Category Archives: ノーベル賞

2024年ノーベル賞発表予定(日本時間)

  • ノーベル財団 https://www.nobelprize.org/
  • 生理学・医学賞:10月7日(月)午後6時30分以降 Announcement of the 2024 Nobel Prize in Physiology or Medicine
  • 物理学賞:10月8日(火)午後6時45分以降 Announcement of the 2024 Nobel Prize in Physics Nobel Prize チャンネル登録者数 62.9万人

  • 化学賞:10月9日(水)午後6時45分以降 Announcement of the 2024 Nobel Prize in Chemistry Nobel Prize チャンネル登録者数 62.9万人

  •  文学賞:10月10日(木)午後8時以降 Announcement of the 2024 Nobel Prize in Literature Nobel Prize チャンネル登録者数 62.9万人</li>
  •  平和賞:10月11日(金)午後6時以降 Announcement of the 2024 Nobel Peace Prize Nobel Prize チャンネル登録者数 62.9万人</li>
  • 経済学賞:10月14日(月・祝)午後6時45分以降 Announcement of the 2024 Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel Nobel Prize チャンネル登録者数 62.9万人 

 

2021年ノーベル化学賞は不斉有機分子触媒の開発でベンジャミン・リスト博士とデイビッド・マクミラン博士の両氏に

2021年ノーベル化学賞は不斉有機分子触媒の開発でベンジャミン・リスト博士とデイビッド・マクミラン博士の両氏に授けられました。

  1. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2021
  2. ベンジャミン・リスト Benjamin List (ケムステ)
  3. デイヴィッド・マクミラン David W. C. MacMillan (ケムステ)
  4. Princeton’s David MacMillan receives Nobel Prize in chemistry The Office of Communications Oct. 6, 2021, 6:15 a.m. (プリンストン大学)
  5. ノーベル化学賞に米独の2氏 非対称有機触媒を開発 10/6(水) 18:56 朝日新聞デジタル スウェーデン王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル化学賞を、非対称有機触媒を開発した独マックス・プランク研究所のベンジャミン・リスト氏と、英国出身で米プリンストン大のデービット・マクミラン氏に贈ると発表した。

 

参考

  1. 不斉有機触媒の最近の進歩 林 雄二郎 Recent Progress in the Asymmetric Organocatalysis Yujiro Hayashi 有機合成化学協会誌 2005年

2021年ノーベル物理学賞は地球温暖化の予測モデルを提唱した真鍋淑郎博士、Klaus Hasselmann博士、および無秩序系の解析等に貢献したGiorgio Parisi博士に

2021年ノーベル物理学賞は、二酸化炭素の増加が地球温暖化をもたらすことをモデルにより予測した真鍋淑郎博士(米在住、米国籍取得)とKlaus Hasselmann博士に、また、無秩序で複雑なシステムの研究などで業績のあるGiorgio Parisi博士に贈られました。

  • Syukuro Manabe demonstrated how increased levels of carbon dioxide in the atmosphere lead to increased temperatures at the surface of the Earth.
  • Klaus Hasselmann created a model that links together weather and climate, thus answering the question of why climate models can be reliable despite weather being changeable and chaotic.
  • Giorgio Parisi discovered hidden patterns in disordered complex materials. His discoveries are among the most important contributions to the theory of complex systems. They make it possible to understand and describe many different and apparently entirely random materials and phenomena, not only in physics but also in other, very different areas, such as mathematics, biology, neuroscience and machine learning.

引用元:The Nobel Prize in Physics 2021

Scientific Background “For groundbreaking contributions to out understanding of complex physical systems” (pdf)

真鍋氏の論文業績

真鍋氏の受賞対象となった論文業績の一部(プレスリリースでの説明の中での引用)

  1. Manabe, S, M¨oller, F. 1961. On the radiative equilibrium and heat balance of the atmosphere. Mon. Wea. Rev. 89, 503–32.
  2. Manabe, S, Strickler, RF. 1964. Thermal equilibrium of the atmosphere with a convective adjustment J. Atmos. Sci. 21, 361–85.
  3. Manabe, S, Wetherald, RT. 1967. Thermal equilibrium of the atmosphere with a given distribution of relative humidity. J. Atmos. Sci. 24, 241–259.
  4. Manabe, S, Wetherald, RT. 1975. The Effects of Doubling the CO2 Concentration on the climate of a General Circulation Model. J. Atmos. Sci. 32, 3–15.

引用元:https://www.nobelprize.org/uploads/2021/10/advanced-physicsprize2021.pdf

参考

  1. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2021/press-release/
  2. 【速報】ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏 10/5(火) 18:51配信 1311 この記事についてツイート この記事についてシェア TBS系(JNN)YAHOO!JAPAN 真鍋さんは1958年に東京大学大学院を修了後、アメリカ海洋大気庁(当時:気象局)の研究員となりました。1997年に帰国し、当時の科学技術庁の温暖化研究チームに着任、2001年からは再びアメリカにわたり、現在はプリンストン大学上席研究員をつとめています。真鍋さんは現在、アメリカ国籍を取得しています。
  3. ノーベル物理学賞に米プリンストン大の真鍋淑郎氏…コンピューターによる気候変動予測を創始 2021/10/05 19:04 読売新聞 真鍋氏は、1958年に米気象局(当時)の研究員として渡米。67年、高速コンピューターを使い、大気の運動と気温の関係を定めるモデルを開発し、「二酸化炭素が2倍に増えると地上気温が2・3度上昇する」と世界で初めて予測した。

2021年ノーベル医学生理学賞は熱を感じる受容体の発見でDavid Julius博士、圧力を感じる受容体の発見でArdem Patapoutianの2氏

2021年ノーベル医学生理学賞は、温度や圧力がどうして感じられるのかの仕組みを明らかにした2人の研究者に贈られました。熱を感じる受容体の発見でデイヴィッド・ジュリアス(David Julius)博士、圧力を感じる受容体の発見でアーデム・パタポティアン(Ardem Patapoutian)博士の二人が分け合いました。

2021年度ノーベル医学生理学賞受賞者の発表

参考

  1. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2021/press-release/
  2. Congrats, David Julius! (UCSF) 
  3. Julius Lab at UCSF 
  4. The Patapoutian Lab  
  5. 「フォース」を感知するタンパク質を求めて Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200418 原文:Nature (2020-01-09) | doi: 10.1038/d41586-019-03955-w | The quest to decipher how the body’s cells sense touch 

2021年 ノーベル賞受賞者発表の日程

これがきっかけ!ノーベル賞ずかん (見る・知る・考えるずかん)
ノーベル賞受賞者が教えるノーベル賞をとる方法
湯川 秀樹 旅人 ある物理学者の回想

1年がめぐるのは早いもので、もう2021年のノーベル賞受賞者発表の季節になりました。ノーベル賞発表の日程は以下の通りです。

ノーベル賞につづく可能性が高いとされるラスカー賞ですが、2021年ラスカー賞はCOVID-19のmRNAワクチンの開発者Katalin Kariko博士(BioNTech)とDrew Weissman博士(University of Pennsylvania)に贈られました。新型コロナウイルスがまだ終息していない今の段階でのノーベル賞受賞はないだろうと思いますが、彼らがノーベル賞を取るのは時間の問題ではないかと思います。

彼らが直面した主な障害は、RNAが有害反応として、望ましくない免疫および炎症反応を引き起こすことだった。2005年には、彼らは合成ヌクレオシドを用いてRNAを修飾し、体内から見えなくするという画期的な研究結果を発表した[8]。この画期的な進歩は、RNA治療薬の使用の基礎を築き、最終的には、バイオンテック/ファイザーとモデルナが彼らからCOVID-19ワクチン開発ライセンスを取得した[9]。(ウィキペディア:ドリュー・ワイスマン

 

2021年10月4日(月) 医学生理学賞

2021年ノーベル医学生理学賞は熱を感じる受容体の発見でDavid Julius博士、圧力を感じる受容体の発見でArdem Patapoutianの2氏

  1. 予想で楽しむノーベル賞、日本人受賞者を自分で考える3つのコツ 2021年09月22日(水)16時55分 茜 灯里 Newsweek 前田浩氏(熊本大学名誉教授)、松村保広氏(国立がん研究センター主幹研究員)、森和俊氏(京都大学教授)、満屋裕明氏(国立国際医療研究センター所長)、岸本忠三氏(大阪大学元学長)、平野俊夫氏(量子科学技術研究開発機構理事長)、坂口志文氏(大阪大学特任教授)、竹市雅俊氏(京都大学名誉教授)、審良静男氏(大阪大学特任教授)、遠藤章氏(東京農工大学特別栄誉教授)、柳町隆造氏(ハワイ大学名誉教授)、水島昇氏(東京大学教授)、御子柴克彦氏(東京大学名誉教授)らの名前が頻繁に挙がっています。

2021年10月5日(火) 物理学賞

  1. 物理学賞は量子コンピューター・量子暗号の背後にある「基礎論」がいよいよか!? 高エネルギー加速器研究機構・筒井泉特別准教授に今年の予想を聴く 勝田敏彦 元朝日新聞記者、高エネルギー加速器研究機構職員 2021年09月30日  論座 RONZA

2021年10月6日(水) 化学賞

  1. SNS予想で盛り上がれ!2021年ノーベル化学賞は誰の手に!? Chem-Station ハッシュタグ #ケムステ化学賞予想 で、SNS(Twitter・Facebook)でつぶやくと当選者5名にAmazonギフト券10,000円をプレゼント

2021年10月7日(木) 文学賞

2021年10月8日(金) 平和賞

2021年10月11日(月) 経済学賞

参考

  1. 2021年 ノーベル賞 日程・結果 朝日新聞
  2. Lasker Award goes to mRNA vaccine researchers Saturday, Sept. 25, 16:10
  3. 「ノーベル賞」発表迫る!コロナ関連もある、有力候補者と研究成果をまるっと紹介 2021年09月28日 ニュースイッチ

2020年ノーベル物理学賞はブラックホール研究者のRoger Penrose, Reinhard Genzel, Andrea Ghezの3氏に

昨日のノーベル医学生理学賞に続き、今日はノーベル物理学賞の受賞者が発表されました。2020年ノーベル物理学賞はRoger Penrose, Reinhard Genzel, Andrea Ghezの3氏に授与されます。

The Nobel Prize in Physics 2020 was divided, one half awarded to Roger Penrose “for the discovery that black hole formation is a robust prediction of the general theory of relativity“, the other half jointly to Reinhard Genzel and Andrea Ghez “for the discovery of a supermassive compact object at the centre of our galaxy.” (https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2020/summary/)

Announcement of the 2020 Nobel Prize in Physics

 

ロジャー・ペンローズの著書

  

 

2020年ノーベル物理学賞予想サイト

  1. 2020年ノーベル物理学賞予想 荒舩良孝 2020/10/06 00:53 量子コンピュータの基礎的な理論を提唱したデイビッド・ドイチュ博士。そして、ドイチュ博士とともに量子コンピュータの高速計算のアルゴリズムを完成させた数学者リチャード・ジョサ博士あたりになるのではないだろうか。また、近代科学の中心課題の1つとされる量子多体系を計算するための量子シミュレーター分野のイマニュエル・ブロッホ博士、ティルマン・エスリンガー博士なども有力のようだ。後は、光格子時計を開発し、時間を精密に測定することに成功した香取秀俊博士も受賞したらおもしろいと思う。… 物性物理学分野で有名な近藤効果を理論化した近藤淳博士がこのタイミングでノーベル賞を受賞するというのも、なかなかいいのではないかとも思う。
  2. 3年連続受賞なるか日本の注目候補は vdata.nikkei.com 細野 秀雄 年齢 67 東京工業大学栄誉教授 大野 英男 年齢 65 東北大学長 十倉 好紀 年齢 66 理化学研究所創発物性科学研究センター長 佐川 真人 年齢 77 大同特殊鋼顧問
  3. 物理学賞が最有力! ノーベル賞に最も近い「日本人科学者6人」の名前 キーワードは「創薬」「物性」「実績」 マネー現代編集部 2020.10.5 期待されているのが東京大学教授の香取秀俊氏(56歳)だ。香取氏は世界で最も精密な「光格子時計」を開発した。その誤差は300億年に1秒とも言われ、現在の「1秒の長さ」の定義に使われている「セシウム原子時計」の誤差が1億年に1秒であることと比較しても、段違いな性能であることがわかるだろう。
  4. 2020年09月30日19時30分 【特集】2020年「ノーベル賞」発表目前!3年連続の日本人受賞なら急騰必至 <株探トップ特集>kabutan.jp 名城大学終身教授の飯島澄男氏は「カーボンナノチューブ」を発見したことで知られノーベル賞の有力候補となっている。… 鉄系の超伝導体を発見し、超電導の世界に革命をもたらした東京工業大学栄誉教授の細野秀雄氏も注目されている。… 理化学研究所の十倉好紀・創発物性科学研究センター長が開発した新材料「マルチフェロイック物質」は、将来的に省エネメモリーにつながると予想されている。… 量子コンピューターに絡んで東京大学の古澤明教授や東京工業大学の西森秀稔特任教授なども候補とされている。
  5. 2020年のノーベル賞発表、5日から12日まで…韓国人の受賞者は出るか?  平和賞はトランプ大統領? =韓国報道 10/4(日) 23:13配信 WOW!KOREA  物理学賞には、米海軍研究所の物理学者であるトーマス・キャロルルイス・ペコラ博士、米バークレー大学のアレックス・ジェトル教授、英電算宇宙論研究所(ICC)のカルロス・フランク所長、カナダのビクトリア大学のフリオ・ナバーロ教授、ドイツのマックスプランク天体物理学研究所のサイモン・ホワイト元研究所長などが挙げられる。

参考

  1. 科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2020 2020年9月19日(土)〜 10月19日(月)
  2. ノーベル賞ってなんでえらいの? NHK チコちゃん
  3. ノーベル賞 日本科学未来館が好評だった「予想」をやめた理由とは 会員限定有料記事 毎日新聞2020年9月19日 13時00分(最終更新 9月25日 17時06分)
  4. ノーベル賞発表翌日の紙面のために新聞社が準備する多くのこと 読売新聞東京本社 編集局科学部 長谷川聖治 部長 (2014.12.5/2014年12月・2015年1月号 特集) 

 

2020年ノーベル医学生理学賞受賞者は、C型肝炎の研究者ハービー・アルター(Harvey J. Alter)、チャールズ・ライス(Charles M. Rice)、マイケル・ホートン(Michael Houghton)の3人

2020年のノーベル医学生理学賞は、慢性C型肝炎の研究者に贈られ、ハービー・アルター氏(米ロチェスター大学)、チャールズ・ライス氏(米ロックフェラー大学)、マイケル・ホートン氏(カナダ アルバーター大学)の3人に授与されることになりました。

ノーベル医学生理学賞受賞者の発表

The Nobel Assembly at Karolinska Institutet has today decided to award the 2020 Nobel Prize in Physiology or Medicine jointly to Harvey J. Alter, Michael Houghton and Charles M. Rice for the discovery of Hepatitis C virus (nobelprizemedicine.org)

 

ノーベル賞受賞理由: C型肝炎ウイルスの発見

Harvey J. Alter, Michael Houghton and Charles M. Rice made seminal discoveries that led to the identification of a novel virus, Hepatitis C virus. Prior to their work, the discovery of the Hepatitis A and B viruses had been critical steps forward, but the majority of blood-borne hepatitis cases remained unexplained. The discovery of Hepatitis C virus revealed the cause of the remaining cases of chronic hepatitis and made possible blood tests and new medicines that have saved millions of lives. (pm_eng_FINAL_2020.pdf)

肝炎を引き起こすウイルスの種類

There are two main forms of hepatitis. One form is an acute disease caused by Hepatitis A virus that is transmitted by contaminated water or food. The other form is caused by Hepatitis B virus or Hepatitis C virus (this year’s Nobel Prize). This form of blood-borne hepatitis is often a chronic disease that may progress to cirrhosis and hepatocellular carcinoma. (pm_eng_FINAL_2020.pdf)

非A型、非B型肝炎ウイルスの存在を示したハービー・アルターの研究

At that time, Harvey J. Alter at the US National Institutes of Health was studying the occurrence of hepatitis in patients who had received blood transfusions. Although blood tests for the newly-discovered Hepatitis B virus reduced the number of cases of transfusion-related hepatitis, Alter and colleagues worryingly demonstrated that a large number of cases remained. Tests for Hepatitis A virus infection were also developed around this time, and it became clear that Hepatitis A was not the cause of these unexplained cases. It was a great source of concern that a significant number of those receiving blood transfusions developed chronic hepatitis due to an unknown infectious agent. Alter and his colleagues showed that blood from these hepatitis patients could transmit the disease to chimpanzees, the only susceptible host besides humans. Subsequent studies also demonstrated that the unknown infectious agent had the characteristics of a virus. Alter’s methodical investigations had in this way defined a new, distinct form of chronic viral hepatitis. The mysterious illness became known as “non-A, non-B” hepatitis.  (pm_eng_FINAL_2020.pdf)

C型肝炎ウイルスを発見したマイケル・ホートンの実験:未知のウイルスのゲノム断片の同定

Michael Houghton, working for the pharmaceutical firm Chiron, undertook the arduous work needed to isolate the genetic sequence of the virus. Houghton and his co-workers created a collection of DNA fragments from nucleic acids found in the blood of an infected chimpanzee. The majority of these fragments came from the genome of the chimpanzee itself, but the researchers predicted that some would be derived from the unknown virus. On the assumption that antibodies against the virus would be present in blood taken from hepatitis patients, the investigators used patient sera to identify cloned viral DNA fragments encoding viral proteins. Following a comprehensive search, one positive clone was found.  (pm_eng_FINAL_2020.pdf)

 

C型肝炎ウイルスが実際に肝炎の原因となることを証明したチャールズ・ライスの実験

Charles M. Rice, a researcher at Washington University in St. Louis, along with other groups working with RNA viruses, noted a previously uncharacterized region in the end of the Hepatitis C virus genome that they suspected could be important for virus replication. Rice also observed genetic variations in isolated virus samples and hypothesized that some of them might hinder virus replication. Through genetic engineering, Rice generated an RNA variant of Hepatitis C virus that included the newly defined region of the viral genome and was devoid of the inactivating genetic variations. When this RNA was injected into the liver of chimpanzees, virus was detected in the blood and pathological changes resembling those seen in humans with the chronic disease were observed.  (pm_eng_FINAL_2020.pdf)

 

2020年ノーベル賞受賞者予想サイト

  1. 3年連続受賞なるか 日本の注目候補は?(日本経済新聞)

2019年度ノーベル物理学賞受賞者はJames Peebles, Michel Mayor , Didier Queloz の3氏に

2019年度ノーベル物理学賞の授与

8 October 2019

The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the Nobel Prize in Physics 2019

“for contributions to our understanding of the evolution of the universe and Earth’s place in the cosmos” with one half

to James Peebles Princeton University, USA

“for theoretical discoveries in physical cosmology” and the other half jointly

to Michel Mayor University of Geneva, Switzerland

and Didier Queloz University of Geneva, Switzerland University of Cambridge, UK

“for the discovery of an exoplanet orbiting a solar-type star” (nobelprize.org)

2019年度ノーベル物理学賞発表の様子

Announcement of the Nobel Prize in Physics 2019

参考

  1. New perspectives on our place in the universe (Nobelprize.org)
  2. Scientific Background on the Nobel Prize in Physics 2019 PHYSICAL COSMOLOGY AND AN EXOPLANET ORBITING A SOLAR-TYPE STAR (Nobelprize.org)

低酸素、腎臓、hypoxia-inducible factor (HIF) 、エリスロポエチン(Epo)について

2019年度ノーベル医学生理学賞は、低酸素刺激に対して生体がどのように反応するかに関する研究を行ったウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフ、グレッグ・セメンザの3氏に贈られました。

hypoxia-inducible factor (HIF) の発見

HIF-1は,肝がん細胞株 Hep3B において「低酸素依存的 にエリスロポエチン(EPO)を誘導する因子」として1992 年に Semenza らによって発見された.

Semenza, G.L. & Wang, G.L.(1992)Mol. Cell. Biol., 12, 5447―5454.

(引用元:生化学 第85巻 第3号,pp.187―195,2013

 

エリスロポエチン(Epo)

エリスロポエチン(Epo)は赤血球産生を制御する造血ホルモンであり、組織の低酸素に応答して産生され、骨髄などの造血細胞に働いて赤血球産生を刺激します(図2)。高地トレーニングをしている運動選手の血液では赤血球数、および、酸素運搬に関わるヘモグロビン量が増加しますが、これも低酸素環境におけるEpo産生の亢進によるものです。また、ヒトの大人ではEpoは主に腎臓において産生されます。(引用元:エリスロポエチン遺伝子の発現制御 dmbc.med.tohoku.ac.jp)

 

腎臓と低酸素

腎臓は酸素消費が多く,更に動静脈シャントのため 酸素の取り込み効率が悪いため,低酸素状態になりや すい臓器であり,様々の要因によって引き起こされる 尿細管間質の慢性低酸素が腎臓病の final common pathway として注目されている。(引用元:日児腎誌 Vol. 25 No. 2

腎臓は生体が必要とする酸素の30%を消費する,非常に酸素需要の高い臓器となっている.このため,腎臓病のfinal common pathwayとして,尿細管間質の慢性低酸素状態が特に重要と考えられている.(第 113 回日本内科学会講演会 結実する内科学の挑戦~今,そしてこれから~ 平成28年4月17日(日)東京都・東京国際フォーラム 日本内科学会雑誌 105 巻 9 号

 

腎が低酸素になりやすい理由としては,エネルギー需要が高いことに加え,尿細管周囲毛細血管網による酸素供給が血行動態の変化により影響を受けやすいことや,解剖学的な理由により動静脈酸素シャントが存在するため酸素の利用効率が悪いことがあげられる.(慢性低酸素状態の腎臓 244巻4号 2013年1月26日 医学のあゆみ

 

HIF刺激薬

EPO遺伝子の転写を促進する低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor: HIF)が同定され、さらにその上流の調節機構が解明されたことを背景に、「HIF活性化薬」としてPHD阻害薬が開発されました。 PHDはHIF (α鎖)を水酸化し、ユビキチン・プロテアソーム分解を導く酵素で、PHDの酵素活性を阻害するとHIFは安定化し、HIFを介する低酸素応答が誘導されます。(第4回(1)EPOから生まれた「HIF刺激薬」ここがすごい!執筆:田中哲洋(東京大学医学部附属病院)、監修:南学正臣(東京大学医学部附属病院)2018年8月15日 m3.com

 

2019年ノーベル医学生理学賞はウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフ、グレッグ・セメンザの3氏に

2019年ノーベル医学生理学賞はウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフ、グレッグ・セメンザの3氏に贈られました。

The Nobel Assembly at Karolinska Institutet
has today decided to award
the 2019 Nobel Prize in Physiology or Medicine
jointly to
William G. Kaelin, Jr., Sir Peter J. Ratcliffe and Gregg L. Semenza.
for their discoveries of how cells sense and adapt to oxygen availability (PDF)

2019年ノーベル医学生理学賞発表の瞬間

Announcement of the Nobel Prize in Physiology or Medicine 2019 Nobel Prize

 

Sir Peter J. Ratcliffe

ノーベル賞受賞直後のピーター・ラトクリフ氏の電話インタビュー

 

 

ピーター・ラトクリフ博士の講演動画。
Elucidation of oxygen sensing pathways in human and animal cells // Peter Ratcliffe 2018/09/28 The Physiological Society

 

William G. Kaelin

ウィリアム・ケリンのレクチャー動画。
Signaling Pathways in Cancer Symposium: William Kaelin 2016/08/11 KochInstituteMIT

 

Gregg Semenza

グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)が語る研究者の日常、研究はいかに進むか。

 

Gregg Semenza on the discovery of HIF-1 

下の動画は、生い立ちから研究の話までのロング・インタビュー。
JCI’s Conversations with Giants in Medicine: Gregg Semenza 2016/11/02 Journal of Clinical Investigation

 

参考

  1. Scientific Background How cells sense and adapt to oxygen availability (nobelprizemedicine.org)
  2. ノーベル医学生理学賞に米、英の3氏 「細胞の低酸素応答の仕組みの解明」(201/10/7(月) 18:42 毎日新聞 YAHOO!JAPAN) スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、2019年のノーベル医学生理学賞を米国とイギリスの3氏に授与すると発表した。受賞理由は「細胞の低酸素応答の仕組みの解明」。 受賞が決まったのは、米ハーバード大のウィリアム・ケリン教授▽英オックスフォード大のピーター・ラトクリフ教授▽米ジョンズ・ホプキンズ大のグレッグ・セメンザ教授。

 

宝くじの当たる確率を他に例えると

宝くじで1等賞が当たる確率

宝くじにはいろいろな種類がありますが、ジャンボ宝くじの場合、年末ジャンボ以外は数字が100000から199999の10万通りあり、それが1組~100組までの100組と組み合わされるので、10万x100=合計1000万になります。年末ジャンボだけは特別で組の数が1~200の200組ありますのでくじの番号は2000万通りになります。この1000万または2000万を1つのユニットとして、このユニット内で一つだけ1等賞の番号(XXX組XXXXXX番)が決まるわけです。例えば、2018年の年末ジャンボ宝くじの1等当選番号は、「96組122234番」だったようです。1等賞が24本あるくじの場合は、24ユニットが発売されるということです。この場合、ユニット数が違って、組みと番号が同じの1等あたり券が24本存在することになります。

宝くじで1等賞が当たる確率は、ユニットで考えればよいので話は単純で、年末ジャンボの場合は2000万分の1であり、その他のジャンボ宝くじは1000万分の1ということになります。

2010年ノーベル化学賞を受賞した根岸英一博士はノーベル賞受賞の確率を1000万分の1と見積もっているそうですので、宝くじが当たる確率を他に例えれば、普通の人がノーベル賞を受賞する程度の確率といえそうです。

それは「ノーベル賞を取る確率は1000万人に1人」ということです。1000万人に1人というと高額賞金の宝くじと同じです。しかし、少し考え方を変えると、1000万分の1とは10の7乗分の1なんですね。最初に「皆さんは10の3乗分の1の方々ばかり」と申し上げました。そうすると「10の7乗分の1」と「10の3乗分の1」ですから10の4乗分の1、つまりここにいる方々ならば「1万人に1人の確率でノーベル賞がとれる」ということになります。(平成24年度東京大学学部入学式 祝辞 平成24年(2012年)4月12日 根岸 英一)

  1. ジャンボ宝くじ 何年買い続けたら1等当せん確率が上がるのか(2018年12月16日 7時0分 NEWSポストセブン news.nifty.com)
  2. 宝くじのユニットとは jabezadvisory.com
  3. 速報ナビ 宝くじ当選番号案内 年末ジャンボ宝くじ(第770回全国) 2018年12月31日 支払締切:2020年1月6日 1等の当せん番号発表!
  4. ノーベル賞の確率、宝くじの確率 ノーベル賞受賞の確率は1千万分の1だと根岸英一氏。宝くじの確率と比べてみると… 駒村和雄の異論、反論(1)2015年10月20日 16時53分 HUFFPOST
  5. ノーベル賞を取れる確率 2011年 06月 16日 大隅典子の仙台通信

 

宝くじの種類

宝くじは、全国で発売される「全国自治宝くじ」と、地域ごとに発売される「ブロック宝くじ」の2種類があります。

宝くじには、全国共通で発売される「全国自治宝くじ」と、「東京都」「関東・中部・東北自治」「近畿」「西日本」の4ブロックでそれぞれ発売される「ブロック宝くじ」の2種類があります。(宝くじ発売スケジュール 宝くじ公式サイト)

一等賞金が1億円以上の高額当選が期待できるのはジャンボ宝くじですが、ジャンボも季節ごとに、バレンタインジャンボ宝くじ、ドリームジャンボ宝くじ、サマージャンボ宝くじ、ハロウィンジャンボ宝くじ、年末ジャンボ宝くじと、いろいろな種類が販売されています。

  1. 高額当選(宝くじ公式サイト)
  2. 「年末ジャンボ宝くじ」1等・前後賞合わせて10億円! 2018/11/05 宝くじ公式サイト

 

本庶佑博士のノーベル賞受賞記念講演 2018年12月7日 カロリンスカ研究所【動画】

Nobel Lecture: Tasuku Honjo, Nobel Prize in Physiology or Medicine 2018 (Nobel Prize 2018/12/07 に公開)

 

報道

  1. 「本庶さんの受賞誇り」…ノーベル賞講演 元助手の石田さんら祝福 YOMIURI ONLINE yomiDr. 2018年12月8日 【ストックホルム=諏訪智史、山本美菜子】ノーベル生理学・医学賞を受賞する 本庶佑ほんじょたすく ・京都大特別教授(76)は7日にカロリンスカ研究所で行った記念講演で、周囲の研究者らへの感謝の言葉を重ねた。
  2. 【ノーベル賞授賞式】真摯な姿勢垣間見える 本庶さん語録(2018.12.10 19:34産経WEST) 本庶さんは7日に行った受賞記念講演では、「私はいつも運が良い」とも語った。運に恵まれながらの歩みだったとし、仲間への感謝の気持ちを示し、謙虚な姿勢を貫く。
  3. 授賞式前に本庶さん講演 「今世紀にがん制御、信じる」ストックホルム=合田禄2018年12月8日02時28分 朝日新聞DIGITAL ノーベル医学生理学賞を受賞する本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授(76)が7日午後(日本時間同日夜)、スウェーデンのカロリンスカ医科大で記念講演した。本庶さんは満員のホールで「今世紀にがんが制御できるようになると信じている」と語った。
  4. 「がん撲滅」への道を示す2018年の本庶佑氏ノーベル・レクチャー「獲得免疫の思いがけない幸運」(Serendipities of Acquired Immunity)(2018年12月11日 (火)配信 村中璃子(医師、ジャーナリスト)m3.com) 「免疫チェックポイント阻害薬は、がんにおけるペニシリンの発見のようなものだ。ペニシリンはすべての感染症を克服したわけではないが、それに続く一連の抗生物質の開発により医学に革命をもたらした」 … 「免疫チェックポイント」とは、免疫細胞の表面にある、免疫に攻撃のストップをかけるブレーキのこと。これまでのがん免疫療法は、免疫の「アクセル」をふかすことで免疫の攻撃力を高めることを目的としていたが、免疫チェックポイント阻害薬は免疫にかかった「ブレーキ」を解除し、免疫が本来持っている攻撃力を回復させるという新しい発想により成功を収めたものだ。「手術・化学療法・放射線療法」を3本柱としてきたがん治療に、第4の柱を確立することとなった。 冒頭の言葉は「獲得免疫の思いがけない幸運(Serendipities of Acquired Immunity)」と題し、12月7日、スウェーデンのカロリンスカ研究所アウラメディアで行われたノーベル・レクチャーで本庶氏自らが引用した、2016年3月付の「New Science」の抗PD-1抗体(ニボルマブ)に対する評価である。

 

参考

  1. Nobel Lecture: James Allison, Nobel Prize in Physiology or Medicine 2018YOUTUBE講演動画)本庶佑博士と同時受賞したアリソン博士のノーベル講演。

2018年ノーベル物理学賞は光ピンセット(Arthur Ashkin)と高出力超短パルスレーザー(Gérard Mourou , Donna Strickland)の開発に

2018年ノーベル物理学賞は光ピンセットを可能にしたArthur Ashkin博士の研究(2分の1)と手術用レーザーなどにも用いられている高出力超短パルスレーザーを実現したGérard Mourou博士(4分の1)とDonna Strickland博士(4分の1)の研究に対して与えられました。

科学未来館の科学コミュニケーターによる予想&解説

 

2018年ノーベル物理学賞受賞者発表の瞬間

Announcement of the Nobel Prize in Physics 2018

本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】

2018年10月1日18:30(日本時間)のノーベル生理学医学賞受賞者発表を受けて19:20~20:20に京都大学で開催された本庶佑博士の受賞記者会見ですが、研究者を志す人にとって非常に示唆に富む内容でした。

記者会見はニコ生で放送されましたが、率直な受け答えにあらわれる本庶佑博士の人柄に感銘を受けたニコ生視聴者も多かったことが、画面をリアルタイムで流れる多数のコメントからわかります。

 

【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見

記者会見日時:2018年10月1日19:20~20:20

ノーベル医学生理学賞に京大・本庶氏 午後7時20分から会見(2018年10月1日)(THE PAGE)

以下、YOUTUBE(THE PAGE)の動画の書き起こしです。

* 質問者はマイク不使用だったため記者の質問はあまり聞き取れていません。太字強調部分は当サイトの主観によります。

(06:06~)この度はノーベル医学生理学賞、いただくことになりまして大変名誉なことだと喜んでおります。これはひとえに、長いこと苦労してきました共同研究者、学生諸君、また、さまざまな形で応援して下さった方々、また、長い間支えてくれました家族、本当に言い尽くせない多くの人に感謝いたしております。1992年のPD-1の発見とそれに続く極めて基礎的な研究が、新しいがん免疫療法として臨床に応用され、そして、たまにではありますが、この治療法によって重い病気から回復して元気になった、あなたのおかげだと言われる時があると、本当に私としては自分の研究がほんとに意味があったということを実感し何よりも嬉しく思っております。そのうえにこのような賞をいただき大変、私は幸運な人間だというふうに思っております。今後この免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、一層、私自身ももうしばらく研究を続けたいと思いますし、世界中の多くの研究者がそういう目標に向かって努力を重ねておりますので、この治療法がさらに発展するようになると期待しております。また、今回の基礎的な研究から臨床につながるような発展ということで授賞できたことによりまして、基礎医学分野の発展がいっそう加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気付けるということになれば私としてはまさに望外の喜びでございます。

(質疑応答 Q&A 10:05~)

ノーベル賞受賞の吉報を受けたときの状況

Q:受賞の連絡とそのときの気持ちを教えてください。

A:(10:21~)確か5時前後だったかと思いますけども。電話でノーベル財団の私の知っている先生から電話がありました。それはちょっと突然でしたので大変驚きました。ちょうと私の部屋で若い人たちと論文の構成について議論している時でしたので、まさに思いがけない電話でありました。勿論大変嬉しく思いましたしたけども、また、大変驚きました。

A(11:18)その時の学生さんたちからはどういった反応がありましたでしょうか?

Q(11:23)そのうちの1人は後で直接話を聞ける茶本 健司(ちゃもと けんじ)君という、准教授をしてる人で、もうひとりはポスドクの人でしたけども、二人とも大変驚いてやや興奮している様子でした。だから、茶本先生に直接聞いていただいたほうがわかると思います。

 

免疫療法に関して

A(11:55) がん免疫療法についてですが、今後どのような治療法として発展させていきたいとお考えでしょうか?

Q:12:04 この治療は例え話としては感染症におけるペニシリンというふうな段階でありますから、ますます、これが、効果が広い人に及び、また、効かない人がなぜ効かないかといった研究が必要です。また、そういうことが、世界中の人がやっていますから、いずれは解決されて、感染症がほぼ大きな脅威でなくなったと同しような日が、遅くとも今世紀中には訪れるというふうに思っております。

Q(12:57 NHK)受賞されて受賞の報告というのは誰かに伝えましたでしょうか?

A(13:09)もちろんこれは家族、それから教室関係の人、等々には連絡を致しました。

Q(13:23) どのようなお言葉で報告をされたんでしょうか?また、どのようなお返事があったのでしょうか?

A(13:25) たくさんの人にね、いろんなその、相手によって報告の仕方は違いますけども、思いがけないことでしたので、そういう趣旨の話を致しました。

Q(13:45) ご家族からはどのようなお返事があったのでしょうか?

A(13:48) 基本的に、おめでとう、うれしいという話です。

 

研究の心がけ

Q(13:58) あと一点、ご自身で研究で心がけていること、また、モットーなどはありますでしょうか?

A(14:01)研究に関しては、わたし自身はですね、研究ってのはやっぱり自分に何か知りたいという好奇心があると。それから、もうひとつは、簡単に信じない。だから、よくマスコミの人は、ネイチャー、サイエンスに出てるからどうだ、という話をされるけども、僕はいつも、ネイチャー、サイエンスに出てるものの9割はウソで、10年経ったら、まあ、残って1割だというふうに言ってますし、だいたいそうだと思ってますから。まず、論文とか書いてあることを信じない、自分の目で、確信ができるまでやる、それが僕のサイエンスに対する基本的なやりかた、つまり、自分の頭で考えて納得できるまでやるということです。

Q(15:10) それが受賞に結びついたと考えておられる?

A(15:13) それはねぇ、賞というのは人が決めることで、それは、賞を出すところによっては考え方がいろいろ違うし、一言でいうとねわたしは幸運な人間で。まずPD-1を見つけたときも、これガンになるとは思えなかったし。それを研究していく過程で、近くに、今ここでおられる湊先生のようながん免疫の専門家がいて、私のような免疫学も素人、がんも素人という人間を非常に正しい方向へ導いてい頂いた、いうふうなこともあり、それ以外にもたくさんの幸運があってこういう受賞につながったと思ってます。

確信の芽生え

Q(16:19 読売新聞)2点お伺いしたいんですけれども、がん研究の独自の〔聞き取り不能〕となるような体験がもしおありでしたらお聞かせていただきたいと、お伺いします。

A(16:38)PD-1の研究でいうならば最初のこれががんに効くということを確信できる実験というのは、当時大学院生だったと思いますけども岩井佳子(いわいよしこ)さんという人にやってもらった、PD-1遺伝子が欠失したネズミを使って、がんの増殖が正常なネズミと差が出るかどうかということをやったと。それが私はよかったと思います。というのは、抗体で実験してて効かなかったら、ひょっとしたら諦めていたかもしれない。というのは、抗体にはいい抗体と悪い抗体と、たくさんありまして、それはやってみないとわからない。しかし遺伝子が無い場合はそれはもう関係ないので、これは必ず効くということを確信できたので、それがやはり大きな転機になったと思います。

神戸医療産業都市推進機構について

Q(17:57)これまで深く関わってこられた神戸医療産業都市の発展につながるのではないかという関係者空の声もあります。医療産業都市への思いだったり、関係者へのメッセージをお願い致します。

A(18:17) 神戸医療産業都市は、構想から20年になるということでまもなく記念の行事も行なわれますし私としても推進機構の理事長としてようやく体制が整った神戸の地から新たな応用への展開が生まれてくる、そういうシーズと実際のアプリケーションとが結びつく場として大きく育ってほしいと期待しておりますし、そういうことに向けて今回の受賞が少しでもプラスに働ければ私としては大変嬉しいと思っております。

 

日本の科学行政における研究費の配分のやりかたに関して

Q(19:18) 昨今の〔〕、また製薬企業についてどういうふうにお考えになっているか。

A(19:52)生命科学というのはですね、まだ私たちはどういうふうなデザインになっているかということを十分まだ理解していないのです。AIとかロケットをあげるというのはそれなりのデザインがあって、ある目標に向かって明確なプロジェクトを組むことが出来ますが、生命科学というのは、ほとんど何もわかっていないところでデザインを組むこと自身が非常に難しい。そういう中で応用だけやると、大きな問題が生じるとわたしは思っております。つまり、何が正しいのか何が重要なのかわからいところで、この山に向かってみんなで攻めようということはナンセンスで、多くの人に、できるだけたくさんの山を踏破して、そこに何があるかということをまず理解したうえで、どの山が本当に重要な山かということを調べる、まだそいういう段階だと思いますから、あまり応用をやるんではなくて、なるべくたくさん、僕はもうちょっとばら撒くべきだと思います。ただばら撒き方も限度があってね、1億円を1億人にバラ撒くと全て無駄になりますが、1億円を1人の人にあげるんではなくて、せめて10人にやって、十(とう)くらいの可能性を追求したほうが一つに賭けるよりは、ライフサイエンスというのは非常に期待が持てると思います。もっともっとたくさんの人にチャンスを与えるべきだと思います。特に若い人には。

 

製薬企業について

製薬企業に関してはね、まあ日本の製薬企業は非常に大きな問題を、僕は、抱えていると思います。それはまず、数多すぎますね。世界中、メイジャーというのは、まあ20とか30なんですが、我が国では一国だけで、創薬をやっているという企業だけで30以上あると。これ、どう考えても資本規模、それから、あらゆる国際的なマネジメント、研究で非常に劣る、と。なおかつ日本のアカデミアには結構いいシーズがあるのに、日本のアカデミアよりは外国の研究所にお金をたくさん出していると。これは全く見る目がないと言わざるを得ないと思います。

 

研究者になるために一番重要なこと

Q(22:55) 〔…です。〕私どもは読者が小学生ですので、こういった先生の受賞を機会に、自分も科学者になろうという小学生がいると思うんですけれども、これだけは思っていて、科学者を目指して欲しいというものを教えていただければ。

A(23:16)そういうことがあれば非常に嬉しいと思いますけども。研究者になるということにおいて一番重要なのはやはり何か知りたいという、思うというか、不思議だなという心をね大切すると。それから、教科書に書いてあることを信じない、と常に疑いを持って、ほんとはどうなってるんだという心を大切にする、そういう、つまり自分の目でものを見る、そして納得する、そこまで諦めない、とそういう若い、小中学生が研究の道に志して欲しいと思います。

 

医学のこころ

Q(24:11)いくつか質問をお願いいたします。基礎研究を臨床のほうにつなぐためのメンタルというかコツみたいなものがもしおありでしたら教えていただけたら。

A(24:43) 基礎研究をやってますけども私自身は医学を志しています。ですからやはり常に何かの可能性としてこれが病気の治療とか診断とかに繋がらないかということは常に考えております。ですから自分の好奇心と、さらにその発展として社会への貢献ということは、わたしの研究の過程では常に考えてきました。ですから、そういう意味で、新しい発見を特許化したりですね、そういう応用への手順と言いますか、そういうことは非常に早い段階からいろんな局面でやってましたので、突然、PD-1は繋がりましたけども、私の研究マインドとしては基礎研究をしっかりやってもし可能性があればそれを社会に還元したいという気持ちは常にありました。

研究者としての幸せ

Q(25:51)ノーベル賞候補といわれてきて、今回の受賞は待ちに待ったものなのか、長かったなあというものなのか、まあこんなものだというものなのか、そのあたりは。

A(26:11)さっきも申し上げましたけども、賞というのはそれぞれの団体とか、それぞれの価値基準で決められることなので、長いとか待ったとかそういうことは僕自身はあまり感じてません。自分の研究としてはね、さきほどちょっと申し上げましたけども、僕はゴルフが好きなんでゴルフ場にしょっちゅう行きますけども、ゴルフ場に来ているメンバーの人がね、ある日突然やってきて、顔は知っていたけどもあまり知らない人が、「あんたの薬のおかげで、自分はもう肺がんで、これが最後のラウンドやと思っていたのが、良くなってね、またゴルフできるんや」、とそういう話をされるとね、これ以上の幸せはない。つまりそれは自分の人生としてね、生きてきて、やってきて、自分の生きた存在としてこれほど嬉しいことはない。これはまあ僕は正直言って何の賞をもらうとかいうことよりも、もうそれで十分だと、自分はそう思っています。

共同受賞について思うこと

Q(27:30) 共同受賞の 今回二人での共同受賞になったことについて思うところがあればお聞かせください。

A(27:40) これは極めて妥当だというか、彼とは非常に古い交流がありますし、彼の研究と僕の研究とは、これも幸運としか言いようがないんですが、非常に違う局面で、現在はお互いに2つの抗体を組み合わせることによってより強い効果がでるということが知られてますから、ノーベル財団の評価でもそのことをかなり詳しく説明してましたから、僕自身としてはベストな組み合わせであると思ってます。

Q(28:30) つまりがんの治療は今世紀中には〔…〕ハリソンさんの業績と先生のご研究をあわせることでそれが確かなものになるであろうと?

A(28:44) いや、それは違います。それを組み合わせて、従来単剤だったものより、より良くなるケースもあります。しかしまだまだ非常に低いレベルのがんもあるし、それからわりかし効きにくいがん種もありまし。ですから、まだまだ発展途上です。ペニシリンがわかった段階でね、感染症に対して非常に楽観的な展望が出たわけじゃなくて、肺炎とか限られた感染症に対しては有効でしたけども、結核とかですね、いろんなことに関しては全然展望がなかったわけです。

Q(29:26) 終わりの始まりといいますか?

A(29:34)そうです。

 

小野薬品との関係

Q(29:44 産経新聞) 製薬会社とのかかわりについて伺いたいと思います。小野薬品さんとの提携について。

A(30:04) 提携というのはね、これは会社同士の話で、僕は学者ですからね、僕は事業をやってるわけではないので、小野薬品との関係は、特許に関して、ライセンスを小野薬品に与えるという関係です。

大学と製薬企業との望ましい関係

Q(30:33) 企業が利益を大学に還元される仕組みが必要だとおっしゃっていましたがそれに関してはいかがでしょうか?

A(30:41) それはそうだと思います。わたしは小野薬品も含めてね、アカデミア…、この研究は、研究自身に関して小野薬品は全く貢献していません。それはもうはっきりしてます。でその特許に関してライセンスを受けてるわけですからそれに関して十分なリターンを大学に入れてもらいたいと思っています。そのことによってまた次のね、わたしはもうそれを使って新たな研究をするというよりは、わたしの希望としては次のジェネレーションが京都大学でそのリターンをもとにした基金でエンカレッジされてそれでもういっぺん育っていくと、そん中からまた新しいシーズが生まれると。でそれが、日本の製薬企業にそういう形で再び還っていくと。そういう良いWIN-WINの関係をつくるということが望ましいということで小野薬品にも長くお願いしているわけです。

 

神戸での研究

Q(32:09) がんだけでなくさまざまな疾患への応用が期待できるかと思うんですが、そのあたり今後の発展についていかがお考えでしょうか?

A(32:23) 免疫のブレーキ役であります、PD-1は。従って現在は免疫を活性化するためにそのブレーキを外すという形で医薬品としてこれが使われているわけですが。逆にブブレーキをかけるようにする、PD-1の本来の役割を強化する方向で使うことも十分に考えられます。これに関しては現在、主として私は神戸のほうで、先ほどちょっと話がありました、元、財団、今、振興機構と言っております、そこで研究室を持ってそこで研究を進めております。

 

大きな壁

Q(33:25〕ここに至るまでにもし大きな挫折があったとすれば、どんな挫折だったか、また、それを乗り越えられた、あきらめなかったという点があれば教えてください。

A(33:40)挫折しなかったからここまで来たんですけども。非常に大きな壁にぶつかったということはあります。それはですね、わたしたちが、〔電話の呼び出し音〕ちょっと、ひょっとしたら安倍さんから電話かもしれないので。

(34:09~35:44 安倍首相から電話で質疑応答は中断)

Q(35:44 ) 挫折はないけれども大きな壁はあった、と?

A(35:51) それはですね。わたしたちは2002年に動物モデルで、これでガンが治るという論文を出しました。勿論特許も出したんでその話もしたけれども、そのあと実際にこれを臨床に応用したい、私はかなり楽観的に考えていたんですが、もちろんそれになりますと大学の研究室では不可能でして、パートナーとしての企業が必要なんです。で小野薬品にやらないか?と言ったんです。その当時はまだ小野薬品にライセンスはしていませんで、特許の出願に関して手伝ってもらった。でまず小野薬品に声掛けたら、「やらない」と、「自分のところはがんの経験もないし、そんな効くか効かないかわからないようなものに大金を投ずることはできない。それで、ただ、自分たちよりも大きな会社に声を掛けて、共同研究できないかを検討する」ということで、小野薬品は武田薬品から始まってですね日本の大手を、外資もいたと思いますけども、1年くらいかかって訪問して共同研究の申し込みをしたんですが、全部に断られたということで僕のところに来ましてね、これだけの会社に相談に行ったけどもダメだったし自分のところも単独では出来ないから降りるということでした。で僕は、「では、いい」と、自分がこれをやるからアメリカの、僕らはその当時、アメリカの研究者が自分で会社をたくさん作ってたんですね、ベンチャー、いわゆるベンチャーを。ですからその友人に相談に行って、「こういう形で特許も出しているし、やりたいと思う」って言ったら、まあその、研究者ですけれども会社もやってる。一時間くらい話たらもう「是非やろう」と。ただ一つ条件として、小野薬品がもう権利を放棄すると、もうやらないという確約をもらってくれ、と。これは企業としては当たり前の事なんで、日本に帰ってきて小野薬品にそう言ったら、社長に会ったわけではなくてその時は担当した重役だったか、部長だったか、「ちょっと、待ってくれ」と言われて待ってたんですが、それからね多分三月(みつき)くらいして突如として「やる」と言ってきたんですね。でそれは僕は結構なので、じゃあ小野薬品にやってもらおうと。でそれは何故小野薬品が急に変わったかというとまあこれは後で聞いた話ですけれども、現在ブリストル・マイヤーのバイスプレジデントになってる、当時メダレックスのヘッドだった、あー、メダレックスというのはヒューマナイズドアンタイボディを作る特許をとっていた、技術を持っていた。で、彼が、それは今回受賞したジム・アリソンの抗体も彼らが作ったんですね。ブリストル・マイヤーに今買収されていますけれども。彼らのほうがちょうど一年半、特許が公開されるんです。それを見て、向こうのほうから小野薬品に共同研究を申し込んだということで、急に話が行ったと。だからその、1年ちょっとぐらい、全く企業パートナーが見つからなかって、「もういよいよこれは自分の全財産を投げ打ってでも、アメリカのベンチャーと開発しなきゃいけないかな」というときはやっぱり一番の壁でした。

Q(39:55) 投げ打ってでも続けたいと思うその原動力?

A(39:59) いや、もともと財産無いから投げ打つ言うても知れてます。

 

京大医学部同級生の早すぎる死

Q(40:10) 過去のインタビューの中で〔…〕もう少し詳しく〔…〕

A(40:28)ガンで同級生がね、非常に若くして在学中で、いわゆるスキルス性のガンで速かったんですよ、あっというまに死んでしまってね。その男は父親と、親ひとり子ひとり、お母さんが早くなくなってね、非常に優秀な男だったけれども、非常に気の毒であって。それは、我々の同級生、医学部の学生ってのは人数少ないですから、みんな良く知ってて、僕だけじゃなくて多くの同級生がそれを非常に残念だというふうに感じて、なかなか忘れられない思い出だったと思います。

Q(41:30)何年生のときにどれくらいの期間で?

A(41:31) それは正確に何年生か覚えていないんだけども、医学部に入って、教養ではなくて。医学部は教養2年医学部4年なんです。その真ん中へんだったと思います。終わりのほうではなくてね。もうほぼね、2年くらいの間に、見つかってから亡くなったと思うんですよ。

Q(42:03)亡くなった瞬間てどのように思われたんですか?

A(42:03)もうそれはやっぱりガンというのはすごいなというかね大変な病気だと。そういうことに少しでも貢献できればいいなと、当時はかすかに思ったことは思いましたけども、まあしかしそれはまあ誰でも思うことですけどね。

Q(42:36) 具体的に〔…〕

A(42:36) ま、だから結局ね、そういういろんなことが積み重なって、自分の心の中に何かあったら、そういう大変な病気に役立つようなことにつながることがあればいいなと、まあ医学部で医学教育を人間というのは誰でもそう心が常にある。で僕それが重要だと思うんですね。やはり生命科学でも〔電話の呼び出し音〕趣味でやる研究ってのもあります。でそれはまあそれでいいんですけどね。

(文部科学大臣からの電話で記者会見が中断)〔「もしもしわたくし文部科学大臣主管室のありばやしと申しますが、お世話になっております。〕

(43:31~~44:53 待機メロディー

(44:55 「もしもし?」「ほんじょです」「ああ、先生、おめでとうございました。」「ありがとうございます」「いやあもう」〔45:05~ …無音…〕

 

A.(46:43 記者会見再開)なんだったけ?質問忘れてしまった。さっき質問途中だったね。それで?

Q(46:51) 〔…〕どのような方で?

A(47:00)えーっとね、しもえ君といったっと思うんだけどね。どのような方って、どういうことを聞きたいの?

Q(47:13)優秀な?

A(47:13)優秀な学生でしたよ。京大の学生全部優秀だけれども。質問の意味がよくわかんない。

Q(47:23)人柄とか。

A(47:30) 人柄はね、まあちょっと変わってるといえば変わってたよ。だけども非常にシャープな男でね。父さんはねぇ、工学部でどっか大学の教授だったと思うけども。ともかく親1人子1人だからすごくかわいがってね。時々お父さんが来て、息子のことを宜しく頼むと、僕は楽友(らくゆう)会館でごちそうになったり、そういうこともあったりね。なかなかそれは忘れられないですね。

 

早石修先生の教え

Q(48:19 産経新聞)先生は早石先生の研究室で学ばれていらっしゃって。早石先生の研究室で印象に残っている教えとですね、あと、お亡くなりになっておられるんですけども、生きておらたらどうご報告したいか?

A(48:58)早石先生は戦後長いことアメリカで研究をされて京大に帰ってこられて日本の生化学の新しいページを開かれた、基礎をつくられて、そこで若い人が新しいことを学びたい、全国から集まってきて、その中で私もいろいろ揉まれて、文化勲章をもらわれただけでも西塚泰美(にしづかやすとみ)先生、それから僕と同級生ですけども中西重忠(なかしにしげただ)とか、まあたくさんの業績を挙げたお弟子さんを育てていただきました。わたし自身もやはり早石先生の教室に入って、振り返ってみると何が一番大きな影響があったかというと、サイエンスというのは国際的なレベルで語らない限り意味がないと、つまり、国際的に自分の研究がどういう位置にいるかということを常に考えていない研究は自己満足になるということが一番の、若いときのね、大きな基礎であったと思います。早石先生もノーベル賞候補だと言われたわけですし、多分早石先生もそういうことがあるかもしれないというふうに思われていたという口ぶりで僕に語れたこともありますから、僕もそういう意味では早石先生にもし生きておられたらこういう結果になりましたということでお礼を言いたいというふうに思っております。

 

10年以上ノーベル有力候補と言われ続けて

Q(51:06 NHK) 本庶先生といいますと10年以上前からノーベル賞候補候補とメディア等で騒がれてきたんですけど、どういうふうに捉えられていたわけでしょうか。

A(51:27)正直言ってね僕はメディアの人と違ってやることがいっぱいあるので、この日がどうだということをそれほど自分でですね意識することはほとんどありませんでした。ですからいつどういうふうな形でそれが発表されるかということも知らなかったので、5時ぐらいに電話がかかった時は、「今年は誰なのかなあ」と思ってたら電話かかってきたと。で福井さんという秘書さんが「せんせ、せんせ、電話です」と飛んで来たので、さっきも言ったように、論文の推敲をしてるときにそういう話だったので、まあ少しビックリしたというということはあります。

Q(52:27) そうすると今朝も普段とかわらずに?

A(52:30) 正直言って、今日僕はマッサージにいかなきゃいけないので自分でクルマを運転してきて、今日帰りどうするんだと高等研の事務官の人に叱られたんですけども。ですからその時点では完全に忘れてました。

Q(52:58) さらにお忙しくなると思うんですけれども今一番したいことっていうのは何でしょうか?

A(53:11) 僕が一番したいことはエイジシューティングです。エイジシュートって知らない人もいるかもしれないけど。(以下、割愛)

 

研究に対する厳しさ

Q(54:00) 先生は非常に厳しいと

A(57:26) 厳しいというのはね、僕も他の人と自分とを比べてないからわかんないけども、何に対して厳しいのか、真実に対して厳しいのは当たり前でね、間違いでないかどうかということをやはり厳しく問う、それから、何が真実かと、僕は常にずっと、研究では常に世界の人と戦ってきたつもりですからね、戦うときはやはり厳しくないと戦えないですよ。

 

今後の研究

Q(55:08)〔…〕
A(56:02)京大で今やっていることは、ついでだから、僕は京都大学に感謝の意を表したいと思うんだけども、僕が幸運だという理由は、七十何歳になってね高等研究院という制度を作っていただいて、私もういっぺん再雇用していただいた。そいでスペースもいただいて、企業から寄付もいただいて、これは小野薬品寄附講座というのですけれども、そういういい環境を与えてもらって、そこでまだ続けているのは、PD-1抗体が、先ほども申し上げたように、限界が今の段階ではあります。それで全ての人が治るわけではない。もう少し効果を上げるような。大部分の人は何らかをプラスアルファして、これをよりよく効くようにしようという研究をしております。私もそういう方向でやっておりますけれども、他の人たちはちょっと違う視点からやっています。それから、効く効かないをできるだけ早く見極めるマーカーを探す、まあそういうことを1つ、それから神戸のほうでは先ほど申し上げたように、ブレーキを効かすような、えー抗体には常に2種類あるんですけれども、いわゆる阻害抗体と、促進抗体、2種類ありますから、それをふりわけてうまく使うことによってアレルギーとか自己免疫病の治療をできる可能性があるということでやっています。

それから、林さんとはね、何で縁があるかというと、林さんのお母さん、こんな話していいのかな?(笑)ま、簡単に言うと彼は山口が選挙区で、僕は高等学校は宇部高校。多分あなた聞いたことない、山口県の宇部市というところの高校の出身で、それでご縁があるということで、前からよく存じているということであります

 

研究における失敗について

Q(58:55〕失敗について
A(59:27)あのね、その言葉を間違えてほしくないんだけれども、実験の失敗は山ほどあります。しかし、大きな流れがね、ずっと進んでて、こうだと思ってたら断崖絶壁で下に落ちてしまったという類のものはこれまでなかったということを申し上げました。それは崖に行くまでに気付かなきゃいけない。それは、いろんなことをたくさんやってれば、サイエンスではね、段々と積み上がっていくんです。積みあがっていくのが、箸の端と箸をこういうふなつなぎ方をすると(手振りで、左手の小指をたててその指先に、拡げた右手の親指の先を載せて)これは、危ない。だからこの間にたくさんの(身振りでつなぎ目の部分を指して)、こう、互い違いにいっぱい箸をつないでいくことによって、その道が正しいかどうかということがわかって、そういうことを申し上げたんです。

 

参考

  1. 獲得免疫の驚くべき幸運 本庶 佑 京都賞(PDF)
  2. 本庶研メンバー
  3. 小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社 腫瘍免疫について日本、韓国、台湾における戦略的提携契約を締結(プレスリリース 2014/07/24

参考(報道)

  1. 「真実に厳しいのは当たり前」 ノーベル賞本庶氏会見速報④京都新聞 2018年10月01日 22時10分)Q 学生から厳しい先生といわれる。 A 他の人に比べていないから分からないが、真実に厳しいのは当たり前。研究では世界の人と戦ってきた。厳しくないと戦えない。
  2. (社説)本庶さん受賞 基礎の大切さ示す快挙(2018年10月2日05時00分 社説 朝日新聞DIGITAL外科手術、抗がん剤、放射線という従来のがん治療法に加え、「免疫療法」という新たな道を切り開いたことが評価された。… 本庶さんが発見した「PD―1」と呼ばれる分子は、がんが免疫細胞からの攻撃を逃れるカギとなるたんぱく質だ。 このPD―1の働きを抑えれば、より効率的にがん細胞をたたけるのではないか――。そんな発想をもとに14年に承認された薬オプジーボは、もちろん患者によって効果の有無や程度に違いはあるが、多くの人の命を救い、生活を支えている。 本庶さんがホームページで公開している「独創的研究への近道:オンリーワンをめざせ」と題したエッセーからは、ほとばしる情熱が伝わってくる。
  3. 本庶佑京大特別教授にノーベル医学生理学賞 子供時代はガキ大将も「人の役に立ちたい」SANSPO.COM 2018.10.2 05:03) 本庶氏の研究チームは1992年、異物を攻撃する免疫細胞の表面で働くタンパク質「PD1」を発見。その後、このタンパク質は免疫細胞が暴走を防ぐために備えている“ブレーキ”であることも解明した。がん細胞はこのブレーキを勝手にかけ自分への攻撃を止めるが、人為的にブレーキを利かなくすれば、がんの排除が可能になる。 この原理に基づき、本庶氏らが小野薬品工業(大阪市)と開発したオプジーボは免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれ、2014年に皮膚がんの薬として発売。肺、腎臓、胃などのがんへ対象を拡大され、一部の患者は長期生存が可能になった。年間1000万円以上かかる超高額な薬としても話題になった。
  4. ノーベル賞 本庶さん がんで友失い、道究め毎日新聞2018年10月1日 22時02分 最終更新 10月2日 00時53分) 本庶さんは1989年から98年まで弘前大(青森県弘前市)医学部で教授を務めた。同大によると、脳神経疾患研究施設の遺伝子工学部門で、遺伝子研究や実験への助言指導などを行った。
  5. 本庶佑氏 ゴルフも“研究熱心”屈指の腕前 子どものころの夢は天文学者 高校時代は演劇部 本庶佑氏が医学生理学賞受賞スポニチ 2018年10月2日)米国で30歳から始めた趣味のゴルフの腕前も絶品。会見でも「エージシュート(年齢以下のスコア)で76を出したい」と真剣に語った。筋トレや週末のゴルフは欠かさず、自宅でも毎晩素振りやパターの練習を怠らない。… 山口県宇部市で過ごした少年時代は望遠鏡で土星の輪を見たり、伝記を読むのが好きだった。小学校卒業時の夢は天文学者。演劇部にも所属した宇部高では、外交官や弁護士など、将来の夢を悩んだ末に、医者だった父と同じ道を志し京大医学部に進学した。 米国で研究生活を送るも、家族が受けた差別に不安を感じ帰国を決意。日本発で質の高い研究をしようとバネに変えた。当時は珍しい37歳の若さで大阪大の教授になりマスコミからも注目の的に。
  6. 本庶佑氏にノーベル医学生理学賞 オプジーボ開発でがん免疫療法革命中日新聞 2018年10月2日 朝刊)アリソンさんは一九九五年、免疫の主役の一つで白血球の一種であるT細胞の活動を抑える「CTLA-4」というタンパク質が、T細胞の表面についていることを発見。本庶さんは九八年、別の「PD-1」というタンパク質がT細胞を止めることを発見した。二つはいわば免疫にブレーキをかけるスイッチだ。がん細胞はこのスイッチを押してT細胞の攻撃を免れていた。
  7. 「何だこいつは」偶然の発見 好奇心と執念で実用化 本庶佑さんノーベル賞産経新聞 ITmedia NEWS 2018年10月02日 07時19分)きっかけは大学院生の提案だった。本庶研究室に在籍していた石田靖雅さん(57)=現奈良先端科学技術大学院大准教授=が、新たな研究テーマを本庶さんに持ちかけた。「細胞死に関わる遺伝子を探したい」 細胞死は「アポトーシス」とも呼ばれ、遺伝情報に基づいて細胞が自ら死んでいく不思議な現象で、生命科学の重要分野の一つだった。 石田さんは、免疫細胞の一種であるT細胞が自殺するときに働く遺伝子を見つけようと毎晩、実験を繰り返した。平成3年9月、ある遺伝子を突き止め、その塩基配列を調べて驚いた。 「何だこいつは」 全く新しい配列で正体は見当もつかず、急いで本庶さんに報告した。この遺伝子が作るタンパク質を、細胞死(プログラムド・セル・デス)との関連を期待して「PD-1」と名付けた。翌年、本庶さんらと共同で論文を発表。だが細胞死とは無関係なことが約2年後に分かり、その機能は謎として残った。… PD-1の正体を明らかにするため、まずこの物質を作る遺伝子を欠損させたマウスを作製してみたが、症状は何も出なかった。… マウスの系統を変えて実験したところ、免疫反応が強まり、人の自己免疫疾患によく似た症状が現れた。この物質を持っていないと免疫が強まるということから、この物質が免疫を抑えるブレーキ役として働いていることを突き止めた。… 26年に小野薬品から「オプジーボ」の商品名で発売された。PD-1の発見から実に20年が過ぎていた。
  8. 「一言で言えばスーパーマン」「アイデアも行動力も」 教え子が語る本庶佑さん産経ニュース 2018.10.1 21:17)ノーベル医学・生理学賞に輝いた京都大特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)さん(76)の研究・開発姿勢について、教え子の日本医科大教授の岩井佳子さんは「すごく粘り強い方。本庶先生の信念によって、あのお薬は生まれました」と明かす。 岩井さんは平成10年に大学院生として本庶研究室入り。「PD-1という面白いタンパク質があるんだよ」と言われて研究を始めた。大所帯の中、PD-1のグループは2人だけで「すごく自由に研究をさせていただいた」。
  9. 本庶氏、妥協許さず厳しい指導 「疑問にこだわれ」口癖 日本経済新聞 2018/10/1 21:54)科学者に贈られる至高の賞に輝いた本庶佑さんは「疑問にこだわれ」が口癖。… 父や叔父、祖父も医師で京都大医学部に進む。入学後、遺伝子組み換え技術の可能性を示した「生物学の革命」(柴谷篤弘著)に刺激を受けて研究者の道を志した。学部生時代から、日本の生化学を切り開いた京大の早石修博士の研究室に出入りし、研究者としての基礎を学んだ。研究では厳しい指導でも知られた。「とにかく厳しい。弟子はみな『一日も早く辞めたい』と思っていた」。大阪大大学院教授の仲野徹さん(61)は、京大医学部で本庶さんの助手を務めていた25年ほど前を振り返って笑う。本庶さんの口癖は「Stick to the question!(疑問にこだわれ)」。他人の理論に注意を向けるのではなく、自分自身が設定した問題に集中するように口酸っぱく説いたという。「とにかく一つ一つの事象を厳しくチェックされる。社会のためになる研究かどうかを追求し、求められるレベルも非常に高かった」 研究を離れると厳しさとは違った一面も。「面倒見がよく、弟子から慕われる存在だった」(仲野さん)京大の研究室で指導を受けた奈良先端科学技術大学院大准教授の石田靖雅さんも「極めて才能豊かで重要な部分を指摘してもらった。研究に対する集中力は爆発的で、すごいエネルギーだ」と振り返る。妥協を許さず指導する姿が印象的だったという。

2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とJames Allison博士が受賞

2018年ノーベル生理学医学賞が日本時間2018年18時30分に発表されました。

2018年ノーベル生理学医学賞発表の瞬間

Announcement of the Nobel Prize in Physiology or Medicine 2018
 

免疫制御分子の発見とがん治療への応用の研究に関して、本庶佑博士とジェームズ・P・アリソン(James Patrick Allison)博士が共同受賞しました。

【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見

【ノーベル賞受賞】本庶佑 京都大学名誉教授 記者会見 生中継(ニコニコ生放送)(20:20終了)
ノーベル医学生理学賞に京大・本庶氏 午後7時20分から会見(2018年10月1日)

(06:06~)この度はノーベル医学生理学賞を頂くことになりまして大変名誉なことだと喜んでおります。これはひとえに、長いこと苦労してきました共同研究者、学生諸君、また、さまざまな形で応援して下さった方々、また、長い間支えてくれました家族、ほんとに言い尽くせない多くの人に感謝いたしております。1992年のPD-1の発見とそれに続く極めて基礎的な研究が、新しいがん免疫療法として臨床に応用され、そして、たまにではありますが、この治療法によって重い病気から回復して元気になった、あなたのおかげだと言われる時があると、本当に私としては自分の研究がほんとに意味があったということを実感し何よりもうれしく思っております。そのうえにこのような賞を頂き大変、私は幸運な人間だというふうに思っております。今後この免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、一層、私自身ももうしばらく研究を続けたいと思いますし、世界中の多くの研究者がそういう目標に向かって努力を重ねておりますので、この治療法がさらに発展するようになると期待しております。また、今回の基礎的な研究から臨床につながるような発展ということで授賞できたことによりまして、基礎医学分野の発展がいっそう加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気付けるということになればわたしとしてはまさに望外の喜びでございます。
(質疑応答 10:05~)

本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】 

報道

<ノーベル賞>医学生理学賞に 本庶佑氏 京都大名誉教授

 

2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とジェームズ・P・アリソン博士

 

免疫制御分子の発見とがん治療への応用

 

ジェームズ・P・アリソン博士および本庶佑博士のノーベル賞授賞対象となった研究内容の説明

 

PD-1の発見とオプジーボの開発

  1. 脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ-京都大学・本庶佑研究室が開発をけん引(塚崎 朝子 2015.04.22 nippon.com

オプトジェネティクス(Optogenetics 光遺伝学)研究の歴史 

オプトジェネティクス(光遺伝学)は、光照射によってイオン透過性が制御されるチャネルやポンプの遺伝子を神経細胞に発現させて、光によって神経活動を亢進させたり抑制させたりする技術です。特定の神経細胞だけを特定のタイミングで活動させたり抑制することができるため、脳の働く仕組みを理解するのに役立ちます。また、非侵襲的な刺激方法がどの程度可能なのかがはっきりしませんが、精神疾患の治療に役立てたいという期待も存在します。

 

ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士

オプトジェネティクスで使われるツールを最初に開発したのは、ピーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann)博士の研究室でした。

Peter Hegemann | 2016 Massry Prize Lecture

Harz & Hegemann 1991 Nature
Nagel et al., 2002
Nagel et al., 2003
Kato et al., 2012
Wieteck et al., 2014 Science with M. Elstner
Wietek et al., 2015 Scientific Rep (collaboration)

  • In conversation with Prof. Peter Hegemann. Institute of Molecular Cell & Systems Biology UofG YOUTUBE(音声のみ 44:54)2018/02/23 に公開 He spoke with us about how to be persistent in your research, and how to play the long game of building a career through the highs and lows of the scientific process. 研究生活、論文出版の悲喜こもごも、ホンネが語られていて興味深い。

 

カール・ダイセロス博士

カール・ダイセロス博士によるオプトジェネティクス概論
Karl Deisseroth (Stanford / HHMI): Development of Optogenetics

 

エド・ボイデン博士

エド・ボイデン博士(CV)によるオプトジェネティクスの概論
Ed Boyden on Optogenetics — selective brain stimulation with light

Han and Boyden 2007 PLoS ONE 2(3):e299
Chow, Han, et al., 2010. Nature 463:98-102

オプトジェネティクス研究の歴史 開発者によるレビュー論文

  1. A history of optogenetics: the development of tools for controlling brain circuits with light Edward S. Boyden F1000 Biol Rep. 2011; 3: 11. Published online 2011 May 3

 

オプトジェネティクスを開発したのは誰か?

オプトジェネティクスといえば、カール・ダイセロス博士とエド・ボイデン博士の名が挙がることが多いわけですが、誰に最初の開発者としてのクレジットがあるのかに関して異論がないわけではありません。

There’s only one problem with this story: It just may be that Zhuo-Hua Pan invented optogenetics first. Even many neuroscientists have never heard of Pan. Pan, 60, is a vision scientist at Wayne State University in Detroit who began his research career in his home country of China. (He may have invented one of neuroscience’s biggest advances. But you’ve never heard of him By ANNA VLASITS SEPTEMBER 1, 2016 STATNEWS)

Pan presented his work at a conference in 2005, a few months before Boyden and Deisseroth published their paper. But Pan struggled to get his work published in a journal until a year later. (The History of Optogenetics Revised   Credit for the neuroscience technique has largely overlooked the researcher who first demonstrated the method. Sep 1, 2016 KERRY GRENS, TheScientist)

  • Ectopic expression of a microbial-type rhodopsin restores visual responses in mice with photoreceptor degeneration. Bi A, Cui J, Ma YP, Olshevskaya E, Pu M, Dizhoor AM, Pan ZH. Department of Anatomy and Cell Biology, Wayne State University School of Medicine, Detroit, Michigan 48201, USA. Neuron. 2006 Apr 6;50(1):23-33.

 

人の精神疾患の治療にオプトジェネティクスを適用可能か?

実験動物を使った精神疾患モデルにおいてオプトジェネティクスを用いて治療効果が上がったという論文をよく見かけますが、同じ侵襲的な処置は倫理的な問題から人間に適用できないため、人間に役立てるまでには大きなギャップが存在しています。

  1. Optogenetics: Applications in psychiatric research Fukutoshi Shirai MSc Akiko Hayashi‐Takagi MD, PhD PCN Frontier Review First published: 24 February 2017

 

参考

  1. Optogenetics (ENCYCLOPAEDIA BRITANNICA WRITTEN BY: Karl Deisseroth LAST UPDATED: Sep 10, 2018)
  2. オプトジェネティクスを始めましょう 光操作可能な遺伝子改変マウスの開発,入手方法 田中 謙二 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)143,193~197(2014)

ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の原理とその発見から応用までの歴史

 

CRISPR/Cas9の発明に2020年ノーベル化学賞

2020年10月7日のノーベル財団の発表によりますと、2020年のノーベル化学賞が、Jennifer A. Doudna(ジェニファー・ダウドナ)、 Emmanuel Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)の両氏に与えられることになりました。

Announcement of the 2020 Nobel Prize in Chemistry  Nobel Prize

 

祝☆ノーベル化学賞2020

ノーベル賞の枠は3人。CRISPR/Cas9の有用性は直ちに認識されて熾烈な特許戦争が勃発していたわけですが、Jennifer A. Doudna(ジェニファー・ダウドナ)、 Emmanuel Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)の二人がノーベル賞3人枠の中に入ることは、誰の目にも明らかでした。ノーベル賞をもらって当然と言われてきましたが、それでも、実際に本当に授賞が決まるとこれほど嬉しいものなんだなあとこの映像を見ていて思いました。

First Day in a Nobel Life: Jennifer Doudna 2020/10/07 UC Berkeley

別にノーベル賞をもらうために研究をするわけではありませんが、研究が正当に認めらることは研究者にとって非常に大事な部分なのだと思います。
 


 

ゲノム編集技術の革命的なツールであるCRISPR/Cas9(くりすぱー きゃすないん)ですが、もとはといえば、自然界においてバクテリアがウイルスから身を守るために備えているシステムです。2012年にこれがゲノム編集のツールとして利用できることが示され、わずか数年の間に、この技術を使わないラボがあるのか?というくらいにまで、研究の世界の隅々にまで浸透しました。

CRISPR技術の説明

適度な詳しさで、CRISPRをわかりやすく簡潔に説明した動画。

What is CRISPR?

  • 総説 ゲノムから見た最近の進化ーCRISPによる生存戦略ー 中川一路 Dental Medicine Research 33(3):236-241. (2013). PDFリンク 図1(A)CRISPRによる外来性因子の取り込みの機構。(2)CRISPRによる外来性因子の認識と排除

CRISPRの発見と応用技術の進展のタイムライン

CRISPR/Casが働く仕組みの解明には多くの研究者が関与しており、メジャーな発見だけでも論文が多数になるため、時系列にまとめたサイトを紹介しておきます。

 

CRISPRの発見

大阪大学微生物病研究所の研究グループが奇妙な繰り返し配列を大腸菌のゲノムで見つけ、石野 良純(いしの よしずみ)博士らが1987年に論文報告をしたのが、CRISPRが見出された最初の例です。この配列は、後の研究者によって、CRISPR、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeatsと名付けられることになります。

Ishino Y, Shinagawa H, Makino K, Amemura M, Nakata A. (1987). Nucleotide sequence of the iap gene, responsible for alkaline phosphatase isozyme conversion in Escherichia coli, and identification of the gene product. J Bacteriol 169: 5429-5433. PDFリンク

石野博士らは、大腸菌(E. coli)のiap遺伝子の構造を調べた際に、iap遺伝子の近傍に不思議な配列があることを見出しました。29塩基からなる共通配列が、32塩基からなるスペーサー配列を挟むようにして、5回繰り返し配置されていたのです。この共通配列の内部はパリンドーム(回文構造)になっていました。

FIG. 5. Comparison of direct-repeat sequences consisting of 61 base pairs in the 3′-end flanking region of iap. The 29 highly conserved nucleotides, which contain a dyad symmetry of 14 base pairs (underlined), are shown at the bottom. Homologous nucleotides found in at least two DNA segments are shown in boldface type. The second translational termination codon is boxed. The nucleotide numbers are in parentheses.

An unusual structure was found in the 3′-end flanking region of iap (Fig. 5). Five highly homologous sequences of 29 nucleotides were arranged as direct repeats with 32 nucleotides as spacing. The first sequence was included in the putative transcriptional termination site and had less homology than the others. Well-conserved nucleotide sequences containing a dyad symmetry, named REP sequences, have been found in E. coli and Salmonella typhimurium (28) and may act to stabilize mRNA (18). A dyad symmetry with 14 nucleotide pairs was also found in the middle of these sequences (underlining, Fig. 5), but no homology was found between these sequences and the REP sequence. So far, no sequence homologous to these has been found elsewhere in procaryotes, and the biological significance of these sequences is not known.

この論文では、「現在のところ、今回見つかった配列と相同性を示す配列は他の原核生物では見つかっていない。また、この配列の生物学的な意義は不明である(So far, no sequence homologous to these has been found elsewhere in procaryotes, and the biological significance of these sequences is not known)」と述べています。

石野博士らが大腸菌で初めて見つけたこの不思議な構造が、実は他の細菌(Bacteria)や古細菌(Archaea)にも存在していることが、他の研究者らによって徐々に明らかにされていき、Mojicaらが、DNA配列のこの特徴的な構造が実は原核生物のゲノムにおいては広く一般的に存在しているのだということを2000年に報告しました。

Mojica, F.J.M., Dıez-Villasenor, C., Soria, E., and Juez, G. (2000). Biological
significance of a family of regularly spaced repeats in the genomes of Archaea,
Bacteria and mitochondria. Mol. Microbiol. 36, 244–246. HTMLリンク

この論文で、Mojicaらはこの不思議な配列をShort Regularly Spaced Repeats (SRSRs)と名づけましたが、定着しませんでした。また、論文の結論は、多くの原核生物で見出されたのだから何か共通する機能があるのではないかという問題提起にとどまっています。

The question emerges here as to whether the SRSRs have a common function in prokaryotes, or whether their presence is reminiscent of ancient sequences and their role diverged with evolution. The universality, phylogeny and biological significance of this peculiar family of repeats arises as an item to be elucidated. (Mojica eta l., 2000 結論のセクションより)

 

Cas遺伝子の発見

CRISPRという繰り返し配列が原核生物のゲノム中に広く存在することはわかりましたが、その配列の意味するところはいっこうにわからないままでした。このミステリーを解き明かす手がかりを与えたのが、Jensenらによる、CRISPR近傍に存在する遺伝子群の発見です。

Identification of genes that are associated with DNA repeats in prokaryotes. Jansen R, Embden JD, Gaastra W, Schouls LM. Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75. PDF link

Cas遺伝子(Cas1, Cas2, Cas3, Cas4)を報告したこの論文では、奇妙な繰り返し配列をCRISPRと名付けており、この呼称が定着しています。

To appreciate their characteri-stic structure, we will refer to this family as the clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR). In most species with two or more CRISPR loci, these loci were flanked on one side by a common leader sequence of 300-500 b. (中略)Four CRISPR-associated (cas) genes were identified in CRISPR-containing prokaryotes that were absent from CRISPR-negative prokaryotes. The cas genes were invariably located adjacent to a CRISPR locus, indicating that the cas genes and CRISPR loci have a functional relationship. The cas3 gene showed motifs characteristic for helicases of the superfamily 2, and the cas4 gene showed motifs of the RecB family of exonucleases, suggesting that these genes are involved in DNA metabolism or gene expression. (Jansen et al., Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75.の論文の要旨から一部抜粋)

Cas遺伝子がヘリカーゼやエクソヌクレアーゼといったDNAの代謝に関わる酵素のモチーフを持っていたことから、この論文では、この謎の繰り返し配列を作るのにこれらのCasタンパク質が関与しているのではないかと、正しく推測していました。

The finding in this study that the CRISPR loci were strictly associated with a set of homologous genes, one of which has nucleic acid helicase motifs (the Cas3 homologues), one of which has exonuclease activity (the Cas4 homologues) and one of which has a high pI (the CasI homologues), as is often found for DNA-binding proteins, may be suggestive of a role for the Cas proteins in the genesis of CRISPR loci. (Jansen et al., Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75.の論文の議論のセクションから抜粋)

 

CRISPRスペーサー配列の正体

繰り返し配列の間に挟みこまれた配列の起源があいかわらず謎でしたが、ほどなくして、これがファージの配列だということがわかってきました。その結果、CRISPRはバクテリアが外敵であるファージから身を守るための仕組みなのではないかという推測がなされました。

CRISPR elements in Yersinia pestis acquire new repeats by preferential uptake of bacteriophage DNA, and provide additional tools for evolutionary studies. C. Pourcel, G. Salvignol, G. Vergnaud. First Published Online: 01 March 2005, Microbiology 151: 653-663.  HTML link

One possible explanation for that finding could be that CRISPRs are structures able to take up pieces of foreign DNA as part of a defence mechanism. In this view, it is tempting to further speculate that CRISPRs may represent a memory of past ‘genetic aggressions’. The fact that most of the spacers described in other bacteria have no homologue in the databases could still be explained by such a phage origin, as only a very small number of the existing bacteriophages have so far been sequenced. (Pourcel et al., Microbiology 151: 653-663. ディスカッションセクションより抜粋)

Clustered regularly interspaced short palindrome repeats (CRISPRs) have spacers of extrachromosomal origin. Bolotin A, Quinquis B, Sorokin A, Ehrlich SD. Microbiology. 2005 Aug;151(Pt 8):2551-61. HTML link

Here we report a correlation between the number of spacers in a locus and the resistance of  to phage infection, suggesting that CRISPRs can have a different biological role, protecting the bacteria against phage attack. (Bolotin et al., Microbiology 151(Pt 8):2551-61)

 

CRISPR-Casシステムの作用機序と生物学的な意味の解明

CRISPRの配列の中の、スペーサー配列の正体がファージなど外来ゲノム断片であることがわかり、CRISPR-Casシステムはいわばバクテリアにとっての免疫システムだと予想され、実際にそのように働くことが実証されました。

CRISPR provides acquired resistance against viruses in prokaryotes. Barrangou R, Fremaux C, Deveau H, Richards M, Boyaval P, Moineau S, Romero DA, Horvath P. Science 2007 Mar 23;315(5819):1709-12.

Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR) are a distinctive feature of the genomes of most Bacteria and Archaea and are thought to be involved in resistance to bacteriophages. We found that, after viral challenge, bacteria integrated new spacers derived from phage genomic sequences. Removal or addition of particular spacers modified the phage-resistance phenotype of the cell. Thus, CRISPR, together with associated cas genes, provided resistance against phages, and resistance specificity is determined by spacer-phage sequence similarity. (Barrangou et al., 2007 要旨)

Cas9–crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria. Giedrius GasiunasRodolphe BarrangouPhilippe Horvath, and Virginijus Siksnys. 

Here, we demonstrate that the Cas9–crRNA complex of the Streptococcus thermophilusCRISPR3/Cas system introduces in vitro a double-strand break at a specific site in DNA containing a sequence complementary to crRNA. DNA cleavage is executed by Cas9, which uses two distinct active sites, RuvC and HNH, to generate site-specific nicks on opposite DNA strands. Results demonstrate that the Cas9–crRNA complex functions as an RNA-guided endonuclease with RNA-directed target sequence recognition and protein-mediated DNA cleavage. (要旨より一部抜粋)

 

CRISPRの遺伝子編集技術への応用

バクテリアなどの原核生物が持っているCRISPR/Casシステムにおいて、標的DNA配列を特異的に認識され、標的DNAが正確に切断されることがわかると、ゲノム編集ツールとしての有用性が直ちに認識されました。Casタンパク質のグループには、複合体を作って働くものや、ひとつで全ての役割を備えたものなど種類があります。Cas9は一人で全ての役割をこなす巨大なタンパク質で、これとガイドRNA(クリスパーRNA(標的配列)とトレーサーRNAを、人工的に一本鎖にまとめたもの)の2つのプレーヤーだけでゲノム編集ができてしまうという驚くべき簡便さが、応用の広さを生み出しました

A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity.
Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21.

We propose an alternative methodology based on RNA-programmed Cas9 that could offer considerable potential for gene-targeting and genome-editing applications. (Jinek et al., 2012)

George Church博士やFeng Zhang博士の研究グループにより、CRISPR/Cas9システムが真核生物においても働くことが示され、ゲノム編集ツールとして人間を含めた全ての真核生物に応用する道が開かれました。

RNA-Guided Human Genome Engineering via Cas9. Prashant Mali, Luhan Yang, Kevin M. Esvelt, John Aach, Marc Guell, James E. DiCarlo, Julie E. Norville, George M. Church. Science 15 Feb 2013; Vol. 339, Issue 6121, pp. 823-826

The fully defined nature of this two-component system suggested that it might function in the cells of eukaryotic organisms such as yeast, plants, and even mammals. By cleaving genomic sequences targeted by RNA sequences (46), such a system could greatly enhance the ease of genome engineering. (Mali et al., 2013 のイントロダクションより。太字強調は当サイト)

Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems. Le Cong, F. Ann Ran, David Cox, Shuailiang Lin, Robert Barretto, Naomi Habib, Patrick D. Hsu, Xuebing Wu, Wenyan Jiang, Luciano A. Marraffini, Feng Zhang. Science 15 Feb 2013:Vol. 339, Issue 6121, pp. 819-823

KS Community Lecture: Genome Editing Using CRISPR-Cas Systems

フェン・ジャン(Feng Zhang)博士による解説

ちなみに、フェン・ジャン(Feng Zhang)博士は、大学院時代にスタンフォード大学のカール・ダイセロス博士のラボでオプトジェネティクスに関する仕事をしています。

Zhang studied chemistry and physics at Harvard and graduated with the highest honors.  He then headed to Stanford University for his doctoral work, where he joined the newly formed lab of Karl Deisseroth, who had just begun to develop optogenetics as a method for manipulating brain activity. Over the next five years, Zhang played a central role in making optogenetics a reality.

In 2009, after earning a PhD in chemistry, Zhang switched his focus to genome editing. That same year, he received a prestigious three-year Harvard Junior Fellowship, during which he worked in the laboratories of two Harvard Medical School professors, Paola Arlotta and George Church. There, he helped develop a new method of gene editing through the adaptation of TAL effectors (TALEs), sequence-specific DNA-binding proteins found in plant pathogens that alter gene expression in plants.

Zhang joined the MIT faculty in January 2011 and became a core member of the Broad Institute of MIT and Harvard. (https://lemelson.mit.edu/winners/feng-zhang

 

ダウドナ博士によるCRISPRに関する基本事項の解説

  • Biology and Applications of CRISPR Systems: Harnessing Nature’s Toolbox for Genome Engineering. Addison V.Wright, James K.Nuñez, Jennifer A.Doudna. Cell Volume 164, Issues 1–2, 14 January 2016, Pages 29-44. PDF link

Jennifer Doudna: CRISPR Basics (2017 CRISPR Workshop YOUTUBE動画 Innovative Genomics Institute – IGI 2017/11/04)

 

CRISPRの発見者は誰?

CRISPRという自然現象の謎解きには多くの研究者が関わっています。また、CRISPR/Cas9を有効なゲノム編集技術のツールにするための技術開発も複数の研究グループが熾烈な競争を繰り広げています。そのため、誰がCRISPRの発見者なのか、誰が一番大きな貢献をしたといえるのかについては、見解が分かれるかもしれません。2017年度のJapan Prize(日本国際賞)は、「生命科学分野」ではエマニュエル・シャルパンティエ博士とジェニファー・ダウドナ博士の両氏が受賞しています。

シャルパンティエ博士とダウドナ博士は、「生命科学」分野において「CRISPR-Casによるゲノム編集機構の解明」という顕著な功績をあげたことが受賞理由となりました。両氏によって発表されたCRISPR-Casシステムによるゲノム編集は、遺伝子工学において従来方法と比べてはるかに安価で時間をとらず、圧倒的に容易な革命的な新技術です。どんな生物においても目的とするDNAを任意の部位で切断し、削除、置換、挿入など自在な編集を可能にしました。本技術は生命科学研究のツールとして爆発的に広がっただけでなく、育種、創薬、医療など幅広い分野で応用研究が進んでいます。(Japan Prize News No.57 Feb. 2017  PDFリンク

また、2018年度カブリ賞ナノサイエンス分野では、エマニュエル・シャルパンティエ博士、ジェニファー・ダウドナ博士、および、リトアニアのヴィルギニユス・シクスニス (Virginijus Šikšnys)博士の3人が受賞しました。

2018 Kavli Prize Winners – NANOSCIENCE (World Science Festival YOUTUBE動画)

 

ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の特許をめぐる熾烈な争い

特許に関しては、フェン・ジャン(Feng Zhang)博士ら(ブロード・インスティチュート)の陣営と、ジェニファー・ダウドナ博士(カリフォルニア大学バークレー校)らの陣営との間で熾烈な訴訟合戦が繰り広げられており、アメリカでの裁定とヨーロッパでの裁定が異なるなど、混沌とした印象があります。

The CRISPR Patent Battle: Implications for Downstream Innovation in Gene Editing

  • 終わらないCRISPR特許論争、UCバークレーが不服申し立てMIT Technology Review エミリー マリン (Emily Mullin) 2018.05.01, 16:58)

 

CRISPRの発見からツールとしての利用まで

  • The Heroes of CRISPR  (Eric S. Lander, Cell 164, January 14, 2016) 研究者に焦点を当てた、CRISPR発見の裏話的な内容

 

CRISPR関連の略語、用語

CRISPR: clustered regularly interspaced palindromic repeats (Jansen et al., 2002 Mol Microbiol)

spacer ( スペーサー ): CRISPRに保存されたウイルスDNAの小さな断片 (参考:PDBj)

Cas: CRISPR-associated protein (Jansen et al., 2002 Mol Microbiol)

PAM: protospacer adjacent motif

crRNA: CRISPR RNA (Brouns et al., 2008 Science) 標的となる外来遺伝子配列の断片であるスペーサー配列を含む。

tracrRNAtrans-acting CRISPR RNA (Deltcheva et al., 2011 Nature) Casタンパク質と結合するための足場としての役割を担う部分。

gRNA: guide RNA (sgRNA (single-strand guide RNA, single guide RNA, short guide RNA)とも表記) 自然界では複合体を形成して働くcrRNAとtracrRNAを、ゲノム編集ツールとして利用しやすいよう、人工的にひと続きのRNAにしたもの。

Cascade: CRISPR-Associated Complex for Antiviral Defense (Brouns et al., 2008 Science) タンパク質からなる巨大な複合体で内部にCRISPR配列のRNA転写物があり、これを使って感染によるウイルスDNAと適合するものがいないか監視している。(参考:PDBj

Cas9: Cascade 9 (もしくはCRISPR associated protein 9)(参考: Roy et al., 2018 Front Genet.)2018 Cas9は、II型CRISPR系に分類される。監視タンパク質と切断を実行する部分の両方が1本のタンパク質鎖の中に収められている。(参考:PDBj) cas9 (formerly named “cas5” or “csn1”) is the signature gene for type II systems (8)(出典:Gasiunas et al., 2012;PNAS 109(39)E2579-E2586)

 

一般読者向けCRISPR解説記事

  1. CRISPR Part 1: A Brief History of CRISPR (TWIST BIOSCIENCE Dec 12, 2017)

 

遺伝子編集技術CRISPR-Casシステムの技術的な問題点

  1. ゲノム遺伝子の欠失には非常に効率の良い方法ではあるが、塩基置換や挿入の効率はまだ十分ではなく、目的の変異の導入には多くの受精卵または胚が必要である。
  2. 現在使用されているガイドRNAが認識するDNA配列は20塩基であるため、特異性はそれほど高くなく、目的としないゲノム配列にも変異が導入される可能性は否定できない。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu94/shiryo2-2.pdf

 

遺伝子編集技術CRISPR-Casシステムの社会的な問題点

動物や植物の品種改良技術として使われる可能性が高い。その場合に、原理的には自然突然変異と区別がつかな
いが、遺伝子組換え食品として扱わないかは、合意が得られていない。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu94/shiryo2-2.pdf

 

CRIPR-Casの種類と分類

  1. Annotation and Classification of CRISPR-Cas Systems. Kira S. Makarova and Eugene V. Koonin. Methods Mol Biol. 2015; 1311: 47–75. PDF link
  2. Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System. BerndZetsche, Jonathan S.Gootenberg, Omar O.Abudayyeh, Ian M.Slaymaker, Kira S.Makarova, PatrickEssletzbichler, Sara E.Volz, JuliaJoung, Johnvan der Oost, AvivRegev, Eugene V.Koonin, Feng Zhang. Cell
    Volume 163, Issue 3, 22 October 2015, Pages 759-771. Here, we report characterization of Cpf1, a putative class 2 CRISPR effector. We demonstrate that Cpf1 mediates robust DNA interference with features distinct from Cas9. Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease lacking tracrRNA, and it utilizes a T-rich protospacer-adjacent motif. Moreover, Cpf1 cleaves DNA via a staggered DNA double-stranded break.
  3. Expanding the catalog of cas genes with metagenomes. Quan Zhang, Thomas G. Doak, and Yuzhen Ye. Nucleic Acids Res. 2014 Feb; 42(4): 2448–2459.
  4. Evolution and classification of the CRISPR–Cas systems. Makarova et al., 2011. Nature Reviews Microbiology volume 9, pages 467–477(無料Abstract

 

バイオ関連企業による研究者向けのCRISPR-Cas技術解説

 

レビュー論文

  • CRISPR/Cascade 9-Mediated Genome Editing-Challenges and Opportunities. Bhaskar Roy, Jing Zhao, Chao Yang, Wen Luo, Teng Xiong, Yong Li, Xiaodong Fang, Guanjun Gao, Chabungbam O. Singh, Lise Madsen, Yong Zhou, and Karsten Kristiansen. Front Genet. 2018; 9: 240.
  • Genome editing: A breakthrough in life science and medicine. Izuho Hatada and Takuro Horii. Endocrine Journal 63(2):105-110. (2016) PDFリンク
  • 総説 ゲノムから見た最近の進化ーCRISPによる生存戦略ー 中川一路 Dental Medicine Research 33(3):236-241. (2013). PDFリンク

 

原著論文

数が多いため主要な論文のみ挙げています。

CRISPRの発見

  1. Nucleotide sequence of the iap gene, responsible for alkaline phosphatase isozyme conversion in Escherichia coli, and identification of the gene product. Ishino Y, Shinagawa H, Makino K, Amemura M, Nakata A. (1987). J Bacteriol 169: 5429-5433. PDFリンク
  2. Unusual Nucleotide Arrangement with Repeated Sequences in the Escherichia coli K-12 Chromosome. ATSUO NAKATA,* MITSUKO AMEMURA, AND KOZO MAKINO. Department of Experimental Chemotherapy, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University, 3-1, Yamadaoka, Suita, Osaka, Japan 565. Received 19 December 1988/Accepted 13 March 1989 JOURNAL OF BACTERIOLOGY, June 1989, Vol. 171, No. 6 p. 3553-3556 PDF link
  3. Long stretches of short tandem repeats are present in the largest replicons of the Archaea Haloferax mediterranei and Haloferax volcanii and could be involved in replicon partitioning. F.J.M. Mojica C. Ferrer G. Juez F. Rodríguez‐Valera. molecular microbiology July 1995;17(1):85-93
  4. Biological significance of a family of regularly spaced repeats in the genomes of Archaea,
    Bacteria and mitochondria. Mojica, F.J.M., Dıez-Villasenor, C., Soria, E., and Juez, G. (2000). Mol. Microbiol. 36, 244–246. PDFリンク

Casの発見

  1. Identification of genes that are associated with DNA repeats in prokaryotes. Jansen R, Embden JD, Gaastra W, Schouls LM. Mol Microbiol. 2002 Mar;43(6):1565-75. PDF link

CRISPRが働くメカニズム と生物学的な意義(細菌に備わる防御機構)

  1. CRISPR provides acquired resistance against viruses in prokaryotes. Barrangou R, Fremaux C, Deveau H, Richards M, Boyaval P, Moineau S, Romero DA, Horvath P. Science 2007 Mar 23;315(5819):1709-12.
  2. Cas9–crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria. Giedrius GasiunasRodolphe BarrangouPhilippe Horvath, and Virginijus Siksnys. 

ゲノム編集技術としてのCRISPR

  1. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. Science 2012 Aug 17;337(6096):816-21.
  2. Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems. Le Cong, F. Ann Ran, David Cox, Shuailiang Lin, Robert Barretto, Naomi Habib, Patrick D. Hsu, Xuebing Wu, Wenyan Jiang, Luciano A. Marraffini, Feng Zhang. Science 15 Feb 2013; Vol. 339, Issue 6121, pp. 819-823

CRISPRに関する最近の論文

  1. C2c2 is a single-component programmable RNA-guided RNA-targeting CRISPR effector.
    Omar O. Abudayyeh, Jonathan S. Gootenberg, Silvana Konermann, Julia Joung, Ian M. Slaymaker, David B.T. Cox, Sergey Shmakov, Kira S. Makarova, Ekaterina Semenova, Leonid Minakhin, Konstantin Severinov, Aviv Regev, Eric S. Lander, Eugene V. Koonin, Feng Zhang. Science 02 Jun 2016.
  2. Direct CRISPR spacer acquisition from RNA by a natural reverse transcriptase–Cas1 fusion protein. Sukrit Silas, Georg Mohr, David J. Sidote, Laura M. Markham, Antonio Sanchez-Amat, Devaki Bhaya, Alan M. Lambowitz, Andrew Z. Fire. Science 26 Feb 2016;Vol. 351, Issue 6276

その他のCRISPR-CASに関する論文

  1. Protospacer adjacent motif (PAM)-distal sequences engage CRISPR Cas9 DNA target cleavage.
    Cencic R, Miura H, Malina A, Robert F, Ethier S, Schmeing TM, Dostie J, Pelletier J. PLoS One. 2014 Oct 2;9(10):e109213.

 

参考

  1. Genome damage from CRISPR/Cas9 gene editing higher than thought July 16, 2018, phys.org
  2. CRISPR (ウィキペディア)
  3. Virginijus Šikšnys (Wikipedia)
  4. „Imam genų žirkles, iškerpam klaidą, ligos nelieka“ – Virginijus Šikšnys | Laikykitės ten pokalbiai(YOUTUBE動画トークショー)
  5. Lithuanian Lesson 2 – Alphabet (YOUTUBE) リトアニア語の発音
  6. Lesson One: Lithuanian Video Course (YOUTUBE) リトアニア語の発音

2018年ノーベル賞受賞者発表の日時 生理学・医学賞10/1、物理学賞10/2、化学賞10/3

2018年10月3日ノーベル化学賞の発表

2018年ノーベル化学賞は酵素進化工学のFrances H. Arnold博士, ファージディスプレイのGeorge P. Smith博士、Sir Gregory P. Winter博士の3氏に

2018年10月2日ノーベル物理学賞の発表

2018年ノーベル物理学賞は光ピンセット(Arthur Ashkin)と高出力超短パルスレーザー(Gérard Mourou , Donna Strickland)の開発に

2018年10月1日ノーベル生理学医学賞の発表

2018年ノーベル生理学医学賞は本庶佑博士とJames Allison博士が受賞

本庶佑 京都大学名誉教授・特別教授のノーベル賞受賞記者会見【動画&書き起こし】 

 

2018年ノーベル賞受賞者発表日時

2018年度のノーベル賞は、10月1日から8日にかけて、生理学・医学賞から順次、発表されます。生理学・医学賞10月1日、物理学賞10月2日、化学賞10月3日、平和賞10月5日、経済学賞10月8日。今年はノーベル文学賞は授与されません。

ノーベル財団が公表した日時は以下のとおりです。

PHYSIOLOGY OR MEDICINE – Monday, October 1, 11.30 a.m. at the earliest

PHYSICS – Tuesday, October 2, 11.45 a.m. at the earliest

CHEMISTRY – Wednesday, October 3, 11.45 a.m. at the earliest

PEACE – Friday, October 5, 11.00 a.m.

THE SVERIGES RIKSBANK PRIZE IN ECONOMIC SCIENCES IN MEMORY OF ALFRED NOBEL – Monday, October 8, 11.45 a.m. at the earliest

The Swedish Academy has decided to postpone the 2018 Nobel Prize in Literature, with the intention of awarding it in 2019

(参考: norbelprize.org

 

2018年ノーベル賞受賞者予想イベント

  1. 投票!2018年ノーベル化学賞は誰の手に!?(2018/9/26 ケムステ Chem-Station) 毎年恒例、ケムステ予想企画を実施します!お気軽ノーベル化学賞予想!この化学者に違いない!全くわかんないけどこの化学者っぽい!と特設サイトで予想を投票してください! … 見事的中された方には、抽選でAmazonギフト券10,000円分をプレゼントしちゃいます!前年度は的中者1名でしたので、副賞は3年間のキャリオーバー中、今年は当選者11名です!
  2. どうなる?!どうなった?!2018年のノーベル賞 科学コミュニケーター・トーク ノーベル賞の意義や受賞にふさわしい偉大な研究を科学コミュニケーターが15分間で分かりやすく解説します。受賞者の発表後は「受賞した研究テーマ」の内容や受賞につながったポイントなどを紹介します。期間:2018年9月19日(水)~10月15日(月) ※火曜休館 時間:11:30~11:45、15:30~15:45 (9月23日(日) 15:30~15:45は除く) 場所:5階 コ・スタジオ 
  3. Who Will Win the #ChemNobel? Predicting the 2018 Nobel Laureate(s) in Chemistry (American Chemical Society September 27, 2018 @ 2:00pm ET) Feed your frenzy as we once again host our annual predictions webinar that will tide you over until October 3. Join the editors at Chemical & Engineering News and a panel of special guests as they make their best guesses at who will claim chemistry’s big prize during an interactive free broadcast on September 27. Cast your own virtual vote and ask the panelists and hosts questions during a lively discussion of Nobel-worthy science.

 

2018年ノーベル賞受賞者発表の瞬間の楽しみ方

10月1日(月)からは、3夜連続でニコニコ生放送「科学コミュニケーターと発表の瞬間を迎えよう! ノーベル賞2018」を実施。スウェーデンの会場からの中継を見ながら、発表の瞬間を視聴者の皆さんと一緒に迎えます。

ニコニコ生放送

「ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう!」
自然科学3賞の発表日時にあわせ、今年のノーベル賞がどうなるのかを予想しつつ、スウェーデンからの発表の瞬間を皆さんと一緒に迎えます。発表後は、科学コミュニケーターが速報的に受賞内容を解説します。

生理学・医学賞

放送日時:2018年10月1日(月) 17:00~19:00
番組視聴URL: http://live.nicovideo.jp/watch/lv315440150

物理学賞

放送日時:2018年10月2日(火) 17:00~19:00
番組視聴URL: http://live.nicovideo.jp/watch/lv315440186

化学賞

放送日時:2018年10月3日(水) 17:00~19:00
番組視聴URL: http://live.nicovideo.jp/watch/lv315440203

(どうなる?!どうなった?!2018年のノーベル賞 Miraikan 日本科学未来館

  1. 2018年のノーベル賞、日本科学未来館からニコ生中継10/1-3(リセマム 2018.9.26 Wed 12:45)2018年のノーベル賞が2018年10月1日から発表される。日本科学未来館では、科学コミュニケーターが受賞者を予想するほか、ニコニコ生放送で自然科学3賞(生理学・医学賞、物理学賞、化学賞)の発表の瞬間を3夜連続で生中継する。

 

ノーベル化学賞授賞者の予想

ケムステーションのウェブサイトに、ノーベル化学賞を受賞する可能性があるとして名前が挙がる研究者らの一覧があります。そこには多数の日本人研究者の名があり、日本人の受賞の期待が持たれます。

未来にノーベル化学賞の受賞確率がある化学者 【有機化学】13名 【無機化学】4名 【分析化学】10名 【生化学】16名 【物理化学】2名 【超分子/高分子化学】6名 【材料化学】8名 【エネルギー化学】5名【医薬化学】5名 【理論・計算化学】3名 ( Chem-Station 2018/9/21)

 

2018年度クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞

インパクトファクターで有名なクラリベイト・アナリティクス社は、ノーベル賞発表前のこの時期に、独自に研究者のインパクトを測り、「ノーベル賞クラスと目される研究者」を発表しています。。

世界的な科学情報企業であるクラリベイト・アナリティクス(本社:米国フィラデルフィア、日本オフィス:東京都港区、以下「クラリベイト」)は、2018年の「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を発表致しました。 本賞は、学術論文の引用データ分析から、ノーベル賞クラスと目される研究者を選出し、その卓越した研究業績を讃える目的で発表されています。2002年より毎年9月の発表が恒例化されており、17回目となる本年は、日本人研究者1名を含む17名が受賞しました。日本からは、医学・生理学分野において1名が選出されました。京都大学化学研究所 特任教授 金久實氏は、「KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)の開発を含むバイオインフォマティクスへの貢献 」において今回の受賞となりました。

医学・生理学
Napoleone Ferrara(米国) University of California, San Diego
Minoru Kanehisa (日本) Kyoto University, Kyoto, Japan
Solomon H. Snyder(米国) Johns Hopkins University, Baltimore, MD

物理学
David Awschalom(米国) University of Chicago, IL
Arthur C. Gossard (米国) University of California, Santa Barbara
Sandra M. Faber (米国) University of California, Santa Cruz
Yury Gogotsi (米国) Drexel University, Philadelphia, PA
Rodney S. Ruoff ( 韓国) IBS CMCM Center and Ulsan National Institute of Science and Technology, South Korea
Patrice Simon (フランス) Université Paul Sabatier, Toulouse, France

化学
Eric N. Jacobsen (米国) Harvard University, Cambridge, MA
George M. Sheldrick (ドイツ) Georg-August-Universitat Gottingen
JoAnne Stubbe (米国) MIT, Cambridge, MA

経済学
Manuel Arellano (スペイン) CEMFI, Madrid, Spain
Stephen R. Bond (英国) Oxford University, UK
Wesley M. Cohen (米国) Duke University, Durham, NC
Daniel A. Levinthal(米国) University of Pennsylvania, Philadelphia
David M. Kreps(米国) Stanford University, Stanford, CA

(クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞」を発表 クラリベイト・アナリティクス 2018年9月20日)

  1. クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞」を発表 2018年 日本からの受賞者は1名 ~京都大学 金久實氏(医学・生理学 )(クラリベイト・アナリティクス 2018年9月20日
  2. クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞は、クラリベイト・アナリティクスのデータベースを用いた論文・引用分析において、ノーベル賞クラスと目される研究者を発表するものです。世界トップクラスの研究者の功績を讃え広めることで、科学がより身近なものとして認知されることを目的に、2002年からノーベル賞に先駆けた発表を恒例化しています。ノーベル賞の科学系4賞(医学・生理学、物理学、化学、経済学)と同カテゴリで構成されております。
  3. 米社のノーベル賞予想 京大の金久特任教授が候補 (日本経済新聞 2018/9/20 17:07) 科学情報サービス会社の米クラリベイト・アナリティクスは20日、論文の引用数などから予想したノーベル賞候補者17人を発表した。日本人では生理学・医学賞の候補として京都大の金久実特任教授(70)を挙げた。 金久氏はバイオインフォマティクス(生物情報科学)研究の先駆者的な存在で、ゲノム(全遺伝情報)に関する独自のデータベース「KEGG」の整備を進めてきた。
  4. 2018ノーベル賞予測結果を発表…韓国UNIST、ノーベル賞受賞予想者を確保(中央日報/中央日報日本語版 2018年09月20日15時53分 )10月ノーベル賞の季節を控えて2018年ノーベル賞の「予測リスト」が発表された。全世界で計17人。韓国では蔚山(ウルサン)科学技術院(UNIST)自然科学部のロドニー・ルオフ(Rodney Ruoff)特訓教授が唯一、ノーベル賞受賞予測リストに入った。このリストは国際学術情報サービス会社クラリベイト・アナリティクスが研究論文の被引用数基準、全世界上位0.01%に入った優秀研究者を対象に選び出した結果だ。2002年からクラリベイトが指定したノーベル賞受賞予測学者304人の中で計46人がノーベル賞を受賞し、特に27人は名指されて2年以内にノーベル賞を受賞した。適中率が15.1%に達する。その間、クラリベイトが挙げたノーベル賞候補のうち韓国人は成均館(ソンギュングァン)大学化学工学部のパク・ナムギュ教授とKAIST自然科学大学化学科のユ・リョン特訓教授がそれぞれ2017年と2014年に含まれたことがある。二人は今年も累積論文被引用数では上位0.01%に含まれるというのが会社側の説明だ。… ルオフ教授は20年以上にわたり炭素素材を研究してきた世界的大学者だ。彼が今回、被引用優秀研究者に選ばれたのは炭素素材を土台にした「スーパーキャパシタ(Super capacitor)」の研究が主に奏功した。

2018年度カブリ賞ナノサイエンス分野

クリスパー研究にノーベル賞が授与されるとしたら、当確とみられるのは二人の共同研究者、ジェニファー・ダウドナ博士とエマニュエル・シャルパンティエ 博士ですが、3人の枠を共有する場合に、あと一人が誰なのかに関心が持たれます。クリスパー研究に対して与えられたカブリ賞を受賞した3人目はリトアニアのヴィルギニユス・シクスニス(Virginijus Šikšnys)博士でした。

2018 KAVLI PRIZE IN NANOSCIENCE
The Norwegian Academy of Science and Letters has decided to award the Kavli Prize in Nanoscience for 2018 to
Emmanuelle Charpentier(Max Planck Institute for Infection Biology, Berlin, GERMANY)
Jennifer A. Doudna(University of California, Berkeley, USA)
Virginijus Šikšnys(Vilnius University, Vilnius, LITHUANIA)
“for the invention of CRISPR-Cas9, a precise nanotool for editing DNA, causing a revolution in biology, agriculture, and medicine.”

 

メディアなどによるノーベル賞受賞者の予想

ゲノム編集技術CRISPRにいつかノーベル賞が授与されることを疑う人はいません。皆の関心は、それが今年なのかどうか、また、最大3人の受賞者の中に誰が入るかということです。

⇒ ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の原理と研究の歴史をおさらい

  1. 2018年ノーベル生理学・医学賞を予想する③ 適応免疫に必須なリンパ球と器官の発見 (毛利 亮子 2018/09/26 15:00:00 Miraikan) オーストラリアの免疫学者、ジャック・ミラー(Jacques F. A. P. Miller)博士, アメリカ合衆国の免疫学者、マックス・クーパー(Max D. Cooper)博士
  2. 2018年ノーベル化学賞を予想する②ほしいものは折りたたんで作る!DNAオリガミ2018年09月18 日鈴木 毅 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ) ネイドリアン・C・シーマン(Nadrian Charles Seeman)博士 ポール・W・K・ロザムンド(Pole W.K. Rothemund)博士
  3. With prestigious prize, an overshadowed CRISPR researcher wins the spotlight (By Jon Cohen Jun. 4, 2018, 12:45 PM Science) Šikšnys first showed that the CRISPR-Cas9 system, a bacterial immune mechanism, could be transferred from one bacterium to another. He also independently made the same advance as Doudna and Charpentier: developing a way to steer the CRISPR-Cas9 complex to specific targets on a genome, which he called “directed DNA surgery.” … Doudna and Charpentier reported their findings in a landmark Science paper published online on 28 June 2012. But it took Šikšnys 5 months to publish his study; it was rejected by Cell and Cell Reports, and then moved slowly through editing at the Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), which published it online on 25 September 2012.
  4. 新春大予想 2018年のノーベル賞有力候補4人とは?(吉崎洋夫2018.1.5 07:00 AERAdot.)自然科学系の候補者について、毎年ノーベル賞に関するイベントを行っている「日本科学未来館」(東京都江東区)の科学コミュニケーション専門主任・詫摩雅子さんに聞いてみた。まず筆頭に挙げられるのは、医学生理学賞の可能性が高い本庶佑(たすく)・京都大特別教授。… 物理学賞では香取秀俊・東京大教授に期待がかかる。300億年に1秒しかずれないほどの高精度な時計「光格子時計」を開発した。… 化学賞では、遠藤章・東京農工大特別栄誉教授と藤嶋昭・東京理科大学長が有力候補だ。
  5. When will CRISPR get a Nobel Prize? (PLOS Synbio Community Posted October 5, 2017 by Aaron Dy) Who gets a Nobel for CRISPR? I’ve already referenced the main players, but here’s a very-much-non-definitive list of people rumored to be up for a CRISPR Nobel (in alphabetical order): Emmanuelle Charpentier at Max Planck Institute for Infection Biology in Berlin (fomerly Umeå University), George Church at Harvard University and Wyss Institute, Jennifer Doudna at University of California, Berkeley, Virginijus Šikšnys at Institute of Biotechnology in Lithuania, and Feng Zhang at Broad Institute and MIT.
  6. ノーベル賞予想、生理学・医学賞は本庶氏が断トツ、癌免疫療法が濃厚か (2017.09.25 00:12日経バイオテク編集部) 京都大学大学院医学系研究科の本庶佑客員教授が、昨年に続き、137票の断トツで第1位だった(表1)。本庶客員教授は、抗体クラススイッチの制御機構を解明した他、主宰する研究室で「オプジーボ」(ニボルマブ)の標的であるPD1/PD-L1分子の同定や機能解明を進め、癌免疫療法の新たな可能性を切り開いた研究者として知られる。 第2位に選ばれたのは、32票を獲得した大阪大学免疫フロンティア研究センター(IFReC)の坂口志文特任教授(大阪大学名誉教授兼京都大学名誉教授)。坂口特任教授は、転写因子Foxp3を発見し、制御性T細胞の世界的権威として知られる。また、第3世代のゲノム編集技術、CRISPRの基礎となった繰り返し配列を大腸菌で発見した九州大学の石野良純教授も4票を獲得し、第11位となった。
  7. ノーベル賞有力候補22人に宮坂氏選出 米情報会社 (2017年9月21日9時55分) 米情報会社クラリベイト・アナリティクスは20日、論文の引用回数の調査などに基づき独自に予想したノーベル賞の有力候補者22人を発表した。日本人では、化学賞に桐蔭横浜大の宮坂力(つとむ)特任教授(64)を選んだ。 … 宮坂氏は09年、光エネルギーを電気に変換する効率が高い「ペロブスカイト結晶」を使った太陽電池を考案。同分野は再生可能エネルギーの拡大などを背景に研究に火がついており、宮坂氏の論文は世界中の研究機関から3300回以上引用されていた。
  8. 2017年ノーベル生理学・医学賞を予想する②神経科学を変えた!オプトジェネティクス 2017年09月19日石田 茉利奈 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ
  9. Why didn’t the discoverers of CRISPR, Jennifer Doudna and Emmanuelle Charpentier, win the Nobel Prize in Medicine? (Quora.com) It was a Dutch group, led by Ruud Jensen, in 2002 that first shed major light on what CRISPR actually is and does. They in fact were the ones who named CRISPR itself as well as the Cas and Cas-associated gene products, and once they had demonstrated that Cas was a selective endonuclease, its potential for recombinant application was quickly appreciated. And it was Yoshizumi Ishino’s group in Japan in the 1980’s that actually “discovered” CRISPRs in the sense of isolating them and their unusual character- palindromic repeats coupled with highly distinctive sequences. (Don Reston, former Biotechnology Specialist (Food and Soil Sciences) Answered Apr 7, 2017)
  10. Nobel Laureate Yamanaka Names Three Japanese Candidates (By Staff Reporter October 6, 2016 at 8:48 am ZAIKEI NEWS) The first research mentioned by Prof. Yamanaka is on PD-1, research that is said to lead to the development of a new drug against cancer. Behind this research is a Kyoto University professor emeritus Tasuku Honjo. … Prof. Yamanaka then mentioned Prof. Yoshizumi Ishino of Kyushu University and Prof. emeritus Atsu Nakada to Osaka university on researches on Genome editing – a technology that could change the entire feature of life. He also quoted a dramatic cholesterol-reducing medication Statin and its discoverer Prof. Akira Endo of Tokyo Univ. of Agriculture and Technology. (Nathan Shiga)

2017年度ノーベル化学賞はクライオ電顕に

2017年度ノーベル化学賞は、クライオ電子顕微鏡法の開発に貢献したジャック・デュボシェ(Jacques Dubochet)博士(75)、ヨアヒム・フランク(Joachim Frank)博士(77)、リチャード・ヘンダーソン博士(Richard Henderson)(72)に贈られました。

クライオ電子顕微鏡法の開発の歴史や3人のノーベル賞受賞者の貢献が解説された、ノーベル財団が公表した文書。
Scientific Background on the Nobel Prize in Chemistry 2017
THE DEVELOPMENT OF CRYO-ELECTRON MICROSCOPY (PDF nobelprize.org)

 

クライオ電顕の現状を語るリチャード・ヘンダーソン博士。

Single-Particle Electron Microscopy – Richard Henderson (14分31秒)

5:52- 単粒子クライオ電子顕微鏡法は非常に一般的になってきています。今まで全く何も知らなかった人々にも広まっています。いまどきの状況はこんな感じです。誰かがこう言います。「自分はこのたんぱく質の構造を決めようとして10年間も試みてきたんだ。精製して、分析して、結晶化しようとして努力したが実らなかった。自分の場合、結晶化してくれないのか、あるいは、結晶化しても整列が不十分で構造が決められない。」それから、こう言うのです。「クライオ電子顕微鏡を試してみるべきかもしれないな。」 そう言って、非常に微量の試料、わずか数滴をグリッドに載せ、デュボシェ法によりブロットし、急速に凍結し、電子顕微鏡にセットし、画像を取得します。いまではそれは、新しい検出器でデジタル化されています。それから構造を計算します。そうすると数日以内にはもう構造が決まってしまうのです。他の方法を試して10年間を費やした、たんぱく質の構造がです。
(上の動画のトランスクリプト http://serious-science.org/single-particle-electron-microscopy-8637

 

ノーベル賞受賞直後にインタビューに答えるヨアヒム・フランク博士。

2017 Nobel Prize in Chemistry Awarded to Prof. Joachim Frank

 

ノーベル賞受賞が決まって喜びの表情のジャック・デュボシェ博士(フランス語)。

Le Suisse Jacques Dubochet gagne le Prix Nobel de Chimie
https://youtu.be/xUyS6RT0X5E

ノーベル賞受賞直後にインタビューに答えるジャック・デュボシェ博士(フランス語)。
Le Suisse Jacques Dubochet gagne le Prix Nobel de Chimie

 

参考

  1. Press Release: The Nobel Prize in Chemistry 2017 (nobelprize.org 4 October 2017)

2017年度ノーベル化学賞報道

  1. <ノーベル化学賞>欧米の3氏に 高解像の電子顕微鏡 (毎日新聞 10/4(水) 19:00配信) スウェーデン王立科学アカデミーは4日、2017年のノーベル化学賞を、生体内の分子を極低温にして高解像度で観察する「クライオ電子顕微鏡」を開発した欧米の3氏に贈ると発表した。…  受賞が決まったのはスイス・ローザンヌ大のジャック・デュボシェ名誉教授(75)、米コロンビア大のヨアヒム・フランク教授(77)、英MRC分子生物学研究所プログラムリーダーのリチャード・ヘンダーソン博士(72)。

2016年ノーベル化学賞は分子マシンの合成に

2016年10月5日に、2016年度のノーベル化学賞受賞者が発表されました。受賞したのは分子マシンを設計・合成したジャン=ピエール・ソヴァージュ(Jean-Pierre Sauvage)氏、ジェームス・フレーザー・ストッダート(Sir J. Fraser Stoddart)氏、バーナード・フェリンガ(Bernard L. Feringa)氏の3人です。

1983年にソヴァージュ氏がリングがチェーンのようにつながった分子カテナン(catenane)の合成に成功。

ソヴァージュ氏のインタビュー。

1991年にストッダート氏が、リングが車軸の上を動くような分子「rotaxane 」の合成に成功。これをもとに分子リフト、分子マッスル、分子コンピュータチップなどを合成。

ストッダート氏のレクチャー。

1999年にはフェリンガ氏が分子モーターを合成しました。また、分子で「自動車」も作製しています。下の動画は、Supplementary information from the paper “Electrically driven directional motion of a four-wheeled molecule on a metal surface,” authored by Tibor Kudernac, Nopporn Ruangsupapichat, Manfred Parschau, Beatriz Maciá, Nathalie Katsonis, Syuzanna R. Harutyunyan, Karl-Heinz Ernst & Ben L. Feringa, published in Nature 479: 208–211, 10 November 2011. http://dx.doi.org/10.1038/nature10587

 

フェリンガ氏のレクチャー。

参考

  1. The Nobel Prize in Chemistry 2016
  2. ノーベル化学賞は欧米研究者3人 分子マシン開発など (NHK NEWS WEB 10月5日 18時51分):”ことしのノーベル化学賞に、「知恵の輪」のように結びついた2つの分子などに刺激を与えると形が変わり、あたかもスイッチやモーターのように機能する「分子マシン」と呼ばれる分子の合成などに成功したフランスとアメリカ、それにオランダの3人の研究者が選ばれました。”
  3. ストッダート研究室ウェブサイト(米ノースウェスタン大学)論文リスト
  4. フェリンガ教授(蘭フローニンゲン大学) 論文リスト
  5. ソヴァージュ博士(仏ストラスブール大学)論文リスト(researchgate.net)
  6. 分子の知恵の輪(有機化学美術館):”2つの環がまるで鎖か知恵の輪のように絡み合った「カテナン」と呼ばれる分子があります(catenaはギリシャ語で「鎖」)。”
  7. フラフープ分子・ロタキサン(有機化学美術館):”ロタキサンは「2つの分子が、直接つながってはいないが外れもしない」という点でカテナンと共通しています。カテナンは2つの輪がからみ合っていましたが、ロタキサンは輪の中にひも状の分子が通っており、その両端に輪より大きな「ストッパー」がついているためにひもが輪から抜けないという構造です。 ”
  8. ナノカー2号発進!(今週の分子 Molecule of the Week (58) 有機化学美術館):”ナノプシャン、ナノカーなど興味深いナノテク世界を切り開いているTour教授の研究室から、また新作が発表されました。今回のニューモデルは、なんと光のエネルギーを受けて自走する「モーター付きナノカー」です。今回組み込まれたモーターは、オランダのFeringaらによって開発されたもので、回転軸となるのは中心にある二重結合部分です。以前述べた通り二重結合はふつう回転できないのですが、光を当てると結合の1本が切れ、自由に回転できるようになります。普通の分子ではどちら向きにでも回ることができ、回転方向を制御することができませんが、Feringaの設計したこの分子ではメチル基の引っかかりにより一方向にのみにしか回転できないようになっています(実際の理屈はもう少し複雑ですが、興味のある方はNature 437, 1337 (2005)あたりをご覧下さい)。”