Monthly Archives: June 2015

科学における仮説とは何か?

「これは科学的に正しいことが証明されている」と言われると、なにか絶対的な真実として受け入れないといけない気にさせられます。しかし、世の中にはそんな絶対的に正しいことなど存在しません。科学的に言えば、「科学的に正しいこと」とは、「今のところはまだ反証されずに残っている仮説」に過ぎないのです。この考え方は、カール・ポパーが提唱した反証可能性(Falsifiability)に基づいています。

ck12.orgはウェブを通じて世界中の子供が質の高い教育を無料で受けられるようにというコンセプトのウェブサイトですが、ポパーの反証可能性の考え方を前面に出して、「科学における仮説とは何か」(英語)を高校生向けにわかりやすく解説しています。このウェブページの著作権の形態がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスなので、以下、日本語化して紹介します。

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仮説

「2つの仮説にまで絞り込んだ:そいつがでかくなったか、自分たちが縮んだか、どっちかだ。」

上の漫画は科学における仮説をからかっていますが、仮説という概念は科学においてもっとも重要なことの一つです。 科学研究によって、科学を進歩させるような証拠が見つけられます。科学研究の目的は通常、仮説をテストすることです。仮説を支持するかまたは退けるような証拠を見つけることによって、科学が進展するのです。

科学的な仮説とは何でしょう?

「仮説」という言葉は、「根拠のある推測」と定義できます。例えば、ある自然現象がなぜ生じるのかに関する根拠ある推測が仮説といえます。 しかし、全ての仮説がーー仮に自然界に関するものであったとしてもーー科学的な仮説というわけではありません。単に根拠のある推測というだけでなく科学的な仮説であるためには何が必要でしょうか?科学的な仮説は、次の2つの基準を満たしていなければなりません。

  • 科学的な仮説は検証可能であること
  • 科学的な仮説は反証可能であること。

科学的な仮説は検証可能でなければならない

仮説が検証可能であるとはどういうことかというと、観察をしてその結果が仮説に合うか合わないかを調べることができるような、そんな観察が可能だということです。 もしも仮説を観察によって検証できないのであれば、それは科学的ではありません。次の文を考えてみましょう。

「どんな方法を用いても観察することができない、目に見えない生き物が、私たちの周りには存在しています。」

この主張は正しいかもしれないし正しくないかもしれません。しかし、これは科学的仮説ではありません。なぜなら、検証できないからです。この仮説の内容だと、それが間違いかどうかを検証する観察手段が科学者にないのです。

科学的な仮説は反証可能でなければならない

ある仮説が検証可能なものだとしても、まだ、科学的な仮説と呼ぶには不十分です。さらに、その仮説がもし間違いの場合には間違いであるということを示すことができなければなりません。次の主張を考えて見ましょう。

「宇宙には生命が存在する惑星が他にもある.」

この主張は検証可能です。もし真実であれば、少なくとも理屈上は真実である証拠を見つけることができます。例えば、宇宙船を地球から送って宇宙を探索し生き物が存在する惑星を見つけたら報告させるようにすることができます。もしそんな惑星が見つかれば、この主張の正しさが証明できたことになります。しかし、この主張は科学的な仮説ではありません。なぜでしょう?もし仮説が間違いの場合にそれが間違いであるということを示すことが不可能だからです。 宇宙船は生き物が住んでいる惑星を見つけることは決してないかもしれませんが、だからといって生き物が住む惑星が存在しないとは必ずしもいえません。宇宙はとても広いので、全部の惑星に関して生き物がいるかどうかを調べつくすことは不可能だからです。

検証可能かつ反証可能であること

最後にもう一つ、下に図を示した例を考えてみましょう。

「2つの物体を同じ時刻に同じ高さから落とすと、地面に同時に到達する(ただし空気抵抗が存在しないものとする)」

この主張は検証可能でしょうか?可能です。あなたは2つの物体を同じ時刻に同じ高さから落として、いつ地面に達するかを観察することができます。もちろん、空気抵抗の影響を避けるために空気が存在しない状態で実験する必要はあります。しかし、そのような実験は少なくとも理論上、可能です。この主張がもし間違いの場合は、反証可能でしょうか?それも可能です。2つの物体に関して多くの組み合わせを試すことが容易にできます。そして、もし同時に着地しないような2つの物体の組み合わせを見つけたら、仮説が間違いであったということになります。仮説が間違いの場合には、間違いであることを証明することは比較的容易でしょう。

Elephant and boy falling to the ground due to gravity

一匹のゾウと一人の少年が重力によって地面に向かって落下しています。重力による力Fgravは、ゾウに対する方が少年のものよりも大きくなります。なぜなら、ゾウの方が質量が大きいからです。それにも関わらず、両者は地面に同時に達するでしょう(前提として同じ高さから同じ時刻に落ち始めて、空気抵抗はないものとします)。

仮説の正しさを証明することは可能でしょうか?

上の例で考えた、物体の落下に関する仮説が実際には間違いならば、たくさんの物体に関して実験を行うことにより遅かれ早かれ間違いだったいうことがわかるでしょう。ある仮説を反証するのには、一つの例外を見つければ事足ります。しかし、もしある仮説が実際に真実の場合はどうでしょう? 真実であるということも示し得るのでしょうか?いいえ。2つの物体が常に同時刻に着地することを示すには、考え得るあらゆる組み合わせを試す必要があるでしょう。それは不可能です。新たな物体は常に作り出されていますので、それらを全てテストしなければならないということになります。この仮説を反証するような例が将来見つかる可能性が常にあります。ある仮説が正しいと結論付けることはできませんが、その仮説を支持する証拠がより多く集まれば、その仮説が正しいという可能性がさらに高まります。

まとめ

  • 科学における仮説とは、観測により検証することができ、もし間違いであるときには反証することが可能であるような根拠ある推測のことである。
  • ほとんどの場合、仮説の正しさを証明し、そのように結論付けることはできない。なぜなら、仮説に対する反例を求めてあらゆる可能性を吟味することは一般的に不可能だから。

さらに

下のリンク先のウェブページの一番下にある、科学的仮説に関する確認クイズを試してみましょう。答えの確認を忘れずに。

http://www.batesville.k12.in.us/physics/phynet/aboutscience/hypotheses.html

おさらい

  1. 科学における仮説の役割が何かを述べよ。
  2. 科学的な仮説であるための2つの基準は何か説明せよ。
  3. 以下の2つの主張のうちどちらが科学的仮説の基準を満たすか?
    1.  酸は赤いリトマス試験紙を青色に変える。
    2. 宇宙には地球上にしか生物が存在しない。
  4. ある仮説が真実であることを証明することが通常は不可能である理由を説明せよ。
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参考

  1. Hypothesis:Testable, falsifiable statements are essential to the scientific process.(ck12.org)
  2. The Logic of Scientific Discovery, by Karl Popper (PDF, 545 pages)
  3. カール・ライムント・ポパー記念講演会講演録(日本語)(PDF) 稲盛財団 京都賞 第8回(1992年) 精神科学・表現芸術部門 カール・ライムント・ポパー (Karl Raimund Popper)哲学(20世紀の思想)
  4. カール・ポパーの生い立ちと哲学 伊勢田哲治 (PDF 12 pages)
  5. 「ポパー哲学」への手引 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 ―  高坂邦彦
  6. 疑似科学から見えてくる科学と社会 季刊誌『ゑれきてる』 談 戸田山和久:”科学と疑似科学を分けるたったひとつの基準はないのですが、いくつかの基準はあります。…そのなかで、一番重要なのは科学哲学者カール・ポパー(1902~1994)が提案した「反証可能性」だと思います。科学哲学としての「反証主義」というポパーの考え方は、今はあまり支持者はいないのですが、彼が出してきた「反証可能性」という科学の基準そのものは、やはり、科学らしさの大事な目安としてあります。”
  7. 理研STAP細胞検証実験の無意味さを近藤滋大阪大学教授が一般の人にもわかる言葉で解説 「難しいことはわからんが再現実験を支持する、という一般市民の方へ」

 

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ラボの女はトラブル源 Hunt博士がUCLをクビ

細胞周期の研究で2001年にノーベル医学生理学賞を受賞しているティム・ハント博士の発言が物議をかもしています。彼はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の名誉教授でしたが、この発言のために辞職を余儀なくされました。

“Let me tell you about my trouble with girls. Three things happen when they are in the lab: you fall in love with them, they fall in love with you, and when you criticise them they cry.”

The resignation of Sir Timothy Hunt: Can’t feminists take a joke?

Tim Hunt sorry but stands by comments on women scientists

参考

  1. Sir Tim Hunt ‘sorry’ over ‘trouble with girls’ comments(BBC NEWS 10 June 2015)

京都大学医学部元准教授を収賄容疑で逮捕

京都大医学部付属病院の元准教授(47)と、医療機器販売会社「西村器械」の元京都支店副支店長(39)がそれぞれ収賄容疑、贈賄容疑で逮捕されました。元准教授は副支店長にメールや電話で度々賄賂を要求し、ドイツの「RIMOWA(リモワ)」やアメリカの「TUMI(トゥミ)」といった海外高級ブランドのキャリーバッグやスーツケースなど(約30万円相当)を自宅に届けさせていたそうです。また、京都・祇園や横浜での飲食接待も要求していたほか、ドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入するなど研究費を私的に流用した疑いも持たれています。

参考

  1. 西村器械株式会社:”幅広い医療機器、医療材料を取り扱う総合医 療機器商社です。特に循環器科、心臓血管外科、透析・血液浄化関連の医療機器販売 においては、永年の経験と豊富な実績を誇っています。当社の強みは、医療機関の皆様から寄せられる、現場ニーズにお応えすることによって築かれた、人と人のつながり、信頼関係にあります。”(会社情報>トップメッセージ 代表取締役社長 中井 真喜雄)
  2. 研究費流用でカメラ購入か 逮捕前に内部調査委(m3.com/共同通信 2015年6月18日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月、海外ブランドのデジタルカメラ数台(計数十万円相当)を研究用備品と装い購入、私的に使っていた。”
  3. バッグに祇園接待…京大病院の“おねだり汚職”は氷山の一角(日刊ゲンダイ 2015年6月17日):”「丸井容疑者ほど露骨な要求をするのは珍しいですが、例えば100万円の機器を『150万円でいいから、ひとつよろしく』などと、医師が1~2割のキックバックを受け取るなんて話は結構聞く。丸井容疑者の場合もそうでしたが、数百万円程度の安価な機器の選定については、裁量権のある医師が絶対。それだけ癒着が起こりやすいのです」”
  4. 元准教授、研究費でライカ購入か 京大病院汚職事件(朝日新聞DIGITAL 2015年6月17日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月ごろ、病院の研究費を不正に流用した疑いが持たれている。贈賄業者とされる医療機器販売会社からドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入していたという。”
  5. 逮捕の京大病院元准教授、祇園で接待受けていた (TBS NEWS 2015年6月16日):”丸井容疑者は、西村器械の社員、西村幸造容疑者(39)から高級キャリーバッグ3点を受け取っていましたが、警察へのその後の取材で、祇園などの飲食店でも接待を受けていたことが新たにわかりました。”
  6. 業者から物品、総額100万円か…京大病院汚職(読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月16日):”京大の内規は、100万円以上の契約時には複数社の見積書を取るよう定めている。西村器械は10機種以上、総額5000万円を超える機器を受注していたが、捜査関係者によると、この中に、西村容疑者が他社の見積書を用意したケースがあったという。”
  7. 収賄容疑の元准教授、「祇園で接待」要求 業者にメール(朝日新聞デジタル 6月16日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センターの医療機器納入をめぐる汚職事件で、京都府警に収賄容疑で逮捕された元准教授の丸井晃容疑者(47)が賄賂とされたバッグ以外にも、ブランド品や電化製品を贈賄業者側から受け取っていたことが捜査関係者への取材でわかった。”
  8. 【京大病院汚職】「中堅の心臓外科でリーダー的存在」 逮捕の丸井容疑者(産経WEST 2015.6.15):”逮捕された京都大病院元准教授、丸井晃容疑者(47)は平成6年に京大医学部を卒業後、京大病院の心臓血管外科などで勤務。優れた論文を次々執筆し、平成21年には同病院の探索医療センターで始まった血管再生治療のプロジェクトに准教授として選ばれて参加するなど、中堅の心臓外科医でリーダー的存在だったという。”
  9. 京大病院汚職:「もうかってるんだから」メールで品物指定(毎日新聞2015年06月15日):”京大の内規では、随意契約は1000万円未満の取引が対象。随意契約で医療機器を選定する際、その権限は、現場で実質的な研究を行う准教授が持つ場合が多いとされる。男性医師は「随意契約は、権限を持つ1人を落とせばよく、医療機器販売会社にとって契約を取りやすいのではないか」と話し、医師と業者側の癒着が起きやすい構造を指摘。”
  10. 京大病院元准教授を収賄容疑で逮捕 受注見返りにバッグ(朝日新聞DIGITAL 2015年6月14日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センター(京都市左京区)の医療機器を受注させる見返りに、業者から高級バッグを賄賂として受け取ったとして、京都府警は14日午後、同センターの元准教授(心臓血管外科)で医師の丸井晃容疑者(47)=奈良県天理市田部町=を収賄容疑で逮捕し、発表した。”

DARPA Robotics Challenge 2015 優勝した韓国チームに賞金2億5千万円

米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日、6日に開かれました。予選は2013年に行われており、この予選の上位および新たに出場資格を得たチームによって決勝が行われました。

25teamsDARPA2015

このコンテストは2013年の福島第一原発事故の教訓から着想を得たものです。もし高放射能による被爆をものともしないロボットが現場で作業できていたら、爆発などの事故の拡大を食い止められていたのではないかという考えから、参加ロボットは車の運転、車から降りること、ドアを開けて通ること、バルブを締めること、壁に穴を開けること、瓦礫の部分を越えて行くこと、階段を登ることなどのさまざまなチャレンジが課されています。

DARPA2015tasks

競技の模様。
DARPA 2015 Finals: Rescue bots compete in disaster simulation challenge

災害の場面を想定しているだけに、ロボットにとってはかなりタフな状況で、転倒するロボットが多かったようです。
A Compilation of Robots Falling Down at the DARPA Robotics Challenge

優勝したのは韓国のチームKAISTでした。
Korea’s Team KAIST robot completes tasks at the 2015 DARPA Robotics Challenge (fast motion)

ファイナリストは25チーム。日本からは、Aero(東大), AIST-NEDO(産総研), HRP-2Tokyo(東大), NEDO-Hydra(東大、千葉工大、阪大、神戸大), NEDO-JSK(東大)の5チームが参加していました。

 日本から参加の5チームのうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応ロボット研究開発」事業の支援を受けた3チームが出場する。

 東京大学の稲葉雅幸教授らのチーム「NEDO―JSK」は、13年のプレ大会で優勝した「シャフト」を輩出した研究室。高出力モーター駆動の人型ロボットで挑む。シャフトの技術を応用し、前回を超える活躍ができるか注目される。

 東大の中村仁彦教授らのチーム「NEDO―Hydra」は、電気油圧で全身を動かす世界初のロボットで参戦。「構成部品や制御回路、すべてゼロから作った」(中村教授)。手や足にかかる力を計測でき、工具をつかむ力やバルブを回す力を測りながら、繊細な動きができる。

 産業技術総合研究所から出場するチーム「AIST―NEDO」は10年以上の運用実績のある「HRP―2」を改良。産総研の金広文男ヒューマノイド研究グループ長によると「不整地の走破、階段は成功率が高い。工具の扱いや車の運転などは成功に向け調整している」という。(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日)

中国のIntelligent Pioneerと日本のNEDO-Hydraは棄権し、23チームでの優勝争いとなりました。日本勢は10位、11位、14位、最下位という成績で、他国に大きく水をあけられてしまいました。

DRC FINALS TEAM STANDINGS
TEAM SCORE TIME
TEAM KAIST 8 44:28
TEAM IHMC ROBOTICS 8 50:26
TARTAN RESCUE 8 55:15
TEAM NIMBRO RESCUE 7 34:00
TEAM ROBOSIMIAN 7 47:59
TEAM MIT 7 50:25
TEAM WPI-CMU 7 56:06
TEAM DRC-HUBO AT UNLV 6 57:41
TEAM TRAC LABS 5 49:00
TEAM AIST-NEDO 5 52:30
TEAM NEDO-JSK 4 58:39
TEAM SNU 4 59:33
TEAM THOR 3 27:47
TEAM HRP2-TOKYO 3 30:06
TEAM ROBOTIS 3 30:23
TEAM VIGIR 3 48:49
TEAM WALK-MAN 2 36:35
TEAM TROOPER 2 42:32
TEAM HECTOR 1 02:44
TEAM VALOR 0 00:00
TEAM AERO 0 00:00
TEAM GRIT 0 00:00
TEAM HKU 0 00:00

(引用:http://www.theroboticschallenge.org/)

参考

  1. DARPA ROBOTICS CHALLENGE FINALS 2015
  2. 災害ロボコンテスト、韓国チームが優勝 日本勢は最高10位 (日本経済新聞 2015/6/7):”韓国科学技術院のチームは44分台で8つすべての課題をクリアし、賞金200万ドル(約2億5000万円)を獲得した。2位は米フロリダの大学などで作る研究機関IHMC、3位は米カーネギーメロン大のチームが受賞した。”
  3. 【DRC Finals 現地レポート】日本チーム棄権、転倒…どうなる!?(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月06日):”日本からは5チーム出場していたが、競技開始を前にNEDO-Hydraチームが棄権。「もともと出場予定だったロボットのハードが不調で、バックアップ機でテストに出たが不調。最終的に棄権に至った」(NEDO-Hydraチーム関係者)。”
  4. 東大チーム転倒し苦戦…災害救援ロボット競技会 (読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月06日):”日本勢は、東京大の3チーム、東京大・千葉工大・大阪大・神戸大の合同チーム、産業技術総合研究所の計5チームで、いずれも決勝からの参加。13年に予選が開かれ、東大卒業生らが起業したSCHAFT(シャフト)社が1位になったが、米グーグル社に買収され、「商業用ロボットの開発を優先する」として決勝戦を辞退した。”
  5. DARPAロボティクスチャレンジ、これが全24体の選手達だ! (GIZMODO 2015.06.06):”ガイドには25体ありますが、中国のIntelligent Pioneerは残念ながら出場しないようです。”
  6. ロボットが運転する、壊す、上る、「DARPA Robotics Challenge」がスタート(IT PRO by 日経コンピュータ 2015/06/06):”米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日(米国時間)に米国カリフォルニア州ポモナ市の「Fairplex」で開幕した。”
  7. 危険な事故現場などで活躍する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge」の本戦開催が今週末に迫る(現代ビジネス 2015年6月4日):”DARPA(米国防高等研究計画局)が主催する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge(DRC)」が(米国時間の)今月5日(金)~6日にかけて米カリフォルニア州のイベント会場「フェアプレックス」で開催される。”
  8. 今年のDRCは日本から5チームが参戦!“第二のシャフト”は生まれるか? 米国防総省主催の原発・災害対応ロボット競技会が現地5日に開幕  (日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日):”
  9. グーグル、ロボット開発で国防総省にそっぽ (日刊工業新聞 ニュースイッチ2015年03月07日):”
    傘下のシャフトがコンテスト不参加へ 2013年12月にフロリダ州で開かれた前回のDRCでは、NASAやカーネギーメロン大学、軍事用ロボットを開発するボストン・ダイナミクス(グーグルが買収済)を差し置いて、シャフトがダントツの1位となり、その技術力が大いに注目されました。”

「ピペド」 、2chから国会へ 

真島省三 日本共産党衆議院議員が、平成27年5月19日(火曜日)に行われた第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号で質問に立ち、 日本の科学研究力を低下させている雇用不安、研究不正、研究教育体制の不備などさまざまな問題を取り上げました。その中で、匿名掲示板2chから生まれた「ピペド」という言葉を持ち出し、「ピペド」という言葉に象徴される日本のバイオ系研究室のブラック企業ぶりを指摘しました。

これは、大学院生たちがネット上で、まさにブラック企業のように働かされている状況を自虐的に称してピペット奴隷、その略語としてピペドと言ったのが、今ちょっとそういう関係の人たちの間で広がっているんです。

このピペドというのは、生命科学の必需品であるピペットという細長い形をした吸ったり出したりする道具をひたすら使って朝から晩まで実験をし続ける若手研究者のことを指しているということなんですね。

バイオ研究というのは非常に労働集約型で、その作業はなかなか機械化ができないという中で、ピペットでさまざまな試薬をまぜて、反応をさせて、細胞を培 養したりという工程が続きます。実験をすればするほど成果が上がっていく、そういう分野でもあるんですね。だから、教授に言われるがままに奴隷のように働 かされている。(第189回国会 平成27年5月19日 科学技術・イノベーション推進特別委員会  真島 省三 委員)

成果至上主義、劣悪な研究環境問題で政府をただす 真島議員 衆院科技特
日本共産党の真島省三衆院議員は5月19日、衆院科学技術特別委員会で理研STAP論­文不正の背景にある過度の競争的研究環境、成果至上主義をあおる競争的研究予算、任期­制研究者・ポスドク問題などについて政府をただしました。

10:41 (真島議員)ところでですね、これはちょっと質問通告しておりませんが、大臣にお聞きします。ピペドというのを御存じでしょうか、ピペド。御存じなければ、御存じないでいいんですけれども。ピペドという言葉があるんですが。
10:56 (山口国務大臣)ピペドというのは、何らかの省略の言葉、略語なんでしょうけれども、ちょっと今のところ聞き覚えはございません。

 

参考

  1. 第189回 国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号(平成27年5月19日)(衆議院 会議録)
  2. 科学技術特別委員会 2015年5月19日 (火)(4時間13分)(衆議院TVインターネット審議中継ビデオライブラリ)
  3. 競争で研究力が低下 真島議員 政府の科学政策批判 (真島省三日本共産党衆議院議員ウェブサイト):”日本共産党の真島省三議員は5月19日の衆院科学技術・イノベーション特別委員会で、小泉内閣により競争的資金の重点配分や任期制など競争的政策が進められた以降、大学や研究機関に成果至上主義がもたらされている問題を取り上げました。”
  4. ピペドとは、分子生物学を専門とする大学院生やポスドクを揶揄した言葉である。 2ちゃんねるの生物板を発祥とするインターネットスラングであり、現在では各種のウェブコミュニティに浸透している。このスラングは、学会誌や全国紙、商業誌の漫画、新書などでも言及されており、一般社会においても認知が広まっている。 (ja.yourpedia.org

研究者のための”10個のシンプルな原則”集

Ten Simple Rules(10のシンプルな原則)は、プロの研究者を目指す人が遭遇する数々のチャレンジを乗り越えるためのコツを教えるガイド集です。PLOS Computational Biology誌のヒット企画。

博士号をとるために

研究者になるためには、大学院を受験して研究室に所属し、数年間、研究のトレーニングを受けることになります。指導教官とは師弟関係としての付き合いが一生続くことになるので、研究室選び、指導教官選びは親を選ぶのと同じくらいに重要です。研究者としての運命を決定付けてしまうラボ選びで失敗しない方法は?理想的な大学院生のあり方は?

Ten Simple Rules for Graduate Students 「大学院生のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Finishing Your PhD 「学位取得のための10個のシンプルな原則」

学会発表に必要なスキル

研究者にとって、発表能力を磨くことはとても大切。良いポスターの作り方や学会での口演をうまくこなすコツは?

Ten Simple Rules for a Good Poster Presentation 「ポスター発表を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Making Good Oral Presentations 「学会発表を成功させるための10個のシンプルな原則」

論文の書き方と通し方

論文はどうやって書けばいいのでしょうか?研究者として生きていくための最重要スキルにもかかわらず、誰もちゃんと教えてくれないという落とし穴にはまらないように。

Ten Simple Rules for Writing Research Papers 「研究論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Better Figures 「論文の図作製のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple (Empirical) Rules for Writing Science 「科学論文を書くための10個のシンプルな経験則」

サブミッション(投稿)、リジェクト(却下)、リサブミッション(再投稿)、リビジョン(改訂)などを経て最終的に論文をアクセプト(受理)されるまでの道のりは、論文を書き上げる作業とはまた別の大変さがあります。途中で心が折れてしまわないために重要なことは?

Ten Simple Rules for Getting Published (日本語訳:『投稿した論文がリジェクトされてもへこたれないために~論文を出すための10個のシンプルな原則』

価値ある科学研究を行うために

科学に貢献するような優れた研究はどうしてこんなに少ないのでしょう?なぜ多くの研究結果はただ忘れ去られるだけなののでしょうか?この「10の原則」は計算機科学者リチャード・ハミングの講演内容“You and Your Research”(1986)をまとめたもの。

Ten Simple Rules for Doing Your Best Research, According to Hamming 「ハミングが説く、一流の研究をするためのシンプルな10原則」

論文発表したデータに再現性をもたせるために

生データは全て保存しておき、データ解析に用いた手法、スクリプト、手順なども全部記録し保存しておけば、第三者がデータ解析をやり直したとしても同じ結果が再現されるはずです。また、生データを全てインターネット上で公開して第三者が再利用可能な状態にすれば、またあらたな発見が生まれるかもしれません。データ捏造などの研究不正が起きる余地をなくすこともできます。

Ten Simple Rules for Reproducible Computational Research 「再現性のある計算機科学研究のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Care and Feeding of Scientific Data 「科学データを第三者に活用してもらうための10個のシンプルな原則」

ポスドク先のラボ選び

無事に博士号を取得した次に大きな選択となるのが、どこでポスドクをやるかです。その先、アカデミックポストが得られるかどうかは、ポスドク時代にどれだけの研究成果を出せたかにかかっているため、将来を見据えたうえで慎重に選ぶ必要があります。

ノーベル賞受賞者の多くはノーベル賞受賞者の研究室での研究経験があるという事実は、ラボ選びにおける見逃せないポイント。真核生物の遺伝子にはイントロンがあることを発見して1993年にノーベル医学・生理学賞を受賞した(フィリップ・シャープと共同受賞)イギリスの分子生物学者リチャード・ロバーツ博士のアドバイスにも耳を傾けてみましょう。

Ten Simple Rules for Selecting a Postdoctoral Position (Correction) 「ポスドク先の研究室を選ぶためのシンプルな原則10個」
Ten Simple Rules to Win a Nobel Prize 「ノーベル賞をとるためのシンプルな原則10個」

職を得るために

さて、ポスドクの修行時代を終えると、いよいよ職探し。アカデミアかインダストリーかという選択は、非常に大きな決断力を要します。博士号取得直後に民間に就職という選択もありますし、ポスドクまで経験してから民間に転ずるキャリアパスもあります。学生時代に製薬会社などでインターンシップを経験しておくのも職業選択における視野を広げるのに役立つでしょう。自分の人生がかかったジョブインタビュー(面接試験)を乗り切る方法は?

Ten Simple Rules for Approaching a New Job 「ジョブ獲得交渉を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Choosing between Industry and Academia 「インダストリーかアカデミアかを正しく選ぶための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Internship in a Pharmaceutical Company 「製薬企業でのインターシップを成功させるための10個のシンプルな原則」

研究費を獲得するために

お金がないと研究できません。研究グラント(研究費)を勝ち取る秘訣は何でしょうか?

Ten Simple Rules for Getting Grants 「グラント獲得のためのシンプルな原則10個」

教育と研究の両立

教育も、研究者の重要な職務。しかし、多くの場合、教育者になるための教育を受けていない研究者が大学の教員として教壇に立つことになります。授業の準備に膨大な時間をとられて大変ですが、研究とのバランスを取りながら優れた教育を行う秘訣は?

Ten Simple Rules To Combine Teaching and Research 「教育と研究を両立させるための10個のシンプルな原則」

研究者のお仕事

研究者がこなすべき仕事は、自分の論文を書くだけでなく、他人の論文を査読したり、レビュー論文を書いたり、学会でセッションの座長を務めたり、学会やワークショップの企画・運営を行うなど、キャリアアップするにつれていろいろと増えていきます。

Ten Simple Rules for Reviewers 「査読者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a Literature Review 「レビュー論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Chairing a Scientific Session 「学会で座長の役を無事に果たすための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Scientific Meeting 「研究集会を開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Running Interactive Workshops 「インタラクティブなワークショップを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules to Achieve Conference Speaker Gender Balance 「学会講演者の男女比を適切にするための10個のシンプルな原則」

共同研究を成功させるコツ

研究は一人でやるよりも共同してやったほうが大きな成果が得られやすいもの。しかし、人と人との間にはいろいろな思惑の違いも生じます。また、分野が異なる研究者同士では話す言葉がお互いに理解できなくて、研究の話が噛みあわないということがしばしば起こります。

Ten Simple Rules for a Successful Collaboration 「共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Successful Cross-Disciplinary Collaboration 「異分野間での共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Cultivating Open Science and Collaborative R&D 「オープンサイエンスと協同研究開発の基盤づくりのための10個のシンプルな原則」

学び続ける研究者

研究者は、自分の仕事を深めるためにも、また仕事の幅を広げるためにも、一生勉強し続ける必要があります。コーセラ(coursera.com)などインターネット上の無料プログラムを利用すれば、大学レベルの内容を誰でも学ぶことができるという素晴らしい時代になりました。何歳であっても、何か新しいことを学び始めるのに遅過ぎるということはありません。

Ten Simple Rules for Lifelong Learning, According to Hamming 「ハミングが説く、一生涯賢く学び続けるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Online Learning 「オンライン学習活用のための10個のシンプルな原則」

知的財産権をいかに守るか

Ten Simple Rules to Protect Your Intellectual Property 「あなたの知的財産権を守るための10個のシンプルな原則」

研究者が経済的にも成功する方法

研究職は元来金銭的に恵まれていないものです。しかし、研究成果をお金に換える方法を学べば、経済的にも報われた人生に。

Ten Simple Rules To Commercialize Scientific Research 「科学研究の成果をお金にするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Company 「研究者が起業するための10個のシンプルな原則」

研究者コミュニティや社会への貢献

研究者は研究者コミュニティの中で生活しています。コミュニティの一員として認められたという感覚はとても重要ですし、研究者がコミュニティのためにできることはたくさんあります。

Ten Simple Rules for Building and Maintaining a Scientific Reputation 「科学者としての評判を築き上げ保つための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Ahead as a Computational Biologist in Academia 「計算生物学者としてアカデミアの世界で成功するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Developing a Short Bioinformatics Training Course 「バイオインフォマティクス短期トレーニングコースを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules of Live Tweeting at Scientific Conferences 「ツイッターで学会の実況中継をするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Editing Wikipedia 「ウィキペディアを編集するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Involved in Your Scientific Community 「自分の研究分野の科学コミュニティに参加するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Open Development of Scientific Software 「科学研究用ソフトウェアのオープンデベロップメントを行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Regional Student Group 「学生の地域ネットワークを立ち上げるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Help from Online Scientific Communities 「オンライン科学コミュニティから有用な助言を得るための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Providing a Scientific Web Resource 「科学研究リソースをウェブ上で提供するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing an Unconference 「アンカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Virtual Conference—Anywhere 「バーチャルカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Community Computational Challenge
Ten Simple Rules for Teaching Bioinformatics at the High School Level 「高校生にバイオインフォマティクスを教えるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Aspiring Scientists in a Low-Income Country 「低所得国で上を目指す研究者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a PLOS Ten Simple Rules Article 「PLOS 10個のシンプルな原則を書くための10個のシンプルな原則」

計算生物学分野の話題

Ten Simple Rules for Effective Computational Research 「計算機科学的な研究を効果的に行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Reducing Overoptimistic Reporting in Methodological Computational Research 「計算機科学的な研究による方法論の成果をあまりにも楽観的に報告してしまわないための10個のシンプルな原則」

 

参考

  1. Ten Simple Rules (PLOS Computational Biology)
  2. リチャード・W・ハミング 「研究にどう取り組むべきか」 ベル通信研究所セミナー 1986年3月7日 日本語訳(himazu archive 2.0)

 

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論文を出すための10個のシンプルな原則

あなたがこの世を去って長い年月が経ったとき、あなたの科学的遺産は、主として、あなたがこの世に書き残した論文とそれらの論文が放つインパクトです。(When you are long gone, your scientific legacy is, in large part, the literature you left behind and the impact it represents.) - フィリップ・E・ボーン

データを取り終え、論文を書き上げ、学術雑誌に投稿してアクセプト(受理)されてようやく仕事が一つ完結します。しかし、投稿してすぐアクセプトされることなど滅多になく、多くの場合最初にリジェクト(却下)を食らいます。何年間も心血を注いだ仕事が却下されれば、誰でもへこむもの。そこからアクセプトに持っていくところで、研究者としての力量やタフさが問われます。

では、この「論文を出す力」はどうすれば身につくのでしょうか?

若い研究者向けに行われた講演の内容に加筆してまとめた、「論文を出すためのシンプルな10原則」という記事が、以前、PLoS Computational Biology誌に掲載されました。一番大事なことは、自分の仕事をどれだけ客観的に見ることができるか。その記事Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057を以下に訳出しました。

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論文を出すためのシンプルな10原則

フィリップ・E・ボーン

原則1:たくさんの論文を読んで、他人の優れた仕事やダメな仕事から学びなさい

批評家になるのに早すぎるということはありません。ジャーナルクラブは、グループで論文の批評を行うものですが、そのような類の対話をする素晴らしい機会 です。毎日少なくとも論文2報を詳細に読み(あなたの専門分野だけでなく)、それらの論文のクオリティについて考えることも、役に立ちます。多読のもう一つの大きな効用ーそれは自分自身の仕事をよりよく客観視するのに役立つことです。コンピューターの画面の前やラボの実験ベンチで毎晩夜遅くまで過 ごしていると、自分の仕事が画期的なものだとあまりにも簡単に思い込んでしまいます。そうではない可能性がかなり高いのですが、あなたのメン ターも同じ罠にはまってしまう可能性があるため、原則2があります。

原則2:あなたが自分の仕事を客観的に捉えられるようになればなるほど、あなたの仕事は最終的により良いものになる。

悲しいかな、自分自身の仕事を客観的に捉えることができない科学者もいます。そういう人は決して一流の科学者にはなれないのです。エディター(編集者)やレビューアー(査読者)らの客観的な物の見方を早い時期に学びなさい。

原則3:良いエディターやレビューアーはあなたの仕事を客観的にみてくれます。

エディトリアルボード(編集委員会)のクオリティが、レビューの過程がどのようなものかを示す最初のヒントになります。自分が論文発表したいと思っているジャーナルの発行人欄を見てごらんなさい。一流のエディターは、レビューが一流であることを要求しそれを実現します。サブミット(投稿)する前に、エネルギーを注ぎ込んで原稿のクオリティを上げましょう。理想的なことを言えば、レビューはあなたの論文のクオリティを上げてくれるものなのです。しかし、もし根本的な欠陥があれば、レビューアーらはそんなアドバイスをしてくれないでしょう。

原則4:英語を使いこなして書くということができていないのなら、早めにレッスンを受けなさい。後々、非常に役に立ちます。

これは文法だけの問題ではなく、もっと重要なこととして、理解の問題です。優れた論文というものは、説明が巧みなので、全くの部外者にも複雑なア イデアが理解できるようになっているのです。最も高名な科学者はたいていの場合、最もロジカルで、簡潔な表現を用いながら、刺激に満ちたレクチャーをしますよね?このことは、彼らが書く論文にも当てはまります。英文雑誌に良い論文を出すこととは無関係の職にあなたが将来就くにして も、わかりやすい文章を書くことは有益です。良い英語でわかりやすく書かれていない投稿論文は、サイエンスが際立って良いわけでも無い限り、たいてい リジェクトされるか、うまくいっても広範囲に及ぶ編集作業が必要なため出版が遅れます。

原則5:リジェクションを受けとめられるようにしなさい。

客観的でいられないと、リジェクションを受け入れるのが辛いものになりますし、この先、リジェクトはされるものなのです。サイエンスの世界で生きる以上、リ ジェクトされることはいくらでもあります。一流のサイエティストであってもです。論文がリジェクトされたり大幅なリビジョンが要求された場合における正し い反応は、レビューアーの言うことによく耳を傾け、主観的ではなく客観的に対応することです。レビューはあなたの論文がどのようにジャッジされているのかを反映していますから、それを受け入れられるようになりましょう。もしレビューアーたちが全員一致で論文のクオリティが低いというのであれば、固執せず気持ちを切り替えましょう。ほとんど全ての場合、彼らの言い分が正しいのです。もしメジャーなリビジョンが要求されたのなら、そうしなさい。問題にされたポイントひとつひとつに対処したことをカバーレターに記し、修正箇所がはっきりとわかる形で原稿の本文を直しなさい。リビジョンが何回も必要になるのは、当事者全員にとって苦痛を伴うことであり、論文の発表を遅らせることにもなります。

原則6:何が良いサイエンスをつくるのかは明らかですー研究トピックの新しさ、関連する文献を包括的にカバーしていること、良いアイデア、強力な統計的裏付けを含む良い解析、示唆に富むディスカッション。何が良いサイエンスレポートをつくるのかは明らかですー良い構成、テーブルや図の適切な利用、 適度な長さ、想定した読者に向けて書くことー明らかなことを無視してはいけません。

初稿を自分で読み直すときはこれらの構成要素を客観的にみるようにし、自分のメンターには頼らないようにしなさい。その仕事で利害関係が生じない同僚に論文を読んでもらい、率直な意見を得るようにしなさい。そのとき、トピックと同じ分野で研究していない人を含めるようにしなさ い。

原則7:追求したいクエスチョンの着想を得たその日のうちに論文を書き始めなさい。

この原則は論文発表に重点を置きすぎだという人がいるかもしれないが、こうすれば研究の範囲が定まるし仮説駆動型サイエンスも容易になる。初めて論文を書く人は、知っていることをなんでもかんでも論文に詰め込もうとしがちです。あなたが書いた学位論文はなんでもかんでも詰め込む場所でした。あなたの発表論文は簡潔で、最低限の文字数で最大限の情報を伝えなければなりません。著者へのガイドをよく読んでそれに従いなさい。エ ディターもレビューアーもそうします。研究を進めながらきちんと文献目録のデータベースを管理して、その中の論文を読みなさい。

原則8:研究者のキャリアの早い段階でレビューアーになりなさい

他人の論文をレビューすることは、より良い論文を書く助けになります。手始めに、あなたのメンターと共同作業しなさい;メンターがレビュー中の論文をもらって、レビューの最初のバージョンを作りなさい(たいていのメンターは喜んでそうさせてくれるはずです)。それから、メンターが提出する最終版のレビューを読んでみなさい。可能であれば、本誌では可能ですが、他のレビューアーが書いたレビューも読んでみなさい。そうすることで、自分が書いたレビューのクオリティを評価する重要な能力が身につきますし、うまくいけば、自分自身の仕事をより一層客観的にみることができるようになります。また、あなたはレビューのプロセスやレビューのクオリティを理解することができるようになります。このような理解は、自分の論文をどのジャーナルに出すかを決めるうえでも重要です。

原則9:論文をどこに出したいのかを早い段階で決めなさい。

この原則で、あなたが行っている仕事の形や細かさの程度や新しさが決まります。多くのジャーナルには投稿前問い合わせの制度がありますので、それを使いましょう。論文を書く前であっても、仕事の斬新さはどれくらいあるのか、また、あるジャーナルが興味を持ってくれそうかという感覚を得なさい。

原則10:クオリティが全てです。

質の高いジャーナルに論文を一本出すことのほうが、何本かの論文を質の低いジャーナルに出すよりも良いのです。論文のインパクトの有無を隠すことはますます難しくなってきています。グーグルスカラーやISIウェブ・オブ・サイエンスなどのツールがテニュア審査委員会や雇用者によって利用され、あなたの仕事のクオリティの指標がはじき出されています。かつてはジャーナルの名前だけが指標として使われていました。現在のデジタル世界では、誰にでも、ある論文にインパクトがないかどうか分かってしまいます。インパクトファクターが高いジャーナルに論文を発表するように努力しなさ い。そのようなジャーナルにもしアクセプトされれば、あなたの論文も高いインパクトを持つことになるでしょう。

あなたが世を去って長い年月が経ったとき、あなたの科学的な遺産の大部分が何かといえば、それは書き残した論文とそれらの論文の持つインパクトということになります。未来の世代の科学者が賞賛するようなものをあなたが遺せるように、これらの10個のシンプルな原則がお役に立てば幸いです。

 

Ten Simple Rules for Getting Published

Philip E Bourne

Citation: Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057

Copyright: © 2005 Philip E. Bourne. This is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are properly credited.

The student council (http://www.iscbsc.org/) of the International Society for Computational Biology asked me to present my thoughts on getting published in the field of computational biology at the Intelligent Systems in Molecular Biology conference held in Detroit in late June of 2005. Close to 200 bright young souls (and a few not so young) crammed into a small room for what proved to be a wonderful interchange among a group of whom approximately one-half had yet to publish their first paper. The advice I gave that day I have modified and present as ten rules for getting published.

Rule 1: Read many papers, and learn from both the good and the bad work of others.

It is never too early to become a critic. Journal clubs, where you critique a paper as a group, are excellent for having this kind of dialogue. Reading at least two papers a day in detail (not just in your area of research) and thinking about their quality will also help. Being well read has another potential major benefit—it facilitates a more objective view of one’s own work. It is too easy after many late nights spent in front of a computer screen and/or laboratory bench to convince yourself that your work is the best invention since sliced bread. More than likely it is not, and your mentor is prone to falling into the same trap, hence rule 2.

Rule 2: The more objective you can be about your work, the better that work will ultimately become.

Alas, some scientists will never be objective about their own work, and will never make the best scientists—learn objectivity early, the editors and reviewers have.

Rule 3: Good editors and reviewers will be objective about your work.

The quality of the editorial board is an early indicator of the review process. Look at the masthead of the journal in which you plan to publish. Outstanding editors demand and get outstanding reviews. Put your energy into improving the quality of the manuscript before submission. Ideally, the reviews will improve your paper. But they will not get to imparting that advice if there are fundamental flaws.

Rule 4: If you do not write well in the English language, take lessons early; it will be invaluable later.

This is not just about grammar, but more importantly comprehension. The best papers are those in which complex ideas are expressed in a way that those who are less than immersed in the field can understand. Have you noticed that the most renowned scientists often give the most logical and simply stated yet stimulating lectures? This extends to their written work as well. Note that writing clearly is valuable, even if your ultimate career does not hinge on producing good scientific papers in English language journals. Submitted papers that are not clearly written in good English, unless the science is truly outstanding, are often rejected or at best slow to publish since they require extensive copyediting.

Rule 5: Learn to live with rejection.

A failure to be objective can make rejection harder to take, and you will be rejected. Scientific careers are full of rejection, even for the best scientists. The correct response to a paper being rejected or requiring major revision is to listen to the reviewers and respond in an objective, not subjective, manner. Reviews reflect how your paper is being judged—learn to live with it. If reviewers are unanimous about the poor quality of the paper, move on—in virtually all cases, they are right. If they request a major revision, do it and address every point they raise both in your cover letter and through obvious revisions to the text. Multiple rounds of revision are painful for all those concerned and slow the publishing process.

Rule 6: The ingredients of good science are obvious—novelty of research topic, comprehensive coverage of the relevant literature, good data, good analysis including strong statistical support, and a thought-provoking discussion. The ingredients of good science reporting are obvious—good organization, the appropriate use of tables and figures, the right length, writing to the intended audience—do not ignore the obvious.

Be objective about these ingredients when you review the first draft, and do not rely on your mentor. Get a candid opinion by having the paper read by colleagues without a vested interest in the work, including those not directly involved in the topic area.

Rule 7: Start writing the paper the day you have the idea of what questions to pursue.

Some would argue that this places too much emphasis on publishing, but it could also be argued that it helps define scope and facilitates hypothesis-driven science. The temptation of novice authors is to try to include everything they know in a paper. Your thesis is/was your kitchen sink. Your papers should be concise, and impart as much information as possible in the least number of words. Be familiar with the guide to authors and follow it, the editors and reviewers do. Maintain a good bibliographic database as you go, and read the papers in it.

Rule 8: Become a reviewer early in your career.

Reviewing other papers will help you write better papers. To start, work with your mentors; have them give you papers they are reviewing and do the first cut at the review (most mentors will be happy to do this). Then, go through the final review that gets sent in by your mentor, and where allowed, as is true of this journal, look at the reviews others have written. This will provide an important perspective on the quality of your reviews and, hopefully, allow you to see your own work in a more objective way. You will also come to understand the review process and the quality of reviews, which is an important ingredient in deciding where to send your paper.

Rule 9: Decide early on where to try to publish your paper.

This will define the form and level of detail and assumed novelty of the work you are doing. Many journals have a presubmission enquiry system available—use it. Even before the paper is written, get a sense of the novelty of the work, and whether a specific journal will be interested.

Rule 10: Quality is everything.

It is better to publish one paper in a quality journal than multiple papers in lesser journals. Increasingly, it is harder to hide the impact of your papers; tools like Google Scholar and the ISI Web of Science are being used by tenure committees and employers to define metrics for the quality of your work. It used to be that just the journal name was used as a metric. In the digital world, everyone knows if a paper has little impact. Try to publish in journals that have high impact factors; chances are your paper will have high impact, too, if accepted.

When you are long gone, your scientific legacy is, in large part, the literature you left behind and the impact it represents. I hope these ten simple rules can help you leave behind something future generations of scientists will admire.

 

参考

  1. Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057
  2. プロフェッショナルな科学研究者になるためのキャリア形成ガイド:「10個のシンプルな原則」集

 

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