DNA電気泳動写真のレーンの切り貼りの是非

小保方氏のSTAP論文問題は日本の生命科学研究者全体を巻き込む大騒動に発展していますが、DNAの電気泳動写真の切り貼りはどこまでなら許されるのでしょうか?雑誌の投稿規程に具体的にやってはいけないことが記述されている場合があります。

例えばMolecular Biology of the Cellの投稿規程には、

Authors may delete or crop irrelevant parts of a gel image (such as blank lanes) but should explicitly describe such manipulations in the figure legend and should add lines to the image to show where sections have been deleted. (http://www.molbiolcell.org/site/misc/ifora.xhtml)

とあり、空白のレーンなど不要な部分を除去することは構わないがその場合は除いた部分がわかるように線を引くこと、また図の説明文中にその旨をはっきりと記述することを要求しています。

Molecular Cell誌でも、

Groupings and consolidation of data (e.g., cropping of images or removal of lanes from gels and blots) must be made apparent and should be explicitly indicated in the appropriate figure legends. (http://www.cell.com/molecular-cell/authors)

 ゲルの写真でレーンを除いたりする場合には行なわれた操作が明瞭にわかるようにし、かつ、図の説明文で説明せよとあります。

Neuropsychopharmacology誌はもう少し具体的で、

Vertically sliced gels that juxtapose lanes that were not contiguous in the experiment must have a clear separation or a black line delineating the boundary between the gels. (http://www.nature.com/npp/author_instructions.html)

実験では隣接していなかったレーンを切り貼りにより並べる場合には、隙間を入れるかまたは黒い線でゲルの境界に線を入れるように求めています。

これらの規程からすると、論文には必要の無いサンプルも電気泳動してしまったためそのレーンを除いて図を作るということは、そのことを明示すれば問題ないようです。だったらレーンを並べ替えてしまってもいいのかとなると、そこまで細かい規程は見当たらずグレーゾーンに突入しているかもしれません。では同一のゲルではなく2枚のゲルのレーンを並べてもいいのかとなるとさらに疑問が膨らみます。しかし2枚のゲルの写真から一つの図を作ることが絶対にダメともいえないようで、

Molecular Pharmacology誌の投稿規程を読むと、

The groupings of images from different parts of the same gel, or from different gels, fields, or exposures must be made explicit by the arrangement of the figure (e.g., using dividing lines or ensuring white space separates lanes from different gels) and in the text of the figure legend. (http://molpharm.aspetjournals.org/site/misc/ifora.xhtml)

異なるゲルであってもレーンの間にちゃんと線を入れれば良いという記述があります。しかしさすがに移動度が極端に異なる2枚のゲルの一方を拡大・縮小して非科学的な操作により自分が合わせたいバンドの位置を合わせて並べるという行為まで許容しているとは考えにくいでしょう。

明示せずレーンを入れ替える切り貼りも、拡大縮小をデタラメに行なって2枚のゲルを張り合わせる切り貼りも、どちらもやってはいけないことです。日本のトップの研究者たちが出した論文の中で普通に「切り貼り」が行われていたという事実は驚くべきことですが、前述の2つでは悪質さの程度全く異なるため、「切り貼り」と言う言葉で両者を同列に並べるような報道姿勢は誤解を招き好ましくありません。

 

 

 

 


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