令和2(2020)年度科研費公募の変更点のお知らせがJSPSウェブサイトに掲載される

令和2(2020)年度科学研究費助成事業(科研費)の公募に係る制度改善等について」という文書が、2019年8月9日にJSPSウェブサイトに掲載されました。これを読むと、2020年度科研費(2019年9月1日公募開始)の変更点がわかります。

業績欄には業績を書く

平成31(2019)年度公募では、「研究業績」欄が「応募者の研究遂行能力及び研究環境」欄に変更されたため、どう書けばいいの?と多くの研究者に戸惑いを与えました。それを受けて、研究計画調書における研究業績の記載方法に関する、より具体的な指示が今回付け加えられました。もともと「業績欄」だった「応募者の研究遂行能力及び研究環境」欄には、研究業績を書いていいという、当たり前のことの確認です。

1. 研究業績(論文、著書、産業財産権、招待講演等)は、網羅的に記載するのではなく、本研究計画の実行可能性を説明する上で、その根拠となる文献等の主要なものを適宜記載すること。

2.研究業績の記述に当たっては、当該研究業績を同定するに十分な情報を記載すること。例として、学術論文の場合は論文名、著者名、掲載誌名、巻号や頁等、発表年(西暦)、著書の場合はその書誌情報、など。

(太字強調は当サイト)

計画調書において引用文献を示すときに(だれそれ、XXXX年)のような曖昧な書き方をすると、どの論文を指すのかが同定できません。雑誌名まで書いても、同姓の人がいるのでやはり曖昧です。今回、頁数まで書くなどして「同定するに十分な情報を記載すること」という指示が加わったのは、どれくらい詳しく文献を書けばよいのか?というみんなの疑問を解消する、良い指示だと思います。

 

新学術領域の廃止とそれに代わる制度の創設

「新学術領域研究(研究領域提案型)」の新規の研究領域については、令和2(2020)年度は公募が行われないことになりました。新規の立ち上げはなくなりますが、継続の研究領域(平成29(2017)年度及び令和元(2019)年度採択領域)の公募は、今年も行われます。

新学術の廃止は大きな変化ですが、後継の制度として、「学術変革領域研究」が創設されます。これは、以前、すでに公表されていました。「学術変革領域研究」の公募開始時期は、令和2(2020)年1月以降を予定とのこと。

創設されるのは、助成金額や研究期間等に応じて、「学術変革領域研究(A)」と「学術変革領域研究(B)」の2つ。「学術変革領域研究(A)」は、新学術領域研究(研究領域提案型)の後継です。新たに設けられる「学術変革領域研究(B)」は、より挑戦的かつ萌芽的な研究に小規模・少人数で短期的に取り組み、将来の「学術変革領域研究(A)」への展開が期待されるものとされています。

「学術変革領域研究」の重複制限

○「学術変革領域研究(A)」の重複制限は、従来の「新学術領域研究(研究領域提案型)」における重複制限と同様。
○「学術変革領域研究(B)」の重複制限は、従来の「新学術領域研究(研究領域提案型)」における重複制限を基本としつつ、研究種目の趣旨等を踏まえ、区分(A)と比較して次のとおり重複制限を緩和。

【重複応募・受給を認めるもの】
・「学術変革領域研究(B)」の領域代表者と「基盤研究(S)」の研究代表者
・「学術変革領域研究(B)」の領域代表者及び計画研究代表者と「挑戦的研究(開拓)」の研究代表者
・「学術変革領域研究(B)」の領域代表者と「特別推進研究」の研究分担者

 

さらなる若手研究者優遇政策

若手優遇の傾向が、今回の制度変更にも見られます。若手研究者の挑戦機会の拡大のために重複制限の緩和が行われるとのこと。

「若手研究(2回目)(※)」と「基盤研究(S・A・B)」との重複応募制限の緩和

(※)令和2(2020)年度公募においては、「若手研究(1回目)」を受給中で本年度が研究計画の最終年度の者、又は過去(平成30(2018)年度以前)に1度「若手研究」を受給し終わった者のうち、「若手研究」の応募資格を満たす者が応募する「若手研究」。なお、「若手研究」には、「若手研究(S・A・B)」を含む。

(注)「若手研究(2回目)」と「基盤研究(S・A・B)」との重複受給はできません(両方採択された場合は「基盤研究(S・A・B)」を優先。)。

 

研究活動スタート支援の重複受給制限緩和

・令和元(2019)年度以前に「研究活動スタート支援」に採択され、令和2(2020)年度も当該研究課題が継続する者が、令和2(2020)年度公募において基盤研究等に応募し採択された場合、重複して受給が可能です。

 

重複制限の緩和

他にも、一部の重複制限が緩められました。

・従来、「基盤研究(B)」と「挑戦的研究」との重複応募については、「挑戦的研究(萌芽)」のみが認められていたところ、令和2(2020)年度公募からは「挑戦的研究(開拓)」との重複応募、重複受給も可能です。
・あわせて、「挑戦的研究(開拓)」については、令和2(2020)年度から基金化することを予定しています。

 

参考