低酸素、腎臓、hypoxia-inducible factor (HIF) 、エリスロポエチン(Epo)について

   




2019年度ノーベル医学生理学賞は、低酸素刺激に対して生体がどのように反応するかに関する研究を行ったウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフ、グレッグ・セメンザの3氏に贈られました。

hypoxia-inducible factor (HIF) の発見

HIF-1は,肝がん細胞株 Hep3B において「低酸素依存的 にエリスロポエチン(EPO)を誘導する因子」として1992 年に Semenza らによって発見された.

Semenza, G.L. & Wang, G.L.(1992)Mol. Cell. Biol., 12, 5447―5454.

(引用元:生化学 第85巻 第3号,pp.187―195,2013

 

エリスロポエチン(Epo)

エリスロポエチン(Epo)は赤血球産生を制御する造血ホルモンであり、組織の低酸素に応答して産生され、骨髄などの造血細胞に働いて赤血球産生を刺激します(図2)。高地トレーニングをしている運動選手の血液では赤血球数、および、酸素運搬に関わるヘモグロビン量が増加しますが、これも低酸素環境におけるEpo産生の亢進によるものです。また、ヒトの大人ではEpoは主に腎臓において産生されます。(引用元:エリスロポエチン遺伝子の発現制御 dmbc.med.tohoku.ac.jp)

 

腎臓と低酸素

腎臓は酸素消費が多く,更に動静脈シャントのため 酸素の取り込み効率が悪いため,低酸素状態になりや すい臓器であり,様々の要因によって引き起こされる 尿細管間質の慢性低酸素が腎臓病の final common pathway として注目されている。(引用元:日児腎誌 Vol. 25 No. 2

腎臓は生体が必要とする酸素の30%を消費する,非常に酸素需要の高い臓器となっている.このため,腎臓病のfinal common pathwayとして,尿細管間質の慢性低酸素状態が特に重要と考えられている.(第 113 回日本内科学会講演会 結実する内科学の挑戦~今,そしてこれから~ 平成28年4月17日(日)東京都・東京国際フォーラム 日本内科学会雑誌 105 巻 9 号

 

腎が低酸素になりやすい理由としては,エネルギー需要が高いことに加え,尿細管周囲毛細血管網による酸素供給が血行動態の変化により影響を受けやすいことや,解剖学的な理由により動静脈酸素シャントが存在するため酸素の利用効率が悪いことがあげられる.(慢性低酸素状態の腎臓 244巻4号 2013年1月26日 医学のあゆみ

 

HIF刺激薬

EPO遺伝子の転写を促進する低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor: HIF)が同定され、さらにその上流の調節機構が解明されたことを背景に、「HIF活性化薬」としてPHD阻害薬が開発されました。 PHDはHIF (α鎖)を水酸化し、ユビキチン・プロテアソーム分解を導く酵素で、PHDの酵素活性を阻害するとHIFは安定化し、HIFを介する低酸素応答が誘導されます。(第4回(1)EPOから生まれた「HIF刺激薬」ここがすごい!執筆:田中哲洋(東京大学医学部附属病院)、監修:南学正臣(東京大学医学部附属病院)2018年8月15日 m3.com

 


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