2016年度から始まった文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」は、文科省の局長が東京医科大に息子を合格させてもらうかわりに対象校選定で便宜を計った事件の影響で予算が取れなくなったために頓挫するという結果になりました。本来は、最長5年の支援が受けられるはずだったのですが、それが4年や3年で打ち切られる異常事態です。日経の記事(2019/2/27 9:58)の内容をもとにまとめてみると、
- 2016年度 私立大学研究ブランディング事業開始 2019年度で打ち切り(支援期間4年)
- 2017年度 2019年度で打ち切り(支援期間3年)
- 2018年度 選定20校 支援期間3年に。
- 2019年度 新規募集は無し(制度そのものが廃止に)
私立大学研究ブランディング事業の財源で雇用された「特任」の研究者も多いわけですから、5年のつもりだった任期が4年や3年に突如減らされるのはたまったものではありません。汚職事件を起こした役人一人の責任を、ブランディング事業全体に負わせるのはどうなのでしょうか?ただでさえ不安定な研究者の人生を、こんなふうにさらに不安定にさせるような措置が良かったとは思えません。
私立大学研究ブランディング事業廃止への疑問と怒り
私立大学研究ブランディング事業で現在雇用されている研究者の怒りや嘆きの声、ブランディング事業を行っている先生方の諦めの声などを耳にしたことがありますが、朝日新聞の報道(2019年4月9日05時00分)を受けて、ネット上でも疑問、批判、憤りの声が多数あがっています。
財務省「文科省と東京医科大は『私立大学研究ブランディング事業』を使って不正をした.けしからん!」←わかる
財務省「文科省の予算を削る!」←わからんでもない
財務省「私立大学研究ブランディング事業を全部中止しろ!」←?
文科省「中止します」←??? https://t.co/QYoUymaKS6— Ichi🏳️🌈 (@kanaya) 2019年4月9日
職を失う研究者も
こんな不安定な状況に研究者を置いて、日本の研究分野の衰退を招くhttps://t.co/TK2WD9MKK9— ポンカンポンカン (@V0muHLomD5YmmpZ) 2019年4月9日
- omg17@kazuOMG19 文科省官僚子弟の東京医科大裏口入学が世間バレした結果→連帯責任で私大全ての支援事業打ち切り 若手研究者らクビへ ある大学の担当者「(事件の)連帯責任を取らされるのは納得がいかない」 たしかにヘンテコ。みんな怪しげ、だから一括、という論理か。14:23 – 2019年4月9日
- 龍谷ミュージアム元館長のつぶやき@tirisawa 今朝の朝日新聞が「私立大学研究ブランディング事業」の打ち切りを報じてくれた。東京医大の裏口入学事件後に、文科省がこの事業を打ち切ることを決めたのだ。この国は研究というものを何と考えているのだろうか。わが大学も大きく影響を被る。異常なことが平然とまかり通る世の中になっている。 13:42 – 2019年4月9日
- harumo@harumo_blue 返信先: @V0muHLomD5YmmpZさん しかも東京医科大の贈収賄事件を口実にしてるのが変。見直すべきは支援事業じゃなくて双方当事者の体質では…? 12:56 – 2019年4月9日
- (たま)いもむし@kihashikoku58 は?東京医科大での自分のヘマを理由に支援打ち切りって……
自分のケツを他人に拭かせるなよ 12:35 – 2019年4月9日 - @nanohananahachi 画像にある東京医科大へのペナルティなのかと思ったら、全ての私大が対象って… 12:22 – 2019年4月9日
- white wood@jelfalray 東京医科大の件は国(文科省)のほうにも重大な責任があるわけで、全く無関係の大学まで巻添えにする必要はないでしょう?お札のデザイン変えるお金があったらこういうことに使うべし! 12:05 – 2019年4月9日
- Higo Tokinao@hegoesto 1番辛いのはブランディング事業に携わる若手研究者な気が… 10:51 – 2019年4月9日
- ズーイ/AbsoluteNobody@nobody_absolute ブランディング事業の対象校に東京医科大が入ってたって事で、選定する過程や選定基準が適切でなかった可能性があるから選定し直すって言うなら分かるよ それで何故事業自体を取りやめる事に?そんな「そして地球は滅亡しました、〇〇先生の次回作にご期待ください!」みたいな結論ってある? 10:07 – 2019年4月9日
- えるエル@learn_learning3 私立大学研究ブランディング事業の件,問題の原因と結果のみを書くと「どこかの官僚が息子を裏口入学させたので,若手研究者はクビを切られます」って,(悪い意味で)最先端すぎてめまいがする 10:03 – 2019年4月9日
- Yuta Kashino@yutakashino(´-`).。oO( ↓文科省が不祥事の記憶を消し去りたいというだけの理由で,若い研究者を道連れにするという….意味不明… ) 9:53 – 2019年4月9日
- 音(ひびき)@hibiki2200 有識者で構成され、採択校を選定してきた「私立大学研究ブランディング事業委員会」は、支援期間の短縮などを「極めて遺憾」とする委員長所見を公表した。ある大学の担当者は「(事件の)連帯責任を取らされるのは納得がいかない」と批判している。 9:43 – 2019年4月9日
- Tomio NAKAJIMA@tann2009 東京医科大と加計学園だけ支給止めればいいのだろう?助成打ち切り、私大反発 最長5年 文科省、贈収賄事件後に 8:36 – 2019年4月9日
私立大学研究ブランディング事業への各大学のテーマや取り組みはそれぞれで、大学の特色が見えてきて大変興味深いと思います。
関連記事 ⇒ 私立大学研究ブランディング事業選定校と事業名(研究テーマ)、成果、論文業績
参考
- 私大への支援事業、計画途中で打ち切りへ 大学側は反発(波多野陽 2019年4月9日05時00分 朝日新聞DIGITAL)文部科学省は、私立大学の目玉研究に最長5年間の継続支援をする「私立大学研究ブランディング事業」を計画途中で打ち切ることを決めた。同事業をめぐる東京医科大学の贈収賄事件後に見直していた。年間50億円を超える事業で、若手研究者の人件費などとして見込んでいた大学側は、突然の打ち切りに反発。職を失う研究者も出ている。
- 「はしご外された」職失う研究者も 私大の支援打ち切り(有料記事 波多野陽 2019年4月9日05時00分 朝日新聞DIGITAL) 計画の途中で、突然文部科学省が打ち切りを決めた私立大学研究ブランディング事業。助成は大学が若手研究者を雇用する資金にもなっていた。
- 私立大学研究ブランディング事業で、同一学校法人の複数の大学が選出されたのは加計学園だけ(2018年7月6日 日刊ゲンダイ)( 2019-04-09 14:20:29 公営競技はどこへ行く)
- 省庁間の力関係」を象徴する「私立大学研究ブランディング事業」の打ち切り (2019/03/06 by suzumura ResearchMap)
- 私立大学研究ブランディング事業 平成30年度予算額56億円(文部科学省)
- 私大支援事業の期間短縮 汚職事件で予算減 (日本経済新聞 2019/2/27 9:58)文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」を巡る汚職事件を受け、同省は27日までに、最長5年としていた事業選定校の支援期間を短縮すると発表した。事件の影響で予算が確保できなくなったためで、事業が始まった2016年度と17年度の選定校への支援はいずれも19年度で打ち切る。
- 私大支援事業をいったん廃止 文科省、前局長汚職事件で(朝日新聞DIJITAL 2018年8月22日13時49分)文部科学省の前局長が、東京医科大の前理事長らから同省の私大支援事業の対象に選ぶよう頼まれ、見返りに自らの息子を不正入学させたとして起訴された汚職事件を受け、文科省はこの事業の来年度の予算要求を見送り、廃止する方針を固めた。代わりに別の支援策を新設する方針だ。廃止されるのは、独自色のある研究のために施設費などを助成する「私立大学研究ブランディング事業」。
- 汚職事件受け、私大支援事業を廃止へ 文科省 (日本経済新聞 2018/8/21 23:39)文部科学省の汚職事件に関係した「私立大学研究ブランディング事業」について、同省が2019年度は公募せず、廃止する方針を固めたことが21日、関係者への取材で分かった。収賄罪で起訴された元幹部が、同事業の選定で大学側に便宜をはかったとされたことを踏まえたとみられる。
- 入試を歪めた文科省と私大の「不幸な関係」 補助金で迫る文科省、改革に及び腰の私立大 (土居 丈朗 : 慶應義塾大学 経済学部教授 2018/07/09 6:00 東洋経済ONLINE)
- 文科省汚職事件、そもそも私大「ブランディング」に政府助成が必要なのか?(2018年07月05日(木)16時00分 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代 Newsweek)
- 先制医療による健康長寿社会の実現を目指した低侵襲医療の世界的拠点形成事業 平成29年度 文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」タイプB(世界展開型)に選定 東京医科大学
- 文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に選定されました 【事業期間】平成29年度~平成33年度(5年間)2017/11/08 東京医科大学
- 文科省の私立大学研究ブランディング事業で問われた「全学的な価値」(2017年01月12日 Between情報サイト) 文科省によると、選定から漏れた大学の多くは、「その研究によって全学的な価値がどう高まるか」というビジョンや、計画から評価に至るPDCAサイクルの説明に具体性が乏しかったという。