Category Archives: 動画で学ぶ生命現象

樹状細胞の食作用と抗原提示【動画で実感する生命現象】

抗原提示細胞 (Antigen Presenting Cells; APCs)としてはB細胞、マクロファージ、樹状細胞の3種類がありますが、最も強い抗原提示能力を持つのが樹状細胞です。樹状細胞は名前の通り樹状の形態をしています。

Dendritic cell -樹状細胞-

樹状細胞の貪食作用

下の動画で赤く標識された細胞が、メラノーマ細胞(がん細胞)で無標識の細胞が樹状細胞。
Dendritic cell and melanoma tumour cell interaction</small

 

未熟樹状細胞の移動と成熟

抗原を取り込む能力を持った末梢組織の樹状細胞を未熟樹状細胞、リンパ節に移動し、B7分子を発現してT細胞を活性化する能力を獲得するとともに抗原を取り込む能力を失った樹状細胞を成熟樹状細胞と呼ぶ。また、リンパ節に入ると樹状細胞はケモカイン CCL18を分泌してT細胞を誘引するとともに、接着分子 DC-SIGNによりT細胞と強く結合するようになる。(樹状細胞 ウィキペディア)

下は、上記の未熟樹状細胞が抗原を取り込んでリンパ節に移動して成熟樹状細胞になるまでを説明したアニメーション動画。

9 2 Dendritic Cell Migration
 

もうひとつ、樹状細胞の移動とリンパ節での成熟を説明した動画。
T cell Immunity: dendritic cells and naive t cells

 

樹状細胞とT細胞の相互作用

下の短いムービーでは、リンパ節において多数の樹状細胞(緑色に標識)と多数のT細胞(赤色に標識)とが動き回っている様子が示されています。

Naive T cells in lymph node with dendritic cells

下の動画は実験的な条件下での樹状細胞とリンパ球との相互作用の様子。

Lymphocytes interacting with dendritic cells

下の動画は樹状細胞に接触して活性化したT細胞の細胞内カルシウム濃度が上昇した様子(Ca上昇は緑色に見える)。結局、このT細胞はこの樹状細胞には興味がなかったようで、細胞内カルシウムイオン濃度も低下し、樹状細胞から離れていきました。

T cell activation
 

Imaging of the cross-presenting dendritic cell subsets in the skin-draining lymph node

下の動画は抗原をまぶした磁気ビーズ(抗原提示細胞を模したもの)と相互作用するT細胞。
Unique Time-lapse Video of Dynabeads Activating T-Cells (Thermo Fisher Scientific 2018/01/26)

 

樹状細胞とT細胞の間に形成された免疫シナプス

下の動画では緑色と赤色のどっちが樹状細胞でどっちがT細胞なのか説明がないのでわかりませんが、両者が”免疫シナプス”を形成して合体している映像。

T cell-dendritic cell immunological synapse
 

 

プロフェッショナルな抗原提示細胞である樹状細胞

体内のほとんど全ての有核細胞はMHCクラスI分子を持っているので、自己の細胞内の抗原をMHCクラスI分子を介してCD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)に抗原提示を行いうるが、抗原提示細胞はMHCクラスI以外にMHCクラスII分子を持っており、これを介して外来抗原をCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)に提示することができる。広義の抗原提示細胞は前者を含むこともあるが、通常は後者、つまりMHCクラスII分子およびT細胞活性化に必要な分子を持ち、CD4陽性T細胞に抗原を提示し活性化することのできる細胞を指す。後者の中でも特に抗原提示に特化した細胞は、「プロフェッショナルな」抗原提示細胞と呼ばれることもある。(抗原提示細胞 ウィキペディア)

Ira Mellman (Genentech) Part 2: Antigen Presentation and Dendritic Cells

 

参考

  1. NHK高校講座 生物基礎 第26回 適応免疫 (1) ~細胞性免疫~
  2. 第5回 活性化されたT細胞の機能的亜群とその運命(JBスクウェア)
  3. Antigen-Presenting Cells (Macrophages, Dendritic Cells and B-Cells) (YOUTUBE 9:09)
  4. 核内受容体を標的とした Th17細胞制御と自己免疫疾患(PDF)
  5. 第14~15回T細胞を介する免疫系(PDF)
  6. In Vivo Approaches Reveal a Key Role for DCs in CD4+ T Cell Activation and Parasite Clearance during the Acute Phase of Experimental Blood-Stage Malaria. Henrique Borges da Silva et al (2015) (YOUTUBE Supplymentary movie)

その他の論文

  1. Dendritic cell and antigen dispersal landscapes regulate T cell immunit. Published August 28, 2017 JEM (Rockefeller University Press)
  2. Controlling T-Cell Activation with Synthetic Dendritic Cells Using the Multivalency Effect. ACS Omega. 2017 Mar 31; 2(3): 937–945. PMC5377267  
  3. Restricted Clonal Expression of IL-2 By Naive T Cells Reflects Differential Dynamic Interactions with Dendritic Cells. Vincent Hurez, Arman Saparov, Albert Tousson, Michael J. Fuller, Takekazu Kubo, James Oliver, Benjamin T. Weaver, Casey T. Weaver. Journal of Experimental Medicine. 7 July, 2003;198 (1): 123

好中球やマクロファージが病原体を貪食する様子【動画で学ぶ生命現象】

私たちの体を外敵から守る働きである「免疫」は、自然免疫と獲得免疫の2種類に分けて考えられます。

免疫とは「病気(疫)から免れるためのしくみ」です。」 (PDF)

病原体が体内に侵入してきたときに、それらを問答無用で食べて殺してくれる頼もしい細胞を、私たちは生まれながらにして持っています。このような外敵駆除システムが「自然免疫」。その主役は、貪食作用を持つ細胞である好中球およびマクロファージです。

下の動画では、血液の中に含まれる細胞を顕微鏡で観察したもので赤血球と白血球の種類が解説されています。白血球の一種である好中球についての説明は2:49~からで、6:01~から説明がある単球(monocytes)は、血流から出た行先の組織の中でマクロファージへと分化する細胞です。

What blood looks like down the microscope

病原体を食べて殺してくれる細胞の一つが、白血球の一種である好中球(Neutrophils)。人間の体は、外界の病原菌に対するバリアとしてまずは皮膚(上皮)が体の内部を守るために存在しているわけですが、皮膚が傷つくと外界の病原菌が内部に入り込んでくるリスクが生じます。そのため、傷口には好中球が集まってきて傷口からの病原菌の侵入を防ぎます。

下の動画では、実験的に組織を傷付けたときに(画面中央部)、好中球(赤色に標識された小さな細胞)が多数集まってきて塊を形成する様子を示しています。その後、マクロファージ(緑色に標識された細胞)も集まってきます。

Neutrophil Swarm

 

以下、生体内での現象を直接見ているわけではないですが、実験的な条件下で、好中球やマクロファージが細菌を食べる様子を示した動画を紹介します。

好中球の貪食作用

下の実験の映像では、好中球(neutrophil )が細菌(bacteria)を執拗に追い回して貪食している様子が捉えられています。
Neutrophil Phagocytosis – White Blood Cell Eats Staphylococcus Aureus Bacteria

なぜ好中球が最近を追いかけまわすことができるのかというと、細菌に特有の化学物質を認識しているからです。実験により、微小なガラス管のに好中球が認識する化学物質を入れておくと、ガラス管の先を好中球が追いかけることから、それが確かめられます。

Neutrophil Chemotaxis

下のムービーは、ヒトの好中球がMRSA(methicillin‐resistant Staphylococcus aureus;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を食べる瞬間を捉えた映像。

Phagocytosis of MRSA by a human neutrophil

 

マクロファージの貪食作用

下の動画は、マクロファージが細菌の塊を文字通り貪り食う驚愕の映像。

Bacterial phagocytosis by macrophage -マクロファージによる細菌の貪食

 

参考

  1. NHK高校講座生物基礎 第25回 免疫のシステム
  2. 貪食細胞[phagocytic cell](ニュートリー株式会社)貪食作用は異物を処理する最も基本的な防御機構であり、貪食作用が生体防御機構であることを初めて提唱したのはロシア生まれの生物学者メチニコフである。貪食作用を示す細胞には、好中球、マクロファージ、樹状細胞などがある。
  3. Antigen-presenting cell (Wikipedia)