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2008年12月 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 記録全文 『今こそ示そう科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題-

  2013/12/29    論文データ捏造

分子生物学会はここ数年間にわたって研究不正問題に取り組んできました。2008年の年回において若手教育シンポジウム「今こそ示そう科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題」の司会進行役を務めていたのが東京大学加藤茂明教授(2012年辞職)でした。 この時点ではまだ加藤茂明研究室の不正は世に知られておらず、当時大きな問題になっていたのは、大阪大学の杉野明雄教授による論文捏造事件でした。2008年のこのシンポジウムの内容の詳細は公表されています(PDFリンク)。データ捏造に関して深く議論されており、論文不正問題を考える上での貴重な資料になります。 研究費を私的に流用すればもちろん犯罪ですが、データ捏造論文をバレた後で撤回し公的な研究費を無駄にしても、研究者が賠償責任を問われたとか法で裁かれたという話は聞きません。せいぜい辞職するなり解雇されるなりしてお終いのようです。科学者から見た場合、科学研究における不正行為は一体どれくらい悪いことなのでしょうか? やっぱり科学における犯罪ですよね、不正は。(柳田)(13ページ) 真理の探究という崇高な目的のために生きているはずの科学者がなぜデータ捏造という考えられないような不正行為に手を染めてしまうのか?データ捏造が発生するメカニズムをまず理解する必要があります。これに関しては、このシンポジウムで夏目徹氏がまるで捏造の瞬間を実況中継しているかのように、非常に臨場感溢れる解説をしています。 捏造というのは4つのパターンに分類されます。基本的には、まずボトムアップ型というのが非常に基本的ですね。ボトムアップ出来心。あなたが実験をやったとします。「ここに、バンドが出ればなぁ…」、「この濃淡がひっくり返ってくれたらなぁ…」なんて思いながらですね、ついデータをいじってまった。これは全く遊びでやったんですけども、やってるうちに何か妙に熱中してくるんですね。「この濃淡、意外に自然じゃないか」とかですね。悪いことにですね、それをボスに見つかっちゃうんですよ。「お、A君、やったな、とってもいいじゃないか」、「いや、先生これは…」、「よくやったな。君はいつかやってくれると思ってたんだ」、なーんてやってるうちにデータが一人歩きしてですね、言い出せなくなってしまう。で、それがパブリッシュされる。それがたまたま某プレミアムジャーナルで、記者会見までしてしまって・・・。最悪のパターン。これはボトムアップ出来心型という、一番レベルの低い捏造です。 レベル2というのはですね、ボトムアップ確信犯型というやつですね。レビューアーから「確かめの実験をしなさい。ここの再現性をもう少し見なさい」、あるいは「このデータは数値が少し差が少ない。もう一回確認しなさい」。これはもう何回やったって同じだと。でもしょうがないからやろう。やろうと思ったんですが、それをやるにはですね、抗体が要るんですが、「あっ、抗体が切れてる。ストックが尽きた。しょうがない、ハイブリドーマを起こさなきゃいけないな」。そしたらですね、もう正月休みだったんですね。正月返上で、レビューアーが、「リバイズしなさい」。誰もいない正月の研究室で、ストックを開けてみたらですね、液体窒素が切れてるんですよ。(笑)ハイブリドーマ全滅。どうしようと途方に暮れてる時に除夜の鐘がボ~ンなんて鳴ってね。僕がやったんじゃないですよ。そこで、ですよ。ところが、それで仕方ないと途方に暮れてエクセルに向かってですね、カシャカシャ…。そこに立ち話をしにボスが来たっていうのも知らないのに、やってしまった。というのもあるんですね。これがボトムアップ確信犯型です。どうせバレない。これは非常にたち悪いです。最近ハイテク化したので、こういうのをほぼ生業としているプロの方もいらっしゃって、皆さん「えっ?!」と思うような、ものすごい手口があるんです。それはなかなか見破られません。 それから、次のレベル3は、もっとたち悪いですね。ボトムアップがあるということは、当然トップダウンもあるんですね。トップダウン恫喝型というのがありますけれども。これはですね、ボスが非常に思い込みの激しい情熱家だったりする場合が多いんですけども、このストーリーの実験でこういうデータが出るまで絶対許さない。データを出さない限りは家にも帰っちゃだめ。全くコントロールと差のないデータを先生に出しても、「心の目で見てみろ」とすごいことを言われて… 泣く泣く捏造に近いことを、なかば強制される。恫喝される。これをトップダウン恫喝型って言うんですね。で、これはレベル3です。 レベル4はどういうやつだと思いますか? トップダウン洗脳型というやつです。これはですね、これは私、見て本当に驚いたんですけども「捏造は悪ではない」。こんなのやったってやんなくても変わらないようなものはやる必要はない。それによってコストと人件費を大幅に節約できるのだと。「だからバレそうもない捏造は大いにやりなさい」というようなことを激励するような人を、私はたった1人ですが、見たことがあります。 夏目氏はボトムアップとトップダウンという考え方で4つに分けていますが、(1)あと一歩でアクセプト(論文の受理)されそうな論文を通すために絶対に必要なデータを「成り行きで」捏造する不正行為と、(2)トップジャーナルに通るような良いストーリーを作り上げるために研究の早い段階で、ストーリーに沿う内容のメインデータを作り上げてしまう「確信犯的」不正行為、の2種類に分けることも出来そうです。 前者の場合は、結論が変わるほどの重要なデータではないために、見過ごされてしまいかねない研究不正。データの不備を指摘された場合には、「手違いでした」と後から正しいデータを差し出して逃げ切ろうとするパターンです。不正の件数としてはこちらの方が圧倒的に多いでしょう。バレても誤魔化して事なきを得ることができる可能性が高いだけにたちの悪いものです。論文を掲載した雑誌社も穏便に済ませたいでしょうから、「正しいデータ」を受け取って一件落着になりそうです。 後者は、論文が出版されたあと多くの研究者が追試して結果が食い違ったり再現されなかったりして問題になることが多い、つまり結論が間違ってしまうようなデータ捏造。もちろん、捏造した内容がたまたま真実と同じなら気付かれないままになる可能性もあります。 加藤研究室の場合は、関与した研究者(論文著者)の数や不正論文の数が多く、捏造されたものもメインのデータであったり、対照実験のデータであったりするため両者の複合型といえるでしょう。 非常に興味深いことに、このシンポジウムの記録には加藤研究室に過去在籍していた金氏の発言があります。 以前、私は加藤茂明先生のところの研究室で研究をしていたんですけれども、その時は、自分たち世代までは結構そういうことが問題になって、いい研究を正しいルールでやりたいと、そういうのがカッコいいという考え方がありまして、例えば再現がよくとれないんだけども、「何回、n層何回あったらこの実験はみんなに公表してもいいと思う?」とか友達に聞いたりすると、誰かが「これは3回なんだよ」とか言ったり、「3回じゃ足りないから、3回じゃいけないから」とか「5回以上しないと自分は認めない」とか、そういうことがあるので、やはりいい研究をやるというのは、正しいルールでやったほうがカッコいいという。「魂を捨てたら、もう研究者の生命は終わりよ」という話もしますが、そういうだめな魂は絶対つくってはいけないと思わないと、長い間、研究は楽しくやっていけないと思います。 「いい研究を正しいルールでやることがカッコいい」という風潮が当時の加藤研にあったようです。研究をまるでゲームか何かのように捉えているようで、とてもサイエンスをやる態度とは思えません。この発言内容からすると金氏がデータ捏造に積極的に関与したとは考えにくいのですが、不思議なことに加藤研から出た不正論文の中でも際立って捏造箇所が多いNature論文の筆頭著者です。この論文は、 2008年8月18日投稿 2009年8月24日受理 2011年12月1日訂正 2012年6月14日撤回 という経過をたどりました。東京大学の中間報告では誰がどう不正に関与したかに関しては全く何の情報もありませんが、ヤフーニュースによると 多くの場合、論文の筆頭著者と、不正を働いた研究者は別人だった。不正の大部分は、当時、助手を務めた一部の研究者によって行われていた。 (http://bylines.news.yahoo.co.jp/kamimasahiro/20130904-00027838/) という驚くべき内容が報道されています。真相の究明に関しては東京大学の最終報告が待たれます。 研究不正防止対策に関してですが、このシンポジウムではいくつかの提言がなされています。 データの管理というのは非常に重要です。皆さん個人のノートを持っているかもしれませんけれども、それはinstituteに所属するものであって、決して個人のものではないということが、ほとんどの研究所、大学で規定されていると思います。 一番多いのがですね「電子データだったのでなくなってしまった」という言い訳が多いんですけれども、そういうのを許さないためにも、きちんとしたデータ管理を心がけるというのを少し呼びかけておきたいと思います。(16~17ページ) 不正の疑惑が生じた場合、実験ノートが存在しなくて実験データだけがある場合には不正とみなすというくらいの強い態度で臨めば不正は減りそうです。加藤茂明教授は「性善説」に基づいた研究室運営を行っていたことがアダになったという発言をされていますが、部下にデータ捏造をさせないためにはPIはどうすれば良いのでしょうか? いろいろな実験は学生にやらせているんですけど、その時に伝えているのは、どっちでもいいから、本当の答えが知りたい。白でも黒でも、赤でも青でもどっちでもいいから、ともかくきちっとした実験をやって、コントロールをちゃんとおいて、本当は赤なのか青なのかを示してくれて、それが、本当は赤が欲しかったんだけど青になるとか、結果がどうであっても全然ハッピーだということを伝えて。青だったら論文書きやすいとか、いろんなことがあるんですけど、でも逆に赤のほうがいい論文になることも往々にしてあるわけですから、ともかく真実を教えてよとしか言いようがなくて。(山中)(17~18ページ) お互いに生データレベルで、常にみんなが何をやっているかというのを知り合える状態というのをつくり、かつ、その中でやっぱり厳しい、厳しいというか、フィードバックチェック機構が働く、というのを実現していきたい。(後藤)(18ページ) 僕の今の工夫は1つはオープンにするということです。1対1のミーティングもやりますが、必ず全員の前で自分の仕事を月にいっぺんは発表する。で、誰が何をしてるかをみんなが知っているというオープンにすることが、やっていることの1つです。もう1つは、もう当たり前の結果だったらいいんですけれども、iPSができたという結果、ジャームラインに入ったという結果、プラスミドでできたという結果、こういうときは、必ず違う人に、やや違う手法でやってもらっています。(山中)(23~24ページ) つまりやる人はいるんです、必ず。犯罪と同じですよ。犯罪ゼロっていうことはない。犯罪が起きそうなときに、それを抑止するという発想のほうが、学問とい うのは制度的なものですので、やっぱり抑止するということは、我々の倫理観、高いものを持っていて、問題が出たときには、その行為自身を許さない。そっち のほうが教育のために、不正行為をやらないようにという教育よりも効果出るんじゃないかなあと。(柳田)(13ページ) 研究不正が発覚したときに誰がどう責任を負うべきなのかは、状況にもよるでしょうし非常に難しい問題です。 自分が関知していなければ、非常に恥ずかしいことですが、やめる必要はまったくないのであって…それはしょうがないですよ。罪じゃないですよ。それは仕方がない。だけど自分の能力がなかったことは認める必要があります。(柳田)(23ページ) 学生さんがもし自発的に変なことをやったとしても、それを見抜けなかったコレスポンディングオーサーが悪いわけですし。まず、そのPIでコレスポンディングオーサーになるんだったら、もうこの論文の責任は全部僕だと。だって、その論文でいい面は全部コレスポンディングオーサーが取っちゃうわけですから、悪いことが起こっても当然同じ、全部受け止めるべきであって。それは、僕は当然と思ってます。 …

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北大教授が研究費1600万円以上を着服

  2013/12/27    Uncategorized

⇒ 北海道大学が最終報告:公的研究費の不正使用5億3500万円 北海道大学の発表によると、西村孝司北海道大学遺伝子病制御研究所教授(平成25年7月4日付けで退職)が1600万円以上もの公的研究費を私的に流用し、マイカーのタイヤ購入代金や車検費用、高級腕時計など日用品の購入に充てていたことが明らかになりました。 参考 公的研究費等の不適切な経理処理にかかる刑事告訴について (北海道大学 平成25年12月27日):”このたびの本学における公的研究費等の不適切な経理処理にかかる調査の過程で、元本学遺伝子病制御研究所教授 西村孝司氏(平成25年7月4日付けで退職)が公的研究費等を私的な目的で流用していた事実が判明したために、本年6月14日付けで同氏及び関販テクノ株式会社代表取締役ほか2名を、北海道警察札幌方面北警察署へ刑事告訴しました。…” 公的研究費等の不適切な経理処理の概要(北海道大学2013年12月27日):公的研究費における不正経理処理が明らかになった北海道大学の教授ら44名の処分内容と概要 北大:元教授「預け金」1600万円流用 腕時計など購入(毎日新聞 2013年12月28日 00時30分(最終更新 12月28日 03時07分)

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加藤茂明 元東大教授がフライデー誌に真情を吐露

2014年8月1日の記事も合わせて御覧ください ⇒ 東大分生研加藤茂明研究室の論文不正問題で加藤(元)教授が実験ノート捏造を指示:東京大学科学研究行動規範委員会が結論   一体どうすればこんな大規模な研究不正が起こり得るのか?みなが首をかしげる事件ですが、加藤茂明東京大学・分子細胞生物学研究所元教授が論文捏造の真実を「フライデー」9月6日号で語っていました。 「私の管理が甘かったので、研究室の一部のメンバーが暴走してしまった。言い 訳がましいかもしれませんが、私はずっと性善説で生きてきました。部下の一部が論文データを改ざん、ねつ造しているなんて思いも寄らず、チェック機能が まったく働いていませんでした。私自身がアナログ人間なので、画像処理でデータが操作できるなんて想像もできなかった。すべての責任は私にあります。」 「けっして研究室ぐるみで不正をしていたのではない。真面目に研究をしているメンバーが大半だったんです。」 研究室には50人ほどのメンバーがいたが、不正に手を染めていたのはそのうちの一つのグループであり、13人ほどのメンバーだという。 参考 論文ねつ造で辞めた東大教授「福島で(反省)ボランティアの日々」

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加藤茂明研究室から出された51報の「不適切」な論文リスト

2014年8月1日の記事も合わせて御覧ください ⇒ 東大分生研加藤茂明研究室の論文不正問題で加藤(元)教授が実験ノート捏造を指示:東京大学科学研究行動規範委員会が結論   科学研究行動規範委員会の調査において、「科学的な適切性を欠いた画像が掲載されていた」とした51報の論文(http://www.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/20131226_04-2_appendix1_jp.pdf)。筆頭著者が異なる捏造論文がこれほど大量に出たということは、たまたま血迷った人がいたということではなく、研究室内での組織的な論文捏造と思われます。 Genes Dev. 2010 Jan 15;24(2):159-70. doi: 10.1101/gad.1857410. Epub 2009 Dec 29. A histone chaperone, DEK, transcriptionally coactivates a nuclear receptor. Sawatsubashi S, Murata T, Lim J, Fujiki R, Ito S, Suzuki E, Tanabe M, Zhao Y, Kimura …

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加藤茂明研究室の論文不正問題に関して東大がようやく中間発報告を公表

2014年8月1日の記事も合わせて御覧ください ⇒ 東大分生研加藤茂明研究室の論文不正問題で加藤(元)教授が実験ノート捏造を指示:東京大学科学研究行動規範委員会が結論   加藤茂明研究室の論文不正問題に関して東大がようやく中間発報告を公表しました。不正に関する申立てを東京大学が受けたのが去年の1月10日ということですから、中間報告の公表に至るまでに、実に丸2年もの年月がかかったことになります。東京大学が公式にデータ捏造を認めたという意味は大きいですが、それ以上目新しいことは何もありません。申立てを行った方のウェブサイトに、”捏造の疑い”が誰の目にも明らかな形で詳細に示されていたのですから。   誰がどのような動機でどういう状況下でこのような不正に手を染めたのか、どうしてファーストオーサーが異なる論文でもこのような「捏造工場」が長期間にわたって機能しえたのか、研究室運営の構造上の問題点を明らかにしてほしいところですが、最終的な報告にはまだ時間がかかりそうです。 今後、研究不正の事実認定に基づいて誰にどう責任を問うのか、東京大学の判断が注目されます。 記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における 論文不正に関する調査(中間報告)」の実施について 日 時:平成25年12月26日(木)14:00~15:00 場 所:東京大学医学図書館3階会議室 出席者:大和 裕幸 東京大学理事・副学長(コンプライアンス担当) 科学研究行動規範委員会委員長 秋山 徹 東京大学分子細胞生物学研究所長 吉村 忍 東京大学広報室長 (http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_251226_j.html) 平成24年1月10日、本学に対し、加藤茂明東京大学分子細胞生物学研究所教授(当時)の主宰する研究室の関係者が発表した論文24報について、不 正行為が存在する旨の申立てがあった。 これを受け、本学においては、分子細胞生物学研究所において予備調査を実施するとともに、科学研究行動規範委員会 において調査・審議を行い、今回これまでの調査の経過を取りまとめ、中間報告として公表するものである。今後、同委員会において引き続き調査を行い、最終 的な調査の結果を取りまとめる。 配付資料一覧: 1)記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正に関する調査(中間報告)」の実施について 2)研究倫理をめぐる問題事案について―中間報告の公表に当たって― (総長) 3)分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正の疑いに関する調査(中間報告)の概要 4-1)分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正の疑いに関する調査(中間報告) 4-2)【別添資料1】分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正の疑いに関する調査状況 4-3)【別添資料2】科学的な適切性を欠いた画像データの態様の例 4-4)参考資料 1.高い研究倫理を東京大学の精神風土に(平成25年10月8日 総長) 2.東京大学の科学研究における行動規範 3.東京大学科学研究行動規範委員会規則 (英語版資料[一部抜粋]): ・Summary of the Interim …

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2013年分子生物学会年会は研究不正問題にどう向かい合ったのか?

  2013/12/24    Uncategorized

画像をカットアンドぺーストするなどして安易な方法でデータを捏造し、トップジャーナルに論文を量産している(た?)人たちがいます。数十億円の研究予算を配分されるような分子生物学会の重鎮であった複数の研究室でそのようなことが行われていたことが明らかになり、日本分子生物学会としてどのような防止策を打ち出すのかが注目されていました。2013年の日本分子生物学会年会は様々な新しい企画がてんこ盛りで成功裏に終わったと言えますが、肝心の論文不正の問題に対して日本分子生物学会がどう向き合ったのかは、まだ明らかにはなっていません。ちゃんとそこを取り上げるマスメディアも多くはなく、唯一毎日新聞が記事にしているようです。 研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論 毎日新聞 2013年12月12日 東京朝刊 生命科学の研究不正疑惑が後を絶たない。日本分子生物学会(会員数約1万5000人)は今月、3日間にわたるフォーラムを神戸市で開き、防止策などを議論した。だが、延べ10時間近い議論は紛糾、「性善説」に基づく対策の限界も明らかになった。 ●不安定な倫理基盤 研究者にとって論文は業績の指標。競争が激しい生命科学分野では、データの改ざんや画像の使い回しといった不正がたびたび起きてきた。画像の加工が簡単にできるソフトの普及が、不正を招きやすくしているとの指摘もある。 「特殊な一部の人の問題ではなく、我々が抱える内部構造の欠陥が背景にある。生命科学研究は急速に進展 したために倫理基盤が不安定だったのかもしれない。自らを律し、不正への対応を現場から考えたい」。同学会研究倫理委員の篠原彰・大阪大教授は、フォーラ ムを企画した意図を説明する。 きっかけは、東京大の加藤茂明・元教授のグループによる不正。加藤氏は総額20億円に上る国の大型研究プロジェクトを主導しており、同学会でも若手向けの教育責任者だった。このことも関係者を驚かせた。 ●10%が「目撃、経験」 議論の前半は「不正をどう防ぐか」が中心。学会の全会員に実施したアンケート結果をめぐって意見を交わ した。この調査は回答者の10・1%が「所属する研究室内で、捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正行為を目撃、経験した」という内容で、事実なら不正の常 態化を示す深刻な状況だ。 「回答率(7・9%)が低い。数字が独り歩きするのは危険」という懐疑的な意見の一方で、「皮膚感覚ではもっと多い」という指摘もあった。倫理教育の充実を、という意見には異論がなかったものの、規制や罰則の強化で抑止できるとの提案には賛否両論の意見が出た。 高橋淑子・京都大教授は「基礎研究がビジネスのように過度に競争的になっている。日常から成果を開示 し、互いに議論する努力が不幸な事例を防ぐ」と、自浄作用に期待を込めた。論文を掲載する英科学誌ネイチャーの編集者も、論文の審査体制を強化したことを 報告しながら「出版の原則は(研究者への)『信頼』だ」と強調した。 だが会場からは、これらを「理想論」と断じ、厳罰化を求める意見が出た。発言者は「不正な論文で得をする人の後ろには、競争的資金やポストを逃す人がいる」と訴えた。 ●「身内」調査に限界 不正疑惑が浮上した後の対応について議論した後半では、研究者の所属組織に調査を委ねる現行システムの 「限界」も指摘された。加藤元教授のケースでは、東京大が学外の告発を受けて昨年1月に調査を始めたが、2年近くが経過した今も結果は公表されていない。 降圧剤バルサルタンを巡る不正疑惑では、責任者が所属していた京都府立医大は最初「不正はない」との内部調査結果をまとめたが、関係学会の要請で再調査し た結果、データ操作が判明。こうした「身内」による調査は公正性を疑われかねず、米政府が設置している研究公正局(ORI)のような公的組織を設置すべき だとの意見もある。 学会研究倫理委員長の小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授は「一定の確率で出る(不正)事案には共通の 基準で対応すべきだ。その場合は第三者機関が必要」と提案。中山敬一・九州大教授も「日本版ORIに調査を主導する専門官を置き、裁判員裁判のように調査 員を委嘱すればいい」と賛同した。 これに対し、学会理事長の大隅典子・東北大教授は「取り締まる第三者機関があるのは末期的だと思う。できればそこに至る前に食い止めたいというのが個人的な意見」と話した。学会は今回の議論を倫理教育に反映させるほか、ホームページで議事録を公開し、科学界以外にも広く議論を呼びかけたいとしている。【八田浩輔】 このように、唯一、毎日新聞社が問題意識を持って記事にとりあげてくれたようです。iPS細胞の臨床応用など華やかな側面だけでなく、このような陰の部分に関してもマスメディアはきちんと事実を世間に伝えるべきです。 データ捏造のようなことは、衆人環視の下では起きえないはずです。全てがガラス張りの世界をつくることが研究不正の抑止力の一つになるのではないでしょうか。データ捏造やアカデミックハラスメントは閉ざされたドアの向こうの見えない場所で起きます。 研究不正は日本の研究競争力を低下させる大きな要因です。見て見ぬ振りすることなく、その根本的な問題点をあぶり出す必要があります。昨日まで自分の同僚や友人であった人の研究不正の告発や不正行為の実証などといった非生産的なことを好んで行いたい人などいません。こんなことを議論していれば、誰だって暗い嫌な気持ちになります。研究者にしてみればそんなことに自分の貴重な時間を費やしたくないのです。論文不正を監視する第三者による公的機関を設置するべきときが来ているのではないのでしょうか?    

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利根川進の「脳科学のススメ」

  2013/12/23    ノーベル賞

研究者なら誰しも、金脈を掘り当てたいと思っていることでしょう。 金を見つけたければどこを掘るべきなのか、この動画の中で利根川進氏がアドバイスしています。 なぜ「一番面白いこと以外はやらない」のか? それは、「飽きないようにするため」。 今一番面白い研究領域、今後少なくとも100年間は飽きずに研究が楽しめる領域は何でしょうか? それは、ニューロサイエンス(脳科学)です。 Advice from a Nobel Laureate 参考 利根川研究室ウェブサイト(マサチューセッツ工科大学):Those who hold Ph.D.’s and share our research interests with enthusiasm are invited to apply for a post-doctoral position by contacting Dr. Susumu Tonegawa.

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MIT利根川進教授らのグループが海馬の中の新たな神経回路を発見

  2013/12/23    科学ニュース

海馬は記憶学習に重要な脳の部位として最も精力的に研究されている領域です。脳の働きを知るためには脳を構成している神経細胞同士がどのように「配線」されているのか、つまり神経回路をまず明らかにする必要があります。一番良く研究されていたはずの海馬の神経回路で、実は今まで信じられてきたことが間違いであったということが明らかになりました。利根川進マサチューセッツ工科大学教授(理化学研究所脳科学総合研究センターセンター長を兼任)らのグループによる研究成果です。 海馬はCA1,CA2,CA3という3つに区分されますが、大脳皮質から海馬に至るまでの神経結合は、嗅内皮質→歯状回(DG)→CA3→CA1という3つのシナプスを介する回路が知られていましたが、CA2の領域にある神経細胞がどこから入力を受けてどこへ出力しているのか関しては研究が進んでいませんでした。 「歯状回(DG)→CA2という経路は存在しない」というの一般的な定説となっていました。 ところが、今回の利根川研究室らの研究により、CA2領域はDGからの入力を受けており、さらにCA1の深い層へ出力しているということが明らかになりました。この新たな神経回路の発見により、海馬における情報処理機構の研究が一層進展することが期待されます。 (緑色に見えるのが歯状回(DG)の神経細胞、赤色は歯状回(DG)の神経細胞の軸索、オレンジ色はCA2の細胞。歯状回の神経細胞から伸びた軸索の先端が、CA2の領域に到達している様子が見事に示されています。 独立行政法人理化学研究所 2013年12月19日 プレスリリースより) さらに、「嗅内皮質第3層の神経細胞は海馬CA1領域に入力する」と言われていたことも実は間違いで、実際には「嗅内皮質第3層の神経細胞は海馬CA2領域に入力している」ことがこの論文で示されました。 常識を疑えとよく言われますが、「みんなが信じていること」であっても、何の根拠があってそう言われてきたのかをとことん遡って突き詰めて行くことにより、今回のような大発見成し遂げることができるというレッスンのようです。 参考 Kohara K, Pignatelli M, Rivest AJ, Jung HY, Kitamura T, Suh J, Frank D, Kajikawa K, Mise N, Obata Y, Wickersham IR, Tonegawa S. Cell type-specific genetic and optogenetic tools …

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大学教育の公開~MOOC

  2013/12/21    Uncategorized

大学の授業を受けるためには、その大学に入学しなければならない、というのは当然のことでした。以前は。今やその常識が崩れてきています。 大学の授業動画をウェブで公開する大学が増えたおかげで、今では世界中の誰もが世界の名門大学の講義を視聴できるのです。例えばスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校(webcast.berkeley.edu)やマサチューセッツ工科大学(MIT)(MIT Open Courseware)では非常に多くの授業を公開しています スタンフォード大学物理学講義動画「アインシュタインの一般相対性理論」 Einstein’s General Theory of Relativity | Lecture 1 大学がインターネットで流す講義ビデオを受け身で視聴するのにとどまらず、最近では視聴者が積極的に講義に参加して、大学側は受講者に対して正式な修了証を発行するというシステムが出現しています。MOOC (Massive open online course 大規模公開オンラインコース)と呼ばれるプロジェクトです。この流れにあるものは、コーセラ(無料)やエデックス(無料)。 Bioinformatic Methods I with Nicholas James Provart (コーセラの、バイオインフォマティクスの講義紹介ビデオ) この世の流れに日本の大学も乗ろうとしており、東京大学がコーセラに、京都大学にエデックスへの参加を表明しています。なお、有料のサービスとしてユーダシティというものもあります。 大学には行かなかったけれども大学レベルの勉強をしたい人、大学で昔受けた授業内容を学び直したい人、今の仕事に必要な知識を得たい人、自分の専門の周辺分野の知識を学びたい人、さまざまな需要が世の中にはあることでしょう。これらの期待に応えるのがMOOC(Massive open online course 大規模公開オンライン講座)です。 大学がMOOCに参加するメリットとしては、良い授業を提供することによりその大学の存在感を世間に示すことができます。 参考 コーセラ(Coursera): Take the world’s best courses, online, …

Cell、Nature、Scienceには出しません

  2013/12/16    科学出版

生命科学の研究者にとって、セル、ネイチャー、サイエンスなどのいわゆる一流誌に論文を出すことは研究の世界で生き残る上で非常に大切なことです。 ところが、今年のノーベル生理学・医学賞を受賞したランディ・シェックマン博士が、セル、ネイチャー、サイエンスの姿勢を批判し今後これらの雑誌には論文を投稿しないと宣言しました。 これはすでにノーベル賞を獲った人だからこそ言えることです。これからキャリアを築かなければならない人の場合は、セル、ネイチャー、サイエンスに論文を出せるかどうかは研究者人生の明暗を分ける分岐点になりかねません。 研究者は論文の質や量で評価され、研究費やポストの獲得に直結する。英国の「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」など有名科学誌は世界の研究者の注目度が高く、加藤氏も「(研究者としての)世界が変わる」とメンバーに投稿を強く勧めた。(毎日新聞、2013.7.26) 一般的にほとんどの教授は競争的資金を利用して研究している。その資金を得るためには良い業績が必要で殆どの場合、ImpactFactorが高い雑誌、特にCell,Nature,Scienceという通称CNSと呼ばれる雑誌に論文が載ることで大きなadvantageを得ることができる。(http://d.hatena.ne.jp/AMOKN/20100801) CNSに論文が載ればそのポスドクは帰国してアカポス取れる可能性が高まる。(http://scienceinjapan.org/topics/20130611.html) 現在の日本のバイオ系の研究レベルの上昇によりアカポスを得るにはCNS(Cell, Nature, Science)は最低1報は要るというくらいの状況になってきています。(http://ameblo.jp/bio-post-doctor/entry-10072353783.html 2008-02-13) 三大誌の一つであるScienceに初めて筆頭著者として論文が受理されたときの興奮はすさまじいものであった。若かったし、これで世界に認められる研究者になれたという恍惚感もあった。そして、実際、その論文のおかげで教授になれた。(http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/nakano/essay_009.html) やっぱり皆、Nature、Cell、Science、インパクトファクターの高い論文を狙ってます。それはですね、もしある職に対して3人の候補者が挙がった場合に、Nature、Cell、Scienceに載ってる人が基本的に優先的に選ばれる可能性が高い。科学研究費もそうなんです。(http://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/doc/081209_wakate_sympo_all_final.pdf) 参考 How journals like Nature, Cell and Science are damaging science.  Randy Schekman (The Guardian, Monday 9 December 2013 19.30 GMT) Nobel winner declares boycott of top science journals  …