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アイス・バケツ・チャレンジに山中伸弥氏も参加

難病の一つであるALS(筋委縮性側策硬化症)に対する世間の認知度を高め、この病気の原因の解明と治療法の開発に対する資金援助を募るための「氷水バケツチャレンジ」が世界を席捲しています。

8月20日現在、3150万ドル(約32億5千万円)もの寄付がアメリカのALS協会(The ALS Association, Washington, DC)に集まっているそうです。

Shinya Yamanaka’s ALS Ice Bucket Challenge

Yuri and Julia Milner ALS Ice Bucket Challenge #icebucketchallenge

Bill Gates ALS Ice Bucket Challenge

参考

  1.  筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは(難病情報センター)
  2. ALS筋萎縮性側索硬化症の疾患・治療に関する情報プログラム(Sponsored by サノフィ株式会社)
  3. 一般社団法人 日本ALS協会
  4. Ice Bucket Challenge Still Going Strong: $31.5 Million in Donations to The ALS Association (alsa.org August 20, 2014)
  5. Here’s How the ALS Ice Bucket Challenge Actually Started (time.com Aug. 18, 2014)

シロイルカ(ベルーガ)の人の言葉をまねる能力

人の言葉を真似する白イルカ!|ベルーガの鳴き声

鴨川シーワールド しゃべるベルーガ

シロイルカ(ベルーガ)が人の言葉をまねることができることを、村山司東海大教授らと鴨川シーワールドの研究グループが論文で報告しました。下のオーディオの再生ボタンを押すと、人間が話した言葉とイルカがそれを真似た音声が聴けます。


(Murayama et al., 2014 http://escholarship.org/uc/item/51v1z12bより)

わかりづらいものもありますが、実験で用いられた言葉は以下の通り。

「ハハハハハ!」
「ほう?」
「あわわわ」
「デューク」
「おはよう」
「つかさ」
「ピヨピヨ」
「ホケキョ」
「おお!」

人の言葉を覚えるシロイルカ(ベルーガ)の能力を示す例は過去にもあります。サンディエゴの水族館で、人の声のように聞こえる不思議な鳴き方を自然に覚えた白イルカの例が報告されています。
NOC Mimicking Human Speech

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982212010093

参考

  1. Murayama, Tsukasa; Iijima, So; Katsumata, Hiroshi; & Arai, Kazutoshi. (2014). Vocal Imitation of Human Speech, Synthetic Sounds and Beluga Sounds, by a Beluga (Delphinapterus leucas). International Journal of Comparative Psychology, 27(3).
  2. 鴨川シーワールド:イルカ「しゃべった」 8種類をまねる(毎日新聞 2014年08月18日):”イルカが言葉をしゃべった−−。村山司(つかさ)・東海大教授(54)らの研究チームは、イルカが人の言葉をまねられることを世界で初めて証明し今月、国際心理学誌電子版に発表した。..”
  3. 鴨川シーワールド
  4. Ridgway et al., Spontaneous human speech mimicry by a cetacean. Current Biology Volume 22, Issue 20, 23 October 2012, Pages R860–R861
  5.  Beluga Whale Named Noc Mimics Human Noises With Spot-On Imitation (AUDIO) Huffpost 10/23/2012):”..In 1984, scientists at the National Marine Mammal Foundation in San Diego began noticing unusual noises emanating from where they kept the whales and dolphins. These resembled two people conversing in the distance, just beyond the range of the understanding of listeners…”

IBMが脳型コンピュータを開発 Science誌

IBMが神経細胞のネットワークを模した、低電力で駆動する新たなコンピュータチップを開発しました。100万個の「神経細胞」と、神経細胞同士の結合部分である「シナプス」を2億5千6百万個備えたものです。

サイエンス論文の筆頭著者の二人が、新しいコンピュータチップ開発の動機を解説している動画。
SyNAPSE: IBM Cognitive Computing Project – Hardware

A Cognitive Information Superhighway

”IBM’s brain-inspired architecture consists of a network of neurosynaptic cores. Cores are distributed and operate in parallel. Cores operate—without a clock—in an event-driven fashion. Cores integrate memory, computation, and communication. Individual cores can fail and yet, like the brain, the architecture can still function. Cores on the same chip communicate with one another via an on-chip event-driven network. Chips communicate via an inter-chip interface leading to seamless scalability like the cortex, enabling creation of scalable neuromorphic systems.”(http://www.research.ibm.com/cognitive-computing/neurosynaptic-chips.shtml#fbid=15Zz4zjXf0H

Bringing Computing to the Data

”A video camera on Hoover Tower at Stanford University is looking down at the plaza, below. A simulated network of IBM TrueNorth chips takes in the video data and locates interesting objects. Objects might look interesting to the system because they are moving or have a different color or texture than the background. The system then further processes those portions of the interesting video to determine what the objects are. It is trained in several specific categories, such as buses, cars, people, and cyclists. In a monitoring application, the camera would only need to communicate when it found an interesting object, rather than continually streaming video to a central location.”(http://www.research.ibm.com/cognitive-computing/neurosynaptic-chips.shtml#fbid=15Zz4zjXf0H

参考

  1. Paul A. Merolla, John V. Arthur, Rodrigo Alvarez-Icaza, Andrew S. Cassidy, Jun Sawada, Filipp Akopyan, Bryan L. Jackson, et al. A million spiking-neuron integrated circuit with a scalable communication network and interface. Science 8 August 2014.
    Vol. 345 no. 6197 pp. 668-673. DOI: 10.1126/science.1254642
  2. New IBM SyNAPSE Chip Could Open Era of Vast Neural Networks (IBM News release San Jose, CA. – 07 Aug 2014)
  3. 新しいIBM SyNAPSEチップを発表 (日本IBMプレスリリース2014年8月8日)
  4. IBM社が世界最大規模の脳型半導体チップを開発、100万個のニューロンと2.56億個のシナプスを実装(日経テクノロジーオンライン 2014年8月8日)
  5. 米IBM、人間の脳のように動くチップ「SyNAPSE」を開発 (マイナナビニュース 2014/08/08)”..「SyNAPSE」は、2011年に開発された初期プロトタイプの第2世代目となり、サムスン電子製の54億個のトランジスタを土台に、100万個のプログラム可能なニューロンと2億5,600万個のプログラム可能なシナプスで構成される。..”
  6. DARPA SyNAPSE Program (artificialbrains.com Jan 11, 2013):” SyNAPSE is a DARPA-funded program to develop electronic neuromorphic machine technology that scales to biological levels. More simply stated, it is an attempt to build a new kind of computer with similar form and function to the mammalian brain. Such artificial brains would be used to build robots whose intelligence matches that of mice and cats. SyNAPSE is a backronym standing for Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics. It started in 2008 and as of January 2013 has received $102.6 million in funding. It is scheduled to run until around 2016. The project is primarily contracted to IBM and HRL who in turn subcontract parts of the research to various US universities. ..”
  7. Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics (SyNAPSE) (darpa.mil): “The vision for the Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics (SyNAPSE) program is to develop low-power electronic neuromorphic computers that scale to biological levels. ..”
  8. SyNAPSE (en.wikipedia.org)

STAP 細胞事案に関する理化学研究所への要望

STAP問題「科学研究に負のイメージが」日本学術会議(14/07/25)

“…現在、研究不正に最も深く関わったとされる小保方氏が参加する STAP 現象の再現実験が始められ、関係者の懲戒については結論が先送りされると伝えられています。しかし、この再現実験の帰趨にかかわらず、理研は保存されている関係試料を速やかに調査し、取り下げられた2つの論文にどれだけの不正が含まれていたかを明らかにするべきです。また、そこで認定された研究不正に応じて、関係者に対する処分を下すことは、この事案における関係者の責任を曖昧にしないという意味で重要です。関係試料の速やかな調査による不正の解明と、関係者の責任を明確にすることを要望します。,..”

(日本学術会議 幹事会声明 平成26年7月25日 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf//kohyo-22-kanji-1.pdf)

早稲田大学 先進理工学研究科有志教員が「小保方氏博士論文の調査報告書に対する所見」を公開

早稲田大学が先日公表した小保方氏の博士論文の調査報告書に関して、科学者や捏造問題の専門家らがコメントを発表しています。

“今回の早稲田大学の調査委員会の結論は、学位論文審査云々以前のこととして、非常識であり犯罪の容認と同等だと思います。… ” (日本分子生物学会ウェブサイト STAP細胞問題等についての、理事、元役員経験者からの自主的なコメント 上村 匡 理事 2014年7月18日

“…「これ、そもそもイントロ全体が剽窃なんだから、問答無用で、学位取り下げ以外の選択枝なし」のはずじゃないのか。…” (佐々真一 京都大学理学研究科 教授 ブログ 「日々の研究 2014-07-18 金曜日」)

“…日本の「博士号」という資格が世界でどのようにみなされるかという質保証の問題です。” (大隅典子の仙台通信 2014年07月17日 「学位論文」

“…もはや早稲田大が授与する博士学位の価値は世界最低になったと言っても過言ではない。したがって早稲田大に在籍する学者志望の学生は今すぐ退学し、できれば東京大学や京都大学などに入り直したほうがいい。今や早稲田の博士号は就職の邪魔になりかねない不良学位なのだから。…(森口尚史 元 東京大学特任教授 「探偵ファイル」 更新日07/19

早稲大学の教員からも疑問の声が上がっています。以下、https://www.facebook.com/iwasaki.hideo.5/posts/793592170693337からの転載です。

「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する
早稲田大学大学院 先進理工学研究科 教員有志の所見

2014年7月24日

早稲田大学における博士学位論文の不正に関する問題は,本学個別の問題というだけにとどまらず,科学研究や大学における教育,さらに博士の学位の信用にも 大きな影響をおよぼす問題です。私たちは,先進理工学研究科の構成員として,また自然科学の研究・教育に携わる学徒としてこの問題に対する大きな危機感を 共有しており,本問題の解決に向け、科学的規範と良心にしたがって誠実に行動していきたいと考えております。
 さて,2014年7月17日に「早稲田大学大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」(小林英明委員長)による調査報告書が早稲 田大学に提出されました。当日小林委員長による記者会見と概要書の配布が行われ,さらに7月19日に修正処理を施された報告書全文が早稲田大学のウェブサ イトより公開されました。
 調査報告書では,小保方氏によって提出され,国会図書館に収められている博士論文が極めて杜撰な内容であること,その作成過程および審査過程に重大な過 誤が認められること,さらに早稲田大学ならびに先進理工学研究科の指導体制・審査体制に欠陥があることなどが厳しく指摘されました。その一方で,私たちが 学位論文の中で重大な問題点とみなしてきたものが,この調査報告書の中では軽微に扱われている場合が散見されました。自身の責任問題を含めて厳正に臨まな ければならないと考えていた私たちにとって,後者の部分には強い違和感と困惑を覚えざるを得ませんでした。
 今後,大学ではこの調査報告書の検討を通じて,この問題に対する見解や処分を公表することとなっております。私たちは,その過程で,様々な論点について透明性を確保しながら,学内外を問わずできるだけ多くの議論が活発に行われるべきだと考えています。
 そこで,数人の有志の見解ではありますが,今回の調査報告書で特に問題と感じた点を,別紙に6項目掲げました。大学の担当部署に提出させていただくとと もに,学外の方々にも意見の一つとして公表させていただくことにいたします。ここでは,主として当該博士論文に対して厳正な判断を求める内容となっており ますが,一方で,十分な指導が行われなかったこと,このような論文に学位を授与してしまった責任は極めて重大で,研究科の構成員として重く受け止めており ます。
 この問題は小保方氏一人の問題に限らず,研究・教育に関する構造的な問題が背後にあります。その一翼を担っているものとして,今一度痛切に猛省しなけれ ばいけないと考えています。科学研究・大学教育の原点に立ち戻って,この問題の背景や責任を明らかにしようとすること,また,再発の防止や,より厳格かつ 健全な研究・教育・学位審査プロセスの立て直しのために全力で臨むことを誓います。

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 有志一同を代表して
岩崎秀雄(電気・情報生命専攻 教授)
小出隆規(化学・生命化学専攻 教授)
寺田泰比古(化学・生命化学専攻 教授)
勝藤拓郎(物理学及応用物理学専攻 教授)

調査報告書に対する所見

1. Tissue Engineering誌論文におけるデータの改竄疑惑への言及が存在しない点

科学研究論文において,データの信頼性を損なう改竄・捏造が致命傷であることは,改めて言うまでもありません。
 しかし,博士論文のもととなっているTissue Engineering誌の論文には,明白と言ってよい画像の改竄(報告書における「実験結果欺罔行為」)が認められています。具体的には,Tissue Engineering誌論文の図2、図3、図4に電気泳動写真が掲載されていますが,まったく異なる遺伝子群の発現パターンに関して,同じゲルの写真を 上下反転したり,一部切り抜いて流用したりするといった改竄・捏造が既にネット上でも指摘されています。このうち,図3は,博士論文においても図16とし て採録されています。
 Tissue Engineering誌の図3は,ネット上での指摘を受け,責任著者のVacanti教授によって,改竄が指摘された4つの遺伝子群のデータを削除する 形で修正(correction)されています。その理由は,「類似した見かけのデータを,複数の著者が編集したために起きた過失」とされています。
 しかしながら,同様の図の改竄は,多くの場合Correctionで済むものではなく,様々な科学論文誌においてRetraction(論文撤回)の対 象となってきました。実際の写真を検討すると,「過失」というレベルではないことは明らかで,学位取り消しの条件である「不正の方法」に相当するのではな いかとの疑義があります。
 にもかかわらず,調査報告書では,「そもそも博士学位論文の条件として査読付き欧文論文が前提となっており,このTissue Engineering誌論文には修正がなされていること」を理由にデータの意図的な改竄(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)には該当しないと結論付け ています。しかしながら,Tissue Engineering誌において,Vacanti教授は強い影響力を持つと推測されるFounding Editorであり,軽微な「過失による修正」にとどめている編集方針には疑義があります。したがって,この論点については改めて独自の調査がなされてし かるべきと考えます。

2. 公表されてきた学位論文を草稿とみなし,「真の学位論文」なるものが存在し,それをもとに学位取得の妥当性を議論していることに関する疑義

調査報告書では,国会図書館に保管された正本(と通常は受け取れる論文:調査報告書における「本件博士論文」)が,実は草稿に過ぎず,「本来提出すべきであった博士論文」が実在するとの小保方氏の弁明が最終的に支持されています。
 しかし,「本件博士論文」は,3年間にわたって修正されることなく正本として保管・開示されてきたものです。これに対して,調査開始後,委員会に要請さ れてからかなりの期間を経て提出され,しかも提出一時間前に修正された形跡もある文書を「真の学位論文」と認定する根拠は薄弱に感じられます。
 たとえば,学位審査の公聴会の際に副査が指摘した不備が修正されていないことをもって,「本件博士論文」が公聴会前の論文であるとの弁明を支持していま す。しかし,最近明らかにされた経緯によると,その後の小保方氏らのNature論文における不備は,Cell誌,Science誌の査読過程で指摘され ていたにも関わらず修正されていません。この対応を見ると「学位論文に関しては副査の指摘に素直に従い,これを修正した」との前提が自明であるとは必ずし も思えません(むろん,それを指導する責任が指導教員にあったはずであることは,調査報告書の指摘通り)。また,公聴会時に回覧されたはずの論文(報告書 中における「公聴会時論文」)については,現存が確認されておらず,プレゼンテーション資料が確認されているのみです。プレゼン資料とそれに基づく公聴会 時の副査とのやりとりをもとに,「本件博士論文」が草稿であり,それとは別に修正を踏まえた「真の博士論文が存在する」との推論を導いていますが,プレゼ ン資料が「真の博士論文」とされる論文の内容をそのまま示しているとの前提は,必ずしも自明とは思えません。
 この判断に基づいて草稿と認定された「本件博士論文」の重大な問題点が,調査報告書では最終的に軽微に取り扱われ,事実上免責されていることに大きな違和感を覚えます。代表的なものとして,以下のようなものがあります。

 i) 「本件博士論文」の図10に示されている,三胚葉分化の二つの図は,企業のカタログからの無断転載が認定されています。この図は,学位論文全体の中で最も 重要な図であるはずなのですが,常識的に本文に照らして読めば自分が出したデータのようにも読める記載となっており,実験の実在性が問われる部分でもあり ます。したがって,調査報告書にも述べられているように,著作権侵害行為,創作者誤認惹起行為に加え,科学における重大な不正行為である「捏造」(調査報 告書に言う実験結果欺罔行為)に該当する可能性が高いと考えられます。しかしながら,上記の「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論 文」とされるものには図10は存在しないことから,この疑義が否定されています。
 ii) 「本件博士論文」には第2-5章に亘ってまったく実態を持たない(引用されていない)引用文献リストが各章末に付記されています。しかし,「小保方氏が真 に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」とされるものには5章にのみ引用文献がまとめられており,修正されたことが認められています。

「本来提出するつもりであった」と小保方氏が主張する論文については,現時点で公開されておらず,私たちとしては判断材料を持っていません。いっぽう,調 査報告書によれば,5月末に紙面で提出された原稿に加え,6月末には電子媒体での原稿を調査委員会は受け取っています。注目すべきことに,電子媒体は提出 の一時間前に修正保存された形跡があったと調査委員会は報告しました。このことは当該原稿が「真の博士論文」であることの信憑性を著しく損なっています。 まずは5月末に提出された原稿と,電子媒体で提出された原稿を公開していただき,その間の修正個所を明らかにすることも重要なステップと考えます。

3. 大量の無断引用部分について

「本件博士論文」の序章には,20ページの長きに亘って米国NIHの文書が無断転用(コピペ)されています。報告書によれば,事後提出の「真の博士論文」 とされるものにも,この部分は残っているとあります。これが著作権の侵害および,調査報告書のいう「創作者誤認惹起行為」に該当することは言うまでもなく 明白です。学位取り消し条件の「不正の方法」に該当すると報告書にも明記されています。
 しかし報告書では,この序章部分に見られる「不正の方法」によって,「学位授与に一定程度の影響を与えたとはいえるが,重大な影響を与えたとまではいえず,問題箇所①(注釈:当該箇所)と学位授与との間に因果関係があったとはいえない」と論じています。
 しかしながら,自らの学位論文の背景や立ち位置を論述する序章部分を自らの文章としてまとめることは,学位論文の最も重要な要件の一つであり,それを事 実上放棄した行為は,執筆者の学問的な誠実さと能力の欠如を強くうかがわせるものです。こうした論文に対して本来学位授与がなされることはあり得ません。
 このような無断転用を,入学時より早稲田大学理工学部(当時)では厳に戒めてきました。たとえば,小保方氏が初年時に受講した年度の必修の実習科目であ る「理工学基礎実験IA」の資料(2002年度)では,実験ノートの記録の重要性や具体例が詳述され,さらに「引用とコピー」という項目において「引用な しで,他人の成果を自分の文書に書くことはいわゆる“盗用”である。字からわかるように犯罪に準ずる行為として扱われる」と太字で明記されており,学生は レポート提出時に繰り返し指導されています。
 なお,「時間があれば修正できたはずなのに,事後提出論文に修正されないまま残っていること」もまた,調査報告書において「本件博士論文」が草稿である ことの傍証の一つとされています。指摘されてから序章部分を書き直す余裕がなかった傍証とみる推論も同様に可能であるにも関わらず,調査報告書では採用さ れていない点も指摘しておきたいと思います。

4. 実験ノートの確認方法に関しての記載,および科学的正確性に関する評価が不十分である点

調査報告書では,当該論文を裏付ける実験の実態があったと述べてあります。しかしながら,その根拠となるノートの写しや明確な資料が公開されておらず,第 三者としてその論旨を詳しく確認することができません。理化学研究所の調査の過程で明らかになった小保方氏の実験ノートの杜撰さから考えて,大学院在学時 のノートや記録が十全であったと考えることには疑義があります(仮に,もし博士論文に関わる実験ノートの内容が十全であるなら,理化学研究所に移籍して以 降の実験ノートの不備の責任は,早稲田大学にはないことになりますが,とてもそうは思えません)。その印象を覆すための記述・資料が,本報告書の公開資料 には見当たりません。
 より重要な問題として,調査報告書にも明記されているように,検討されたことは論文に書かれている(一部の)実験作業の有無についてのみであり,実際の データの分析の合理性や科学的正確性について踏み込んで検討されていません。上述のように,この部分においては,たとえばTissue Engineering誌の査読判断に事実上一任しており,通常の学位審査で規範とされる,主査・副査による科学的合理性・正確性の検証を独自に行ってい ません。これは,科学論文の検証作業としては不十分なのではないかと思われます。

5. 審査体制の不備に関する指摘について

一方で,調査報告書が指摘しているように,先進理工学研究科の審査体制にきわめて多くの問題点があること,小保方氏の審査に関して重大な過誤があったことは明らかです。
 調査報告書では,常田主査,武岡副査の責任について詳述していますが,副査を務めたVacanti教授や大和教授などの学外研究者の調査やその役割につ いての判断を保留しています。しかしながら,Vacanti氏は公聴会には出席しておらず,Vacanti氏,大和氏ともに事前に博士論文原稿を閲覧して いない可能性が指摘されています。もし事実とすれば,審査報告書になぜ名前を連ねることができたのか不可解です。「学外者で責任を問えないため」と小林委 員長は7月17日の会見上で説明しましたが,副査は大学院が正式に依頼し,きちんと当該論文を審査していただくために委託する役回りであり,学外在籍副査 の審査状況を明らかにし,その責任を明確化することは本調査の要の一つであるはずだったと考えられます。

6. 調査委員会のメンバーの氏名が開示されていない点

調査委員会のメンバーは,小林弁護士以外には公開されていません。このため,理研における調査委員会とは異なり,どの程度の解釈の振れ幅があったのか,小林弁護士以外の委員の見解を正す機会がありません。これは透明性・信頼性を欠く要因であると考えます。

以上

参考

  1. 早稲田大学 先進理工学研究科有志教員による小保方氏博士論文の調査報告書に対する所見を公開します(長文) 岩崎 秀雄 フェイスブック
  2. 【小保方氏の博士論文】早稲田大学の調査に研究者から強い批判の声 The Huffington Post 2014年07月18日

早稲田大学が小保方氏の博士論文調査書を公開

早稲田大学が、小保方晴子氏の博士論文に関する調査書を公開しました。小保方氏の学位論文における不正行為は認めつつも、「博士論文における不正行為と博士号取得との間に因果関係は存在しない」ので学位は取り消さないという結論です。

どういうことかというと、小保方氏の場合は既に海外の学術誌に論文が一報出ていたので、それによりすでに博士号の取得条件が満たされており、大学に提出する博士論文は(不正があろうがなかろうが)学位取得の審査に大きな影響を与えるものではなかったという論理です。

小保方晴子氏の博士取得までの経緯は報告書にまとめられています。

平成20年4月1日    早稲田大学理工学術院先進理工学研究科生命医科学専攻博士課程進学     
平成20年9月1日    ハーバード大学で研究開始          
平成21年8月末    日本に帰国    
平成22年6月30日    Tissue Engineering誌へ論文投稿       
平成22年9月30日    Tissue Engineering誌が論文受理                 
平成23年3月15日    早稲田大学が小保方氏に対して博士学位授与       
平成23年4月    理研CDB客員研究員
報告書 8ページの内容を簡略化して記載)

学位取り消しをしないという判断において考慮されたもう一つの点は、学位取得者はすでにそれに基づいて社会的な地位を得ていて影響が大きすぎる、というもの。

“… 大学から博士の学位を授与された者は、それを前提として就職する等、生活の基盤及び社会的関係を築いており、それに伴い、多くの人がその前提のもと、その 者との社会的関係を築いていくのが通常であるところ、学位を取り消すことは、学位授与を前提として形成された、これらの生活及び社会的関係の多くを基礎か ら破壊することになり、学位を授与された者及びその者と関わり合いをもった多くの者に対し、不利益を中心とする多大な影響を与えることになる。…” (報告書47-48ページ)

研究者としての能力がないにもかかわらず不正行為により業績を挙げ、研究者として生き残り、教育者としての能力もないのに大学でポジションを得ている人たちが存在する一方で、真面目に研究をして実績もあるのに職を得られず研究の世界から去っていく人が多いという不条理な現実があります。早稲田大学の今回の決定は、サイエンスに蔓延するこの著しい不公平感をさらに助長するものです。

“…本件博士論文には、著作権侵害行為、創作者誤認惹起行為、意味不明な記載、論旨が不明瞭な記載、Tissue誌論文との記載内容と整合性がない記載、及び論文の形式上の不備と多くの問題箇所が認められた。そして、本来であれば、これらの問題箇所を含む本件博士論文が博士論文審査において合格に値しないこと、本件博士論文の作成者である小保方氏が博士学位を授与されるべき人物に値しないことも、本報告書で検討したとおりである。
しかし、本件においては、本研究科の博士論文審査において本件博士論文が合格とされ、本件博士論文の作成者である小保方氏に対して博士学位が授与されてしまった。
このことは、博士学位を授与した早稲田大学、及び早稲田大学において過去に博士学位を取得した多くの人々の社会的信用、並びに早稲田大学における博士学位の価値を大きく毀損するものであった。…(報告書78ページ)

早稲田大学がいくら報告書の中で小保方氏らを厳しい、批判的な言葉で糾弾したとしても、行動が伴わなければ説得力を持ちません。「早稲田大学から授与された博士号には全く価値がな い」というメッセージを早稲田大学自らが日本中に発信しているだけのことです。

困ったことに、この問題は早稲田大学だけにとどまりません。日本で研究レベルがトップク ラスという私立大学の現状がこれでは、日本人の研究者が世界に出て行ったときに、「日本の大学から授与された博士号には全く価値がない」とみなされる恐れがあります。

また、報告書では提出論文が「下書き」だったのかどうかを論点の一つにしています。自分の大学院生活の集大成である博士論文を製本するときに、「下書き」と「本物」とを取り違える大学院生などいません。本来なら荒唐無稽すぎて論点にすらなり得ないのに、驚くべきことに、早稲田大学調査委員会は小保方氏の「うっかり下書き製本」説を真実だと認め、小保方氏の主張に寄り添う理由を挙げています。

“本調査において、小保方氏は、「本件博士論文は、最終的な完成版の博士論文ではなく、作成初期段階の博士論文を誤って製本してしまったものである。」等と供述する。また、小保方氏からは、かかる主張の根拠として、最終的な完成版の博士論文であると主張する論文(以下「小保方氏主張論文」という。)が平成26年5月28日に本委員会に対して提供され、小保方氏は、「小保方氏主張論文は、主査及び副査の本件公聴会における指導を受けて、公聴会時点の論文を修正して作成したものである。」等と供述する。…”(報告書34ページ)

“…本調査において、小保方氏から本取り違えの主張が初めてなされたのは、(a)平成26年4月30日であったが、小保方氏が本委員会に対して小保方氏主張論文を送付したのは、同年5月27日であり、主張が初めてなされた時点から小保方氏主張論文の送付がなされるまでに1か月程度の期間が経過しており、このことは、本取り違えの主張の真実性を否定する可能性がある。…”(報告書39ページ)

“…小保方氏主張論文が、本件博士論文の問題点を指摘され、最近作成したも(d)のだとすれば、「問題がある」等として報道等において厳しく批判がなされた序章の修正もなされているのが通常であるが、小保方氏主張論文の序章においては、この点が修正等されず残されている。また、ウェブサイトにおいて「問題がある」等として取り上げられているFig. 6の画像、Fig. 12のIの画像、Fig. 17等の修正がなされているのが通常であるが、やはり、小保方氏主張論文においては修正等されず残されている。…”(報告書38ページ)

こちらが本物でしたといって3年以上も遅れて提出された博士論文中には、まだ、下書きのときの不正行為の痕跡が修正されずにそのままたくさん残っていたので、最近作成されたものではないという証拠になるという、なんとも好意的な解釈です。

 

Tissue Engineering誌論文の内容を下敷きにしたという博士論文に数多くの不正行為が見つかったのですから、逆に、この不正まみれの博士論文と同じ研究内容のTissue Engineering誌論文にはそもそも不正行為がなかったのかどうかが非常に気になります。ここを追及しないのもおかしいのですが、調査書ではほとんど問題視していません。

“…第2章から第4章までは、Tissue誌論文で論述されている実験と同一、又は、その一連のものとして行われた実験をもとに記載されている。
Tissue誌は、いわゆる査読付欧文学術雑誌であり、その分野の高度の専門的知識をもち、かつ独立、公平性の高い査読者が論文内容のオリジナリティ、教育的価値及び有効性を考慮に入れた上で、内容を評価、検証し、その結果、内容の明確性、正確性、論理性等が掲載に値するとされた場合のみ、掲載を許される。そのため、Tissue誌がその掲載を受理したことは、査読者が上記一連の実験の実在性に疑問をもたなかったことを示している。
この事実に加えて、本調査においては、以下の事情が認められた。
(a) 小保方氏は、「これらの実験は主にハーバード大学で実施した。」、「それを裏付けるデータ等(ラボスタッフ共通の実験ノート等)は同大学に存在する。」等と供述する。
(b) S氏は、小保方氏と同様の供述をした上、さらに具体的に、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●等と供述する。
(c) 平成21年から平成22年の日付が入った小保方氏のノートの抜粋(写し)及び顕微鏡写真等の電子データが存在している。
これらの事情等に照らすと、本件博士論文第2章から第4章のもととなった実験の実在性を推認できる。..”

Tissue誌は査読付英文誌ですが、実は小保方氏が留学した先のハーバード大学チャールズ・バカンティ教授が作った雑誌です。論文受理の判断において、差読者による査読結果だでけでなく編集者の意向が大きく反映されることを考えれば、自分がFounding Editorである雑誌に自分の論文を掲載させることがいかに容易なことかは想像に難くありません。しかも、小保方氏の論文に関してはインターネット上でDNA電気泳動の写真データに関して疑義が持ち上がり、バカンティ教授が後から「修正」をしています。このようないきさつと、今回の問題の重大性を考えれば、ハーバード大学に存在するはず実験ノートの内容をチェックするくらいのことは当然すべきだったはずです。バカンティ教授に対してコンタクトをとらずに、まともな調査ができたのか甚だ疑問です。

参考

  1. 「先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」調査報告について(早稲田大学 2014/07/19):”2014年3月31日に設置した「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」による調査報告書が7月17日、早稲田大学総長 鎌田薫に提出されましたので、以下の通り公表いたします。…”
  2. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書 全文(7月19日掲載)(PDFファイル
  3. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書概要(7月17日掲載)(PDFファイル)
  4. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書 別紙(7月19日掲載)(PDFファイル
  5. 早稲田大学大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会の設置について (早稲田大学 2014/03/28):”早稲田大学は、3月17日付で先進理工学研究科から調査委員会設置の要請を受け、小保方晴子氏(2011年 先進理工学研究科博士後期課程修了、同 博士(工学)取得)の博士学位論文に関する調査委員会を3月31日付で立ち上げることといたしました。…”
  6. Haruko Obokata, Koji Kojima, Karen Westerman, Masayuki Yamato, Teruo Okano, Satoshi Tsuneda, and Charles A. Vacanti. Tissue Engineering Part A. March 2011, 17(5-6): 607-615. doi:10.1089/ten.tea.2010.0385.
  7. 文部科学省の研究大学強化促進事業の支援対象大学に選定 「国際研究大学」の地位確立を目指した研究環境の整備・改革を加速 (早稲田大学 ニュース 2013/08/06):このたび、本学が文部科学省の「研究大学強化促進事業」における支援対象大学に選定されました。本事業は、世界水準の優れた研究活動を行う大学群を増強し、我が国全体の研究力の強化を図るため、大学等による、研究マネジメント人材群の確保や集中的な研究環境改革等の研究力強化の取組を支援するものです。
  8. Tissue Engineering, Parts A, B, & C Founding Editor Charles A. Vacanti, MD Brigham and Women’s Hospital

AIDS研究者ら多数が搭乗していたマレーシア航空MH17便がミサイルにより撃墜され乗客乗員全員が死亡

ウクライナ東部でミサイルにより撃墜された旅客機(マレーシア航空MH17便)にはオーストラリアのメルボルンで開催される第20回国際エイズ会議(International AIDS Conference, 7/20-24)に出席する予定の研究者や活動家が多数搭乗していました。
Hundred renowned experts on board MH17

100-Plus HIV/AIDS Researchers On MH17: ‘Devastating Impact’

参考

  1.  The 20th International AIDS Conference (AIDS 2014)
  2. 旅客機撃墜「なぜこんなことに」 各国で憤りや自粛モード(日本経済新聞 2014/7/19 1:47):”…同機にはメルボルンで20日から開かれる「第20回国際エイズ会議」に参加する研究者らも搭乗していた。会議の会場では搭乗者の約3分の1に当たる100人前後が会議参加者との情報が流れ、動揺が広がった。…”
  3. 豪で国際エイズ会議開会 マレー機乗客も参加予定 (朝日新聞DIGITAL 2014年7月20日):”ウクライナ東部上空で撃墜されたとみられるマレーシア航空機の乗客の一部が参加予定だった「第20回国際エイズ会議」が20日、豪南東部メルボルンで始まった。豪メディアは当初、約100人の乗客が会議に参加予定と報じていたが、実際は6人だったという。参加者の一人で、国際機関「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」で戦略・投資・効果局長を務める国井修さん(51)=ジュネーブ在住=は朝日新聞の電話取材に対し、「マレーシア航空は料金も安く搭乗を検討していたが、私は帰りの日程が合わず別の航空会社にした。素晴らしい仕事をしていた方々が犠牲になり、怒りが止まらない」と語った。…”
  4. AIDS researcher Joep Lange confirmed among dead in Malaysia jet shoot-down (The Washington Post,  July 17 at 11:51 PM)

早稲田大学博士論文不正認定も学位は取消さず

STAP細胞論文捏造事件に絡んで小保方晴子氏の出身大学である早稲田大学における博士論文不正が問題になりました。早稲田大学は調査委員会を立ち上げて不正の解明に当たってきましたが、ついにその調査結果が公表され、ニコニコ生放送で中継されました。

博士論文の実験結果の図が、コスモバイオなどのウェブサイトから写真を転用していたことが明らかになったことが不正を裏付ける決定的証拠とみなされたにもかかわらず、「あれは下書きでした。」と言ってのけた小保方晴子氏のあの発言はあまりにも衝撃的でした。あの時、誰もが妄言と受け止めたはずです。

ところが、今日、あの日よりもさらに大きな衝撃が走りました。早稲田大学は、小保方氏の「下書き」という妄言を認め、あとから提出された博士論文を受け入れたのです。実験ノートはほとんど確認できなかったと認める一方で、該当する実験は行なわれたものと認定。早稲田大学の学位授与の過程はでたらめすぎて、もう言葉を失います。

副査に名を連ねていたハーバード大学のバカンティ教授は、小保方氏の博士論文を読むように頼まれたことはないと発言していたにもかかわらず、その点に関しては記者会見でも回答は言葉を濁されていました。記者会見の受け答えを聞く限り、早稲田大学はバカンティ教授に対して正式なコンタクトを取らなかったようです。これでは、まともな調査だったとは到底考えられません。

小保方 学位取り消さない早稲田調査委に「納得いかない」記者が続出7/17【全】

【会場のご案内】2014/07/17(木) 開場:16:50 開演:17:00

理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが、2011年に
早稲田大学大学院先進理工学研究科で博士号を取得した論文に
文章や画像の流用が指摘された問題で、同大学が2014年3月31日に設置した
「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」
による調査報告書が、7月17日中に鎌田薫 早稲田大学総長に提出される予定です。
大学側は小保方氏に授与した博士号の取り扱いを検討する方針です。

ニコニコ生放送では、小林英明 調査委員会 委員長による記者会見の模様を
生中継でお届けいたします。

小保方氏の博士論文は、1月にSTAP細胞論文を発表した後、ネットで
問題点が指摘されました。英語で書かれた約100ページの論文のうち、
冒頭の約20ページの文章が米国立衛生研究所のサイトとほぼ同じ記述だったほか、
実験結果の画像としてバイオ系企業のサイトに掲載された写真を
切り取って使ったのではないかと疑われています。

【出席者】
小林英明 調査委員会 委員長(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)

http://live.nicovideo.jp/watch/lv186404938

参考

  1. 早稲田大学 常田聡 研究室の博士論文のコピペ疑惑 他者著作物との類似性が見られた博士論文  (計23報)
  2. 小保方氏の博士論文、盗用疑惑の調査公表へ 早大 (産経ニュース2014.7.16 21:18):理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーの博士論文に文章や写真の盗用が疑われた問題で、早稲田大は16日、調査委員会の結果を17日に公表すると明らかにした。
  3. 博士学位取り消しについて 早稲田大学 2013/10/21 早稲田大学は、下記のとおり、不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明しましたので、当該学位について、授与の取り消しを決定しました。現在、本人に学位記の返還を求めています。(注:後日学位記の返還があった。2013年12月26日追記)

STAP細胞=ES細胞混入説は査読者が指摘済み

ネイチャー誌に掲載され、ようやく取り下げられたSTAP細胞論文ですが、最終的にネイチャーに掲載される前にも、2012年にネイチャー、セル、サイエンスに投稿されていました。ネイチャー掲載後に噴出した疑問の多くは、査読段階ですでに指摘されていたという事実を毎日新聞が伝えています。

参考

  1. STAP論文:12年サイエンス審査時 ES細胞混入指摘 (毎日新聞 2014年07月05日):”STAP細胞の論文不正問題で、小保方(おぼかた)晴子・理化学研究所研究ユニットリーダー(当時は客員研究員)らが、2012年7月にほぼ同じ内容の論文を米科学誌サイエンスに投稿した際、審査した査読者からES細胞(胚性幹細胞)が混入した可能性を指摘されていたことが、毎日新聞が入手した資料で明らかになった。…”
  2. STAP論文:ネイチャー検証不足露呈 編集者判断強く (毎日新聞 2014年07月05日):”…取材で判明した英科学誌ネイチャーなど3誌の査読者たちの指摘は、ES細胞の混入以外にも、専門家の間で現在議論されているSTAP細胞を巡る科学的な疑問点をほぼ網羅していた。…”

インターネット上の研究不正疑義も匿名の告発に準じて取り扱う「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案 のパブリックコメント募集中~8月1日まで

インターネット上の研究不正疑義も匿名の告発に準じて取り扱うという内容を盛り込んだ「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案に関するパブリックコメントの募集が現在行なわれています。

本節で対象とする不正行為(特定不正行為)は、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用である。ただし、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠った場合を除き、故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない。(第3節 研究活動における不正行為への対応 1-(3))

特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されていることを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する機関が確認した場合、当該機関に匿名の告発があった場合に準じて取り扱うものとする。(3-4 告発の受付によらないものの取扱い③)

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(案)について

ガイドライン案、パブリックコメント提出フォームなどへのリンク:

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案のパブリックコメント(意見公募手続)の実施について 意見・情報受付開始日 2014年07月03日 意見・情報受付締切日 2014年08月01日 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000698&Mode=0

参考

  1. パブリックコメント:意見募集中案件詳細 産業一般 /科学技術振興 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案のパブリックコメント(意見公募手続)の実施について (電子政府の総合窓口 イーガヴ) 意見・情報受付締切日    2014年08月01日
  2. 不正調査、ネットでの指摘も対象に 文科省の新指針案 (朝日新聞デジタル 2014年7月3日01時21分):”…STAP論文ではネット上の指摘が不正発覚のきっかけになったことから、指摘を把握した段階で調査を始めるよう大学や研究機関に求める。…”
  3. 研究不正、ネットの指摘で調査も 文科省が新指針 (日本経済新聞 2014/7/3 0:00): “…インターネットで疑問点が指摘された場合でも、科学的根拠など必要な情報を含んでいれば、告発と同様に扱うとした。…”
  4. 研究不正新指針:組織の責任明確化 罰則も規定 (毎日新聞 2014年07月03日 00時58分(最終更新 07月03日 01時12分):”…インターネット上で指摘された疑義も告発と同様に扱うことも盛り込んだ。…”
  5. 「研究者の基本」欠落も不正=定義見直し、指針改定へ-文科省 (時事ドットコム 2014/07/03-00:05) :”…STAP細胞問題を受け、改定案は研究不正の定義に「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を怠った」場合を加え、故意でなくても不正行為に当たるとした。…”

2014年7月2日のヴァカンティ氏の声明

Statement for news media

In science, the integrity of data is the foundation for credible findings. I am deeply saddened by all that has transpired, and after thoughtful consideration of the errors presented in the RIKEN report and other concerns that have been raised, I have agreed to retract the papers.  Although there has been no information that cast doubt on the existence of the stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP) cell phenomenon itself, I am concerned that the multiple errors that have been identified impair the credibility of the manuscript as a whole.  I am encouraged by recent news which suggests that Minister Hakubun Shimomura and RIKEN President Ryoji Noyori will allow sufficient time to replicate the core STAP cell concept that my brother Martin and I originally hypothesized, and trust that it will be verified by the RIKEN as well as independently by others.

– Charles A. Vacanti, MD

July 2, 2014

(https://research.bwhanesthesia.org/research-groups/cterm/statement)

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Haruko Obokata,
Teruhiko Wakayama,
Yoshiki Sasai,
Koji Kojima,
Martin P. Vacanti,
Hitoshi Niwa,
Masayuki Yamato
& Charles A. Vacanti

Nature
511,
112
(03 July 2014)
doi:10.1038/nature13598

Published online
02 July 2014

Several critical errors have been found in our Article and Letter (http://dx.doi.org/10.1038/nature12969), which led to an in-depth investigation by the RIKEN Institute. The RIKEN investigation committee has categorized some of the errors as misconduct (see Supplementary Data 1 and Supplementary Data 2). Additional errors identified by the authors that are not discussed in RIKEN’s report are listed below.

(1) Figure 1a and b in the Letter both show embryos generated from STAP cells, not a comparison of ES- and STAP-derived chimaeric embryos, as indicated in the legend.

(2) Extended Data Fig. 7d in the Article and Extended Data Fig. 1a in the Letter are different images of the same embryo and not, as indicated in the legends, a diploid chimaera embryo and tetraploid chimaera embryo.

(3) There is an erroneous description in Fig. 1a in the Letter. The right panel of Fig. 1a is not a ‘long exposure’ image at the camera level but a digitally enhanced one.

(4) In Fig. 4b of the Letter, STAP cell and ES cell are wrongly labelled in a reverse manner.

(5) In the Article, one group of STAP stem cells (STAP-SCs) was reported as being derived from STAP cells induced from spleens of F1 hybrids from the cross of mouse lines carrying identical cag-gfp insertions in chromosome 18 in the background of 129/Sv and B6, respectively, and that they were maintained in the Wakayama laboratory. However, further analysis of the eight STAP-SC lines indicates that, while sharing the same 129×B6 F1 genetic background, they have a different GFP insertion site. Furthermore, while the mice used for STAP cell induction are homozygous for the GFP transgene, the STAP-SCs are heterozygous. The GFP transgene insertion site matches that of the mice and ES cells kept in the Wakayama laboratory. Thus, there are inexplicable discrepancies in genetic background and transgene insertion sites between the donor mice and the reported STAP-SCs.

We apologize for the mistakes included in the Article and Letter. These multiple errors impair the credibility of the study as a whole and we are unable to say without doubt whether the STAP-SC phenomenon is real. Ongoing studies are investigating this phenomenon afresh, but given the extensive nature of the errors currently found, we consider it appropriate to retract both papers.

http://www.nature.com/nature/journal/v511/n7507/full/nature13598.html

相澤慎一氏がSTAP現象検証計画を説明

【STAP現象】11検証計画 小保方晴子氏の参画や計画の詳細に関する会見【2014/7/2】

小保方氏の実験参画についてや今後の検証実験の詳しい進め方について説明となります。15分19秒のところで、動画が数分飛んでいます。
【出席者】
●相澤慎一 実験総括責任者(理研 発生・再生科学総合研究センター 特別顧問)
●齋藤茂和 理研 神戸事業所 所長

小保方氏の現在の状態について

24:28 (記者)小保方さんに今日お会いになった方(音声不明瞭)でいいんですけど、今日の様子どうだったのかということと、皆さんに、検証実験に参加する上での挨拶ですとか意気込みを語るようなことはあったんでしょうか?
(相沢氏)小保方さんは、まだそのへん、使い物になるような状態じゃ、あっ、すいません。星野監督が松井に言うように、使い物にならないなんて、30を越した女性のユニットリーダーに使う言葉としては全く不適当な言葉なんで、取り消させて下さい。要するにまだそんなに、彼女に納得がいくような条件よりもはるかに遠く、物事はできないような状態なんです、精神状態が。少しそれが落ち着いて彼女なりに実験ができるという状態にいつなってくれるのかという、生活環境も含めたですね、配慮が、当面私としては最大のテーマで、今の時点で彼女にすぐ実験をやってどこまで行くのよ?とか、そういうことは、正直言ってとてもできる状態ではありません。というのは、なぜそういうことを申し上げられるのかと言うと、一ヶ月前ほどから主治医の許可のあるとき時々こちらに来られるようになって、その時助言を求めるというふうな時間があったときの彼女とのコンタクトの中での私の判断はそういうことで、少し生活的にある程度きちっとした生活が送れるようにすることが今まず第一という状態です。

小保方氏が検証実験中にも不正を行いかねないという危惧について

23:11 (記者)そもそもなぜモニタリングをするということなんでしょうか?
(相沢氏)なぜモニタリングをするかというのはですね、そのようにしなさいという改革推進本部からの指示なので、それは推測をするしかできないんですけれども。推測をすると、「多く世の中には、そこまでやらないと彼女は何か魔術を使って不正を持ち込むのではなかろうかという危惧があるためにそれを求めてる」と、これは私の推測です。

23:56(記者)小保方氏と丹羽氏との実験を分ける理由は何でしょうか?
(相沢氏)それも基本的に改革推進本部から、2つに分けて基本的に行いなさいということで、「同じところでやっていると、丹羽さんの、(丹羽)責任者の行なう実験の中に、彼女がこそっと細胞とか何とかを混ぜてしまうかもしれない」とか、そういうことを危惧されてのことであろうと、これも私の推測です。

検証実験の意義について

34:14 (記者)そもそもこの検証実験の目的というか意義は何なのでしょうか?論文が撤回されて、科学的根拠がないということだと、あるかどうかを示すんだったらもう一回論文を出し直せばいいと大多数の人は考えると思うんですけど。これをやる意味っていうのは何なんでしょうかね?

34:29 (相沢氏)そういうご意見のあることは重々承っています。もう無いものなんだから検証実験をわざわざ国民の税金を使ってまでやる必要はないんではなかろうかというご意見を承っております。そういうご意見の強いことも重々承知しておりますが、しかし、科学的に見たときに全て、一点の曇りも無く(STAP細胞が)無いよというわけではなくて、やっぱり最終的な決着は本人が参加して、「しかし、やっぱり、どうしても再現できませんでしたね。」というのがですね、STAP現象・細胞は無いよということには、できるならばそこまでやることが、最善の、科学研究をやるものとしては、そこまでなんとかやらせていただきたいと、そういうふうに思っています。

実験の練習の必要性について

54:00 日経サイエンスの古田です。準備段階と、その後の実際の実験に入る段階というところの違いを教えていただきたいんですが。…
55:30(古田氏)準備って何ですか?マウスを渡して練習するってことですか?
(相沢氏)そうですね。
(古田氏)実験手技の練習をする?
(相沢氏)はい。酸浴の練習もすることになると思いますね。そういうふうにして再現できたとしても、それは再現できたとは認めない。あくまで再現は管理された新たな実験室で第三者の立会いのもとでやった実験だけを再現されたとみなす。…

 

小保方晴子研究ユニットリーダーらによるSTAP細胞の検証実験7月1日~11月30日

理化学研究所はSTAP細胞の存在を調べるための検証実験に小保方晴子研究ユニットリーダーを参加させると発表しました。検証実験の期間は7月1日~11月30日の5ヶ月間。

生物学の研究者の本音が飛び交うインターネット匿名掲示板(STAP細胞の懐疑点 PART488 http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/life/1404116917/)での反応の一部を紹介します(字句の一部を●●に変更)。

133 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 19:52:22.36
スゴいね理研って
山ほど残っている論文疑惑については消極的なのに
捏造容疑者に再現実験させるとか狂気の沙汰

336 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:44:26.34
理研ぐるみで捏造するんだろw

337 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:44:34.25
理研が再現実験しても
だれも信用しないから
やっても マジ意味無い。

347 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:45:55.73
論文の取り下げ決定したんだろ
再現するための根拠からして消滅、全ては白紙ってことじゃないか
実験自体全くの無意味なのに何をやろうというんだ
再現実験=これから1から論文作りなおすということ?
理研が何をしようとしてるのか全く理解できない

398 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:55:56.48
再現実験したければ小保方が引き受けてくれるところを自力で探すべきなのだが

467 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:12:09.22
再現実験では捏造そのものを断定することは出来ないんだよ。
失敗しても
「もしかしたら、まだ把握できていない繊細な条件があり、再現できなくなったのかも」
とか言われたら、「科学的な検証」を重視する竹市センター長は否定できないものw
だから、サンプル調査や論文疑惑調査の方に注力すべきなんだよ。
こんな当たり前のことすら理研のお●●さん達は理解できないのですね。

472 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:13:30.88
本人がやりたければ来てもいいよ
ではなく
小保方様、どうかきてくださいませ
理研終わり過ぎ

521 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:28:25.73
捏造の張本人が検証実験!!
腹痛いわ 理研の誰が決めてんのよ

952 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 23:13:06.85
オボコメントを堂々とホームページに載せる理研
恥知らずにも程がある

984 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 23:21:04.65
日本の科学は狂っている

参考

  1. 小保方氏がSTAP検証に参加 懲戒委の審査、一時停止 (日本経済新聞2014/6/30 19:10):理化学研究所は30日、STAP細胞が存在するかどうかの検証実験に、小保方晴子研究ユニットリーダー(30)を参加させると発表した。期間は7月1日~11月30日の5カ月間を予定し、実験をビデオで記録するなど透明性を確保するとしている。…

CAG-GFPを15番染色体の片方に持つマウスの謎

「CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスはどこ由来なのか?」

京都大学iPS細胞研究所で遺伝子組み換えマウスが管理区域外で見つかり、文部科学省が厳重注意、山中伸弥所長が謝罪記者会見を開くということが以前ありました。

今回のSTAP細胞論文捏造事件では、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)で正体不明の遺伝子組み換えマウス(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウス)が使われていたことが明らかになっており、遺伝子組み換えマウス管理の杜撰さという点では、事の重大さは先の京大の件とは比較になりません。小保方氏が若山氏から供給されたマウス以外は使っていないというのなら、一体誰がどこからこの遺伝子組み換えマウスを理研CDB内に持ち込み、小保方氏の実験にそれが入り込んできたのか?大きな謎です。このようなデタラメなことが起きた真相を明らかにすることもせずに、このようなデタラメの上に成り立っていた「STAP現象」の再現性を科学的に検証しよ うとするのはあまりにも不毛です。ましてや世界に冠たる理研の科学者たちが、データ捏造が確定した(理研調査委員会 による)人間の「助言」を求めるなど、あり得ないことです。

参考

  1. 「監視下で小保方氏参加実験を」 理研・竹市センター長(神戸新聞 2014/6/26 22:03):”… 理研再生研で進められている検証実験には、小保方氏は助言しているが、立ち会ってはいないという。…”

2014年6月16日
CDBに保全されているSTAP関連細胞株に関する検証について
発生・再生科学総合研究センター
センター長 竹市雅俊

背景
STAP論文では、脾臓から採取された免疫細胞が弱酸性にさらされることにより、多能性を獲得することを報告した。STAP細胞から増殖可能な細胞株としてSTAP幹細胞が作製された。STAP論文に関する疑惑が明らかになった後、山梨大学若山教授は第三者研究機関にSTAP幹細胞株のDNA解析を依頼した。その情報は理研と共有され、理研はCDBに保全されているSTAP関連幹細胞株の解析を進めてきた。
CDB小保方研STAP幹細胞株の検討目的
CDBに保全されているSTAP関連細胞株(STAP幹細胞、FI-幹細胞株)およびそれらから作出されたキメラマウスの遺伝子情報を比較解析し、各細胞株間の遺伝子レベルの相違と起源に関する客観的に検証可能なデータを得ることを目的とする。

CDBで保全されている小保方研細胞株の解析と結果
小保方研細胞株サンプルの遺伝子解析(遺伝的背景およびCAG-GFP挿入部位の確認)
• 小保方研細胞株サンプルのSTAP幹細胞6株に関して、遺伝的背景を6種のSNPマーカーを用いて検査したところ、以下の結果が得られた。GLS-1およびGLS-11については核型の解析も行った。
1. FLS-3およびFLS-4: B6129F1: CAG-GFP, ♂
2. GLS-1およびGLS-11: B6: oct4-GFP, ♂(核型の解析ではY染色体の一部に欠失が見られる)
3. AC129-1およびAC129-2: 129B6F1: CAG-GFP ♂ (129 CAG-GFP マウス由来とされたが, 129B6F1由来であることが判明)。
• CDBでは、若山氏から、STAP幹細胞のCAG-GFP遺伝子挿入位置の情報提供を受け、上記STAP幹細胞株のCAG-GFP遺伝子挿入部位を検証した。
STAP幹細胞株AC129-1およびAC129-2は、18番染色体GFPの挿入を持つ若山研GFPマウスと同じ部位に、1コピーのCAG-GFP遺伝子の挿入を持つことが判明した。かつ、相同染色体の両方に挿入されていることも若山研GFPマウスと一致した。他方、FLS-3およびFLS-4に関しては、15番染色体の片方の染色体にGFP遺伝子が挿入されていることが判明した。また、CAG-GFP遺伝子は複数コピーがタンデムに並んだ形で挿入されていた。
これらの結果は若山研のサンプルの解析結果と一致した。

解析結果に対する見解
1.若山氏が提供されたとされる光るマウス(CAG-GFP遺伝子保持マウス)から小保方氏がSTAP細胞を作成し、それを若山氏が受け取って樹立したSTAP幹細胞株に関して、保管されていたストックの解析から、CAG-GFP遺伝子の挿入状況の違いにより、STAP幹細胞は2種類の異なる遺伝子型のマウス由来であることがわかった。一方は、若山氏が提供した(CAG-GFPを18番染色体にホモで持つ)もの、もう一方は由来不明(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで多コピー持つ)のものであった。
2.CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスがどこ由来なのか、そのマウス個体がSTAP細胞からSTAP幹細胞が樹立された時期に若山研(あるいは小保方研)に生存個体として存在していたのかは不明であり、今後、さらなる検証を進める。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140616_2/20140616_2_1.pdf

小保方晴子研究ユニットリーダーの研究室の冷凍庫から『ES細胞』が見つかる

小保方晴子研究ユニットリーダーが”STAP細胞”として若山教授に渡していたものは実はES細胞であったという疑惑を裏付ける事実が次々と明らかになっています。

NHKなどの報道によると、小保方研究室の冷凍庫からは「ES」とラベルされた容器が見つかり、その中の細胞の遺伝子を解析したところ、若山教授が保存していたSTAP幹細胞の遺伝子の特徴と一致するという調査結果が出ました。

また、日経サイエンスなどの報道にあるように、小保方氏らのNATURE論文に付随するデータとして公開されていたSTAP細胞の遺伝子データ内に、胎児のうちに死亡するはずの「トリソミー」を示す情報が含まれていることが指摘されました。胎児のうちに必ず死亡してしまうので、STAP細胞を作るときに使われたはずの「生まれてから1週間のマウス」は存在しえないことになります。「存在しないもの」からSTAP細胞を作ったという小保方氏の主張は、信憑性が全くないといわざるを得ません。

STAP細胞が存在する可能性を示す科学的証拠などもともと何もなかったというのに、それでもなおSTAP細胞の存在の可能性を検証しようとすることは、果たして科学的な態度と言えるのでしょうか?

参考

  1. STAP細胞 元細胞の由来 論文と矛盾 (日経サイエンス 号外 2014年6月11日):”理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが作ったSTAP細胞の一部が,論文に記したような新生児マウスの細胞から作った ものではないことが,理研の内部資料から明らかになった。小保方氏らが論文とともに公開した遺伝子データを新たな手法で解析したところ,STAP細胞に含 まれるほぼすべての細胞が,8番染色体が3本ある「トリソミー」であることが判明。マウスの場合,8番トリソミーは胎児のうちに死亡し,生まれることはな い。STAP細胞は新生児マウスから取って作ったのではなく,シャーレで培養された細胞だと考えられる。8番トリソミーは研究室で培養されているES細胞 (胚性幹細胞)の2 ~ 3割に見られるとの報告があり,この“STAP細胞” はES細胞だった可能性が高い。”
  2. STAP問題 冷凍庫に「ES」容器(NHK NEWSWEB 6月16日 19時51分):”…これについて日本分子生物学会の副理事長で九州大学の中山敬一教授は、「これまではSTAP細胞はあるという前提で話が進んでいたが、今回の分析結果は実際にはES細胞だった可能性を強く示している。こうしたデータが明らかになった以上、ミスでは説明がつかず、人為的な混入も考えられるので、小保方さんや笹井さんがみずから会見し、説明するのが科学者としての義務だ」と指摘しています。”
  3. STAP細胞:小保方研究室に「ES」と書かれた容器(毎日新聞 2014年06月16日 23時32分 最終更新 06月17日 05時29分) “「STAP細胞」の論文不正問題で、理化学研究所の関係者によると、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸市)の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーの研究室の冷凍庫からラベルに「ES」と書かれた容器が見つかった。

竹市雅俊センター長らによる記者会見【2014/6/12】

【STAP細胞】9竹市雅俊センター長らによる記者会見【2014/6/12】

参考

  1. STAP細胞の論文問題で 独立行政法人 理化学研究所 は、小保方晴子研究ユニットリーダーが所属する理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の竹市雅俊センター長らが12日に会見し、一連の経緯や問題点などを自己点検した検証結果を公表すると発表しました。再発防止のため見直すべき点などを盛り込んだ「提案書」の取りまとめに向けた作業を行う、外部の有識者でつくる改革委員会が終了次第、生中継でお届けいたします。

■18:30メド~ 改革委員会によるブリーフィング

【登壇者】
岸輝雄   委員長
間島進吾  委員長代理
市川家國  委員
塩見美喜子 委員
竹岡八重子 委員
中村征樹  委員

■20:00メド~ 竹市雅俊センター長らによる記者会見
【登壇者】
坪井裕  理化学研究所 理事
竹市雅俊 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター長
鍋島陽一 CDB自己点検検証委員会 委員長

(http://live.nicovideo.jp/watch/lv182653123)

「勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救い」

理化学研究所の研究不正再発防止のための改革委員会は、2014年6月12日に「研究不正再発防止のための提言書」を理研理事長野依良治氏に提出し、その内容が公開されました。

「小保方さん所属組織”解体”を」理研の改革委員会(14/06/12)

日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複 数名いることは、理研にとって大きな救いである。本委員会はかかる研究者の勇気に敬意を表すると共に、このような行動により不利益な扱いをされることがな いよう、理研に対し、強く求めるものである。

Nature論文は全て撤回される見通しとなったが、STAP問題が日本の科学研究の信頼性を傷つけている事実は消えることはない。日本の代表的な研究機 関である理研が、STAP問題を真摯に総括し再発防止策を実行することができるのか、国内外から注目されている。STAP問題のような研究不正をめぐる不 祥事は、科学者自らによって解明、解決されなくてはならない。(http://news.mynavi.jp/news/2014/06/12/526/)

参考

  1. 研究不正再発防止のための提言書 (独立行政法人理化学研究所 平成26年6月12日)(理研ウェブサイト内PDFリンク):”…また本委員会の聴取に対し、竹市センター長は、小保方氏の採用を決めた人事委員会のメンバーは、「同時に採用された他のPIに比べ、小保方氏は研究者としてのトレーニングが不足している」、と認識していたが、小保方氏自身の研究テーマに研究予算をつける必要等を考慮すると研究員ではなくRULとして採用する必要があった、と答えている。以上の経過から、理研CDBは、小保方氏の研究者としての資質と実績を評価して、というよりも、小保方氏のSTAP研究の成果が魅力的であり、小保方氏をRULに採用することにより、iPS細胞研究を凌駕する画期的な成果を獲得したいとの強い動機に導かれて小保方氏を採用した可能性がきわめて高い。…”
  2. CDB 自己点検の検証について (平成26 年6 月10 日 CDB 自己点検検証委員会) (理研ウェブサイト上のPDFリンク)
  3. 研究不正の再発防止にはCDB解体など抜本的な改革が必要 – 理研改革委員会 (マイナビニュース 2014/06/12):”…また、提言書では小保方氏の採用に信じがたい杜撰さがあったとしており、採用に加担した竹市センター長や西川副センター長(当時)、相澤副センター長(当時)などの理研 発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)のトップにも責任があるとするほか、理研本体の研究不正防止に対する認識不足やガバナンス体制の脆弱性、責任の所在が明らかになることを怖れての及び腰での取り組みなどを指摘しており、再発防止に向け、理研に対し、対象となる論文が取り下げられた場合であっても、個人および責任の明確化と相応の厳しい処分の実施、ならびにコンプライアンス担当理事と研究担当理事の交代、そしてCDBの解体ともし新たに発生・再生科学分野を含む新組織を立ち上げるのであれば、トップ人員を刷新し、理研のためではなく、日本全体の研究力強化に貢献できる体制の構築などを掲げている。…”
  4. 理研:改革委、再生研の解体提言…「関係者厳しい処分を」 (毎日新聞 最終更新 06月12日 22時09分):”…小保方氏には「研究者としての資質に重大な疑義がある」として「極めて厳しい処分」を求め、CDBの竹市雅俊・センター長、共著者の笹井芳樹・副センター長ら幹部の処分と交代を盛り込んだ。…”
  5. 竹市・笹井氏ら4人の辞任求める 理研改革委(日本経済新聞 2014/6/12 19:58):”…再生医療の中核拠点である理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)を早急に解体するとともに、竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長ら上層部4人の辞任を求めた。…”
  6. 「小保方氏の採用過程、信じがたい杜撰さ」 理研改革委 (朝日新聞DIGITAL 2014年6月12日21時27分):”…通常実施する英語による公開、非公開のセミナーをせず、推薦状もない状態だったのに採用を決めるなど、「にわかには信じがたい杜撰(ずさん)さ」と批判した。…”

改革委員会が理研理事全員の交代を求める

報道によれば、研究不正再発防止のための改革委員会が理化学研究所の理事の入れ替えを求める内容を盛り込んだ報告書を来週にも公表するそうです。STAP細胞論文不正事件の真相究明は、日本のサイエンスの信頼を取り戻すためには不可欠です。理化学研究所の運営には、自分自身の保身や組織の防衛でなく、日本の科学研究の将来を本当に考えられる人が望まれます。

理事長 野依 良治 (就任年月日 2003年10月1日)
主要経歴
1963年4月     京都大学採用
1968年2月     名古屋大学理学部助教授
1972年8月     同大学理学部教授
1997年1月     同大学大学院理学研究科長・理学部長(併任)
2002年4月     同大学高等研究院長(併任)

理事 川合 眞紀 (就任年月日2010年4月1日)
主要経歴
1985年5月     理化学研究所採用
1991年5月     同研究所表面化学研究室主任研究員
2004年3月     東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
独立行政法人理化学研究所表面化学研究室招聘主任研究員(非常勤)
2009年4月     独立行政法人理化学研究所基幹研究所副所長(非常勤)

理事 古屋 輝夫 (就任年月日2009年4月1日)
主要経歴
1979年4月     理化学研究所採用
2006年2月     独立行政法人理化学研究所横浜研究所研究推進部長
2008年7月     同総務部長

理事 大江田 憲治 (就任年月日 2011年4月1日)
主要経歴
1980年4月     日本学術振興会奨励研究員
1982年4月     住友化学工業(株)採用
2002年7月     住友化学工業(株)生物環境科学研究所
分子生物グループ・グループマネージャー
2007年1月     内閣府 大臣官房審議官(科学技術政策担当)
2010年4月     住友化学(株)フェロー

理事 坪井 裕 (就任年月日 2012年9月19日)
主要経歴
1982年4月     科学技術庁採用
2000年6月     科学技術庁原子力局核燃料課長
2008年8月     文部科学省研究開発局開発企画課長
2009年7月     文部科学省大臣官房政策課長
2010年7月     経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2012年9月     退職(役員出向)

理事 米倉 実 (就任年月日2013年4月1日)
主要経歴
1981年4月     科学技術庁採用
2004年1月     文部科学省研究振興局基礎基盤研究課長
2006年7月     独立行政法人理化学研究所経営企画部長
2009年7月     経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2010年7月     独立行政法人宇宙航空研究開発機構執行役
2012年1月     筑波大学理事・副学長
2013年3月     退職(役員出向)
http://www.riken.jp/about/executive/

 

研究不正再発防止のための改革委員会 (平成26 年4 月10 日現在)
市川 家國 信州大学医学部 特任教授
岸 輝雄 新構造材料技術研究組合 理事長
塩見 美喜子 東京大学大学院理学系研究科 教授
竹岡 八重子 光和総合法律事務所 弁護士
中村 征樹 大阪大学全学教育推進機構 准教授
間島 進吾 中央大学商学部 教授、公認会計士
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140410_2/140410_1.pdf

参考

  1. 理研の全理事に交代要求へ 改革委「自浄作用が不十分」 野依氏は除く (産経ニュース 2014.6.6 10:00)新型万能細胞とされる「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、外部有識者でつくる理化学研究所の改革委員会が、理研の理事全員の交代を求める方針を固めたことが5日、分かった。来週にも公表する報告書に盛り込む。トップの野依良治理事長(75)の交代は求めず、同氏に理事5人の最適な配置を求める。