高校で学んだ化学は昔すぎてあまり覚えていませんが、熱化学方程式なるものがあって、あたかも普通の代数方程式のようなことをやっていたように記憶しています。
熱化学方程式とは
日本の高校では、反応に伴うエンタルピー変化を反応熱と呼び、次の「熱化学方程式」に書き表す(これも昔から大学入試の定番)。
H2O + O2 = 2 H2O + 572 kJ(大学と切れた高校化学 病状・原因・治療法 渡辺 正 高分子57 巻 (2008) 4 号 J-STAGE)
大学入試の化学でも重要な単元であったその熱化学方程式が、2020年の高校化学から”消える”というウェブ記事を見て驚きました。内容がなくなるわけではなくて、教え方が変わるのだそう。
高校数学から「行列・一次変換」が消えたのも衝撃でしたが、高校化学にエンタルピーやエントロピーが登場するというのにもびっくり。
2020年
えっ!そうなの? ”遂に高校化学から「熱化学方程式」が廃止となり,化学反応のエネルギーが「エンタルピー変化」で教科書に書かれ,教えられることになります。エントロピーも登場します。2020年からこれによる授業が始まります。” https://t.co/DzNfOCZLxz
— 日本の科学と技術 (@scitechjp) January 22, 2020
【第2問】物質の変化と平衡
問2 反応熱に関する問題であった。熱化学方程式やエネルギー図を書くことで、Q、Q1、Q2の関係を調べることができる。なお、反応熱と生成熱に関する公式を覚えていれば、熱化学方程式やエネルギー図を書かなくてもすぐに解答できる。
(センター試験分析 化学 センター試験分析 化学 東進ハイスクール提供 2020年1月19日21時51分 朝日新聞DIGITAL)
2019年
「10.エンタルピー変化ΔHで表す」は大学から長年指摘されている。提案にあるように国内外にかかわらず大学以降との接続の改善を目指してほしい。http://www.chemistry.or.jp/news/information/2-4.html
2018年
学習指導要領において、昭和36年、昭和47年、平成11年、平成21年すべてにおいて熱化学方程式の文言が存在する。平成21年度の解説においては「エネルギーの出入りが熱化学方程式で表せることを理解させることがねらいである。」との記述がある。今回の平成30年度の開設はまだ手にとれていない****。
****平成30年7月に発表された新学習指導要領解説では「化学エネルギーの差については、エンタルピー変化で表す。」との記述がある。
(化学と教育 66巻9号(2018年)論壇 熱化学方程式は必要か 後飯塚由香里 jstage.jst.go.jp PDF)
2016年
未だに黄リンは白リン,赤リンの同素体って表記に
なっているんだっけ?
個人的には,「熱化学方程式」も高校化学だけの
悪しき慣習だと思っています. https://t.co/VJRrryTZBU— 中村拓人@数学ぽよ(予備校講師) (@tactn001) November 25, 2016
2015年
今度こそ高校化学の「熱化学方程式」とか「12族は典型元素である」とか「BeとMgはアルカリ土類金属ではない」とか「単位に付ける謎の記号〔 〕」とかの日本ルールを廃止してほしい. / “学習指導要領の全面改訂へ基本方針示す NHK…” http://t.co/jCqmV4eGml
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) August 5, 2015
2012年
熱化学方程式Fe2O3(s) + CO(g) = Fe(s) + CO2(g) + Q kJ がある。Fe2O3(s)、CO(g)、CO2(g)の生成熱がそれぞれ824、111、394(kJ/mol)であるとき、Qの値を求めよ。(化学Ⅰ 2012センター)
— average出題bot (@average32) January 23, 2020
大学の熱力学の授業がさっぱりわからなくて、エントロピーとエンタルピーの区別もつかないまま卒業したなどとは、恥ずかしくて言えません。
大学時代の講義の思い出話に花が咲くと、…、誰もが熱力学で出たあのエントロピーとかエンタルピーとか何のことだか当時(そして大概は今でも)さっぱりわからなかったという言葉をよく聞く。(本書の終わりに 見える!使える!化学熱力学入門 オーム社)