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【科学英作文】useを使うかutilizeを使うか?使い分けの考え方

英語で論文を書くときに、ついつい格調高い言葉を使おうとしてelucidateだのutilizeだのを多用してしまいがちなのですが、英文校正に出すともっと平易な単語に直されることが多いです。

なぜuse でなくutilizeなのか?なぜutilizeでなくuseなのか?を考えてみたいと思います。

utilizeの意味はケンブリッジディクショナリーによれば、

to use something in an effective way(dictionary.cambridge.org

ということなので、単に使うというよりも、利用するという意味です。

utilizeの用例

ludwig.guruの例文を一つ紹介。

Economics is the study of how to utilize limited resources to achieve good ends.

なるほど確かに、単に「使う」以上の意味があります。

論文でどのように使われているか、例を拾ってみます。

  1. Preimplantation genetic diagnosis and screening have been utilized for years to avoid implantation of embryos harboring monogenic disease-causing alleles or aneuploidies.(論文
  2. Using imaging methodologies and virus-specific reporters, we demonstrate that β-coronaviruses utilize lysosomal trafficking for egress rather than the biosynthetic secretory pathway more commonly used by other enveloped viruses. (例文)
  3. Given this, we next interrogated the status of the secretory pathway in infected cells and whether this pathway was utilized for MHV egress. (例文)
  4. We utilized the SDL network to predict the response of various cancer cell lines to anticancer drugs. (例文)

 

参考

  1. utilize (Cambridge Dictionary)
  2. “Use” Versus “Utilize” (Quick and Dirty Tips) The word “utilize” often appears “in contexts in which a strategy is put to practical advantage or a chemical or nutrient is being taken up and used effectively” (9).

 

英文校正業者の選び方と英文校正の利用の仕方

論文を出すことを生業としている研究者にとって、悩ましい問題の一つが、英文校正の業者選びです。価格設定は英文校正の会社によってピンキリですし、高いサービスが必ず良いという保証もありません(実体験)。

「どこかいいとこ知らない?」、「どこ使ってる?」といった会話は研究者の間で日常的ですが、残念ながらココがお勧めといえる会社を自分は知りません。英語を直してくれるのは会社ではなくて、「人」なので、自分の論文原稿を直してくれるったった1人の良い人が見つかる会社がいい会社なのでしょう。

以下、英文校正に関して思うことを書き記します。

 

そもそも英文校正に出すべきか

日本人の研究者(PI,教授)の中には自分の英語力に絶対的な自信を持っているのか、英文校正のサービスへの信頼がないのか、科学的に内容が良ければ通ると思っているのか、英文校正に出さずに論文投稿してしまう研究者もいます。確かに、レビューアーが非常に好意的だった場合には、レビューアーが英語を直してくるというケースもなくはないです。しかし、それはレビューアーが実は論文著者の友人だったとか、かなり特殊なケースなのではないでしょうか。最初からそれをアテにするのは、論文がリジェクトされる可能性を増やすだけなのでやめたほうが良いと思います。

今までに,英語論文作成などにあたって他者に添削を依頼したことがありますか。
ある 289
ない 30

出典 報告書(アンケート調査)日本の研究者と英語の必要性 平成24年9月28日 PDF

 

査読者が記入するフォームの中には、その論文原稿の英語がそのまま出版できるレベルか、英文校正(Editing)が必要な状態かを評価するようになっている学術誌も多いので、論文の価値の有無と英文のひどさは、査読の過程で切り分けられているかもしれません。しかし、英語が悪いと言いたいことが伝わらなかったり読者に誤解させることになるので、やはり、「後から直せばいいや」と思わずに、最初の投稿時に英語を完全にしておきたいものです。

英語が悪くても、わざわざ直すほどのことでもない場合、結局だれも直してくれなくて悪文がそのまま出版されることになります。それを後で読み直すとかなり恥ずかしい思いをします。

 

誰が英文校正をしているのか

英文校正会社の売り文句を見る限り、校正をしてくれる人たちが現役の研究者であったり、引退した研究者であったりするところもあるようです。しかし、自分がこれまでに利用した「業界大手」の会社の場合、あきらかに論文を書いた経験がない、高等教育においては英語が公用語かもしれないが非英語圏の国の学生さん?みたいな人が多かった印象があります。学会のブースに出店していたその会社にこの質問を直接ぶつけてみたことがありますが、そんなことはない、みたいな回答でした。

誰が見てくれるのかわからない大きい会社よりも、一人でやっている小さな会社のほうが、英文校正者の経歴が明らかで良いかもしれません。一度利用してみてもしその人の直しかたが満足できるものであれば、その後も一定の品質が期待できます。大手の場合には、一度やってもらって良かった人を再度指名できる制度があるなら、それを利用すると良いでしょう。

 

高いサービスが良いとは限らない

単に英語の文法の間違いを直すだけでなく、論文の構成にまで踏み込んだアドバイスをしますという高い料金設定のサービスを提供しているところもあります。自分の数少ない経験では、単に論文の構成がぐちゃぐちゃにされただけで何もいいことがありませんでした。校正者が、何かを直さねばと力んでしまったせいかなと思いました。

論理的な構成をどのようにするかは、やはり研究者としての能力の見せ場であって、それを英文校正の人に委ねるのは(その人が自分よりも優秀な研究者でない限り)賢明だとは思いません。

言語表現能力は、学生か研究者かの違いよりも個人の違いのほうが大きいと思います。ですから、大手の英文校正サービスの会社で仮に学生のバイトが多かったとしても、いい人に当たる可能性はあります。自分は低価格設定のコースを選んで、学会要旨程度の短い英文でいろいろな人を試しておいて、良さげな人がいればその人に論文原稿を頼むという戦略が良いと思いました。

 

英文校正に何を期待するのか

英文校正をやってくれる人は、研究経験が浅いかあるいはあったとしても分野外の人でしょう。ですから、自分の英語が悪いとそもそも意味を誤解されて、著者の意図とは異なる内容の、正しい英文に直されることがしばしば起こります。ですから、英文校正が施されて戻ってきた原稿は、意味が変わっていないかどうかを注意深くチェックする必要があります。間違っても、そのまま鵜呑みにして投稿してはいけません。

文法や語法の間違いを直してもらえのは当然としても、英文校正を利用する一番の効果は実は、部外者が読んで理解できる英文を自分が書けていたかがわかることではないかと個人的には思っています。

自分の考えを裏付ける内容が、英語校正の「エナゴ」のQ&Aにありました。

校正者が作業するときに最も困難と感じるのは、「筆者の言いたいことが分からず、意図を推測するしかない」ときだそうです。弊社で実施した校正者に対するアンケート調査において、71名の校正者のうち87%がその点を「最も困難」と回答しました。つまり、お客様の言いたいことが校正者に伝わらないケースは、常に起こる危険があるということです。(Q 日本語ネイティブの翻訳者が関わらずに、どうして内容を理解し校正が可能なのか? よくあるご質問(FAQ) 英文校正・校閲エナゴ)*太字強調は当サイト

 

サービスの使いやすさ

完全を求めないのであれば、英文校正サービスの利用のしやすさも重要なポイントです。自分は大手を使うことが多いのですが、文字数から料金が直ちにわかって、日数が選べて(速いほど高価)、これまでの校正記録が保存できて、土日祝日無関係で、原稿の送付が簡単でといった利便性も重要だと思いました。特に、締め切りがあるものの英文校正を頼む場合には、迅速さと確実性は大きなポイントです。

 

関連記事

  1. 科学英語論文の英文校正サービスを行う会社一覧

 

参考

  1. 報告書(アンケート調査)日本の研究者と英語の必要性:日本の高等教育研究機関における英語サポートプログラム構築のために(平成24年9月28日 﨑村耕二 深田智 河野亘 PDF

 

医学系の学術雑誌インパクトファクター 2018ランキング

生命科学全般はコチラ ⇒ インパクト・ファクター(IF)2017学術誌ランキング(2018年発表)

 

基礎医学および臨床医学の主要な学術誌のインパクトファクターを纏めます。

臨床医学・基礎医学総合誌

  1. NEJM (New England Journal of Medicine) ニューイングランドジャーナルオブメディシン IF=79.258 (bioxbio.com) “Our mission is to bring physicians the best research and information at the intersection of biomedical science and clinical practice” (About)
  2. THE LANCET (ランセット) IF=53.254 (bioxbio.com)
  3. JAMA (The Journal of the American Medical Association;米国医師会雑誌)  Impact Factor of 47.7 “an international peer-reviewed general medical journal”
  4. Nature Medicine IF=32.621 (bioxbio.com)
  5. EBioMedicine (Published by Lancet) has an Impact Factor of 6·183
  6. Medicine  Impact Factor: 2.028 “a fully open access journal, providing authors with a distinctive new service offering continuous publication of original research across a broad spectrum of medical scientific disciplines and sub-specialties” (About)
  7. Journal of Clinical Investigation (JCI) Impact Factor: 13.25 (2017). “publishes basic and phase I/II clinical research submissions in all biomedical specialties, including Autoimmunity, Gastroenterology, Immunology, Metabolism, Nephrology, Neuroscience, Oncology, Pulmonology, Vascular Biology, and many others.” (About)
  8. Medicine (Baltimore)  2.028 (Wikipedia)
  9. Medicine (Elsevier)  “Elsevier’s Medicine is a continually updated, evidence-based learning resource for trainees.”
  10. JAMA Network Open “an international, peer-reviewed, open access, general medical journal that publishes research on clinical care, innovation in health care, health policy, and global health across all health disciplines and countries for clinicians, investigators, and policy makers.” (For Authors) “The journal started publishing in 2018.” (Wikipedia)
  11. JCI Insight Impact Factor (2017) N/A (Founded 2016) “a peer-reviewed journal published by the American Society for Clinical Investigation dedicated to well-executed preclinical and clinical research studies”
  12. Journal of Clinical Medicine(MDPI) Impact Factor: 5.583 (2017)

新谷 歩 『あなたの臨床研究応援しす』 

康永秀生『できる!臨床研究 最短攻略50の鉄則

木下晃吉『臨床医による臨床医のための3Step論文作成術

 

がん・腫瘍学

  1. Lancet Oncology has an Impact Factor of 36·421 “covers topics that advance clinical practice, challenge the status quo, advocate change in health policy, and tackle issues related to global oncology.” (About)
  2. Journal of Clinical Oncology (JCO) JCO‘s Impact Factor is 26.303 (About)
  3. Cancer Discovery (AACR Journals) Impact Factor 24.373
  4. Cancer Cell (Cell Press) Impact factor (2017) 22.844 (Wikipedia)
  5. JAMA Oncology Impact Factor of 20.9 “journal for scientists, clinicians, and trainees in the field of oncology” (About)
  6. Clinical Cancer Research Impact factor (2017) 10.199 (Wikipedia)
  7. Cancer Research (AACR) Impact Factor 9.1301 (AACR Journals Metrics)
  8. Liver Cancer (Karger) Impact Factor 2016: 7.854
  9. International Journal of Cancer (IJC) (Wiley) Impact factor:7.36 
  10. Cancer (Wilely) Impact factor:6.537 
  11. British Journal of Cancer (nature.com) 2 Year Impact Factor: 5.922 “publishing significant advances in translational and clinical cancer research” (About)
  12. European Journal of Cancer (EJC) Impact factor (2014) 5.417 (Wikipedia) “integrates preclinical, translational, and clinical research in cancer, from epidemiology, carcinogenesis and biology through to innovations in cancer treatment and patient care” (Aims and Scope)
  13. Cancers (MDPI) Impact Factor: 5.326 (2017)
  14. Frontiers in Oncology Impact Factor 4.416
  15. Clinical Lung Cancer (Elsevier) Impact Factor: 4.204
  16. BMC Cancer  3.288 – 2-year Impact Factor
  17. Oncology Reports Impact Factor: 2.976
  18. International Journal of Clinical Oncology (Springer) 2017 Impact Factor 2.610
  19. Cancer Science (Wilely)

 

免疫学

  1. Nature Immunology 2-year Impact Factor: 21.809 (About)
  2. Immunity (Cell Press) IF:19.734 (bioxbio.com)
  3. Science Immunology
  4. Frontiers in Immunology IMPACT FACTOR: 5.511
  5. Journal of Immunology   Impact factor:Two-year: 4.856 (2016 Journal Citation Reports)(About)
  6. Immunology (Wilely) Impact factor:3.358 

 

幹細胞・再生医療

  1. Stem Cell Reports (Cell Press) Journal Impact Factor: 6.537
  2. Stem Cell Research (Elsevier) Impact Factor: 3.902 
  3. Cell Stem Cell (Cell Press) IF:23.290 (bioxbio.com)

 

循環器科

  1. Journal of the American College of Cardiology (JACC) IF:16.834 (bioxbio.com)
  2. Circulation (AHA/ASA Journals) IF:18.88 (AHA/ASA Journals Metrics)
  3. Heart (BMJ Journals) Impact Factor 5.420

 

糖尿病

  1. Diabetes Care(American Diabetes Association) Impact factor (2017) 13.397 (About)
  2. Diabetes (American Diabetes Association) Impact factor (2017) 7.273 (About)
  3. Journal of Diabetes Investigation (JDI)(Wilely) Impact factor:3.147 

 

呼吸器科

  1. ブルージャーナル (AJRCCM; American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine) Impact Factor: 15.24   “publishes high-quality original papers, reviews, and clinical trials in respiratory, critical care, and sleep medicine to foster advances in translational research and clinical practice.” ” focuses on human biology and disease, as well as animal studies that contribute to the understanding of pathophysiology and treatment of diseases that affect the respiratory system and critically ill patients.” (About)

 

神経内科・精神科・脳外科・神経科学

  1. THE LANCET Neurology has an Impact Factor of 27·144 (About)
  2. THE LANCET Psychiatry has an Impact Factor of 15·233 (About)
  3. Molecular Psychiatry (nature.com) 2017 Impact Factor 11.640 (About)
  4. Epilepsia (Wiley) Impact factor:5.067
  5. Journal of  Neurology (Springer) Impact Factor 3.743
  6. BMC Psychiatry   2.419 – 2-year Impact Factor
  7. World Neurosurgery (Elsevier) Impact Factor 2017: 1.924 
  8. Neurology and Clinical Neuroscience (Wilely) 日本神経学会の公式英文誌

症例報告

  1. Clinical Case Reports (Wiley)
  2. BMJ Case Reports
  3. American Journal of Case Reports (AJCR)

 

日本の医学関連学会の学会誌のインパクトファクター

  1. 日本の医学系学会英文誌、2018年6月発表 インパクトファクターのご案内 Wiley出版

 

その他

  1. Medical Research Archives (MRA)(KEI Journals) “publishing research and clinical medicine” (About)

新谷 歩『今日から使える 医療統計

新谷 歩『みんなの医療統計 多変量解析編

原 正彦『実践対談編 臨床研究 英語論文 最速最短

 

参考

  1. Anyone heard of the journal “Medical Research Archives”? Thoughts on it? Spam/predatory journal? 21:09 – 2015年10月21日

リジェクトへの怒り・落胆【論文を出す力】

研究者には論文を書く能力が必要ですが、それだけでなく、論文を世に出す(=アクセプトに漕ぎ着ける)力も必要です。両者は重なる部分もありますが、質的に全く異なります。論文を書くうえで重要なのは知性ですが、論文を出すときに重要なのはリジェクトされたときの落胆、怒り、失望、疑念などの感情をコントロールする力、揺るぎない信念、状況を見極める客観性や判断力です。

リジェクトに対する心構えが出来ているだけで、受けるダメージ及び回復力が変わってくると思いますので、これから論文を出す人の参考になりそうな記事を紹介しようと思い立ちました。また、結果だけを見ると、みんな順調に論文を通しているように思えるかもしれませんが、実際には、他人には想像がつかないような苦労の末になんとかアクセプトまで漕ぎ着けたという場合がほとんどです。そんな論文出版の苦労を分かち合える記事を、以下に紹介します。

折れない心

何年もかけてやってきたプロジェクトの成果が、辛辣なコメントともにリジェクトとなった場合は、自分の研究者としての能力を否定された気分になり、相当なダメージを受けるが、折れないタフな心をもってアクセプトになるまで戦い続けるしかない。 …

散々追加実験を頑張った上での再投稿にも関わらず、やはりリジェクトとなった場合は時間的にも精神的にも相当ダメージは大きく、また半年〜1年前にもどって別のジャーナルにいちから投稿し直しとなる、、、 (有名ジャーナルに論文が掲載される意義 IMAYOSHI LAB 2013年11月22日)

最近、友人の一人の論文が、Natureにacceptされたのですが、それが実にすさまじい闘いだったのです。彼が最初の論文を書き上げたのが、3年ほど前。まず、Natureに送りました。Editorial kickにはならず、レビューに回りましたが(トップジャーナルでは、レビューに回るだけでも凄いのです)、rejectされました。レビューアーからのコメントがあったため、追加実験を行って全てのコメントに答えた上で再投稿した。しかし、結果はやはりreject。そこで、彼はScienceに投稿しました。Scienceでもレビューに回りましたがreject。これだけでも凄すぎるのに、これからが彼の凄いところでした。Scienceで得たコメントで指摘された点を改善し、なんと再びNatureへ投稿。再びレビューに回るも、reject。再実験を重ねた上、レビューアーのコメントに答えて、Editorへ抗議。その後、結局、acceptされたのです。(Never give up! Alltid Leende April 22nd, 2013

まず青い方からこの表をみる。サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。(サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日)

 

批判を受け止める力

Coping with publication rejection is a key skill for any academic. It can require emotional fortitude, an ability to profit from criticism, and, sometimes, negotiating skills. Many papers in the scientific literature were initially rejected, often sparking vigorous scientific discussions before their eventual publication, whether in the same journal or a different one. (Riding Out Rejection By Kate Yandell The Scientist March 1, 2015)

 

リジェクトされた時にやるべきこと

一度リジェクトされただけであきらめてしまうのは、マラソンを走りながら、ゴールのわずか数センチ手前であきらめてしまうようなものだ。もし著者が掲載に強い意志を持っているならば、次に取るべきステップは、リジェクトのレターにあるコメントすべてを正確に理解することである。 (原稿がリジェクトされた時の対処法 根拠と経験に基づく見解 Karen L. Woolley, PhD; and J. Patrick Barron, BA. CHEST 2009; 135:573-577. Ronbun.jp 大鵬薬品工業株式会社)

論文を書き上げることとそれをアクセプトさせることには、恋愛と結婚ほどの違いがある。論文を書き続ける限りリジェクトとのつきあいは切れないと 思った方がよい。私の場合、二本目の論文がリジェクトされて、それはそのままお蔵入りとなった。思えばその時、それから合計 33 回もリジェクトされるようになるとはちょっと想像していなかった。最初のリジェクトの時には、自分の人格が否定されたようでずいぶん落ち込んだ。もちろん 今でも、リジェクトされたときのショックは大きい(とくに、一週間に二度リジェクトの手紙をもらったときなど)。しかしものは考えようで、リジェクトされたとは思わないようにしている。つまり、どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うことである。たいていの場合、その論文のどこがいけないのか指摘 が付いてくる。それらを参考にして論文を改訂し、別の雑誌に投稿すればいいだけの話だ。(これから論文を書く若者のために 改訂第二版 1999.1.21. ver. 2.1 酒井 聡樹 )

 

リジェクトという名の授業料

論文に限らず、拒絶されるのは自分を見直す良い機会だと思います。

研究者、とくにチームのリーダーは、人から学ぶ機会が少なくなるものである。レビューアーのコメントの中には、書いた本人が気づかなかったような議論がなされていることがある。そして、論理の展開に落とし穴があることが指摘されている。そのような議論をクリアするために、追加実験を行い、実験結果を見直すと、新しい発見が生まれてきたことを経験している。また、確実な論拠を得て、論理の展開がしっかりしたものとなり、論文の価値が高まっていくのを実感することがある。レビューアーの中には、ここまで結果を出せば論文になるよと、到達目標を提示してくるケースがある。このような到達目標の多くは、研究者にとり、難度の高いものである場合が多い。「それができれば苦労しない」というわけである。しかし、ここで一念奮起をしてみると、目標を絞っているものなので、意外と短期間にブレークスルーしてしまうことがある。そうなるとレビューアーさまさまである。このような「良い」レビューアーは、まさに教師である。リジェクトという高い授業料を払う価値があるものでもある。査読に関する理想と現実

 

15回リジェクトされた論文

Lynn Margulis (1938-2011)

Her ground breaking endosymbiotic theory paper, which suggested that eukaryotic organelles have evolved from the symbiosis between multiple prokaryotic organisms, has been rejected by no less than 15 journals, until it was finally accepted by the Journal of Theoretical Biology. Prof. Margulis kept submitting her revolutionary paper again and again because she knew she’s right and believed in her hypothesis. (“I am sorry to inform you” or how to deal with paper rejection. labguru.com December 03, 2012 By Chen Guttman)

 

リジェクト:苦難の始まり

最初の投稿から、すでに8ヶ月が経っていた。その後、別の雑誌に投稿し直してレビューされている最中に、ほんの少しだけ僕たちの仕事に似た論文が別の雑誌に出た。僕はその論文にはすぐに気がついたが、内容は一見似ていたが完全に違っていたので、全く影響はないだろうと思っていた。しかし、それは甘かった。(苦労の論文 2005年12月01日 ハエが星見た maplefly.exblog.jp)

 

アクセプトまでの苦難の道のり

それはもうここでは語り尽くせないほどの苫難の道のりでした。先ほどのCCS と油田の 研究は最初Natureに投稿しましたが,案の定, 3 日後にEditor reject されました。 … このEditor rejectを教訓にcover letterを徹底的に改定した後,次に投稿したのが Scienceでした。… 3 名のReviewer に回った結果のrejectでした。… わずか1 週間程度で必死に論文の改定と原稿よりも分厚いrebuttal 文書を作成してEditorに送り付けた結果, 再審査が 認められました。… Editor からの 返答は追加3名計5 名!のReviewerによる審査の結果, ポジティブが2 名,ネガティブが2 名, 超ネガティブが1名でのrejectでした。Reviewerが5人というところも驚きでしたが,超ネガティブなReviewerのコメントにはさらに驚かされ,A4 紙5枚に渡るコメントを頂き,最後に「まだまだ言いたいことは沢山あるが, もう疲れた」と書き添えられていました。… 半年間にも及んだScieneとの戦いもここで幕切れとなりました。 その後,仕方がないので次はPNASに出すかという気持ちが完全に間違いでした。原稿に「Scienceでいい所まで行ったんだぞ」といううぬぼれが出ていたのだと思います。あっさりとEditor rejectされました。… それからは気を入れなおしてNature Geoscienceを経由してNature Communicationsに投稿し,最終的に掲載が決定したのはNatureに投稿してから1 年半が経過していました。実のところ Natureにreject された時にNature Communicationsへの投稿を推薦されたのですが, この時に投稿してもアクセプトされなかったと思います。Scienceとの戦いで論文のクオリティ ーが上がったことは間違いなく,そう思うとあの時の戦いは無駄ではなかったと思っています。(CiNii地圏微生物学のおはなし〜論文投稿の厳しさと優しさ〜 Japanese Society of Microbial Ecology 微生態和文誌30巻1号)

 

2年にわたるNatureとの戦い

そこで、満を持して再投稿。今回はいけるんとちゃうか、という強い期待。そして……。平成26年1月16日、ドキドキしながらNatureからのメールを開けたところ、ああ3回目のreject。机の上に倒れ臥した。しばらく起き上がれなかった。… ほぼ倒れそうになりながらも、追加実験を行い、再投稿してみたが、「Yasu、もうリバイスももう4回目だし、Natureとしてもこれ以上この論文を扱うことはできない」とEditorから最終通告。再度、翻意を促すメールを送ってみたが、残念ながらゲームセット。2014年3月14日、2年にわたるNatureとの闘いが終わった。正直言って、Reviewerに恵まれなかったのが痛かった。… 3回目のリバイスの時に、laser ablation実験データについて、異なる記載をしていたらReviewer 3は追加実験を求めなかったのではないか。そもそも、最初の投稿時に、もっとデータを付けてから投稿するべきではなかったのか。色々な思いが胸をよぎる。YASUの呟き No. 10 激闘の果てに

 

論文投稿の苦しみ

論文投稿の苦しみ   2003年の冬頃だったと思いますが、ずっと研究してきた成果として、Natureに投稿しました。… 私の論文は、投稿から1週間以内にリジェクトされました。… 私の論文は、2-3週間かけて文面を書き換えて、Scienceに投稿しました。残念ながら、こちらも1週間でリジェクトされました。次は、順番通りCellです。Cellはフルペーパーなので、Figureの数量を増やしたり、章立てを見なおしたりといった大改訂が必要となり、投稿準備に数週間を要しました。この時点で既に季節は春を迎えていました。Cellへの投稿は、査読され、ネガティブコメントは多かったもののリバイズの機会まで辿り着きました。… この結果が来たのは既に初夏になっていました。そこから何としても論文を通したいと、追加実験を行うものの、狙ったデータが思い通りに出ません。… 苦し紛れに論点を変え、結論をやや弱くして再提出しました。残念ながらCellへの再提出もリジェクトとなりました。Cellに投稿した日から半年、Natureに出してからは1年の時がかかっています。当時の私は、研究の本質は何も進歩しないにも関わらず、1年経っても論文が通らないという日々に葛藤していました。「もうブランドジャーナルでなくて良いから論文として終わりにしたい」気を抜くとそんな弱音が出てしまう状態でした。しかし、私の上司が選んだ次の投稿先は、Natureの姉妹誌、Nature Cell Biol.(NCB)でした。… NCBの査読結果はCellと同様に、ネガティブなリバイズ。数ヶ月の追加実験をして、再提出したもののリジェクトでした。(medister Dr’sブログ 学術論文事業を始めたきっかけ ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記 ゼネラルヘルスケア 竹澤慎一郎 )

 

努力と結果

博士課程1年のとき、それまでの研究をまとめて『Cell』に投稿した。結果はエディターによるリジェクト。学位の取得を優先して論文のランクを下げたいと思ったが、武藤教授は実験を追加してもう1回『Cell』に出そうと言う。1年間努力し、コメントに応えるデータを出して再度投稿したが、またリジェクトされた。リジェクトを繰り返す中、上田泰己氏や木村暁氏のような優秀な人たちの活躍を論文などで知り、「自分なんかがこの世界で生きていくのはとても無理だ」という思いがあった。転機となったのは、2回目のリジェクトの後のことだ。次にどうするかについて、武藤教授は迷われていた。そこで青木さんは、いろいろな雑誌を見て、『Nature Genetics』に出しましょうと提案した。それほど下がっていないハードルに、厳しいのではないかとも言われたが、さらに実験を追加して博士課程3年の6月に投稿。すると、予想もしていなかったほどスムーズに、10月には受理されたのだ。「最初に『Cell』に蹴られた後、1年間必死に実験を行ったことが論文掲載というかたちで認められて、研究を続けてもいいんじゃないかという気持ちを少しもてるようになりました」。(制がんを目指して、真摯に研究に取り組み続ける (1)福井大学 医学部医学科 教授 青木 耕史さん jst.go.jp 科学者としての働き方。

 

Shooting for the moon

Nature reject → Science reject → Nature Chemical Biology reject → Nature Communications 2 vs 0でアクセプト,という経緯を辿りました.実験できるドクターが3人もこの研究に関わっていたし,内容が内容なのでNatureは当たり前,何か良からぬ事が起きてダメだったとしてもNature姉妹誌が下限レベルだと思っていました.結局その滑り止めの一つであるNature Communicationsに落ち着いたんですが,嬉しいというよりむしろ残念な結果となりました.(12 生きた細胞内の温度分布測定 詳細  内山聖一 研究内容)

初稿にあたる論文は、Natureとその姉妹紙、Science、そしてCellとエディターにリジェクトされ続けました。まあ、これはある程度想定の範囲内です。そして、ようやくMolecular CellというSopko2006が掲載された科学誌で、レビュー(審査員による査読)に回りました。カバーレターで、Sopkoらの論文を引き合いに出して「彼等の結果を覆す」と主張したおかげかもしれません。しかし、帰ってきたコメントはよいものではなく、エディターによってリジェクトという結論が下されました。

リジェクトしてきた審査員の1人は、どうもトロントのグループに近い人だったようで、「この仕事はSopkoらの仕事を否定するものではなく、補完的なものである」というコメントがありました。そう、私たちの戦略は見事に失敗したのです。自分の学会発表がそうであったように、私はこれまで闘いを挑むような論文を書いたことはありません。今回は御大にそそのかされて(?)、自分に出来ないことをやってしまったようです。そこで、論文の主旨を1から作り直しました。

真面目にSopkoらの仕事も引用し、比べ、私たちとの研究の違いを書きました。すると、実際にSopkoらの仕事が私たちの仕事と補完的な仕事であることが、私にも分かってきたのです。トップジャーナルに載せようとするばかりに見るべきところが見えていなかった、初稿の論文はいろんな意味で不完全でした。私の論文執筆能力が十分でないからなのかもしれませんが、これまでたいていの場合、初稿で書いた論文がリジェクトされて、繰り直し書き直して満足のいく論文になります。すんなり通ってしまったら不完全なものが発表されてしまう、それよりはいいのかもしれません。

さて、書き直した論文は、Genome Research誌に投稿しました。これは、ゲノム研究ではトップのジャーナルです。科学誌はしばしば、「インパクトファクター」と呼ばれる、どれだけその科学誌に掲載された論文がその先に引用されているかという指標をもとに評価されます。この指標には賛否両々論あるものの、やはりそれなりに、それぞれの科学誌に掲載される難しさ、要求するスタンダードの高さを反映しています。

今回の論文については、私はインパクトファクター10以上の科学誌に絶対に掲載するつもりでした。泥臭い話ですが、たくさんの研究費や人材をつぎ込んでもらったし、結果もしっかりとしたものが得られている。あとは私ががんばるしかない。この論文が「よい科学誌」とよばれるものに掲載されないのだとしたら、私の責任以外のなにものでもない。そういう意味では、インパクトファクター13以上のGenome Research誌は、次の候補としては適切だと思われました。(第4章:gTOW6000を世にはなつ HM’s webpage 2013-01-22)

 

味方を得てアクセプト

いよいよ、Nature に投稿されて……。古寺氏: はい。2009年10月のことです。でも、すぐには載らなかったのです。インパクトのある成果だし、推敲も重ねたし、論文には自信がありました。しかし、いきなりエディターリジェクト。紋切り型のお断り文章をもらって、かなりがっかりしました。どうしていいかわかりませんでしたね。… 仕方なく、次にScience にも投稿してみたのですが、これもエディターリジェクトでした。そこで、時間をかけてもう一度論文を推敲し直しました。どうしたらインパクトのある論文に仕上げることができるのだろうかと、文字通り昼も夜も考えながら。そしてその成果を、もう一度Nature に投稿したのです。2010年5月に、Letterとして。しかし、それでもまた、エディターリジェクトでした。

もうダメだと思ったのですが、安藤教授が、ミオシン研究の世界的な権威の研究者に見てもらおうと、論文を送ってくださったのです。筋肉の研究で有名な方と、ミオシンVの研究で有名な方です。そうしたら、その2人とも大絶賛してくれて。そのうえ、Nature のエディターに推薦の手紙を書いてくれたのです。… とうとうエディターから、「考え直したら、確かにすごい内容です」という連絡が来て、論文をレフリーに回してくれることになりました。そこからは、とんとん拍子でした。(動くミオシンの撮影に成功! 古寺 哲幸氏 Nature著者インタビュー2010年11月4日)

 

自身を客観的に見る

何回かリジェクト食らってたみたいですが、ストーリーを変えて、本人も納得した形になって投稿したら、好意的なコメントが来て、追加実験をいくつか加えたら、それなりにいいジャーナルに驚くほどあっさりと受理されたようです。ストーリーがやっぱり大事ですね。データをいっぱい出したい気持ちや、本当のいきさつをさておいて、読者が読んですんなり納得できる、無理のないストーリーにまとめるのが大事です。結局Reviewerも主張が裏付けられているかどうかを判断するだけで、筋が通っていたらそれ以上の批判は難しいものです。(研究雑話(1)Wunderbarな日々 2017-03-13)

 

私はリジェクトが好きだ

諸君 私はリジェクトが好きだ
諸君 私はリジェクトが好きだ
諸君 私はリジェクトが大好きだ

瑣末な批判が好きだ
追試要求が好きだ
データ追加が好きだ
検定やり直しが好きだ
大幅改訂が好きだ
文献追加が好きだ
図表削除が好きだ

Natureで、Scienceで
Cellで、PNASで
EmBioで、C.B.で
科研費で、学振で

この地上で行われるありとあらゆるリジェクト行動が大好きだ

文献をならべたレビューの一斉発射を無意味として査読無しでリジェクトするのが好きだ
再投稿された論文をリジェクトさせた時など心がおどる

(風流記 2007年10月5日 参考:「諸君 私は戦争が好きだ」)

 

リジェクトするときに使える英語表現

  • We regret to say that ~
  • We regret to inform you that ~
  • We regret that we are unable to publish it in XXXX.
  • We regret to say that we will not be able to accept this manuscript for publication in XXXX.

 

リジェクトの味

参考

  1. “Inside Nature” ―Nature誌編集の舞台裏(?) (かたつむりは電子図書館の夢をみるか 2008-06-21) 去る6/19、筑波大学若手イニシアティブセミナーとして行われたNature ジャパンのエグゼクティブディレクター、中村康一氏の講演会に行ってきました。… 「どんなに質がいい論文でもNatureとして興味持てなかったら落とす」とのことで、過去にはこの段階で後にノーベル賞を受賞する論文を落としてしまったこともあるそうだけど、未だにそのスタイルは崩していない、と。… ただ、ここでも他の学術出版と違うのは、査読者はあくまでコメントを求められるだけで、最終的な掲載の可否は全部編集者が決める、とのこと。
  2. サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ (がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日) サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。
  3. Nature Geoscienceからリジェクト、その反省と分析 (黒猫の旅 2013年9月18日)
  4. 論文がRejectされた時。~戦うべきか、否か、それが問題だ~ YASUの呟き No. 15
  5. 論文が却下されました – どうしたらよいでしょうか? (Ben Mudrak, PhD American Journal Experts):”3つめのオプションが最も一般的です。査定者から受け取ったコメントを慎重に考慮して、論文を修正して、別の雑誌に論文を投稿します。”
  6. 8 Scientific Papers That Were Rejected Before Going on to Win a Nobel Prize (Science Alert FIONA MACDONALD 19 AUG 2016)
  7. 論文リジェクトの種類 (むしのみち 2010-05-08):”リジェクトは研究者にとっての試練のようなものですが*1、どんな種類があるのか、自身の研究をもとにまとめておきたいと思います*2。”
  8. regectされた時のモチベーションの高め方というものを教えてください。(論文がregectになりました 教えて!goo 質問者:cueda 2005/08/05)

 

 

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研究者のための”10個のシンプルな原則”集

Ten Simple Rules(10のシンプルな原則)は、プロの研究者を目指す人が遭遇する数々のチャレンジを乗り越えるためのコツを教えるガイド集です。PLOS Computational Biology誌のヒット企画。

博士号をとるために

研究者になるためには、大学院を受験して研究室に所属し、数年間、研究のトレーニングを受けることになります。指導教官とは師弟関係としての付き合いが一生続くことになるので、研究室選び、指導教官選びは親を選ぶのと同じくらいに重要です。研究者としての運命を決定付けてしまうラボ選びで失敗しない方法は?理想的な大学院生のあり方は?

Ten Simple Rules for Graduate Students 「大学院生のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Finishing Your PhD 「学位取得のための10個のシンプルな原則」

学会発表に必要なスキル

研究者にとって、発表能力を磨くことはとても大切。良いポスターの作り方や学会での口演をうまくこなすコツは?

Ten Simple Rules for a Good Poster Presentation 「ポスター発表を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Making Good Oral Presentations 「学会発表を成功させるための10個のシンプルな原則」

論文の書き方と通し方

論文はどうやって書けばいいのでしょうか?研究者として生きていくための最重要スキルにもかかわらず、誰もちゃんと教えてくれないという落とし穴にはまらないように。

Ten Simple Rules for Writing Research Papers 「研究論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Better Figures 「論文の図作製のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple (Empirical) Rules for Writing Science 「科学論文を書くための10個のシンプルな経験則」

サブミッション(投稿)、リジェクト(却下)、リサブミッション(再投稿)、リビジョン(改訂)などを経て最終的に論文をアクセプト(受理)されるまでの道のりは、論文を書き上げる作業とはまた別の大変さがあります。途中で心が折れてしまわないために重要なことは?

Ten Simple Rules for Getting Published (日本語訳:『投稿した論文がリジェクトされてもへこたれないために~論文を出すための10個のシンプルな原則』

価値ある科学研究を行うために

科学に貢献するような優れた研究はどうしてこんなに少ないのでしょう?なぜ多くの研究結果はただ忘れ去られるだけなののでしょうか?この「10の原則」は計算機科学者リチャード・ハミングの講演内容“You and Your Research”(1986)をまとめたもの。

Ten Simple Rules for Doing Your Best Research, According to Hamming 「ハミングが説く、一流の研究をするためのシンプルな10原則」

論文発表したデータに再現性をもたせるために

生データは全て保存しておき、データ解析に用いた手法、スクリプト、手順なども全部記録し保存しておけば、第三者がデータ解析をやり直したとしても同じ結果が再現されるはずです。また、生データを全てインターネット上で公開して第三者が再利用可能な状態にすれば、またあらたな発見が生まれるかもしれません。データ捏造などの研究不正が起きる余地をなくすこともできます。

Ten Simple Rules for Reproducible Computational Research 「再現性のある計算機科学研究のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Care and Feeding of Scientific Data 「科学データを第三者に活用してもらうための10個のシンプルな原則」

ポスドク先のラボ選び

無事に博士号を取得した次に大きな選択となるのが、どこでポスドクをやるかです。その先、アカデミックポストが得られるかどうかは、ポスドク時代にどれだけの研究成果を出せたかにかかっているため、将来を見据えたうえで慎重に選ぶ必要があります。

ノーベル賞受賞者の多くはノーベル賞受賞者の研究室での研究経験があるという事実は、ラボ選びにおける見逃せないポイント。真核生物の遺伝子にはイントロンがあることを発見して1993年にノーベル医学・生理学賞を受賞した(フィリップ・シャープと共同受賞)イギリスの分子生物学者リチャード・ロバーツ博士のアドバイスにも耳を傾けてみましょう。

Ten Simple Rules for Selecting a Postdoctoral Position (Correction) 「ポスドク先の研究室を選ぶためのシンプルな原則10個」
Ten Simple Rules to Win a Nobel Prize 「ノーベル賞をとるためのシンプルな原則10個」

職を得るために

さて、ポスドクの修行時代を終えると、いよいよ職探し。アカデミアかインダストリーかという選択は、非常に大きな決断力を要します。博士号取得直後に民間に就職という選択もありますし、ポスドクまで経験してから民間に転ずるキャリアパスもあります。学生時代に製薬会社などでインターンシップを経験しておくのも職業選択における視野を広げるのに役立つでしょう。自分の人生がかかったジョブインタビュー(面接試験)を乗り切る方法は?

Ten Simple Rules for Approaching a New Job 「ジョブ獲得交渉を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Choosing between Industry and Academia 「インダストリーかアカデミアかを正しく選ぶための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Internship in a Pharmaceutical Company 「製薬企業でのインターシップを成功させるための10個のシンプルな原則」

研究費を獲得するために

お金がないと研究できません。研究グラント(研究費)を勝ち取る秘訣は何でしょうか?

Ten Simple Rules for Getting Grants 「グラント獲得のためのシンプルな原則10個」

教育と研究の両立

教育も、研究者の重要な職務。しかし、多くの場合、教育者になるための教育を受けていない研究者が大学の教員として教壇に立つことになります。授業の準備に膨大な時間をとられて大変ですが、研究とのバランスを取りながら優れた教育を行う秘訣は?

Ten Simple Rules To Combine Teaching and Research 「教育と研究を両立させるための10個のシンプルな原則」

研究者のお仕事

研究者がこなすべき仕事は、自分の論文を書くだけでなく、他人の論文を査読したり、レビュー論文を書いたり、学会でセッションの座長を務めたり、学会やワークショップの企画・運営を行うなど、キャリアアップするにつれていろいろと増えていきます。

Ten Simple Rules for Reviewers 「査読者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a Literature Review 「レビュー論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Chairing a Scientific Session 「学会で座長の役を無事に果たすための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Scientific Meeting 「研究集会を開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Running Interactive Workshops 「インタラクティブなワークショップを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules to Achieve Conference Speaker Gender Balance 「学会講演者の男女比を適切にするための10個のシンプルな原則」

共同研究を成功させるコツ

研究は一人でやるよりも共同してやったほうが大きな成果が得られやすいもの。しかし、人と人との間にはいろいろな思惑の違いも生じます。また、分野が異なる研究者同士では話す言葉がお互いに理解できなくて、研究の話が噛みあわないということがしばしば起こります。

Ten Simple Rules for a Successful Collaboration 「共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Successful Cross-Disciplinary Collaboration 「異分野間での共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Cultivating Open Science and Collaborative R&D 「オープンサイエンスと協同研究開発の基盤づくりのための10個のシンプルな原則」

学び続ける研究者

研究者は、自分の仕事を深めるためにも、また仕事の幅を広げるためにも、一生勉強し続ける必要があります。コーセラ(coursera.com)などインターネット上の無料プログラムを利用すれば、大学レベルの内容を誰でも学ぶことができるという素晴らしい時代になりました。何歳であっても、何か新しいことを学び始めるのに遅過ぎるということはありません。

Ten Simple Rules for Lifelong Learning, According to Hamming 「ハミングが説く、一生涯賢く学び続けるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Online Learning 「オンライン学習活用のための10個のシンプルな原則」

知的財産権をいかに守るか

Ten Simple Rules to Protect Your Intellectual Property 「あなたの知的財産権を守るための10個のシンプルな原則」

研究者が経済的にも成功する方法

研究職は元来金銭的に恵まれていないものです。しかし、研究成果をお金に換える方法を学べば、経済的にも報われた人生に。

Ten Simple Rules To Commercialize Scientific Research 「科学研究の成果をお金にするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Company 「研究者が起業するための10個のシンプルな原則」

研究者コミュニティや社会への貢献

研究者は研究者コミュニティの中で生活しています。コミュニティの一員として認められたという感覚はとても重要ですし、研究者がコミュニティのためにできることはたくさんあります。

Ten Simple Rules for Building and Maintaining a Scientific Reputation 「科学者としての評判を築き上げ保つための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Ahead as a Computational Biologist in Academia 「計算生物学者としてアカデミアの世界で成功するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Developing a Short Bioinformatics Training Course 「バイオインフォマティクス短期トレーニングコースを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules of Live Tweeting at Scientific Conferences 「ツイッターで学会の実況中継をするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Editing Wikipedia 「ウィキペディアを編集するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Involved in Your Scientific Community 「自分の研究分野の科学コミュニティに参加するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Open Development of Scientific Software 「科学研究用ソフトウェアのオープンデベロップメントを行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Regional Student Group 「学生の地域ネットワークを立ち上げるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Help from Online Scientific Communities 「オンライン科学コミュニティから有用な助言を得るための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Providing a Scientific Web Resource 「科学研究リソースをウェブ上で提供するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing an Unconference 「アンカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Virtual Conference—Anywhere 「バーチャルカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Community Computational Challenge
Ten Simple Rules for Teaching Bioinformatics at the High School Level 「高校生にバイオインフォマティクスを教えるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Aspiring Scientists in a Low-Income Country 「低所得国で上を目指す研究者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a PLOS Ten Simple Rules Article 「PLOS 10個のシンプルな原則を書くための10個のシンプルな原則」

計算生物学分野の話題

Ten Simple Rules for Effective Computational Research 「計算機科学的な研究を効果的に行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Reducing Overoptimistic Reporting in Methodological Computational Research 「計算機科学的な研究による方法論の成果をあまりにも楽観的に報告してしまわないための10個のシンプルな原則」

 

参考

  1. Ten Simple Rules (PLOS Computational Biology)
  2. リチャード・W・ハミング 「研究にどう取り組むべきか」 ベル通信研究所セミナー 1986年3月7日 日本語訳(himazu archive 2.0)

 

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Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。

たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより)

この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。

ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。

論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。

論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。

それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。

論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。

How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 3 (31分59秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 4 (1時間18分4秒)

 

ポール.J・シルヴィア氏の著書

 

 

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