Monthly Archives: July 2017

中学理科の教科書が教える仮説駆動型研究

研究目的が曖昧なまま実験を続ける大学院生、仮説をもたずに研究している研究者、実験結果を得ていないのにグラフを作成してしまうトンデモナイ人、考察が書けずに悩む人、次の研究テーマが思い浮かばない人など、研究の現場にはさまざまな悩みや問題を抱えた人たちがいます。いまいちど、中学校の理科の教科書に立ち戻って、研究の進め方に関する基本事項を再確認してみるというのはいかがでしょう?

以下、中学校1年生の理科の教科書(教育出版)の最初の数ページから、一部を抜粋して引用・紹介します。

理科学習の進め方

進め方1 疑問を持つ
はじめに、不思議に思ったことや疑問に思ったこと、知りたいことなどをはっきりさせておきましょう。

進め方2 課題を設定する
知りたいことや調べたいことがはっきりしたら、これから取り組む課題を設定しましょう。

進め方3 仮説をもち、計画をたてる
課題がきまったら、自分はその課題に対してどのような考えかたをもっているか、どのようにしたら自分の考えが正しいかどうかわかるのかを話し合いましょう。 自分の考えは仮説としてノートに書いておき、調べたあとで振り返ることができるようにしておきましょう。

進め方4 観察や実験を行い、結果を得る
自分で立てた計画に沿って、実際に観察や実験を行い、得られた結果は、あとで考察しやすいように表などにまとめましょう。また、結果をグラフに表すと、知りたいことがわかりやすくなる場合があります。

進め方5 得られた結果をもとに考察する
観察や実験が終わったら、得られた結果からどのようなことがわかるか、そして、自分の立てた仮説は正しいといえるか、考察し、自分の考えを発表しあいましょう。

進め方6 新たな疑問から、さらなる課題へ
みんなの考えがまとまり、設定した課題が解決したら、観察や実験を行ってわかったことが、次にどのように役に立つのか考えましょう。また、調べてみて、新たな疑問が生じたら、次の課題を設定して、さらに調べていきましょう。
中学校理科1 教育出版 文部科学省検定済教科書 中学校理科用 17教出 理科731 平成28年度 2~6ページ)

日本の中等教育の教科書は科学的な態度を育むように書かれています。高校の教科書にも、研究の進め方が解説されています。以下、啓林館の「生物基礎」から一部を抜粋して紹介。

●私たちの探求活動●

仮説を立てずに観察・実験する方法もありますが、ここでは仮説を設定する方法で考えます。

<課題の発見>

最初は自然現象をよく観察することです。疑問を生み出す方法を紹介します。まず比較という方法があります。.. 5W1Hを活用する方法もあります。「何が(Who)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」のパターンで疑問をつくってみます。 .. この課題でやろうと思ったら、同じテーマですでに研究されているかどうかを調べてみます。

<仮説の設定>

仮説を設定します。考えつく限りの仮説をあげていましょう。仮説が立ったら、その仮説は、どのような観察や実験を行えば証明できるのかを考えて実験・観察を計画します。実験・観察から得られる結果から、立てた仮説が論理的に導かれるように計画する必要があります。

<観察・実験>

観察・実験で大切なことは「再現性」です。 .. 因果関係を調べるときには「対照実験」の設定も必要です。対照実験とは、比較のために対象とする条件以外を同じにして行う実験のことです。 ..

<結果の記録と処理>

結果の記録は正確に行うように心がけます。 ..

<考察>

実験などの結果かが仮説の正しさを証明したかを考察します。結果が仮説と矛盾しないかを考えます。ひとつの仮説を検証すると、そこから新しい疑問や課題が生じてくるものです。また明らかになった知見が、これまでに知られていることとどう関係するかも考える必要があります。 ..

<報告書の作成と発表>

研究したことは報告にまとめて、発表するようにしましょう。 ..

(引用元:啓林館 平成30年度 生物基礎 改訂版 本川達雄 谷本英一 編 (10~11ページ) 61啓林館 生基315 文部科学省検定済教科書 高等学校理科用)

中等教育(中学、高校)でも、高等教育である大学でも、サイエンスの基本はまったく同じです。たとえば、放送大学「自然科学はじめの一歩」の授業内容の説明には、

実際の科学研究は分野によらず、問いを立て、仮説を設定して検証し、結論を導き出すという一連の作業を通して進行する。さらに文献調査、論文執筆といった作業が伴う。放送大学「自然科学はじめの一歩」第15回 自然科学の展望:さらなる一歩へ向けて

とあります。放送大学の放送の中では、子供の自由研究と科学者が行う研究との違いは何でしょうか?実はやっていることはどちらも変わらないんです。ただし、プロの研究者は、自然界に関する新しい知識を作り出してそれを人類で共有するために論文発表をする、それが唯一の違いですと解説されていました(主任講師: 岸根 順一郎 2017年7月22日放送 第15回 自然科学の展望:さらなる一歩へ向けて)。

このように日本の理科教育では、研究がいかにして進められるかに関してしっかりと教えるようになっています。ところが、肝心の、プロの研究者を育てる場であるはずの大学院においては、仮説に基づいて実験するという当たり前の態度がなぜかないがしろにされている研究室が散見します。中学や高校での理科教育で強調されてきたことは、研究の現場である大学院でも実践されて然るべきでしょう。

呼吸に必要な酵素の遺伝子を持っていない(?)不思議な細菌を発見

地表に現れたマントル由来の岩石に湧く泉で、どのような生物がいるか調べたところ、27種の微生物の遺伝子が見つかった。周辺は強アルカリ性で、約40億年前の地球に似た過酷な環境という。 そのうち、岩石に付着した細菌では、酸素を使った呼吸など生命維持に必要とされるエネルギーを得るための遺伝子を一つも持っていなかった。(どうやって生きてるのか…「常識外れ」の細菌、泉で発見 朝日新聞 DIGITAL7/21(金) 23:27

論文はこちら。

The ISME Journal , (21 July 2017) | doi:10.1038/ismej.2017.111

Unusual metabolic diversity of hyperalkaliphilic microbial communities associated with subterranean serpentinization at The Cedars

Shino Suzuki, Shun’ichi Ishii, Tatsuhiko Hoshino, Amanda Rietze, Aaron Tenney, Penny L Morrill, Fumio Inagaki, J Gijs Kuenen and Kenneth H Nealson

Water from The Cedars springs that discharge from serpentinized ultramafic rocks feature highly basic (pH=~12), highly reducing (Eh<−550 mV) conditions with low ionic concentrations. These conditions make the springs exceptionally challenging for life. Here, we report the metagenomic data and recovered draft genomes from two different springs, GPS1 and BS5. GPS1, which was fed solely by a deep groundwater source within the serpentinizing system, was dominated by several bacterial taxa from the phyla OD1 (‘Parcubacteria’) and Chloroflexi. Members of the GPS1 community had, for the most part, the smallest genomes reported for their respective taxa, and encoded only archaeal (A-type) ATP synthases or no ATP synthases at all. Furthermore, none of the members encoded respiration-related genes and some of the members also did not encode key biosynthesis-related genes. In contrast, BS5, fed by shallow water, appears to have a community driven by hydrogen metabolism and was dominated by a diverse group of Proteobacteria similar to those seen in many terrestrial serpentinization sites. Our findings indicated that the harsh ultrabasic geological setting supported unexpectedly diverse microbial metabolic strategies and that the deep-water-fed springs supported a community that was remarkable in its unusual metagenomic and genomic constitution.

(Copyright © 2017, Rights Managed by Nature Publishing Group)

 

 

OIST職員ダイバー潜水事故の報告書が公開

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究ユニット(准教授がPI)が推進する沖縄海洋観測システム構築のために、2016年11月に流向流速計の海底設置作業を行っていたOIST職員の潜水士が行方不明になった事故に関して、沖縄科学技術大学院大学潜水事故対策外部検討委員会の調査報告書が公開されました。

6月にOISTのピーター・グルース学長から職員宛てに送信された外部調査委員会報告書のサマリーおよびOISTの対応を以下に示します。外部調査委員会の報告書全文はこちらから閲覧いただけます。(OISTダイビング事故:今後の歩みについて 2017-07-11

また、この報告を受けて、OISTは2017年7月12日に記者会見を開き、潜水作業の安全管理に不備があったことを認めました。

RBC THE NEWS「潜水事故 OISTが謝罪」2017/07/13

 

行方不明になったOIST職員のダイバーの方は、OISTのウェブサイトを見ると、OIST内の研究ユニットの一つで博士研究員としての研究歴があり、研究者から研究支援職へ転身されていたようです。

しかしなぜこのような事故が起きてしまったのでしょうか?直接の原因は不明ですが、事故がいつ起きてもおかしくないような安全管理面の不備があったこと、そもそもOISTが安全管理を徹底させられるような組織構造を持っていなかったことを報告書が指摘しています。

5.6 結論 海底で潜水作業者Mに何が起こったかは不明であるが、以上の議論から本事故対策検討委員会として、今回の潜水事故は、自然の脅威が原因の不可抗力による回避不可能な事故ではなく、杜撰、自己過信、準備不足な潜水計画と、それを検証せず任せきりにしたプロジェクト進行を主たる要因とし、併せてそれらを助長する方向に働いた組織管理により生じた、回避が十分に可能な事故であったと結論付ける。(報告書38ページ)

 

当日の作業内容と事故が起きたときの状況

二人のダイバーが予定していた作業に関して

(2)作業目的 今回作業は、沖縄海洋観測システム設置場所付近にある伊江水道において、一定期間(約一か月)の流向流速を計測するために、ブイ一体型係留装置という浮力体の中に流向流速計を収めた機械を船上から投下する作業と、水深約60mに2名の潜水作業者がそれぞれ流向流速計と架台を運び、海底で架台の上に流向流速計を設置、固定する作業の二つを実施するものであった。(報告書9ページ)

事故が起きたときの状況が報告書に説明されています。

2016 年 11 月 14 日
‐ 予定通りに大学を出発。
– 移動中の車内にて計画の再確認、体調確認(口頭)実施
‐ 本部到着後、若干前倒しで、全て予定通りに作業進行。
‐ 水面ブイの状況から若干の流れを確認も、十分に作業出来る環境であり時間的にも潮が緩んでいく方向のため、作業可能と判断し、潜水作業者Bが架台、潜水作業者Mが流向流速計を持ち、潜水開始。
潜水作業者Mは、水面ブイからブイ一体型係留装置上部の中層ブイに至るロープを確保することに失敗し、浮上。潜水作業者Mは、作業船につかまって潜水位置まで戻り、再潜水。

【潜水作業者B、M1回目の潜水】リブリーザー使用(添付資料 5、6)
10:12 頃 両潜水作業者が潜降を開始してすぐ、潜水作業者Bが後ろを振り返ったところ、潜水作業者MはOKサインを返し追随。
10:15 頃 潜水作業者Bは中層ブイと水面ブイをつなぐロープを掴み、ロープ沿いに潜降。水深20-25m付近の中層ブイに到着した時点で、振り返った時に潜水作業者Mが確認できず。潜水作業者Bは潜水作業者Mがロープにたどり着けず流されてしまったのか、ロープにたどり着けずそのまま潜降してしまったのかが判断できず、一人で潜降している可能性を想定して、一人で潜降。
10:17 頃 着底後、潜水作業者Mがいないことを確認。
10:19 頃 架台をブイ一体型係留装置底部の錘とロープでつなぎ、浮上開始。途中、ブイ一体型係留装置の設置状況や途中に設置した水温計設置状況の確認のため、カメラで写真を撮りながら浮上。
10:27 頃 表層で流されていたと考えられる潜水作業者Mは、水面に浮かんでいるところを船上の作業支援員に発見され、船のラダーにつかまり作業現場に戻り、潜降を再開。潜水作業者Bは、水深約10mで潜降してきた潜水作業者Mと合流。潜水作業者Mが先になり、中間ブイと海底の錘を結んだロープを掴みながら急速潜降(潜降速度:約 27m/分)継続。
10:31 頃 水深約50mの地点で、潜水作業者Bは潜水作業者Mが腰のカラビナにつけていた流向流速計を海底に投下。
10:32 頃 潜水作業者M、潜水作業者Bの順に着底。潜水作業者Mは膝立ちで待機、潜水作業者Bは潜水作業者Mの背後に着底。着底後すぐに潜水作業者Bは混合ガスが無くなったことに気づいたため、潜水作業者Mに背後から浮上のサインを送り、予備の空気タンクに切り替え。
10:34 頃 潜水作業者Bは、中間ブイと海底の錘を結んだロープを掴まず浮上を開始。
10:35 頃 潜水作業者Bは浮上の途中、潜水作業者Mのものと思われる泡が上がってきているのを確認、潜水作業者Mも浮上しているものと理解し、浮上を継続。
10:36 頃 水深20mくらいまで浮上した時点で、船上の作業者に位置を知らせるために、バルーン(シグナルフロート)を打ち上げ。
10:37 頃 水深10mの位置で確認したところ、潜水作業者Mの泡が確認できないため、減圧停止をやめて、水面まで浮上。潜水作業者Mは、この潜水作業以降水面に浮上せず、2017 年 4月 7 日現在において、行方不明となっている。

【潜水作業者B2回目の潜水】空気タンク使用(添付資料 7)
10:45 頃 潜水作業者Bは、14L の空気タンクに切り替え、予備の 14L の空気タンクを持って、ロープ伝いに再度潜降。
10:46 頃 水深44mから海底が視認可能も、潜水作業者Mを確認できず。
10:49 頃 ロープを離し、蛇行し海中を確認しながら水面まで浮上。
10:52 頃 潜水作業者Bから指示を受けた船上の作業支援員(当日乗船者I)が海上保安庁に通報。その後、船上から水面を下流方向に向かって捜索。

【潜水作業者B3回目の潜水】空気タンク使用(添付資料 7)
10:59 頃 元の位置に戻り、再度ロープ伝いに潜降開始。
11:00 頃 水深約51mまで潜り、ロープを離し、下流に向かって数分蛇行して捜索。その後、浮上を開始し、減圧停止を行いながら浮上。
11:14 頃 船上に戻ったあと、減圧症の自覚症状が出始めたため、酸素を吸入。その後、当日乗船者Iに搬送用の救急車の依頼をし、山川港からドクターヘリで病院に搬送、再圧治療。(翌日退院)  (報告書10~12ページ)

これを読んで不可解に思えたのは、亡くなられた潜水作業者Mさんは、作業を始めた直後から10分程度行方不明になっているのに、その時点でMさんを探すことなく作業が続行されている点です。報告書には”潜水作業者Mは、水面ブイからブイ一体型係留装置上部の中層ブイに至るロープを確保することに失敗し、浮上”とありますが、単純なミスだったのか、体調は大丈夫だったのか、潜水機器は正常に動作していたのかが全くわかりません。誰も気にしなかったのでしょうか?報告書には、この対処に関して言及しています。

上述の通り、最初の潜降を開始してから数メートル付近まではバディ潜水を行っていたと思われるが、中層ブイ(27m)に到着した時点で潜水作業者Bは潜水作業者Mを確認できなかった。この時点で潜水作業者Bは浮上して潜水作業者Mを探すべきであった。

その後、単独潜水で海底まで到達し、潜水作業者Bが携行していた装置を設置した後、ゆっくりと減圧地点の 10m 水深まで浮上し、減圧中に潜水作業者Mと合流する。この時、潜水作業者Mがはぐれた原因などの状況を確認しなかった。

潜水作業者Bは潜水作業者Mが携行している装置の設置を優先させるため、再潜水を行った。再潜水は当初想定されていなかった。潜水作業者Bが 2 回目に海底に到達して潜水作業者Mを後方から確認した後、単独で浮上を開始した。この時、バディ潜水で浮上すべきであった。以後、潜水作業者Mは行方不明となった。(報告書19ページ)

作業中止の基準の策定やその判断をできるものが今回乗船していれば、潜水作業者Mが水面に浮かんでいるところを船上の作業支援員に発見され、船のラダーにつかまり作業現場に戻る時点で作業を中止することも可能であったと思われる。(報告書20ページ)

 

事故が発生した状況の説明は潜水士Bさんの証言に基づくものと思われますが、Mさんに何が起きたのかを理解するための手掛かりがありません。

また、潜水作業者Bのメール等の文面に社会通念上許容レベルを越えるようなきつい表現が散見されること、発言の内容に一貫性がなく関係者が対応に困ったという証言(これに関しては、委員会においても事故を起こした作業の説明が三度の証言の中で微妙に変化していることからも裏付けられる)などは、OMSSS 及び研究ユニットの関係者間の不調和の原因の一つであることは間違いがない。(報告書29ページ)

 

事故を生じさせた、もしくは事故を防げなかった要因の主要なものとして、調査委員会は、安全管理を軽視した作業計画、潜水時のバディシステムの崩壊、不適切な潜水機器(リブリーバー)の選択、作業管理責任者の不在、非常時の対処策・装備の欠如などを挙げています。

委員会では潜水作業者Bから三度ヒアリングを行ったが、潜水作業者Bは潜水の安全性を少しでも高めるために世界標準となっているバディシステムに対し、極めて否定的な見解を持っている。この証言は複数回安定して行われていることから、潜水作業者Bのバディシステムに対する否定的な考えは、彼のダイバーとしての本質であると考えられる。これらのことから、潜水作業者Bは、絶対に近い安全性が要求される職業としての潜水に対する理解が根本的に誤っていると言わざるをえない。(報告書29ページ)

以上のように、純粋な作業潜水の実施の観点から見て、潜水作業者B、潜水作業者Mがとった行動は、潜水作業における安全確保を全く考慮していない杜撰な計画に従って行われた。また、潜水時に潜水作業者Bがとった行動(バディシステムの無視、再会後浮上せずに再潜降)は、事故を防止する最終的な機会を失うこととなった。(報告書33ページ)

また、今回の作業を行うにあたり、潜水器材としてリブリーザーが選択されている。しかし、潜水作業者が OIST で保有するリブリーザーの運用について十分理解していない上に、その使用法に習熟していないこと、潜水作業者は、このリブリーザーのトレーニングはレベル 2(ヘリオックス、トライミックス潜水)まで受講しているが、レベル 2 トレーニングの受講資格であるレベル 1(ナイトロックス潜水)での 50 時間の潜水経験なくして、レベル 2 のトレーニングを受講しており、またレベル 2 での潜水経験も少ないこと、潮流が速い海域でのボートエントリーによる上下方向の移動がメインとなる潜水作業であることなどから、リブリーザーの使用の判断は間違っていたと言わざるを得ない。

さらには、潜水作業者Bの証言によれば、今回の潜水作業は、今までの経験を踏まえ、できるだけ簡素化して 1 回の短時間潜水で、潜水開始から海面浮上まで最長 30 分で終わるように見積もっていたということであった。しかしながら、見積もりの可能性を見極めるため、現場での潜水開始前海流状況調査(潮流、海水温度の計測)や ROV による海底事前調査(視界、海底状況把握のため)を行っておらず、また、その減圧手順はダイビングコンピューター任せで、63mの海底まで重量物を携行して設置するという作業内容から判断すると、リブリーザーで行うような潜水作業ではない。また、作業の簡素化に特化するあまり、高圧則で定められたさがり綱の使用についても見落とされていた。

実際の潜水作業の準備状況についても、船上にスーパーバイザーやスタンバイダイバーを用意していないこと、60m を越える深度まで潜降可能な予備器材を準備していないこと、水中ノート等のコミュニケーション器具を携行していないこと、緊急用のシグナルフロートのロープが 30m しかないことなど、海底付近でトラブルが生じた場合の対策について、何も準備されていないことが証言から明らかになった。また、今回のダイビングでは約 15m/分の速度で潜降しているが、リブリーザーを用いたダイビングでは、急激な潜水深度の変化は禁忌である。そのため、急激な潜降による酸素分圧の上昇による健康被害が発生する危険があった。このことは、今回の潜水作業のリスク評価が全くなされていなかったことを示していると判断される。(報告書17~18ページ)

 

研究プロジェクトリーダーの責任

この流向流速計の海底設置作業の総責任者は研究プロジェクトのリーダーであることから、報告書では准教授(研究ユニットリーダーで、沖縄海洋研究支援セクション(OMSSS)リーダーを兼任)の責任も指摘しています。

委員会での准教授Aの証言によると、准教授Aは、OMSSS のリーダーを兼務する以前から、自らがリーダーを務める研究ユニットで沖縄海洋観測システムの設置などにおいて、これまで約5年間に亘る長期間の間、ダイビングを伴う研究開発業務に関わっている。沖縄海洋観測システム設置時の潜水作業者Bの功績や信頼する共同研究者のコメントなどから、作業ダイバーとしての潜水作業者Bの能力を評価・過信し、ダイビングを伴う作業については潜水作業者Bに任せきりとなっていた。結果としてプロジェクトの責任者としてのチェック機能を放棄していたと言わざるを得ない。
また、今回の事案においても、潜水計画のリスクアセスメントを怠り、現場で作業の立会いもなく、OIST 野外活動マニュアルに定められているスーパーバイザーの任命もなされていない。当日、船上にスーパーバイザーがいれば、潜水作業者Mが水面に浮かんでいるところを船上の作業支援員に発見された際に作業の中止等、最善の指示が行われたのではないかと考えられる。さらには、委員会での証言で、野外活動計画をチェックし、安全を確認するのは安全衛生セクションの責任であるかの表現をしていたが、研究行為の第一の責任がユニットリーダーにあることを理解していないと言える。(報告書28ページ)

野外活動マニュアル(p5、添付資料 11)においては、「責任者は、原則として教員またはセクションリーダーでなければならない。」、「現地における参加者の安全衛生管理、事故防止及び適正な野外活動の実施について、責任者は、責任者を補佐するスーパーバイザーを置くことができる。」、「責任者が野外活動に参加しない場合、責任者は参加者の中からスーパーバイザーを選出し、野外活動期間中の安全衛生確保及び法令遵守に努めさせる。」こととなっている。今回のケースにおいては、責任者が野外活動に参加していないにも関わらず、スーパーバイザーの配置が行われていなかった。(報告書20ページ)

今回の潜水作業の計画から実行に至るまで、作業中に何らかのトラブルが発生する可能性は全く考慮されておらず、全ての手順が 100%順調に進められることを前提としている。すなわち、計画に対するリスクアセスメントは行われていなかった。これは、潜水計画策定と実際の作業全般を任されていた潜水作業者Bとともに、研究全体の管理者、リーダーである准教授Aの潜水作業に対する無知・無理解と潜水作業者Bへの無条件の信頼、それらに加えて研究の安全管理に対する責任感の欠如によるところが大きい。研究ユニットは、少々の無理をしてでも研究成果を目指すことがあり、支援部門に対して困難な要求をすることがあるのは容易に想像できる。研究ユニットのリーダーとしての准教授Aは作業ダイビングの経験は無いが、その経験がなくとも第三者の専門家にアドバイスを求めることなど、海中作業の実態やその危険性の把握は可能であり、この点の意識欠如が今回の事故の大きな背景であったといえる。(報告書33ページ)

 

OIST執行部の責任

報告書はまた、安全管理を適切に執行する組織作りを怠ったOISTの責任も指摘しています。

また、准教授Aの兼任についても、テニュアトラック上の准教授に対し、研究ユニットだけでなく支援セクションの管理も要求することは、明らかに必要以上の負担を強いている行為であると考えられる。テニュア獲得へ向けて最も研究成果が必要な時期に、研究支援業務の管理を行うことは、明らかにコンフリクトの要因となる。このことは准教授A自身も認識し、研究担当ディーンを通じて兼任解除の要望を出していたが、一年以上にわたって解消されることは無かった。(報告書36ページ)

研究担当ディーンは、研究支援部門を統括するものであり、OMSSS も安全衛生セクションもその配下にある。OMSSS の組織構造上の問題点を認識しながらその対応が遅れたことや、安全衛生セクションが支援対象とする研究範囲の増大への対策の遅れは、研究担当ディーンの管理上の責任範囲内である。また、潜水業務の危険性の認識が甘く、OMSSS で行われている潜水作業が実質的に潜水作業者B一人の判断に依存していたことを看過し、事故を招いたことは管理上の責任が問われる問題である。そもそも本来独立すべき研究、研究支援、安全衛生管理・研究上のリスク管理の三要素が研究担当ディーン一人のもとに集約された組織構造であり、組織としての相互チェック機能がうまく働かない構造になっている。このような組織構造上の不備を放置したことについては、OIST 執行部にもその責任の一端があると言える。(報告書34ページ)

 

研究第一で安全を軽視するOISTの風潮が、事故に直接つながるさまざまな要因をつくりだしたのではないかというのが潜水事故対策外部検討委員会の考えです。

今回の事故の背景には、このような全学における研究第一、安全衛生は二の次という OIST の安全文化の寄与が大きいといっても過言ではない。(報告書35ページ)

また、安全衛生管理委員会活動からも判るように、OIST では組織の安全衛生を確立するために定められている様々な法律や規程が十分に守られているとは言い難い状況にある。組織の安全衛生体制は、組織のトップの率先垂範が原則であるが、以前、安全衛生委員長の欠席が多かったことや、准教授Aの証言にあった、研究の安全衛生管理は安全衛生セクションの仕事というような発言は、OIST において組織的な安全文化が全く育っておらず、研究成果しか追い求めていない、安全を軽視した組織であることを強く示唆している。

今回事故を起こした潜水計画は、全く余裕や冗長性が無く、またトラブル発生の想定も行われていない。これは、実質的な潜水計画策定者である潜水作業者Bの自己の技術に対する慢心と、それに対してチェックすることを放棄したリーダーの准教授Aの不作為、潜水作業者Bと潜水作業者Mの間の強い権威勾配がその主たる要因であると考えられる。また、本作業は心身ともに万全の体調で臨むべき難易度の高い作業であることから OMSSS 内の人的関係の不調和が潜水作業者Mに与えていた過度の精神的な負担は事故発生の要因として無視できないレベルにあった。

以上のことから、背景要因として組織および潜水作業者の状態について調査した結果、潜水作業者Mを取り巻く環境は、事故の危険性を増長する方向に働いていたと結論づけられる。(報告書31ページ)

 

報告書はまた、人間関係の不調和やハラスメンによる心身の疲弊も事故の一因となった可能性があると指摘しています。

事故となった潜水作業の難易度を考えると、潜水作業者は心身ともに健康であることが必須となるが、通報メールの内容は無視できるものではなく、潜水作業者の心身の健康状態に大きな影響を与えた可能性を排除できないと判断された。 .. ・潜水作業者のハラスメント被害可能性とそれに伴う精神的負担に関する疑問 .. ・OMSSS に関わる人間関係のトラブルに対する疑問 .. ・トラブルへの OIST の対応に対する疑問と意見 .. ・2016 年夏ごろからの潜水作業者Mの心身の状態に関する懸念  .. ・潜水作業者Mの部署の状態に対する懸念(報告書26ページ)

実際メールに書かれた内容は、起こした過失に比べて極めてきつく、社会通念を逸脱した表現であり、潜水作業者Mや関係者に対するハラスメントに該当することも十分に考えられるものであった。(報告書27ページ)

潜水作業者Bを中心とした関係者間の不和と作業上の潜水作業者Bの必要性の狭間で、潜水作業者Mに大きな精神的負担があったことは想像に難くない。潜水作業者Mの友人も、潜水作業者Mが仕事に関して、身体的な負担よりも人間関係で悩んでいたと発言している。また、同時期に OMSSS の人員の減少(休暇や異動など)と臨海実験施設の開設準備が重なり、業務量の負担も増大していた。そのような中で、OIST の組織的な支援もうまく進まないことから、潜水作業者Mは退職を決意していた。(報告書30ページ)

 

OISTにおけるハラスメントへの対応のまずさについても指摘があります。

今回のケースは、ハラスメントではなく、マネジメント教育が必要という人事上の判断は尊重するが、実際の対応には大きな疑問が残る。通常ハラスメントの存在が疑われる場合、組織は申し出者、或いは被害者の保護を最優先に考え、両者の接触を可能な限り低減する措置を取る。しかし、このケースの場合、潜水業務を通して、潜水作業者Bと関係者が所属する OMSSS との業務上の関係性が維持され、異動前と大きく状況は変わっていない。むしろ准教授Aがセクションのリーダーを兼務することで、両者の共通の上司となり、より関係が複雑化する、問題解決につながりにくい対応であったと言わざるを得ない。(報告書36ページ)

OIST には各種ハラスメントに対する通報や保護の制度を有している。今回、委員会はこれらの制度が十分に浸透または信頼されていないと考えられるコメントを複数受け取った。(報告書40~41ページ)

 

報告書は、OISTの体制についても苦言を呈しており、改善への具体的な提言をしています。

しかしながら、トップダウンが行き過ぎた場合には、ネガティブな情報の隠匿やハラスメント、さらには研究不正など、様々な教育研究機関としての弊害の温床になる危険性を秘めている。(報告書41ページ)

トップダウンによる弊害を未然に防ぐためには、様々な職域間でお互いにチェックを行い、自律的且つ建設的に調節(checks and balances)することが可能な組織構造をデザインすべきである。(報告書41ページ)

OIST では研究担当ディーンが研究予算、研究支援、安全衛生管理を所管しており、安全衛生管理については安全衛生管理セクションが設置されている。通常、組織においてはその組織の本来業務を統括する部門、本来業務を支援するスタッフ部門、万一に対応するためのリスク管理部門がそれぞれ独立して配置されており相互にチェックし、組織運営に不合理がないかを常に確認している。これは大学においても同じであり、研究担当、研究支援担当、環境安全・リスク管理担当の副学長等は別々に、それぞれ独立してその職務を遂行しているのが通例である。この点について、OIST では研究担当ディーンにこれらの3業務が集中しており、組織としての相互チェックが機能せず、又、緊急時に適切な判断が困難な組織構造となっている。(報告書23ページ)

 

参考

事故に関するOISTの発表

  1. OISTダイビング事故:今後の歩みについて (OIST 2017年07月11日) 報告書『伊江水道で発生した潜水事故の経緯・原因究明の検討結果及び再発防止のための勧告』(沖縄科学技術大学院大学潜水事故対策外部検討委員会 2017年5月10日付け)
  2. 行方不明ダイバーの事案に関するご報告(OIST 2016年12月29日)
  3.  行方不明ダイバーの捜索活動についてのご報告 (OIST 2016年11月24日)
  4. 潜水事故について (OIST 2016年11月18日)

 

OISTの組織

  1. OIST フィールドサポートセクション (Field Resources Section; FRS) :海洋研究に関する共通機器の管理,また海洋研究に関わる各種のアクティビティをサポートします.我々の役割 共通機器を利用した環境モニタリングサービス オンサイトでのフィールドワークサポート 共通機器のレンタルとメンテナンス  海洋セーフティトレーニング(リクエストに応じて提供)
  2. OIST 沖縄海洋研究支援セクション(OMSSS):沖縄海洋科学センター(OMSC)の企画・運営 OISTマリン・サイエンス・スエーションの運営 海洋観測システムの維持・管理 その他の海洋科学研究に関する共通機器の維持・管理 潰瘍科学研究に関するフィールドワークのサポート

 

その他(OIST)

  1. ダイビング安全主任者 (20170421-JD_Ja-divingsafetyofficer.pdf) 業務内容 OISTでは、ダイビング安全主任者を募集しています。ダイビング安全主任者は、OISTで実施される作業潜水やその他の海洋・水辺フィールドワークの審査、監督を行い、作業潜水士やフィールドワークに参加するもののトレーニングや健康診断受診状況を監督します。その他、ダイビングやその他の海洋・水辺フィールドワークで用いる器材の点検、保守、修理を管理します。作業潜水を実施する場合には、必要に応じて現場監督者の役割を担います。ダイビング安全主任者は、安全衛生セクションリーダーにレポートします。OISTやセクションの業務の拡大に伴い、新たな業務が加わります。 1.OISTフィールドワーク安全委員会や外部の専門家と協力した潜水作業計画の審査の実施 2.作業潜水時の現場監督 2.関係者のトレーニング、健康診断受診状況の確認 3.ダイビングトレーニングの実施 4. ダイビングやその他の海洋・水辺フィールドワークで用いる器材の点検、保守、修理の管理 5.外注にて作業潜水を実施する場合の潜水作業計画と安全体制の確認 給与 本学園の規程に基づき経験・能力に応じて支給する 本給: 720万円~1130万円 (ジョブクラス: スペシャリストII, A5)
  2. 世界を見る目を形作る 2014-10-16

 

事故に関するテレビ報道

  1. OIST職員潜水事故 事故調”大学の安全管理に問題”(沖縄テレビ放送 2017/07/11 18:16) 【動画】
  2. OIST職員のダイビング事故「管理体制の欠陥」(琉球朝日放送報道製作部Qプラス 2017年7月12日 18時43分)【動画】
  3. 潜水事故 OISTが謝罪 (Ryukyu Broadcasting Corp, RBCニュース 2017/07/13 13:02)【動画】

 

事故に関する新聞報道

  1. 「僕が戻ってこなくても悲しまないで」  潜水事故の職員が母に残した言葉 沖縄科学技術大学院大学(沖縄タイムズ 2017年7月13日 22:00):”報告書によると、亡くなった男性は実家に帰省した際、母親に「僕が海から戻ってこなくても悲しまないで」「何度か危険な目にも遭った」などと話しており、「深度潜水に対して危機意識を有していたと思われる」とした。”
  2. OIST水難「事故、回避できた」外部委報告書(毎日新聞 2017年7月13日)
  3. 「安全管理に深刻な問題」 潜水事故で沖縄科学技術大学院大学が謝罪(沖縄タイムズ 2017年7月13日 06:44):”OISTは関係者3人を厳重注意したほか、管理職についても処分を検討している。”
  4. 潜水中の職員不明「計画ずさん」、ハラスメントにも言及 沖縄科学技術大学院大学・外部委(沖縄タイムズ 2017年7月12日 08:46):”検討委は、この作業は心身ともに万全の体調で臨むべき難易度が高いものだったが、男性が所属する部署内の「人間関係の不調和が男性に与えていた過度の精神的負担は、事故発生要因として無視できないレベルにあった」とも言及している。同僚が、過去に男性らに対して送った叱責(しっせき)のメールが「社会通念を逸脱した表現で、男性や関係者らへのハラスメントに該当することも十分に考えられるものだった」としている。”
  5. 潜水中の職員死亡「安全管理ずさん」 沖縄科学技術大学院大 外部委が指摘(琉球新報 2017年7月11日 07:30):”第11管区海上保安本部は本紙の取材に対し、関係者からの聞き取りなどを実施していることを明らかにした上で「捜査を継続している」とし、業務上過失致死での立件も視野に捜査を進めている。 .. OISTは10日に47ページの報告書を学内向けに公表し、学外には「要望があれば後日公開する」としている。教育研究中に学生や研究員の水難死亡事故を起こした東京大(2005年7月)、九州大(16年9月)では調査委員会による「原因究明および再発防止のための報告書」を事故が発生した年度内に一般公開した。”

 

ダイビング関連

  1. リブリーザーダイビングの事故で思うこと・・・ (旭潜水技研 2016年12月22日):”しかしあの海域は元々本当に流れが強くて有名なところだったのにも拘らず、更にあの日は「スーパームーン」だと世間が騒いでいた大潮中の大潮の特別な日だったのですから・・・。特にROVを海に入れて画面を通して分かりましたが、更にあの海域は上と下とで流れが逆になる二枚潮だったり、突然流れが止まったかと思うと急に逆に流れ出したり、潮止まりが極端に短かったりだとか、周囲の海底地形と島々との間の水路などで本当に難しい海域です・・・。よくこんな海域にましてやあんな扱いづらいリブリーザーなんかで潜ったものだと正直ぞっとしました・・・。”
  2. 捜索海域の海象悪化のために潜水捜索活動は1日で終わった (ダイブチームムラタ 2016年11月15日);”潜水深度での対応を考えると二名だけの対応が、どうだったのだろうか。潜水作業する深度が60mとなると空気潜水は法律で厳禁となっている。リブリーザーで潜るか、トライミックスガス潜水の二つの選択肢が出てくるのでした。今回は、リブリーザーを使用しているとの情報だ。バックアップ対応する予備ダイバーが二名、全体管理の責任者として一名。その他で二名の対応となると全体的には7名くらいの部隊編成となる。 “
  3. テクニカルダイビング(ウィキペディア)
  4. リブリーザーダイビングとは (藤本院長コラム 2014.01.11):”リ=再び。ブリーズ=息する。つまり、吐いた息に肺によって消費された酸素を足して、捨てられた二酸化炭素を吸着してキレイになった空気を再度呼吸するというダイビング機材をリブリーザーと言います。リブリーザーのメリットは、長時間潜水が可能であること。(3時間持続的に潜水できます)そして、ダイバーが最も怖がっている死に追いやられる減圧症(潜水病)のリスクが劇的に低下することです。デメリットは、機材が高額であること。そして、コンピューター管理されている機材を使うにあたりそれなりのスキルがいることがあることです。”
  5. ダイビング講座 バディシステム ”なによりたいせつなのは潜水の基本動作で、その一つが「バディシステム」(連れ添い潜水)です。 バディ(BUDDY)とは仲間の意ですが、潜水におけるバディとは、単に時間的、空間的に一緒に潜った仲間ということでなく、お互いの不完全な感覚(とくに注意力)を補い合い、判断を客観視し合い、行動を豊かにし合うツレアイ、おおげさにいえば、命を預けあった伴侶ということがいえます。”
  6. 日本ROV (Remotely Operated Vehicle)事業者協会

 

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の組織体制に関するブログ記事(2011年の時点)

  1. 昨日の皇居での茶会、きょうは北中城での結婚披露宴、わたくしの考える沖縄科学技術大学院大学 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 05日):”大学組織の現状は、惨憺たる状態というのが、赤裸々な真実と思っています。なぜそうなっているのか、沖縄大学院大学の教授の一人として正直に現状を伝える責務を感じます。しかし、それを果たすのは非常にたいへんなのです。その大変さは、これからの一週間わたくしが書きつづる内容を読まれれば明らかとなるでしょう。 “
  2. 楽しかった結婚披露宴、とんでもない沖縄大学院大学の新学長の年収、大学院大学組織のイロハ (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 06日)
  3. 想定読者、軍事研究費導入議論に否定的でない新学長、そして新学長の兄弟、まず二つの提言 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 07日)
  4. コネと裏口、税金100%の私立大学の向かう方向、外部資金の危険性 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 08日)
  5. 大学院大学の前身の体質、河野修己記者による記事の抜粋 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 08日)
  6. 沖縄大学院大学の人脈 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 09日)
  7. 南アフリカ共和国人脈とウイーゼル人脈 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 09日)
  8. 沖縄大学院、現場からの告発 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 10日)
  9. 沖縄大学院のあるべき鉄則 米国臭の排除 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 10日)
  10. 私企業沖縄大学院大学、監督官庁の奮起を、ガンバレ日本語をしゃべる研究者、職員、私も公もごちゃごちゃ (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 11日)  :”わたくしの気分は、いまの大学院大学は大学院に程遠い。実感は私企業に雇用されている感じです。日本語をまったくしゃべらない、どこかのしらないファミリー連中の下で、私企業の雇用者の実感といえば多くの人たちはうなずくでしょう。わたくしの給与も私企業感覚で決められているはずです。まさにここを会社と呼ぶ人たちが多いのもうなずけます。ですから、何かをすれば身の危険(クビ)を感じるのでしょう。わたくしは、一刻も早く大学らしい雰囲気になって欲しいのですが、トップアドミのほとんどは大学人の雰囲気は皆無ですから。”
  11. メディアは(生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 11日)
  12. 京大病院での死亡事故、しらけて待つ創立記念行事 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 14日)  “名前から、沖縄を取って、国際を代わりに入れると、いまの流れにあうのでしょうか。国際ファミリーコネ科学技術大学院と名付けると、現状に近い。”
  13. 北朝鮮へのアンバサダー、進化する楽天・田中沢村賞投手、公私混同大学院大学、ヘチマの写真 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 15日) “きのう、国際ファミリーコネ科学技術大学院などといってしまいましたが、ここで同等に問題なのは、公私混同です。公私混同大学院と言いたいくらいです。”
  14. 大学院大学理事会議長への請願書、ヤギ汁は妊婦もOKとのこと (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 17日) :”以下の三氏は公明公正な大学経営者として、罷免にあたいするとおもわれる不適格な行為をしているという疑いがあり、理事会で議論していただきたい。第三者委員会による調査も考慮していただければ幸いです。○○○○○学長、理事長 実兄が客員教授となること、教授会に相当する会議に出席し議論に加わること、を容認していること。これにより議論の方向性に影響を与え、外部には大学のファミリービジネス化の疑いを増大させていること。さらに学長、理事長の権限を独裁的に発動し、公私混同を厳にいましめるべきであるのに、それらに反する行為が日常的に多い。 ○○○○○プロボースト お子さんのハーバード大学での学業にたいし、旧独立法人の経費や研究費でもって便宜をはかろうとしたという疑い。高潔であるべき大学経営者として不適格である。 ○○○○○副学長 お子さんの沖縄科学技術大学院大学での学業をしている研究室への研究費の便宜供与の疑い。税金100%の機構大学院大学の経理の最高責任者の取るべき行為ではない。
  15. こころづよい支持の声 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 18日)
  16. 徹底批判、徹底抗戦の意欲、わたくしがもしも理事長、学長なら (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 19日):”この大学の公私混同とファミリービジネス化の深まりは想像をぜっするものではないか、という疑いを感じます。ファミリーというか、自分を有利に扱ってくれる友人や同国人、同郷人までいれるととんでもないネットワークがもう強固にできあがっていて、手がつけられないくらいかもしれません。”
  17. 門前払い (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 19日)
  18. なるほど、TPP的大学なのだ (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 19日)
  19. 三つ目のヘチマ、Aさんの論文とM君の学位、今年の論文刊行、陰惨からお笑いへ、ノーベル系人を対象に (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 20日)
  20. 請願にたいする返事 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 21日):””This is the response from the Board of Governors of the Okinawa Institute of Sciences and Technology School Corporation to your petition to me, listing perceived misconduct by President ***, Provost *** and Vice President ***. After careful consideration of your allegations, the Board conducted a closed meeting and concluded that there was no substance to these allegations. You should be aware that the Okinawa Institute of Science and Technology School Corporation has effective mechanisms to detect and report misconduct.
  21. まったく倫理観の異なる理事会、この大学院の第一歩の日 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 21日)
  22. 日本の国土に建つ外国人縁故大学院大学 その創立記念の日 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 22日) :”こういう縁故でこりかたまった連中がノーベル賞の受賞お偉いさんなら、もう日本はいい加減目をさますべきです。”
  23. ちょっと疲れたかな、名刺辞令 (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 22日)
  24. 来週の北京訪問、大学院大学わたくしなりの中間の答え (生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ 2011年 11月 23日) :”さてわたくしの働き場所、大学院大学です。うんざり、というのがひと言での実感です。それは理事会や学内執行部の縁故主義の蔓延が原因ですし、また統治能力のレベルの低さと指導能力の劣悪さにともなういろいろなレベルでみる無能力、無責任、それに批判勢力の欠落、がもたらす組織的なだるさもわたくしの憂鬱の原因です。 ..  しかし、こんかいわたくしなりに体をはって(?)やったこともあり、中間の答えが得られました。この縁故の問題の元凶のひとりこそ理事会の議長であると。新大学院大学の最高権力者です。かれが縁故、ネポティズムの元締めでした。もっと前から知ってなければいけなかったことでした。”

 

OISTの執行体制

  1. 沖縄科学技術大学院大学学園理事 (一覧)
  2. OIST 運営委員会会議要旨
  3. 役員・副学長等 (一覧)
  4. 沖縄科学技術大学院大学学園評議員 (一覧)
  5. 沖縄科学技術大学院大学 次期学長にピーター・グルース博士が決定 (OIST 2016-12-15):”この度、沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)理事会は、ピーター・グルース博士をOIST学園の次期理事長兼学長に選任しました。グルース博士は遺伝子制御および発生生物学の分野で国際的に著名な研究者で、2002年から2014年までドイツのマックス・プランク学術振興協会(MPS)会長を務めました。MPS会長の前職では、ドイツのゲッティンゲンにあるマックス・プランク生物物理化学研究所分子細胞生物学部部長を16年間務めました。同博士は2011年11月の本学創立時から理事長兼学長を務めるジョナサン・ドーファン博士の後任として、2017年1月1日に就任します。..グルース博士の学長任命をもって、世界規模の次期学長選考は終了となります。2015年10月のOIST理事会会合で本選考開始が発表され、同年11月にアルブレヒト・ワグナー博士を議長とする、OIST理事8名と教員4名から構成される選考委員会(PSC)が立ち上がりました。2016年1月初旬には、研究・教育分野の主要専門誌などへの掲載を通じて公募を開始しました。その後、自薦・他薦による応募者140名以上の中から、厳格な審査・評価、およびビデオ会議による第一次面接を経て、5名の最終候補者(内、女性2名)がPSCとOIST理事会運営委員会により選出され、面接が行われました。その中でも傑出していたのがグルース博士で、2017年1月1日付で同博士を次期理事長兼学長に任命することがその後OIST理事会の全会一致で承認されました。この度、正式な任命手続が完了したこととなります。 “

学術機関が共闘 ELSEVIER購読を打ち切り

以下、Creative Commonsライセンスに基づく記事転載(出典元:エディテージ・インサイト


 

60以上の学術機関がエルゼビア発行誌へのアクセスを失う(ドイツ)

スネハ・クルカルニ (Sneha Kulkarni) 2017年7月7日

ドイツの60以上の学術機関が、オランダの大手出版社エルゼビアとの購読契約を打ち切りました。これにより、数千人の研究者が同社発行誌へのアクセスを失うことになりました。

高額な購読料は、学術機関と出版社の間で生じている論戦の争点となっています。また、ドイツの学術機関は、エルゼビアへのコストの支払いを困難と感じています。こうした状況の中、ドイツの大学、公共図書館、研究機関は2014年、「Project DEAL」というコンソーシアムを結成しました。これは、大手学術出版社との2017年度のライセンス契約を、全国規模で締結することを目指すものです。しかしながら、エルゼビアとの協議は2016年12月に中断されたことが発表されました。同コンソーシアムは、エルゼビアからの提示が「オープンアクセス方針と公正な価格体系に応じるものでなかった」ため、それを拒否したと説明しています。この結果、交渉に関わったすべての学術機関が、12月31日を最後に、エルゼビアのジャーナルへのアクセスを失うことになりました。ゲッティンゲン大学は次のような声明を発表しています。「ジャーナルへのアクセスを失うことで研究や指導にどのような影響が出るかは、交渉に参加している誰もが十分に理解しています。それでも我々は皆、多くの研究機関が手を携えて圧力をかけることが、現状では、ドイツの科学コミュニティに利益をもたらす唯一の方法であるという強い信念を持っています」。一方、エルゼビアは、来年以降も交渉を続ける意向があることを表明しています。

多くの国が同様の問題に直面しており、高騰する購読料によって学術機関の運営が難しくなってきています。2016年12月初頭には、国立台湾大学(NTU)図書館が、高額な購読料を理由に、2017年以降のエルゼビアのScienceDirectジャーナルの購読を打ち切る予定であることを発表しました。購読料の高騰は、科学の発展を阻害しかねない深刻な問題であり、全世界で解決していかなければならない課題と言えるでしょう。

参考文献:

Thousands of German researchers set to lose access to Elsevier journals

本記事:60以上の学術機関がエルゼビア発行誌へのアクセスを失う(ドイツ)は元々エディテージインサイトに掲載されたものです。


参考

  1. Thousands of German researchers set to lose access to Elsevier journals (By Gretchen Vogel,  Science News Dec. 22, 2016 , 12:30 PM)

2017年採択新学術領域研究テーマと代表

2017年に新規で採択された新学術領域研究(研究領域提案型) (研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2022-03-31)が公表されました。

  1. 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 領域代表者  沈 建仁 岡山大学 教授
  2. 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 領域代表者  尾藤 晴彦 東京大学 医学(系)研究科(研究院) 教授
  3. 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御  領域代表者  藤田 直也 公益財団法人がん研究会
  4. 共創的コミュニケーションのための言語進化学 領域代表者 岡ノ谷 一夫 東京大学 総合文化研究科 教授
  5. 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 領域代表者  川村 賢二 国立極地研究所 准教授
  6. 予防を科学する炎症細胞社会学 領域代表者 松島 綱治 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授
  7. 性スペクトラム - 連続する表現型としての雌雄 領域代表者 立花 誠 徳島大学 先端酵素学研究所 教授
  8. 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 領域代表者  清水 重臣 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授
  9. 植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理 領域代表者 梅田 正明 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 教授
  10. 進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~ 領域代表者 倉谷 滋 国立研究開発法人理化学研究所
  11. 代謝アダプテーションのトランスオミクス解析 領域代表者 黒田 真也 東京大学, 理学(系)研究科(研究院) 教授
  12. 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 領域代表者  金井 求 東京大学 薬学研究科(研究院) 教授
  13. 化学コミュニケーションのフロンティア 領域代表者  掛谷 秀昭 京都大学 薬学研究科(研究院) 教授
  14.  重力波物理学・天文学:創世記 領域代表者  田中 貴浩 京都大学 理学(系)研究科(研究院) 教授
  15. 分子夾雑の生命化学 領域代表者  浜地 格 京都大学 工学(系)研究科(研究院) 教授
  16. ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 領域代表者 加藤 昌子 北海道大学 理学(系)研究科(研究院) 教授
  17. 次世代物質探索のための離散幾何学 領域代表者 小谷 元子 東北大学 理学(系)研究科(研究院) 教授
  18. 水惑星学の創成  領域代表者  関根 康人 東京大学 理学(系)研究科(研究院) 准教授
  19. 和解学の創成-正義ある和解を求めて 領域代表者  浅野 豊美 早稲田大学 政治経済学術院 教授
  20. トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 領域代表者  山口 真美 中央大学 文学部 教授

 

参考

  1. KAKEN科学研究費助成事業データベース 検索
  2. 科新学術領域研究(研究領域提案型)(文部科学省)

 

海外出張の保険料を科研費から支出?

海外出張のときの保険料は高額で、かなり懐が痛みます。ですから、学会発表や研究目的で行くのになぜそこは自腹を切らないといけないのか?という疑問、不満を持つ薄給の研究者は多いと思います。

ツイッターの議論をみると、海外出張に際して科研費による保険料の支出を認める大学や研究機関が結構あります。個人的なことなので科研費は使えませんという事務方の主張は、ローカルルールかもしれません。

 

参考

  1. 科研費の4つの費目についての質問 (文部科学省) 【Q4441】 海外への出張に係る海外旅行傷害保険料、査証(ビザ)の申請料や予防接種等を科研費から支出することは可能ですか? 【A】研究遂行上、必要であれば支出可能です。ただし、例えば、保険料においては、契約に当たって適正な掛け金となっているかなど、過度に高額な支出にならないように留意することが必要です。
  2. ローカル線に乗った研究者の皆様へ (衆議院議員 河野太郎公式サイト 2017.05.15):”ローカルルールの廃止と統一ルールへの統合について。ローカルルールを廃止できない大学の評価をどうするかについては文科省で検討中です。”

 

研究生活カテゴリーの記事一覧