Category Archives: ライフサイエンステクノロジー

組換えタンパク質・融合タンパク質大量発現・精製受託サービス一覧

研究の都合で抗体の抗原蛋白質を使いたいということがあります。自分で融合タンパク質を発現させて精製すれば済むことではありますが、タンパク質の性質にいよってはドツボにはまることもあります。

自分はGSTタグの融合タンパク質やHisタグ融合タンパク質などを大腸菌で発現させ、精製を試みたことがありますが、たいていinclusion body(封入体)になって可溶化できず、カラムでの精製が困難だった苦い経験しかありません。

ほかにやることがたくさんあって時間がないけど研究費があるなら、受託してしまうのも手です。受託してラクできるのなら、それにこしたことはありません。そんなわけで、タンパク質発現を請け負う会社を紹介します。ネットで目についたものを順不同で紹介するだけですので、個々の会社のサービスの品質や評判は一切知りません。

 

和研薬

  1. 組換えタンパク質の発現精製 発現系:大腸菌(E. coli)、ブレビバチルス(Brevibacillus choshinensis)、哺乳動物細胞(HEK293, COS-7等)、大腸菌無細胞翻訳系 価格:要問い合わせ 宿主(E. coli、酵母、昆虫細胞、動物細胞)比較表

 

UNITECH

  1. 動物細胞 一過性発現または細胞株樹立 このウェブサイトには価格が掲載されていますが、予備検討だけで軽く100万円を超える価格。

コスモバイオ

プロテイン・エクスプレス

  1. 発現系(無細胞発現系・ブレビバチルス発現系・大腸菌発現系)参考価格

プロテイン・エクスプレス

  1. 発現系 ブレビバチルス菌 大腸菌 無細胞翻訳系 動物細胞 昆虫細胞

株式会社バキュロテクノロジーズ

  1. タンパク質発現サービス 昆虫細胞でのバキュロウイルス発現の可能性を迅速診断

ThermoFisherScientific

  1. タンパク質発現受託サービス 2017年からタンパク質発現受託サービスを行っており、すでに250件以上の実績

富士フイルム和光純薬

  1. タンパク発現受託サービス

富士フイルム和光純薬株式会社

  1. 昆虫細胞・バキュロウイルス発現系によるタンパク発現 大腸菌発現系によるタンパク発現 哺乳細胞発現系によるタンパク発現

プロテイン・エクスプレス

  • ブレビバチルス発現系によるタンパク発現

ベックス

  1. 大腸菌タンパク質発現 受託 発現ベクター構築~大量培養(3L)・精製 全工程セット※1 ¥490,000/1サンプル 4ヶ月~

 

参考

  1. バイオテクノロジージャーナル 2007年 製品特集 タンパク質発現システムの最新ツールと受託サービス Expi293 発現系 Freestyle293/ FreestyleCHO 発現系 ExpiCHO 発現系 Expi Sf 発現系 バキュロウイルス 発現系(Bac-to-Bacシステム)

参考2

自分のラボで発現と精製をやりたいというのであれば、下の動画でHisタグ融合タンパク質の大腸菌での発現と精製の実際が学べます。
QMUL Science Alive: Protein expression and purification

フローサイトメトリー(Flow Cytometry), FACS (Fluorescence assisted cell sorting)の原理と実際

フローサイトメトリーをやったことがない人(自分)でも、原理をわかった気になって、実験をやった(やれる)気になれそうなネット上の資料、動画を纏めました。

フローサイトメトリーとは

フローサイトメーター装置を用いて、流動する液体に懸濁した細胞やその他の粒子が一列になってレーザー光放射位置を通過し、光との相互作用が光散乱蛍光強度として電気検出装置により測定されます。もし蛍光標識または蛍光色素が特異的かつ化学量論的に細胞構成物と結合していれば、蛍光強度は特定細胞構成物の量を表すことができます。(フローサイトメトリー入門講座 コスモ・バイオ

フローサイトメトリーとは何かを非常に簡単に説明した動画。固定した細胞を蛍光標識した抗体で染色する様子が示されています。

Flow Cytometry Animation Cell Signaling Technology, Inc. 2016/02/04

 

フローサイトメトリーの原理

フローサイトメトリーとは何かを知るには、下の動画(12:09)が適度な詳しさで良いです。
Flow Cytometry  Shomu’s Biology 2012/11/13

  1. shomusbiology.com

前方散乱光と側方散乱光

Flow Cytometry Animation

 

アイソタイプ・コントロールとは

アイソタイプ・コントロール(Isotype control)抗体は特定の抗原とは反応しない抗体で、フローサイトメトリーや免疫組織染色で得られた結果を正しく評価するための、ネガティブ・コントロールとして使用します。(アイソタイプ・コントロールを選ぶポイント abcam.co.jp)

フローサイトメトリーにおいて、アイソタイプコントロールを使用するかどうかは、論争の的であり、研究者を二分しています(Herzenberg Lら、Maecker HTおよびTrotter J)。(アイソタイプコントロール (Isotype controls) bio-rad.co.jp)

 

サンプルローディングとデータ取得

Running a Basic 2 color Flow Cytometry Experiment in BD FACS Diva

 

ゲーティングとは

FACSの実験の話を聞いていると、ゲーティングという言葉が頻繁に登場します。FACSの実験を行っている人にとってあまりにも当たり前過ぎる単語のため、誰もゲーティング(Gating)が何かまでは説明してくれません。

Subsets of data can be defined through gating. A gate is a numerical or graphical boundary used to isolate subpopulations of particles/cells in order to generate statistics on a limited number of events in a given sample. (Flow Cytometry – A Survey and the Basics Tom Rowley (tjrowley3 at gmail dot com) Columbia University, United States labome.com)

ゲーティングとは、大きさ分散の程度などによって細胞の特定の領域または集団をデータ上で選択または除外することです。主な目的は細胞の残骸や破片などネガティブな集団を除くことですが、最近のソフトウェアでは様々な条件でゲートの設定を行うことができます。(フローサイトメトリー 10 のポイント abcam.co.jp

現在,頻用されているgating法は大きく3つに分類さ れ,まず第1に先に示したSSC/FSC cytogramからのgatingで光学形態情報(大きさ,内部構造)から細胞の位置を推察しgating行う方法。第2は,全白血球に反応するCD45抗体の蛍光強度と他のCD抗体の蛍光強度より二次元に展開するCD45/CD14 cytogram(Fig.1b),あ るいは,CD45抗体とSSC(Fig.1c)などの方法。第3は, 測定する目的細胞の特徴的マーカーを利用したgating 法で,例えば成熟型リンパ性腫瘍(悪性リンパ腫;ML, 慢性リンパ性白血病;CLL,成人T細胞白血病;ATL 等)では,各々の腫瘍の系統別のマーカーとSSC cytogram(SSC/CD19,SSC/CD3),および,両軸とも 特異抗体の蛍光強度で展開するcytogram(CD5/CD19, CD3/CD4)などの2種抗体gating法がある。(日常検査におけるFCM測定の問題点 - gating ー 鶴田 一人・上平 憲 Cytometry Research 12(1) : 39~48,2002 PDF

  1. FCMの原理入門講座Ⅷ.データ処理系 (bc-cytometry.com)
  2. 初心者のためのFCM入門 (ベックマン・コールター)原理、ゲート解析など明解な解説。
  3. 6 Flow Cytometry Gating Tips That Most Scientists Forget

 

FACS実験の実際(JOVE)

日常的にその実験している人にとっては、何も目新しいことがない実験・装置であっても、全くの未経験者が見ると役に立つことが多いのが、映像による実験の紹介です。そういう意味で、JoVEは非常に人の役に立つビデオジャーナルだと思います。

実際の実験でゲーティングして細胞を分取するところ(11:58 Experimental Sample Gating & Sorting)などを動画で見ることができます。


 

  1. Introduction to Flow Cytometry:A Learning Guide )2002 Becton, Dickinson and Company)

ゲーティング戦略

  1. Flow cytometry gating strategy for T cells, B cells, eosinophils and dendritic cells. Whole lung cell tissues were stained for the T cell markers CD3, CD4, CD8; the B cell marker B220; dendritic cell marker CD11c, major histocompatibility complex class II (MHC II) marker, and the activation markers CD69 and CD86.
  2. Gating Strategy for the Identification of ILC2s DOCUMENT # 27030 VERSION 1.0.0 JUL 2017 Download PDF
  3. Human Blood Monocyte Subsets: A New Gating Strategy Defined Using Cell Surface Markers Identified by Mass Cytometry.
  4. Gating strategy for ILC3s in RORc-eYFP mice: after exclusion of doublets, live CD45+ B220 CD3 TCRβ YFP+ cells were selected.

 

フローサイトメトリーデータの表示方法

下の動画では、(30:22~から)ヒストグラム(Histogram)、ドットプロット(Dot Plot)、デンシティプロット(Density Plot)、2変数プロット、ゲートなどが説明されています。

Basics of flow cytometry, Part I: Gating and data analysis Thermo Fisher Scientific 2016/12/28

フローサイトメトリー装置の種類

セルソーター(自動細胞解析分取装置):MoFlo Astrios EQ  (ジェットインエア方式)、MoFlo XDP  (ジェットインエア方式)、FACSAria (キュベットフローセル方式)

セルアナライザー(自動細胞解析装置) 細胞の分取機能を持たない解析専用。Cytomics FC500、 Gallios、 FACSCalibur、 FACSCanto。

高速型セルアナライザー 高速型フローサイトメーターは1秒間に5万個以上のスピードで測定可能です。CyAn ADP

※ FACSはBecton Dickinson社の商標です。(フローサイトメトリーの概要 bc-cytometry.com

フローサイトメトリー実験の注意点

下の記事は、フローサイトメトリーの原理から始めて、実験の注意事項までバランス良く解説しています。

フローサイトメトリーでは,一般的には10^4~10^6細胞分のデータを取得する.したがって,免疫染色や測定操作を正確に行っていれば,取得データ全体の統計的な精度は高く維持できる.ところが,上述のゲーティング操作によって集団のうちの一部の亜集団を多重パラメータで解析すると,最終的に抽出された集団の細胞数が非常に小さくなる場合がある.しかも,絶対数が小さいが故に,ゲーティング操作で扱う細胞集団の囲みが少しずれるだけでデータが変化してしまうこともある.この部分は,フローサイトメトリーのデータを扱う上で,もっとも細心の注意を払うべき部分であり,無意識のうちに都合のよいデータに改ざんしてしまわないように気をつけなければならない.(フローサイトメトリー ~「前にならえ」並べて順に数えます~ 金山 直樹 生物工学 第90巻 2012年 第12号 PDF)

 

マルチカラーフローサイトメトリー

複数の種類(波長)の色素を用いることにより、複数のマーカー分子を用いて、細胞のタイプを分けることができます。

Multicolor Panel Building in Flow Cytometry  Bio-Rad Laboratories 2017/11/13

Lymphocytes分類の例(上の動画6:47~)
ナチュラルキラー(NK)細胞(全てCD56陽性)の2つのサブセット:CD57陽性、CD57陰性CD16陽性
ナチュラルキラーT(NKT)細胞(全てCD3陽性、CD56 陽性)の6個のサブセット:CD8低CD57陰性、CD低CD57陽性、CD8中CD57 陰性、CD8中CD57陽性、CD8高CD57陰性、CD8高CD57 陽性

  1. Multicolor flow cytometry – Understanding the basics [WEBINAR]  FITC and PE (4:08~)

マルチカラーフローサイトメトリーで使われる色素

The fluorochromes used are: fluorescein (FITC), phycoerythrin (PE), Cy5PE and Cy7PE, excited at 488 nm by an argon laser; Texas Red (TR), allophycocyanin (APC), and Cy7APC excited at 595 nm by a pumped dye laser; and cascade blue (CB) and cascade yellow (CY) excited at 407 nm by a violet-enhanced krypton laser. (Cytometry. 1999 May 1;36(1):36-45. Nine color eleven parameter immunophenotyping using three laser flow cytometry. PubMed)

  1. Selecting Reagents for Multicolor Flow Cytometry Holden Maecker and Joe Trotter BD Biosciences, San Jose June 2012 
  2. Commonly Used Fluorochromes and Their Properties (umc.edu)
  3. Fluorophores (Flow Cytometry at Einstein) When performing multicolor flow cytometric analysis, a major factor in the success of the analysis is the choice of which antibody to use with which fluorochrome. There are often many “correct” combinations possible. 

 

Tandem dyes for flow cytometry 

Tandem dyes comprise a small fluorophore covalently coupled to another fluorophore. When the first dye is excited and reaches its maximal excited electronic singlet state, its energy is transferred to the second dye (an acceptor molecule). This activates the second fluorophore, which then produces the fluorescence emission. The process is called Förster resonance energy transfer (FRET). (Which Fluorophores are Useful for Flow Cytometry? BIO-RAD)

  1. Flow cytometry APC‐tandem dyes are degraded through a cell‐dependent mechanism Christine Le Roy Nadine Varin‐Blank Florence Ajchenbaum‐Cymbalista Rémi Letestu First published: 08 September 2009 https://doi.org/10.1002/cyto.a.20774 

フローサイトメトリーのプロトコール

  1. Flow cytometryのための表面抗原染色(FITC, PI) 実験プロトコール 東京医科歯科大

 

参考

  1. Take Control of Your Flow Cytometry (Bio-Rad Laboratories 2016/11/23 YOUTUBE 28:49)
  2. FACS – Fluorescence Activated Cell Sorting (Steffen Schmitt (DKFZ)  iBiology Techniques YOUTUBE 30:00)

マイクロアレイ解析の原理、受託費用

マイクロアレイとは:マイクロアレイの原理

  1. Introduction to Microarray Analysis Affymetrix GeneChip technology Katerina Taˇskova 11 March 2016
  2. アジレントのマイクロアレイ

 

マイクロアレイデータ解析

  1. Chapter 11 An Introduction to Microarray Data Analysis. M. Madan Babu

 

マイクロアレイ受託サービス選びのポイント

  1. マイクロアレイの受託解析を利用する際に知っておきたいポイント サーモフィッシャーサイエンティフィック 2017年4月10日

 

マイクロアレイ受託サービスにかかる費用の例

  1. フィルジェン 全転写産物発現解析 Gene ST Array Human Gene 2.0 ST Array 86,000円/Sample 遺伝子発現解析 3‘IVT Array Human Genome U133 Plus 2.0 Array 93,000円/Sample 遺伝子レベルトランスクリプトーム解析 Clariom S Assay 解析あり : 70,000円/Sample 解析なし : 68,000円/Sample 包括的トランスクリプトーム解析 Clariom D Assay 解析あり : 100,000円/Sample 解析なし : 95,000円/Sample

 

マイクロアレイの受託サービス業者一覧

  1. マイクロアレイ  和研薬 Agilent、Affymetrix、Illuminaの3社のアレイの使用が可能。データの前処理(クオリティチェックと正規化)、発現変動している遺伝子の算出・抽出、発現変動遺伝子群の解析(データマイニング)。論文に掲載する際のヒートマップの作成や、解析方法の記述、マイクロアレイデータの公開データベース NCBI GEO(Gene Expression Omnibus)への登録までサポート。
  2. ConPathGO DNAチップ研究所 遺伝子発現マイクロアレイ実験・発現解析・パスウェイ解析をトータルにサポートする受託サービス。アジレント社製マイクロアレイで実験。チップの違いによる誤差や、サンプル間のデータ偏りを正規化し(ノーマライズ)、マトリクスを作成。生データおよびノーマライズデータに、フラグ情報、アノテーション情報をつけ、有効データを抽出し。
  3. Applied BiosystemsTM GeneChipTMアレイ RIKEN GENESIS 発現解析用のアレイは、3’ IVT Array, Gene Array, ClariomTMD Array, ClariomTM S Arrayに分けられます。
  4. マクロジェン/コスモ・バイオ Agilent、illumina および Affymetrix の Chip を用いてマイクロアレイ解析サービスを提供
  5. Agilent Array発現解析 タカラバイオ ご要望に応じて、微量total RNA(500 pg以上、濃度100 pg/μl以上)からの解析、解析後のデータマイニング
  6. フィルジェン World StandardなDNAマイクロアレイである、Thermo Fisher Scientific社(applied biosystems/affymetrix)のGeneChipTM Arraysを用いて受託解析サービス
  7. アジレントアレイ解析サービス 北海道システム・サイエンス株式会社
  8. DNAマイクロアレイ解析受託 株式会社トランスジェニック
  9. マイクロアレイ受託解析/Affymetrix (新・Applied Biosystems‎) GeneChip受託解析 ジェネティックラボ

 

無料統計ソフトRを用いたマイクロアレイデータ解析

  1. bioconductor.org 
  2. Using R to draw a Heatmap from Microarray Data
  3. An end to end workflow for differential gene expression using Affymetrix microarrays
    Bernd Klaus and Stefanie Reisenauer 14 September 2018 “walk through an end-to-end Affymetrix microarray differential expression workflow using Bioconductor packages.”  “The data set used (1) is from a paper studying the differences in gene expression in inflamed and non-inflamed tissue. 14 patients suffering from Ulcerative colitis (UC) and 15 patients with Crohn’s disease (CD) were tested, and from each patient inflamed and non-inflamed colonic mucosa tissue was obtained via a biopsy. This is a typical clinical data set consisting of 58 arrays in total.”
  4. ARRAYANALYSIS.ORG – ILLUMINA PRE-PROCESSING PIPELINE – DOCUMENT VERSION: 1.0.0 This guide will help you in the installation and/or use of the QC & pre-processing of Illumina arrays pipeline. All source code has been written in R and is open-source, available under the Apache License version
    2.0. It is available on our Download page.
  5. (Rで)マイクロアレイデータ解析 (u-tokyo.ac.jp last modified 2019/03/17, since 2005)
  6. マイクロアレイデータを解析する TOGOTV マイクロアレイ実験データセットを検索&生データをダウンロードする データの前処理(正規化)データの生物学的解釈 
  7. A Tutorial Review of Microarray Data Analysis Alex Sánchez and M. Carme Ruíz de Villa July 7, 2008 55-page PDF

 

マイクロアレイ vs. RNAseq の議論

  1. RNA-SEQUENCING VS. MICROARRAYS. When, if ever, is using microarrays better than RNA-seq?  25 April 2018 @ 13:47 Thomas Liuksiala
  2. Transcriptomics technologies.  Lowe et al., May 18, 2017 PLOS Computational Biology
  3. Choosing between microarray and RNA-seq for gene expression studies and more? researchgate.net Asked 6th Jun, 2017
  4. An Array of Options. A guide for how and when to transition from the microarray to RNA-seq. KATE YANDELL Jun 1, 2015 TheScientist
  5. An investigation of biomarkers derived from legacy microarray data for their utility in the RNA-seq era. Genome Biol. 2014 Dec 3;15(12):523. doi: 10.1186/s13059-014-0523-y.
  6. RNA-Seq and Microarrays Analyses Reveal Global Differential Transcriptomes of Mesorhizobium huakuii 7653R between Bacteroids and Free-Living Cells. PLoS One. 2014; 9(4): e93626.
  7. 遺伝子発現差解析はマイクロアレイ?、それともRNAseq? okayama-u.ac.jp 2012-12-19 
  8. RNA-seq: An assessment of technical reproducibility and comparison with gene expression arrays. Published in Advance Genome Res. 2008. 18: 1509-1517

 

参考

  1. Making Informed Choices about Microarray Data Analysis. Mark Reimers. PLoS Comput Biol. 2010 May; 6(5): e1000786. PMCID: PMC2877726
  2. Analysis of microarray experiments of gene expression profiling. Tarca et al.Am J Obstet Gynecol. 2006 Aug; 195(2): 373–388. PMC 
  3. Fundamentals of cDNA microarray data analysis Yuk Fai Leung and Duccio Cavalieri TRENDS in Genetics Vol.19 No.11 November 2003
  4. Capturing best practice for microarray gene expression data analysis 2003年

全反射照明蛍光顕微鏡(TIRF) 細胞表面や1分子イメージングなどへの応用

全反射照明蛍光顕微鏡とは

全反射照明蛍光顕微鏡 (Total Internal Reflection Fluorescence Microscope ;TIRFMまたはTIRF) は、通常の落射蛍光顕微鏡のようにサンプル全体に真正面から励起光を当てることをせず、観察対象となるサンプルが載っているガラス表面に対して、角度をつけて斜め方向から励起光を照射します。この角度が大きい場合には、励起光はガラスの境界面で屈折して通り抜けずに全反射します。しかし、全反射が起きるときにガラスのごくごく近傍(100nm程度)までは光が「滲みだす」ため(エバネッセント光)、ガラス表面に近い100nm程度までのサンプルの部分のみが極めて局所的に励起光で照らされることになります。このような照明方法が全反射照明(TIRF)と呼ばれます。

  1. 界面近傍のみを高感度に観察できる「全反射照明蛍光顕微鏡 (TIRF)」(NIKON)

  2. Total Internal Reflection Fluorescence (TIRF) Microscopy An Introduction (Leica MIcrosystems March 12, 2012 Tutorial)
  3. Learn & Share: TIRF Microscopy (LEICA)

  4. TIRFM(実験医学オンライン キーワード)

 

全反射照明蛍光顕微鏡の利点

蛍光観察において、観察したい対象以外からの蛍光シグナルは全てノイズ、もしくは望まないバックグラウンドであり、視たいシグナルを埋もれさせてしまいます。しかし、全反射照明を用いるとサンプルを置いているガラス表面近傍以外には励起光が照射されていないので余計な蛍光も発生しません。もしスライドガラス近傍100nm程度の部分だけを観察したいのであれば、極めて低バックグラウンドで蛍光シグナルを観察することができるため、蛍光色素で標識されたたった1分子のタンパク質を可視化することすら可能になります。

 

全反射照明蛍光顕微鏡の欠点

TIRFMの欠点は利点の裏返しです。すなわち、観察できる対象がガラスの近傍100nm程度に存在するものに限られます。それよりも離れた場所は励起できないので観察できません。生体の内部で生じる現象は観察できないということになります。ガラス上の細胞を観察する場合でも、細胞のガラスに接している局所のみが観察可能で、細胞の内部深いところは観察できません。

 

全反射照明蛍光顕微鏡(TIRF)の解説動画

Microscopy: Total Internal Reflection Fluorescence (TIRF) Microscopy (Daniel Axelrod)

  • 6:17 プリズム型TIRFの説明
  • 8:22 対物レンズ型(プリズム不要)TIRFM(高開口数対物レンズを利用)の説明
  • 11:53 光源としてレーザーでなく水銀ランプを使うTIRFの説明
  • 14:12 プリズム型TIRFと対物レンズ利用のTIRFとの比較
  • 39:38 Conclusion(まとめ)

 

全反射照明蛍光顕微鏡の応用:1分子イメージング顕微鏡

全反射によるエバネッセント照明を利用して生物分子モーターであるキネシンを蛍光標識し、1分子のキネシンが微小管上を滑り運動する様子を観察した例を紹介する。(1分子蛍光イメージングの生命科学研究への応用 船津高志 東京大学大学院薬学系研究科生体分析化学教室 DOJIN NEWS)

  1. 拡散・キネティクス統計解析法の開発

 

TIRFを用いた細胞イメージング、分子モーターイメージングなど

  1. Imaging receptors, ion channels and molecular motors in live cells using TIRF microscopy. (YOUTUBE 51:44) Recorded at NPL on 21 March 2013. National Physical Laboratory 2013/03/22 に公開 Justin Molloy from MRC National Institute for Medical Research.

Kinesin walking on Microtubules

GFP tagged Kinesin walking on TRITC labled microtubules. Composite image created from epiflorescence and TIRF microscopy.

Transport on microtubules – Sebastian Maurer
 

The transport of a fluorescently labelled cargo (cyan) by a kinesin motor protein towards microtubule plus ends is visualized here.

 

オリンパス社のTIRF

  1. エバネッセント照明用対物レンズ APON 60XOTIRFなど
  2. Olympus cellTIRF | Excellent Multicolor TIRF Imaging (YOUTUBE 0:52

  3. cell^TIRF™ Illuminator(Olympus America)(PDF)

ニコン社のTIRF

  1. Nikon CFI アポクロマート TIRFシリーズ対物レンズ 高開口数1.49を実現し、高S/Nの明るい画像が取得できる対物レンズです。TIRF観察や1分子イメージング、レーザートラッピングに 

プリズム型TIRF

  1. 波モード全反射照明ユニット (WG-TIRF) 有限会社シーアンドアイ(C&I)

WG-TIRFの紹介と使い方(基本編)

NECの生体認証システム Bio-IDiom

NECの生体認証システム Bio-IDiomのTV CM

生体認証 Bio-IDiom「Same Face Girls」篇 [NEC公式]

生体認証(バイオメトリクス)とは

  1. 生体認証(バイオメトリクス)とは、人間の身体的または行動的特徴を用いて個人認証する仕組みです。NECは1970年代からいち早く生体認証の研究に取り組み、世界をリードし続けてきました。現在、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響の6つの生体認証技術を有しており、いずれも世界トップクラスもしくはNEC独自の技術です。NECでは、これらの生体認証を「Bio-IDiom(バイオイディオム)」と称し、さまざまなニーズやシーンに応じて使い分け、ときには組み合わせることで、最適なソリューションを提案します。(NEC)

 

虹彩認証とは

  1. 「虹彩認証」時代、始まる!! 意外と知らない虹彩認証のスゴさとは? TIME&SPACE 太田 穣2017/05/23

指紋認証とは

  1. 99.999%の識別力!!「指紋認証」ってどんな仕組み? TIME&SPACE 太田 穣 2016/06/01
  2. 指紋認証のしくみ (NEC)

声認証とは

  1. 認証方式には特定のフレーズの音声データを登録し認証する方式と、フレーズに依存せず非定型の自然な会話の音声データを登録し認証する方式があります。(NEC)

耳認証とは

  1. NECは、長岡技術科学大学の協力により、人間の耳穴の形状によって決まる音の反射を利用したバイオメトリクス個人認証技術「耳音響認証」を開発しました。(NEC)

顔認証の実用例

  1. コンサートで顔パス!!顔認証でスピーディに入場 [NEC公式]

 

メイキングオブSame Face Girls

【メイキング映像】NECの生体認証 Bio-IDiom「Same Face Girls」篇 [NEC公式]

 

 

オプトジェネティクス(Optogenetics 光遺伝学)研究の歴史 

オプトジェネティクス(光遺伝学)は、光照射によってイオン透過性が制御されるチャネルやポンプの遺伝子を神経細胞に発現させて、光によって神経活動を亢進させたり抑制させたりする技術です。特定の神経細胞だけを特定のタイミングで活動させたり抑制することができるため、脳の働く仕組みを理解するのに役立ちます。また、非侵襲的な刺激方法がどの程度可能なのかがはっきりしませんが、精神疾患の治療に役立てたいという期待も存在します。

 

ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士

オプトジェネティクスで使われるツールを最初に開発したのは、ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士の研究室でした。

Peter Hegemann | 2016 Massry Prize Lecture

Harz & Hegemann 1991 Nature
Nagel et al., 2002
Nagel et al., 2003
Kato et al., 2012
Wieteck et al., 2014 Science with M. Elstner
Wietek et al., 2015 Scientific Rep (collaboration)

  • In conversation with Prof. Peter Hegemann. Institute of Molecular Cell & Systems Biology UofG YOUTUBE(音声のみ 44:54)2018/02/23 に公開 He spoke with us about how to be persistent in your research, and how to play the long game of building a career through the highs and lows of the scientific process. 研究生活、論文出版の悲喜こもごも、ホンネが語られていて興味深い。

 

カール・ダイセロス博士

カール・ダイセロス博士によるオプトジェネティクス概論
Karl Deisseroth (Stanford / HHMI): Development of Optogenetics

 

エド・ボイデン博士

エド・ボイデン博士(CV)によるオプトジェネティクスの概論
Ed Boyden on Optogenetics — selective brain stimulation with light

Han and Boyden 2007 PLoS ONE 2(3):e299
Chow, Han, et al., 2010. Nature 463:98-102

オプトジェネティクス研究の歴史 開発者によるレビュー論文

  1. A history of optogenetics: the development of tools for controlling brain circuits with light Edward S. Boyden F1000 Biol Rep. 2011; 3: 11. Published online 2011 May 3

 

オプトジェネティクスを開発したのは誰か?

オプトジェネティクスといえば、カール・ダイセロス博士とエド・ボイデン博士の名が挙がることが多いわけですが、誰に最初の開発者としてのクレジットがあるのかに関して異論がないわけではありません。

There’s only one problem with this story: It just may be that Zhuo-Hua Pan invented optogenetics first. Even many neuroscientists have never heard of Pan. Pan, 60, is a vision scientist at Wayne State University in Detroit who began his research career in his home country of China. (He may have invented one of neuroscience’s biggest advances. But you’ve never heard of him By ANNA VLASITS SEPTEMBER 1, 2016 STATNEWS)

Pan presented his work at a conference in 2005, a few months before Boyden and Deisseroth published their paper. But Pan struggled to get his work published in a journal until a year later. (The History of Optogenetics Revised   Credit for the neuroscience technique has largely overlooked the researcher who first demonstrated the method. Sep 1, 2016 KERRY GRENS, TheScientist)

  • Ectopic expression of a microbial-type rhodopsin restores visual responses in mice with photoreceptor degeneration. Bi A, Cui J, Ma YP, Olshevskaya E, Pu M, Dizhoor AM, Pan ZH. Department of Anatomy and Cell Biology, Wayne State University School of Medicine, Detroit, Michigan 48201, USA. Neuron. 2006 Apr 6;50(1):23-33.

 

人の精神疾患の治療にオプトジェネティクスを適用可能か?

実験動物を使った精神疾患モデルにおいてオプトジェネティクスを用いて治療効果が上がったという論文をよく見かけますが、同じ侵襲的な処置は倫理的な問題から人間に適用できないため、人間に役立てるまでには大きなギャップが存在しています。

  1. Optogenetics: Applications in psychiatric research Fukutoshi Shirai MSc Akiko Hayashi‐Takagi MD, PhD PCN Frontier Review First published: 24 February 2017

 

参考

  1. Optogenetics (ENCYCLOPAEDIA BRITANNICA WRITTEN BY: Karl Deisseroth LAST UPDATED: Sep 10, 2018)
  2. オプトジェネティクスを始めましょう 光操作可能な遺伝子改変マウスの開発,入手方法 田中 謙二 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)143,193~197(2014)

ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の原理とその発見から応用までの歴史

 

CRISPR/Cas9の発明に2020年ノーベル化学賞

2020年10月7日のノーベル財団の発表によりますと、2020年のノーベル化学賞が、Jennifer A. Doudna(ジェニファー・ダウドナ)、 Emmanuel Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)の両氏に与えられることになりました。

Announcement of the 2020 Nobel Prize in Chemistry  Nobel Prize

 

祝☆ノーベル化学賞2020

ノーベル賞の枠は3人。CRISPR/Cas9の有用性は直ちに認識されて熾烈な特許戦争が勃発していたわけですが、Jennifer A. Doudna(ジェニファー・ダウドナ)、 Emmanuel Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)の二人がノーベル賞3人枠の中に入ることは、誰の目にも明らかでした。ノーベル賞をもらって当然と言われてきましたが、それでも、実際に本当に授賞が決まるとこれほど嬉しいものなんだなあとこの映像を見ていて思いました。

First Day in a Nobel Life: Jennifer Doudna 2020/10/07 UC Berkeley

別にノーベル賞をもらうために研究をするわけではありませんが、研究が正当に認めらることは研究者にとって非常に大事な部分なのだと思います。
 


 

ゲノム編集技術の革命的なツールであるCRISPR/Cas9(くりすぱー きゃすないん)ですが、もとはといえば、自然界においてバクテリアがウイルスから身を守るために備えているシステムです。2012年にこれがゲノム編集のツールとして利用できることが示され、わずか数年の間に、この技術を使わないラボがあるのか?というくらいにまで、研究の世界の隅々にまで浸透しました。

CRISPR技術の説明

適度な詳しさで、CRISPRをわかりやすく簡潔に説明した動画。

What is CRISPR?

  • 総説 ゲノムから見た最近の進化ーCRISPによる生存戦略ー 中川一路 Dental Medicine Research 33(3):236-241. (2013). PDFリンク 図1(A)CRISPRによる外来性因子の取り込みの機構。(2)CRISPRによる外来性因子の認識と排除

CRISPRの発見と応用技術の進展のタイムライン

CRISPR/Casが働く仕組みの解明には多くの研究者が関与しており、メジャーな発見だけでも論文が多数になるため、時系列にまとめたサイトを紹介しておきます。

 

CRISPRの発見

大阪大学微生物病研究所の研究グループが奇妙な繰り返し配列を大腸菌のゲノムで見つけ、石野 良純(いしの よしずみ)博士らが1987年に論文報告をしたのが、CRISPRが見出された最初の例です。この配列は、後の研究者によって、CRISPR、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeatsと名付けられることになります。

Ishino Y, Shinagawa H, Makino K, Amemura M, Nakata A. (1987). Nucleotide sequence of the iap gene, responsible for alkaline phosphatase isozyme conversion in Escherichia coli, and identification of the gene product. J Bacteriol 169: 5429-5433. PDFリンク

石野博士らは、大腸菌(E. coli)のiap遺伝子の構造を調べた際に、iap遺伝子の近傍に不思議な配列があることを見出しました。29塩基からなる共通配列が、32塩基からなるスペーサー配列を挟むようにして、5回繰り返し配置されていたのです。この共通配列の内部はパリンドーム(回文構造)になっていました。

FIG. 5. Comparison of direct-repeat sequences consisting of 61 base pairs in the 3′-end flanking region of iap. The 29 highly conserved nucleotides, which contain a dyad symmetry of 14 base pairs (underlined), are shown at the bottom. Homologous nucleotides found in at least two DNA segments are shown in boldface type. The second translational termination codon is boxed. The nucleotide numbers are in parentheses.

An unusual structure was found in the 3′-end flanking region of iap (Fig. 5). Five highly homologous sequences of 29 nucleotides were arranged as direct repeats with 32 nucleotides as spacing. The first sequence was included in the putative transcriptional termination site and had less homology than the others. Well-conserved nucleotide sequences containing a dyad symmetry, named REP sequences, have been found in E. coli and Salmonella typhimurium (28) and may act to stabilize mRNA (18). A dyad symmetry with 14 nucleotide pairs was also found in the middle of these sequences (underlining, Fig. 5), but no homology was found between these sequences and the REP sequence. So far, no sequence homologous to these has been found elsewhere in procaryotes, and the biological significance of these sequences is not known.

この論文では、「現在のところ、今回見つかった配列と相同性を示す配列は他の原核生物では見つかっていない。また、この配列の生物学的な意義は不明である(So far, no sequence homologous to these has been found elsewhere in procaryotes, and the biological significance of these sequences is not known)」と述べています。

石野博士らが大腸菌で初めて見つけたこの不思議な構造が、実は他の細菌(Bacteria)や古細菌(Archaea)にも存在していることが、他の研究者らによって徐々に明らかにされていき、Mojicaらが、DNA配列のこの特徴的な構造が実は原核生物のゲノムにおいては広く一般的に存在しているのだということを2000年に報告しました。

Mojica, F.J.M., Dıez-Villasenor, C., Soria, E., and Juez, G. (2000). Biological
significance of a family of regularly spaced repeats in the genomes of Archaea,
Bacteria and mitochondria. Mol. Microbiol. 36, 244–246. HTMLリンク

この論文で、Mojicaらはこの不思議な配列をShort Regularly Spaced Repeats (SRSRs)と名づけましたが、定着しませんでした。また、論文の結論は、多くの原核生物で見出されたのだから何か共通する機能があるのではないかという問題提起にとどまっています。

The question emerges here as to whether the SRSRs have a common function in prokaryotes, or whether their presence is reminiscent of ancient sequences and their role diverged with evolution. The universality, phylogeny and biological significance of this peculiar family of repeats arises as an item to be elucidated. (Mojica eta l., 2000 結論のセクションより)

 

Cas遺伝子の発見

CRISPRという繰り返し配列が原核生物のゲノム中に広く存在することはわかりましたが、その配列の意味するところはいっこうにわからないままでした。このミステリーを解き明かす手がかりを与えたのが、Jensenらによる、CRISPR近傍に存在する遺伝子群の発見です。

Identification of genes that are associated with DNA repeats in prokaryotes. Jansen R, Embden JD, Gaastra W, Schouls LM. Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75. PDF link

Cas遺伝子(Cas1, Cas2, Cas3, Cas4)を報告したこの論文では、奇妙な繰り返し配列をCRISPRと名付けており、この呼称が定着しています。

To appreciate their characteri-stic structure, we will refer to this family as the clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR). In most species with two or more CRISPR loci, these loci were flanked on one side by a common leader sequence of 300-500 b. (中略)Four CRISPR-associated (cas) genes were identified in CRISPR-containing prokaryotes that were absent from CRISPR-negative prokaryotes. The cas genes were invariably located adjacent to a CRISPR locus, indicating that the cas genes and CRISPR loci have a functional relationship. The cas3 gene showed motifs characteristic for helicases of the superfamily 2, and the cas4 gene showed motifs of the RecB family of exonucleases, suggesting that these genes are involved in DNA metabolism or gene expression. (Jansen et al., Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75.の論文の要旨から一部抜粋)

Cas遺伝子がヘリカーゼやエクソヌクレアーゼといったDNAの代謝に関わる酵素のモチーフを持っていたことから、この論文では、この謎の繰り返し配列を作るのにこれらのCasタンパク質が関与しているのではないかと、正しく推測していました。

The finding in this study that the CRISPR loci were strictly associated with a set of homologous genes, one of which has nucleic acid helicase motifs (the Cas3 homologues), one of which has exonuclease activity (the Cas4 homologues) and one of which has a high pI (the CasI homologues), as is often found for DNA-binding proteins, may be suggestive of a role for the Cas proteins in the genesis of CRISPR loci. (Jansen et al., Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75.の論文の議論のセクションから抜粋)

 

CRISPRスペーサー配列の正体

繰り返し配列の間に挟みこまれた配列の起源があいかわらず謎でしたが、ほどなくして、これがファージの配列だということがわかってきました。その結果、CRISPRはバクテリアが外敵であるファージから身を守るための仕組みなのではないかという推測がなされました。

CRISPR elements in Yersinia pestis acquire new repeats by preferential uptake of bacteriophage DNA, and provide additional tools for evolutionary studies. C. Pourcel, G. Salvignol, G. Vergnaud. First Published Online: 01 March 2005, Microbiology 151: 653-663.  HTML link

One possible explanation for that finding could be that CRISPRs are structures able to take up pieces of foreign DNA as part of a defence mechanism. In this view, it is tempting to further speculate that CRISPRs may represent a memory of past ‘genetic aggressions’. The fact that most of the spacers described in other bacteria have no homologue in the databases could still be explained by such a phage origin, as only a very small number of the existing bacteriophages have so far been sequenced. (Pourcel et al., Microbiology 151: 653-663. ディスカッションセクションより抜粋)

Clustered regularly interspaced short palindrome repeats (CRISPRs) have spacers of extrachromosomal origin. Bolotin A, Quinquis B, Sorokin A, Ehrlich SD. Microbiology. 2005 Aug;151(Pt 8):2551-61. HTML link

Here we report a correlation between the number of spacers in a locus and the resistance of  to phage infection, suggesting that CRISPRs can have a different biological role, protecting the bacteria against phage attack. (Bolotin et al., Microbiology 151(Pt 8):2551-61)

 

CRISPR-Casシステムの作用機序と生物学的な意味の解明

CRISPRの配列の中の、スペーサー配列の正体がファージなど外来ゲノム断片であることがわかり、CRISPR-Casシステムはいわばバクテリアにとっての免疫システムだと予想され、実際にそのように働くことが実証されました。

CRISPR provides acquired resistance against viruses in prokaryotes. Barrangou R, Fremaux C, Deveau H, Richards M, Boyaval P, Moineau S, Romero DA, Horvath P. Science 2007 Mar 23;315(5819):1709-12.

Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR) are a distinctive feature of the genomes of most Bacteria and Archaea and are thought to be involved in resistance to bacteriophages. We found that, after viral challenge, bacteria integrated new spacers derived from phage genomic sequences. Removal or addition of particular spacers modified the phage-resistance phenotype of the cell. Thus, CRISPR, together with associated cas genes, provided resistance against phages, and resistance specificity is determined by spacer-phage sequence similarity. (Barrangou et al., 2007 要旨)

Cas9–crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria. Giedrius GasiunasRodolphe BarrangouPhilippe Horvath, and Virginijus Siksnys. 

Here, we demonstrate that the Cas9–crRNA complex of the Streptococcus thermophilusCRISPR3/Cas system introduces in vitro a double-strand break at a specific site in DNA containing a sequence complementary to crRNA. DNA cleavage is executed by Cas9, which uses two distinct active sites, RuvC and HNH, to generate site-specific nicks on opposite DNA strands. Results demonstrate that the Cas9–crRNA complex functions as an RNA-guided endonuclease with RNA-directed target sequence recognition and protein-mediated DNA cleavage. (要旨より一部抜粋)

 

CRISPRの遺伝子編集技術への応用

バクテリアなどの原核生物が持っているCRISPR/Casシステムにおいて、標的DNA配列を特異的に認識され、標的DNAが正確に切断されることがわかると、ゲノム編集ツールとしての有用性が直ちに認識されました。Casタンパク質のグループには、複合体を作って働くものや、ひとつで全ての役割を備えたものなど種類があります。Cas9は一人で全ての役割をこなす巨大なタンパク質で、これとガイドRNA(クリスパーRNA(標的配列)とトレーサーRNAを、人工的に一本鎖にまとめたもの)の2つのプレーヤーだけでゲノム編集ができてしまうという驚くべき簡便さが、応用の広さを生み出しました

A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity.
Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21.

We propose an alternative methodology based on RNA-programmed Cas9 that could offer considerable potential for gene-targeting and genome-editing applications. (Jinek et al., 2012)

George Church博士やFeng Zhang博士の研究グループにより、CRISPR/Cas9システムが真核生物においても働くことが示され、ゲノム編集ツールとして人間を含めた全ての真核生物に応用する道が開かれました。

RNA-Guided Human Genome Engineering via Cas9. Prashant Mali, Luhan Yang, Kevin M. Esvelt, John Aach, Marc Guell, James E. DiCarlo, Julie E. Norville, George M. Church. Science 15 Feb 2013; Vol. 339, Issue 6121, pp. 823-826

The fully defined nature of this two-component system suggested that it might function in the cells of eukaryotic organisms such as yeast, plants, and even mammals. By cleaving genomic sequences targeted by RNA sequences (46), such a system could greatly enhance the ease of genome engineering. (Mali et al., 2013 のイントロダクションより。太字強調は当サイト)

Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems. Le Cong, F. Ann Ran, David Cox, Shuailiang Lin, Robert Barretto, Naomi Habib, Patrick D. Hsu, Xuebing Wu, Wenyan Jiang, Luciano A. Marraffini, Feng Zhang. Science 15 Feb 2013:Vol. 339, Issue 6121, pp. 819-823

KS Community Lecture: Genome Editing Using CRISPR-Cas Systems

フェン・ジャン(Feng Zhang)博士による解説

ちなみに、フェン・ジャン(Feng Zhang)博士は、大学院時代にスタンフォード大学のカール・ダイセロス博士のラボでオプトジェネティクスに関する仕事をしています。

Zhang studied chemistry and physics at Harvard and graduated with the highest honors.  He then headed to Stanford University for his doctoral work, where he joined the newly formed lab of Karl Deisseroth, who had just begun to develop optogenetics as a method for manipulating brain activity. Over the next five years, Zhang played a central role in making optogenetics a reality.

In 2009, after earning a PhD in chemistry, Zhang switched his focus to genome editing. That same year, he received a prestigious three-year Harvard Junior Fellowship, during which he worked in the laboratories of two Harvard Medical School professors, Paola Arlotta and George Church. There, he helped develop a new method of gene editing through the adaptation of TAL effectors (TALEs), sequence-specific DNA-binding proteins found in plant pathogens that alter gene expression in plants.

Zhang joined the MIT faculty in January 2011 and became a core member of the Broad Institute of MIT and Harvard. (https://lemelson.mit.edu/winners/feng-zhang

 

ダウドナ博士によるCRISPRに関する基本事項の解説

  • Biology and Applications of CRISPR Systems: Harnessing Nature’s Toolbox for Genome Engineering. Addison V.Wright, James K.Nuñez, Jennifer A.Doudna. Cell Volume 164, Issues 1–2, 14 January 2016, Pages 29-44. PDF link

Jennifer Doudna: CRISPR Basics (2017 CRISPR Workshop YOUTUBE動画 Innovative Genomics Institute – IGI 2017/11/04)

 

CRISPRの発見者は誰?

CRISPRという自然現象の謎解きには多くの研究者が関わっています。また、CRISPR/Cas9を有効なゲノム編集技術のツールにするための技術開発も複数の研究グループが熾烈な競争を繰り広げています。そのため、誰がCRISPRの発見者なのか、誰が一番大きな貢献をしたといえるのかについては、見解が分かれるかもしれません。2017年度のJapan Prize(日本国際賞)は、「生命科学分野」ではエマニュエル・シャルパンティエ博士とジェニファー・ダウドナ博士の両氏が受賞しています。

シャルパンティエ博士とダウドナ博士は、「生命科学」分野において「CRISPR-Casによるゲノム編集機構の解明」という顕著な功績をあげたことが受賞理由となりました。両氏によって発表されたCRISPR-Casシステムによるゲノム編集は、遺伝子工学において従来方法と比べてはるかに安価で時間をとらず、圧倒的に容易な革命的な新技術です。どんな生物においても目的とするDNAを任意の部位で切断し、削除、置換、挿入など自在な編集を可能にしました。本技術は生命科学研究のツールとして爆発的に広がっただけでなく、育種、創薬、医療など幅広い分野で応用研究が進んでいます。(Japan Prize News No.57 Feb. 2017  PDFリンク

また、2018年度カブリ賞ナノサイエンス分野では、エマニュエル・シャルパンティエ博士、ジェニファー・ダウドナ博士、および、リトアニアのヴィルギニユス・シクスニス (Virginijus Šikšnys)博士の3人が受賞しました。

2018 Kavli Prize Winners – NANOSCIENCE (World Science Festival YOUTUBE動画)

 

ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の特許をめぐる熾烈な争い

特許に関しては、フェン・ジャン(Feng Zhang)博士ら(ブロード・インスティチュート)の陣営と、ジェニファー・ダウドナ博士(カリフォルニア大学バークレー校)らの陣営との間で熾烈な訴訟合戦が繰り広げられており、アメリカでの裁定とヨーロッパでの裁定が異なるなど、混沌とした印象があります。

The CRISPR Patent Battle: Implications for Downstream Innovation in Gene Editing

  • 終わらないCRISPR特許論争、UCバークレーが不服申し立てMIT Technology Review エミリー マリン (Emily Mullin) 2018.05.01, 16:58)

 

CRISPRの発見からツールとしての利用まで

  • The Heroes of CRISPR  (Eric S. Lander, Cell 164, January 14, 2016) 研究者に焦点を当てた、CRISPR発見の裏話的な内容

 

CRISPR関連の略語、用語

CRISPR: clustered regularly interspaced palindromic repeats (Jansen et al., 2002 Mol Microbiol)

spacer ( スペーサー ): CRISPRに保存されたウイルスDNAの小さな断片 (参考:PDBj)

Cas: CRISPR-associated protein (Jansen et al., 2002 Mol Microbiol)

PAM: protospacer adjacent motif

crRNA: CRISPR RNA (Brouns et al., 2008 Science) 標的となる外来遺伝子配列の断片であるスペーサー配列を含む。

tracrRNAtrans-acting CRISPR RNA (Deltcheva et al., 2011 Nature) Casタンパク質と結合するための足場としての役割を担う部分。

gRNA: guide RNA (sgRNA (single-strand guide RNA, single guide RNA, short guide RNA)とも表記) 自然界では複合体を形成して働くcrRNAとtracrRNAを、ゲノム編集ツールとして利用しやすいよう、人工的にひと続きのRNAにしたもの。

Cascade: CRISPR-Associated Complex for Antiviral Defense (Brouns et al., 2008 Science) タンパク質からなる巨大な複合体で内部にCRISPR配列のRNA転写物があり、これを使って感染によるウイルスDNAと適合するものがいないか監視している。(参考:PDBj

Cas9: Cascade 9 (もしくはCRISPR associated protein 9)(参考: Roy et al., 2018 Front Genet.)2018 Cas9は、II型CRISPR系に分類される。監視タンパク質と切断を実行する部分の両方が1本のタンパク質鎖の中に収められている。(参考:PDBj) cas9 (formerly named “cas5” or “csn1”) is the signature gene for type II systems (8)(出典:Gasiunas et al., 2012;PNAS 109(39)E2579-E2586)

 

一般読者向けCRISPR解説記事

  1. CRISPR Part 1: A Brief History of CRISPR (TWIST BIOSCIENCE Dec 12, 2017)

 

遺伝子編集技術CRISPR-Casシステムの技術的な問題点

  1. ゲノム遺伝子の欠失には非常に効率の良い方法ではあるが、塩基置換や挿入の効率はまだ十分ではなく、目的の変異の導入には多くの受精卵または胚が必要である。
  2. 現在使用されているガイドRNAが認識するDNA配列は20塩基であるため、特異性はそれほど高くなく、目的としないゲノム配列にも変異が導入される可能性は否定できない。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu94/shiryo2-2.pdf

 

遺伝子編集技術CRISPR-Casシステムの社会的な問題点

動物や植物の品種改良技術として使われる可能性が高い。その場合に、原理的には自然突然変異と区別がつかな
いが、遺伝子組換え食品として扱わないかは、合意が得られていない。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu94/shiryo2-2.pdf

 

CRIPR-Casの種類と分類

  1. Annotation and Classification of CRISPR-Cas Systems. Kira S. Makarova and Eugene V. Koonin. Methods Mol Biol. 2015; 1311: 47–75. PDF link
  2. Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System. BerndZetsche, Jonathan S.Gootenberg, Omar O.Abudayyeh, Ian M.Slaymaker, Kira S.Makarova, PatrickEssletzbichler, Sara E.Volz, JuliaJoung, Johnvan der Oost, AvivRegev, Eugene V.Koonin, Feng Zhang. Cell
    Volume 163, Issue 3, 22 October 2015, Pages 759-771. Here, we report characterization of Cpf1, a putative class 2 CRISPR effector. We demonstrate that Cpf1 mediates robust DNA interference with features distinct from Cas9. Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease lacking tracrRNA, and it utilizes a T-rich protospacer-adjacent motif. Moreover, Cpf1 cleaves DNA via a staggered DNA double-stranded break.
  3. Expanding the catalog of cas genes with metagenomes. Quan Zhang, Thomas G. Doak, and Yuzhen Ye. Nucleic Acids Res. 2014 Feb; 42(4): 2448–2459.
  4. Evolution and classification of the CRISPR–Cas systems. Makarova et al., 2011. Nature Reviews Microbiology volume 9, pages 467–477(無料Abstract

 

バイオ関連企業による研究者向けのCRISPR-Cas技術解説

 

レビュー論文

  • CRISPR/Cascade 9-Mediated Genome Editing-Challenges and Opportunities. Bhaskar Roy, Jing Zhao, Chao Yang, Wen Luo, Teng Xiong, Yong Li, Xiaodong Fang, Guanjun Gao, Chabungbam O. Singh, Lise Madsen, Yong Zhou, and Karsten Kristiansen. Front Genet. 2018; 9: 240.
  • Genome editing: A breakthrough in life science and medicine. Izuho Hatada and Takuro Horii. Endocrine Journal 63(2):105-110. (2016) PDFリンク
  • 総説 ゲノムから見た最近の進化ーCRISPによる生存戦略ー 中川一路 Dental Medicine Research 33(3):236-241. (2013). PDFリンク

 

原著論文

数が多いため主要な論文のみ挙げています。

CRISPRの発見

  1. Nucleotide sequence of the iap gene, responsible for alkaline phosphatase isozyme conversion in Escherichia coli, and identification of the gene product. Ishino Y, Shinagawa H, Makino K, Amemura M, Nakata A. (1987). J Bacteriol 169: 5429-5433. PDFリンク
  2. Unusual Nucleotide Arrangement with Repeated Sequences in the Escherichia coli K-12 Chromosome. ATSUO NAKATA,* MITSUKO AMEMURA, AND KOZO MAKINO. Department of Experimental Chemotherapy, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University, 3-1, Yamadaoka, Suita, Osaka, Japan 565. Received 19 December 1988/Accepted 13 March 1989 JOURNAL OF BACTERIOLOGY, June 1989, Vol. 171, No. 6 p. 3553-3556 PDF link
  3. Long stretches of short tandem repeats are present in the largest replicons of the Archaea Haloferax mediterranei and Haloferax volcanii and could be involved in replicon partitioning. F.J.M. Mojica C. Ferrer G. Juez F. Rodríguez‐Valera. molecular microbiology July 1995;17(1):85-93
  4. Biological significance of a family of regularly spaced repeats in the genomes of Archaea,
    Bacteria and mitochondria. Mojica, F.J.M., Dıez-Villasenor, C., Soria, E., and Juez, G. (2000). Mol. Microbiol. 36, 244–246. PDFリンク

Casの発見

  1. Identification of genes that are associated with DNA repeats in prokaryotes. Jansen R, Embden JD, Gaastra W, Schouls LM. Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75. PDF link

CRISPRが働くメカニズム と生物学的な意義(細菌に備わる防御機構)

  1. CRISPR provides acquired resistance against viruses in prokaryotes. Barrangou R, Fremaux C, Deveau H, Richards M, Boyaval P, Moineau S, Romero DA, Horvath P. Science 2007 Mar 23;315(5819):1709-12.
  2. Cas9–crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria. Giedrius GasiunasRodolphe BarrangouPhilippe Horvath, and Virginijus Siksnys. 

ゲノム編集技術としてのCRISPR

  1. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. Science 2012 Aug 17;337(6096):816-21.
  2. Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems. Le Cong, F. Ann Ran, David Cox, Shuailiang Lin, Robert Barretto, Naomi Habib, Patrick D. Hsu, Xuebing Wu, Wenyan Jiang, Luciano A. Marraffini, Feng Zhang. Science 15 Feb 2013; Vol. 339, Issue 6121, pp. 819-823

CRISPRに関する最近の論文

  1. C2c2 is a single-component programmable RNA-guided RNA-targeting CRISPR effector.
    Omar O. Abudayyeh, Jonathan S. Gootenberg, Silvana Konermann, Julia Joung, Ian M. Slaymaker, David B.T. Cox, Sergey Shmakov, Kira S. Makarova, Ekaterina Semenova, Leonid Minakhin, Konstantin Severinov, Aviv Regev, Eric S. Lander, Eugene V. Koonin, Feng Zhang. Science 02 Jun 2016.
  2. Direct CRISPR spacer acquisition from RNA by a natural reverse transcriptase–Cas1 fusion protein. Sukrit Silas, Georg Mohr, David J. Sidote, Laura M. Markham, Antonio Sanchez-Amat, Devaki Bhaya, Alan M. Lambowitz, Andrew Z. Fire. Science 26 Feb 2016;Vol. 351, Issue 6276

その他のCRISPR-CASに関する論文

  1. Protospacer adjacent motif (PAM)-distal sequences engage CRISPR Cas9 DNA target cleavage.
    Cencic R, Miura H, Malina A, Robert F, Ethier S, Schmeing TM, Dostie J, Pelletier J. PLoS One. 2014 Oct 2;9(10):e109213.

 

参考

  1. Genome damage from CRISPR/Cas9 gene editing higher than thought July 16, 2018, phys.org
  2. CRISPR (ウィキペディア)
  3. Virginijus Šikšnys (Wikipedia)
  4. „Imam genų žirkles, iškerpam klaidą, ligos nelieka“ – Virginijus Šikšnys | Laikykitės ten pokalbiai(YOUTUBE動画トークショー)
  5. Lithuanian Lesson 2 – Alphabet (YOUTUBE) リトアニア語の発音
  6. Lesson One: Lithuanian Video Course (YOUTUBE) リトアニア語の発音

CaセンサーGCaMPで細胞活動を可視化

バイオテクノロジーの進歩は、一昔前なら夢物語でしかなかったことを現実にしてくれます。動物の脳の活動をリアルタイムで見せてくれるGCaMPも、そんなテクノロジーのうちのひとつ。GCaMPという名前を聞くのは初めてという人でもGFP (Green Fluorescent Protein)ならどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?GFPは、下村脩博士がオワンクラゲから見つけたもので、タンパク質なのに緑色の蛍光を発するという画期的な性質を持つものです。この研究で下村博士は2008年にノーベル化学賞を受賞しており、GFPは高校の生物の教科書にも紹介されています。このGFPを人工的に改造して、カルシウムイオンが結合するとより明るく光るようしたタンパク質がGCaMPです。つまりGCaMP蛍光強度の変化が、カルシウムイオン濃度の変化に対応するわけです。

GCaMPって誰がいつ発明したの?

2001年に中井淳一博士らのグループにより発明されました(Nakai et al., Nat Biotechnology 2001)。

我々が開発したG-CaMPはGFP1分子とカルモジュリンとミオシン軽鎖キナーゼのM13断片からなる一波長励起一波長測光タイプの蛍光カルシウムプローブである。GFPと同様のスペクトル特性を持っているので標準的な蛍光顕微鏡やレーザー顕微鏡で容易に観察することができる。G-CaMPの最大の特徴はG-CaMPが蛋白質であるためG-CaMPをコードする遺伝子をプロモーターの制御下に発現させることで,簡単に細胞特異的なプローブの導入ができる点である。(GFPを用いた蛍光カルシウムプローブG-CaMPの開発 中井淳一・大倉正道 比較生理生化学Vol.19,No.2(2002))

GCaMPはカルシウムセンサーとして機能し、カルシウムイオン濃度が高いほど明るい蛍光を発してくれますので、神経細胞に限らず、どんな種類の細胞であれ、細胞内にG-CaMPを導入してやるとその細胞のカルシウムイオン濃度の変化を、G-CaMPの蛍光強度変化として捉えることができます。

 

GCaMPって何の略?

2001年の原著論文では、green fluorescent protein (GFP)-based Ca2+ probesとしか書いていませんが、

(GCaMPタンパク質の立体構造。左側は横から見た図で、右側は縦方向から見た図。Akerboom et al., 2013 Fig.3を改変)

カルモジュリン(Calmodulin)はCaMと表記されますので、GはGFPのG,CaMはカルモジュリンのCaM、PはProteinのPでしょうか。

Green fluorescent protein – calmodulin protein – (GCaMP)-type GECI are based on a circularly permutated EGFP molecule (cpEGFP) flanked at the N and C termini by the smooth muscle myosin light chain kinase derived calmodulin binding peptide (RS20) and calmodulin (CaM), respectively. (Helassa et al., Scientific Reports volume 5, Article number: 15978 (2015))

In our laboratory, we have focused our efforts to improve genetically encoded calcium indicator proteins (GECIs), specifically the green fluorescent protein (GFP)-Calmodulin fusion protein (GCaMP).(Badura et al., 2014 doi: 10.1117/1.NPh.1.2.025008)

 

G-CaMPそれともGCaMP?

2つの単語をハイフンでつないで1語にしていたものが、一般的になるにつれてハイフンがとれて完全な一語になるということが起こります。G-CaMPもそうやってGCaMPになったのかと思いきや、どうやらそう単純ではないようです。発明者である中井博士らのグループは今日に至るまでG-CaMPと表記しており、G-CaMPの改良型を作製し発表した他のグループはGCaMPと表記しています。あまり気にしていない論文も見受けられます。特定のGCaMPについて言及する際には、そのGCaMPを報告した論文内でどう表記されているかに気を配る必要があるでしょう。

Here we report the development of a high-affinity Ca(2+) probe composed of a single GFP (named G-CaMP). (Nakai et al., Nat Biotechnol. 2001 Feb;19(2):137-41.)

Generation and Imaging of Transgenic Mice that Express G-CaMP7 under a Tetracycline Response Element. (Sato et al., 2015 PLoS One 10(5):e0125354)

歴史的にも多少ややこしいことになっています。G-CaMPの改良型を報告した2006年の論文には中井博士らも共著者として入っていますが、ここではGCaMP2と命名されており、オリジナルのG-CaMPのことをGCaMP1としています。

Designed and random alterations in the previously described, circularly permutated eGFP-based, Ca2+-sensing molecule, which we now term GCaMP1 (11), were undertaken to improve brightness and stability. (Imaging cellular signals in the heart in vivo: Cardiac expression of the high-signal Ca2+ indicator GCaMP2. Yvonne N. Tallini, Masamichi Ohkura, Bum-Rak Choi, Guangju Ji, Keiji Imoto, Robert Doran, Jane Lee, Patricia Plan, Jason Wilson, Hong-Bo Xin, Atsushi Sanbe, James Gulick, John Mathai, Jeffrey Robbins, Guy Salama, Junichi Nakai, and Michael I. Kotlikoff. PNAS March 21, 2006. 103 (12) 4753-4758)

Howard Hughes Medical Institute/Janelia Research Campusの研究者らはGCaMPとハイフンを入れない表記をしています。

Imaging neural activity in worms, flies and mice with improved GCaMP calcium indicators. Tian L, Hires SA, Mao T, Huber D, Chiappe ME, Chalasani SH, Petreanu L, Akerboom J, McKinney SA, Schreiter ER, Bargmann CI, Jayaraman V, Svoboda K, Looger LL. Nat Methods. 2009 Dec;6(12):875-81.

そんなわけで、G-CaMPとGCaMPの両方の表記が世の中で見られます。

 

GCaMPで何が見えるの?

細胞の中に導入されたGCaMPは、細胞内カルシウムイオン濃度をモニターして可視化してくれますので、カルシウムイオンの濃度変化が生じるような生命現象なら何でも可視化することができます。そのような生命現象としては受精、細胞分裂、細胞の分化、細胞の移動、筋収縮、神経細胞の興奮などいろいろあります。

下の動画はショウジョウバエの排卵のときに卵母細胞内のカルシウム濃度が上昇する様子(排卵時のカルシウム動態は14秒あたりから)。

PNAS : Calcium waves occur as Drosophila oocytes activate

(In vivo imaging at dissection scope resolution of Ca2+ flux in activating oocytes from transgenic flies expressing GCaMP3 in their oocytes. See text and the legend to Fig. 1A for details. 論文 https://doi.org/10.1073/pnas.1420589112

下の動画は、線虫(C. elegans)という小さな小さなミミズみたいな生き物が動いている様子ですが、筋肉の細胞にGCaMPが導入されているため、筋収縮が起きているところが明るく光ります(擬似カラー表示されていて、暖色系の明るい色がカルシウム濃度の高い部分)。体が屈曲しているときに曲がりの内側部分のほうが明るくなる、つまり筋肉が収縮していることがわかります。

Ca2+ dynamics in body wall muscles of wild-type C. elegans

(Genetic crosses were made to transfer the genetically encoded Ca2+ indicator GCaMP3.35 (Schwarz et al., 2011) into the vps-36 (gk427) background. 論文リンク http://jcs.biologists.org/content/129/7/1490

下の動画の実験では、視覚を司る脳部位の神経細胞にGCaMPが導入されており、熱帯魚の一種ゼブラフィッシュ(ペットショップでの名前はゼブラダニオ)の稚魚が餌となるゾウリムシを見ているときに脳が活動している様子を見せてくれます。

Neuronal Activity during Visual Perception 脳に映る視覚世界をリアルタイムで観察

(The gSA2AzGFF49A;UAS:GCaMP7a double-transgenic zebrafish used for imaging were also homozygous for the nacre pigmentation mutation [24] to eliminate melanophores. 論文リンク https://doi.org/10.1016/j.cub.2012.12.040

下の画像は新世界ザルの一種コモン・マーモセットが左手や左足を触られたときの脳(右側の体性感覚野)の活動の様子。動画は画像をクリックしてリンク先でご覧ください。


(Here, we report a method for long-term imaging of a GECI, GCaMP6f, expressed from adeno-associated virus vectors in cortical neurons of the adult common marmoset (Callithrix jacchus), a small New World primate. 論文リンク https://doi.org/10.1016/j.celrep.2015.10.050

 

GCaMPってどれがいいの?

研究者がこれからカルシウムイメージングをしてみたいという場合には、どのカルシウムプローブを選ぶかは重大な決断となります。G-CaMP(GCaMP)の場合、2001年の最初の報告以来、改良に改良が重ねられてきて、しかも発明者らを含む複数のラボが独立して改良に取り組んだため、改良型GCaMPの名前が必ずしも統一的になっておらず、かなり混乱させられる状況です。同じラボで開発されたものであればバージョンの数字が大きいほど一般的に性能が良い(シグナルノイズ比が良い、微弱なカルシウムイオン濃度の変化を検出可能)と言えるのでしょう。ただし理屈を言えば、見たい生理現象で変化するカルシウムイオン濃度の範囲がどのあたりかに合わせて、その範囲でシグナル強度がもっとも大きく変化するような解離定数を持つGCaMPを選ぶ必要があります。また、カルシウムシグナルの時間変化が速い現象を高い時間分解能で検出したいのであれば、GCaMPとカルシウムイオンが一度結合したあとに速やかに離れるようなものを選ぶ必要があります。シグナル(蛍光強度変化)を大きくするために、低カルシウム濃度における蛍光強度を弱く抑えた設計になっているものでは、カルシウムイオンが増加しない限り細胞がGCaMPの蛍光では見えにくく、実際には使いづらいという状況も有り得ます。結局のところ、どのGCaMPがベストかは、見たい生命現象、実験目的、実験のデザインによって変わってくると言えそうです。

jGCaMP7シリーズ (ジャネリア・ファーム)

ジャネリア・ファームの研究グループが新たにjGCaMP7のシリーズを開発し、論文発表前ですが既に塩基配列を公開しています。

(引用元:https://www.janelia.org/project-team/genie)

追記:論文のプレプリントが2018年10月3日にbioRxiveに投稿されていました。

High-performance GFP-based calcium indicators for imaging activity in neuronal populations and microcompartments. Hod DanaYi SunBoaz MoharBrad HulseJeremy P HassemanGetahun TsegayeArthur TsangAllan WongRonak PatelJohn J MacklinYang ChenArthur KonnerthVivek JayaramanLoren L LoogerEric R SchreiterKarel SvobodaDouglas S Kim https://www.biorxiv.org/content/early/2018/10/03/434589

 

GCaMP6シリーズ (GCaMP6s, GCaMP6f, GCaMP6m) (ジャネリア・ファーム)

個々のGCaMP6の名前の最後に付いているアルファベットs, f, mは、キネティクスの速さがそれぞれスロー、ファースト、メディウムであることを示しています。

Using structure-based mutagenesis and neuron-based screening, we developed a family of ultrasensitive protein calcium sensors (GCaMP6) that outperformed other sensors in cultured neurons and in zebrafish, flies and mice in vivo.

Based on screening in cultured neurons (Fig. 1), we chose three ultrasensitive GCaMP6 sensors (GCaMP6s, 6m, 6f; for slow, medium and fast kinetics, respectively) for characterization in vivo. These sensors vary in kinetics, with the more sensitive sensors having slower kinetics. (Chen et al., 2013 Nature 499, 295-300)

G-CaMP6, G-CaMP7, G-CaMP8およびそのヴァリアント (中井博士らのグループ)

The dynamic range of G-CaMP7 (Fmax/Fmin = 36.6±4.10, n = 3) was ∼3-fold greater than that of G-CaMP6, even though this variant showed a lower Ca2+ affinity (Kd = 243±14 nM, n = 3) than G-CaMP6 (Fig. 1B and C). By performing further random mutagenesis on G-CaMP7, we obtained a more sensitive variant of G-CaMP7 termed G-CaMP8,  (Ohkura et al., 2012 PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0051286)

we introduced amino acid substitutions into GCaMP-HS, tested their activities, and developed a new version, which we named GCaMP7a (Muto, Ohkura et al., 2013. Curr Biol. 23(4):307-311)

 

Caプローブのさらなる改良

  1. 脳情報動態の多色HiFi記録を実現する超高感度カルシウムセンサーXCaMPを開発-東大 (2019年05月14日 PM12:00 医療NEWS)従来のGECIはHill係数が2~3付近であることから、複数の発火に対し非線形的に蛍光強度が変化し、かつ、広範囲のCa2+濃度を検出するのが困難だった。そこで研究グループは、これらの問題を解決するために、超高速、高感度、Hill係数1かつダイナミックレンジが大きい多色GECIを作成することを目指した。

Calcium Imaging Gets a Multicolor Makeover / Cell, May 9, 2019 (Vol. 177, Issue 5) 2019/05/10 Cell Press

 

参考

ブログ

  1. GCaMP7(A317Lとは?) jGCaMP7 cultured neuron data (Mのメモ 2018-02-14

 

参考論文(【開発元とGCaMPのバージョン】)

  1. 【ジャネリア jGCaMP7シリーズ】jGCaMP7 (addgene.com) (論文未発表)
  2. 【ジャネリア GCaMP6シリーズ】Ultrasensitive fluorescent proteins for imaging neuronal activity. Chen et al.,2013. Nature 499:295–300. “we developed a family of ultrasensitive protein calcium sensors (GCaMP6) that outperformed other sensors in cultured neurons and in zebrafish, flies and mice in vivo.”  “Based on screening in cultured neurons (Fig. 1), we chose three ultrasensitive GCaMP6 sensors (GCaMP6s, 6m, 6f; for slow, medium and fast kinetics, respectively) for characterization in vivo.”
  3. 【中井博士ら GCaMP7a】Real-Time Visualization of Neuronal Activity during Perception. Muto, Ohkura et al., 2013.Curr Biol. 23(4):307-311. “we introduced amino acid substitutions into GCaMP-HS, tested their activities, and developed a new version, which we named GCaMP7a”
  4. 【中井博士ら G-CaMP6, G-CaMP7, G-CaMP8】Genetically Encoded Green Fluorescent Ca2+ Indicators with Improved Detectability for Neuronal Ca2+ Signals. Ohkura et al., 2012. PLOS ONE 7(12): e51286.  “As expected, G-CaMP6, a variant of G-CaMP5.09 bearing an M36L substitution in the CaM domain (Fig. 1A), showed a higher Ca2+ affinity (Kd = 158±4.0 nM, n = 3) than G-CaMP5.09 or the previously reported G-CaMP2 variants G-CaMP-HS [17] and G-CaMP3 [4] (Fig. 1B and C).” ” Next we performed random mutagenesis on G-CaMP6 by using an error-prone PCR [15] and were able to screen a highly responsive variant termed G-CaMP7, which differs from G-CaMP6 by a deletion of histidine (ΔH) in the RSET domain and an S205N mutation in the circularly permutated EGFP domain (Fig. 1A). The dynamic range of G-CaMP7 (Fmax/Fmin = 36.6±4.10, n = 3) was ∼3-fold greater than that of G-CaMP6, even though this variant showed a lower Ca2+ affinity (Kd = 243±14 nM, n = 3) than G-CaMP6 (Fig. 1B and C). By performing further random mutagenesis on G-CaMP7, we obtained a more sensitive variant of G-CaMP7 termed G-CaMP8,”
  5. 【ジャネリア GCaMP5シリーズ】Optimization of a GCaMP Calcium Indicator for Neural Activity Imaging. Akerboom et al., 2012.J Neurosci 32 (40) 13819-13840 “Through protein structure determination, targeted mutagenesis, high-throughput screening, and a battery of in vitro assays, we have increased the dynamic range of GCaMP3 by severalfold, creating a family of “GCaMP5” sensors.” “Consequently, the Asp380Tyr mutation raises the brightness of the calcium-bound state of GCaMP3 for both GCaMP5A and GCaMP5G; in addition, calcium affinity and cooperativity (Hill coefficient) are increased by ∼25% for GCaMP5A (Table 1).”
  6. 【中井博士ら G-CaMP 4.1】Tissue-Tissue Interaction-Triggered Calcium Elevation Is Required for Cell Polarization during Xenopus Gastrulation. Shindo et al., 2010. PLoS ONE 5(2): e8897. “G-CaMP 4.1, which is an improved form of a previously reported calcium indicator,”
  7. 【中井博士ら GCaMP-HS】Genetic visualization with an improved GCaMP calcium indicator reveals spatiotemporal activation of the spinal motor neurons in zebrafish. Muto, Ohkura et al., 2011. PNAS 108 (13) 5425-5430. “we developed GCaMP-HS (GCaMP-hyper sensitive), an improved version of the genetically encoded calcium indicator GCaMP,” “Kd and Hill coefficient of GCaMP-HS were 102 nM and 5.0, respectively (Fig. 1D). Kd and Hill coefficient of GCaMP2 were 146 nM and 3.8, respectively, indicating that GCaMP-HS has a higher affinity to Ca2+ ions and a higher cooperativity”
  8. 【ジャネリア GCaMP3】Imaging neural activity in worms, flies and mice with improved GCaMP calcium indicators. Tian et al., 2009. Nat Methods. 6(12):875-81.”We developed a single-wavelength GCaMP2-based GECI (GCaMP3), with increased baseline fluorescence (3-fold), increased dynamic range (3-fold) and higher affinity for calcium (1.3-fold). We detected GCaMP3 fluorescence changes triggered by single action potentials”
  9. 【ジャネリア GCaMP2結晶構造解析】Crystal Structures of the GCaMP Calcium Sensor Reveal the Mechanism of Fluorescence Signal Change and Aid Rational Design. Akerboom et al., 2009. J Biol Chem. 284, 6455-6464
  10. 【ジャネリア&中井博士ら GCaMP2】Imaging cellular signals in the heart in vivo: Cardiac expression of the high-signal Ca2+ indicator GCaMP2.
    Tallini, Ohkura, et al., 2006. PNAS 103 (12) 4753-4758. “previously described sensors have proved to be of limited use to report cell signaling in vivo in mammals. Here, we describe an improved Ca2+ sensor, GCaMP2,”
  11. 【中井博士ら 元祖G-CaMP】A high signal-to-noise Ca2+ probe composed of a single green fluorescent protein. Nakai et al., 2001. Nat Biotech. 19:137–141.

 

まだ制限酵素サイトで悩んでるの?

一昔前までは、DNAコンストラクションと言えば、同じ制限酵素で切断したDNA断片(あるいは異なる制限酵素であっても切り口が同一の断片)を、DNAリガーゼで結合させるというのが一般的でした。そのため、DNAコンストラクションを考えるときには、どんな制限酵素が使えるかというのは大問題だったわけです。しかし、テクノロジーの進歩により時代はすっかり様変わりしました。ギブソンアセンブリー(Gibson Assembly (Gibson et al., 2009 Nat Methods))、NEBuilder、 In-Fusion, GeneArtなど、短いホモロジーをもつDNA断片をひとつにする方法が相次いで開発され、手軽に使えるキットが市場に出回った結果、DNAのコンストラクトを作成するときに制限酵素サイトが不要になったからです。

今となっては、DNAコンストラクションを行うための適当な制限酵素サイトで知恵を絞るのは、自分が昔学んだやり方にこだわり続ける、一部の高齢の研究者だけなのでしょうか。

最先端の研究を行うためには新しいテクノロジーをいち早く自分の研究に取り入れる必要があるわけですが、その一方で、研究者というのは、ある部分非常に保守的で、自分が過去にうまくいったやり方に固執してしまうものです。たとえそれがすっかり時代遅れなものになっていたとしても。

 

ギブソンアセンブリー

各メーカーからいくつかのキットが発売されており、一般的に使われていますが、制限酵素サイトで悩む必要がないということをわかりやすく伝える動画(2010年)をまずは見てみましょう。ギブソンアセンブリー(Gibson Assembly) の原理が歌に乗せて説明されています。

The Gibson Assembly Song

Gibson Assembly システム (ギブソン・アッセンブリー・システム)

  1. 末端に15塩基の相同配列があるDNA断片とGibson Assemblyマスターミックスを混合し、15-60分間インキュベーションするだけ
  2. 複数断片を一括してクローニングすることが可能
  3. 10kbのインサートでも94%の高いクローニング効率
    (引用元:NEB https://www.nebj.jp/f/541

We describe an isothermal, single-reaction method for assembling multiple overlapping DNA molecules by the concerted action of a 5′ exonuclease, a DNA polymerase and a DNA ligase. First we recessed DNA fragments, yielding single-stranded DNA overhangs that specifically annealed, and then covalently joined them. This assembly method can be used to seamlessly construct synthetic and natural genes, genetic pathways and entire genomes, and could be a useful molecular engineering tool. (Gibson et al., Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases. Nature Methods volume 6, pages 343–345 (2009) doi:10.1038/nmeth.1318)

  1. NEW ENGLAND BioLabs (NEB) 製品情報 Gibson Assembly Master Mix カタログ番号:E2611S 、サイズ:10 reactions、価格:¥18,000
  2. Gibbson Assembly (NEB)
  3. Daniel G Gibson, Lei Young, Ray-Yuan Chuang, J Craig Venter, Clyde A Hutchison III & Hamilton O Smith. Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases. Nature Methods volume 6, pages 343–345 (2009) doi:10.1038/nmeth.1318
  4. I’m having a lot of troubles with this reaction. Supposedly, it’s pretty quick and easy… but I’ve been working in this construction for months. (Asked 5 years ago
    Gabriela Chavez-Calvillo, ResearchGate)
  5. I recently Gibsoned a 9kb insert into a 5kb vector at a 1:1 molar ratio.(Christopher Duran, Colorado State University, 5 years ago ResearchGate)
  6. Gibson Assembly – Science topic ResearchGate

 

NEBuilder HiFi DNA アッセンブリー

Gibson AssemblyのキットはNEBから発売されていますが、NEBは今は同様の原理に基づく「NEBuilder HiFi DNA アッセンブリー」という製品を推奨しているようです。

NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kit

  1. Gibson Assemblyより正確かつ高効率
  2. 末端に 15 塩基の相同配列がある DNA 断片とマスターミックスを混合し、15 – 60 分間インキュベーションするだけ
    (引用元:NEB https://www.nebj.jp/products/detail/1941
  1. NEW ENGLAND BioLabs (NEB) 製品情報 NEBuilder HiFi DNA アッセンブリー 製品名:NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix, 製品番号:E2621S, 容量:10 reactions, 希望小売価格:¥18,000
  2. Gibson Assembly® Cloning Kit: Have you tried NEBuilder HiFi DNA Assembly? NEBuilder HiFi offers several advantages over NEB Gibson Assembly. For more information, visit NEBuilderHiFi.com.
  3. NEBuilder® HiFi DNA Assembly (New England BIoLabs; NEB)
  4. Introduction to NEBuilder HiFi DNA Assembly

 

In-Fusion

NEBのギブソンアセンブリーと並んで、人気を二分するのが、クローンテックのIn-Fusion(販売:Takara)。

an In-Fusion™ enzyme reaction can join any two pieces of DNA that have 15 bp of identity at their ends. … The In-Fusion mechanism is ligation-independent and while proprietary, likely uses the unique properties of the 3′–5′ exonuclease activity of poxvirus DNA polymerase. When incubated with linear duplex DNAs with homologous ends in the presence of Mg2+ and low concentrations of dNTP, the 3′–5′ proofreading activity of poxvirus DNA polymerase progressively removes nucleotides from the 3′ end. This exposes complementary regions on substrate DNAs that can then spontaneously anneal through base pairing, resulting in joined molecules containing a hybrid region flanked by nicks, 1–5 nucleotide gaps, or short overhangs. The annealed structures are metastable because the poxvirus DNA polymerase has a lower affinity for nicked or gapped DNA ends than for duplex ends. Introduction into Escherichia coli repairs any single-stranded gaps. (Zhu et al., BioTechniques, Vol. 43, No. 3, September 2007, pp. 354–359)

  1. In-Fusion® HD Cloning Kit (Clontech / Takara) (商品と価格の一覧、製品説明など)
  2. In-Fusionクローニングのススメ 2nd Edition (タカラバイオ PDF) 多くのユーザー様にご愛用いただいているIn-Fusion®ですが、知ってるけれど使ったことはないという方も
  3. すでにIn-Fusionをお使いのユーザー様からお寄せいただいた「使ってよかった!」のユーザーズボイスをご紹介(Takara)
  4. Design Genes with Ease Using In-Fusion Cloning (Clontech)

 

GeneArt DNA Assembly

GeneArt® DNA Assembly – Meet the Inventor Series

  1. GeneArt® シームレスクローニングおよびアセンブリキット (ThermoFisher SCIENTIFIC) 製品番号(カタログ番号) :A13288, 容量:20 reactions,標準価格: (JPY)54,600

 

SLiCE

we developed a new restriction site independent cloning method that does not leave any unwanted sequences at the junction sites (seamless) and is based on in vitro recombination between short regions of homologies (15–52 bp) in bacterial cell extracts termed SLiCE (Seamless Ligation Cloning Extract). (Zhang, Werling and Edelmann. Nucleic Acids Res. 2012 Apr; 40(8): e55. Published online 2012 Jan 11. doi: 10.1093/nar/gkr1288)

  1. SLiCE from Escherichia coli laboratory strains(本橋研究室):seamless cloningに関連する試薬は、Gibson assembly kitやIn-Fusion kitなどの名称で様々なメーカーから商品化されていますが、その多くが高価で、資金の乏しい研究室では購入を躊躇しているかもしれません。そのような方に、ぜひ試していただきたいのがこのSLiCE法です。

 

iVEC

iVEC大腸菌株(AQ3625株)は、PCR増幅した挿入DNA断片とベクターDNAを同時にトランスフォームするだけでシームレスクローニングができるという大腸菌株です。ナショナルバイオリソース – 大腸菌(仁木研)(Facebook 太字強調は当サイト)

 

Cold Fusion

Homologous DNA ends are efficiently fused together and produce vector clones with great accuracy. (Cold Fusion Cloning Kit with Competent Cells. How It Works. SBI System Biosciences))

  1. フナコシ試薬商品紹介サイト メーカー :SBI 商品コード:MC010A-1 商品名:Cold Fusion Cloning Kit (10reactions) 包装:1kit 価格:\44,000

 

で、結局、どのキットがいいの?

似たような原理にもとづいて同じことができるキットが複数のメーカーから発売されているため、どれが一番いいの?という疑問が生じます。同じラボ内でも研究者ごとに選択肢が異なっていたりもしますので、実験目的、好み、最初にうまくいったからといった理由で決まるのかもしれません。

ちなみに自分はIn-Fusionしか使った経験がありません。知り合いが使っていて、初めて知ったのがたまたまIn-Fusionだったからというだけの理由です。ラボ内の同僚は違うキットを愛用しているようです。

ギブソンアッセンブリー、In fusion、Gene artなど制限酵素処理なしで相同配列を利用してDNAを繋げる方法でPCR産物をベクターにクローニングする場合、試薬会社から購入できるものの中で使用感が良いものはどれでしょうか?(BioTechnicalフォーラム 2015/12/02

1) gibson leaves no nick on the product, while infusion does.
2) gibson is more robust, it tolerate 3´- & 5´-end mismatch, while infusion doesn’t. … most false positive colonies i got when using gibson were actually caused by primer dimer or unspecific pcr products (they have the same overlap ends as the designed products)
3) there is ligase in gibson. so if you use only one restriction enzyme to linearize your plasmid backbone and use it in the assembly. The ligase may repair the backbone back to empty plasmid.

(Xinglin Jiang, Technical University of Denmark. What‘s the differences between the gibson assembly(NEB) and in-fusion clone(clontech)? ResearchGate)

A major limitation to SLIC/Gibson/CPEC/SLiCE assembly is that the termini of the DNA sequence fragments to be assembled should not have stable single stranded DNA secondary structure, such as a hairpin or a stem loop (as might be anticipated to occur within a terminator sequence), as this would directly compete with the required single-stranded annealing/priming of neighboring assembly fragments. (The SLIC, Gibson, CPEC and SLiCE assembly methods (and GeneArt® Seamless, In-Fusion® Cloning. j5.jbei.org)

 

節約法

高い試薬キットを使うときに、メーカーによって推奨される容量よりもスケールダウンすることにより使用量を節約して、使う回数を増やすということがラボではよく行なわれています。(*自己責任で)

 

まだ制限酵素使ってんの?

今の状況がわかるツイートを紹介。

 

制限酵素を使わずにDNAコンストラクトを作成する時代

時代がすっかり変わったねという認識を促すレビュー記事をいくつか紹介。

Over the past decade, scientists have developed and fine tuned many different ways to clone DNA fragments which have provided appealing alternatives to restriction enzyme cloning. These newer technologies have become more and more common, and for good reason. They offer many advantages over the traditional restriction enzyme cloning we once relied exclusively on. (Addgene’s Blog. Posted by Brook Pyhtila on Mar 1, 2016 太字強調当サイト)

It’s been more than four decades since researchers launched the molecular-biology revolution with the invention of DNA cloning. In that time, the tools of the trade have changed relatively little, and for many researchers, DNA cloning still means restriction enzyme digestion and DNA ligation. … Today, thanks largely to the needs and creativity of the synthetic-biology community, alternative, “seamless” cloning strategies have been developed. Here are some of the more popular options. (Say Goodbye to Genetic Scars with These Seamless Cloning Kits
Posted: May 29, 2014 Jeffrey M. Perkel 太字強調は当サイト)

 

参考

  1. Gap-Repair Cloning:GRCがinvitrogenからkit化されて発売されています。GeneArt?® Seamless Cloning & Assemblyという名前です。酵母のコンピテントセルやトランスフォーメーション試薬、大腸菌のコンピテントセル等もすべて含まれたキットです HM’s Home page
  2. 相同組換え方法およびクローニング方法並びにキット Inventor 正治 磯部 信幸 黒澤 Original Assignee 国立大学法人富山大学 Priority date 2008-03-07
  3. Homologous recombination-based DNA cloning compositions. US8501454B2 Inventor:Weiqiang Liu, Ping Yang, Tao Wang, Zhuying Wang, Wenzhu Chen, Fang Liang Zhang, Original Assignee:Nanjingjinsirui Science and Tech Biology Corp, Priority date 2008-09-10
  4. Cloning Without Restriction (TheScientist September 12, 2005) Key to Invitrogen’s Gateway technology is the “entry clone,” which contains a fragment of interest in a recombinase-ready plasmid. Researchers can quickly and efficiently move between expression systems without subcloning by swapping the insert from vector to vector.
  5. 2003-08-28 US20030162265A1
  6. まだ東京で消耗してるの?  イケダハヤト著 幻冬舎 2016年