Monthly Archives: November 2015

卓越研究員制度は雇用不安を改善できるか?

新たに創設される「卓越研究員」制度(2016年公募開始)は、博士研究員(ポスドク)や任期付大学教員の雇用不安の改善に貢献できるのでしょうか?

2016年3月29日追記:

文科省の卓越研究員事業のウェブサイトで、卓越研究員受け入れ先全リストが公開されました。

一覧化公開ポスト

本事業の対象となる、各機関からの提示ポストは以下のとおりです。

* * * * *

関連記事 ⇒ 卓越研究員の受け入れ先が募集要項を公開 2016年3月28日 JREC-INに123件が掲載される

2016年度から新たに「卓越研究員」制度が始まります。

文部科学省は優秀な若手研究者が大学や国立研究開発法人、企業を自由に選んで研究に専念できる新制度を2016年度から導入する。国が毎年100~200人を将来性や論文から「卓越研究員」に認定する。各機関が人件費を負担し終身雇用を保証する。…( 「卓越研究員」16年度から導入 文科省、終身雇用を保証 日本経済新聞 電子版 2015/7/27 2:00

卓越研究員になるための過程は、

  1. 大学や研究開発法人、企業などが卓越研究員枠のポストを提示
  2. 40歳以下の任期付き助教やポストドクター(博士研究員)などの若手が大学や国立研究開発法人、企業から希望するポストを複数選び、国に申請
  3. 国が将来性や論文を考慮し書類審査や面談を経て毎年100~200人を卓越研究員に認定
  4. 大学や企業などの受け入れ機関を最終的に決定
    (参考:http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1437957970/ ソース元は日経新聞の記事)

卓越研究員制度を簡潔に紹介しますと、「受け入れたい大学は手をあげろ」「大学・研究機関外の公的機関が人を審査する」「マッチングで割り当てる」「割り当てた人は無期雇用にせよ」「人件費は基本大学持ち」… (東大総長参戦! 日本の科学を考えるガチ議論 2015.11.27)

MEXT20151022_7-5
経済産業省 第4回 理工系人材育成に関する産学官円卓会議(平成27年10月22日) 資料7-5「博士人材の多様なキャリアパスの確保に向けた文部科学省の取組」PDF10ページ)

 

卓越研究員制度に関しては、卓越研究員制度検討委員会で議論が重ねられてきました。2015年3月の時点で公表された「卓越研究員制度の在り方について」(卓越研究員制度検討委員会平成2 7 年3 月2 7 日)では教授レベル、准教授レベルといったシニアクラスの卓越研究員制度というアイデアもありました。下の表に見るようにポスドクや任期付助教の高年齢化が進んでおり、若手ということで40歳以下という年齢制限を課してしまうと、チャンスを得られない人が相当数存在する可能性があります。

ninkituki文部科学省中央区養育審議会第125回大学分科会(平成27年11月10日)配付資料3-3

ポスドク一万人計画で創出されたポスドクは2008年現在で数千人の規模で35歳を超えている。ウィキペディア ポストドクター等一万人支援計画

近藤:20年前に大学院の重点化を進めたことで、現在40歳前後のPDがたくさんおり、非常に厳しい就職難になっています。この年齢層に対する何らかのケアは可能でしょうか?
生田:難しいと思います。財政当局の視点からすると、その年齢層の研究者に対して、大学院重点化を通じて高額の投資を したという解釈になっており、その人達をケアするための別途の予算措置は理解を得られないのではないでしょうか。本来であれば、産業界が、その人材を吸収 するはずだったのですが、産業界と大学とのミスコミュニケーション、さらには90年代からの不況がそれを不可能にしたのではないでしょうか?アンケート結果への科学政策改革タスクフォース戦略室長・生田知子さんのコメント 日本の科学を考える ガチ議論 2015.10.24

また、当初は「国家が卓越研究員を雇用する」という発想だったようですが、これも「受け入れ機関が雇用する」ように変わっており、このような新制度が果たして本当にうまく機能するのか、注目されます。

koyoseidokaikakuイノベーションに適した国とするための人材戦略 卓越大学院・卓越研究員制度 2014/11/19 東京大学 大学院理学系研究科長 教授 五神 真)

 

2015年3月の時点では、『卓越研究員』制度の案は、以下のように、「教授相当の卓越研究員」など非常に興味深い内容を含んでいました。2016年度からとりあえず新制度が始まるわけですが、その後どのように改善・発展していくのかが期待されます。

(2)概念設計
上記(1)を踏まえると、卓越研究員制度としては、以下のような仕組みの認定制度が一案(注1)として考えられる。【図12~14】
① 受入希望機関は、受け入れポスト・処遇等について事前公表(注2)。国又は中立的な公的機関が一覧化公開(注3)。
② 研究者は国又は中立的な公的機関に直接申請。その際、希望機関として3機関程度を申請。国又は中立的な公的機関によるピアレビューにより、卓越研究員を認定(注4)。その後、受入機関とのマッチング・調整を経て、受入機関において雇用(注5)。各受入機関において雇用経費を負担(ただし、国立大学法人運営費交付金との関係については別途検討)。
③ 卓越研究員は、受入機関による雇用開始時又は開始後6年程度までの適切な時期(注6)に、受入機関の審査を経て、年俸制(無期)に移行。
④ 卓越研究員に対するインセンティブは、テニュア相当の無期雇用が可能となるポスト獲得と、受入機関による魅力的な研究環境等の提示。
⑤ 受入機関に対するインセンティブは、卓越研究員の受け入れによる卓越した研究の進展と、卓越研究員に選ばれることによるステータス向上。
(注1)本案は、学術コミュニティーにおいて、我が国全体を見通した中長期的な観点に立って、卓越した研究者を選定することができる機能を有していることが前提。
(注2)受入希望機関の受け入れポストの調整に当たっては、単に既存分野の後継者選びとせず、学長等のリーダーシップの下、中長期的な観点に立って、戦略的に当該組織にとって真に必要な研究分野を選定することが前提。
(注3)受入希望機関の受け入れポストの公表・一覧化公開は、毎年度実施することにより、卓越研究員が自ら希望するタイミングで、産学官の枠を越えて、更に好条件の処遇・研究環境を提示する機関に異動可能な仕組みとする。
(注4)既存の人事システムにピアレビューによる認定を組み込むことによって、人事システムの透明性の向上につながるとともに、博士号取得者の採用を希望する民間企業にとっては、採用に当たっての有効な指標の一つとなる。
(注5)受入機関とのマッチングを担保する方策については要検討。また、国又は中立的な公的機関のピアレビューによる認定の後に受入機関とのマッチング・調整を実施する場合、研究者(申請者)にとっては、ピアレビューを通じて、真に公正で透明性の高い審査プロセスによってテニュア相当の無期雇用が可能となるポスト獲得が可能となる一方、受入機関にとっては、独自の人事権が制限されることになる。新たな「第3のポスト」として明確に位置づけるため、制度導入へのインセンティブとそれを担保する財源への留意が必要。
(注6)職階に応じて3段階(①助教職相当、②准教授職相当、➂教授職相当)でエントリーポイントを設け、①助教職相当については、原則テニュアトラック助教として、②准教授職相当及び➂教授職相当については、受入機関による雇用開始時に年俸制(無期)として雇用することが望ましい。

卓越研究員の規模については、大学における毎年度の採用教員数の合計が約1.1 万人(教員数合計約17万人・研究者数合計約89 万人)であること   国立大学における毎年度の定年退職教員数が約1,500 人(国立大学教員数合計約6万人)であること  優秀なポストドクターに対するフェローシップ制度(特別研究員PD)の毎年度の採用者が約350 人であること  テニュアトラック制導入のためのモデル事業(テニュアトラック普及・定着事業)による毎年度の採用者が約50~100 人であることを踏まえ、本制度が定常化した段階で、毎年度約200 人程度(恒久的な制度と仮定すれば総数約6千人)を認定することが適当ではないか。なお、受入機関の配分の内訳については、産学官の受入希望機関の総数や機関毎の割合に依存するが、民間企業や独立行政法人も含め、特定の機関に偏ることなく、我が国全体で卓越研究員が活躍することが望ましい。卓越研究員制度の在り方について 平成2 7 年3 月2 7 日 卓越研究員制度検討委員会 PDF19ページ)

新制度に対しては、期待、懐疑、疑問さまざまな反応があるようです。

卓越研究員はあくまでポスドク、PIではない。支給される研究費もラボを立ち上げるほどではないのでしょう。ホストラボの機材などに依存せざるをえない。 ホストにしてみれば、自分の研究とは異なる研究員がいきなり現れ、サポートを強いられる。お互い良好な関係を築くことは難しい?(「卓越研究員」制度を語る「卓越研究員」制度を語る TOGETTER 2015年7月27日

この企画、需要を確かめて始めようとしてるんですかね? してますよね?卓越研究員、走る パンとサーカス 2015-07-29)

「日本の科学を考える」ウェブサイトでも、研究者の生活を保障するための制度に関する提言がなされています。国の雇用、移動も可能というアイデアは「卓越研究員」制度の議論の途中段階にはあったようです。

問題はキャリアパスが崩壊していることではないかと思います。それが研究自体にも大きな影響を与えています。キャリアパスとは、それを職業として自分や家族が安定した生活を送る未来が描けるかどうかということですが、それが非常に厳しくなっています。…私の理想に近い形は、ポストは終身個人に与えられて、条件が合えばそれをどこにでも持って行けるというフランスのシステムに似たものです。終身雇用と人材 の固着は、実は切り離すことができます。終身雇用への転換に伴う財源に関する批判に対して、現状でも出処が違うだけで支払われているという指摘もありま す。また、「安定性と競争性を担保する日本版テニュアトラック制度」では、最低限の給与を公的機関(国)が保証し、自ら獲得した研究費の間接経費からも加 算する方法が提案されています。これは現在の仕組みを変えて行く具体的な方法の一つであると思いますが、私自身は公的機関の研究職は国家公務員資格と同等 なものとして扱う仕組みがあればいいと思っています。(研究は、結局、最後は人である 日本の科学を考える ガチ議論 国立大学准教授 2015.11.05)

参考

  1. 卓越研究員募集taketsuflyer
  2. 東大総長参戦!(日本の科学を考える ガチ議論2015.11.27 ):”当初の構想の本質はどのようなものだったのか、どのような議論を経て現状案になったのか、このような制度設計時に研究者コミュニティが後押しできることは何か、などなど。研究者発案の制度がどのように実施まで運ばれるのか、克服するべき課題はどこか、などが明らかとなるインタビューでした。現在、詳しい内容を当日会場でVTRコメントとしてご覧いただけるよう準備をしています。東大総長参戦でますます盛り上がるガチ議論!ぜひ会場にお越しください!”
  3. BMB2015 第38回分子生物学会年会 第88回日本生化学会大会 合同大会 2015年12月1日~4日 神戸ポートアイランドガチ議論 日時: 12月3日(木)18:45~20:45 会場:第14会場(神戸国際会議場 1階 メインホール)
  4. ”国立大の教員は97000人くらいです。PDの数が全部で16000人だそうです。これに、35歳以上で当然テニュアを取れているレベルの業績がある人、という具体的な条件を付ければ、どんなに多く見積もっても10000人を切ると思います。”(ガチ議論コメント
  5. 産学連携や若手研究者育成、国が数値目標 科学技術政策 (日本経済新聞 2015/11/26):”…第5期科学技術基本計画の答申案を26日開いた総合科学技術・イノベーション会議の専門調査会で示した。…イノベーションを進める原動力となる若手研究者は任期付き研究者が多く、長期的な研究に取り込みにくくなっているため、40歳未満の大学教授や准教授などの教員の数を1割増加させ、将来的に全体の大学教員に占める割合が3割以上となることを目指すとした。40歳未満の大学教員数は2013年度で約4万4000人で今後5年で4400人増やす。優秀な若手研究者を増やすため、テニュアトラック制や卓越研究員制度の活用をあげている。”
  6. 内閣府 第14回基本計画専門調査会(平成27年11月26日)配布資料
  7. 内閣府 第13回総合科学技術・イノベーション会議(平成27年11月24日)議事次第
  8. 文部科学省 中央区養育審議会 第125回大学分科会(平成27年11月10日) 配付資料 資料3-3
  9. 経済産業省 第4回 理工系人材育成に関する産学官円卓会議(平成27年10月22日)
  10. 「日本再興戦略」改訂2015を閣議決定(政府広報オンライン):”平成27年6月30日、デフレ脱却に向けた動きを確実なものにし、将来に向けた発展の礎を再構築する「『日本再興戦略』改訂2015」を閣議決定しました。”nihonsaikosenryaku日本再興戦略改訂2015の概要 PDF
  11. 平成27年03月27日 卓越研究員制度の在り方について (文部科学省 卓越研究員制度検討委員会 報告等)
  12. 第3回卓越研究員制度検討委員会(平成27年度3月9日)議事要旨 配布資料
  13. 第2回卓越研究員制度検討委員会(平成27年2月27日)議事要旨 配布資料
  14. 第1回卓越研究員制度検討委員会(平成27年2月9日) 議事要旨 配布資料
  15. イノベーションに適した国とするための人材戦略 卓越大学院・卓越研究員制度(2014/11/19 東京大学 大学院理学系研究科長 教授 五神 真)(33ページPDF)
  16. 経済産業省 理工系人材育成に関する産学官円卓会議
  17. 内閣府 科学技術イノベーション総合戦略
  18. 内閣府 基本計画専門調査会 (議事録 配布資料)
  19. 文部科学省 中央教育審議会 大学分科会

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】

黒田有彩(司会、NHK Eテレ『高校講座 物理基礎』MC)
髙橋麻美(日本科学未来館 科学コミュニケーター 生理学・医学賞チームリーダー)
谷明洋 (日本科学未来館 科学コミュニケーター 物理学賞チームリーダー)
松浦麻子(日本科学未来館 科学コミュニケーター 化学賞チームリーダー)
詫摩雅子(日本科学未来館)
髙嶋秀行(Newton本誌・ムック 編集部長)
※本番組は2015年10月25日にニコニコ生放送で放送されました

厚労省 ロボ­ットスーツHALを医療機器に認定

厚生労働省は2015年11月25日に体に装着して歩行能力を高めるロボ­ットスーツ「HAL」を医療機器として承認しました。ALS(amyotrophic lateral sclerosis;筋萎縮性側索硬化症)など8つの難病を対象としています。装着型のロボットが保険が適用される医療機器として承認されたのは日本で初めてだそうです。

HAL医療用下肢タイプを承認しました
11 月10日開催の薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会での審議を経て、本日11月25日付けで下記のHAL医療用下肢タイプを承認しましたのでお知らせします。
[ 販売名 ] HAL 医療用下肢タイプ
[ 申請者 ] CYBERDYNE株式会社
[ 申請日 ] 平成27年3月25日
[ 使用目的 ] 本品は緩徐進行性の神経・筋疾患患者を対象として、本品を間欠的に装着し、生体電位信号に基づき下肢の動きを助けつつ歩行運動を繰り返すことで、歩行機能を改善することを目的として使用する。
対象となる緩徐進行性の神経・筋疾患は、以下の8疾患である。
【1】脊髄性筋萎縮症(SMA)
【2】球脊髄性筋萎縮症(SBMA)
【3】筋萎縮性側索硬化症(ALS)
【4】シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
【5】遠位型ミオパチー
【6】封入体筋炎(IBM)
【7】先天性ミオパチー
【8】筋ジストロフィー
(厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000105014.html

ロボットHALを医療機器で初承認 保険もききます(15/11/25) (YOUTUBE Published on Nov 25, 2015)

歩行訓練ロボットスーツHAL 製造販売承認することに (YOUTUBE Published on Nov 10, 2015)

ロボットスーツHALを試験的に利用したリハビリ訓練 (YOUTUBE Published on May 28, 2014)

ロボット・スーツHALが文科省で動き出す! (YOUTUBE Published on Oct 23, 2012)

TEDxTokyo – Dr. Yoshiyuki Sankai – 05/10/15 – English (YOUTUBE Uploaded on May 19, 2010)

HAL(Hybrid Assistive Limb) from Cyberdine (YOUTUBE Uploaded on Mar 2, 2007)

参考

  1. CYBERDYNE株式会社(サイバーダイン株式会社)
  2. 筑波大学サイバニクス・グループ 山海嘉之研究室

新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17

嘔吐、下痢などを引き起こすノロウイルスは、抗ウイルス剤が存在しないため、輸液などの対症療法に頼るしかありません。そのため、予防が非常に重要です。近年、特に日本や中国で新型のノロウイルスが流行していますが、この新型ウイルスは川崎市の健康安全研究所により発見、同定されたものだそうです。

川崎市健康安全研究所が昨年3月、新型のノロウイルスを世界で初めて見つけた。…新型ウイルスは、ウイルス・衛生動物担 当の職員5人が発見。昨夏に国際機関で登録され、今夏には英文の感染症専門誌にも掲載された。5人は功績をたたえられ、10月に市から表彰を受けた。新型ノロウイルス、川崎市職員が発見 世界初の快挙 朝日新聞 DIGITAL 2015年11月23日)

ノロウイルスの遺伝子型について

ノロウイルスには 5 つの遺伝子群 (GI-GV) が存在し、ヒトに感染するのは GI、II、IV であると言われています。さらに、GI は 9 種類 (GI.1-GI.9)、GII は 22 種類 (GII.1-GII.22) の遺伝子型に細かく分類されています。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルスについて

2014 年 3 月に健康安全研究所が新たな遺伝子型を含むノロウイルスを検知しました。このノロウイルスは、以前に検出された GII.17 とは異なる変異ウイルスで、2013 年までは川崎市では検出されたことはなく、世界的にも初めての確認となり国際的に GII.P17-GII.17 という遺伝子型に命名されました。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルスに対する警戒の呼びかけ

ノロウイルスは、遺伝子型ごとに殻の表面の形が異なることから、これまでの主要遺伝子型である GII.4 に感染したことがあり GII.4 に対する免疫を獲得している人でも GII.17 変異株に感染する可能性があるため注意が必要です。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルス 大流行のおそれ高まる ((日本放送協会 YOUTUEB 2015/10/23 に公開)(動画削除)

Emergence of a novel GII.17 norovirus – End of the GII.4 era? In the winter of 2014/15 a novel GII.P17-GII.17 norovirus strain (GII.17 Kawasaki 2014) emerged, as a major cause of gastroenteritis outbreaks in China and Japan. Since their emergence these novel GII.P17-GII.17 viruses have replaced the previously dominant GII.4 genotype Sydney 2012 variant in some areas in Asia but were only detected in a limited number of cases on other continents. This perspective provides an overview of the available information on GII.17 viruses in order to gain insight in the viral and host characteristics of this norovirus genotype. We further discuss the emergence of this novel GII.P17-GII.17 norovirus in context of current knowledge on the epidemiology of noroviruses. It remains to be seen if the currently dominant norovirus strain GII.4 Sydney 2012 will be replaced in other parts of the world. Nevertheless, the public health community and surveillance systems need to be prepared in case of a potential increase of norovirus activity in the next seasons caused by this novel GII.P17-GII.17 norovirus. (de Graaf  et al., Euro Surveill. 2015 Jul 2;20(26). pii: 21178.)

参考

  1. 新規ノロウイルス GII.17 変異株を健康安全研究所が発見~今後の動向に注意!~ (川崎市 健康安全研究所 2015年9月25日)
  2. 新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17の流行 (国立感染症研究所 IASR Vol. 36 p. 175-178: 2015年9月号):”川崎市内で発生した食中毒事例を含む感染性胃腸炎患者から、新たな遺伝子型のノロウイルス(NoV)GII.P17-GII.17が検出された。流行状況調査と遺伝子解析を行った結果、2014/15冬季シーズンの1月以降に広域流行を引き起こしていたことが明らかになった。この新規NoV GII.P17-GII.17は、中国、台湾などでも流行が確認されており、2015/16シーズンに大流行する可能性がある。そのため今季の流行の立ち上がりに厳重な監視が必要である。”
  3. Genetic analyses of GII.17 norovirus strains in diarrheal disease outbreaks from December 2014 to March 2015 in Japan reveal a novel polymerase sequence and amino acid substitutions in the capsid region. (Matsushima et al., Eurosurveillance, Volume 20, Issue 26, 02 July 2015)

遺伝子組換えサーモンがついに食卓へ

アクアバウンティー・テクノロジーズ社が開発した、遺伝子組換え技術により通常よりも速く成長するサケ『アクアドバンテージ・サーモン』が生産・販売され食用に供されることを、 アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)が2015年11月19日に承認しました。アクアバウンティーが最初にFDAの許可を申請したのは1996年で、実に20年近くもかかってようやくここまでたどり着いたということになります。

The FDA has thoroughly analyzed and evaluated the data and information submitted by AquaBounty Technologies regarding AquAdvantage Salmon and determined that they have met the regulatory requirements for approval, including that food from the fish is safe to eat,”‘Frankenfish:’ GMO salmon declared safe to eat, environmentalists rail against FDA. rt.com 20 Nov, 2015

この遺伝子組換えサーモンを食べても安全というFDAのお墨付きが出たからといって、長年の論争に決着がついたとはいえないようです。「遺伝子組換え」の表示は不要というFDAの判断に不安を募らせる消費者も多く、ホールフーズマーケットやトレーダージョーズなどアメリカの大手のスーパーマーケットは、アクアドバンテージ・サーモンを取り扱わないことを以前、宣言しています。

Genetically-modified salmon approved by FDA (https://www.youtube.com/watch?v=PQSArjT8j9o)

市場に出荷できるサイズにまで成長のに必要な飼育期間が半分近くにまで短縮され、コストが大きく削減できるメリットが謳われています。

AquAdvantageSalmonGrowthCurve

「アクアドバンテージサーモン」と名づけられたこのアトランティックサーモンは、1年を通して成長ホルモンが分泌するように、遺伝子組換え技術を用いて「改良」されています。ゲンゲという別の種類の魚の不凍タンパク質(Anti-freezing protein;AFP)遺伝子の発現制御領域に、チヌークサーモン(chinook salmon)の成長ホルモンの遺伝子をつないだDNAを、アトランティックサーモン(Atlantic Salmon 学名:Salmo salar)に遺伝子導入したというものです。

AquAdvantageSalmonTransgenicDNAconstructhttps://www.ncbiotech.org/sites/default/files/pages/Keynote%202%20-%20AquaBounty%20Keynote%20Presentation.pdf

参考

  1. U.S. Food and Drug Administration (FDA) > Animal & Veterinary > Development & Approval Process > Genetic Engineering > Genetically Engineered Animals > AquAdvantage Salmon (アクアドバーンテージ・サーモンに関するFDAの文書)
  2. AquaBounty Technologies, Inc.
  3. FDA Approves AquAdvantage® Salmon (アクアバウンティ社のプレスリリースPDFファイル):”MAYNARD, Massachusetts, 19 November 2015 – AquaBounty Technologies, Inc. (AIM: ABTU; OTC: AQBT), a biotechnology company focused on enhancing productivity in aquaculture, and a majority-owned subsidiary of Intrexon Corporation (NYSE: XON), announces today that the U.S. Food and Drug Administration (FDA) has approved the Company’s New Animal Drug Application for the production, sale, and consumption of its AquAdvantage® Salmon, an Atlantic salmon that has been genetically enhanced to reach market size in less time than conventional farmed Atlantic salmon.”
  4. The FDA just approved genetically modified salmon for the first time. But how does it taste? (VOX Science & Health. Updated by Julia Belluz on November 19, 2015):”AquaBounty first asked the FDA to approve the fish for human consumption in 1996. But the FDA said because this was the first genetically modified animal that would be eaten by humans, the agency wanted to take it slow and weigh the pros and cons.”
  5. Food Fight: Policy and Politics.By R.L. Stotish, AquaBounty Technologies (PDF 28 pages)
  6. Genetically Engineered Salmon (April 30, 2014, Congressional Research Service)(PDF 30 pages)
  7. GE Salmon Faces Exclusion from Retailers (WholeFoods Magazine, December 2013):”Chains within both the natural and mainstream channels, including Whole Foods Market, Trader Joe’s and Target, have either signed on to a pledge or made clear in policy statements that they will not purchase the GE Atlantic salmon if approved.”
  8. The AquAdvantage Salmon Controversy – A Tale of Aquaculture, Genetically Engineered Fish and Regulatory Uncertainty. By Alain Goubau, May 11, 2011. (ハーバード大学ウェブサイト上 PDF)
  9. Genetically Modified Salmon – Coming Soon? (uploaded 2011 Apr)

  10. Environmental Assessment for AquAdvantage® August 25, 2010. Submitted to the Center for Veterinary Medicine, US Food and Drug Administration (PDF 85 pages)
  11. Biotechnology in Aquaculture: Transgenics and Polyploidy. Rosalee S. Rasmussen andMichael T. Morrissey. Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety Volume 6, Issue 1, pages 2–16, January 2007
  12. Characterization and multi-generational stability of the growth hormone transgene (EO-1α) responsible for enhanced growth rates in Atlantic Salmon. Edward S. Yaskowiak, Margaret A. Shears, Alka Agarwal-Mawal, Garth L. Fletcher  Transgenic Research August 2006, Volume 15, Issue 4, pp 465-480: “We have generated a stable line of growth hormone (GH) transgenic Atlantic salmon (Salmo salar) using an “all fish” gene construct (opAFP-GHc2) containing a growth hormone cDNA from chinook salmon whose expression is regulated by the 5′ promoter and 3′ termination regions derived from an ocean pout antifreeze protein (AFP) gene. In this study we show that a reorganized form of the opAFP-GHc2 construct (termed EO-1α) integrated as a single functional copy into a 35 bp repeat region of the genomic DNA. PCR based mapping revealed that the linear sequence of the EO-1α integrant was organized as follows: base pairs 1580–2193 of the ocean pout promoter region followed by the intact chinook salmon GH cDNA, the complete ocean pout antifreeze 3′ region, and the first 1678 bp of the ocean pout antifreeze 5′ region.”
  13. 試験研究は今 NO.045 Q&A? 最近よく耳にする3倍体魚とはどのようなものですか?:”この3倍体の特徴としては、雄は通常の2倍体と同様に成熟しますが、雌は成熟しないことが上げられます。…人工受精にはニセ雄の精子を使います。ニセ雄とは、本来雌であるものに雄のホルモンを混ぜた餌を与えることにより精子をつくれるようにしたものですが、この精子を使うと、できる子供は全部雌になります。次に、これで受精させて、およそ10分後にその受精卵に強い圧力や、温度の刺激(サケ・マスの場合は暖かい水につける)を与えると、3倍体の雌ができあがります。この受精卵に与える圧力や温度変化が強すぎると卵が死亡してしまい、逆に弱すぎると通常の2倍体になってしまいます。”
  14. Risk assessment and mitigation of AquAdvantage salmon (BiologyFortified. Posted by Anastasia Bodnar, Oct 16, 2010):”Pressure treatment will be used to produce triploid AquAdvantage salmon. This treatment was successful at creating 98.9% or more triploids, with 1.1% or fewer eggs remaining diploid (11). Testing of each batch of eggs will be conducted, and any batch that contains 5% or more diploids will be destroyed (7,11). Any diploid individuals are capable of reproduction, so the possibility of their escape must be controlled with other measures.”

アインシュタインの「一般相対性理論」100周年

アインシュタインは1905年に特殊相対性理論を発表しましたが、1915年に一般相対性理論に辿りつきました。この年の11月にアインシュタインはベルリンで4回の講演を行い、自分の理論を発表しています。

アインシュタインが1915年にドイツ・ベルリンのプロイセン科学アカデミーで一般性相対理論を発表したときの論文(プリンストン大学のアーカイブへのリンク)。

  1. On the General Theory of Relativity. November 4, 1915 
  2. On the General Theory of Relativity (Addendum) November 11, 1915 
  3. Explanation of the Perihelion Motion of Mercury from the General Theory of Relativity. November 18, 1915 
  4. The Field Equations of Gravitation. November 25, 1915

一般相対性理論100周年を記念したセミナーも世界各地で開催されています。

カリフォルニア工科大学Kip Thorne教授によるレクチャー「Einstein’s General Relativity, from 1905 to 2005: Warped Spacetime, Black Holes, Gravitational Waves, and the Accelerating Universe」(November 16, 2005)。
Einstein’s General Relativity, from 1905 to 2005 – Kip Thorne – 11/16/2005

ロベルト・ダイクラーフ(Robbert Dijkgraaf)教授によるレクチャー。
100 Years of General Relativity

参考

  1. The Collected Papers of Albert EinsteinThe Berlin Years 1914-1917 
  2. On the Generalized Theory of Gravitation by Albert Einstein. Scientific American Vo.182, No.4, pp13-17. April 1950.
  3. Relativity priority dispute (Wikipedia):”Undisputed and well known facts: General relativity:Einstein gave four lectures on his theory on Nov 4, Nov 11, Nov 18 and Nov 25 in Berlin”
  4. Scientific American Volume 313, Issue 3. 100 Years of General Relativity
  5. 日経サイエンス 2015年12月号 特集:アインシュタイン 一般相対論100年

東大に入れるか 東ロボくんが模擬試験を受験

国立情報学研究所などが取り組んでいる人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の「東ロボくん」が6月に受験していたベネッセコーポレーションのセンター式模試「進研模試総合学力マーク模試・6月」の結果が2015年11月14日に発表され、5教科8科目の合計点は全国平均416点を大きく上回り、511点(偏差値57.8)でした。

今回の結果に関してはさまざまな受け止め方があります。

もうダメだ。人工知能は俺を超えてしまった。

まだ俺のほうが勝ってるな

これじゃ、いずれ東大卒のコンピューターに俺たちの就職先がどんどん奪われるな

たんなるデータベースだから入学はできても、卒論がコピペになって、卒業できないと思うよ。

もうロボットでいいじゃん日本人いらないじゃんw

すげぇな。AIはどんどん進化して人間を超えるだろうな
人間がAIの奴隷になるのももうすぐだな

考えてみれば人が道具を作ったのも、手では持てない物を持ち上げるためだし、手で投げるより 遠くへ飛ばすためだ。道具のおかげで、足で走るより速く、より遠くへ移動もできる。 自分の頭で考えるよりもっと速く、もっと深く考えてくれる道具をこさえるのも自然の成り行きだな。

人工知能がバカのふりし出すのが一番怖いな

> コンピューターが解読できる形に人が書き直した問題文を解析
そこを飛ばしてどうする

俺が解ける形に書き直してくれれば俺も東大入れるよ

問題文をちゃんと解釈できるかどうかというのが人工知能のキモじゃないの?
そこで人間が手伝ったら意味ないやん

問題文をカメラで画像認識して問題文の意味認識・意味解釈からやらせるなら凄いな

結局辞書内蔵レベル?優秀なのかよくわからない
大学受験を目標にしないほうがいいと思う

単に、人間の受験問題に対する理解が深まる、だけだと思うね。

大学入試のクセをつかむ研究になってしまうので応用は効かない。

純粋な学術興味に基づくものでもなければ、特定技術のブレイクスルーを狙ったものでもないのではないかな。 単に、わかりやすくアピールしやすい問題をしたというだけ。 少なくとも、これによって何が出来、どういう技術開発や進歩が可能なのかを説明すべきだろう。

東大合格程度の人工知能で社会が変わるとかアホらしいわ。 地方国立大卒でも大学で真面目に学んできた人間の知性は東大合格の比ではない。

記憶力さえあれば思考力ゼロでも国立大に受かる
こんなんじゃ頭がいいと言えないでしょう

これさ、人工知能で高得点できる科目は受験科目から外すべきだよな。 くだらないから。

答えが分かってる問題をといてるウチは、とてもとても・・知能とは言えない。(http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1447480239/, http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1447510455/)

東ロボくんは、センター式模試だけでなく、数学と世界史の2科目で「東大入試実戦模試」にも挑戦しており、受験生平均を上回る偏差値54を獲得したそうです。この結果を受けて、東ロボプロジェトのリーダーである新井紀子・国立情報学研究所教授は、ロボットに追い抜かれるような受験勉強をしてしまっている受験生が多いことに警鐘を鳴らしています(コメントの一部を抜粋して紹介)。

… 東ロボくんに限らず、現在「人工知能」 と呼ばれているものは言葉を解さない。出題意図などみじんも理解できない。ただ、キーワードを頼りに検索をし、関係がありそうな文を選んできて、制限字数 内にはめ込むだけだ。…私は、事前に東大の世界史過去問題集に目を通した。そこには目を見張るような良問が並んでいた。東大生ならば、ぜひとも歴史から学ぶことで、混迷した現代社会の課題を読み解き、解決していけるような洞察力と論理性を身に着けて欲しいという、まさに受験生へのラブレターのような問題であった。…世の人々は、実際の入試問題を見ず、また、採点の実態を知らずに、「一発勝負ではない丁寧な入試を」「暗記や計算ではない創意工夫を求める問題 を」と求める。が、東大の記述式試験は、一発勝負や丸暗記とはまさに対極にある、世界でも類をみない丁寧な入試なのである。世界史だけではない。数学や他の科目も同様である。そのような「丁寧な入試」にもかかわらず、なぜ受験生は機械に後れをとったのか。東ロボくんの答案を採点した予備校の先生は、「世界史を理解しようともせず、ただ教科書を丸暗記して部分点を狙ってくる受験生の答案に似ている」と喝破した。つまり、東ロボくんのような答案を書いて入学している受験生が相当数存在するのである。東大を始めとする難関大学にとって不幸なのは、どれほど丁寧な入試をしても、それに応えることができる受験生が減り続けているということだろう。人が機械より優れているのは、意味を理解して問題解決を図る能力があるからだ。意味を理解することを放棄し、単なる暗記や記号処理に走れば、機械に追い越されるのは時間の問題でしかない。…「東ロボくん」研究の教授コメント 「人間、頑張れ!」 朝日新聞DIGITAL 2015年11月14日)

参考

  1. 「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトウェブサイト
  2. 「ロボットは東大に入れるか」東ロボくん、国立大33大学でA判定 早慶にもリーチ (日刊工業新聞ニュースイッチ 昆梓紗 2015年11月15日):”国立情報学研究所などが取り組む人工知能(AI:通称東ロボくん)プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」で、AIがセンター試験模試を受け、国立大学 33大学39学部64学科、私立大学441大学1055学部2406学科で合格率80%以上のA判定を獲得した。11万6000人中2万5343位で、早稲田大学や慶応義塾大学のクラスでも合格率60%以上を獲得したもよう。”
  3. ロボットの「東大合格」そう遠くない 偏差値57.8、模試成績に驚きの声 (JCASTニュース 2015/11/16):”東大の合格偏差値(ベネッセの基準でおよそ70)には至っていないものの、30以上の国立大学、400以上の私立大学で合格率80%以上のA判定を獲得したというのだ。”

 

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ディープラーニングが実行可能なGoogleの機械学習システムTensorFlow(テンソルフロー)が誰でも利用可能に

GoogleがTensorFlowというディープラーニング(深層学習)」などを実行できる機械学習システムをオープンソースソフトウエア(OSS)として公開しました。

TensorFlow: Open source machine learning

参考

  1. tensorflow.org
  2. TensorFlow: smarter machine learning, for everyone (Google OFficial Blog, November 9, 2015):”We use TensorFlow for everything from speech recognition in the Google app, to Smart Reply in Inbox, to search in Google Photos.”
  3. GoogleがGoogle Photosの画像検索、スマート返信機能などに用いている機械学習技術をオープンソース化(TECH CRUNCH日本語版 2015年11月10日 by Sarah Perez):”このディープラーニングのフレームワークは、CPU、Nvidia GPU、Android、iOS、OSXで使うことができる実用的なC++バックエンドを持ち、またPythonのフロントエンドのインターフェイスであるNumpy、iPython Notebooksや他のPythonをベースとしたツールにも対応する。”
  4. Google、人工知能ライブラリ TensorFlow をオープンソース化。音声検索や写真認識、翻訳の基盤技術ディープラーニングを商利用可で解放(ENGADGET日本語版 BY Ittousai 2015年11月10日):”商用も可能なApache 2.0ライセンスで公開されるため、人工知能の研究者や学生からアプリ開発者、家電や自動車などのメーカーまで、実際のGoogle製品で使われるのと同等品質のソフトウェア一式を道具として導入できるようになります。”
  5. 米Google、機械学習システム「TensorFlow」をOSSとして公開(IT PRO 日経コンピュータ 2015/11/10 中田 敦):”TensorFlowはディープラーニングだけでなく、勾配アルゴリズムを使用する全ての機械学習アルゴリズムが利用可能。ユーザーはプログラミング言語の「Python」を使用して、機械学習アルゴリズムをTensorFlowに実装する。”
  6. Google、最新の機械学習システム「TensorFlow」をオープンソース化(マイナビニュース Yoichi Yamashita 2015/11/10):”Google CEOのSundar Pichai氏は「研究者からエンジニア、そしてホビイストまで、機械学習コミュニティに属する全ての人々が、論文ではなく、実際のコードを通じて活発なアイディアの交換を行うようになると期待している」と述べている。TensorFlowが機械学習研究の標準的なツールセットとして利用されるようになれば、検索の今後を支える機械学習において、Googleは研究者やコミュニティと密に関わっていける。”
  7. Googleが製品開発で活用する機械学習システム「TensorFlow」を商用利用OKでオープンソース化(GIGAZINE 2015年11月10日):”TensorFlowは高速でありながらも、モバイル端末から数千台の連結されたコンピューターまで実行できる柔軟性を持つように設計されており、「コンピュータープログラムをデータフロー形式で表現できる場合にはTensorFlowを実行できる」とのことで、研究者や企業、趣味として機械学習に取り組むユーザーなど、あらゆる機械学習コミュニティのメンバーが利用できるとGoogleは述べています。”
  8. グーグルが最新機械学習ソフトを無償公開するわけとは (THE WALL STREET JOURNAL日本語版 By ALISTAIR BARR 2015 年 11 月 10 日):”同教授らによると、ディープラーニングシステムは特定のタスクを実行できる構造をつくり、大量のデータで訓練を行わなければならない。グーグルの研究者たちは数年前、動画投稿サイトのユーチューブから約1000万枚の画像を、1万6000のコンピュータープロセッサーを結ぶネットワークに取り込むこ とで猫を認識する方法をあるシステムに教えた。このシステムは数百万のパラメーター(クリスティアニーニ教授はこれを「ノブ(取っ手)」と呼ぶ)を取り込むことが可能だが調整が必要だ。それを担当する優秀なエンジニアがいなければ、グーグルが公開したディープラーニングのアルゴリズムはあまり役に立たない。”
  9. Googleの公開した人工知能ライブラリTensorFlowを触ってみた (株式会社ネクスト Engineer Blog 2015-11-10)
  10. TensorFlow 畳み込みニューラルネットワークで手書き認識率99.2%の分類器を構築(http://qiita.com/haminiku/)

 

参考(商品・サービス紹介)

  1. 転職スキル習得に役立つお勧めのプログラミングスクール

早稲田大学が小保方氏のD論に関する記者会見

早稲田大学は小保方晴子氏の博士号取り消しに際して1年間の”執行猶予”を与えていましたが、猶予期間内に博士号取得に十分な内容の博士論文が提出されなかったとして、小保方晴子氏の博士号取り消しを確定し、その説明のための記者会見 を2015年11月2日に開きました。早稲田大学のウェブサイトでも、その概要を公表しています(「本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて」)。

大学は、本学学位規則23条に則って、2014年10月6日付で、小保方晴子氏に授与された学位を取り消すが、学位を授与した先進理工学研究科にお ける指導・審査過程には重大な不備・欠陥があったと認められるため、一定の猶予期間を設けて再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、博士論文を訂正 させ、これが適切に履行された場合は学位を維持できることとした。

この決定に従い、先進理工学研究科では2014年11月に指導教員を選出し、論文提出・審査のスケジュールなどと共に本人への通知を行い、再度の論文指導体制を整えていたが、小保方氏の事情により、6月になるまで指導を始めることができなかった。

指導教員らは、小保方氏の来校が困難であることを考慮して、直接本人のもとを複数回訪れることに加え、メールや電話によって、草稿の内容確認や訂正 指示等の指導を行った。また、倫理教育についてもe-ラーニングでの受講環境を提供し、本人は9月までに所定の講座を修了した。

し かしながら、指導教員らの指示に従って何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、審査に付すべ き完成度に達していないことから、先進理工学研究科では10月29日の運営委員会で協議を行い、論文審査に付すことができないことを確認した。また、小保 方氏より猶予期間の延長を求められていたが、これには応じないことをあわせて決定した。

これを受けて、大学は、10月30日の研究科長会の議を経て、「博士学位論文として相応しいもの」が提出されないまま、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。
本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて

記者会見の模様。

【小保方氏の博士論文について】早稲田大学 記者会見 2015年11月2日

登壇者
鎌田薫 (早稲田大学 総長)
橋本周司(早稲田大学 副総長)
佐藤正志(早稲田大学 理事)
古谷修一(早稲田大学 教務部長)

1:50- (鎌田薫早稲田大学 総長)
15:30- (質疑応答)

21:20-26:40 (WILL編集 しが)2点。水準に達していないというが具体的に何が問題だったのか?もう1点、7月の時点では学位審査会での訂正要求にしたがって訂正すればそれでOKという発表だった。ところが10月だと追加事項が増えて行って、今回の発表では水準に達していなかったという。どんどんどんどん要求水準が高くなって学位取り消しの流れをつくろうとしているようにしか見えないが?
25:03- (回答)(科学的根拠の記述が不十分な具体的例)B6系統のGFP陽性細胞を用いてキメラマウスを作出したという記載があるが、用いた細胞の由来や実験結果の科学的根拠を説明しうる記述が不足している。ハードルをあげたというよりは、論文として当然記載されているはずだということの要請であります。
48:00-49:04 (毎日新聞 須田)もう一点、博士論文のもとになっているティッシューエンジニアリングパートAや小保方さんが筆頭著者になっているネイチャープロトコールなどについても疑義が指摘されている。小保方さんが早稲田大学に在学中に発表した論文なので早稲田大学が調査する義務があると思うが調査はされていないのか、その理由は。
2:19:00-2:28:04 日本経済新聞 古田。(博士論文の根拠になったTissue Engineering誌の論文の疑義に関して調査をしない)早稲田大学というのはいったい科学の研究機関なのでしょうか?
2:32:15-2:38:15 Tissue Engineeringの論文で科学の部分は担保されたと考えているのか?2点目、ハーバード大学に調査を依頼するなどの連絡をとったのか?

学位論文の修正が不十分であったと早稲田大学が判断した理由として、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文(Obokata et al., 2011)の内容との不一致が挙げられています。そうであれば、Tissue Engineering Part A論文における研究不正の有無を早稲田大学が調査しないのも不可解な話で、記者会見でも記者らがその点を追及しています(上の動画48:00-、2:19:00-、および2:32:15-)。

小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文 献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペースト や写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。

その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。
小保方氏学位論文取消しについて「科学的根拠、論理性に問題」 – 早稲田大 マイナビニュース 周藤瞳美 2015/11/03

早稲田大学の今回の決定に対して、小保方晴子氏は不満の意を表明しています。

2015年11月2日

小保方晴子

私は、学位論文について、実質的な審査対象論文と異なった初期構想時の論文を誤って提出したことに対し、論文訂正と再度の論文指導を受 ける機会を与えて頂きました。このため、大学設置の調査委員会によって指摘された問題点をすべて修正して論文を再提出したところ、このたび、前回の授与時 判断と異なった結論を出されました。

昨年、総長からは、指導過程および学位授与の審査過程に重大な不備・欠陥があったとの理由から、猶予期間を設けて論文訂正と再度の論文 指導を受ける機会を与えるとし、これが適切に履行された場合には取り消さず学位を維持する、とのご決定を戴きました。私はこれに従い履行したにも関わらず の今回の決定には失望しています。

このような経緯の下での今回の判断は、総長のご決定の趣旨及びその背景にある大学調査委員会報告書のご意見に大きく外れるものであり、学位規則の取消要件にも合致しないものであると思います。

前回の学位授与は、私の在学中に研究活動を指導し研究の進捗状況等の報告をさせて頂いていた教官の先生方らによって、正式な審査過程を 経たうえで授与されたものです。しかし、今回の同じ研究科における再度の審査過程では、今回の修正論文は博士に値しないとされることは、前回の授与時判断 と大きくかい離する結論であり、指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問があります。

今回は、修正論文提出前から、担当教官によって、「今回は合格する可能性はとても低い」と伝えられ、不合格の理由においても、審査教官 から「博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか」とのコメントがあり、学術的な理由とはかけ離れ、社会風潮を重視 した結論を出されたことは明らかです。また、今回の修正作業は、入院中、加療中での修正作業となり、思考力・集中力などが低下しており博士論文に能力を発 揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出しておりましたが、ほぼ6年前の米国に保存されている研究資料を提出することなどを求められ、しかも厳し い時間制限等が課されるなど、心身への状況配慮などは一切なされず、むしろそれが不合格の理由にも採用されました。

修正論文提出後、「審査教官とのやり取りは始まったばかり」との説明を受けましたが、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに 対する私の意見も聞く耳を全く持って頂けない状況でした。これでは、当初から不合格を前提とした手続きであり、とても不公正なものであったと思います。こ の点については、大学にも改善をお願いしましたが、残念ながら聞き入れて頂けませんでした。

博士論文の骨子となる内容はSTAP研究の足掛かりとなった研究成果であり、理研で行われた検証実験においても一定の再現性が認められているものです。

博士論文執筆当時、この研究が広く役立つ研究に成長していく事を夢見て日々を過ごしていました。私の研究者の道は不本意にも門が閉じら れてしまいましたが、いつか議論が研究の場に戻る日を期待し、今回の再提出した博士論文や関連するデータは年度内をめどに随時公開して参る所存です。

以上
小保方さん「早稲田大学の決定はとても不公正」博士号「取り消し」にコメント(全文)弁護士ドットコム 2015年11月02日

 

参考

  1. 小保方氏の博士論文に関する早稲田大学記者会見 島田さんによる文字おこし TOGETTER
  2. <STAP細胞問題>小保方氏の博士論文取り消し でも早稲田大学の責任は? (THE PAGE 粥川準二 2015.11.03):”… 以上を理解する限り、研究機関としての早稲田大学は、研究や論文のどの部分に責任を持っているのかが曖昧なままです。”
  3. 早大:小保方氏の博士号取り消しへ 再提出論文で判断 (毎日新聞 2015年10月30日):”小保方氏は博士論文に盗用や不適切な記述があると認定され、大学の指示で再提出したが、学内の審査委員会が検討した結果、博士号取り消しが妥当と判断したとみられる。”
  4. 早大 小保方さんの博士号取り消しへ 猶予期間の延長認めず (スポニチアネックス2015年10月31日):”早稲田大は30日までに、STAP細胞を発見したと主張した理化学研究所の元研究者、小保方晴子氏の博士号を取り消す方針を固めた。…関係者によると、小保方氏側は猶予期間の延長を求めたが、認められなかったという。”
  5. 「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する早稲田大学大学院先進理工学研究科 教員有志の所見 2014年7月24日:”1. Tissue Engineering 誌論文におけるデータの改竄疑惑への言及が存在しない点 科学研究論文において,データの信頼性を損なう改竄・捏造が致命傷であることは,改めて言うまで もありません。しかし,博士論文のもととなっているTissue Engineering 誌の論文には,明白と言ってよい画像の改竄(報告書における「実験結果欺罔行為」)が認められています。具体的には,Tissue Engineering 誌論文の図2、図3、図4 に電気泳動写真が掲載されていますが,まったく異なる遺伝子群の発現パターンに関して,同じゲルの写真を上下反転したり,一部切り抜いて流用したりすると いった改竄・捏造が既にネット上でも指摘されています。このうち,図3 は,博士論文においても図16 として採録されています。Tissue Engineering 誌の図3 は,ネット上での指摘を受け,責任著者のVacanti 教授によって,改竄が指摘された4 つの遺伝子群のデータを削除する形で修正(correction)されています。その理由は,「類似した見かけのデータを,複数の著者が編集したために起 きた過失」とされています。しかしながら,同様の図の改竄は,多くの場合Correction で済むものではなく,様々な科学論文誌においてRetraction(論文撤回)の対象となってきました。実際の写真を検討すると,「過失」というレベル ではないことは明らかで,学位取り消しの条件である「不正の方法」に相当するのではないかとの疑義があります。にもかかわらず,調査報告書では,「そもそ も博士学位論文の条件として査読付き欧文論文が前提となっており,このTissue Engineering 誌論文には修正がなされていること」を理由にデータの意図的な改竄(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)には該当しないと結論付けています。しかしなが ら,Tissue Engineering 誌において,Vacanti 教授は強い影響力を持つと推測されるFounding Editor であり,軽微な「過失による修正」にとどめている編集方針には疑義があります。したがって,この論点については改めて独自の調査がなされてしかるべきと考 えます。”
  6. 調査報告書 早稲田大学大学院先進理工研究科における博士位論文関す調査委員会 平成 26 年 7月 17 日 (PDF 82ページ)
  7. ”アイデア&データの盗用、実験しなくても論文になる、事実の捏造、研究妨害、広報やネットと連携させた情報操作は、早稲田バイオサイエンスの『文化』と思っています。気の毒なことに彼女はその中で育ったのだと思います。実験のための基礎研究教育も極めて不十分です。特にTWInsには、そういった研究者が多く、『科学者の行動規範を纏めたシンガポール宣言』が出された、もとのもとのもとをたどれば、早稲田大学理工、化学科と生命医科に行き着きます。…”(尾崎 美和子  2014年3月10日
  8. 小保方晴子氏、早稲田大学博士号取り消しに1年間の猶予期間 (2014年10月13日投稿記事)
  9. 早稲田大学 先進理工学研究科有志教員が「小保方氏博士論文の調査報告書に対する所見」を公開(2014年7月24日投稿記事)
  10. 早稲田大学が、小保方晴子氏の博士論文に関する調査書を公開(2014年7月19日投稿記事)
  11. ハーバード大学バカンティ教授らがデータ捏造疑惑論文(Obokata et al., 2011)を「訂正」(2014年3月19日投稿記事)