2016年10月5日に、2016年度のノーベル化学賞受賞者が発表されました。受賞したのは分子マシンを設計・合成したジャン=ピエール・ソヴァージュ(Jean-Pierre Sauvage)氏、ジェームス・フレーザー・ストッダート(Sir J. Fraser Stoddart)氏、バーナード・フェリンガ(Bernard L. Feringa)氏の3人です。
1983年にソヴァージュ氏がリングがチェーンのようにつながった分子カテナン(catenane)の合成に成功。
ソヴァージュ氏のインタビュー。
1991年にストッダート氏が、リングが車軸の上を動くような分子「rotaxane 」の合成に成功。これをもとに分子リフト、分子マッスル、分子コンピュータチップなどを合成。
ストッダート氏のレクチャー。
1999年にはフェリンガ氏が分子モーターを合成しました。また、分子で「自動車」も作製しています。下の動画は、Supplementary information from the paper “Electrically driven directional motion of a four-wheeled molecule on a metal surface,” authored by Tibor Kudernac, Nopporn Ruangsupapichat, Manfred Parschau, Beatriz Maciá, Nathalie Katsonis, Syuzanna R. Harutyunyan, Karl-Heinz Ernst & Ben L. Feringa, published in Nature 479: 208–211, 10 November 2011. http://dx.doi.org/10.1038/nature10587
フェリンガ氏のレクチャー。
参考
- The Nobel Prize in Chemistry 2016
- ノーベル化学賞は欧米研究者3人 分子マシン開発など (NHK NEWS WEB 10月5日 18時51分):”ことしのノーベル化学賞に、「知恵の輪」のように結びついた2つの分子などに刺激を与えると形が変わり、あたかもスイッチやモーターのように機能する「分子マシン」と呼ばれる分子の合成などに成功したフランスとアメリカ、それにオランダの3人の研究者が選ばれました。”
- ストッダート研究室ウェブサイト(米ノースウェスタン大学)論文リスト
- フェリンガ教授(蘭フローニンゲン大学) 論文リスト
- ソヴァージュ博士(仏ストラスブール大学)論文リスト(researchgate.net)
- 分子の知恵の輪(有機化学美術館):”2つの環がまるで鎖か知恵の輪のように絡み合った「カテナン」と呼ばれる分子があります(catenaはギリシャ語で「鎖」)。”
- フラフープ分子・ロタキサン(有機化学美術館):”ロタキサンは「2つの分子が、直接つながってはいないが外れもしない」という点でカテナンと共通しています。カテナンは2つの輪がからみ合っていましたが、ロタキサンは輪の中にひも状の分子が通っており、その両端に輪より大きな「ストッパー」がついているためにひもが輪から抜けないという構造です。 ”
- ナノカー2号発進!(今週の分子 Molecule of the Week (58) 有機化学美術館):”ナノプシャン、ナノカーなど興味深いナノテク世界を切り開いているTour教授の研究室から、また新作が発表されました。今回のニューモデルは、なんと光のエネルギーを受けて自走する「モーター付きナノカー」です。今回組み込まれたモーターは、オランダのFeringaらによって開発されたもので、回転軸となるのは中心にある二重結合部分です。以前述べた通り二重結合はふつう回転できないのですが、光を当てると結合の1本が切れ、自由に回転できるようになります。普通の分子ではどちら向きにでも回ることができ、回転方向を制御することができませんが、Feringaの設計したこの分子ではメチル基の引っかかりにより一方向にのみにしか回転できないようになっています(実際の理屈はもう少し複雑ですが、興味のある方はNature 437, 1337 (2005)あたりをご覧下さい)。”