論文を出す力 ~ リジェクトをどう受け止めるか

研究者には論文を書く能力が必要ですが、それだけでなく、論文を世に出す(=アクセプトに漕ぎ着ける)力も必要です。両者は重なる部分もありますが、質的に全く異なります。論文を書くうえで重要なのは知性ですが、論文を出すときに重要なのはリジェクトされたときの落胆、怒り、失望、疑念などの感情をコントロールする力、揺るぎない信念、状況を見極める客観性や判断力です。 リジェクトに対する心構えが出来ているだけで、受けるダメージ及び回復力が変わってくると思いますので、これから論文を出す人の参考になりそうな論説をいくつか紹介します。 一度リジェクトされただけであきらめてしまうのは、マラソンを走りながら、ゴールのわずか数センチ手前であきらめてしまうようなものだ。もし著者が掲載に強い意志を持っているならば、次に取るべきステップは、リジェクトのレターにあるコメントすべてを正確に理解することである。 (原稿がリジェクトされた時の対処法 根拠と経験に基づく見解 Karen L. Woolley, PhD; and J. Patrick Barron, BA. CHEST 2009; 135:573-577. Ronbun.jp 大鵬薬品工業株式会社)   論文を書き上げることとそれをアクセプトさせることには、恋愛と結婚ほどの違いがある。論文を書き続ける限りリジェクトとのつきあいは切れないと 思った方がよい。私の場合、二本目の論文がリジェクトされて、それはそのままお蔵入りとなった。思えばその時、それから合計 33 回もリジェクトされるようになるとはちょっと想像していなかった。最初のリジェクトの時には、自分の人格が否定されたようでずいぶん落ち込んだ。もちろん 今でも、リジェクトされたときのショックは大きい(とくに、一週間に二度リジェクトの手紙をもらったときなど)。しかしものは考えようで、リジェクトされたとは思わないようにしている。つまり、どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うことである。たいていの場合、その論文のどこがいけないのか指摘 が付いてくる。それらを参考にして論文を改訂し、別の雑誌に投稿すればいいだけの話だ。(これから論文を書く若者のために 改訂第二版 1999.1.21. ver. 2.1 酒井 聡樹 東北大学大学院理学研究科生物学教室)   研究者、とくにチームのリーダーは、人から学ぶ機会が少なくなるものである。レビューアーのコメントの中には、書いた本人が気づかなかったような議論がなされていることがある。そして、論理の展開に落とし穴があることが指摘されている。そのような議論をクリアするために、追加実験を行い、実験結果を見直すと、新しい発見が生まれてきたことを経験している。また、確実な論拠を得て、論理の展開がしっかりしたものとなり、論文の価値が高まっていくのを実感することがある。レビューアーの中には、ここまで結果を出せば論文になるよと、到達目標を提示してくるケースがある。このような到達目標の多くは、研究者にとり、難度の高いものである場合が多い。「それができれば苦労しない」というわけである。しかし、ここで一念奮起をしてみると、目標を絞っているものなので、意外と短期間にブレークスルーしてしまうことがある。そうなるとレビューアーさまさまである。このような「良い」レビューアーは、まさに教師である。リジェクトという高い授業料を払う価値があるものでもある。(査読に関する理想と現実)   Lynn Margulis (1938-2011) Her ground breaking endosymbiotic theory paper, which suggested that eukaryotic organelles have evolved from the symbiosis between […]

プロフェッショナルな科学研究者になるためのキャリア形成ガイド:「10個のシンプルな原則」集

Ten Simple Rules(10のシンプルな原則)は、プロの研究者を目指す人が遭遇する数々のチャレンジを乗り越えるためのコツを教えるガイド集です。PLOS Computational Biology誌のヒット企画。 博士号をとるために 研究者になるためには、大学院を受験して研究室に所属し、数年間、研究のトレーニングを受けることになります。指導教官とは師弟関係としての付き合いが一生続くことになるので、研究室選び、指導教官選びは親を選ぶのと同じくらいに重要です。研究者としての運命を決定付けてしまうラボ選びで失敗しない方法は?理想的な大学院生のあり方は? Ten Simple Rules for Graduate Students 「大学院生のための10個のシンプルな原則」 Ten Simple Rules for Finishing Your PhD 「学位取得のための10個のシンプルな原則」 学会発表に必要なスキル 研究者にとって、発表能力を磨くことはとても大切。良いポスターの作り方や学会での口演をうまくこなすコツは? Ten Simple Rules for a Good Poster Presentation 「ポスター発表を成功させるための10個のシンプルな原則」 Ten Simple Rules for Making Good Oral Presentations 「学会発表を成功させるための10個のシンプルな原則」 論文の書き方と通し方 論文はどうやって書けばいいのでしょうか?研究者として生きていくための最重要スキルにもかかわらず、誰もちゃんと教えてくれないという落とし穴にはまらないように。 Ten Simple Rules for Writing Research Papers 「研究論文を書くための10個のシンプルな原則」 Ten Simple Rules for Better Figures 「論文の図作製のための10個のシンプルな原則」 Ten Simple […]

投稿した論文がリジェクトされてもへこたれないために~論文を出すための10個のシンプルな原則

あなたがこの世を去って長い年月が経ったとき、あなたの科学的遺産は、主として、あなたがこの世に書き残した論文とそれらの論文が放つインパクトです。(When you are long gone, your scientific legacy is, in large part, the literature you left behind and the impact it represents.) - フィリップ・E・ボーン データを取り終え、論文を書き上げ、学術雑誌に投稿してアクセプト(受理)されてようやく仕事が一つ完結します。しかし、投稿してすぐアクセプトされることなど滅多になく、多くの場合最初にリジェクト(却下)を食らいます。何年間も心血を注いだ仕事が却下されれば、誰でもへこむもの。そこからアクセプトに持っていくところで、研究者としての力量やタフさが問われます。 では、この「論文を出す力」はどうすれば身につくのでしょうか? 若い研究者向けに行われた講演の内容に加筆してまとめた、「論文を出すためのシンプルな10原則」という記事が、以前、PLoS Computational Biology誌に掲載されました。一番大事なことは、自分の仕事をどれだけ客観的に見ることができるか。その記事Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057を以下に訳出しました。 ーーーー 論文を出すためのシンプルな10原則 フィリップ・E・ボーン 原則1:たくさんの論文を読んで、他人の優れた仕事やダメな仕事から学びなさい 批評家になるのに早すぎるということはありません。ジャーナルクラブは、グループで論文の批評を行うものですが、そのような類の対話をする素晴らしい機会 です。毎日少なくとも論文2報を詳細に読み(あなたの専門分野だけでなく)、それらの論文のクオリティについて考えることも、役に立ちます。多読のもう一つの大きな効用ーそれは自分自身の仕事をよりよく客観視するのに役立つことです。コンピューターの画面の前やラボの実験ベンチで毎晩夜遅くまで過 ごしていると、自分の仕事が画期的なものだとあまりにも簡単に思い込んでしまいます。そうではない可能性がかなり高いのですが、あなたのメン ターも同じ罠にはまってしまう可能性があるため、原則2があります。 原則2:あなたが自分の仕事を客観的に捉えられるようになればなるほど、あなたの仕事は最終的により良いものになる。 悲しいかな、自分自身の仕事を客観的に捉えることができない科学者もいます。そういう人は決して一流の科学者にはなれないのです。エディター(編集者)やレビューアー(査読者)らの客観的な物の見方を早い時期に学びなさい。 原則3:良いエディターやレビューアーはあなたの仕事を客観的にみてくれます。 エディトリアルボード(編集委員会)のクオリティが、レビューの過程がどのようなものかを示す最初のヒントになります。自分が論文発表したいと思っているジャーナルの発行人欄を見てごらんなさい。一流のエディターは、レビューが一流であることを要求しそれを実現します。サブミット(投稿)する前に、エネルギーを注ぎ込んで原稿のクオリティを上げましょう。理想的なことを言えば、レビューはあなたの論文のクオリティを上げてくれるものなのです。しかし、もし根本的な欠陥があれば、レビューアーらはそんなアドバイスをしてくれないでしょう。 原則4:英語を使いこなして書くということができていないのなら、早めにレッスンを受けなさい。後々、非常に役に立ちます。 これは文法だけの問題ではなく、もっと重要なこととして、理解の問題です。優れた論文というものは、説明が巧みなので、全くの部外者にも複雑なア […]

ポール.J・シルヴィア博士の「生活を犠牲にせず論文をたくさん書く方法」

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。 たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより) この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。 ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。 論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。 論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。 それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。 論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。 How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒) Paul […]