若山照彦山梨大教授が、凍結保存していたSTAP幹細胞の解析結果を報告するための記者会見を開きました。
【STAP細胞】10解析結果報告 若山照彦氏による記者会見【2014/6/16】
若山照彦山梨大教授が、凍結保存していたSTAP幹細胞の解析結果を報告するための記者会見を開きました。
【STAP細胞】10解析結果報告 若山照彦氏による記者会見【2014/6/16】
【STAP細胞】9竹市雅俊センター長らによる記者会見【2014/6/12】
参考
■18:30メド~ 改革委員会によるブリーフィング
【登壇者】
岸輝雄 委員長
間島進吾 委員長代理
市川家國 委員
塩見美喜子 委員
竹岡八重子 委員
中村征樹 委員
■20:00メド~ 竹市雅俊センター長らによる記者会見
【登壇者】
坪井裕 理化学研究所 理事
竹市雅俊 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター長
鍋島陽一 CDB自己点検検証委員会 委員長
(http://live.nicovideo.jp/watch/lv182653123)
理化学研究所の研究不正再発防止のための改革委員会は、2014年6月12日に「研究不正再発防止のための提言書」を理研理事長野依良治氏に提出し、その内容が公開されました。
「小保方さん所属組織”解体”を」理研の改革委員会(14/06/12)
日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複 数名いることは、理研にとって大きな救いである。本委員会はかかる研究者の勇気に敬意を表すると共に、このような行動により不利益な扱いをされることがな いよう、理研に対し、強く求めるものである。
Nature論文は全て撤回される見通しとなったが、STAP問題が日本の科学研究の信頼性を傷つけている事実は消えることはない。日本の代表的な研究機 関である理研が、STAP問題を真摯に総括し再発防止策を実行することができるのか、国内外から注目されている。STAP問題のような研究不正をめぐる不 祥事は、科学者自らによって解明、解決されなくてはならない。(http://news.mynavi.jp/news/2014/06/12/526/)
参考
報道によれば、研究不正再発防止のための改革委員会が理化学研究所の理事の入れ替えを求める内容を盛り込んだ報告書を来週にも公表するそうです。STAP細胞論文不正事件の真相究明は、日本のサイエンスの信頼を取り戻すためには不可欠です。理化学研究所の運営には、自分自身の保身や組織の防衛でなく、日本の科学研究の将来を本当に考えられる人が望まれます。
理事長 野依 良治 (就任年月日 2003年10月1日)
主要経歴
1963年4月 京都大学採用
1968年2月 名古屋大学理学部助教授
1972年8月 同大学理学部教授
1997年1月 同大学大学院理学研究科長・理学部長(併任)
2002年4月 同大学高等研究院長(併任)
理事 川合 眞紀 (就任年月日2010年4月1日)
主要経歴
1985年5月 理化学研究所採用
1991年5月 同研究所表面化学研究室主任研究員
2004年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
独立行政法人理化学研究所表面化学研究室招聘主任研究員(非常勤)
2009年4月 独立行政法人理化学研究所基幹研究所副所長(非常勤)
理事 古屋 輝夫 (就任年月日2009年4月1日)
主要経歴
1979年4月 理化学研究所採用
2006年2月 独立行政法人理化学研究所横浜研究所研究推進部長
2008年7月 同総務部長
理事 大江田 憲治 (就任年月日 2011年4月1日)
主要経歴
1980年4月 日本学術振興会奨励研究員
1982年4月 住友化学工業(株)採用
2002年7月 住友化学工業(株)生物環境科学研究所
分子生物グループ・グループマネージャー
2007年1月 内閣府 大臣官房審議官(科学技術政策担当)
2010年4月 住友化学(株)フェロー
理事 坪井 裕 (就任年月日 2012年9月19日)
主要経歴
1982年4月 科学技術庁採用
2000年6月 科学技術庁原子力局核燃料課長
2008年8月 文部科学省研究開発局開発企画課長
2009年7月 文部科学省大臣官房政策課長
2010年7月 経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2012年9月 退職(役員出向)
理事 米倉 実 (就任年月日2013年4月1日)
主要経歴
1981年4月 科学技術庁採用
2004年1月 文部科学省研究振興局基礎基盤研究課長
2006年7月 独立行政法人理化学研究所経営企画部長
2009年7月 経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2010年7月 独立行政法人宇宙航空研究開発機構執行役
2012年1月 筑波大学理事・副学長
2013年3月 退職(役員出向)
(http://www.riken.jp/about/executive/)
研究不正再発防止のための改革委員会 (平成26 年4 月10 日現在)
市川 家國 信州大学医学部 特任教授
岸 輝雄 新構造材料技術研究組合 理事長
塩見 美喜子 東京大学大学院理学系研究科 教授
竹岡 八重子 光和総合法律事務所 弁護士
中村 征樹 大阪大学全学教育推進機構 准教授
間島 進吾 中央大学商学部 教授、公認会計士
(http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140410_2/140410_1.pdf)
参考
小保方晴子理化学研究所研究ユニットリーダーが筆頭著者になっている2報のSTAP細胞NATURE論文のうちアーティクルの方の論文ではデータ捏造・改竄の研究不正が理研調査委員会により認定されていましたしかし、もう一つのレターの論文でも実は不正の事実があることを示す報告書を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの検証チームがまとめていました。
それによるとSTAP細胞を利用して作製したマウス胎児の写真と、胚性幹細胞(ES細胞)を利用して作製したマウス胎児の写真が、実は同一個体の別カットの写真だったそうです。
STAP 不正認定以外にも複数の疑義 2014年5月21日
NHKの取材に答えて日本分子生物学会の副理事長の九州大学中山敬一教授は、
再発防止のためには、今後、速やかに調査を行い、すべてを 公表することが欠かせない。理化学研究所が、こうした疑義を把握していながら公表せず、正式な調査も行わなかったのだとすると大きな問題だ。
とコメントしています。
参考
日本の高校生が、ダンゴムシで交替制転向反応が生ずるメカニズムに触覚が関与していることを実証する研究報告により2014年インテル国際学生科学技術フェアに入賞しました。
ダンゴムシは壁にぶつかっったときに右に曲がると、その次にまた壁にぶつかったら場合今度は左に曲がり、以降右、左、交互に曲がる傾向があり、「交替制転向反応」と呼ばれています。
【YOUTUBE動画】ダンゴムシは壁にぶつかり右に曲がると次は左に曲がる習性がある。トリビアの泉
参考
小保方氏のSTAP論文問題は日本の生命科学研究者全体を巻き込む大騒動に発展していますが、DNAの電気泳動写真の切り貼りはどこまでなら許されるのでしょうか?雑誌の投稿規程に具体的にやってはいけないことが記述されている場合があります。
例えばMolecular Biology of the Cellの投稿規程には、
Authors may delete or crop irrelevant parts of a gel image (such as blank lanes) but should explicitly describe such manipulations in the figure legend and should add lines to the image to show where sections have been deleted. (http://www.molbiolcell.org/site/misc/ifora.xhtml)
とあり、空白のレーンなど不要な部分を除去することは構わないがその場合は除いた部分がわかるように線を引くこと、また図の説明文中にその旨をはっきりと記述することを要求しています。
Molecular Cell誌でも、
Groupings and consolidation of data (e.g., cropping of images or removal of lanes from gels and blots) must be made apparent and should be explicitly indicated in the appropriate figure legends. (http://www.cell.com/molecular-cell/authors)
ゲルの写真でレーンを除いたりする場合には行なわれた操作が明瞭にわかるようにし、かつ、図の説明文で説明せよとあります。
Neuropsychopharmacology誌はもう少し具体的で、
Vertically sliced gels that juxtapose lanes that were not contiguous in the experiment must have a clear separation or a black line delineating the boundary between the gels. (http://www.nature.com/npp/author_instructions.html)
実験では隣接していなかったレーンを切り貼りにより並べる場合には、隙間を入れるかまたは黒い線でゲルの境界に線を入れるように求めています。
これらの規程からすると、論文には必要の無いサンプルも電気泳動してしまったためそのレーンを除いて図を作るということは、そのことを明示すれば問題ないようです。だったらレーンを並べ替えてしまってもいいのかとなると、そこまで細かい規程は見当たらずグレーゾーンに突入しているかもしれません。では同一のゲルではなく2枚のゲルのレーンを並べてもいいのかとなるとさらに疑問が膨らみます。しかし2枚のゲルの写真から一つの図を作ることが絶対にダメともいえないようで、
Molecular Pharmacology誌の投稿規程を読むと、
The groupings of images from different parts of the same gel, or from different gels, fields, or exposures must be made explicit by the arrangement of the figure (e.g., using dividing lines or ensuring white space separates lanes from different gels) and in the text of the figure legend. (http://molpharm.aspetjournals.org/site/misc/ifora.xhtml)
異なるゲルであってもレーンの間にちゃんと線を入れれば良いという記述があります。しかしさすがに移動度が極端に異なる2枚のゲルの一方を拡大・縮小して非科学的な操作により自分が合わせたいバンドの位置を合わせて並べるという行為まで許容しているとは考えにくいでしょう。
明示せずレーンを入れ替える切り貼りも、拡大縮小をデタラメに行なって2枚のゲルを張り合わせる切り貼りも、どちらもやってはいけないことです。日本のトップの研究者たちが出した論文の中で普通に「切り貼り」が行われていたという事実は驚くべきことですが、前述の2つでは悪質さの程度全く異なるため、「切り貼り」と言う言葉で両者を同列に並べるような報道姿勢は誤解を招き好ましくありません。
小保方氏らによりNATURE誌に発表されたSTAP細胞作製ですが、その再現に取り組んできた香港中文大学の李嘉豪(Kenneth Ka Ho Lee)教授は、小保方氏らが発表した方法ではSTAP細胞は作れなかったという論文を発表しました。
STAP論文問題をずっと取り上げててきたカリフォルニア大学医学部デービス校の幹細胞研究者ポール・ノフラー博士は、この論文はNATURE編集部が撤回するのが当然だという意見を自身のブログで表明しています。
I believe it is really only a question of when, not if, Nature will editorially retract them.(http://www.ipscell.com/2014/05/perspectives-on-lee-lab-f1000-paper-that-stap-cell-method-does-not-work/)
NATURE誌もネイチャーブログやネイチャーニュースで理研の対応などSTAP問題の状況を逐次伝えてきており、編集部がこの問題を深刻に受け止めていることが窺えます。
2014年5月8日 Misconduct verdict stands for Japanese stem-cell researcher
2014年4月25日 Investigator of controversial stem-cell study resigns
2014年4月9日 Acid-bath stem-cell scientist apologizes and appeals
2014年4月1日 Stem-cell scientist found guilty of misconduct
2014年3月10日 Call for acid-bath stem-cell paper to be retracted
参考
STAP論文捏造疑惑に関して小保方晴子氏の研究不正を理化学研究所の調査委員会が認定したことに対して、小保方氏の弁護団は再調査を求める申し立てを行なっていました。弁護士らは追加資料を4日付で提出したことを明らかにしていましたが、理化学研究所は再調査をしないという決定を下しました。
【STAP細胞】6再調査せず 調査委員会による記者会見 前半【2014/5/8】
【STAP細胞】7再調査せず 理化学研究所による記者会見 後半【2014/5/8】
理研の審査結果を説明する文書では、小保方氏らの申し立てに対して項目ごとに丁寧に反証を示しています。
STAP細胞論文のデータは不可解なことだらけですが、その中でもデータ捏造を決定的なものにしたのは、テラトーマ作製の図が博士論文の異なる実験結果からの流用だったという事実の発覚でした。これに関して小保方氏は画像を取り違えてしまっただけで正しい画像がある(調査書中の「画像B」)と主張していました。そこで、画像Bが真正なものかどうかが争点になるわけですが、この理研調査委員会の審査結果を読むと実験条件に関する記載が実験ノート中に全くないため、正しい実験をしたという小保方氏の主張には何の根拠もないことがわかります。
ウ 画像B の存在について
(ア)画像B について、不服申立て者は、補充書(1)において、実験ノートの75 ページ
の記述をもとに、正しいと主張する画像B の元となるテラトーマが2012 年1 月24 日に取
り出されたなどとする。
(イ)しかしながら、75 ページには日付がなく、近傍のページで日付があるのは、73 ペー
ジ(「6/28」)、76 ページ(「2/29」もしくは「2/19」(いずれか判読不能))、81 ページ(「10
月」)のみである(いずれも年の記載なし)。このように、75 ページに記載されている実験
が2012 年1 月24 日に行われたことを確認できない。また、75 ページには、このテラトー
マがどのような細胞と方法を用いて作製されたかについては記載されていない。
(ウ)不服申立て者は、実験ノートの117 ページの記述をもとに、正しいと主張する画像B
が2012 年6 月9 日に撮影された、としている(補充書(1)「第3、3」及び同「第3、
4」等)。しかし117 ページには日付がなく、「染色(Differentiation assay)(ES コロニー)」
と記載されているだけで、これがどのようなサンプルを、どのような抗体を用いて染色さ
れたのかについては記載されていない。(http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140508_1/)
参考
オスは積極的に多数のメスと交尾しようとし、メスは受け入れるオスを選ぶというのが交尾行動における一般的なオスメスの役割だと考えられます。メスが積極的に多数のオスを相手にする(promiscuous)、オスメスの性行動での役割がひっくり返った生き物はこれまでにいくつか知られていましたが、外部生殖器の構造まで逆になっている例はありませんでした。ところがブラジルの洞窟に棲むある昆虫の種では、メスにペニス、オスに膣があり、交尾行動に入ると40~70時間もの間メスがオスをがっちりつかんで離さないという、いわばオスメスの役割におけるSWAP現象が発見されました。
(交尾の体勢もオスメスが通常の昆虫とは逆でメスがオスに乗りかかっています。写真:北海道大学プレスリリースより)
論文のタイトルは、Female Penis, Male Vagina, and Their Correlated Evolution in a Cave Insect
(洞窟棲昆虫の「雌の陰茎」と「雄の膣」の間に見られた共進化)。
この昆虫は2010年に新種として発見されたもので、その後生殖器の構造と性行動を詳細に解析した結果、今回の発見につながりました。
カレントバイオロジーを発行しているセルプレス社では、論文が世間に与えたインパクトを測る指標Article level metricsのスコアを論文ごとに表示しています。それによると今回の論文のインパクトはカレントバイオロジーで発表されこの計測の対象となった論文3,157報の中で、堂々の1位。他の雑誌も含めてスコアを計測した209万798報の論文の中でも46位という非常に高い順位です。メスにペニスというのが衝撃的で、世界中のニュースサイト、ブログ、ツイッターで取り上げられ、非常に大きなインパクトを与えたことがわかります(リンク:この論文のArticle level metrics)。
STAP細胞NATURE論文の捏造問題の処理にあたっている理研の調査委員会の調査委員長や調査委員らの過去の論文にデータ捏造、改竄の疑義が唱えられるという異常な事態になっていますが、理研の研究者は自分の過去の論文の粗探しをされることを恐れて、STAP細胞問題に関わることに尻込みしてしまっているようです。
ジャパンタイムズの記事によると、理化学研究所の元研究者トーマス・クヌッフェル(Thomas Knopfel)氏は、理研在職中に研究不正を問題にしようとしたらむしろ激しいハラスメントに会い、理研で研究を続けることが不可能になったと述べ、研究不正に関して非常に甘い理研の隠蔽体質を強く批判しています。
理研の野依良治理事長は石井俊輔氏がSTAP細胞論文調査委員会の委員長を辞任するという事態を受け、4月25日に理研の研究リーダーらに対して、画像の切り貼りや盗用などの不正がないかを自主的に点検するよう文書で指示していたことが明らかになりました。
参考
小保方晴子氏がSTAP細胞作製を報告したNATURE論文の中でデータの捏造、改竄があったことを認定した理化学研究所の調査委員会の委員長を務めた石井俊輔委員長の研究室から出た過去の論文にデータの写真の切り貼りが指摘されたのに続いて、さらに、他の委員らの論文にも研究不正の疑惑が持ち上がるという異常な事態が生じています。これらの指摘を受けて理研は理研所属の2名の審査委員に関しては不正があったかを確認するための予備調査を開始しました。
調査委員委員の一人である田賀哲也教授が所属する東京医科歯科大学でも同様の指摘を受けて予備調査を行い、「不正があったと立証できるものはない」という結果を発表しました。
しかし、どの論文のどの図に関してどのような不正の疑いがあったのか全く報道されておらず、東京医科歯科大学の「不正なし」という判断の根拠も示されていないため、第三者には何がどうなっているのか全くわからない状態です。
論文捏造&研究不正 @JuuichiJigen
細胞画像の縮小版と拡大版を一つのFigure内に掲載しただけなのに、「画像捏造(流用)」ではないか?との言いがかり(見当違い)の告発をされたSTAP論文調査委員の田賀哲也氏が所属する東京医科歯科大学は、既に予備調査を終えて、不正の証拠はなしとして本調査には進まないと発表した模様。4:48 – 2014年5月2日(https://twitter.com/JuuichiJigen/status/462196825127387136)
小保方氏代理人が苦言「STAP論文許されず、委員の論文は許される」(産経新聞 5月3日(土)14時49分配信)
三木氏はコメントの中で「STAP論文は許されず、田賀論文は許されるとすれば、画像の切り張りや引き伸ばしについて許される場合と許されない場合があることになる」と指摘。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140503-00000540-san-soci)
インターネット上では真っ向から対立した議論があり、情報が錯綜しています。
東京医科歯科大学も、山中伸弥教授や石井俊輔氏のように実験ノートや生データの有無を明らかにし、論文の図の作製においてどのような操作が行なわれたのかをもっと詳細に説明したほうが良いのではないでしょうか?STAP論文捏造疑惑の小保方晴子氏の弁護団の一人、三木弁護士からは何が研究不正にあたるのかを説明してもらいたいという要望が出ており、論文作製における図の取り扱いは現在の日本の科学研究にとって非常に重要な争点になっています。
疑惑が指摘されたが問題はなかったという説明だけでは、論文不正の指摘が「言いがかり」だったのか、それとも不正行為を「もみ消し」たのか、第三者には全くわかりません。不正疑惑を払拭するのに十分な実験ノートや生データとはどのようなものなのか、研究者の常識を知らしめる良い機会です。是非、研究者でない一般の人にも理解できるような、わかりやすい説明をして欲しいものです。
理研調査委3人に論文不正疑惑 予備調査を開始(14/05/02)
【追記】
インターネット上の情報によれば問題視された田賀氏の2004年の論文は、
Takao Setoguchi, Kinichi Nakashima, Takumi Takizawa, Makoto Yanagisawa, Wataru Ochiai, Masaru Okabe,Kazunori Yone, Setsuro Komiya, Tetsuya Taga. Treatment of spinal cord injury by transplantation of fetal neural precursor cells engineered to express BMP inhibitor. Experimental Neurology Volume 189, Issue 1, September 2004, Pages 33–44
であり、疑問を持たれた点の一つは、図2Cが図2Fの一部を拡大したものになっているという指摘でした(http://4.bp.blogspot.com/-R5habHlRKsA/U2OtIn9ypjI/AAAAAAAABVY/f0mNUCtjeZQ/s1600/1.png)。図2の説明文を読むと(http://1.bp.blogspot.com/-fBBP97q90KI/U2O0AD5GCWI/AAAAAAAABVo/xcV1rONjK5s/s1600/2.jpg)、図2Fはこの実験においてMAP2抗体染色(赤色)とGFAP抗体染色(緑色)を行なったことを説明するためのものであり、この実験の中でGFAP陽性アストロサイトが観察されたことが図2Cで示されています。つまり同一の実験結果なので、図2Fの一部(緑色に染色された細胞集団)を図2Cとして用いたことにはなんら問題はありません。疑義を呈した人はおそらくこの論文の図の説明を読まずに勘違いしてしまったのではないかと思われます。
参考
小保方晴子氏のSTAP論文捏造疑惑ともあいまって、DNA電気泳動の写真データの切り貼りが広く研究者の間で行なわれていた事実が発覚し、日本の科学研究の信頼性が大きく揺らぐ異常な事態になっています。
以前からインターネット上の一部のサイトで山中伸弥教授の論文に関しても疑義が指摘されていましたが、2014年4月28日に山中教授が記者会見を行いこの疑惑をきっぱりと否定しました。
(上図は京都大学iPS細胞研究所ウェブサイトより転載)
参考
小保方晴子氏らのSTAP細胞NATURE論文の疑義に関して調査を行なってきた理化学研究所調査委員会では石井俊輔・理研上席研究員が委員長を務めていましたが、その石井氏の研究室から出た過去の論文にデータ操作の疑義が生じ、石井俊輔氏は調査委員会委員長を辞任しました。石井氏の後任として、調査委員会委員で弁護士の渡部惇氏が4月26日付で新委員長に就任しました。
この件に関しては、石井俊輔氏が実験ノート、生データを公開し、行なわれた訂正に関して詳細に説明をしています。
リンク:「インターネット上で指摘されている当研究室からの論文に関する疑義について。」(理化学研究所分子遺伝学研究室ホームページ 石井俊輔 4/24; 4/28 6~9ページ追記, 4/30 10~11ページ追記)
参考
STAP細胞論文におけるデータ捏造、改竄の不正行為は研究者や研究経験者から見れば100%明白であり、その悪質さに関しては全く議論の余地すらないと思われました。それにもかかわらず、理研調査委員会によって不正行為の当事者と認定された小保方晴子氏が2014年4月9日に行った釈明記者会見後の世論調査では、小保方さんの説明を信じると答えた人が3分の1程度もいました。
ヤフージャパンのサイトによれば、「あなたは、小保方リーダーの説明に納得しましたか?」という質問に対して、24万6千53人が回答し、51.7%の人が「納得できなかった」のに対し、30.3%の人が「納得した」と答えています。またテレビ番組『新報道2001』が首都圏500人を対象に行なった世論調査でも、「納得する」人が35.2%、「納得できない」人が49.2%で、ヤフーのアンケートと同様の結果になっています。
研究のことは難しくて全くわからないけれども、すごい発見をした小保方さんが全ての失敗の責任を擦り付けられていて可哀想と思っている人が世の中では3分の1を占めているのです。これは驚くべき高い数字です。
このような事態が生じる一因は無責任なテレビ番組制作にあるでしょう。面白おかしければ良いという発想なのか、非常に偏った考え方を持つ人をゲストの一部に加えて、TVスタジオでとんでもない発言を繰り広げさせ、そんなデタラメをそのままお茶の間に垂れ流しにしているのです。発言した人が大学教授の肩書きを持っていたり社会的に地位の高い人であれば、実際にそのコメントを真に受けてしまう視聴者が一定の割合で出てきてしまいます。
小保方氏会見 なぜ問題は起きたのか? 新報道2001 2014年4月13日(1/5)
武田邦彦 小保方論文(STAP細胞)1/2 間違ってて当たり前!
激論! STAP問題 “研究開発法案”の行方 新報道2001 2014年4月20日(2/3)
科学者が科学者のコミュニティの中だけで発言していては不十分であり、もっと一般的なメディアを使って一般の人に対して正しい情報を発信していく必要があります。研究者のブログを読むのはほとんどの場合研究者でしかないため、研究者がいくらブログで今回のSTAP細胞論文捏造事件を論じても世間一般には全く伝わらないのです。インターネットがこれほど普及していても、一般の人に対するテレビの影響力は絶大です。
参考
STAP細胞NATURE論文捏造事件においてNATURE論文の執筆で主要な役割を果たした理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が2014年4月16日記者会見を行い、NATURE論文投稿に至るまでの経緯を説明しました。
笹井芳樹氏会見質疑応答全収録;STAP細胞問題16日午後、都内
まずNATURE論文作製に笹井氏がどのように関わったのかという点に関して。
笹井氏が論文著者として名を連ねるに至った経緯に関しては、バカンティ教授より強い要請を受けたためと説明しています。また、レター論文で責任著者になっていることに関しては、2013年9月の改訂論文の投稿時に若山氏から強く頼まれて3人目の責任著者になったのだそうです。
笹井芳樹氏を小保方晴子氏の上司と位置付けての報道もなされていましたが、笹井氏に小保方氏の実験に関して監督責任があったのでしょうか?その点に関しても笹井氏は説明をしています。
捏造論文が世に出てしまった経緯に関して。
笹井氏はSTAP現象があることを前提としなければ容易に説明できないデータがあると述べてきましたが、捏造や改竄データが認定された論文の他のデータを正しいと信じろというのは無理なことです。笹井氏はなぜそれでもSTAP現象があると考えているのでしょうか?そのような質問に対しても回答がありました。
博士論文をコピペしていたり、以前の論文でもDNAのゲルの写真を反転して図を捏造した疑いがインターネット上で指摘されていますが、研究者としての資質が問われるような人間を理研のユニットリーダーとして採用した理研の人事における責任は非常に重大です。採用の経緯に関しても説明がありました。
今回の記者会見は、NATURE論文掲載に至るまでの経緯がようやく詳細に説明されたという点で意義がありました。
捏造論文発表の責任を笹井氏がどの程度負うべきかという点に関しては、さまざまな意見があります。記者会見の中で笹井氏は、自分は論文執筆を頼まれて手伝っただけであり、今回のSTAP細胞の研究発表ではあまり重要な役回りではなかったと言いたげでした。しかし過去の読売新聞の報道が正しければ、
STAP論文、掲載1週間前に最終稿…若山教授———–読売新聞 3月23日(日)8時49分配信
STAP(スタップ)細胞の論文の主要な著者の一人である若山照彦・山梨大教授(46)は、読売新聞の取材に対し、論文の最終稿が理化学研究所のチームから届いたのは、掲載の約1週間前だったことを明らかにした。…若山教授によると、最終稿が理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長(52)らから届いたのは、英科学誌「ネイチャー」で掲載が決まってから1か月後の今年1月。すでに大幅な修正ができない時期で、若山教授は自分の研究部分以外はチェックしなかった。論文は1月30日付で同誌に掲載された。
ある時点からは若山氏を蚊帳の外に置いて笹井氏が論文投稿の主導権を握っていたのではないかと推測されます。論文の最終原稿を共同研究者に見せずに投稿し、受理されて世に発表される直前になってからようやく原稿を渡すというのは相手を非常に軽んじる行為だからです。このような行為と記者会見での笹井氏の説明とは矛盾しないのでしょうか?
また会見では、iPS細胞の山中伸弥氏への対抗心があったのではないかと質問されて、完全に否定しました。しかし、多くの報道にあったとおり、
理研、STAP細胞報道資料の一部撤回 iPS細胞との比較分(日本経済新聞 2014/3/18 19:47 )
… iPS細胞との性能を比較した説明資料で、STAP細胞の作製効率は30%と、iPS細胞の0.1%より優位性があるとしていた。資料はSTAP細胞の論文の共著者である理研の笹井芳樹副センター長を中心に作成した。山中伸弥・京都大教授は2月10日の記者会見で反論。0.1%というiPS細胞の作製効率は2006年当時のもので、現状では20%以上とした。(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1805T_Y4A310C1000000/)
自分の専門分野の最新状況を知らないわけがないにも関わらず、わざわざiPS細胞の古い資料を引き合いに出してSTAP細胞の優位性を強調する行為は、対抗心の表れと言えないのでしょうか?
今回の記者会見の内容は言葉だけ聞けば整合性があるようにも思えますが、言葉と行動が合致しているのかどうかが問題です。
参考
小保方晴子氏が2014年4月9日にSTAP細胞NATURE論文疑惑に関する記者会見を行いましたが、反響があったポイントなどに関する補足説明が小保方晴子氏の弁護団より公表されました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4月9日の記者会見に関する補充説明
4月9日の記者会見における小保方晴子氏の発言に関して、いろいろな意見が出ていることを鑑みて、補充説明として小保方氏から聞き取りました点をご紹介いたします。
小保方晴子 弁護団
1 STAP細胞の存在について
(1)200回以上成功したと述べた点について 私は、STAP細胞の実験を毎日のように行い、しかも1日に複数回行うこともありました。STAP細胞の作成手順は、①マウスから細胞を取り出して、②いろいろなストレスを与え(酸や物理的刺激など)、③1週間程度培養します。この作業のうち、1と2の作業は、それ自体にそれほどの時間はかからず、毎日のように行って、並行して培養をしていました。培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認して、STAP細胞が作成できたことを確認していました。このようにして作成されたSTAP細胞の幹細胞性については、培養系での分化実験、テラトーマ実験やキメラマウスへの寄与の実験などにより、複数回、再現性を確認しています。 STAP細胞の研究が開始されたのは5年ほど前のことですが、2011年4月には、論文に中心となる方法として記載した酸を用いてSTAP細胞ができることを確認していました。その後、2011年6月から9月頃には、リンパ球のみならず、皮膚や筋肉や肺や脳や脂肪など、いろいろな細胞について、酸性溶液を含む様々なストレス条件を用いてSTAP細胞の作成を試みました。この間だけで100回以上は作成していました。 そして、2011年9月以降は、脾臓由来のリンパ球細胞(CD45+)を酸性溶液で刺激を与えて、STAP細胞を作成する実験を繰り返していました。このSTAP細胞を用いて、遺伝子の解析や分化実験やテラトーマの実験などを行うので、たくさんのSTAP細胞が必要になります。この方法で作ったものだけでも100回以上はSTAP細胞を作成しています。また、今回発表した論文には合わせて80種類以上の図表が掲載されており、それぞれに複数回の予備実験が必要であったことから、STAP細胞は日々培養され解析されていました。このことから、会見の場で200回と述べました。
(2)第三者によって成功している点について 迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで、名前を公表することはできません。 成功した人の存在は、理研も認識しておられるはずです。
2 STAP細胞作製レシピの公表について
STAP 細胞を作る各ステップに細かな技術的な注意事項があるので、一言でコツのようなものを表現することは難しいのですが、再現実験を試みて下さっている方が、 失敗しているステップについて、具体的にポイントをお教えすることについては、私の体調が回復し環境さえ整えば、積極的に協力したいと考えております。状況が許されるならば、他の方がどのステップで問題が生じているかの情報を整理して、現在発表されているプロトコールに具体的なポイントを順次加筆していくことにも積極的に取り組んでいきたいと考えております。 また、現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順につきましては、所属機関の知的財産であることや特許等の事情もあり、現時点では私個人からすべてを公表できないことをご理解いただきたく存じます。 今の私の置かれている立場では難しい状況ですが、状況が許されるならば実験を早く再開して、言葉では伝えにくいコツ等がわかりやすいように、映像や画像等を盛り込んだプロトコールとして出来るだけ近い将来に公開していくことに努力していきたいと考えております。
3 4月12日朝刊での新聞記事について
同日、一部新聞の朝刊において「STAP論文新疑惑」と題する記事が掲載されましたが、事実確認を怠った誤った記事であり、大きな誤解を招くものであって、許容できるものではありません。この説明は同日中に代理人を通じて同新聞社にお伝えしています。 (1)メスのSTAP幹細胞が作成されており、現在、理研に保存されております。したがって、オスの幹細胞しかないというのは、事実と異なります。 (2)STAP幹細胞は、少なくとも10株は現存しています。それらはすでに理研に提出しており、理研で保管されています。そのうち、若山先生がオスかメスかを確かめたのは8株だけです。それらは、すべてオスでした。若山先生が調べなかったSTAP幹細胞について、第三者機関に解析を依頼し染色体を調べたところ、そこにはメスのSTAP幹細胞の株も含まれていました。記事に書かれている実験は、このメスのSTAP幹細胞を使って行われたものです。
4 STAP幹細胞のマウス系統の記事について
2013年3月までは、私は、神戸理研の若山研究室に所属していました。ですから、マウスの受け渡しというのも、隔地者間でやりとりをしたのではなく、一つの研究室内での話です。この点、誤解のないようお願いします。 STAP幹細胞は、STAP細胞を長期培養した後に得られるものです。 長期培養を行ったのも保存を行ったのも若山先生ですので、その間に何が起こったのかは、私にはわかりません。現在あるSTAP幹細胞は、すべて若山先生が樹立されたものです。若山先生のご理解と異なる結果を得たことの原因が、どうしてか、私の作為的な行為によるもののように報道されていることは残念でなりません。
追記
4月9日の会見は「不服申し立て」に関する記者会見であり、準備期間も不十分で、しかも公開で時間も限られた場であったことから、STAP細胞の存在や科学的な意義についての説明を十分にすることができませんでした。しかしこのような事情をご理解頂けず、説明がなかったとして批判をされる方がおられることを悲しく思っております。理 研や調査委員会のご指示や進行具合にもよりますし、私の体調の問題もあるので、確かなお約束はできませんが、真摯な姿勢で詳しく聞いて理解してくださる方 がいらっしゃるなら、体調が戻り次第、できるだけ具体的なサンプルや写真などを提示しながらの科学的な説明や質問にじっくりお答えする機会があれば、あり がたく存じます。(会見形式では到底無理ですので、たぶん数名限定での説明になると思いますが・・・。)
以上
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若山氏との間で行なわれたサンプルのやり取りで129系統マウスがなぜかB6系統やF1系統に化けていた件に関しては、全て若山氏側の問題だと主張するものであり、対決姿勢が鮮明になりました。若山氏と小保方氏各々が当時の実験ノートを持ち寄って照合すれば、どちらサイドで何が起きたのか明らかになることでしょう。
小保方氏はSTAP細胞を200回以上作製したそうですが、そのような実験結果を本当に得ていたという主張を研究者に認めさせたければ、実験ノート、サンプルなどの物的証拠を示すべきであって、言葉で何を言ってもサイエンスの世界では通用しません。研究者世界の常識として、実験ノートにその200回分のSTAP細胞作製記録がなければならないのです。
この補充説明の文書で、「現在開発中の効率の良い」STAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順は公表できないという不思議な表現が唐突に出てきました。もちろん、「現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製方法」を今公表する必要はありません。しかし、小保方氏は「NATURE論文で用いたSTAP細胞作製方法」の 具体的なコツを(本当に実験結果を得ていたのなら)直ちに公表し、これ以上世界中の研究室で無駄な研究費や労力が使われないようにすべきです。
行動を伴わない言葉は全く無意味です。論文発表した以上、他の研究者が再現でき るように尽力するのは論文著者の義務であって、それが研究者社会のルールです。研究者としてのルールを守らない人間は、研究者の世界に存在すべきではありません。
データ捏造、データ改竄としか考えられない、あり得ない「ミス」を犯してしまって己の未熟さを反省していますという言葉が出てくる一方で、このような生物学を愚弄するかのような言動がダラダラと続いていることは、研究者には許容し難いことです。
実験ノートをきちんとつけること、発表に際して実験データを改変しないことなどは研究者の常識であり研究者に当然備わっているはずの倫理観です。研究能力以前の問題です。それらを全く持たない人をユニットリーダーに登用した理化学研究所の責任は重大です。
理研調査委員会は2014年4月1日の記者会見で小保方晴子氏のデータ捏造、改竄を認定しましたが、それはこの捏造論文事件の一部に過ぎず、なぜこのような事件が生じたのかその全体像を示すような説明が全く理研側からなされていません。
参考
2014年4月16日笹井芳樹氏記者会見 | |
2014年4月9日小保方晴子氏記者会見 |
4月7日丹羽氏記者会見 |
4月1日理研最終報告午後の記者会見 |
4月1日理研最終報告午前の記者会見 |
3月14日理研中間報告 |
2014年1月30日ニュース STAP細胞 |
盲腸(虫垂炎)になってしまったときに治療で切り取られることが多い虫垂(ちゅうすい)。取っても困らない虫垂なら最初からなければ盲腸になって痛い思い をせずに済むのにと思ったことはありませんか?
何のためにあるのかわからなかった虫垂にも実は重要な役割があることを発見したという研究成果が報告されました。
参考
以下の文章は、文部科学省及び独立行政法人日本学術振興会が公表している科研費の使用等に関するガイドラインですが、税金を使って研究を行なっている日本の研究者の間で共有されているべき事項です。
科研費が国民の貴重な税金で賄われていることを十分認識し、科研費を公正かつ効率的に使用するとともに、研究において不正行為を行わないよう留意してください。
研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、研究者コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。
不正行為は、科学そのものに対する背信行為であり、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。これらのことを個々の研究者はもとより、研究者コミュニティや大学・研究機関、研究費の配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。
公表した研究成果に誤りや不正行為が関わっていたことに気づいたら、直ちに研究者コミュニティに公表し、取り下げることが必要である。
「競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン」(平成18年8月:科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会)では以下の行為を不正行為としている。
(1) 捏 造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
(2) 改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
(3) 盗 用:他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。
論文等において不正が認定された場合や研究費の不正使用が認定された場合は、競争的資金等の返還に加えて、認定された年度の翌年度から最長10年間、競争的資金等への申請が制限される。
捏造、改ざん、盗用の不正が認定されたときの措置の対象者は以下の者が該当する。
(1) 不正行為に関与したと認定された者(2~10年)
(2) 不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者(1~3年)
(日本学術振興会のウェブサイト http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/15_hand/data/h26/kakenhi_checklist.pdf より一部を抜粋、一部赤文字で強調)