電王戦 阿久津八段にAWAKE開発者が21手で投了

      2018/04/28




2015年4月11日(土)に行われた電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 対 AWAKE は、たったの21手め、対局開始後わずか50分後にAWAKE側が投了するという、予想外の幕切れとなりました。投了はソフトのAWAKEではなく、AWAKE開発者である巨瀬亮一氏の判断によるものです。

ほとんど「事故」のような形で将棋電王戦が終わりを告げたのは、いかにも異種格闘技戦らしかったというべきでしょうか。電王戦FINALに参加した5人のソフト開発者と五人の棋士らがそろって記者会見に臨みましたが、人間とコンピュータが異種というよりも、プロ棋士という人間とコンピュータ将棋開発者という人間の両者の勝負に対する考え方の違いや将棋に関する価値観の違いが際立った会見となりました。さらに、コンピュータ将棋開発者も五者五様で、一口にコンピュータ将棋ソフトと言っても、それぞれが異なる考えの元に作られていることが伺えます。

投了までの指し手 ⇒ <投了まで>将棋棋譜速報 将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE(将棋上達の探求)

コンピュータが2八角という悪手を指す可能性があることを事前研究で知っていた阿久津主税八段の作戦勝ちになったようです。

【放送事故】 わずか21手、ソフトまさかの投了!? △2八角を打ち、劇的な幕切れ! 解説付き 【将棋電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE】


投了直後の実況解説者の説明:「この局面だけを解説しますと2八角はいずれ安い駒としか交換できない、角と桂の交換くらいになってしまうんですね。後手は 大幅な駒損をしますので、まあ正直プロ的にはこの局面は大差です。先手が大優勢です。(後手は2八角を)打ってしまってはいけないですね。なので、局面だけみたら確かに、先手がはっきり大優勢なんですけど。」

【将棋】 対局直後のインタビュー + 投了局面以下の解説 【将棋電王戦FINAL第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE】

対局直後の囲み取材における阿久津八段のコメント:「(2八角という手について)今回(事前)貸し出しというルールで、貸し出ししてもらって3日目か4日めくらいにいろいろな形を試しでやっていた中で、コンピュータ将棋の中では有名な筋なんですかね、試しにやってみたら打ってくることもあるということで、そのときから知ってました。(こういう作戦を使うことの葛藤みないなものはありましたか?)普段(棋士同士では)全然やらない形なので、そういう葛藤ももちろんありましたけど。やはり団体戦ということもありますし、2勝2敗で結果を求められているということもあったので、一番勝算が高い形を取るべきかなと思いました。結果に関しては素直に嬉しいという感じではないですけど、とりあえず良かったかなと思います。」

対局直後の囲み取材における巨瀬亮一氏のコメント:「この形に誘導されると(持ち時間が)長時間でもかなりの確率で2八角を指してしまうのがわかっていたので、1六香と上がった時点で投了しようと思っていました。すでにアマチュアの方が指されていた形なので、ちょっとプロとしてはやりづらいんじゃないかと思っていました。(2八角の手に気付いたのはいつ?)全然気付いていなくて、『勝ったら100万円!』のときに気付きました。(改善できないのか?)評価関数で玉の近くに馬ができるのを過大評価してたりするので、評価関数の表現能力の限界があるというか。角が殺されるまでわからなくて、結構枝刈りしてしまうので、この手を指してしまうということですね。」

二コファーレ会場の聞き手:「100万円チャレンジでこの2八角が出て、巨瀬さんはこれで知ったということでしたけども、阿久津八段はもっと早くから知っていたということですかね。」
二コファーレ会場の解説者 森内俊之九段:「貸し出しがあって三日目くらいで自分で気付いたということで、相当調べたんだなということは感じました。」

まさに、米長邦雄 永世棋聖が亡くなる前に予言した通りのことが起きました。

このインタビューの中で米長永世棋聖は、棋士が自分を殺して、コンピュータの欠陥やソフトの意外な弱点を突き、見ている人間につまらない将棋だなと思ってもらえればプロが勝つという不思議なことになるだろう、と話しています。

将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE 1/5


21:10 (立会人)定刻になりました。阿久津八段の先手で対局を開始して下さい。
41:25 (読み上げ)先手、2八銀
43:23 (解説)ちょっと変わった手が出ましたね、2八銀。
43:53 (解説)予備知識がなければ、絶句する手ですよね。
44:06 (解説)この手を普通に解説してたら、2八銀っていうのは符号の間違いでしょ、なんかの間違いじゃないですかっていうとこですけど。こういう手もあると聞いているので、驚きません。(将棋を)覚えた手の人が指したら、こういう手はいけませんよと言われそうですけど。大丈夫なんですかこれは?
(聞き手)研究手(けんきゅうしゅ)ということ?
45:25(解説)深い狙いがあるんじゃないかと。
45:33 (聞き手)画面下に観戦記者の野月七段のコメントが入りましたが。
(解説)2八角がどうのこうのって。
(聞き手)そうですね、打たせるってコメントが今出ましたが。
47:15 (解説)この後2七銀と上がると聞きました、噂で、作戦ね。あえてここで銀あがって角打たれそうじゃないですか。でも打たれても大丈夫なんですよ。打たれても被害はないんですよ。それどころか、この角を、手はかかりますけど殺すこともできるので。取れる可能性があるんです。プロ同士なら(2八角を)打たないですね。人間なら絶対打たないです。初心者なら打ちたくなるんだけど。だけど、コンピュータは打ってくるとみてるんですよね。しかも、打ってくんなきゃ困るわけでもないんですよ。なんというか、お楽しみ抽選会みたいなもんですよ。
(解説)お楽しみは継続してもいいんですか?ワンチャンスじゃなくて、もう2回、3回。打ってくるまで待っていると。
54:18 (聞き手)2八角打たせるというのが100%登場するわけではないというコメントも先ほど流れていましたね。
1:07:25 (聞き手)中継つながっている間に2手ほどすすみまして、やはり2七銀と。
(解説)まず2七銀と予想通り上がりまして。注目の角を打つか打たないかと思ったら、(後手AWAKEは)5三銀と。当然打ちませんでしたね。
(解説)ちょっとほっとしましたね、今。
(聞き手)まだ、待つということなんでしょうか。
(解説):まだあきらめませんよ。(先手)9六歩、これも作戦の一環でしょうね。先手がなるべく条件を整えないで。(後手が)条件が良くなったから打とうかな、と考えてもらおうということでしょうね。
(聞き手)次の手、注目ですね、打つかどうか。
1:09:10 後手2八角。打ちました。打ってしまいましたね。
1:09:35 1六香。
1:09:45 (AWAKE開発者)ここで投了します

将棋電王戦FINAL 最後の記者会見


本局でハメ手が使われたことについて
15:45 (AWAKE開発者 巨瀬氏の感想)今回はアマチュアの方が指していて既に知っているハメがたちになって、それをプロが指してしまうというのは、プロの存在意義を脅かすのはプロ棋士なんじゃないかと思っています。
17:15 (阿久津八段の感想)相手の悪手を誘う含みにした指し方にしたんですけど、勝つために最善を尽くしてやらなくちゃいけないなということで本局の四間飛車という作戦を選びました。
29:45(質疑応答 読売新聞)21手で投了したのは、これ以上良くならないからなのか、それとも、これ以上指し進めても意味がないと考えられたからなのか?
(巨瀬)どちらの意味もあります。あのまま進めても勝つ見込みは全くないと思ったので投了しました。
37:15 (報知新聞)今日の将棋について。再三、アマチュアが指した手をプロが指して残念だという言葉がありますけども、それがアマチュアが指した手であれ、コンピュータが指した手であれ、盤上の最善手を常に追求するというのが棋士の尊さでもあるように思うんですが。なぜそれが残念だと思われるのか?先ほど棋士の存在意義を脅かすという言葉もありましたけども、なぜそれが脅かすんでしょうか?それが否定されたとき、じゃあ棋士はどうあらねばならないんでしょうか?
38:05 (巨瀬氏)単純に、今日の将棋を見て面白いと思ったかというのがまず一つあると思います。プロは勝たなきゃいけないのは確かなんですけど、やっぱり面白いと思ってもらうことには、今後将棋界が生き残っていくのは大変なんじゃないかなと思っていて。今日の指し方はそれを否定するような指し方だと思いましたから、それで、プロの存在意義を脅かすと言ったわけです。
38:50 (NHK)面白い将棋を指す、魅せる将棋を指すということと、勝つ負けるというプロとして譲れない部分と両方天秤にかけた結果だと思うんですけれども、どのような心境でこのような手を選ばれたのかというのを。
39:30(阿久津八段)もちろんいろいろな意見があるとは思うんですけど。見ている方が楽しいと思う将棋を指すのがプロの一番の定義だと思っています。だた今回は、この電王戦を戦うにあたって本番と同じ仕様のソフトを貸していただいているルールの中で、やれる範囲内の中で勝率が上がっていくのような形を検証して、自分にできる最善を尽くそうかなと思って今回はこういう作戦を取らしていただきました。

42:40(観戦記者)本局の投了以降の局面を練習でどのくらい指し次いだか、指し次いでどのくらいの勝率だったか?
43:25(阿久津八段)本局のような四間飛車で以降かなとはっきり決めたのは2週間前くらいですかね。
与えられた条件の中の勝負で、いろいろ考えた結果自分にとって最善を尽くすのがいいのかなと思って決断しました。投了図以下の局面についてですが、練習でももちろん何度か似た形をやってますけど、あの形と同じ形は実は今日が初めてだったんですね。こちらが間違えなければ、かなり優勢になるという局面なんですけど、ただそれでも結構練習の段階ではそこから私が間違えてというか食いつかれて逆転負けした将棋も何局かありました。
45:20 (ドワンゴ川上会長)貸し出し有りのルールについてなんですけども、これを決めましたのは主催であるドワンゴでして、将棋連盟様の実は反対の元、僕らが押し切って決めたルールってことを一つ申し上げたいということと、それとなぜこのようなルールにしたのかということを言いますと、..

53:15 (朝日新聞)事前貸し出しについての開発者の方々のご意見は?
54:05 (平岡氏)事前貸し出しについては反対です。勝負を五分五分に近づけるためには役立ったのかもしれないですけど、それは公平というのとは別次元であって、片方だけが練習できて、片方だけはそれ以上何もできなくて、穴があっても防げないというのはどう見てもおかしいし。川上さんもわかってると思いますが興行上五分五分に近づけないというのはあったと思うし、それを将棋連盟を呑んでしまったというのは凄く残念だし、ファイナルのファイナル、今日の対局で最悪の形で出たかなっていうのは思ってます。これ以上勝負として成り立たないのであれば別に続ける必要はないかなと思ってますし。どうするんですかね、これから。これ以上コンピュータの制限って難しいと思うんですよ。一番残念だったのは、巨瀬さんは一番プロの棋力向上に役立ちたいという思いが一番強かったと思いますし、それがこういう結果で、裏切られた感じになってしまって誰も得しなかったかなって思います。
56:29 (ドワンゴ会長川上氏)まず、興行として貸し出しありにしたわけではありません。これは異種格闘技戦ですから、人間とコンピュータが戦うこと事態がそもそもおかしいんですよね。もともとフェアな戦いっていうのは存在しないんです。平岡さんがおっしゃるフェアというのは、それこそ見せかけのフェアです。人間とコンピュータの戦いにあって、そもそも比べるのがおかしいのであって。
57:58 (西海枝氏)棋士の方の対応能力というか、嵌手でなくてもクセを見抜かれて、やっつけられちゃうんじゃないかというのを非常に警戒していたんですね。
59:18 (やねうら王)私は実は貸し出しルール賛成派なんですね。貸し出しでどれだけのハンデなのかというのをはっきりさせておきたいんですけど、プロ棋士の先生が本気で穴を狙うんなら、これはもう大駒1枚くらいのハンデ、レーティングでいうと500くらいのハンデだと思っています。それはランダム性を入れて回避しないといけないので、APERYとかランダム性入れるためにちょっと弱くなっていましたし。対策しなかったらそのまま飛車を詰まされたり角を詰まされたり、そういうリスクもありますんで。それをちゃんと回避しようとおもったら大駒一枚くらいの代償は支払わないといけないのかなというのは実感としてありまして。事前貸し出しありなら、私がプロ棋士くらいの棋力があるなら100%勝てます。これはもう5局とも100%勝てます。ていうくらいのハンデかなと私は思ってます。なんでわたし事前貸し出し賛成派なのかというとですね、たとえば将棋WARSでバックエンドでPONANZAとかが戦っているわけですけど、あのPONANZAが毎回同じ棋譜で負けるとこれ将棋WARSとしていいのかという話になっちゃうと思うんですね。人間と末永く対局して遊んでもらうための将棋ソフトというものを考えたときに、対策されない、弱くてもいいんだけどおんなじ負け方はしないというのは一つのテーマかなと思ってまして。そういう意味では事前貸し出しの中で開発者が工夫してみるというのは結構有意義な研究課題かなと認識しているんで、事前貸し出しに関しては実は賛成だったんですということです。
1:01:34 (山本氏)Ponanza強いんで何でも大丈夫です。
1:01:47 (巨瀬氏)棋力向上に役立てていただけるのなら貸し出しはあっていいと思います。ただ、今日の将棋の内容からはそれを見せるような感じには思えなかったんで残念です。

1:02:30(ヒーローズ株式会社)コンピュータ将棋というのはどの程度人口知能なのか?コンピュータ将棋を強くするのに培われてきた人工知能の技術をもっと汎用にしてどのような応用ができるのか?
1:03:20 (Apery開発者 平岡拓也氏)将棋ソフトは将棋に特化しているし、なかなか他に応用とかは難しいかなというのが私の感覚です。これに知性を感じるという人にとっては人工知能だし、単に探索して評価しているだけだと思う人は電卓の延長線上みたいなものかなとも思いますし。私自身、これが知能かどうかと考えたことはあまりないですね。
1:09:15 (Selene開発者 西海枝昌彦氏)プロ棋士の棋譜を利用して学習している段階だとですね、過去のプロの全ての棋譜の平均値をとってすばやく探索して出力するツールみたいな感じが開発しているとするので、人工知能的な感じが私はあんまりしてないんですね。いつかはこれが人工知能ですと、プロ棋士の棋譜を使わずにですね、編み出したんですというようなものを作りたいなあとは個人的には思っています。
1:05:05 (やねうら王開発者 磯崎元洋(やねうらお)氏)私がとあるコンサル案件でやっているのは、結局問題が組合わせ最適化とか非線形の最適化に帰着しちゃって、それを将棋プログラムの探索の処理で解決するみたいな処理もあったりするんで。
1:06:05 (Ponanza開発者 山本一成氏)コンピュータ将棋は応用が難しいです。将棋を指すことに特化していて、他のことは全く何もできません。専門性と汎用性というのは両立し難いというのが本当のところです。人工知能が社会に与えるインパクトという意味では、将棋プログラムは未来を行っているかなとは強く思います。人工知能が人間に追いつき追い越そうとしていることに、社会がどう反応するかといったことについては汎用性があるテーマかなと思っています。
1:07:25(AWAKE開発者 巨瀬亮一氏)今コンピュータ将棋に使われている技術が人工知能の発展に役立つとは全く思っていなくて、ただ私自身も、そのうち人工知能を作りたいという思いがありまして。その土台となるのはあると思います。

参考

  1. AWAKEに勝って100万円企画にゴールドラッシュ到来!(やねうら王 2015年3月1日):”ソフトにわざと角を打たせるわけですね。この角は詰んでるのですが、なかなか死なないし、成れるのでソフト側は自分が良しだと判断してしまい、短い考慮時間では28角を打ってくるというわけです。私見ですが、この局面に誘導されたときに28角を打つソフトは結構あると思います。”
  2. 将棋電王戦、ソフト側が突然投了 棋士側、初の団体勝利 (朝日新聞DIGITAL 2015年4月11日)
  3. 「将棋電王戦」最終局はソフト側21手で電撃投了、3勝2敗でプロ棋士が勝ち越し (マイナビニュース2015/04/11):”AWAKEは「将棋電王戦FINAL」出場に先立って、アマチュアと対戦する企画に出場していたが、その際本局と同じ展開から敗れており、第5局でも同じ形を阿久津八段が採用するかどうか注目が集まっていた。”
  4. 電王戦最終局、異例の「21手投了」に至ったAWAKEの真意は 「一番悪い手を引き出して勝っても意味ない」 (ねとらぼ 2015年04月11日)”WAKEは以前、「電王『AWAKE』に勝てたら100万円!」という企画でアマチュアと対戦した際、「自陣にあえて隙を作ることで、AWAKE側に持ち駒の角を打たせて捕獲してしまうことができる」という、ある種の「ハメ手」が見つかっていました。今回、阿久津八段もこの打ち方を採用し、序盤にAWAKEの角を獲得。この直後、AWAKE開発者・巨瀬亮一さんが投了を宣言し、AWAKE側の負けが決まりました。”
  5. 2月28日(土)、3月1日(日) 電王AWAKE(ノートPC)に勝てたら100万円! (ニコニコ動画)
  6. 電王AWAKEに勝利し100万円ゲットした山口直哉さんの必勝法。△2八角を打たせる (将棋ワンストップ・ニュース):”2015年2月28日にニコニコ生放送で中継された「電王AWAKE(ノートPC)に勝てたら100万円」(1日目)ですが、1日目にして電王AWAKEが敗れる事態が発生しました。..先手は自陣の2八の地点への利きをなくして、後手から2八角を打たせるように誘導。後手AWAKEはまんまとその罠にはまり2八に角を打ってきました。..数手先までは広く読むが、ある手数を超えた先の手は考慮しないというコンピュータの読みのアルゴリズムが影響していると思われます。”
  7. HEROZ JAPAN AI x mobile:事業内容 人工知能(AI)などの技術によるストラテジーゲーム及びスマートフォンアプリなどのモバイルサービスの企画・開発・運営

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