「選択と集中」ではなく「戦略と創発」が重要

本提言は、一般社団法人日本経済団体連合会が2025年4月15日に取りまとめ、同年5月22日の総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会で提示されたものであり、次期科学技術・イノベーション基本計画に向けた方向性を示している。まず、科学技術が果たすべき使命として、経済発展にとどまらず国民の安心・安全・Well-beingの確保を重視し、次代を担う若者に夢と希望を与えることを掲げる。そして、わが国は産学官の連携により未踏分野に挑み、創造性を発揮し、未来を切り開く姿勢を持たねばならないとする。次期計画への期待としては、科学技術・イノベーションを通じて国際社会における自律性や不可欠性を高め、現状を多角的に評価しつつこれまでの強みを再認識し、力強い前進と飛躍のためにダイナミックな「科学技術・イノベーション創出構造」の再構築が必須であると指摘する。背景には、国際情勢の変化に伴うサプライチェーン分断、食糧・資源・エネルギー供給の不安定化、経済安全保障の重要性増大があり、また各国が集中的投資で科学技術を加速させる中で、日本の相対的地位が低下している現状がある。一方で、DX等により国民生活の利便性が向上し、日本の安心・安全・安定した研究環境は世界から優秀な人材を引きつける要因となり得る。

目指すべき社会像としては、日本発の「Society 5.0」を世界各国・人類が共有しうる普遍的未来社会像と位置づけ、それを超える「Society 5.0+」の実現を目指し、ポストSDGsの策定に官民連携で積極的かつ戦略的に参画することを提案する。「日本らしさ」を保ちつつ、国内に閉じず世界にソリューションを展開する姿勢が必要であり、目標・テーマ設定では近視眼的・国内限定的な視点に陥らぬことが重要である。

次期計画に向けた三つの視点として、第一に重点領域の考え方を転換し戦略を再構築することが挙げられる。社会的課題の解決や経済安全保障の確保に向け、総花的な配分ではなく限られたリソースを重点領域に集中投下し、自律性の観点から日本が直面する課題を特定し、その解決に必要な要素技術を明らかにするとともに、不可欠性の観点からサプライチェーン維持・強化に必要な素材・材料や半導体製造技術などの確保も重視する。社会的課題としては人口減少、エネルギー・資源不足、自然災害、食糧確保などがあり、AI、フュージョンエネルギー、データ利活用、ロボット、バイオ・ヘルスケア、宇宙関連技術などの要素技術が関係する。

第二に、研究力のさらなる強化が求められる。日本の研究力は国際的に低迷しており、研究開発費の伸び悩み、研究者の高齢化、研究時間減少、注目領域参画の低迷などがボトルネックとなっている。研究者が十分な資金と時間を確保できる環境改善が急務である。

第三に、イノベーションを生み出す土壌の再耕が重要である。イノベーションは不確実性が高いため、「選択と集中」ではなく「戦略と創発」が鍵となる。長期戦略に基づく研究・投資と、多様性や融合によって短期目標に縛られず創発的に進める研究・投資の両立を図り、協創の場や研究設備などのハードインフラ、多様性・包摂性といったソフトインフラを整備することで土壌を耕す。

こうした方向性を実現するための七つの具体的改革として、第一に政策遂行体制の強化があり、CSTIの省庁横断的な総合調整機能を強化し、重点領域選定や戦略見直しを可能にするシンクタンク機能を設置する。国は予算・施策拡充、制度改革、国際標準活動を主導し、企業は科学技術の実装と普及で経済成長を牽引し、大学は科学的知見の創出と深化を担い、国立研究開発法人は目利き・橋渡し役として国家的課題に戦略的対応を行う。第二に実施組織の役割分担を再定義し、内閣府のシンクタンク設置と直接的政策関与を図る。第三に政府研究開発投資を拡充し、評価に基づく迅速なポートフォリオ変革を行い、トップ大学支援(高さの引上げ)と基盤的経費拡充(裾野の拡大)の両面で研究者が資金と時間に不自由しない環境を実現する。

第四に人材獲得・育成と評価の再考を行い、多様性に配慮しつつ留学する日本人学生・来日留学生の双方を飛躍的に増やし、大学は構造変化を先取りしたカリキュラムを編成し、企業は博士号取得者採用を積極化する。第五に産学連携を通じた協創強化と社会課題解決への貢献を図り、研究インテグリティ・セキュリティ確保、技術成熟度の可視化、クロスアポイントメントの活用、地方における大学と公設試験研究機関の連携強化を推進する。第六に国際共同研究や国際的連携を活用し、海外研究者招聘や国内研究者の国際的プレゼンス向上を図り、官民連携による国際ルール形成に参画する。第七に社会的理解を醸成し、科学技術に関する国民の認知向上、理数・情報教育充実、研究者の社会的尊敬の確立を進める。

最後に、本提言は、これまでの科学技術予算拡充やCSTI設立、Society 5.0推進、スタートアップ支援などの経団連の取組を踏まえつつ、行き過ぎた社会実装・イノベーション志向が必ずしも「知」の強化に結びつかなかった点を反省し、わが国の強みを理解して潜在力を最大限発揮させ、戦略性と創発性を兼ね備えた構造改革により次代の科学技術立国を築くことを強く求めている。

(上記は、Re : Genesis科学技術・イノベーションで次代を創る~次期科学技術・イノベーション基本計画に向けた提言 のスライド資料をChatGPT 5で、文章化したものです。)

  1. Re : Genesis科学技術・イノベーションで次代を創る~次期科学技術・イノベーション基本計画に向けた提言~2025年4月15日一般社団法人日本経済団体連合会 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon7/6kai/shiryo3.pdf
  2. 基本計画専門調査会(第6回)議事次第 日時 令和7年5月22日(木)10:00~12:00 場所 内閣府623会議室 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon7/6kai/6kai.html
  3. 内閣府 基本計画専門調査会 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon7/index.html