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2018年ノーベル物理学賞は光ピンセット(Arthur Ashkin)と高出力超短パルスレーザー(Gérard Mourou , Donna Strickland)の開発に

  2018/10/02    ノーベル賞

2018年ノーベル物理学賞は光ピンセットを可能にしたArthur Ashkin博士の研究(2分の1)と手術用レーザーなどにも用いられている高出力超短パルスレーザーを実現したGérard Mourou博士(4分の1)とDonna Strickland博士(4分の1)の研究に対して与えられました。 科学未来館の科学コミュニケーターによる予想&解説 【物理学賞】ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館   2018年ノーベル物理学賞受賞者発表の瞬間 Announcement of the Nobel Prize in Physics 2018

本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】

  2018/10/02    ノーベル賞

2018年10月1日18:30(日本時間)のノーベル生理学医学賞受賞者発表を受けて19:20~20:20に京都大学で開催された本庶佑博士の受賞記者会見ですが、研究者を志す人にとって非常に示唆に富む内容でした。 記者会見はニコ生で放送されましたが、率直な受け答えにあらわれる本庶佑博士の人柄に感銘を受けたニコ生視聴者も多かったことが、画面をリアルタイムで流れる多数のコメントからわかります。 【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学特別教授 記者会見 生中継   【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見 記者会見日時:2018年10月1日19:20~20:20 ノーベル医学生理学賞に京大・本庶氏 午後7時20分から会見(2018年10月1日)(THE PAGE) 以下、YOUTUBE(THE PAGE)の動画の書き起こしです。 * 質問者はマイク不使用だったため記者の質問はあまり聞き取れていません。太字強調部分は当サイトの主観によります。 (06:06~)この度はノーベル医学生理学賞、いただくことになりまして大変名誉なことだと喜んでおります。これはひとえに、長いこと苦労してきました共同研究者、学生諸君、また、さまざまな形で応援して下さった方々、また、長い間支えてくれました家族、本当に言い尽くせない多くの人に感謝いたしております。1992年のPD-1の発見とそれに続く極めて基礎的な研究が、新しいがん免疫療法として臨床に応用され、そして、たまにではありますが、この治療法によって重い病気から回復して元気になった、あなたのおかげだと言われる時があると、本当に私としては自分の研究がほんとに意味があったということを実感し何よりも嬉しく思っております。そのうえにこのような賞をいただき大変、私は幸運な人間だというふうに思っております。今後この免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、一層、私自身ももうしばらく研究を続けたいと思いますし、世界中の多くの研究者がそういう目標に向かって努力を重ねておりますので、この治療法がさらに発展するようになると期待しております。また、今回の基礎的な研究から臨床につながるような発展ということで授賞できたことによりまして、基礎医学分野の発展がいっそう加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気付けるということになれば私としてはまさに望外の喜びでございます。 (質疑応答 Q&A 10:05~) ノーベル賞受賞の吉報を受けたときの状況 Q:受賞の連絡とそのときの気持ちを教えてください。 A:(10:21~)確か5時前後だったかと思いますけども。電話でノーベル財団の私の知っている先生から電話がありました。それはちょっと突然でしたので大変驚きました。ちょうと私の部屋で若い人たちと論文の構成について議論している時でしたので、まさに思いがけない電話でありました。勿論大変嬉しく思いましたしたけども、また、大変驚きました。 A(11:18)その時の学生さんたちからはどういった反応がありましたでしょうか? Q(11:23)そのうちの1人は後で直接話を聞ける茶本 健司(ちゃもと けんじ)君という、准教授をしてる人で、もうひとりはポスドクの人でしたけども、二人とも大変驚いてやや興奮している様子でした。だから、茶本先生に直接聞いていただいたほうがわかると思います。   免疫療法に関して A(11:55) がん免疫療法についてですが、今後どのような治療法として発展させていきたいとお考えでしょうか? Q:12:04 この治療は例え話としては感染症におけるペニシリンというふうな段階でありますから、ますます、これが、効果が広い人に及び、また、効かない人がなぜ効かないかといった研究が必要です。また、そういうことが、世界中の人がやっていますから、いずれは解決されて、感染症がほぼ大きな脅威でなくなったと同しような日が、遅くとも今世紀中には訪れるというふうに思っております。 Q(12:57 NHK)受賞されて受賞の報告というのは誰かに伝えましたでしょうか? A(13:09)もちろんこれは家族、それから教室関係の人、等々には連絡を致しました。 Q(13:23) どのようなお言葉で報告をされたんでしょうか?また、どのようなお返事があったのでしょうか? A(13:25) たくさんの人にね、いろんなその、相手によって報告の仕方は違いますけども、思いがけないことでしたので、そういう趣旨の話を致しました。 Q(13:45) ご家族からはどのようなお返事があったのでしょうか? A(13:48) 基本的に、おめでとう、うれしいという話です。   研究の心がけ Q(13:58) あと一点、ご自身で研究で心がけていること、また、モットーなどはありますでしょうか? A(14:01)研究に関しては、わたし自身はですね、研究ってのはやっぱり自分に何か知りたいという好奇心があると。それから、もうひとつは、簡単に信じない。だから、よくマスコミの人は、ネイチャー、サイエンスに出てるからどうだ、という話をされるけども、僕はいつも、ネイチャー、サイエンスに出てるものの9割はウソで、10年経ったら、まあ、残って1割だというふうに言ってますし、だいたいそうだと思ってますから。まず、論文とか書いてあることを信じない、自分の目で、確信ができるまでやる、それが僕のサイエンスに対する基本的なやりかた、つまり、自分の頭で考えて納得できるまでやるということです。 Q(15:10) それが受賞に結びついたと考えておられる? A(15:13) それはねぇ、賞というのは人が決めることで、それは、賞を出すところによっては考え方がいろいろ違うし、一言でいうとねわたしは幸運な人間で。まずPD-1を見つけたときも、これガンになるとは思えなかったし。それを研究していく過程で、近くに、今ここでおられる湊先生のようながん免疫の専門家がいて、私のような免疫学も素人、がんも素人という人間を非常に正しい方向へ導いてい頂いた、いうふうなこともあり、それ以外にもたくさんの幸運があってこういう受賞につながったと思ってます。 確信の芽生え …

2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とJames Allison博士が受賞

  2018/10/01    がん, ノーベル賞, 免疫学, 医学

2018年ノーベル生理学医学賞が日本時間2018年18時30分に発表されました。 2018年ノーベル生理学医学賞発表の瞬間 Announcement of the Nobel Prize in Physiology or Medicine 2018   免疫制御分子の発見とがん治療への応用の研究に関して、本庶佑博士とジェームズ・P・アリソン(James Patrick Allison)博士が共同受賞しました。 【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見 【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見 生中継(ニコニコ生放送)(20:20終了) ノーベル医学生理学賞に京大・本庶氏 午後7時20分から会見(2018年10月1日) (06:06~)この度はノーベル医学生理学賞を頂くことになりまして大変名誉なことだと喜んでおります。これはひとえに、長いこと苦労してきました共同研究者、学生諸君、また、さまざまな形で応援して下さった方々、また、長い間支えてくれました家族、ほんとに言い尽くせない多くの人に感謝いたしております。1992年のPD-1の発見とそれに続く極めて基礎的な研究が、新しいがん免疫療法として臨床に応用され、そして、たまにではありますが、この治療法によって重い病気から回復して元気になった、あなたのおかげだと言われる時があると、本当に私としては自分の研究がほんとに意味があったということを実感し何よりもうれしく思っております。そのうえにこのような賞を頂き大変、私は幸運な人間だというふうに思っております。今後この免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、一層、私自身ももうしばらく研究を続けたいと思いますし、世界中の多くの研究者がそういう目標に向かって努力を重ねておりますので、この治療法がさらに発展するようになると期待しております。また、今回の基礎的な研究から臨床につながるような発展ということで授賞できたことによりまして、基礎医学分野の発展がいっそう加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気付けるということになればわたしとしてはまさに望外の喜びでございます。 (質疑応答 10:05~) 本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】  報道 <ノーベル賞>医学生理学賞に 本庶佑氏 京都大名誉教授   2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とジェームズ・P・アリソン博士 BREAKING NEWS The 2018 #NobelPrize in Physiology …

オプトジェネティクス(Optogenetics 光遺伝学)研究の歴史 

オプトジェネティクス(光遺伝学)は、光照射によってイオン透過性が制御されるチャネルやポンプの遺伝子を神経細胞に発現させて、光によって神経活動を亢進させたり抑制させたりする技術です。特定の神経細胞だけを特定のタイミングで活動させたり抑制することができるため、脳の働く仕組みを理解するのに役立ちます。また、非侵襲的な刺激方法がどの程度可能なのかがはっきりしませんが、精神疾患の治療に役立てたいという期待も存在します。   ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士 オプトジェネティクスで使われるツールを最初に開発したのは、ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士の研究室でした。 Peter Hegemann | 2016 Massry Prize Lecture Harz & Hegemann 1991 Nature Nagel et al., 2002 Nagel et al., 2003 Kato et al., 2012 Wieteck et al., 2014 Science with M. Elstner Wietek et …

ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の原理と研究の歴史をおさらい

ゲノム編集技術の革命的なツールであるCRISPR/Cas9(くりすぱー きゃすないん)ですが、もとはといえば、自然界においてバクテリアがウイルスから身を守るために備えているシステムです。2012年にこれがゲノム編集のツールとして利用できることが示され、わずか数年の間に、この技術を使わないラボがあるのか?というくらいにまで、研究の世界の隅々にまで浸透しました。 CRISPR技術の説明 適度な詳しさで、CRISPRをわかりやすく簡潔に説明した動画。 What is CRISPR? 総説 ゲノムから見た最近の進化ーCRISPによる生存戦略ー 中川一路 Dental Medicine Research 33(3):236-241. (2013). PDFリンク 図1(A)CRISPRによる外来性因子の取り込みの機構。(2)CRISPRによる外来性因子の認識と排除 CRISPRの発見と応用技術の進展のタイムライン CRISPR/Casが働く仕組みの解明には多くの研究者が関与しており、メジャーな発見だけでも論文が多数になるため、時系列にまとめたサイトを紹介しておきます。 CRISPR TIMELINE (BROAD INSTITUTE) CRISPR Timeline (CRIPR Update)   CRISPRの発見 大阪大学微生物病研究所の研究グループが奇妙な繰り返し配列を大腸菌のゲノムで見つけ、石野 良純(いしの よしずみ)博士らが1987年に論文報告をしたのが、CRISPRが見出された最初の例です。この配列は、後の研究者によって、CRISPR、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeatsと名付けられることになります。 Ishino Y, Shinagawa H, Makino K, Amemura …

2018年ノーベル賞受賞者発表の日時 生理学・医学賞10/1、物理学賞10/2、化学賞10/3

  2018/09/20    ノーベル賞

2018年10月3日ノーベル化学賞の発表 2018年ノーベル化学賞は酵素進化工学のFrances H. Arnold博士, ファージディスプレイのGeorge P. Smith博士、Sir Gregory P. Winter博士の3氏に 2018年10月2日ノーベル物理学賞の発表 2018年ノーベル物理学賞は光ピンセット(Arthur Ashkin)と高出力超短パルスレーザー(Gérard Mourou , Donna Strickland)の開発に 2018年10月1日ノーベル生理学医学賞の発表 2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とJames Allison博士が受賞 本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】    2018年ノーベル賞受賞者発表日時 2018年度のノーベル賞は、10月1日から8日にかけて、生理学・医学賞から順次、発表されます。生理学・医学賞10月1日、物理学賞10月2日、化学賞10月3日、平和賞10月5日、経済学賞10月8日。今年はノーベル文学賞は授与されません。 ノーベル財団が公表した日時は以下のとおりです。 PHYSIOLOGY OR MEDICINE – Monday, October 1, 11.30 a.m. at the earliest PHYSICS – …

2017年度ノーベル化学賞はクライオ電顕に

  2017/10/05    ノーベル賞

2017年度ノーベル化学賞は、クライオ電子顕微鏡法の開発に貢献したジャック・デュボシェ(Jacques Dubochet)博士(75)、ヨアヒム・フランク(Joachim Frank)博士(77)、リチャード・ヘンダーソン博士(Richard Henderson)(72)に贈られました。 クライオ電子顕微鏡法の開発の歴史や3人のノーベル賞受賞者の貢献が解説された、ノーベル財団が公表した文書。 Scientific Background on the Nobel Prize in Chemistry 2017 THE DEVELOPMENT OF CRYO-ELECTRON MICROSCOPY (PDF nobelprize.org)   クライオ電顕の現状を語るリチャード・ヘンダーソン博士。 Single-Particle Electron Microscopy – Richard Henderson (14分31秒) 5:52- 単粒子クライオ電子顕微鏡法は非常に一般的になってきています。今まで全く何も知らなかった人々にも広まっています。いまどきの状況はこんな感じです。誰かがこう言います。「自分はこのたんぱく質の構造を決めようとして10年間も試みてきたんだ。精製して、分析して、結晶化しようとして努力したが実らなかった。自分の場合、結晶化してくれないのか、あるいは、結晶化しても整列が不十分で構造が決められない。」それから、こう言うのです。「クライオ電子顕微鏡を試してみるべきかもしれないな。」 そう言って、非常に微量の試料、わずか数滴をグリッドに載せ、デュボシェ法によりブロットし、急速に凍結し、電子顕微鏡にセットし、画像を取得します。いまではそれは、新しい検出器でデジタル化されています。それから構造を計算します。そうすると数日以内にはもう構造が決まってしまうのです。他の方法を試して10年間を費やした、たんぱく質の構造がです。 (上の動画のトランスクリプト http://serious-science.org/single-particle-electron-microscopy-8637)   ノーベル賞受賞直後にインタビューに答えるヨアヒム・フランク博士。 2017 Nobel Prize in Chemistry Awarded to …

2016年ノーベル化学賞は分子マシンの合成に

  2016/10/05    ノーベル賞

2016年10月5日に、2016年度のノーベル化学賞受賞者が発表されました。受賞したのは分子マシンを設計・合成したジャン=ピエール・ソヴァージュ(Jean-Pierre Sauvage)氏、ジェームス・フレーザー・ストッダート(Sir J. Fraser Stoddart)氏、バーナード・フェリンガ(Bernard L. Feringa)氏の3人です。 1983年にソヴァージュ氏がリングがチェーンのようにつながった分子カテナン(catenane)の合成に成功。 ソヴァージュ氏のインタビュー。 1991年にストッダート氏が、リングが車軸の上を動くような分子「rotaxane 」の合成に成功。これをもとに分子リフト、分子マッスル、分子コンピュータチップなどを合成。 ストッダート氏のレクチャー。 1999年にはフェリンガ氏が分子モーターを合成しました。また、分子で「自動車」も作製しています。下の動画は、Supplementary information from the paper “Electrically driven directional motion of a four-wheeled molecule on a metal surface,” authored by Tibor Kudernac, Nopporn Ruangsupapichat, Manfred Parschau, Beatriz Maciá, Nathalie …

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2016年ノーベル物理学賞はサウレス、ハルデン、コステリッツの3氏に

  2016/10/04    ノーベル賞

2016年10月4日に2016年度のノーベル物理学賞授賞者が発表されました。授与されるのは、物性理論の研究者デビッド・J・サウレス (David J. Thouless)氏、F・ダンカン・M・ハルデン(F. Duncan M. Haldane)氏、J・マイケル・コステリッツ(J. Michael Kosterlitz)氏の3名です。 参考 Press Release: The Nobel Prize in Physics 2016 (nobbelprize.org 4 October 2016) The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the Nobel Prize in Physics 2016 with one …

2016年ノーベル医学生理学賞は大隅良典氏

  2016/10/03    ノーベル賞

2016年ノーベル医学生理学賞はオートファジー(自食作用)の分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏が単独受賞 2016年10月3日11:30(スウェーデン現地時間)(日本時間は同日18:30)に、2016年のノーベル医学生理学賞がオートファジーの分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏に授与されることが発表されました。 細胞が自分で自分のタンパク質を分解してしまう「オートファジー」と呼ばれる現象がどのような仕組みで生じるのかは長年の謎でしたが、大隅良典氏はまずオートファジーという現象が酵母においても存在することを示し、次に酵母を用いた遺伝学を駆使することでオートファジーに関与する多数の遺伝子を一気に同定し、その後はそれらの遺伝子産物がどのように協同してオートファジーを生じるのか、その分子メカニズムを明らかにしてきました。 ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が東工大で会見(2016年10月3日) THE PAGE (大隅氏の言葉 3:25~) … ノーベル賞、わたしは少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は全くわたしの意識の外にありました。わたしは自分の私的な興味に基いて、生命の基本単位である細胞がいかに動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年、いくつかの問いをしてまいりました。 わたしは人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。1988年、今から27年半ほど前に、液胞が実際に細胞の中での分解に果たす役割というものに興味を持ちまして、そういう研究を東大の教養学部の私自身たった一人の研究室に移ったときに始める機会になり、それ以降28年にわたってオートファジーという研究に携わってまいりました。 オートファジーという言葉は耳慣れない言葉かと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると自分自身のタンパク質を分解を始めます。その現象を私は光学顕微鏡で捉えることができたということが、私の研究の出発点になりました。 馬場美鈴さんと電子顕微鏡でその過程を解析することで実はそれがそれまで動物細胞で知られていたオートファジーという現象と全く同一の過程だということがわかりました。 酵母は遺伝学的な解析というのにとっても優れた生物なので早速私たちはオートファジーに必須の遺伝子を探すことを始めました。幸い、これも大学院生としてJOINした塚田美樹さんという人の努力で、割りに短時間の間でたくさんのオートファジーに必須の遺伝子をとることができました。それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象の基本的な分子装置であるということがその後のわたしたちの解析でわかることになりました。 幸いこれらの遺伝子は酵母のみならず人とか植物細胞にも広く保存されているということがわかりました。こうしてオートファジーの遺伝子が同定されたということで、これまでのオートファジーの研究は、質が大きく転換をすることになりました。その後はさまざまな細胞で、オートファジーがどのような機能をしているかということが世界じゅうのたくさんの研究者で解析をされて今日に至っております。 私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。酵母の研究がですね、そのような基礎的な研究が、今日のオートファジーの大きなきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っております。 もちろん現代生物学は一人でやりおおせるものではありません。わたしもこの間、27年間わたしの研究室で研究にたゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、それからスタッフの方々の努力の賜物だと思っております。 それから、酵母から動物細胞のオートファジーへと展開してくれました、水島昇、吉森保、両氏がいま現在動物細胞におけるオートファジーの、世界を牽引している二人とも、私は今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。 今後、オートファジーって言う、タンパク質の分解っていうのは細胞の持っているものすごく基本的な性質なので、今後益々いろいろな現象に関わってくるということが明らかになってくれるということを、私も期待をしております。 ひとつだけ強調しておきたいことは、私がこの研究を始めたときに、オートファジーが必ずがんにつながるとか、人間の寿命の問題につながるということを確信して始めたわけではありません。基礎的な研究っていうのがそういう風に展開してくもんだっていうことを是非理解をしていただければと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思います。 これまで私の研究の場を与えていただきました東京大学教養学部、理学部、基礎生物学研究所、それから東京工業大学には厚く御礼申し上げます。(-10:09) … 東京大学教養学部生物学教室(現 生物部会)で初めて独立してラボを持った頃の2つの論文が、その後の全ての研究の流れを作り出しています。まず、遺伝学的手法が使える酵母においてもオートファジー現象が存在することを見出したのが原点です。 当時、液胞の内部で、何をどのように分解しているのかについては全くの謎だった。大隅は、まずは液胞内で起こっていることを何とか顕微鏡で観察できないかと考えた。そして、あるとき、1つのアイデアが浮かんだ。酵母は栄養がなくなり飢餓状態に陥ると、細胞内部を作り変えて胞子を形成し、飢餓を乗り切る。仮に液胞が分解機能を持つとすれば、その機能が最も活発に働くのは、胞子を形成する飢餓状態のときなのではないだろうか。その状態で液胞内での分解機能を止めることができれば、何が分解されようとしているのかがわかるはずだ―。そこで、さっそく液胞内の分解酵素が欠損している酵母の変異体を取り寄せ、飢餓状態の液胞内で何が起こるかを電子顕微鏡で観察し始めた。…「数時間飢餓状態にした酵母を観察したところ、液胞内にたくさんの小さな粒々が蓄積して、それらが激しく動き回っているのが確認されました。その粒々は液胞の周囲の細胞質の成分の一部を膜構造が包み込み、それが液胞内に取り込まれて、ブラウン運動をしている様子だったのです。酵母にはタンパク質がほとんどなく粘性が低いため、ブラウン運動が起っていたのです。大変感動し、何時間もその様子を見続けましたね」と語る大隅。液胞のオートファジー機能の過程を世界で初めて肉眼で捉えた瞬間だった。(顕微鏡観察がすべての出発点  顔 東工大の研究者たち Vol.1 大隅良典) そして、オートファジー研究の大きな潮流の源となったのは、大隅博士が修士課程の学生と二人で行った研究です。まさに宝の山を掘り起こした仕事でした。 大隅博士らは、まだ他にもオートファジーに必要な遺伝子があると考えた。しかし、五〇〇〇個の変異体を検査してオートファジーに異常があったのはわずかにapg1変異体だけである。そのまま続けていては途方もない仕事になる。ここで大隅博士らは巧妙な作戦を立てた。オートファジーができないと死にやすくなるという性質に注目したのである。いきなり顕微鏡で検査をするのではなく、まず飢餓で死にやすい細胞を選ぶことにした。…その結果、最終的にapg1を含めて十四種類のオートファジー不能変異体が同定された。この膨大で精緻な研究のほとんどは、大隅博士と当時修士大学院生であった塚田美鈴氏のわずか二名によって行われた。この記念すべき研究成果は一九九三年に「FEBS Letters」という雑誌に小さな論文として発表された。…しかし、この十四種類の変異体とそれにもとづく遺伝子の発見こそが、オートファジー研究の歴史を大きく変える事件だったのである。今ではこの論文はオートファジー研究史上最も価値ある論文のひとつとして世界中が認めている。(細胞が自分を食べるオートファジーの謎 水島昇 著 PHP研究所) Key publications (Yoshinori Ohsumi The Nobel Prize in …