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森口尚史氏のiPS細胞臨床研究不正に関する最終報告書を東大が公表

iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った心筋細胞を患者に移植したというウソの発表をした森口尚史(ひさし)氏(49)。新聞で大々的に報道された直後にウソがバレてさんざん世間を騒がせましたが、ようやく東京大学が最終報告書をまとめて公表しました。

森口尚史氏による研究活動の不正行為に関する調査報告 東 京 大 学

平成24 年10 月10 日、米国で開催された国際会議において、森口 尚史 元・医学部附属病院 特任研究員(平成24 年10 月19 日付け懲戒解雇。以下「森口尚史氏」という。)により、iPS 細胞から誘導した心筋細胞移植を初めてヒトで行ったとする研究(以下「iPS 心筋細胞移植」という。)をハーバード大学の関連病院で行ったとする発表がなされ、翌11 日に読売新聞で報道された。直後にハーバード大学は、正規の手続きを経た臨床応用が行われたことを否定し、その後、森口尚史氏による虚偽発表等の不正行為 について新聞各誌で報道された。

これを受け、本学においては、森口尚史氏が在籍していた医学部附属病院及び先端科学技術研究センターにおいて予備調査を実施するとともに、本部に設置した科学研究行動規範委員会1において調査・審議を行い、調査結果をまとめたので、その概要を報告・公表するものである。

http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_250920_j.html

 4. 本学の対応について
(1) 関係者の処分等
森口尚史氏に対しては、虚偽の発表を行い、大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけたとして、平成24年10 月19 日付けで懲戒解雇の懲戒処分が既になされている。その他の関係者については、本学規則に基づき、厳正に対処する。
(2) 公的研究費の返還
森口尚史氏が特任研究員として雇用され、参画していた公的研究費に関しては、資金配分機関の指導に基づき、適切に対応する。
(3) 論文の取り下げ
不正行為であると認定した14 編の論文のうち、5 編については、既に撤回されている。その他の論文等についても、撤回等の処置が確実に講じられるよう、適切に対応する。
(4) 再発防止に向けた取組

http://www.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/public01_250920_j.pdfから一部抜粋)

不正を行った責任者は懲戒解雇、公的研究費を返還するというものです。助教の監督責任についても言及していますが、この森口尚史氏の一件は「単独犯」の趣きが強いものです。それに対して、東京大学分子細胞生物学研究所や大阪大学医学部の研究不正は研究室ぐるみの組織的犯罪の様相があります。なぜなら、同じ研究室から出た異なる筆頭著者による複数の論文で不正行為があったからです。

実質的な論文不正の責任者を懲戒解雇し、研究費を返還させるということを是非他の事件にも公平、公正に適用してもらいたいものです。億単位の研究費を使って不正行為を働いてきた研究室は、その数億円~数十億円を返還すべきですし、それを徹底することが今後の論文不正防止の最良の策でしょう。

再発防止に向けた取組みで教育のためのリーフレットを配っても効果はありません。そんなことは何年も前から行われていることです。

過去にさかのぼってでも責任を追及して、懲戒解雇、研究費返還などを徹底的に行い、論文不正が割に合わないことだと研究者に知らしめることが最重要です。捏造体質の研究室が組織的に行ってきた論文不正の悪質さに比べたら、森口尚史氏の件などジョークみたいなもので、メディアがこぞって仰々しく取り上げる価値はありません。

参考ウェブサイト

  1. 森口尚史のブロマガ「医学報道の光と闇」 降圧剤の臨床研究不正~バルタン星人(バルサルタン)の方程式~
  2. 森口尚史インタビュー(2012年11月10日):「十八番はデュエット曲の『ロンリー・チャップリン』や。俺、こう見えてサービス精神旺盛で、女には結構モテんねん。学生時代にバンドでボーカルやってたから、歌もなかなかのもんや」

 

 

 

10月29日東京でMATLAB EXPO開催

日本最大級のMATLABイベントMATLAB EXPOが2013年10月29日に東京・ホテルグランパシフィックLE DAIBAで開催されます(参加費無料、事前登録制)。内容は、基調講演、セミナー、チュートリアル、出展パートナー企業による製品展示、デモなど。セミナーのトピックは、

  • Embracing Complexity- 複雑性への取り組み
  • 基礎研究の現場から眺めた情報技術の見えないイノベーション
  • MATLABプログラミング入門
  • 今から始めるSimulink入門~制御編~
  • Simscapeによる物理モデリング入門
  • MATLABによる最適化入門
  • MATLABによるビッグデータ解析
  • MATLABプログラミング中級編パワフル機能を完全活用
  • MATLABによる機械学習
  • MATLABで試す機械学習
  • いまからはじめる、MATLABによる画像処理・コンピュータービジョン(導入編)
  • いまからはじめる、MATLABによる画像処理・コンピュータービジョン(活用編)
  • MATLABで信号処理~各種センサーを題材として~
  • 音声分野におけるMATLABの利用と先端研究紹介
  • ますます広がるSimulinkからの通信システム実装
  • MATLAB/Simulinkを活用した電源システム設計フロー紹介
  • ついに出た、SimulinkによるプログラマブルSoCデバイスへの実装ワークフロー
  • 画像処理IPコアへのHDL Coder適用事例
  • モーター・モーション制御モデルベースデザイン実践「制御系設計」編
  • モーター・モーション制御モデルベースデザイン実践「プラントモデリング」編
  • モーター・モーション制御モデルベースデザイン実践「リアルタイムテスト」編
  • モーター・モーション制御モデルベースデザイン実践「組み込みコード生成」編
  • 不具合の早期検出~モデルベースデザインによるモデルとコードの検証~
  • 多入出力(MIMO)制御システムのチューニングをSimulinkでより簡単に
  • 太陽光発電用パワーコンディショナへのMATLAB/Simulinkの活用
  • Simscapeと閉ループシミュレーションを活用したエンジン制御開発のフロントローディング実践
  • 量産ソフト開発向けのモデルベースデザイン環境構築
  • CADデータを活用したロボットシミュレーションと実機制御のシームレス化
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詳細、最新情報はマスワークス社のMATLAB EXPOウェブサイトをご覧ください。

 

参考(商品・サービス紹介)

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論文著者にはデータ捏造疑惑の説明責任がある

論文不正問題の渦中にある井上明久東北大学前総長が、告発した教授らを名誉毀損で訴えていた裁判で、仙台地裁は「論文に捏造、改ざんがあったとはいえない」という理由で名誉毀損を認める判決を下しました。

捏造があったのかどうかがもちろん一番の焦点になるわけですが、告発した側は「捏造や改ざんの疑いがあり、説明責任は井上氏にある」と主張し、井上明久前総長は「捏造などがあった事実を証明するべきだ」と反論していました。

仙台地方裁判所(市川多美子裁判長)は、「論文に捏造、改ざんがあったとは いえない」、「論文に捏造、改ざんがあるとの印象を与え、(井上明久氏の)社会的評価を低下させた」」という判決を下しました。井上明久東北大学前総長の言い分を認めた形です。

しかし、名誉棄損という判決を下しておきながら、”教授グループのホームページに記載された文言の削除と謝罪文掲載については請求を棄却”しています。名誉棄損だけれども名誉棄損になる文言はそのままで残しておいてかまわないというのは、矛盾していないのでしょうか?

「直ちに捏造、改ざんがあるということはできない」、「学術論争で決着を図るべきだ」というのがこの仙台地方裁判所の判断です。告発グループは書籍を出版し、数多くの文書をインターネット上で公開し、YOUTUBE動画なども用いて、論文不正の疑いに関する詳細な説明をしてきました。これらをみると、捏造の可能性に関する学術的な議論は十分尽くされていたように思えます。データ捏造の有無の判断を裁判所は避けたということでしょうか。

もし誰かが研究においてデータを捏造をしたら、それは「犯罪行為」と受け止められるべきであり、「学術論争の対象」という表現はあまり適切ではありません。

告発した教授らは控訴する方針で、今後の裁判の行方が注目されます。

参考記事

  1. 告発教授らに賠償命令 東北大前総長論文不正訴訟(河北新報社2013年08月30日金曜日)
  2. 論文不正訴訟:「告発で評価低下」認める 仙台地裁判決(毎日新聞 2013年08月29日)
  3. 東北大総長おやめください―研究不正と大学の私物化

現在インターネットで公表されている数多くの「捏造の疑い」は、専門の研究者から見ると事実上、「捏造の証拠」と思えるものが多く、それをさらに 「証明」せよといわれても告発者にはそれ以上はどうしようもないのではないでしょうか?その分野の研究者の大多数がこれは怪しいと思うのであれば、あと は、論文著者が説明責任を負うべきです。論文の矛盾点が説明されないままであれば、その論文は誰からも信用されず、引用もされず、存在価値を失います。存 在価値がないどころか、もし撤回されないのであれば、むしろ非常に迷惑な「ゴミ」として残ってしまいます。