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電王戦 阿久津八段にAWAKE開発者が21手で投了

2015年4月11日(土)に行われた電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 対 AWAKE は、たったの21手め、対局開始後わずか50分後にAWAKE側が投了するという、予想外の幕切れとなりました。投了はソフトのAWAKEではなく、AWAKE開発者である巨瀬亮一氏の判断によるものです。

ほとんど「事故」のような形で将棋電王戦が終わりを告げたのは、いかにも異種格闘技戦らしかったというべきでしょうか。電王戦FINALに参加した5人のソフト開発者と五人の棋士らがそろって記者会見に臨みましたが、人間とコンピュータが異種というよりも、プロ棋士という人間とコンピュータ将棋開発者という人間の両者の勝負に対する考え方の違いや将棋に関する価値観の違いが際立った会見となりました。さらに、コンピュータ将棋開発者も五者五様で、一口にコンピュータ将棋ソフトと言っても、それぞれが異なる考えの元に作られていることが伺えます。

投了までの指し手 ⇒ <投了まで>将棋棋譜速報 将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE(将棋上達の探求)

コンピュータが2八角という悪手を指す可能性があることを事前研究で知っていた阿久津主税八段の作戦勝ちになったようです。

【放送事故】 わずか21手、ソフトまさかの投了!? △2八角を打ち、劇的な幕切れ! 解説付き 【将棋電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE】

投了直後の実況解説者の説明:「この局面だけを解説しますと2八角はいずれ安い駒としか交換できない、角と桂の交換くらいになってしまうんですね。後手は 大幅な駒損をしますので、まあ正直プロ的にはこの局面は大差です。先手が大優勢です。(後手は2八角を)打ってしまってはいけないですね。なので、局面だけみたら確かに、先手がはっきり大優勢なんですけど。」

【将棋】 対局直後のインタビュー + 投了局面以下の解説 【将棋電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE】

対局直後の囲み取材における阿久津八段のコメント:「(2八角という手について)今回(事前)貸し出しというルールで、貸し出ししてもらって3日目か4日めくらいにいろいろな形を試しでやっていた中で、コンピュータ将棋の中では有名な筋なんですかね、試しにやってみたら打ってくることもあるということで、そのときから知ってました。(こういう作戦を使うことの葛藤みないなものはありましたか?)普段(棋士同士では)全然やらない形なので、そういう葛藤ももちろんありましたけど。やはり団体戦ということもありますし、2勝2敗で結果を求められているということもあったので、一番勝算が高い形を取るべきかなと思いました。結果に関しては素直に嬉しいという感じではないですけど、とりあえず良かったかなと思います。」

対局直後の囲み取材における巨瀬亮一氏のコメント:「この形に誘導されると(持ち時間が)長時間でもかなりの確率で2八角を指してしまうのがわかっていたので、1六香と上がった時点で投了しようと思っていました。すでにアマチュアの方が指されていた形なので、ちょっとプロとしてはやりづらいんじゃないかと思っていました。(2八角の手に気付いたのはいつ?)全然気付いていなくて、『勝ったら100万円!』のときに気付きました。(改善できないのか?)評価関数で玉の近くに馬ができるのを過大評価してたりするので、評価関数の表現能力の限界があるというか。角が殺されるまでわからなくて、結構枝刈りしてしまうので、この手を指してしまうということですね。」

二コファーレ会場の聞き手:「100万円チャレンジでこの2八角が出て、巨瀬さんはこれで知ったということでしたけども、阿久津八段はもっと早くから知っていたということですかね。」
二コファーレ会場の解説者 森内俊之九段:「貸し出しがあって三日目くらいで自分で気付いたということで、相当調べたんだなということは感じました。」

まさに、米長邦雄 永世棋聖が亡くなる前に予言した通りのことが起きました。

このインタビューの中で米長永世棋聖は、棋士が自分を殺して、コンピュータの欠陥やソフトの意外な弱点を突き、見ている人間につまらない将棋だなと思ってもらえればプロが勝つという不思議なことになるだろう、と話しています。

将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE 1/5

21:10 (立会人)定刻になりました。阿久津八段の先手で対局を開始して下さい。
41:25 (読み上げ)先手、2八銀
43:23 (解説)ちょっと変わった手が出ましたね、2八銀。
43:53 (解説)予備知識がなければ、絶句する手ですよね。
44:06 (解説)この手を普通に解説してたら、2八銀っていうのは符号の間違いでしょ、なんかの間違いじゃないですかっていうとこですけど。こういう手もあると聞いているので、驚きません。(将棋を)覚えた手の人が指したら、こういう手はいけませんよと言われそうですけど。大丈夫なんですかこれは?
(聞き手)研究手(けんきゅうしゅ)ということ?
45:25(解説)深い狙いがあるんじゃないかと。
45:33 (聞き手)画面下に観戦記者の野月七段のコメントが入りましたが。
(解説)2八角がどうのこうのって。
(聞き手)そうですね、打たせるってコメントが今出ましたが。
47:15 (解説)この後2七銀と上がると聞きました、噂で、作戦ね。あえてここで銀あがって角打たれそうじゃないですか。でも打たれても大丈夫なんですよ。打たれても被害はないんですよ。それどころか、この角を、手はかかりますけど殺すこともできるので。取れる可能性があるんです。プロ同士なら(2八角を)打たないですね。人間なら絶対打たないです。初心者なら打ちたくなるんだけど。だけど、コンピュータは打ってくるとみてるんですよね。しかも、打ってくんなきゃ困るわけでもないんですよ。なんというか、お楽しみ抽選会みたいなもんですよ。
(解説)お楽しみは継続してもいいんですか?ワンチャンスじゃなくて、もう2回、3回。打ってくるまで待っていると。
54:18 (聞き手)2八角打たせるというのが100%登場するわけではないというコメントも先ほど流れていましたね。
1:07:25 (聞き手)中継つながっている間に2手ほどすすみまして、やはり2七銀と。
(解説)まず2七銀と予想通り上がりまして。注目の角を打つか打たないかと思ったら、(後手AWAKEは)5三銀と。当然打ちませんでしたね。
(解説)ちょっとほっとしましたね、今。
(聞き手)まだ、待つということなんでしょうか。
(解説):まだあきらめませんよ。(先手)9六歩、これも作戦の一環でしょうね。先手がなるべく条件を整えないで。(後手が)条件が良くなったから打とうかな、と考えてもらおうということでしょうね。
(聞き手)次の手、注目ですね、打つかどうか。
1:09:10 後手2八角。打ちました。打ってしまいましたね。
1:09:35 1六香。
1:09:45 (AWAKE開発者)ここで投了します

将棋電王戦FINAL 最後の記者会見

本局でハメ手が使われたことについて
15:45 (AWAKE開発者 巨瀬氏の感想)今回はアマチュアの方が指していて既に知っているハメがたちになって、それをプロが指してしまうというのは、プロの存在意義を脅かすのはプロ棋士なんじゃないかと思っています。
17:15 (阿久津八段の感想)相手の悪手を誘う含みにした指し方にしたんですけど、勝つために最善を尽くしてやらなくちゃいけないなということで本局の四間飛車という作戦を選びました。
29:45(質疑応答 読売新聞)21手で投了したのは、これ以上良くならないからなのか、それとも、これ以上指し進めても意味がないと考えられたからなのか?
(巨瀬)どちらの意味もあります。あのまま進めても勝つ見込みは全くないと思ったので投了しました。
37:15 (報知新聞)今日の将棋について。再三、アマチュアが指した手をプロが指して残念だという言葉がありますけども、それがアマチュアが指した手であれ、コンピュータが指した手であれ、盤上の最善手を常に追求するというのが棋士の尊さでもあるように思うんですが。なぜそれが残念だと思われるのか?先ほど棋士の存在意義を脅かすという言葉もありましたけども、なぜそれが脅かすんでしょうか?それが否定されたとき、じゃあ棋士はどうあらねばならないんでしょうか?
38:05 (巨瀬氏)単純に、今日の将棋を見て面白いと思ったかというのがまず一つあると思います。プロは勝たなきゃいけないのは確かなんですけど、やっぱり面白いと思ってもらうことには、今後将棋界が生き残っていくのは大変なんじゃないかなと思っていて。今日の指し方はそれを否定するような指し方だと思いましたから、それで、プロの存在意義を脅かすと言ったわけです。
38:50 (NHK)面白い将棋を指す、魅せる将棋を指すということと、勝つ負けるというプロとして譲れない部分と両方天秤にかけた結果だと思うんですけれども、どのような心境でこのような手を選ばれたのかというのを。
39:30(阿久津八段)もちろんいろいろな意見があるとは思うんですけど。見ている方が楽しいと思う将棋を指すのがプロの一番の定義だと思っています。だた今回は、この電王戦を戦うにあたって本番と同じ仕様のソフトを貸していただいているルールの中で、やれる範囲内の中で勝率が上がっていくのような形を検証して、自分にできる最善を尽くそうかなと思って今回はこういう作戦を取らしていただきました。

42:40(観戦記者)本局の投了以降の局面を練習でどのくらい指し次いだか、指し次いでどのくらいの勝率だったか?
43:25(阿久津八段)本局のような四間飛車で以降かなとはっきり決めたのは2週間前くらいですかね。
与えられた条件の中の勝負で、いろいろ考えた結果自分にとって最善を尽くすのがいいのかなと思って決断しました。投了図以下の局面についてですが、練習でももちろん何度か似た形をやってますけど、あの形と同じ形は実は今日が初めてだったんですね。こちらが間違えなければ、かなり優勢になるという局面なんですけど、ただそれでも結構練習の段階ではそこから私が間違えてというか食いつかれて逆転負けした将棋も何局かありました。
45:20 (ドワンゴ川上会長)貸し出し有りのルールについてなんですけども、これを決めましたのは主催であるドワンゴでして、将棋連盟様の実は反対の元、僕らが押し切って決めたルールってことを一つ申し上げたいということと、それとなぜこのようなルールにしたのかということを言いますと、..

53:15 (朝日新聞)事前貸し出しについての開発者の方々のご意見は?
54:05 (平岡氏)事前貸し出しについては反対です。勝負を五分五分に近づけるためには役立ったのかもしれないですけど、それは公平というのとは別次元であって、片方だけが練習できて、片方だけはそれ以上何もできなくて、穴があっても防げないというのはどう見てもおかしいし。川上さんもわかってると思いますが興行上五分五分に近づけないというのはあったと思うし、それを将棋連盟を呑んでしまったというのは凄く残念だし、ファイナルのファイナル、今日の対局で最悪の形で出たかなっていうのは思ってます。これ以上勝負として成り立たないのであれば別に続ける必要はないかなと思ってますし。どうするんですかね、これから。これ以上コンピュータの制限って難しいと思うんですよ。一番残念だったのは、巨瀬さんは一番プロの棋力向上に役立ちたいという思いが一番強かったと思いますし、それがこういう結果で、裏切られた感じになってしまって誰も得しなかったかなって思います。
56:29 (ドワンゴ会長川上氏)まず、興行として貸し出しありにしたわけではありません。これは異種格闘技戦ですから、人間とコンピュータが戦うこと事態がそもそもおかしいんですよね。もともとフェアな戦いっていうのは存在しないんです。平岡さんがおっしゃるフェアというのは、それこそ見せかけのフェアです。人間とコンピュータの戦いにあって、そもそも比べるのがおかしいのであって。
57:58 (西海枝氏)棋士の方の対応能力というか、嵌手でなくてもクセを見抜かれて、やっつけられちゃうんじゃないかというのを非常に警戒していたんですね。
59:18 (やねうら王)私は実は貸し出しルール賛成派なんですね。貸し出しでどれだけのハンデなのかというのをはっきりさせておきたいんですけど、プロ棋士の先生が本気で穴を狙うんなら、これはもう大駒1枚くらいのハンデ、レーティングでいうと500くらいのハンデだと思っています。それはランダム性を入れて回避しないといけないので、APERYとかランダム性入れるためにちょっと弱くなっていましたし。対策しなかったらそのまま飛車を詰まされたり角を詰まされたり、そういうリスクもありますんで。それをちゃんと回避しようとおもったら大駒一枚くらいの代償は支払わないといけないのかなというのは実感としてありまして。事前貸し出しありなら、私がプロ棋士くらいの棋力があるなら100%勝てます。これはもう5局とも100%勝てます。ていうくらいのハンデかなと私は思ってます。なんでわたし事前貸し出し賛成派なのかというとですね、たとえば将棋WARSでバックエンドでPONANZAとかが戦っているわけですけど、あのPONANZAが毎回同じ棋譜で負けるとこれ将棋WARSとしていいのかという話になっちゃうと思うんですね。人間と末永く対局して遊んでもらうための将棋ソフトというものを考えたときに、対策されない、弱くてもいいんだけどおんなじ負け方はしないというのは一つのテーマかなと思ってまして。そういう意味では事前貸し出しの中で開発者が工夫してみるというのは結構有意義な研究課題かなと認識しているんで、事前貸し出しに関しては実は賛成だったんですということです。
1:01:34 (山本氏)Ponanza強いんで何でも大丈夫です。
1:01:47 (巨瀬氏)棋力向上に役立てていただけるのなら貸し出しはあっていいと思います。ただ、今日の将棋の内容からはそれを見せるような感じには思えなかったんで残念です。

1:02:30(ヒーローズ株式会社)コンピュータ将棋というのはどの程度人口知能なのか?コンピュータ将棋を強くするのに培われてきた人工知能の技術をもっと汎用にしてどのような応用ができるのか?
1:03:20 (Apery開発者 平岡拓也氏)将棋ソフトは将棋に特化しているし、なかなか他に応用とかは難しいかなというのが私の感覚です。これに知性を感じるという人にとっては人工知能だし、単に探索して評価しているだけだと思う人は電卓の延長線上みたいなものかなとも思いますし。私自身、これが知能かどうかと考えたことはあまりないですね。
1:09:15 (Selene開発者 西海枝昌彦氏)プロ棋士の棋譜を利用して学習している段階だとですね、過去のプロの全ての棋譜の平均値をとってすばやく探索して出力するツールみたいな感じが開発しているとするので、人工知能的な感じが私はあんまりしてないんですね。いつかはこれが人工知能ですと、プロ棋士の棋譜を使わずにですね、編み出したんですというようなものを作りたいなあとは個人的には思っています。
1:05:05 (やねうら王開発者 磯崎元洋(やねうらお)氏)私がとあるコンサル案件でやっているのは、結局問題が組合わせ最適化とか非線形の最適化に帰着しちゃって、それを将棋プログラムの探索の処理で解決するみたいな処理もあったりするんで。
1:06:05 (Ponanza開発者 山本一成氏)コンピュータ将棋は応用が難しいです。将棋を指すことに特化していて、他のことは全く何もできません。専門性と汎用性というのは両立し難いというのが本当のところです。人工知能が社会に与えるインパクトという意味では、将棋プログラムは未来を行っているかなとは強く思います。人工知能が人間に追いつき追い越そうとしていることに、社会がどう反応するかといったことについては汎用性があるテーマかなと思っています。
1:07:25(AWAKE開発者 巨瀬亮一氏)今コンピュータ将棋に使われている技術が人工知能の発展に役立つとは全く思っていなくて、ただ私自身も、そのうち人工知能を作りたいという思いがありまして。その土台となるのはあると思います。

参考

  1. AWAKEに勝って100万円企画にゴールドラッシュ到来!(やねうら王 2015年3月1日):”ソフトにわざと角を打たせるわけですね。この角は詰んでるのですが、なかなか死なないし、成れるのでソフト側は自分が良しだと判断してしまい、短い考慮時間では28角を打ってくるというわけです。私見ですが、この局面に誘導されたときに28角を打つソフトは結構あると思います。”
  2. 将棋電王戦、ソフト側が突然投了 棋士側、初の団体勝利 (朝日新聞DIGITAL 2015年4月11日)
  3. 「将棋電王戦」最終局はソフト側21手で電撃投了、3勝2敗でプロ棋士が勝ち越し (マイナビニュース2015/04/11):”AWAKEは「将棋電王戦FINAL」出場に先立って、アマチュアと対戦する企画に出場していたが、その際本局と同じ展開から敗れており、第5局でも同じ形を阿久津八段が採用するかどうか注目が集まっていた。”
  4. 電王戦最終局、異例の「21手投了」に至ったAWAKEの真意は 「一番悪い手を引き出して勝っても意味ない」 (ねとらぼ 2015年04月11日)”WAKEは以前、「電王『AWAKE』に勝てたら100万円!」という企画でアマチュアと対戦した際、「自陣にあえて隙を作ることで、AWAKE側に持ち駒の角を打たせて捕獲してしまうことができる」という、ある種の「ハメ手」が見つかっていました。今回、阿久津八段もこの打ち方を採用し、序盤にAWAKEの角を獲得。この直後、AWAKE開発者・巨瀬亮一さんが投了を宣言し、AWAKE側の負けが決まりました。”
  5. 2月28日(土)、3月1日(日) 電王AWAKE(ノートPC)に勝てたら100万円! (ニコニコ動画)
  6. 電王AWAKEに勝利し100万円ゲットした山口直哉さんの必勝法。△2八角を打たせる (将棋ワンストップ・ニュース):”2015年2月28日にニコニコ生放送で中継された「電王AWAKE(ノートPC)に勝てたら100万円」(1日目)ですが、1日目にして電王AWAKEが敗れる事態が発生しました。..先手は自陣の2八の地点への利きをなくして、後手から2八角を打たせるように誘導。後手AWAKEはまんまとその罠にはまり2八に角を打ってきました。..数手先までは広く読むが、ある手数を超えた先の手は考慮しないというコンピュータの読みのアルゴリズムが影響していると思われます。”
  7. HEROZ JAPAN AI x mobile:事業内容 人工知能(AI)などの技術によるストラテジーゲーム及びスマートフォンアプリなどのモバイルサービスの企画・開発・運営

人工知能と人間の頭脳との戦い 将棋電王戦がいよいよ最終章へ

2012年1月に米長邦雄 永世棋聖がコンピュータ将棋プログラム「ボンクラーズ」(伊藤英紀氏が開発)と対局したのが、将棋電王戦の始まりでした。翌年からは5対5の団体戦の形で開催されてきましたが、2015年の第4回将棋電王戦はFINALと銘打たれており、これが最後となる予定です。

これまでの対戦成績は、

第1回 将棋電王戦 一番勝負 持時間各3時間
2012年1月14日 ● 米長邦雄永世棋聖  ボンクラーズ/ 伊藤英紀  ○

第2回 将棋将棋電王戦 五番勝負 持時間各4時間
2013年3月23日 第1局 ○ 阿部光瑠四段 習甦/竹内章 ●
2013年3月30日 第2局 ● 佐藤慎一四段 ponanza/山本一成 ○
2013年4月 6日 第3局 ● 船江恒平五段 ツツカナ/一丸貴則 ○
2013年4月13日 第4局 持将棋 塚田泰明九段 Puella α/ 伊藤英紀 持将棋
2013年4月20日 第5局 ● 三浦弘行八段 GPS将棋/田中哲朗・森脇大悟 他 ○

将棋電王戦リベンジマッチ
2013年12月31日  ○ 船江恒平五段 vs ツツカナ ●

第3回 将棋電王戦 五番勝負 持時間各5時間
2014年3月15日 第1局 ● 菅井竜也五段 習甦/竹内章 ○
2014年3月22日 第2局 ● 佐藤紳哉六段 やねうら王/磯崎元洋 ○
2014年3月29日 第3局 ○ 豊島将之七段 YSS/山下宏 ●
2014年4月 5日 第4局 ● 森下 卓九段 ツツカナ/一丸貴則 ○
2014年4月12日 第5局 ● 屋敷伸之九段 ponanza/山本一成 ○

将棋電王戦リベンジマッチ 持時間各8時間
2014年7月19日 ● 菅井竜也五段 習甦 ○

将棋電王戦リベンジマッチ 持ち時間3時間、継盤使用可
2014年12月31日 ○ 森下卓九段 ツツカナ ● (裁定による勝敗)

第4回 将棋電王戦(FINAL) 五番勝負 持時間各5時間
2015年3月14日 第1局 ○ 斎藤慎太郎五段 Apery/平岡拓也 ●
2015年3月21日 第2局 ○ 永瀬拓矢六段 Selene/西海枝昌彦 ●
2015年3月28日 第3局 ● 稲葉 陽七段 やねうら王/磯崎元洋、岩本慎 ○
2015年3月 4日 第4局 ● 村山慈明七段 ponanza/山本一成、下山晃 ○
2015年3月11日 第5局 阿久津主税八段 AWAKE/巨瀬亮一

将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税 八段 vs AWAKE 2015年4月11日(土)10:00対局開始 東京・将棋会館  9:30 ニコニコ生放送 のPV
将棋電王戦FINAL第5局で阿久津主税(あくつ ちから)八段と対戦する将棋ソフトはAWAKE. AWAKEはこの将棋電王戦FINALの出場資格を得るための大会、第2回電王トーナメント(2014年11月1日~3日)で優勝し、「電王」の称号を手にしたソフトです。 【将棋・電王戦決勝】 awake VS ponanza 2014年11月3日

第3回将棋電王戦 第5局 屋敷伸之 九段 vs ponanza

第3回将棋電王戦 出場棋士発表PV 人類VSコンピュータ 第3回将棋電王戦 出場棋士がついに発表!第2回将棋電王戦の敗北を受け、第3回は更なる強豪棋士が出場します。
【完全版】第2回将棋電王戦 第5局 三浦弘行八段 vs GPS将棋 PV

第2回将棋電王戦に関しての羽生善治三冠のインタビュー
第2回将棋電王戦PV

【米長邦雄永世棋聖 vs ボンクラーズ】プロ棋士 対 コンピュータ 将棋電王戦 告知PV

参考

    1. 棋戦情報 電王戦(日本将棋連盟)
    2. 【続報】年越しの電王戦 激闘20時間の末に人間側勝勢のまま指し掛け(ニコニコニュース/ガジェット通信 2015/1/1):”強豪将棋コンピューターソフト「ツツカナ」に森下卓九段が挑んでいた「電王戦リベンジマッチ」は、約20時間・152手の激闘の末、森下九段勝勢のまま、コンピュータが負けを認めず延々と指し続けるため、1月1日5時26分、後日指し掛け(対局中断)となった。”
    3. 電王戦リベンジマッチ 森下卓 九段 vs ツツカナ 中断に対する批判まとめ (TOGETTER)
    4. PV 「電王戦リベンジマッチ」2014.12.31 森下卓九段 vs ツツカナ (ニコニコ動画)
    5. 「第2回電王トーナメント」レポート(日本将棋連盟 2014年11月 4日):”「何とかしてPonanzaの連覇を止めたかったので、達成できて言葉で表現できないほど嬉しいです。電王戦FINAL出場に当たって、棋士の先生には申し訳ないんですが、そこまで勝負自体にはこだわりはないです。コンピュータを使っていかにプロ棋士が強くなって、将棋のレベルが上がることに貢献できるかというところにモチベーションがあります」(巨瀬さん)”
    6. 電王戦リベンジマッチ・森下卓九段 VS ツツカナは森下九段の判定勝ちに (2ch名人):”判定勝ちの理由として、中断局面からコンピュータ同士で対戦して、後手(森下九段側)の100戦100勝。 ”
    7. 将棋電王戦リベンジマッチ 激闘23時間 菅井竜也五段 vs 習甦 (ニコニコ生放送 2014年7月19日)(20時間58分45秒)
    8. 第2回将棋電王戦第5局 三浦弘行八段 vs GPS将棋 棋譜 http://seiga.nicovideo.jp/watch/mg58174 ニコニコ静止画
    9. 「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実 【前編】対局3日前、「棋界の武蔵」三浦八段が漏らした本音 (現代ビジネス 2013年04月29日):” 「棋士の文化と、われわれ研究者の文化は違うんですよ。棋士は『この一局の勝負にすべてが懸かっている』と考えます。だけど私たちは『1000局指してみないと本当の強さなんてわからない』と考えている。一局だけでは、出来不出来がありますからね。研究者はいつも、誤差のかたまりを相手にしているんですよ。だから今日の結果で、コンピュータのほうが強いとか、人間のほうが強いとか、そういうことはまったく考えません。負かされて、修正すべき点が見つかればそこを直す。その繰り返しです。(GPS開発者の1人金子知適氏)”
    10.  「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実【後編】一手も悪手を指さなかった三浦八段は、なぜ敗れたのか(現代ビジネス 2013年05月15日):”ずっと将棋をやってきた者としては、プロの権威を傷つけたくはない。でも開発者としては、ソフトの力を試したい。葛藤があります。傷つきなんかしない、杞憂だとは思うけど、でも杞憂であってほしいという願望かもしれない。(ponanza開発者山本氏)” ”私は、悪手を指して負けたわけではないのです。GPSも、一手の悪手も指していません。”(三浦八段)
    11. 【第2回電王戦】Puella αx塚田泰明のクライマックスを見たかった(ニコニコ動画):第4局 塚田泰明九段 Puella αの対局で持将棋になった場面から局後のインタビューまでの動画。
    12. 第2回将棋電王戦第4局 塚田泰明九段 vs Puellaα 棋譜(ニコニコ静画)
    13. 佐藤 大輔(さとう だいすけ、1974年 – )は、日本の映像作家。フジテレビジョンを経て、現在は株式会社佐藤映像代表。将棋「電王戦」プロモーションビデオ(2012年〜、ニコニコ生放送)(ウィキペディア)

電王戦 村山七段がponanzaに敗れる

2015年4月4日(土)、奈良薬師寺の舞台で将棋電王戦FINAL第4局が行われ、村山慈明 七段がponanza(ポナンザ)に敗れるという結果になりました。

棋譜が見られるブログ ⇒ <投了まで>将棋棋譜速報 将棋電王戦FINAL第4局 「ponanza」対「村山慈明七段」(将棋上達の探求 2015年04月04日)

ponanzaの初手は7八金。一般的には7八金に対しては振り飛車をするのが有利になりやすいと言われるそうですが、村山七段は振り飛車は選びませんでした。村山七段はコンピュータ将棋対策として「相横歩取り」というプロ同士ではさほほど多くみられない戦型に持ち込みました。しかし、「攻めのponanza」は予想に反して21手目で3六飛と引いたため、飛車角総交換などの激しい戦いへ進まず、力戦(りきせん)模様となりました。解説者によると19手目の7七歩はここ40年くらいないそうで、 コンピュータ将棋らしくponanzaは常識にとらわれない手を指したようです。97手までで先手番ponanzaが勝利。

将棋電王戦FINAL 第4局 村山慈明七段 vs ponanza 1/

将棋電王戦FINAL 第4局 村山慈明七段 vs ponanza 2/

将棋電王戦FINAL 第4局 村山慈明七段 vs ponanza 3/

将棋電王戦FINAL 第4局 村山慈明七段 vs ponanza 4/

将棋電王戦FINAL 第4局 村山慈明七段 vs ponanza 5/

対局後の記者会見では東(あづま)将棋連盟常務理事が、序盤研究の第一人者である村山七段が序盤から押されぎみの展開になるなどponanzaの実力が際立っていたと述べました。

村山七段は今回の対ponanza戦に向けてこの半年間、ponanzaと練習対局をして研究を重ねてきましたが勝率が1~2割あったかどうかというくらいに強い将棋ソフトだったそうです。将棋電王戦FINALのに参加したことで得られた収穫は何かと聞かれて、けっこう棋風かわったねと言われるくらいの影響を受けており、ponanzaに引き上げてもらった部分もあると、率直にponanzaの実力を認めていました。

参考

  1. 「将棋電王戦FINAL」第4局村山七段が敗れ2勝2敗に並ぶ、決着は最終局へ(マイナビニュース 2015/04/04):”終局後の会見で村山七段は「相横歩取りは、練習では激しい将棋になることが多かった。本譜は練習でほとんど指されず、研究していない形になってしまった。いい将棋が指せなくて残念です」と肩を落とし、ponanzaの開発者・山本一成氏は「力が出やすい展開になって、序盤の分かれは悪くないのではと思っていた。両者勝ち越しをかけて第5局を戦うのは初めて。つなげることができたと思う」と語っていた。”
  2. ponanzaが完勝しコンピューター側が2勝2敗のタイとなる|将棋電王戦FINAL(週アスPLUS 2015年04月04日)
  3. 将棋電王戦FINAL第4局、ponanzaが「将棋の定跡に重大な問題提起」した構想で村山慈明七段に完勝 (将棋ワンストップ・ニュース):”終局後、佐藤康光九段は、森下九段が「将棋の常識が覆る」と言った▲7七歩△7四飛▲3六飛の手順について「かなり重大な問題提起。これはおそらくプロの棋士でも考えた人がいないのでは。定跡に問題提起した」とも話していました。”
  4. 将棋電王戦、ソフトが勝つ 2勝2敗で最終局へ 村山七段の奇襲実らず(日本経済新聞2015/4/4):”事前の練習将棋での勝率は1、2割だったという村山七段。ポナンザの強さを認めるだけに「(苦しいといわれる)後手番で、ポナンザ相手に正攻法で受けに回るのは厳しい」とみて、「奇襲」ともいえる作戦「相横歩取り」戦法を採用した。”
  5. 将棋:電王戦、ソフト勝ち2勝2敗に(毎日新聞 2015年04月04日):”村山七段は「序盤で飛交換を避ける予想外の手を指され形勢を損じた。研究不足というしかない」、山本氏は「盛り上がる展開になってうれしい」と語った。”
  6. 第84期棋聖戦五番勝負第2局 【渡辺明竜王 vs 羽生善治棋聖】の棋譜と感想(結城の将棋ブログ 2013年6月22日 ):”愛知県豊田市「ホテルフォレスタ」にて、第84期棋聖戦五番勝負第2局【渡辺明竜王 vs 羽生善治棋聖】が行われました。…ニコ生解説の塚田泰明九段も「タイトル戦で久々に見た」と仰っていたように、羽生三冠が後手番で相横歩取りを選んだのは24年ぶりらしいです。”

将棋電王戦を戦う棋士たちへ、米長 永世棋聖

2012年1月に第1回電王戦を戦った米長邦雄 永世棋聖(1943-2012)がコンピュータとの対戦に関してどのような考え方を持っていたのかがわかる非常に興味深いインタビューです。

電王戦に出たいきさつ
00:09 僕が棋士の中じゃ一番コンピュータというものをいろいろ研究していたので、僕が出るよりないと思って出たんですけどね。まさか、負けるとは思わなかった。

コンピュータに敗れた理由
00:34 当日の対局でやり損なったことが悔やまれます。コンピュータ相手には、気合とか、一手違いの読み比べとか、そういうものを出したときは人間がだいたい負けるんですね。コンピュータ相手に戦っているということを最初から最後まで意識してやらないとダメなんです。すごく根気が要るんです。自分を殺しながらずーっと一手一手やっていきますのでね。そのまま続ければよかったんですけど、やっぱり、暴発というんですかね、やっぱり人間らしい手を指しちゃったというところが。まあ、人間同士だったら魅力ある手だったんですけど、コンピュータにはそれは通用しなかったということですね。
1:46 僕の作戦はコンピュータの弱点を突いていくということで、途中まではうまく行ったんですけどね。やっぱりイライラしてくるもんでね。「やっちまえ!」というのが裏目に出たということです。

電王戦の企画について
02:00 (電王戦の企画について)ドワンゴの川上会長が1対1で毎年やっていくよりも、いっぺんに五局でやろうと言っていただいたので、それじゃやりましょうということで。やっぱりファンが喜んでもらえるかどうかとうことが一番大きいですね。

コンピュータに勝つための戦略
03:18 コンピュータの素晴らしさは素晴らしさで、これは人間がかなわないんだということを人間のほうが悟って、その上で、コンピュータには人間に及ばない欠陥があると、その欠陥は何であろうかということを、プロ棋士が真剣に考えて対応すれば、人間が負けることはない。コンピュータの研究成果は一部に特化していると思うんですね。人間同士で戦うということでなくて、コンピュータというものがどういうものかということを知って対局に臨めば、プロ側が勝つのだろう。5人ともプロ棋士相手に指すつもりで練習している場合は、五戦全敗だと思う。コンピュータと戦っているんだと切り替えさえすれば、プロがいけると思っている。

コンピュータに勝つために必要な態度
04:45 今年の1月14日に指した将棋で2手目に6二玉と指したんですけど、人間には非常に評判悪かった。人間同士の戦いの中ではあれは悪手(あくしゅ)なんですね。しかしコンピュータの弱点を知って指した手としては、あの時点では最善だったと思うんですね。しかし、コンピュータのほうも研究を積み重ねて、その6二玉はもう古い手だと、プログラムをいろいろ変えてやってくると思う。だけど、どこまで変えていってもコンピュータにはコンピュータの限界があるのであって。人間はあまりにもコンピュータを知らなさ過ぎる。人間相手ではなくてコンピュータと戦うということに切り替えられるかどうか、そこが見所ですね。

コンピュータ対プロ棋士の対局内容の未来
06:59 つまらん将棋だなと思ってもらえればプロが勝つという、不思議な内容になると思う。プロが自分を殺して、コンピュータの長所、弱点を知り尽くした上で指せるかどうかっていうことで。格好いいとこ見せようとか、こういうふうにやろうとプロが考えたときには、プロが負けるときだと思うんですね。
07:54 コンピュータがあまりにも強すぎる。人間同士の戦いにいきなり持ち込んでると、コンピュータにひどい目に会いますので。意外な弱点をプロが的確に突けるかどうか。

電王戦出場棋士の人選
9:18 来年、再来年どういうふうになっていくかということですけれども、この形態を続けていくとすれば、コンピュータが強くなって人間を引き離すというよりも、コンピュータを研究するプロ棋士が頑張って、逆に人間のほうが有利になってくるんだろうという気がしますね。四段でも、羽生でも渡辺でも、プロ側の人選をどうしたから、タイトルを持っているから強いとか、四段だからダメとか、引退したから弱いとか、そういうレベルでなくてですね。コンピュータをどこまで研究しているかどうかにかかっているのであって。強い棋士が出たからプロが勝つというとうことではないのだろうと思うんですね。

電王戦の意義とは?
10:28 一番大事なことは共存共栄でね。コンピュータ将棋に我々プロの棋士がどれだけ貢献できたかということが一つ。それと、人間と違う異次元のものが出てきたということでプロも頑張ると。ファンが喜ぶかどうかということが大きいと思うんですね。
11:28 おい、みんな頑張れよ!

参考

  1. 第2回電王戦(ニコニコ大百科):第2回電王戦とは、2013年に5人のプロ棋士と5組のコンピュータ将棋プログラムによって行われた将棋棋戦である。当初の予定では、第1回から1年に1戦ずつ5年間で計5回戦行われる予定だった。しかし、2012年1月14日に行われた第1回戦米長邦雄永世棋聖 VS ボンクラーズ終了後の記者会見で、急遽その話は白紙となり、2013年はプロ棋士5人VSコンピュータ5ソフトの一斉対局が行われることになった。

 

将棋電王戦FINAL第三局:稲葉 陽 七段、やねうら王に敗れる

2015年3月28日(土)に函館の五稜郭で行われた将棋電王戦FINAL第三局は、稲葉 陽 七段が「やねうら王」に敗れました。これで、人類2勝コンピュータ1勝になり、人類悲願の勝ち越しは来週行われる第四局の村山慈明 七段に託されることになりました。

棋譜再生 ⇒ 電王戦FINAL 第3局 ▲稲葉陽七段 – △やねうら王(ロックショウギ)

開始日時:2015/03/28 10:00
終了日時:2015/03/28 20:02:06
棋戦:電王戦FINAL第3局
先手:稲葉陽 七段
後手:やねうら王

▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △8五歩 ▲2五歩 △3四歩
▲7八金 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △3二金 ▲3四飛 △3三桂 ▲3六飛 △4二銀
▲9六歩 △4四歩 ▲5八玉 △6二玉 ▲3八金 △1四歩
▲7五歩 △8四飛 ▲7七桂 △4五歩 ▲2六飛 △4三銀
▲4八銀 △7二玉 ▲6八銀 △6二金 ▲6六歩 △3四銀
▲6五歩 △3五銀 ▲7六飛 △2四飛 ▲2八歩 △1三角
▲3六歩 △2六銀 ▲3七桂 △8三歩 ▲2七歩 △同銀成
▲2五歩 △同 桂 ▲2七金 △3七桂成 ▲同 金 △2九飛成
▲7四歩 △同 歩 ▲8五桂 △2二角 ▲同角成 △同 金
▲4九桂 △1九龍 ▲7三歩 △8二玉 ▲7四飛 △6六桂
▲6七玉 △5八角 ▲6六玉 △8五角成 ▲4四飛 △7四桂
▲5六玉 △3三金 ▲4二飛成 △5四香 ▲4五玉 △4四歩
▲4六玉 △3四金 ▲2三角 △4五歩 ▲同 龍 △同 金
▲同角成 △4九龍 ▲5九銀左 △4四歩 ▲同 馬 △7六飛
▲3五玉 △7八飛成 ▲8四歩 △同 馬 ▲2四歩 △5七香成
▲5四歩 △3三歩 ▲同 馬 △4八成香 ▲4五桂 △5四歩
▲2三歩成 △7三馬 ▲4八銀 △同龍寄 ▲3八銀 △3七馬
▲同 銀 △同 龍 ▲4六角 △同 龍 ▲同 歩 △2六銀
▲同 玉 △4六龍

まで116手で後手の勝ち(2ログ 将棋電王戦 FINAL 第3局 part9 2015/03/28 20:10:11.22

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 1/7

0:00 ニコファーレ(東京・六本木) 解説者: 糸谷哲郎 竜王、深浦康市 九段、聞き手: 山田久美 女流四段、安食総子女流初段
17:33 この対局の立会人は森 雞二 九段、読み上げは貞升 南(さだます みなみ)女流初段、記録係は佐々木 大地 三段です。
24:00 稲葉七段の第1手、2六歩。

 

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 2/7

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 3/7

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 4/7

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 5/7

 

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 6/7

0:00 ここからは、解説に深浦九段、ゲストに声優の岡本信彦さん、そして私、安食でお届けいたします。
0:24 (安食)岡本さん、いかがですか?(岡本)みなさんの控え室にお邪魔させていただいてですね。深浦さんに、この手はどうなんですか?というのをずーっと聞いていたんですけれども。聞けば聞くほど、絶望感が。(深浦)言っちゃいましたか?
38:32 後手7六飛(王手金取り)。(岡本)あっ、これは(入玉の)チャンスなんじゃ..(深浦)磯崎さんの表情がなんか、それ、やんないでよっ、て顔されてますね。(岡本)ちょっと楽しくなって来ましたね。

 

将棋電王戦FINAL 第3局 稲葉陽七段vsやねうら王 7/7

0:00 現地の方、宜しくお願いいたします。
05:54 (遠山)塚田九段のときは引き分けになりましたけど。詳しい方に言わせれば、あのまま塚田九段が無限に指せれば塚田九段が勝つだろうとおっしゃってたので。やっぱりその辺はソフトは弱点ですね。
(深浦)しかしあれから2年経っているわけですね。その間、ソフトの改良、補強するということは当然考えられて。(遠山)そうですけども、9割方やっていないと思いますね。(深浦)そうなんですねぇ?
(糸谷)入玉邪魔するよりも、もっと大切なことありますもんね。
38:50 (深浦)では引き続き現地の検討室ともつないでみたいと思います。五稜郭の室田さん、お願いします。
39:10 (村山)こんばんは、村山慈明です。(室田)ついに来週ということで、いよいよ?(村山)半年くらい練習、研究しているんですけれど。あっという間にもう来てしまったなという感じがします。
40:53 (室田)さっそくですがSurface使って解説お願いいたします。現局面、同銀まででしょうか。(村山)稲葉さんの玉が入玉できるかどうかが焦点という局面になっているんですけれども。
(室田)どうですか、できそうですか?(村山)少し前まではなんとか入玉はできるかなと思っていたんですけれども。かなりきわどい局面といいいますか、簡単には入玉できないような感じですかね。

58:03 後手、4六龍。(稲葉七段が投了)
58:40 電王手さん、対局後のお辞儀。(稲葉七段放心状態)
58:50 電王手さん、記録係らに向いて、お辞儀。読み上げの貞升 南(さだます みなみ)女流初段が合わせてお辞儀。
59:58 (解説者ら)稲葉さんのほうから2七歩で開戦したのが無理、失敗ということになりましたかね。

1:01:46 対局場における対局直後のインタビュー。
1:02:43 (質問:急に開戦、決戦になったのは稲葉さんがギアチェンジをかけた?)そういうつもりだったんですけど、ちょっと早かったかもしれないですね。やはり、少し我慢して、もっと後にギアチェンジしないといけなかった。
1:03 :33 (質問:入玉を目指すのかなと思ったら一直線には目指さなかった。それは何か作戦的にあったのでしょうか?)駒があまりにも足らないので、駒を稼げたら入玉も視野に入れようかなという指し方でした。(敗戦したことに関して)ふがいない内容で申し訳ないという気持ちですけど。自分の弱さが出た将棋になってしまったので残念ですけど、しょうがないかなと。

1:13:52 記者会見。登壇者は、立会い人 森雞二(もり けいじ)九段、やねうら王開発者 磯崎元洋氏、稲葉 陽(いなば あきら)七段、中川大輔八段(将棋連盟常務理事)、第四局の対局棋士となる村山慈明(むらやま やすあき)七段。

稲葉 七段はいかに敗れたのか?「電王戦FINAL第3局観戦記 船江恒平五段(ニコニコニュース 2015/4/2)」が参考になります。

 練習する中で稲葉もやねうら王は対策の立てやすいソフトだと感じていた。とはいえ現在のレベルのソフトに必勝法を編み出すことは不可能に近い。戦型は絞りやすいが、定跡を打ち切った後のやねうら王の指し手はランダム性が強く、パターン化することは難しいのだ。それでも膨大な時間をかけて、ほとんどの形で早めに戦いを起こして優位になる手段を確立し、本局に臨んだ。…

途中までは確率の高い手を選び続けていたやねうら王だったが、△7二玉と前手△4三銀の組み合わせを指すのは非常に珍しく、稲葉としては最も出現率が低い と思っていた形になった。そして出現率が最も低いこの局面が、唯一稲葉が望む早い戦いを起こすことができない局面だった。…

稲葉はここで初めて時間を使う。気持ちを整理し、事前準備に頼るのではなく自分の力で戦うことを決めたのだろう。…

局後、稲葉は▲2七歩に関してギアチェンジのタイミングを間違ったとコメントしたが、なぜそのミスは出てしまったのだろうか。…第3図では△2八歩の不安から少し形勢を悲観していた稲葉も、△2四飛~△1三角とありがたく感じる手が続いたため第4図では逆に自信を持っていた。このあたりの対局者ならではの気持ちの揺れが、心にわずかな隙を生む。普段の対局なら問題にならなかったかもしれないが、電王戦独特の緊張感、そして事前準備が上手くいかなかったことやソフトの中終盤の強さ、色々なプレッシャーがそのわずかな隙を大きくさせてしまったのだろう。その隙間に早く良くなりたい、楽に勝ちたい、という気持ちが入り込んでくる。そしてその気持ちが生じると人は深く読むことができなくなってしまうのだ。…

参考

  1. 将棋電王戦FINAL第3局、やねうら王が入玉を目指した稲葉陽七段を下す。ソフトがシリーズ初勝利 (将棋ワンストップ・ニュース):”90手目、やねうら王が△7六飛と王手金取りに打ったところで、開発者「やねうらお」こと磯崎元洋さんの表情が明らかに曇りました。この手は駒得となる一方、入玉を許すような手でもあり、…稲葉七段は一直線に入玉を目指さず、97手目▲5四歩、101手目▲4五桂など時折攻め、玉は中段で停滞させました。…しかし、この入玉を目指さなかったことが裏目に出て、稲葉玉は中段で寄せられる格好に・・・。”
  2. 第3局はやねうら王が勝利し、コンピューターの1勝となる|将棋電王戦FINAL(週アスPLUS 2015年03月28日)
  3. 電王戦、プロ棋士3連勝ならず 稲葉七段「ふがいない」 (日本経済新聞 2015/3/28):”「(早く優勢にして)楽に勝ちたい」と思ってしまった稲葉七段が勝負を急ぎ、やねうら王が優勢に。稲葉七段も終盤、「入玉(自玉が敵陣に進入し詰まない状態になること)」含みで粘ったが、最後はやねうら王が稲葉玉をつかまえた。”
  4. 「将棋電王戦FINAL」第3局で稲葉七段が破れソフト1勝目「不甲斐ない将棋」(マイナビニュース 2015/03/28)
  5. 電王戦FINAL 第3局 ▲稲葉陽七段 – △やねうら王(ロックショウギ)
  6. TWITTER #電王戦

永瀬六段2七角成らずで見せた勝負師の真髄

2015年3月21日(土)電王戦FINAL第2局 永瀬拓矢 六段 vs 「Selene」が高知城で開催されました。

こちらの動画は対局前のPV.

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢 六段 vs Selene (YOUTUBE削除済)

とりあえず当日の棋譜を今すぐ見たい方はこちらで見られるようです。

電王戦FINAL 第2局 ▲Selene – △永瀬拓矢六段 棋譜再生(ロックショウギ)

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 電王戦 棋譜 (ニコニコ静画)(niconicoアカウントが必要)

 

解説が行われたニコファーレからの放送。司会進行役は本田小百合女流三段、ニコファーレ会場での解説は屋敷伸之九段と広瀬章人八段、もう1人の聞き手に井道千尋女流初段という顔ぶれです。

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 1/7 (YOUTUBE削除済)

13:09 いよいよ永瀬拓矢六段が登場。高知城内に特別に設けられた対局場へ向かいます。
14:50 永瀬拓矢六段、対局の席に着き、駒を並べます。
17:00 続いて、電王手さんも駒を並べます。
23:46 三浦弘行九段から「時間となりましたのでSeleneの先手で対局を開始してください。」という声がかかりいよいよ運命の決戦がスタートしました。お互いにお辞儀。
24:29 先手Seleneの注目された初手は2六歩。それに対して後手永瀬拓矢六段の手は3四歩でした。

 

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 2/7 (YOUTUBE削除済)

まだまだ序盤で、解説では初手からここまでを振り返ります。

 

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 3/7 (YOUTUBE削除済)

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 4/7 (YOUTUBE削除済)

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 5/7 (YOUTUBE削除済)

0:00 現地からのレポート。山口恵梨子女流初段が瀬川晶司五段に戦況に関して判断を求めます。続いて三浦九段にも。Seleneが有利かという感触。

 

序盤から中盤にかけてなかなか戦いが始まらず長時間の戦いになると思われたこの戦い。しかし状況判断の参考となる評価値にしても、棋士の解説者らか らみても永瀬拓矢六段がやや劣勢というのが一致した見方で、時間が長引くほど人間に不利になっていくだろうと重苦しい雰囲気が漂い始めていました。

状況を見守る解説者らが1六角打ちが、状況を一変させる良い手ではないかと気付き、雰囲気がガラリと変わりました。

85 手目 勝又六段が興奮した様子で控室に入ってきた。「これはやったか!」と声を上げる。読み筋は屋敷九段と同じだ。☖1六角☗2七歩☖同角成☗同玉☖1七香成 ☗2六玉☖1四桂☗同と☖同銀。そこで☗1五歩は☖同銀☗同玉☖1一飛☗1四桂☖2三桂☗2四玉☖1五角☗2五玉☖2四歩 #電王戦 From: nrtki at: 2015/03/21 21:51:24 JST  Re 公式RT

果たして、永瀬六段もその手に気付いていて実際に1六角を選ぶのかどうか、皆、固唾を飲んで見守りました。、永瀬六段の指し手は、まさにその1六角。

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 6/7 (YOUTUBE削除済)

0:00 夕食休憩後に対局再開された直後。
59:33 山口恵梨子女流初段がゲスト棋士の稲葉陽七段に形勢判断を求めます。総合判断はほんの少しSeleneが優性という判断でした。
1:17:43 解説者が1六角打ちの手筋を検討・解説。
1:27:28 後手永瀬六段が1六角打ち。

さて衝撃の結末はここから。ニコニコ生放送時の視聴者のリアルタイムな書き込みを見ると、盛り上がりぶりがわかります。誰も予想しなかったことが、その次に起こりました。

「2七角成らず(王手)」。

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene (YOUTUBE削除済)

王 手をかけらたSeleneですが、「角成らず」は想定外で王手を無視した別の手を選び、反側負けという劇的な幕切れ。解説者も立会人も視聴者も最初は何が 起こったのかわからなかった人が多かったようです。1人だけ冷静だったのが永瀬六段。彼は「角成らず」によってSeleneが投了してしまうことを知って いたのです。

しかしこのようにコンピュータソフトの不備を突いた勝ち方だと、せっかく棋士がコンピュータに勝ったのにケチがついてしまうのではないかと心配して、解説者たちは必死に寄り筋を検討しましたがどうも釈然としません。

対局直後に永瀬六段が解説場に呼ばれて、その後の読み筋の解説がなされました。

【将棋】 電王戦第2局 △2七角不成からの読み筋を永瀬本人が解説 【将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene】 (YOUTUBE削除済)

 

対局後の記者会見の模様。永瀬六段が「角成らず」を使った意図を詳しく説明しました。その後、Selene開発者西海枝昌彦氏による敗者の弁。立会人を務めた三浦弘行九段による講評。片上大輔六段(将棋連盟理事)が再度、何が起きたのかに関しての公式見解を説明をしました。

将棋電王戦FINAL第二局 記者会見と結果 終局経緯

 

将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene 7/7 (YOUTUBE削除済)

0:00 問題の「2七角成らず」。解説者も「な、ならず?」動揺しています。永瀬六段の意図には誰も気付いていません。
51:20 長い協議の後、日本将棋連盟の片上理事がこのハプニングにどう対応するかの説明をしました。
58:48 永瀬六段が呼ばれて、読み筋の説明を行いました。
1:12:07 永瀬六段、Selene開発者西海枝昌彦氏、立会人三浦九段、片上理事、稲葉七段らが壇上にそろって記者会見。

TWITTERでもいろいろな感想が飛び交いました。

第1局:ソフトが投了せずに大問題 第2局:ソフトが投了してしまって大問題 #電王戦From: bringerz at: 2015/03/21 21:07:58 JST Re 公式RT

電王戦FINAL第2局をタイムシフトで改めて視聴。永瀬「不成に対応していない、あと飛車と歩も」「ほっとくと投了すると思います」。これを自分の勝ちを確信した局面でやったんだから恐れ入る。秘孔を突いたと表現した人がいたけど、本当にそんな感じ。 #電王戦 From: takatsukat at: 2015/03/21 23:42:00 JST Re 公式RT

バグで勝ったと勘違いしてる奴が多いが、そもそも裁定で継続が選ばれればその次を指さなきゃいけなかった。27角自体、大駒を切ってる訳で勝負手であり勝ちの局面以外では指さない手である。そのあとの指し手を読み切って勝ちになる局面で試しただけだ。 #電王戦 From: IL360 at: 2015/03/21 21:56:09 JST Re 公式RT

#電王戦 コンピューターのバグをつかなくても永瀬の勝ち筋だったような…。うぅむ、性格がでてるなぁ。From: Jikkenfish at: 2015/03/21 21:46:43 JST Re 公式RT

今日の電王戦は良かった。ソフト屋としては胃が痛くなりそうだが。相手がバグ修正か、裁定で継続すると言う判断される可能性を読み切って、そうなっても関係ないところで指したのが凄い。ソフトが王手ラッシュなどを自粛するなど棋士に配慮してれば手を変えてくれたかも。 #電王戦 From: IL360 at: 2015/03/21 21:12:38 JST Re 公式RT

納得できるのあの説明で? 「ほぼ必勝」の局面で大盤が必死でしたけど? #電王戦 From: march_hare_bro at: 2015/03/22 02:13:46 JST Re 公式RT

永瀬六段かっけえ。角ならず打ったあとに「プログラムミスでしょうね」「歩と飛車のならずも認識してないと思います」「ほっとけば投了しますよ?」 しびれたwwww #電王戦 From: koiwai25 at: 2015/03/22 01:49:49 JST Re 公式RT

永瀬六段が練習対局で勝率1割だったていうコメントにゾッとした。コンピュータ将棋の強さとその1割を本番に持ってきたプロ根性。 #電王戦 From: ko31 at: 2015/03/22 00:36:39 JST Re 公式RT

永瀬六段は本当にSelneが投了しなくても100%勝っていたのか?という疑問は多くの人が抱くと思います。特に、直前までSeleneが優勢だったため余計釈然としないかもしれません。しかしプロの棋士の事後の検討ではやはり「バグ」は実質的な勝敗とは無関係という結論です。

さてその△2七同角不成の局面でSeleneが反則負けとなりましたが、形勢はどうだったのか。ニコ生画面上のやねうら王(2014年ver)、Seleneは先手+500程度だったとのこと。他のソフトも大体先手有利を示していました。しかし人間の見解は逆で、永瀬六段も現地検討陣も後手有利を示していました。ではどちらが正しかったのか。結論から言うと人間が正しかったようです。  (遠山雄亮のファニースペース 2015-03-22 第4回電王戦第2局 人工知能との本気の対峙

電王戦ですが、個人的に角不成は永瀬六段の優しさだと思いました。序盤早々にやったわけではなく、苦しい局面でやったわけでもないので。むしろ勝ちの局面で実行したので、2局目はプロ側の完勝だと言っていいと思います。3局目以降も注目です(村田顕)

 

【追記】2015年3月27日(金)放送のTBSのラジオ番組「荻上チキ Session-22」に永瀬六段がスタジオゲストに呼ばれて視聴者からの質問に答えていました。負ける局面でもあの手を使ったかどうかという皆が聞きたかった質問に対しては、やはりそういう勝ち方はするつもりがなかったそうです。将棋界を代表している立場上、そのような勝ち方をしても意味がないのでしょう。バグに気付いた段階で事前に伝えるつもりはなかったのかという質問も出ていました。それも考えたそうですが、バグの修正と言いつつソフトが変わってしまうようなことがあってもと考えたそう。これは過去の電王戦でそのようなトラブルがあって大問題になりましたので、それを踏まえてのことでしょう。

参考

  1. 電王戦FINAL第2局観戦記 勝又清和六段 (ニコニコニュース)
  2. 【レポート】努力の矛先「将棋電王戦FINAL」第2局 – Seleneを完全に読み切った永瀬六段の才知(マイナビニュース)
  3. 電王戦FINAL 第2局 ▲Selene – △永瀬拓矢六段 棋譜再生(ロックショウギ)
  4. 将棋電王戦FINAL第2局で衝撃の結末 Seleneが永瀬六段の異例の指し手「角成らず」を認識できず反則負けに (ねとらぼ 2015年03月21日 ):”通常の将棋では滅多に登場しない「飛車・角・歩不成」を認識するプログラムを搭載していなかったとのこと。”
  5. Seleneが角成らず王手にまさかの放置で投了、第2局も人類・永瀬拓矢六段の勝利となる|将棋電王戦FINAL(週アスPLUS 2015年03月21日)
  6. 「将棋電王戦FINAL」第2局はコンピュータが王手放置の反則負け、プロ棋士2勝目(マイナビニュース 2015/03/21)
  7. 「奇手」にソフト対応できず 将棋電王戦、棋士が2連勝(朝日新聞DIGITAL 2015年3月21日)
  8. 電王戦、ソフトが王手放置で負け 棋士側が連勝(日本経済新聞 2015/3/21)
  9. われ敗れたり(銀蜘蛛の庵 2015年3月21日):”米長先生がボンクラーズとの戦いについて書いた「われ敗れたり」のP56~58にこんなことが書いてあります。以下は抜粋。そしてこの詰将棋の正解手順は、その中の答えの一つ、「2三角成らず」が正解です。成ってしまうと詰まないのですね、(中略)このたった七手の詰将棋、弱い人でもちょっとヒントをもらえば「そうか」と解けそうな詰将棋が、どういうわけかボンクラーズには解けないのです。(中略)「成らないほうが得になる」というケースが計算に入ってないんですね。これはボンクラーズの欠点の一つです。”

電王戦FINAL第2局 永瀬拓矢 六段 vs Selene

2015年3月21日(土)に将棋電王戦FINAL第2局が高知城で行われ、永瀬拓矢六段とコンピュータ将棋不ソフト「Selene」が対戦しました。

解説者の1人、佐々木勇気五段によれば、昔はコンピュータが人間に勝てたら凄いという状況だったのに、コンピュータ将棋が強くなりすぎたために、最近では人間がコンピュータに勝てたら凄いという状況に変わってしまったそうです。そのため、電王戦のような非常に大きな注目を集める舞台なら若手であれば誰でも出てみたいところですが、勝つことが容易ではないため、必ずしも誰もが出たいと思うわけではないとのこと。また、コンピュータとの対戦のための研究に時間を割くくらいなら、羽生善治棋士棋士など上位の棋士らとの対局に向けた研究に時間を使いたいという気持ちもあるそうです。電王戦FINAL出場というオファーを受けて立つということが棋士にとっていかに大変なことかがよくわかる率直な解説でした。

昨年度の電王戦に出場した屋敷伸之九段は今回はニコファーレの会場で解説者の立場で参加しており、とても楽しそうにリラックスして見えました。ちなみに、屋敷伸之九段の弟子である伊藤沙恵女流初段は今回、大盤解説会場高知城ホールで瀬川晶司五段の解説の聞き手を務めましたが、「聞き手」デビューだったそうで、カメラを向けられた状態でかなり緊張していた様子でした。

夕方、16時45分頃の形勢判断では、今回の立会人を務める三浦弘行九段によると、五分五分。トータルで永瀬六段にちょっと傾いているのは、「希望」なんだそうです。三浦九段が部屋に現れる前に時間があったため、山口恵梨子女流初段が瀬川晶司五段の評も聞いていましたが、瀬川五段も総合的には五分五分という判断でした。
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17時に夕食に入る前の局面。この時点でのニコファーレの会場での解説は広瀬章人八段井道千尋女流初段
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夕食休憩中の現地(高知)における検討。熊倉紫野女流初段、急遽助っ人として解説に参入した片上大輔六段と、瀬川晶司五段。

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18時35分頃。ゲストに、来週「やねうら王」と対戦する稲葉陽七段が登場。形勢判断は、ややSELENE有利か。
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永瀬六段がやや劣勢という重苦しい状況の中、解説者たちの検討で、実は次に1六角が良いのではないかということになり、少し光が差します。果たして永瀬六段は1六角と打つのかどうか?
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次に、永瀬六段が指した手はまさにその1六角でした。視聴者は大いに盛り上がります。

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ところが、視聴者の期待と予想をはるかに上回ることが次に起きました。

 

解説者も仰天した、2七角「成らず」。相手が人間であれば、相手を挑発するために成らずにしたのかとも思えますが、永瀬六段にはどうやら意図があったようです。

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勝負の結末は突然訪れました。角の「成らず」に対応していなかったSeleneが「投了」してしまいコンピュータはそこで停止してしまったのです。Selene開発者の西海枝昌彦氏が事情を説明。

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あまりの予想外のことに、どう対応すべきなのかを決めるため立会人たちは緊急の協議に入りました。何が起きたのか分からない人が多かったようです。

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19時50分ころ、将棋連盟理事の片上大輔六段から説明がありました。永瀬六段が指した2七角「成らず」(王手)をSelenega認識できず、王手されたのにそれを放置して2二銀の手を指してしまったことにより終了したようです。後の記者会見で説明がありましたが、記録としては「王手放置による先手の反側負け」だそうです。

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対局後に永瀬六段が心情と読み筋を自ら解説しました。後で行われた記者インタビューのときにも説明していましたが、Selenetono練習対局でこのソフトの「バグ」は把握していたそうです。ただし本番のソフトでそれが修正されている可能性まで考え、成っても成らなくても損得が変わらない局面になったら使おうと考えていたとのこと。また、相手に長考させて持ち時間を削る効果があればそれだけでも使う意味があると考えていたそうです。自分の中では勝ちを確信した局面での2七角「成らず」。立会人を務めた三浦弘行九段も、永瀬六段が勝った局面だったことを確認しました。つまり相手のバグを利用しようがしまいが永瀬六段が勝っていたということで、実に見事な勝ち方でした。

勝敗が確定したところで、両者が挨拶。電王手さんもお辞儀できます。

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最後のSeleneの「2二銀」という指し手をなぜ電王手さんが実際に指さなかったかに関しては、西海枝昌彦氏が記者会見で説明していました。Seleneが直接電王手さんを動かしているのではなく、間に将棋エンジンが入っていて、Seleneがあり得ない手を将棋エンジンに渡した場合には将棋エンジンが「負け」を返すという仕組みがあるためだそうです。

Seleneは非常に強いソフトで永瀬六段は練習対局ではあまり勝てていなかったそうです。特に持ち時間が少ない設定の場合にはSeleneが圧勝だったそうで、5時間くらいでやると勝てるかなという程度の勝算だったとのこと。序盤からいやな展開になって永瀬六段はかなり辛抱を強いられましたが、最終的には劣勢を引っくり返して、勝ちに持ち込みました。解説者は永瀬六段のことを、99%勝ちの状況を100%にするためにあえて相手の「バグ」を利用する手まで使ったおそるべき勝負師だと評していましたが、本番で非常に強い力を発揮した永瀬六段に多くの人が感銘を受けた一戦でした。インタビューの席で西海枝昌彦氏はこの「バグ」に関しては申し訳なかったと恐縮していましたが、このことは勝負の決着をドラマチックなものにはしましたが、実際の対局内容には影響しなかったのも幸いでした。

参考

  1. 将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene (ニコニコ生放送)
  2. 対局会場・現地大盤解説会場(ニコニコインフォ)【第2局:高知・高知城】3月21日(土) 永瀬拓矢 六段 vs Selene 現地大盤解説会場:高知城ホール 解説:瀬川晶司五段、佐々木勇気五段 聞き手:熊倉紫野女流初段、伊藤沙恵女流初段
  3. 「将棋電王戦FINAL」開催概要(日本将棋連盟):第2局 3月21日(土)10:00対局開始 △永瀬拓矢六段 vs ▲Selene 対局会場:高知城 <高知県高知市丸ノ内1-2-1>、大盤解説会場:高知城ホール(解説:瀬川晶司五段、佐々木勇気五段/聞き手:熊倉紫野女流初段、伊藤沙恵女流初段)、ニコファーレ(解説:屋敷伸之九段、広瀬章人八段/聞き手:本田小百合女流三段、井道千尋女流初段)
  4. 【将棋】えりりんと勝又清和六段の現地リポート(YOUTUBE動画):観戦リポーターを務める山口恵梨子女流初段と勝又清和六段
  5. サークルKサンクス様の渋皮和栗のモンブラン。もう一個頂きました。局面は中盤ですね。75歩から一気に開戦しそうな雰囲気です。 (山口恵梨子TWITTER)
  6. 将棋棋譜速報 電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene (将棋上達の探求 2015年03月21日)
  7. 電王戦FINAL現地からの声@denou_ntt(TWITTER)
  8. TWITTER #電王戦
  9. 屋敷九段とPonanzaが一致していた読み筋「第3回将棋電王戦」第5局 – 「将棋観」の差異が最も色濃く出た一局(マイナビニュース 2014/05/02)
  10. 電王戦公式統一パソコン「GALLERIA電王戦」屋敷伸之九段インタビュー – 将棋の進歩に有益コンピュータの手は信用できる(マイナビニュース 2015/01/07):”ソフトがそんなに強いなら指してみたいという素朴な気持ちですね。普段の対局で、強い人と指してみたいと思うのと同じです。”
  11. ひふみんアイとは(matome.naver.jp):”将棋盤を (相手側の位置に立ち) 相手側の目線で見ること。・放送では、上下反転させること。..「ひふみん」という愛称で親しまれている加藤一二三九段が、よくやっていたことから。”
  12. 【将棋棋士】 豊川孝弘七段の将棋オヤジギャグ一覧 (matome.naver.jp): “リョウドリー・ヘップバーン 両取りという意味”