「CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスはどこ由来なのか?」
京都大学iPS細胞研究所で遺伝子組み換えマウスが管理区域外で見つかり、文部科学省が厳重注意、山中伸弥所長が謝罪記者会見を開くということが以前ありました。
今回のSTAP細胞論文捏造事件では、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)で正体不明の遺伝子組み換えマウス(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウス)が使われていたことが明らかになっており、遺伝子組み換えマウス管理の杜撰さという点では、事の重大さは先の京大の件とは比較になりません。小保方氏が若山氏から供給されたマウス以外は使っていないというのなら、一体誰がどこからこの遺伝子組み換えマウスを理研CDB内に持ち込み、小保方氏の実験にそれが入り込んできたのか?大きな謎です。このようなデタラメなことが起きた真相を明らかにすることもせずに、このようなデタラメの上に成り立っていた「STAP現象」の再現性を科学的に検証しよ うとするのはあまりにも不毛です。ましてや世界に冠たる理研の科学者たちが、データ捏造が確定した(理研調査委員会 による)人間の「助言」を求めるなど、あり得ないことです。
参考
- 「監視下で小保方氏参加実験を」 理研・竹市センター長(神戸新聞 2014/6/26 22:03):”… 理研再生研で進められている検証実験には、小保方氏は助言しているが、立ち会ってはいないという。…”
2014年6月16日
CDBに保全されているSTAP関連細胞株に関する検証について
発生・再生科学総合研究センター
センター長 竹市雅俊
背景
STAP論文では、脾臓から採取された免疫細胞が弱酸性にさらされることにより、多能性を獲得することを報告した。STAP細胞から増殖可能な細胞株としてSTAP幹細胞が作製された。STAP論文に関する疑惑が明らかになった後、山梨大学若山教授は第三者研究機関にSTAP幹細胞株のDNA解析を依頼した。その情報は理研と共有され、理研はCDBに保全されているSTAP関連幹細胞株の解析を進めてきた。
CDB小保方研STAP幹細胞株の検討目的
CDBに保全されているSTAP関連細胞株(STAP幹細胞、FI-幹細胞株)およびそれらから作出されたキメラマウスの遺伝子情報を比較解析し、各細胞株間の遺伝子レベルの相違と起源に関する客観的に検証可能なデータを得ることを目的とする。
CDBで保全されている小保方研細胞株の解析と結果
小保方研細胞株サンプルの遺伝子解析(遺伝的背景およびCAG-GFP挿入部位の確認)
• 小保方研細胞株サンプルのSTAP幹細胞6株に関して、遺伝的背景を6種のSNPマーカーを用いて検査したところ、以下の結果が得られた。GLS-1およびGLS-11については核型の解析も行った。
1. FLS-3およびFLS-4: B6129F1: CAG-GFP, ♂
2. GLS-1およびGLS-11: B6: oct4-GFP, ♂(核型の解析ではY染色体の一部に欠失が見られる)
3. AC129-1およびAC129-2: 129B6F1: CAG-GFP ♂ (129 CAG-GFP マウス由来とされたが, 129B6F1由来であることが判明)。
• CDBでは、若山氏から、STAP幹細胞のCAG-GFP遺伝子挿入位置の情報提供を受け、上記STAP幹細胞株のCAG-GFP遺伝子挿入部位を検証した。
STAP幹細胞株AC129-1およびAC129-2は、18番染色体GFPの挿入を持つ若山研GFPマウスと同じ部位に、1コピーのCAG-GFP遺伝子の挿入を持つことが判明した。かつ、相同染色体の両方に挿入されていることも若山研GFPマウスと一致した。他方、FLS-3およびFLS-4に関しては、15番染色体の片方の染色体にGFP遺伝子が挿入されていることが判明した。また、CAG-GFP遺伝子は複数コピーがタンデムに並んだ形で挿入されていた。
これらの結果は若山研のサンプルの解析結果と一致した。
解析結果に対する見解
1.若山氏が提供されたとされる光るマウス(CAG-GFP遺伝子保持マウス)から小保方氏がSTAP細胞を作成し、それを若山氏が受け取って樹立したSTAP幹細胞株に関して、保管されていたストックの解析から、CAG-GFP遺伝子の挿入状況の違いにより、STAP幹細胞は2種類の異なる遺伝子型のマウス由来であることがわかった。一方は、若山氏が提供した(CAG-GFPを18番染色体にホモで持つ)もの、もう一方は由来不明(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで多コピー持つ)のものであった。
2.CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスがどこ由来なのか、そのマウス個体がSTAP細胞からSTAP幹細胞が樹立された時期に若山研(あるいは小保方研)に生存個体として存在していたのかは不明であり、今後、さらなる検証を進める。
(http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140616_2/20140616_2_1.pdf)