新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17

嘔吐、下痢などを引き起こすノロウイルスは、抗ウイルス剤が存在しないため、輸液などの対症療法に頼るしかありません。そのため、予防が非常に重要です。近年、特に日本や中国で新型のノロウイルスが流行していますが、この新型ウイルスは川崎市の健康安全研究所により発見、同定されたものだそうです。

川崎市健康安全研究所が昨年3月、新型のノロウイルスを世界で初めて見つけた。…新型ウイルスは、ウイルス・衛生動物担 当の職員5人が発見。昨夏に国際機関で登録され、今夏には英文の感染症専門誌にも掲載された。5人は功績をたたえられ、10月に市から表彰を受けた。新型ノロウイルス、川崎市職員が発見 世界初の快挙 朝日新聞 DIGITAL 2015年11月23日)

ノロウイルスの遺伝子型について

ノロウイルスには 5 つの遺伝子群 (GI-GV) が存在し、ヒトに感染するのは GI、II、IV であると言われています。さらに、GI は 9 種類 (GI.1-GI.9)、GII は 22 種類 (GII.1-GII.22) の遺伝子型に細かく分類されています。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルスについて

2014 年 3 月に健康安全研究所が新たな遺伝子型を含むノロウイルスを検知しました。このノロウイルスは、以前に検出された GII.17 とは異なる変異ウイルスで、2013 年までは川崎市では検出されたことはなく、世界的にも初めての確認となり国際的に GII.P17-GII.17 という遺伝子型に命名されました。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルスに対する警戒の呼びかけ

ノロウイルスは、遺伝子型ごとに殻の表面の形が異なることから、これまでの主要遺伝子型である GII.4 に感染したことがあり GII.4 に対する免疫を獲得している人でも GII.17 変異株に感染する可能性があるため注意が必要です。(川崎市健康安全研究所 2015年9月25日)

新型ノロウイルス 大流行のおそれ高まる ((日本放送協会 YOUTUEB 2015/10/23 に公開)(動画削除)

Emergence of a novel GII.17 norovirus – End of the GII.4 era? In the winter of 2014/15 a novel GII.P17-GII.17 norovirus strain (GII.17 Kawasaki 2014) emerged, as a major cause of gastroenteritis outbreaks in China and Japan. Since their emergence these novel GII.P17-GII.17 viruses have replaced the previously dominant GII.4 genotype Sydney 2012 variant in some areas in Asia but were only detected in a limited number of cases on other continents. This perspective provides an overview of the available information on GII.17 viruses in order to gain insight in the viral and host characteristics of this norovirus genotype. We further discuss the emergence of this novel GII.P17-GII.17 norovirus in context of current knowledge on the epidemiology of noroviruses. It remains to be seen if the currently dominant norovirus strain GII.4 Sydney 2012 will be replaced in other parts of the world. Nevertheless, the public health community and surveillance systems need to be prepared in case of a potential increase of norovirus activity in the next seasons caused by this novel GII.P17-GII.17 norovirus. (de Graaf  et al., Euro Surveill. 2015 Jul 2;20(26). pii: 21178.)

参考

  1. 新規ノロウイルス GII.17 変異株を健康安全研究所が発見~今後の動向に注意!~ (川崎市 健康安全研究所 2015年9月25日)
  2. 新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17の流行 (国立感染症研究所 IASR Vol. 36 p. 175-178: 2015年9月号):”川崎市内で発生した食中毒事例を含む感染性胃腸炎患者から、新たな遺伝子型のノロウイルス(NoV)GII.P17-GII.17が検出された。流行状況調査と遺伝子解析を行った結果、2014/15冬季シーズンの1月以降に広域流行を引き起こしていたことが明らかになった。この新規NoV GII.P17-GII.17は、中国、台湾などでも流行が確認されており、2015/16シーズンに大流行する可能性がある。そのため今季の流行の立ち上がりに厳重な監視が必要である。”
  3. Genetic analyses of GII.17 norovirus strains in diarrheal disease outbreaks from December 2014 to March 2015 in Japan reveal a novel polymerase sequence and amino acid substitutions in the capsid region. (Matsushima et al., Eurosurveillance, Volume 20, Issue 26, 02 July 2015)