Monthly Archives: December 2015

113番目の元素の発見で理研が命名権を獲得

113番目の元素の発見者は日本の理研と認定される見込みで、命名権の獲得により「初めての日本発の元素」が誕生します。

原子番号113の元素にはウンウントリウム (ununtrium) という仮の名称が与えられています。理化学研究所の森田浩介博士らのグループは線形加速器を用いて亜鉛(原子番号30)をビスマス(原子番号83)に衝突させる実験を行い、1個のウンウントリウムの合成に初めて成功し2004年9月28日に発表しました。その後も研究を続け、2005年、2012年とこれまでに合計3個のウンウントリウム検出に成功していました。2012年の成果によって日本初の新元素発見が確定したと思われたにも関わらず、ロシア=アメリカ共同研究グループとの先取権獲得競争もあり、国際的な認定が今の今まで見送られてきました。

産経新聞の報道によれば、理研による113番元素の発見がようやく国際的に認定される運びとなり、日本(理研)がこの新しい元素に対する命名権を獲得することが確実になりました。

審査は新元素を認定する国際純正・応用化学連合(IUPAC)と、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の合同作業部会が実施。関係者によると、作業部会は理研を113番元素の発見者として承認する報告書を化学連合側に提出した。物理学連合側の同意を踏まえて正式決定する。日本初の新元素、国際認定へ 理研に113番の命名権、「ジャポニウム」有力 産経新聞 2015.12.26

Japanese discovery of element 113 – Periodic Table of Videos

元素の周期表には百十数個の名前が並んでいますが、これまでに日本で命名された元素は一つもありません。

The NEW Periodic Table Song (Updated)

原子番号113番の元素ウンウントリウム (ununtrium) (仮称)に対して、ついに、日本にゆかりのある名前が与えられることになります。

理研の仁科芳雄博士は昭和15年、93番が存在する可能性を加速器実験で示したが検出できず、直後に米国が発見。その加速器は戦後、原爆製造用と誤認した連合国軍総司令部(GHQ)によって破壊されてしまった。113番は仁科博士の研究を受け継ぐチームが発見したもので、雪辱を果たした形だ。日本初の新元素 悲願100年、米露独の独占崩す 産経新聞 12月26日

参考

  1. Ununtrium (Wikipedia)
  2. 日本初の新元素、国際認定へ 理研に113番の命名権、「ジャポニウム」有力 (産経新聞 2015年12月26日)
  3. 日本初の新元素 悲願100年、米露独の独占崩す (産経新聞 2015年12月26日 長内洋介)
  4. 【祝!のはずでした…】113番目の元素 命名権を日本の理化学研究所が獲得!?(日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ 2015年08月17日 雨宮崇):”つい先日の2015年8月12日、日本の科学史に残るビックニュースが発表されました!…いえ、【されるはずでした】。。。どんなビックニュースを期待していたかというと、「113番目の元素の命名権を、理化学研究所の研究グループが獲得!」というニュースです。もし現実になったら日本の科学史に残る快挙だったこのニュース。先日まで韓国で開かれていた国際学会で、「命名権がどの研究グループに与えられるか」が決まるはずだったのですが、どうやら今回は決まらず、次回以降の会議に持ち越されるようです。”
  5. 【祝・新元素発見】理研が113番元素の合成に成功!(文部科学省):”理研・仁科加速器研究センターの森田浩介准主任研究員らのグループが長年取り組んできた新元素合成の実験で、新たな成果が生まれました!2004年、2005年に続き、今年8月に3度目の合成とその新たな崩壊経路を確認することに成功しました。これは、新元素の発見の「確定」につながる成果であります。今回の合成は、実に7年ぶりの成功であり、実験開始からこれまで、元素合成のために原子を衝突させた回数は100兆回を超えます。”
  6. 新元素113命名権獲得へ近づく (日本化学会 2012年9月27日):”理化学研究所(野依良治理事長)は26日、新たに3個目の113番元素同位体の合成に成功した、と発表した。理化学研究所の仁科加速器研究センターの森田浩介准主任研究員らのグループが合成、崩壊経路を確認、27日の日本物理学会英文誌「Journal of Physical Society of Japan」オンラインに掲載される。野依理事長は「理研ではこれまでにも2個の113元素の同位体を合成しているが、今回の成果は従来の2個とは異なる崩壊経路を辿り、既知核に到達したことを確認した。これは新元素発見の証拠を一段と盤石とする成果で、元素命名権の獲得に大きく近づいた。周期表には多くの元素が載っているが、これまでに日本が命名した元素はない。命名権を取得し、周期表に日本発の元素をぜひ載せたい」と述べている。”
  7. Element 113 Uncovered by Japanese Scientists: “Ununtrium”
  8. Element 113: Ununtrium Reportedly Synthesized In Japan (Huff Post 09/26/2012)
  9. Search for element 113 concluded at last (RIKEN Press Release, September 27, 2012)
  10. Science mini-story (2) ~日本発・113番元素登場~ (有機化学美術館):”ちなみに今回の113番元素はすでに2004年2月にロシアチームが発見を報告していますが、これは証拠不十分で確定的とはいえないデータです。今回の理研の場合は1原子だけの結果とはいえ信憑性の高いデータであり、今後再現性が確認できれば日本チームに命名権が与えられる可能性は十分あると思われます。”
  11. 新元素113番 (理化学研究所 仁科加速器研究センター):”RILACによって加速された亜鉛イオンをビスマスに衝突させました。80日間にもおよぶ連続照射実験を続け、1個の113番元素が合成されました。新元素の発見は、目的とする原子核のできる確率が極端に小さいためとても困難です。世界中でその発見を競っています。113番元素の場合、原子核同士を100兆回も衝突させる必要がありました。”
  12. 新発見の113番元素 (理化学研究所 2004年9月28日):”今回、合成された原子核は1個です。この原子核は合成されるや否や、連続した4回のアルファ崩壊とそれに引き続く自発核分裂によって崩壊しました。この一連の崩壊の寿命および崩壊エネルギーなどから、原子番号113 (質量数278の278113)の原子核が初めて合成されたと結論付けられました。 今後、複数合成して再現性を確かめるなどして、今回のデータを補強すれば、将来、113番元素の命名権があたえられる可能性があります。その場合、周期表に歴史的な成果として、明確に足跡を残すことになります。… 113番元素については、今年2月にロシアの研究所が、「115番新元素の原子核(質量数、288と287)の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113、質量数284と283の原子核も発見した」と発表していますが、崩壊連鎖が既知の原子核まで到達していないため、現在はこれら115番、113番元素の命名権を獲得するに至っていません。ロシアのフレロフ核反応研究所のグループでは、実験データを積み重ね、より確かなものにしようとする努力が払われています。ただすべての崩壊の連鎖が未知の自発核分裂で終わっており、純粋実験的に原子番号Zと質量数Aを決めることができないのが現状です。元素に命名権を与える、国際純粋応用物理学連合(IUPAP; International Union of Pure and Applied Physics)と国際純正応用化学連合(IUPAC;International Union of Pure and Applied Chemistry)の合同ワーキンググループの報告によれば実験結果はかなり確実であるとしながらも既知核への連結がないことをもって、いまだ命名権を与えるに至っていないと報告しています。”
  13. Ununtrium – Video Learning – WizScience.com (https://www.youtube.com/watch?v=BtbHCb0WB8g): “The first report of ununtrium was in August 2003, when it was identified as an alpha decay product of element 115, ununpentium. These results were published on February 1, 2004, by a team composed of Russian scientists at Dubna , and American scientists at the Lawrence Livermore National Laboratory”

研究費2億2000万円を阪大教授が不正経理

2017年10月25日追記

結局、大阪大学を解雇された教授は、不起訴処分になりました。

大阪大大学院情報科学研究科の元教授(54)=懲戒解雇=らが研究費を不正使用したとされる問題で、元教授が大阪府警に背任容疑で書類送検され、大阪地検が不起訴処分としたことが24日、分かった。処分は同日付で、地検は理由を明らかにしていない。
(背任容疑の阪大元教授不起訴=偽装取引で研究費不正-大阪地検 時事ドットコムニュース 2017/10/24-19:37)

 

2016年2月12日追記

大阪大学は2016年2月12日、大学院情報科学研究科の教授を懲戒解雇しました。

2015年12月28日追記

大阪大学が不正調査結果の資料(2015年12月25日付け)を、2015年12月28日に大学ウェブサイト上で公表しました(2016年2月20日の時点で既にリンク切れになっていることを確認)

大阪大学における公的研究費の不正使用について (大阪大学 2015年12月28日)
大阪大学の研究者等における公的研究費の不正使用の概要について (PDF)
大阪大学における公的研究費の不正使用に係る調査結果 (PDF)

私的流用とみなされた会社設立費用66万円及びこの会社の設立目的に関してですが、この報告書によれば、

 A教授は、A研究室等に在職しているような雇用期限のある研究補助員等に安定した雇用の場を確保するなどの目的で会社設立を考え、A教授の提案により、平成24年12月に設立したZ設立会社の代表取締役であり、A教授の研究プロジェクトの関係者が、A教授と共謀して、A研究室内で作成した実験材料(リボソーム(高純度品))をZ設立会社において作成したものと偽装して、W社に販売し、それをA研究室がW社から購入するという手法により、A教授及び同関係者が拠出していたZ設立会社の設立に必要な経費等を捻出するために大学から不正に公的研究費を支出させたことが認められる。
 また、同実験材料の作成にあたって、A研究室にあった材料及び設備を使用していること、購入手続きが平成25年1月に2回、その額は661,500円であることが確認できた。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b 2016年2月20日の時点でリンク切れになっていることを確認)

と説明されています。

この資料によると預け金の未使用分の金額が170,355,116円であり、この1億7千万円がどう使われるはずだったのかが疑問として残ります。今回の不正を通報した人は、設立会社にこのお金が流れたのではないかという疑いを持っていたそうですが。報告書では、

【預け金の移し替えの疑い】③通報者から情報提供のあった、預け金の残額を設立会社に移し替えられたのではとの疑いについては、A教授、設立会社及び預け金のあった取引業者3社の証言及び証憑書類等により、預け金の移し替えの事実がないことを確認した。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b)

と否定しています。

この報告書には各財源の総額がそもそもどれくらいだったのかすら記載されておらず全体像が見えません。預け金(架空請求)は平成16年度をもって止めていたということですが、1億7千万円もの大金の出所は何なのでしょうか?

…平成16年度以前の大学等支払い期間側の支払い関係書類は既に保存期限が到来したため廃棄されており、… 書類保存期限超過のため詳細は不明であるが、取引業者3社に残されている170,355,116円の預け金を確認した。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b)

 

 

初回投稿記事ここから * * * * * * * * * * * *

 

四方哲也 大阪大学大学院情報科学研究科教授が研究費の不正な経理処理を行っていたことが明らかになりました。不正に処理されていた金額は、JSTでの研究費と阪大での研究費を合わせると少なくとも2億2000万円に上るそうです(参考:時事通信社)。

大阪大学によりますと、不正な経理処理を行っていたのは大阪大学大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人です。不正に関する情報が寄せられたことから、大学が調査委員会を設けて調査した結果、四方­教授らは、10年以上前から架空の取り引きで複数の業者から物品を購入したように装う­などして支払われた研究費を、業者に預ける「預け金」と呼ばれる不正な経理処理を行っ­ていたということです。業者に保管されていた金額は合わせて1億7000万円余りに上­るということです。また、66万円の研究費の私的流用もあったということで、大学は、­関係者の処分や刑事告訴を検討することにしています。(大阪大学 教授など3人が不正経理処理 処分を検討 NHKニュース https://www.youtube.com/watch?v=uJ2QgKWEk1g)

大阪大学大学院教授 1億5000万円余の不正経理か
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多くの報道では私的流用もあったとしていますが、本人は否定しています。

四方教授は大学側の調査に「預け金を作る指示をしたことはない。66万円は会社設立のためで私的流用ではない」と説明したという。時事ドットコム 2015/12/25-23:45

総額のうち66万円は、学内で作製した実験材料を教授が設立に関わった企業が製造したと偽り、最終的に大学が購入する形にして代金を支払っていた。大学は、このケースは私的流用にあたると判断している。(阪大不正経理2.2億円 教授や名誉教授ら3人 読売新聞 YOMIURI ONLINE2015年12月26日)

また実験材料の偽装取引に用いた会社の設立費用約66万円は私的流用と認定し、詐欺罪で大阪府警への告訴を検討している。研究費2億7400万円、阪大院教授ら3人が不正経理 産経ニュース 2015.12.26 08:51

大阪大学教員基本情報によれば、この教授は長期にわたってJSTの研究員・研究リーダーも務めていました。

1997年10月~2000年09月 科学技術振興事業団さきがけ21研究員
2000年10月~2003年09月 科学技術振興事業団さきがけ21研究員
2004年11月~2010年03月 科学技術振興機構・ERATO 金子複雑系生命プロジェクト・グループリーダー
2009年10月 ~       科学技術振興機構・ERATO 動的微小反応場プロジェクト・統括

科学技術振興機構(JST)の研究費に関する不正については、調査結果が科学技術振興機構(JST)のウェブサイトで公開されています。

(2)不正使用と認定した事業名および不正使用額
①     事業名     戦略的創造研究推進事業(総括実施型研究)
研究実施期間     平成16年度~21年度
不正使用額     85,246,405円
不正認定期間     平成16年度~20年度
②     事業名     戦略的創造研究推進事業(個人型研究)
研究実施期間     平成14年度~17年度
不正使用額     7,918,550円
不正認定期間     平成16年度~17年度

(3)不正使用の内容
上記事業の直執行研究費に関して、平成16年度~20年度までの期間に、取引先企業3社で合計93,164,955円の預け金および品名替があったことが判明した。
なお、私的流用は確認されなかった。

①当事者
四方 哲也 大阪大学 大学院情報科学研究科 教授(元JSTプロジェクトグループリーダー)(以下、A元グループリーダーという)
B 元JSTプロジェクトスタッフ

②関与した取引先企業
a.W社
1)    期間    :平成16年度~20年度
2)    不正使用額    :71,904,875円
3)    種別    :預け金および品名替
4)    内容    :消耗品の架空請求および伝票記載と異なる消耗品などの納入
b.X社
1)    期間    :平成16年度
2)    不正使用額    :11,321,620円
3)    種別    :預け金
4)    内容    :消耗品の架空請求
c.Y社
1)    期間    :平成16年度
2)    不正使用額    :9,938,460円
3)    種別    :預け金
4)    内容    :消耗品の架空請求
(平成27年12月25日 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業に係る研究費の不正使用調査結果について 別紙1)

税金が原資である公的研究費が2億円以上も不正に利用されていたというのであれば、納税者である国民に対して大阪大学が事の顛末を直接説明すべきです。本来であれば大阪大学は不正調査結果の詳細をウェブサイト上で速やかに公表すべきであるにもかかわらず、該当教授が所属する大阪大学大学院情報科学研究科」のウェブサイトをシャットダウンするという真逆の対応をしています。(追記:2016年1月5日に情報科学研究科のウェブページにアクセス可能になっていましたが依然として「教員一覧」のリンクがつながっていません)。

(追記) 大阪大学は2015年12月28日になってようやく調査結果(12月25日付け資料)をウェブサイトで公表しました。

20151228OsakaDaigaku

 

参考

  1. 华东师范大学 计算机科学与软件工程学院 四方哲也
  2. 大阪大学における公的研究費の不正使用に係る懲戒処分について(大阪大学 2016年2月12日)
  3. 阪大教授を懲戒解雇 (毎日新聞2016年2月12日):”大阪大教授ら3人が総額2億7500万円の研究費を不正に経理処理していた問題で、阪大は12日、大学院情報科学研究科の四方(よも)哲也教授(52)を懲戒解雇した。…”
  4. 大阪大学における公的研究費の不正使用について (大阪大学 2015年12月28日) 大阪大学の研究者等における公的研究費の不正使用の概要について 大阪大学における公的研究費の不正使用に係る調査結果(2016年2月20日の時点で既にリンク切れになっていることを確認)
  5. 戦略的創造研究推進事業に係る研究費の不正使用調査結果について (科学技術振興機構(JST)平成27年12月25日 科学技術振興機構報 第1160号):別紙1 不正使用調査結果詳細
  6. 繰り返される研究費不正~単年度主義のせい?(ヤフーニュース 榎木英介 2015年12月26日 12時3分):”「預け金」とは何か “取引のある卸の業者などに頼んで、様々な物品を購入したことにして予算を使い切ったことにしておく。しかし実際には使っていないから、年度をまたいでも研究費が残るという仕組みである。”
  7. 阪大不正経理 最大2.7億円 教授ら3人関与 (毎日新聞2015年12月26日 00時38分):”大阪大大学院教授が研究費を不正に経理処理していた問題で、不正処理の総額が最大で約2億7500万円に上る可能性があることが分かった。25日、阪大が記者会見して明らかにした。関わったのは大学院情報科学研究科の四方(よも)哲也教授(52)ら3人。うち66万円は四方教授が私的に流用した疑いがあり、懲戒処分や詐欺容疑での刑事告訴を検討している。ほかの2人は、7年前に退職した大学院工学研究科の卜部格(うらべいたる)元教授(70)と50代の男性元助手。 “
  8. 阪大不正経理2.2億円 教授や名誉教授ら3人 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年12月26日):”不正を行っていたのは、教授と工学研究科の名誉教授(70)、50歳代の元助手。3人は2002年3月末までともに同科に所属していた。…教授は名誉教授のもとで助教授を務めた後、情報科学研究科に移った。”
  9. 阪大院教授ら、研究費2億円以上不正処理か(TBS News 12月25日20:17):”大阪大学によりますと、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人は、大阪大学や科学技術振興機構からの研究費のうち、使い切らなかった分を物品を購入している取引業者に預けるなどの方法で、最大およそ2億7500万円を不正に経理処理していた疑いがあるということです。”
  10. 阪大教授ら研究費不正=「預け金」など2億円超―大学、刑事告訴を検討 (excite.ニュース/時事通信社 2015年12月25日 23時45分):”大阪大は25日、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人が、物品を購入したように装い業者側に現金をプールさせる「預け 金」を行うなどし、2014年度までに少なくとも研究費約2億2000万円を不正使用していたと発表した。同大は刑事告訴や業者への返還請求を検討する。 同大によると、関与していたのは四方教授と大学院工学研究科の卜部格・元教授(70)、50代の元助手。”
  11. 大阪大学 教授など3人が不正経理処理 処分を検討 (NHK NEWS WEB 12月25日 18時31分):”大阪大学は、大学院の教授など3人が10年以上前から物品を購入したように装うなどして研究費を業者に預ける不正な経理処理を行っていたとする調査結果を発表しました。業者には1億7000万円余りが保管されていたということで、大学は処分などを検討することにしています。これは25日に大阪大学が記者会見して発表しました。それによりますと、不正な経理処理を行っていたのは大阪大学大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人です。”
  12. 阪大教授ら3人研究費不正 1億円超、業者に預け金 (ライブドアニュース/共同通信 2015年12月25日):”大阪大(大阪府吹田市)は25日、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)と大学院工学研究科の元教授(70)、元助手の3人が研究費1億446万円を不正使用していたと確認したと発表した。取引業者に内容不明の約1億7千万円も預けており、不正使用分と重複する可能性があるとしている。大阪大によると、不正使用の時期は10年以上前から2014年10月にかけてで、対象には科学技術振興機構の研究費約9300万円や大学の運営費交付金などが含まれる。”
  13. 阪大院教授、1億5000万円 一部私的流用か(毎日新聞 2015年12月25日):”大阪大大学院の50代の男性教授が10年以上前から、研究費を不正に経理処理した疑いがあることが25日、大学などへの取材で分かった。不正処理は少なくとも1億5000万円に上り、科学技術振興機構(JST)の研究費も含まれる。一部は私的に流用されたとみられ、大学は刑事告訴や処分を検討している。 “
  14. 阪大教授が1億5千万円不正経理か 10年以上、一部は私的流用(産経WEST2015.12.25):”大阪大大学院情報科学研究科の50代の男性教授が、10年以上にわたって不正な経理処理を行っていた疑いを持たれていることが、25日、大学への取材でわかった。業者に研究費を預けるなどの手口で、不正経理は少なくとも1億5千万円にのぼり、一部は私的に流用していたという。”
  15. JST、四方哲也・大阪大学教授研究費不正問題で9300万円の不正確認 私的流用はなし(クリスチャントゥデイ 2015年12月25日17時18分):”不正が行われたのは、研究者の要求に基づき、JSTのスタッフ自らが経理処理し研究費を執行する「戦略的創造研究推進事業の直執行」の研究費。現在は制度の改正に伴い廃止され、研究機関での執行(委託研究)に移行しているという。”
  16. 阪大院教授が不正経理か 研究費1億5000万円 (日本経済新聞 2015年12月25日):”昨年、不正に関する情報が寄せられたことから、同大学が調査委員会を設けて調査していた。”
  17. 公的研究費の不正使用防止への取組 (大阪大学)stopkenkyuhifusei
  18. 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(ERATO) 金子複雑系生命プロジェクト(研究期間2004年11月~2009年10月):構成的生物学実験グループリーダー 四方哲也 実施場所 大阪大学
  19. 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(ERATO) 四方動的微小反応場プロジェクト(研究期間2009年~2014年):研究総括 四方哲也 大阪大学大学院情報科学研究科教授
  20. 大阪大学研究者総覧 研究者詳細 教員基本情報 情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 四方哲也(YOMO Tetsuya)
  21. ERATOの沿革:” 昭和56年(1981年)に創造科学技術推進事業(Exploratory Research for Advanced Technology;ERATO)が発足しました。その後、第2期科学技術基本計画や総合科学技術会議の推進戦略など、新しい時代の要請を踏まえ発展的 に解消し、平成14年度(2002年度)より戦略的創造研究推進事業・総括実施型研究(ERATO)として新たなスタートを迎えました。”
  22. ERATO:”以下の骨子をもってプログラムが運営されている。研究期間:約5年間 研究費:15億円を上限とした必要額” (ウィキペディア)
  23. ERATO 戦略的創造研究推進事業 2015-2016:研究期間 約5年間 研究費 12億円を上限とした必要額
  24. 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ) 追跡評価用資料 (追跡調査報告書) 研究領域「形とはたらき」 (1997~2002) 研究総括  丸山工作
  25. 【社会】大阪大学大学院教授 1億5000万円余の不正経理 一部は私的に流用か(2ch.net)

東芝 過去最大5500億円の赤字、7800人リストラへ

東芝の来年3月期の1年間のグループ全体の決算は、最終損失が5500億円の 赤字になる見通しだそうです。これはリーマンショック後の平成21年3月期に計上した3900億円余りの赤字を大きく上回ており過去最大の赤字です。 6800人の早期退職や配置転換に加えて、新たに本社部門でも1000人のリストラが行われるとのこと。

東芝の赤字5000億円規模 リストラ費用膨らむ見通し(15/12/21)

参考

  1. 東芝 7800人リストラ 過去最大の赤字見通し(NHKNEWSWEB 12月21日)
  2. 東芝歴代3社長の刑事告発検討 証券監視委、消極姿勢から一転 (産経ニュース 2015.12.4):”東芝の利益水増し問題で、田中久雄前社長ら歴代3社長がパソコン事業の不正取引を認識しながら虚偽の利益を計上させた疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑での刑事告発を視野に調査していることが3日、市場関係者への取材で分かった。”
  3. 東芝「粉飾決算」問題 メディアが報じない金融庁の「不正見逃し」疑惑と処分の行方〜なぜ、誰もが消極的なのか (現代ビジネス ニュースの深層 高橋 洋一 2015年10月05日 )
  4. 東芝不正会計、「甘すぎる」処分の真相 すべて予め決められたシナリオ (BUSINESS JOURNAL 小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」2015.10.04):”この初春に始まり、西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社 長の歴代3社長辞任、さらには第三者委員会の調査報告書公表でも収集がつかず、世間を騒がせた東芝の不正会計・粉飾決算問題。”
  5. 東芝3社長、辞任後も車&部屋付きの厚遇 上司に「おかしい」といえぬ社風変わらず… (産経ニュース2015.9.21):”8月下旬、複数の経済誌や週刊誌が東芝の利益水増し問題で引責辞任したはずの西田厚聡氏や佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長が社用車で浜松町の本社に出勤していると報じた。”
  6. 東芝の不正会計、半導体で行われていたこと 工業会計のプロが図表入りで徹底解説  (東洋経済ONLINE 本間 峰一 2015年09月19日):”東芝の不正会計事件では、当初に発覚した工事進行基準の手口ばかりが注目を集めているが、それをしのぐ金額の不正会計 が行われたにもかかわらず、パソコン事業と半導体事業ではどんなカラクリで不正が行われたのかが正確に伝わっていない。”
  7. 東芝不正会計の温床は、「選択と集中」にあり(PRESIDENT 大前研一の日本のカラクリ 2015年9月1日):”インフラ事業に端を発する東芝の不正会計問題は、パソコン、テレビ、半導体などの主要事業でも利益の 水増しが判明して、社長以下の組織的関与が明るみに出た。第三者委員会の調査報告書によれば、2008年4月から14年12月までの約7年間に行われた利 益の過大計上の総額は1518億円。”
  8. 東芝、不正1千億超でも“甘い”処分?ライブドアは“たった”53億粉飾で経営陣逮捕 (Business Journal 関田真也 2015.07.29):”東芝の不正会計をめぐる問題が、ライブドア事件と比較されるかたちで話題になっている。東芝が行った利益の過大計上は、現段階で総額1562億円に上り、さらに2000億円近くに達するのではないかといわれている。”

早石修 (1920年1月8日-2015年12月17日)

目の前にあるのに見えていない…でもそれが何かの拍子に見える。一回見え出すと、どんどん見えてくる。そういうもんなんですね。研究というものは。いろんな事が発見される時、それまで誰もが見てたんですが、見とって見えていない…ボヤっと見ているからね。事実はそこにチャントあるんですが、ボヤっと 見とると解らない。だけど、ちゃんと焦点を当ててみると初めて見えてくるし、それが如何に大事なものかが解って、それにまつわるいろんな事が見えてくる。見えてたけれど認識できてなかった。それに気がつくということが研究ですから、実際「鈍」じゃないとアカンのです。あんまり賢いと…何でも自分で解った気になってしまうからね。教科書読んで納得してしまったら、それで終いでしょ。何ら新しい発見に繋がらない。研究の本質 早石修)

参考

  1. われら六稜人【第26回】科学を志す人のために 早石 修 INDEX 第1研究室:    恩師に学んだ教育の姿勢 第2研究室:    大学の選び方… 第3研究室:    握り飯より柿の種? 第4研究室:    焼跡で始めた生涯の研究 第5研究室:    WHATではなくてHOW 第6研究室:    ランチセミナールの効用 第7研究室:    研究は探偵小説?! 第8研究室:    睡眠に賭けた第二の人生 第9研究室:    研究の本質 第10研究室:    研究者の向き/不向き
  2. Osamu Hayaishi: Pioneer First of the Oxygenases, then the Molecular Basis of Sleep and Throughout a Great Statesman of Science (Arthur Kornberg IUBMB Life, 58(5-6):253, May-June 2006)
  3. Osamu Hayaishi—from the discovery of oxygenases in soil microorganisms to unraveling the enigma of sleep in mammals (Michael Lazarusa, Zhi-Li Huangb & Yoshihiro Uradea. Temperature Volume 2, Issue 3, 2015  DOI:10.1080/23328940.2015.1072658)
  4. Pioneering the Field of Oxygenases through the Study of Tryptophan Metabolism: the Work of Osamu Hayaishi. Studies on Oxygenases. Enzymatic Formation of Kynurenine from Tryptophan (Hayaishi, O., Rothberg, S., Mehler, A. H., and Saito, Y. (1957) J. Biol. Chem.229,889–896)
  5. 睡眠の謎に挑む 早石修先生インタビュー 2012年
  6. 京大名誉教授の早石修さん死去 「酸素添加酵素」を発見 (朝日新聞DIGITAL 2015年12月19日):”体の中で重要な働きをしている「酸素添加酵素」の発見などで世界的に知られる京都大名誉教授で、文化勲章受章者の早石修(はやいし・おさむ)さんが17日、死去した。95歳だった。”
  7. 早石教授時代[昭和33(1958)年3月22日~昭和 58(1983)年4月1日]:”昭和33(1958)年3月に,早石 修は9年余の滞米研究生活ののちに,酸素添加酵素の発見という輝かしい研究業績を携えて,京都大学医学部医化学講座の教授として帰国した。”

Nature Communicationsが差読内容公開

通常、投稿論文の査読内容が公開されることはありません。しかし、査読システムの透明性を高めるために、学術誌によっては差読者のコメントおよび論文執筆者と編集者とのやりとりなどを公開する動きがごく一部ながらあります。ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌は2016年1月から、論文著者が了解すれば査読内容等を公開することになりました。

as a trial, we will be publishing all reviewer comments to authors and author rebuttal letters for published papers submitted from January 2016, unless the authors ask us not to. (doi:10.1038/ncomms10277)

このような試みはNature Communicationsが初めてではありません。数年前からEMBO journalでは、例えばPeer Review Process File -EMBO-2015-92116(PDF)といった形でレフェリーのコメントやそれ対する論文著者らのレスポンスを公開しています。

参考

  1. Transparent peer review at Nature Communications (Nature Communications 14 December 2015 doi:10.1038/ncomms10277)
  2. EMBO journal introduces transparent peer-review (blogs.nature.com 05 Jan 2009):”Beginning with manuscripts submitted in 2009, a supplementary process file will be included with the online publication of papers. “
  3. What is open peer review? (F1000Research 21 May 2014)

武田薬品が10年間で200億円を京大CiRAに提供

傷害誘導筋細胞由来幹細胞様細胞iMuSCs

Injury induced population of muscle-derived stem cell-like cells (iMuSCs)

かつてSTAP細胞の論文を掲載し取り下げたネイチャー誌を発行するネイチャー・パブリッシング・グループのオープン・アクセス・ジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」にCharacterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells“(doi:10.1038/srep17355)と題する論文が2015年11月27日に発表されました。筋肉を傷付けたあとで取り出して培養すると、筋肉に分化していた細胞が脱分化して多能性を獲得した細胞(iMuSCs)ができたという内容です。

IMuSCsFig1a

“changes in microenvironmental factors, such as skeletal muscle with injuries, can partially reprogram terminally differentiated myogenic cells into a pluripotent-like state”doi:10.1038/srep17355)

“the most remarkable discovery of this study was that iMuSCs fulfilled several in vitro and in vivo criteria for pluripotency; however, we could not obtain iMuSCs with germline transmission after blastocyst microinjection.” doi:10.1038/srep17355)

参考

  1. 米研究者が「STAP細胞」の再現に成功!?対象も方法も結果もまったく異なる研究。1万歩譲っても「研究不正」は揺るがない(Medエッジ 2015年12月13日 粥川準二 寄稿)
  2. 繰り返し言う~研究不正と「STAP現象」ありなしは別次元の問題榎木英介  | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー 2015年12月13日

新型出生前診断をめぐりダウン症生活実情調査

厚生労働省研究班が新型出生前診断ダウン症がある人の生活の実情を把握する大規模調査を開始

2013年に臨床研究として導入された新出生前診断をめぐり、厚生労働省研究班は8日までに、検査対象疾患の一つとなっている、ダウン症がある人の生活の実情を把握する大規模調査を始めた。本人や親らを対象に、就学や就労の状況、どんなことに幸せを感じているかなどの質問に回答してもらう。(ダウン症ある生活、大規模調査 新出生前診断で厚労省 共同通信 2015年12月8日)

DEAR FUTURE MOM | March 21 – World Down Syndrome Day | #DearFutureMom

参考

  1. 厚生労働省研究班が新型出生前診断をめぐりダウン症がある人の生活の実情を把握する大規模調査を開始 (公益財団法人 日本ダウン症協会 2015/12/08)

梶田 東大宇宙線研究所長がノーベル賞受賞講演

2015年ノーベル物理学賞を受賞する梶田隆章・東大宇宙線研究所長(56)は、12月8日にストックホルム大で受賞記念講演を行いました。

2015 Nobel Lectures in Physics (14:20-開始、19:24-二人の受賞者の紹介、22:25-梶田隆章教授の講演、53:51-Arthur B McDonald教授の講演)

参考

  1. “Takaaki Kajita – Facts”. Nobelprize.org. Nobel Media AB 2014. Web. 8 Dec 2015.
  2. 梶田隆章さんの記念講演要旨 ノーベル物理学賞受賞 (西日本新聞 2015年12月08日)
  3. 梶田さん「宇宙解明手掛かりに」 – ノーベル賞記念講演 (マイナビニュース・共同通信 2015/12/08)

シリア考古学会議でハレド・アサド氏を追悼

2015年12月3日~6日、レバノンの首都ベイルートでシリア考古学会議(the International Syrian Congress on Archaeology and Cultural Heritage)が開催されました。世界各国から考古学者が集まったこの会議では、今年8月18日にイスラム国(ISIS)に殺害されたハレド・アル・アサド氏に対して黙祷が捧げられました。パルミラ博物館長だったハレド・アル・アサド氏は、工芸品などの貴重な文化財をイスラム国の手から守るために安全な場所に移動させており、尋問されてもその場所を明かさなかったために殺害されました。

ハレド・アサド氏は身に迫る危険を知りつつもパルミラに残ることを選びました。
ISIS beheads scholar archaeologist Khaled al-As’ad in Palmyra

古代ペルシャの町を紹介したドキュメンタリー番組(41:07- Palmyra)。
ANCIENT CIVILIZATIONS Ancient Persia and Arabian Peninsula

参考

  1. Profile: Khaled al-Asaad, Syria’s ‘Mr Palmyra’ (BBC NEWS 19 August 2015):Khaled al-Asaad, the archaeologist who has reportedly been killed by Islamic State militants, had a lifelong connection to the town, having been born into a prominent family in the area in 1934.
  2. 考古学者82歳、IS(イスラム国)に斬首される パルミラ遺跡を守り続け (ハフィントン・ポスト 2015年08月24日)
  3. Beheaded Syrian scholar refused to lead Isis to hidden Palmyra antiquities (The Guardian 19 August 2015):Khaled al-Asaad, 82, was interrogated by militants for a month before he was murdered in the ancient city
  4. パルミラ守った志、継ぐ ISが殺害、学者アサド氏 日本にゆかり、研究者ら悼む (朝日新聞DIGITAL 2015年12月7日)(記事閲覧は要登録)
  5. 日本西アジア考古学会 お知らせ International Syrian Congress on Archaeology and Cultural Heritageプログラム

 

再利用可能なロケットの着陸に成功

通常はロケットは打ち上げのときに一度きり使われてきましたが、2015年11月23日に、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが設立した企業ブルーオリジンが、再利用可能なロケットの着陸に成功しました。これによりロケット打ち上げのコストが劇的に削減される可能性があります。
‘There and back again’ – Amazon founder has success with reusable rocket

参考

  1. Blue Origin