ・カウンシル 公益財団法人日本英語検定協会等)
- TEAP /TEAPCBT (公益財団法人日本英語検定協会)
- TOEFL iBT (テスト作成: ETS 日本事務局: 国際教育交換協議会(CIEE))
- TOEIC L&R (テスト作成: ETS 日本事務局: 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC))
- TOEIC S&W (テスト作成: ETS 日本事務局: 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC))
TOEICは内容がビジネスマン向けで、アカデミックな内容に乏しいため、高校生が学校で学ぶべき内容とはとても言い難く、大学入試のための共通テストには不向きでしょう。TOEFLは海外の大学に進学するときに外国人に課せられるテストで、そもそも大学で学ぶのに必要な英語力を問うものですから、共通テストにふさわしい性格を備えています。
参考
- 平成29年度英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(文部科学省) 議事録(平成29年9月7日(木曜日)13時~15時)
- 英語4技能試験情報サイト 資格・検定試験 懇談会:”平成26年12月、文部科学省にて「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」(以下、連絡協議会)が発足致しました。「英語4技能資格・検定試験懇談会」は、連絡協議会に参加する6つの試験運営団体が集まり、教育関係者、受験者、保護者等に、ポータルサイトの運営や指針作り等を通して、適正かつ包括的な英語4技能試験の内容・レベル・活用事例等の情報提供を行うことを目的とした懇談会です。参加団体(50音順):グローバル・コミュニケーション&テスティング、ケンブリッジ大学英語検定機構、国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部、一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)、公益財団法人 日本英語検定協会、株式会社 ベネッセコーポレーション”
- 大学入試新テスト、認定した民間試験を全国の公立高校で一斉実施か (fourskills.jp 2017.06.22)
- 文部科学省英語教育改革PM葛城崇が語る、高大接続最終報告に託した5つの願い (fourskills.jp 2016.03.31)
- 安河内哲也が語る、2020年4技能入試で日本人の英語学習は激変する! (fourskills.jp 2015.09.07)
- 資料1 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会の設置について (文部科学省 平成 29年 9月 7日) 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会委員 名簿【50音順】
青山 智恵 ケンブリッジ大学英語検定機構 試験開発部門 日本統括マネージャー
阿部 恵 独立行政法人国立高等専門学校機構 八戸工業高等専門学校総合科学教育科教授
石鍋 浩 港区立御成門中学校校長
圓月 勝博 同志社大学副学長・文学部教授、日本私立大学団体連合会(一般社団法人日本私立大学連盟教育研究委員会委員)
奥田 吾朗 大阪国際大学短期大学部理事長、日本私立短期大学協会副会長
尾関 直子 明治大学国際日本学部教授、大学英語教育学会副会長
川越 豊彦 荒川区立尾久八幡中学校校長、全日本中学校長会総務副部長
川嶋 太津夫 大阪大学高等教育・入試研究開発センター教授(センター長)、一般社団法人国立大学協会入試委員会専門委員
小林 真記 神田外語大学准教授、日本私立大学団体連合会(日本私立大学協会)
塩崎 修健 公益財団法人日本英語検定協会教育事業部部長
柴田 洋三郎 公立大学法人福岡県立大学学長、一般社団法人公立大学協会副会長
鈴木 厚人 公立大学法人岩手県立大学盛岡短期大学部学長、全国公立短期大学協会
田代 桂子 株式会社大和証券グループ本社 取締役兼専務執行役、公益社団法人経済同友会 教育問題委員会委員
多田 幸雄 株式会社双日総合研究所相談役、長崎大学経済学部客員教授
田原 正夫 公立大学法人首都大学東京 東京都立産業技術高等専門学校校長、全国公立高等専門学校協会副会長
根本 斉 国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部事業統括本部長
長谷川 知子 一般社団法人日本経済団体連合会教育・CSR本部長
平方 邦行 工学院大学附属中学校・高等学校校長、日本私立中学高等学校連合会常任理事
松本 茂 立教大学グローバル教育センター長
三橋 峰夫 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)R&D室室長
宮本 久也 東京都立西高等学校校長、全国高等学校長協会会長
村田 圭治 近畿大学工業高等専門学校校長、日本私立高等専門学校協会理事
安河内 哲也 一般財団法人実用英語推進機構代表理事
山﨑 昌樹 株式会社ベネッセホールディングス取締役・株式会社ベネッセコーポレーション副社長
山本 廣基 独立行政法人大学入試センター理事長
吉田 研作 上智大学言語教育研究センター教授