Category: 政治と科学

特定国立研究開発法人法案の概要

特定国立研究開発法人の新たな設置は、理研のSTAP細胞論文捏造事件のために見送られていました。
その後、理研の運営体制の見直しや不正再発防止策が進んだとして、政府は本国会で特定国立研究開発法人設置のための法案を提出する方針を決めました。

過去の報道では、優秀な研究者の報酬・給与を特別待遇にするという部分が強調されてきました。しかし今回公表された概要には、目標の策定、変更、成果の評価、長の解任を行う権限が主務大臣に与えられるという規定が盛り込まれており、特定国立研究開発法人を新たに設置する狙いが明確になっています。

政府は理化学研究所などが研究者に高額な報酬を支払えるようにする法案の概要を固め、成果が上がる見込みのない場合、法人の長を解任できるようにすることなど、担当大臣の権限を強化する規定を盛り込みました。…政府は法案を今の国会に提出し、成立を目指すことにしています。 (研究者への高額報酬可能に 法案の概要固まる NHK NEWS WEB2月3日 7時39分)

特定国立研究開発法人法案の概要

○特定国立研究開発法人は、産学官の人材・知・資金を結集し、イノベーションシステムを強力に駆動する中核機関
○総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の意見を法人運営に反映する等の仕組みにより、国家戦略との連動性を高め、我が国の科学技術水準の著しい向上を図り、国際的な産業競争力の強化を実現

基本方針の策定:CSTIの意見を反映した基本方針の策定
基本方針に基づく中長期目標の策定:CSTIの意見を反映し、主務大臣が中長期目標を策定・変更
業務運営の改善:中長期計画に基づき業務運営を改善
情勢変化に迅速な対応:主務大臣が科学技術に関する著しい情勢変化への迅速な対応を要求
報酬・給与の特例:世界最高水準の専門知識・経験を有する国際的に卓越した人材への報酬・給与の支給基準を柔軟化
研究開発等の特性への配慮:政府は研究開発等の特性(注)に配慮 (注)「長期性」「不確実性」「予見不可能性」「専門性」など
評価:CSTIの意見を反映した主務大臣による成果の評価
長の解任:研究開発成果の創出が見込まれない場合は主務大臣が長を解任可能
制度の見直し:政府は適当な時期に制度の在り方を検討
内閣府 平成28年2月4日 資料 研-2

特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法案の概要

我が国のイノベーションシステムを改革することで、経済社会情勢の変化に
対応して、産業の国際競争力を強化するとともに、世界最高水準の研究開発
成果を創出するため、新たに特定国立研究開発法人制度を創設する。

法律案の概要
(1)総合科学技術・イノベーション会議による関与の強化
○内閣総理大臣は、総合科学技術・イノベーション会議の意見を聴いて、特
定国立研究開発法人による研究開発等を促進するための基本方針の案を
作成し、閣議の決定を求めなければならない。
○主務大臣は、基本方針に基づき中長期目標を策定・変更するとともに、中
長期目標の策定・変更、中長期目標期間終了時の見直し等に際しては、総
合科学技術・イノベーション会議の意見を聴かなければならない。

(2)独法通則法の特例等による国際競争力の強化
○世界最高水準の高度の専門的な知識及び経験を特に必要とする業務に従
事するものについて、報酬・給与の支給基準の考慮事項として、国際的に
卓越した能力を有する人材を確保する必要性の観点を加える。
○主務大臣は、科学技術に関する内外の情勢に著しい変化が生じた場合に
おいて、対応を迅速に行うことが必要であると認めるときは、法人に対して、
必要な措置をとることを求めることができる。
○主務大臣は、世界最高水準の研究開発成果の創出が見込まれない場合
であって、その法人の長に引き続き当該業務を行わせることが適切ではな
いと認めるときは、その法人の長を解任することができる。

(3)研究開発等の特性への配慮
○政府は、通則法及び個別法の運用に当たっては、特定国立研究開発法人
による研究開発等の特性(注)に常に配慮しなければならない。
(注)「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定)において、研究開発業務の特性として「長期性」「不確実性」「予見不可能性」「専門性」が挙げられている。

対象法人
物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所

その他
○施行期日:平成28年10月1日
○法施行後、適当な時期に対象法人の範囲も含め制度の在り方を検討
内閣府 平成28年2月4日 資料 研-1

 

総合科学技術・イノベーション会議の構成員

総合科学技術・イノベーション会議は、内閣総理大臣を議長として、14人の議員をもって構成することとしています。有識者議員の任期は3年としており、必要に応じて再任できることとなっています。また、3年ごとに全て改選するのではなく、ほぼ半数ごとに改選期が到来するよう任命時期を調整し、議論の継続性を担保しています。有識者議員については、国の科学技術政策をリードする役割の重要性にかんがみ、任命に当たって、事前に国会の同意を得ることが必要となっています。

安倍 晋三     内閣総理大臣
菅 義偉     内閣官房長官
島尻 安伊子     科学技術政策担当大臣
高市 早苗      総務大臣
麻生 太郎     財務大臣
馳 浩      文部科学大臣
林 幹雄      経済産業大臣
久間 和生(常勤議員)         元三菱電機株式会社常任顧問
原山 優子(常勤議員)         元東北大学大学院工学研究科教授
内山田 竹志(非常勤議員)     トヨタ自動車株式会社取締役会長
小谷 元子(非常勤議員)     東北大学原子分子材料科学高等研究機構長兼大学院理学研究科数学専攻教授
中西 宏明(非常勤議員)     株式会社日立製作所代表執行役 執行役会長兼CEO
橋本 和仁(非常勤議員)     国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長
平野 俊夫(非常勤議員)     大阪大学名誉教授
大西 隆 (非常勤議員)    日本学術会議会長
(内閣府 総合科学技術・イノベーション会議の構成員)

参考

  1. 科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合 特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法案について 平成28年2月4日
  2. 島尻安伊子 内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が和光地区を視察(理化学研究所 2016年2月1日):”平成28年1月29日(金)、島尻安伊子 内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が和光地区を視察されました。まず、松本洋一郎理事より冒頭挨拶と理研の概要について説明しました。次に、研究不正再発防止策の実施状況として、有信睦弘理事(研究コンプライアンス本部長兼務)が研究不正の防止に向けた多層的な取組みについて、岡本仁副センター長(脳科学総合研究センター)が研究倫理教育責任者としてセンターにおける取組みについて説明しました。…”
  3. 理研、産総研、物材研の3機関を選定 特定研究開発法人で政府方針 (マイナビニュース・Science Portal 2015/12/21):”特定国立研究開発法人は、政府が「国家戦略に基づき、国際競争の中で、科学技術イノベーションの基盤となる世界トップレベルの成果を生み出すことが期待される法人」として昨年の通常国会での法案提出を目指していた。…3研究機関は、優秀な研究者を集めるために高額給与を支払うことなど研究者の好待遇が認められる。”
  4. 国立研究開発法人(ウィキペディア):日本の独立行政法人のうち主に研究開発を行う法人で、個別法によって定められたもの。独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成26年法律第66号)によるもので、2015年4月1日より施行された。独立行政法人はその業務の特性によって中期目標管理法人、国立研究開発法人、行政執行法人(従前の特定独立行政法人に対応)の3つに区分されることとなった。
  5. STAP細胞問題とブラック企業化する特定国立研究開発法人-裾野削り地盤沈下する日本の科学技術 (BLOGOS 2014年03月26日)