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ハゲタカ学会からのこんな座長依頼・参加勧誘メールに引っ掛かっちゃダメ!

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国際ハゲタカ学会という言葉が新聞記事タイトルにあって、一瞬、ハゲタカという動物に関する学会かと思いました。ハゲタカジャーナルから、ハゲタカ学会までくるとちょっとハゲタカに申し訳ない気がします。と思って、ウィキペディアをみたら、ハゲワシという動物はいますがハゲタカという生物種は存在しないようなので(=ハゲタカは俗称)、ホッとしました。

 

ハゲタカ学会の特徴

ハゲタカ学会に詳しい研究者によると、無関係の複数分野にまたがる学会を合同で開く▽参加を勧誘するメールを不特定多数に送る▽ホームページに運営者情報が明記されていない▽発表概要の審査が異常に速い――などの特徴がある。(「国際ハゲタカ学会」横行 料金払えば審査なく参加 「業績」ではく付け 2019年1月19日 毎日新聞

 

ハゲタカ学会の勧誘メールの文例

不特定多数に参加を勧誘しているメールの文例を紹介します。個人名と学会名と日程、セッション番号は、XXXX、YYYY, ZZZZ、OOOOと伏字にしておきます。分野違いの研究者にメールを送りつけて、学会のセッションの座長に勝手に勧誘し、あなたの研究分野でなければ別の人に回せという、チェーンメールまがいのことまで要求しています。

Dear Dr. XXXX YYYY,

I’m writing to follow-up my last invitation as below, would you please give me a tentative reply? Thank you very much. I apologize for the inconvenience if the letter disturbed you more than once.

It is our great pleasure and privilege to welcome you to join the 8th World ZZZZ Convention-2017, which will take place in Macao, China during November OO-OO, 2017 We would like to welcome you to be the chair/speaker in Theme OOO: Stem Cell and Regeneration while presenting about XXXX YYYY….

If the suggested thematic session is not your current focused core, you may look through the whole sessions and transfer another one that fit your interest (more info about the program is available at (以下、割愛)

 

新聞報道によれば、ハゲタカジャーナルを刊行する雑誌社が「ハゲタカ学会」を主催するケースが多いそうです。自分のメールボックスから過去に来た怪しいメールをチェックすると、こんなものもありました。transdisciplinaryとか、integrativeと言われると、全ての研究領域が含まれるので、分野違いだから怪しいという判断がしにくくなりますが、学会の権威をアピールするためにいきなりノーベル賞受賞者が招待講演者だと強調するあたりに、うさんくささを感じます。(名前はすべて伏字にしました)

Dear Dr.XXXXXX, Yyyyyy,

Greetings from Integrative Biology 2018!!

Hope this email finds you in best of health & spirit

We take the privilege to invite you to attend as a speaker at the “International Conference on Integrative Biology” during February 26-28, 2018 at Bangkok, Thailand. Integrative Biology 2018 will focus especially on collaborations among biologists and to share transdisciplinary integrative thinking to unravel the core principal mechanisms and process in biology and medicine related to health and disease.

For more details visit the event website: http://www.integrativebiologyconference.org/

Invited Guest Speakers @ Integrative Biology 2018 Conference

1. Prof. AAAA, Nobel Prize Laureate in Chemistry (2009)

2. Prof. BBBB, Twice Nominee for Nobel Prize

3. Dr. CCCC, Associate Professor, Texas Woman’s University, USA

4. Dr. DDDD, Professor of Biology and History, York University, Canada

5. Dr. EEEE, University of Almeria, Spain

If you are interested you can submit your abstract and proposals to integrativebiology@cenetriconferences.com

驚いたことに、今チェックしてみたらこの学会は開催された形跡がありません。http://www.integrativebiologyconference.org/のリンク先を見ると、

Hi,

Due to unforeseen circumstances, this event has been Postponed.

という簡単なメッセージが表示されただけでした。学会参加勧誘メールをランダムに送ったあげく、勝手に学会を”延期”して何の説明もなしなんて、まともな団体がやることではありません。学会名International conference on Integrative Biology で検索すると、2019年の案内ページがありました。しかしこのURLを見ると、http://integrativebiologyconference.blogspot.com/2014/05/conference-on-integrative-biology.html となっています。学会が無料ブログサイトを使う感覚ってどうなんでしょう?このURLの中の数字をみると投稿(ページ作成)が2014年5月のように見えるのも怪しさを増しています。この学会年会ウェブサイトのContact Usをクリックしたらとんだ先が、OMICS Internationalでした。やはりというか、ハゲタカジャーナルの嫌疑がかかっている雑誌社とつながりました。

  • ハゲタカ出版社疑惑のOMICSがカナダの著名出版社を買収(ジャヤシュリー・ラジャゴパラン | 2017年2月28日 EDITAGE INSIGHTS) 論理的根拠に乏しいいわゆる「ジャンクサイエンス」(疑似科学/ニセ科学)を流布しているとの非難を浴び、ハゲタカ出版社の疑惑がかけられている学術出版社、OMICS International(インド)が、カナダの定評ある著名出版社、Andrew John PublishingとPulsus Groupを買収しました。

毎日新聞の記事によれば、ハゲタカジャーナルで儲けている雑誌社がハゲタカ学会を開催してさらに研究者からお金を巻き上げるビジネスモデルがあるのだそうです。上のケースはそれに相当するのでしょうか?判断は読者に委ねます。

 

参考(ハゲタカ学会)

  1. 「国際ハゲタカ学会」横行 料金払えば審査なく参加 「業績」ではく付け(2019年1月19日 毎日新聞
  2. 「50分野同時開催」「1週間で参加決定」 手軽に“研究の跡” ハゲタカ学会体験者が証言 (2019年1月19日 毎日新聞)

 

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ハゲタカ雑誌投稿 不名誉な大学ランキング

【悲報】東大、阪大などの研究者も (≧▽≦ )

査読システムが機能していない(事実上存在しない)ので、お金を払えば誰でも論文が出せるジャーナルがあります。英語論文を出したい著者の心理に付け込んでお金を巻き上げるイメージなので、研究者を食い物にするハゲタカジャーナル(捕食ジャーナル)と呼ばれています。英語はpredatory journalsなので、「捕食ジャーナル」のほうが英語に忠実な訳語ですが、言葉のインパクトの強さのせいか「ハゲタカジャーナル」という呼称が優勢です。

どの学術誌がハゲタカジャーナルとみなされているかについては、ジェフリー・ビール(Jefferey Beall)さんがいかがわしい雑誌社・雑誌リストをつくって公表したBeall’s listが有名です。しかしながら、Beallさんは訴訟問題を避けるために公開するのをやめたようで、今では誰かがそれを転載したものがネット上に存在するだけです。グーグルで検索すれば極めて容易にリストのコピーにたどりつけるので、ここでも面倒をさけるためにリンクは張らないことにします。

 

Beall’s Listとは

ビオール氏は、「ハゲタカ(悪徳)オープンアクセス出版」に対抗する活動で有名です。これは同氏が2010年に考え出した造語です。同年、彼は最初の悪徳学術誌リストを出版しました。そこに含まれていたのは20誌未満でしたが、その後このリストは増え続け、今では包括的な「ビオールのハゲタカ出版社リスト」(Beall’s List of Predatory Publishers)として知られています。(「『ハゲタカ出版社』は、あらゆる手を使ってまともな出版社のふりをします」Editage Insights 2015年7月24日 )

オープンアクセス(OA)の進展とともに,論文処理費用をだまし取るハゲタカ出版社の出現が問題となっている。本稿はハゲタカ出版社のブラックリストを作成しているジェフリー・ビールの活動を中心に,この問題をめぐる状況と議論を整理して紹介する。ビールのリストは高く評価される一方,名前をあげられた出版社から10億ドルの損害賠償を請求されたり,根拠不十分と批判されたりしている。(ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒 栗山 正光 情報管理 2015 年 58 巻 2 号 p. 92-99

 

よい子は関わってはいけないハゲタカジャーナル

こういう悪徳な雑誌社は、「論文をうちに出しませんか?」というメールをしょっちゅう送りつけてきます。完全に分野違いであっても「エディトリアルボードに加わりませんか」というお誘いもスパム的に送りつけてきます。シツコイなあと思ってBeall’s listをチェックすると、大抵の場合そこに名前があるので、無視したほうが無難です。関わってしまうと、研究者としての自分の信用を失うことになります。

先月、ある出版社から学術論文誌のEditorial Board Memberをやってくれないか、というメールをもらいました。研究者にとって学術誌の編集をやることは大変名誉なことで普通は喜んでやることですが、何か引っかかりました。… (大学教員・研究員の心を鷲掴みにするうまいビジネス 2017-06-17 23:09 留職先の独り言@ケンタッキー&ルイジアナ

 

Beall’s listに載っているかどうかは知りませんが、自分が過去に受け取ったフザケたメールの例を紹介します。宛先のメールアドレスは数十人!もいて、名前の最初の文字がアルファベットが一致する人たちでしたので、どう考えても機械的に集めたメールアドレスに一斉送信したスパムメールとしか考えられません。面倒はいやなので、出版社の名前と個人名は伏字(XXXXXX)にします。

Dear Colleague,

XXXXXXXXXXXXX  is a publisher of open access journals, aims at making access to knowledge on Worldwide without any boundaries

**I WOULD LIKE TO INVITE TO BE AN EDITORIAL BOARD MEMBER TO OUR JOURNALS.  If you agree to serve as Editorial board member. Kindly send us your CV, recent photograph (To display at our website), And also write an article for journal, based on your research.

A to Z journals page: https://XXXXXXXXXXXXX 

You are invited to submit your best work in the following categories:

  • Full length research articles
  • Review articles
  • Short communications
  • Letters
  • Case reports, Image articles

Everlasting Scientific Community with you.

Please do not hesitate to contact us or mail for further assistance

Best regards

XXXX XXXX

XXXXXXXXXXXXX 

Email: XXXXXXXXXXXXX@gmail.com

Please do not hesitate to contact us or mail for further assistance

ランダムに研究者を勧誘しておく一方で、受け皿としてあらゆる分野をカバーするだけの多数の雑誌を発行しておけば、なるほどみなが適材適所に自動的に収まってくれて、物事がうまくいきそうです。ビジネスモデルとしてはよく考えたものだと思います。しかし、こんなスパムメールを研究者に送り付ける雑誌社がまともに論文査読をしているとは自分は思いません。

 

さて、いわゆるはげたかジャーナルにおいては、事実上査読がないわけですから、はげたかジャーナルに論文を出して「査読つき論文業績」と称するのは、ある意味研究不正と大差がなく、研究者としては終わっている (≧▽≦ ) と思います。

 

ハゲタカジャーナル論文掲載大学ランキング

毎日新聞の報道によれば、Predatory Journalsに最も多く投稿している大学の上位は、以下の通りです。

  1. 九州大学 147報 
  2. 東京大学 132報
  3. 大阪大学 107報
  4. 新潟大学 102報 
  5. 名古屋大学 99報
  6. 日本大学 87報
  7. 東北大学 82報
  8. 北海道大学 74報
  9. 広島大学 73報
  10. 京都大学 66報
  11. 神戸大学 63報
  12. 筑波大学 60報
  13. 慶應義塾大学 56報
  14. 千葉大学 55報
  15. 金沢大学 54報
  16. 熊本大学 48報
  17. 順天堂大学 46報
  18. 東京工業大学 44報
  19. 岡山大学 43報
  20. 岐阜大学 40報
  21. 島根大学 40報
  22. 同志社大学 40報
  23. 近畿大学 40報

*2003~2018年5月末に「粗悪」学術誌327誌に掲載された日本が関与する5076報の解析

(参考:粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分)

毎日新聞が「<粗悪学術誌>論文投稿、日本5000本超 業績水増しか」と報じました。「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる質が十分に保証されていないインターネット専用学術雑誌とみられる中国の出版社に日本関係の論文が5076本も投稿されていたそうです。このうち筆頭著者が大学・研究機関に所属する論文は3972本。(「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ 2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人 | 在英国際ジャーナリスト )

インターネット専用の学術誌の中で、質が十分に保証されていない粗悪な「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、こうした学術誌を多数発行する海外の出版社を調べたところ、日本から5000本超の論文が投稿されていた。九州大と東京大、大阪大、新潟大からは各100本以上を確認した(粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか 会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)

 

ハゲタカジャーナルの実態

東大や阪大の研究者もはげたかジャーナルのお客さんになっているというのはちょっと驚きです。はげたかジャーナルでも、読んでもらえるのなら良いのではないかというツイートを見かけましたが、はげたかジャーナルはそんなものではありません。

International Journal of Advanced Computer Technology(IJACT)というコンピュータ科学分野のオープンアクセス(OA)雑誌が、“Get me off Your Fucking Mailing List”と題し、本文にも同じ内容が繰り返されているだけの論文を受理したことが、米コロラド大学デンバー校図書館のJeffrey Beall氏のブログで報じられています。(「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される Current Awareness Portal 2014年11月25日

もちろん、ハゲタカジャーナルのリストに掲載されている雑誌が全てこのレベルではなく、査読が全く行われていないかどうかを第三者が検証するのは困難なため、まともな雑誌との境界は曖昧です。実際、出版社側が抗議した結果、リストから外された出版社もあるようです。しかし、研究費に恵まれており、研究大学を名乗る東大、阪大、九大などの研究者がこのような雑誌に論文を投稿するのは、恥 (。-_-。)でしかないでしょう。

 

ハゲタカジャーナルがなぜ問題か

ヤフー記事のコメントを見ると、論文数を稼ぐためには仕方がないとか、中にはいい論文もあるはずとか、実情にそぐわないコメントが多数並んでいます。研究者は自分が苦労して書き上げた論文を学術誌に投稿するとき、当然その学術誌にはどんな論文が掲載されているかを気にします。いい論文が多数掲載されている雑誌がいい雑誌とみなされるからです。質の悪い論文しか掲載されていない雑誌にわざわざ自分の論文を投稿したいと思う研究者はいません。

実質的に査読がないわけですから、どんないい加減な論文でも通ります。つまり、まともに研究していない研究者が評価される一方で、苦労して時間をかけてまともなジャーナルに論文を出す研究者のほうが、単純な論文数による業績評価では負けてしまい淘汰されてしまうという事態になりかねません。論文を投稿してからアクセプトに漕ぎ付けるまでには、リバイスで様々なコントロール実験を要求されたりして、その過程で1年間かかることも決して珍しいことではありません。それだけの苦労に苦労を重ねて論文をようやく通している研究者が多い中で、無審査で投稿後直ちに受理される論文が業績として認められて同じ一報として論文業績にカウントされたら、不公平極まりません。研究費をとるのも職をとるのも熾烈な競争なのに、これを許したら日本の科学研究が成り立たなくなります。だからハゲタカジャーナルを許してはいけないのです。

 

ハゲタカジャーナルに投稿する研究者、大学の存在に関する文部科学省の見解

柴山文部科学大臣会見(平成30年12月25日):文部科学省(ハゲタカジャーナルに関する毎日新聞記者の質問は動画19:25~)

  • 粗悪学術誌「深刻な事態」 柴山文科相が注意喚起求める (毎日新聞2018年12月25日 17時50分)ずさんな論文審査で掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、柴山昌彦文部科学相は25日の閣議後記者会見で「大変深刻な事態になっている」との見方を示し、研究者が論文の投稿先を慎重に検討するよう大学に研究者教育や注意喚起を求めた。

 

ハゲタカジャーナル投稿防止に関する大学の取り組み

九州大学

安易な論文投稿先ジャーナルの選択は、ご自身の研究成果に疑念を生じさせ、引いては九大の研究力に悪影響を及ぼす恐れがありますことから、研究成果の公開方法について慎重に検討する必要があります。 対処方法として、エルゼビア社のScopus論文データベース(研究者プロファイリングツールPure、研究力分析ツールScival)を利用されることをお勧めします。これらは一定の評価基準の下、審査(査読)を受けた論文のみ登録されており、世界大学ランキング等に様々な形で活用されていることから、一定の保証を得ていると思われます。投稿先のジャーナル選択のみならず、共同研究の相手方の選考などにもご活用下さい。 今後、このような不名誉な形で本学が報道されることがないよう、一致協力して、努めて参りたいと思います。ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。(【研究論文の投稿に当たって】2018/09/05 九州大学

 

名古屋大学

査読なしで論文を掲載しているなら学術誌とは言えない。大学の信頼や研究者モラルに関わる問題で、対策をしっかり取る(名古屋大学高橋雅英副学長)(<粗悪学術誌>「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 2018/10/10(水) 7:00配信 鳥井真平 毎日新聞

 

新潟大学

新潟大学における粗悪学術誌に対する方針 近年,オープン・アクセス・ジャーナルの中で,掲載料を搾取することを目的とした,査読が不十分な論文を掲載する質の低い学術誌(いわゆるハゲタカジャーナル)が急増している。本学の科学者行動規範においては,本学の研究者に社会から寄せられた信頼に応える倫理的責任感を求めており,粗悪学術誌への投稿は,科学への国民からの信頼を失いかねない。また,研究者の業績や評価などに悪影響を及ぼす可能性がある。 … (新潟大学における粗悪学術誌に対する方針について 平成30年11月16日 学長裁定)

  • 粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策(毎日新聞 2018年10月10日 07時00分)新潟大は9月、ハゲタカジャーナルへの投稿を控えるよう、年内にも学術誌への論文投稿ルールを新たに設けることを決めた。全研究者に注意喚起し、研究倫理教育セミナーでハゲタカジャーナルの存在を周知する

 

熊本大学

熊本大学はハゲタカジャーナルへの投稿に関して注意を促すウェブページを作成しています。ハゲタカジャーナルのリストBeall’s List of Predatory Journals and Publishersへのリンクも貼るなど、他大学の無難な注意喚起とは一線を画す、かなり攻めた内容。

Web出版の利便性を悪用して、掲載料によって不当に利益を得ようとする出版社が一部に存在します。そのような出版社では、編集顧問・査読委員会による査読が行われておらず、サイトの更新も遅く頻度も適切とは言えません。また、これらのジャーナルに論文が掲載された場合、逆に業績としてネガティブな評価を受ける危険もあります(ハゲタカジャーナルへの投稿リスクについて(注意喚起)熊本大学URA推進室

 

東邦大学

ハゲタカ・ジャーナル(predatory or pseudo-journals)にご注意ください 2018年9月12日 近年、オープンアクセスジャーナルの増加とともに,しかるべき水準の品質管理を行わないままにAPC(※)収入のみを狙った“学術雑誌”を刊行する悪質な出版活動が問題1)になっています。このような出版社は,研究者に直接メールで投稿を促すというケースもあるようです。論文の投稿先を検討する際のお役立ちサイトとして下記 URL のようなページが参考になります。…

 

京都大学

京都大学でもハゲタカジャーナルへの投稿に関して注意を喚起するリーフレットを作成し2019年1月17日に公開しました。

 

研究者がハゲタカジャーナルに投稿する理由

熊本大学のウェブページに、ハゲタカジャーナルに投稿する研究者の心理を分析した論文「あなたがハゲタカジャーナルに研究成果を発表する5個の(よくない)理由」が紹介されていました。

Clark, A. M. and Thompson, D. R., “Five (bad) reasons to publish your research in predatory journals.” J Adv Nurs. 2017 Nov; 73(11):2499-2501

  1. I do not care about my external reputation 論文出すことのほうが大事でしょ
  2. I do not believe in myself or my work どうせ、たいした仕事じゃないし
  3. Publication numbers count most 論文って数が一番大事だから
  4. I cannot be bothered to read え、これって普通の雑誌だよね
  5. I have given up お手軽なんだもん、いいじゃん

*日本語意訳は当サイト

無責任な出版を厳しく戒めていますので、是非本文をお読みください(全文リンク)。

 

ハゲタカジャーナルの手口と見抜く方法をJeffrey Beallさんが解説

Jeffrey Beall on Open Access Publishing: How publishers dupe authors

  1. ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト(Andrea Hayward | 2018年2月7日 Editage Insights
  2. VIDEO: Authors beware: Avoid falling prey to predatory journals and bogus conferences (Interview with Dr. Anne Woods & Shawn Kennedy. Editage)

MDPIはハゲタカか?

どの雑誌がハゲタカジャーナルでどの雑誌はそうではないのかがわかればいいのですが、時としてどっちか悩むジャーナルも存在します。みんなを悩ませているのがMDPI社の雑誌。商売上手で取り入るのが上手いので、いつの間にか認知されてしまっています。Web of ScienceやPubmedにも収載されており(一部とはいえ)、インパクトファクターもそこそこある雑誌もあるので、もはやハゲタカじゃね?などとは言えなくなっています。しかし、Beallさんのハゲタカジャーナルリストには過去には載っていたようです。MDPIの激しい抗議の結果リストから除外されたという経緯があります。

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルか?MDPIのインパクトファクター

 

参考

  1. 粗悪学術誌の論文 4割が別論文の参考文献に 研究ゆがむ可能性 (2019/4/29(月) 19:02配信 毎日新聞 YAHOO!JAPAN)ずさんな審査で論文を載せ、掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、ハゲタカ誌の論文の4割が別の論文に参考文献として引用されていることが、カナダ・クイーンズ大の研究チームの調査で判明した。チームは「ハゲタカ誌に掲載された欠陥論文によって、将来の研究が汚されていく可能性がある」と警告している。
  2. 科学ジャーナリスト賞に本紙・鳥井記者 「ハゲタカジャーナル」報道 (毎日新聞2019年4月25日 16時30分) 日本科学技術ジャーナリスト会議(佐藤年緒会長)は25日、今年の科学ジャーナリスト賞に、「ハゲタカジャーナル」に関する一連の報道を手がけた毎日新聞水戸支局兼科学環境部の鳥井真平記者(38)を選んだ。
  3. Predatory publications in evidence syntheses. J Med Libr Assoc. 2019 Jan;107(1):57-61. 
  4. 粗悪学術誌掲載で博士号 8大学院、業績として認定毎日新聞2018年12月16日 06時45分)インターネット専用の学術誌に論文審査がずさんな粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、佐藤翔(しょう)同志社大准教授(図書館情報学)が医学博士論文106本を抽出調査したところ、7.5%に当たる8本にハゲタカ誌への論文掲載が業績として明記されていた。
  5. 粗悪学術誌「深刻な事態」 柴山文科相が注意喚起求める毎日新聞2018年12月25日 17時50分)ずさんな論文審査で掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、柴山昌彦文部科学相は25日の閣議後記者会見で「大変深刻な事態になっている」との見方を示し、研究者が論文の投稿先を慎重に検討するよう大学に研究者教育や注意喚起を求めた。
  6. 粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 (毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分) ヤフーコメント224個
  7. 「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ (2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人)
  8. 劣悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」とは?  掲載料が目当て、 根拠乏しい「疑似科学」を拡散 国内の大学でも、こうした出版業者からの勧誘に載らないよう注意喚起が広まっている。(ハフポスト日本版編集部 2018年09月03日 12時57分 JST)信頼性が低い研究論文を掲載する「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる学術サイトが、SNSで話題になっている。毎日新聞が9月3日、日本から5000本を超える論文が、ハゲタカジャーナルに投稿されている内容の記事を掲載したことがきっかけだ。
  9. ネット専用 粗悪学術誌、九大が対策 学内で投稿自粛指導(会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 06時30分 最終更新 9月3日 06時37分) 九州大は学内の研究者や学生を対象に、インターネット専用の学術誌の中で「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる粗悪な学術誌に論文を投稿しないよう指導を始めた。
  10. 粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか(会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)
  11. 捕食ジャーナル – 倫理学分野にすら登場(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  12. 「捕食ジャーナル」で誰が論文を発表しているのか?(後編)(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  13. Jeffrey Beall: ‘Predatory publishers threaten scientific integrity, are embarrassment to India’Written (Shyamlal Yadav | Hyderabad | Updated: July 20, 2018 7:57:26 am TheIndianEXPRESS)
  14. Inside India’s fake research paper shops: pay, publish, profit (by Shyamlal Yadav. July 19, 2018 2:38:26 pm IndiaExpress.com)
  15. Cabell’s Blacklist: A New Way to Tackle Predatory Journals. Soumitra Das and Seshadri Sekhar Chatterjee. Indian J Psychol Med. 2018 Mar-Apr; 40(2): 197–198.
  16. Cabell’s New Predatory Journal Blacklist: A Review (By RICK ANDERSON JUL 25, 2017 The Scholarly Kitchen)
  17. 「ハゲタカ出版」のリストとブログの内容が削除される (2017年1月20日 Current Awareness Portal)
  18. No More ‘Beall’s List’ (Carl Straumsheim January 18, 2017 InsideHigherEd.com)
  19. <記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか(ワイリー・サイエンスカフェ 投稿日: 2016年8月24日 作成者: admin)
  20. ねつ造医学論文を出版する捕食出版社:クロエ・コスタ(Chloe Costa)、2015年5月15日(研究倫理(ネカト) 白楽ロックビルのバイオ政治学
  21. Predatory open-access publishing (Wikipedia)

  22. 「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される(Current Awareness
    Posted 2014年11月25日)
  23. Get me off Your Fucking Mailing List
  24. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)(Current Awareness Portal 2014年1月7日)
  25. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2013年版)(Current Awareness Portal 2012年12月10日)

記事変更の記録 20190206 熊本大学の注意喚起ページが復活していたのでキャッシュでなくオリジナルページを紹介

 

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間違った医学論文・捏造論文で取得した博士号を徳島大学が取り消し

徳島大学大学院医歯薬学研究部50歳代男性教授が停職6月

2020年5月13日の徳島大学の発表によれば、教授には停職6か月の処分が下されたそうです。徳島新聞のニュース記事によれば、大学院生は3月に博士号を取り消されているとのことなので(令和2年4月20日の徳島大の発表では、令和2年3月13日に学位の授与を取り消し)、このニュースは新しい話ではなくて、下で記事にした学位取り消し事件に関して、まだ処分が定まっていなかった教授に関する処分内容の発表ということのようです。

  1. 徳島大論文ねつ造 男性教授停職6カ月 (2020/5/14(木) 15:16 徳島新聞 YAHOO!JAPAN)

 

教授がストーリーを強要、大学院生がデータ捏造

徳島大学でまた学位取り消しがありました。下の記事とは別件です。捏造の動機が、二人の言葉からうかがい知れます。

院生「教授からのプレッシャーがあり、教授の求める実験データを得ようとした

教授「厳しい言い方をし過ぎたかもしれない

つまり、教授が描いたストーリーに合う実験データを出せずにいた大学院生が、学位取得の締め切りが迫ってきたこともあり、教授の要求するデータを捏造して教授に渡し、教授が自分のストーリーで論文を執筆したというものです。今まで全然期待したデータが取れていなかった大学院生が急に都合の良いデータばかりもってきたときに、教授が信憑性をチェックしなかったのは重大な過失だと認定しています

産経WESTとNHKの記事をもとに時系列を整理すると、

2020年(令和2年)4月20日 徳島大学が研究不正を公表
2020年(令和2年)3月 博士号を取り消し
2019年 捏造論文の取り下げ
2018年(平成30年)3月 匿名のメールによる不正告発
2014年(平成26年)学術誌に捏造論文掲載

SDGsの課題解決とデータの捏造とがどう関係するのか、さっぱりわかりませんが徳島大学がお詫びの声明を出していました。

独創的研究及びSDGsの課題解決に向けた研究や教育に本学の教員全体が取り組む中で、このような研究不正行為があったことは、誠に遺憾であり深くお詫び申し上げます。 加えて、…

学長 野地 澄晴

具体的な捏造箇所の説明はありませんが、どのようにして捏造に至ったのかの説明は、大学が公表していました。一部を掲載します。これを読むと、このデータ捏造を実行したのは大学院生ですが、自分の描いたストーリーを大学院生に押し付け、捏造データを受け取って吟味することなくそのまま論文を書いた教授にもかなりの責任があると思います。

3 調査結果

調査の結果、告発対象論文1報について、次のとおり認定した。

(1)不正行為の具体的な手法・内容
① 特定不正行為
・ねつ造:出所不明データの付け足し
・改ざん:実験データの不正な方法による解析
② 特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・不適切なオーサーシップ

(2)不正行為に係る研究者
・A教授
研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる,ねつ造,改ざん」及び「研究活動上の不適切な行為であって,科学者の行動規範及び社会通念に照らして研究者倫理からの逸脱の甚だしい行為(不適切なオーサーシップ)」に関与した者と認定した。
・B元大学院生
「故意による、ねつ造、改ざん」に関与した者と認定した。

(3)判断理由
ア)認定した事実
① 特定不正行為(ねつ造、改ざん)
告発対象論文について、論文の結論にとって都合が良いデータを選択して作成された図があることと、出所不明のデータを付け加えることにより、複数の不正な図(改ざん及びねつ造が行われた図、改ざんが行われた図)が掲載されたことを確認し、特定不正行為(ねつ造、改ざん)が行われたことを認定した。
② 特定不正行為以外の不正行為(不適切なオーサーシップ)
告発対象論文において、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員に了解を得ないまま手続きを行い、受理されてから連絡するなどの行為を確認し、これは不適切なオーサーシップに当たると認定した。

イ)認定の理由
① A教授(責任著者)
特定不正行為
・本件研究が行われた研究室の主宰者であり、B元大学院生の指導教員であった。
・B元大学院生に対して、実験の方法や実験データの解析等に係る基本的事項を含む研究全般について、十分な指導をしていなかった。
・研究成果を発表するにあたっては、自らが用いる実験データが科学的に適正な方法と手続でなされたものであることを確認すべきであるが、それができていなかった。
・筆頭著者であるB元大学院生の作成したグラフや図を用いながら、本件論文のほぼすべてを自ら執筆した。
B元大学院生が行った実験は、相当期間、多数回に渡ってA教授の仮説と異なる結果を示しており、このことをA教授自身も十分に認識していた。
設定した締切りが近づいた時期になって、突如、B元大学院生がそれまでの実験結果と異なる実験データを提示したことについては、実験結果全体の信用性について特に慎重な検証を要すると感じるのが当然の状況にあった。
生データや実験・観察ノートを提示させ、それらを確認することを一切していなかった
・提示された実験データに再現性があるものかどうかといった事柄すら把握しておらず、後日、それらの検証を可能とするデータや資料なども保管していなかった。
これらを総合的に判断し、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことにより、不正に作成された図を利用して論文を執筆したことは、A教授自らが研究結果等をねつ造、改ざんしたものであることと何ら変わりがなく、特定不正行為に該当すると認定した。
特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・責任著者でありながら、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員の了承を得ないまま投稿手続きを行い、受理されてから連絡した。
以上の行為は、特定不正行為以外の不正行為として不適切なオーサーシップに該当すると認定した。

② B元大学院生(筆頭著者)
・複数の図において、データの恣意的な取捨選択出所不明のデータの付加を行っていた。
・論文に掲載された実験を実際に担当し、A教授の求める実験データを得ようとしていた。
・A教授から適切なデータの取扱い、解析方法及び研究倫理について指導されていなかったことによる知識不足のため、独自の誤った方法で論文に記載する図を作成していた。
・A教授から学位取得についてプレッシャーをかけられ、A教授の意図した実験データを厳しく要求し続けられていた。
・A教授や研究室内の指導者への相談等が十分に行えていなかった。
実験データから選択した過程を容易に追跡できる資料を保存していた。
以上のことから、B元大学院生がねつ造、改ざんを積極的に行う意思が乏しかったとはいえ、この行為は故意に研究結果等をねつ造、改ざんしたものとして、特定不正行為に該当すると認定した。

(転載元:https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/1/4/6/5/9/9/_/gaiyou.pdf 太字強調は当サイト)

  1. 【お詫び】研究不正(ねつ造、改ざん)の調査結果及び対応について令和2年4月20日 徳島大学
  2. 徳島大大学院生が論文データ捏造、博士号取り消し(2020.4.20 21:50 産経WEST
  3. 徳島大大学院 教授ら論文不正か(2020年04月20日 18時49分 NHK NEWSWEB
  4. 徳大で論文データ不正 教授処分審議 元院生博士号取り消し (5:00 徳島新聞(要有料会員登録))
  5. https://twitter.com/plagiarismfraud/status/1252291411543638016
  6. 取り消された博士研究論文:カチオン性リポソームを担体としたmyostatin-siRNA局所導入による骨格筋量制御効果の検討 Effectiveness of cationic liposome-mediated local delivery of myostatin-targeting small interfering RNA in vivo. Dev Growth Differ2014 Apr;56(3):223-32. doi: 10.1111/dgd.12123. Epub 2014 Mar 13. (PubMed)

 

以下の記事は、上とはまた別の事件です。

学位取り消し

徳島大学では,元大学院学生(徳島大学大学院医科学教育部医学専攻博士課程(平成29年3月23日修了))の学位論文「A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia」(甲医第 1318 号・博士(医学))に関して,下記のとおり「学位を授与された者が,その名誉を汚辱する行為をしたとき」と判断し,学位授与の取り消しを決定し,学位記の返還を命じた。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

論文の間違いが発覚した経緯

学位授与の根拠となった論文に関連し,外国人研究者が同じ公開データを使用した同じテーマの論文が,結果が逆の内容で別学術雑誌に掲載された。今回対象の論文を掲載している学術雑誌の編集者から,研究内容を確認して回答するよう要請があった。著者らは,要請を受けて再確認し,計算自体に間違いがなかったが,当初の公開データの取り間違いがあったことに気づき,論文の根幹に係る主張の間違いだと言うことで,論文撤回(H30.2.21)という結果になった。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

研究不正の有無

特に公開データの場合は,誰もが同じことを直ぐにでも試みることができるので,データを故意に間違えて計算するという蓋然性は低く,この論文撤回に関して不正はなかったと判断した。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

学位を取り消す根拠

  1. 学位授与の前提となる論文が事実上なくなった
  2. 研究者として当然持っているべき基本的な慎重さが欠け,主張が間違った論文を学位論文として申請した (徳島大学 平成30年7月6日)

 

徳島大学学長のコメント

このたびの事態によって損なわれた徳島大学の学位に対する社会的信頼を回復するため、大学院生に対する研究者倫理教育の醸成を図ることはもちろんのこと、論文の作成段階及び学位の申請段階において、教育・研究の達成を見る上でも、実験内容を適切に記録していることを確認させるとともに、論文審査体制を一層厳格化することにより、学位審査体制の充実、透明性、客観性の確保を図り、学位の質保証に結びつけてまいります。(学長 野地澄晴)(学位授与の取消しについて 徳島大学 2018年7月6日)

 

参考

  1. 学位授与の取消しについて(概要) 平成30年7月6日 徳島大学
  2. Retraction: A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia (Published: 21 February 2018, Scientific Reports)
  3. A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia. Scientific Reports volume 6, Article number: 26105 (2016). Published: 19 May 2016
  4. 徳島大 医学博士号取り消し 元院生の論文に誤り /徳島 (毎日新聞2018年7月7日 地方版) 論文は16年5月、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載。男性は17年3月に博士号を取得した。だが同誌は今年2月、公開データの取り違えで結論などが誤っていたとの撤回記事を出した。
  5. 徳島大、元院生の博士学位取り消し 論文データに誤り、論文掲載誌から指摘 (産経WEST 2018.7.6 13:49)
  6. A university is revoking a student’s PhD — but not because of misconduct (Retraction Watch)
  7. 捏造、不正論文、総合スレネオ47(5ch) 82名無しゲノムのクローンさん2018/07/27(金) 22:11:37.93 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1532266799/

 

NHKスペシャル『追跡 東大研究不正』

2017年12月10日(日)午後9時00分~9時49分に、NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ が放送されました。NHKの番組説明を読むと、研究不正問題の背景となる日本の科学政策の問題点に関して批判的なメッセージを伝えることが一番の狙いのようです。

激化する国際競争の中で変容してきた科学研究費の配分を巡って、翻弄される科学者の姿。そして、科学技術立国を掲げ、研究成果を国の発展につなげようという施策が、皮肉にも、科学を停滞させかねないという現実。(NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~)

 

視聴者は、この番組をどのように見て、メッセージをどのように受け取ったのでしょうか?番組に関するツイートをいくつか紹介します。

激化する研究費獲得競争が研究不正の要因なのか?

NHKスペシャルの番組予告では、「優秀なはずの科学者たちがなぜ不正を?」というフレーズが使われていました。また、番組内では、研究費獲得競争の激化を要因の一つとしてかなり強調していました。その主張を根拠として、番組内では東大の若手PIの言葉を通じて、ラボの運営がいかにお金のかかることかを説明していました。

しかし、東大で新たにPIに採用されるような人は、業績もあり競争的研究資金の獲得能力があると認められた人たちです。また、競争に負けて予算が全く取れなかった人が、実験できないのでデータを捏造するというものでもありません。研究不正で話題になるのは、多くの場合、普通の研究者よりも桁違いの研究予算を取っている人たちです。

優秀な科学者がなぜ捏造するのか?数億円の研究予算を獲得している研究者がなぜ捏造するのか?パーマネント職が欲しい若手研究者がなぜ捏造するのか?これらの疑問を統一的に説明できるのが、上のツイートの『研究費が足りないから不正が起きるのではなくて足りないのは成果に見合う能力です。』という分析ではないかと思います。「研究費の額=その研究費で期待される成果の大きさ」に見合う能力が足りないときに、その人は研究不正を働いて帳尻を合わせようとすると考えると、とてもしっくりきます。だとすれば、研究不正を防止するひとつの方法として、いくら優秀な科学者であっても、その人の能力以上に研究予算をあげないことが考えられます。

 

インパクトファクター至上主義の是非

番組内では、教授が高インパクトファクターの国際誌に論文を掲載しようとしたことがあたかも悪いことと受け取られかねない説明だったと思います。分生研加藤研の不正調査報告書にも同じような論調がありました。しかし、良い研究をして良いとされる雑誌に論文を掲載されるように努力することは研究者として当然のことであり、そのこと自体は何も悪くありません。部下の能力や意志を無視してそれを強要したり、不正を働いてまでするから問題なのです。上で紹介した分析『足りないのは成果に見合う能力』は、ここでも当てはまります。

業績欄にセル、サイエンス、ネイチャーがないと(あっても?)なかなかパーマネントの職が取れないようなご時世なのですから、部下の将来を考えて、これらのいわゆる一流誌に論文を出させようと叱咤激励してくれるボスは、本来なら、むしろ良いボスでしょう。

 

アカデミックにおけるパーマネントなポストの不足に関して

 

研究不正を働く人ってどんな人?

 

番組が東大医学部捏造論文疑惑に触れなかったことに関して

捏造論文を出すラボは、何度でも捏造論文を繰り返し出す不思議な現象が見られます。これもまた、以下の不等式

期待される成果の大きさ > 本人の能力 + 本人のモラル

が成立する限り、捏造が繰り返されると考えれば合点がいきます。

 

参考

  1. NHKスペシャル「追跡 東大研究不正~ゆらぐ科学立国ニッポン~」 2017年12月10日 171210 http://www.dailymotion.com/video/x6bgb75

  2. 捏造、不正論文 総合スレネオ 425ちゃんねる *閲覧注意)

 

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研究活動の公正性の確保及び適正な研究費の使用について確認・誓約すべき事項

ウェブ上で科研費の交付申請書を作成するにあたり、研究倫理規定を確認し誓約することが義務化されています。クリックだけして先へ進まず、しっかりと読んでいただきたい、非常に良く書かれた文章です。

 

研究活動の公正性の確保及び適正な研究費の使用について確認・誓約すべき事項

科研費で研究活動を行うに当たっては、科研費が国民の貴重な税金で賄われていることを十分認識し、科研費を適正かつ効率的に使用するとともに、研究において不正行為を行わないことが求められています。
ついては、下記の内容を十分に確認し、遵守する場合には確認した事項にチェックを入れてください。全ての事項にチェックを入れなければ、交付申請書・交付請求書(支払請求書)の作成画面に進むことができません。
また、本内容は日本学術振興会ホームページ(URL:http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/15_hand/index.html)にも掲載されています。研究代表者の責務として、本内容を研究分担者、連携研究者等にも必ず周知し、研究活動の公正性の確保や適正な研究費の使用について理解してもらうよう努めてください。

科学研究における不正行為は、科学を冒涜し、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであって、本来あってはならないものである。また、未来への先行投資として、国費による研究費支援が増加する中、国費の効果的活用の意味でも研究の公正性の確保がより一層求められる。

研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等による事実、データを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為である。研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、研究者コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。不正行為とは、研究者倫理に背馳し、研究活動や研究成果の発表の本質ないし本来の趣旨を歪め、研究者コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為に他ならない。

不正行為は、科学そのものに対する背信行為であり、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。これらのことを個々の研究者はもとより、研究者コミュニティや大学・研究機関、研究費の配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。また、不正行為の問題は、知の生産活動である研究活動における「知の品質管理」の問題として捉えることができる。公表した研究成果に不正行為が関わっていたことに気づいたら、直ちに研究者コミュニティに公表し、取り下げることが必要である。

不正行為に対する対応は、その防止とあわせ、まずは研究者自らの規律、ならびに研究者コミュニティ、大学・研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならず、あらゆるレベルにおいて重要な課題として認識されなければならない。その際、若い研究者を育てる指導者自身が、自律・自己規律ということを理解し、若手研究者や学生にきちんと教育していくことが重要である。

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日:文部科学大臣決定)では以下の行為を特定不正行為としている。
(1) 捏 造: 存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
(2) 改ざん: 研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
(3) 盗 用: 他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。

競争的資金等には研究機関に交付されるものと個々の研究者の研究遂行のためのものがあるが、個人への補助の性格を有するものであっても、その原資が国民の税金である以上、国民の信頼に応えるため、競争的資金等の管理は大学・研究機関の責任において行われている。

競争的資金等の管理を委ねられた機関の責任者は、研究費の不正な使用が行われる可能性が常にあるという前提の下で、不正を誘発する要因を除去し、抑止機能のあるような環境・体制の構築を図ることが求められている。

研究費の使用に当たっては、その管理が委ねられている大学・研究機関のルールに従って適正に執行する必要がある。

研究費の不正使用とは、故意若しくは重大な過失による研究費の他の用途への使用または交付の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反した使用をいう。

研究費の不正使用の事例は、虚偽の請求によって資金を引き出して、他の目的に流用したり、プールするなどであり、物品購入費、謝金・給与、旅費に関するものに大別される。その際、私的流用はもとより、目的外の使用や書類の捏造による支出は、研究資金として使用された場合でも不正使用となる。
(1) 物品購入費に係る不正使用の例
  業者と物品購入に係る架空の取引により、納品書や請求書等を捏造、改ざんすることなどによって、大学・研究機関から支払われた代金を業者に「預け金」として管理させ、適宜異なる研究用物品の納品を受けていた。
(2) 謝金・給与に係る不正使用の例
  出勤表等を捏造、改ざんすることなどによって、謝金の水増しや架空の雇用者の給与の請求を行い、大学・研究機関から支払われた謝金、給与を研究者に還流させ、研究室等でプールし、適宜研究のための消耗品等の購入や大学院生等の学会等への旅費に使用するなどしていた。
(3) 旅費に係る不正使用の例
  旅費の支払いに係る書類を捏造、改ざんすることによって日程の水増しや架空の出張に係る旅費の請求を行い、大学・研究機関から支払われた旅費を研究者に還流させ、研究室等でプールし、適宜研究のための消耗品等の購入や大学院生等の学会等への旅費に使用していた。

論文等において不正行為が行われたと認定された場合や研究費の不正使用が認定された場合は、競争的資金等の返還に加えて、認定された年度の翌年度から最長10年間、競争的資金等への申請が制限される。
(注)研究費の不正使用が認定された場合の措置の見直しがなされました。(平成25年度4月より)

捏造、改ざん、盗用の特定不正が認定されたときの措置の対象者は以下の者が該当する。
(1) 不正行為に関与したと認定された者(2~10年)
(2) 不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者(1~3年)
研究費の不正使用が認定されたときの措置の対象者は以下の者が該当する。
(1) 不正使用を行った研究者及びそれに共謀した研究者(1~10年)
(2) 偽りその他不正の手段により研究費の交付を受けていた研究者及びそれに共謀した研究者(5年)
(3) 不正使用に直接関与していないが、善良なる管理者の注意をもって事業を行うべき義務に違反した研究者(1~2年)

日本学術振興会及び文部科学省のみならず、他府省の所管の競争的資金を活用した研究活動において不正行為や不正使用があったと認定された者について、当該認定に伴う申請等資格制限が一斉適用される。

科研費により研究を遂行するにあたり、補助条件(交付条件)を理解しこれを遵守します。また、学術研究に対する国民の負託を受けていること、及び科研費が国民の貴重な税金で賄われていることを十分認識し、科研費を適正かつ効率的に使用するとともに、研究において不正行為を行わないことを約束します。