必須不飽和脂肪酸DHA (Docosahexaenoic acid ドコサヘキサエン酸)とは何か

   




DHAとは

DHAはDocosahexaenoic acid(ドコサヘキサエン酸)の略で、マグロや、イワシ、サバなど青魚に多く含まれる必須不飽和脂肪酸の一種です。DHAを多く含むものは、血液をサラサラにする食べ物とか、脳の働きを良くする食べ物などの触れ込みでも有名ですね。人間は自分で合成できない「必須」不飽和脂肪酸のためこれらの魚を食べたり、サプリなどで摂取することが必要になります。

DHAは血栓を予防したり脳の働きを良くしたりするなどの科学的な知見が蓄積していることから、DHAサプリは、血液サラサラサプリ、脳サプリなどの謳い文句で人気です。

  1. 魚に含まれる栄養素 (ktgyokyo.jf-net.ne.jp)
  2. 青魚の種類を一覧で!
  3. 青魚(ウィキペディア)
  4. EPA and DHA explained  Puori 2018/06/29 (YOUTUBE 2:34)

 

DHAの構造

ドコサは22という意味で、DHAは、炭素が22個鎖状につながった構造をしています。ヘキサは6という意味で、DHAには不飽和結合が6個含まれています。化学式(示性式)で書けば CH3CH2(CH=CHCH2)6CH2COOH です。ちなみにDHAと共に名前が上がるものにEPA(エイコサペンタエン酸)があります。EPAはeicosapentaenoic acidの略で、炭素数が20(エイコサ)、不飽和結合が5個(ペンタ)含まれています。示性式は、CH3CH2(CH=CHCH2)5(CH2)2COOHで、EPAはDHAより鎖が短いだけで同じような構造をしています。

不飽和結合(二重結合)の場所が、鎖の末端のメチル基から数えて3つめ(ω‐3の位置と呼ばれる)にあるものはω‐3脂肪酸、あるいは単にω‐3(オメガスリー)と呼ばれます。DHAは、EPA、α-リノレン酸と並んで、代表的なω‐3脂肪酸のひとつです。α-リノレン酸は植物油に多く含まれており、示性式は、CH3CH2(CH=CHCH2)3(CH2)6COOHで、DHAやEPAに倣った呼称は、オクタデカトリエン酸(オクタデカ=18、トリ=3の意味)となります。

ω‐3と全く同じ意味ですが、n-3という呼称も使われています。

メチル基末端から三つ目の炭素に二重結合がある n-3 系脂肪酸である.ω-3系脂肪酸との表記もあるが,近年では n-3 系脂肪酸の表記が主流である.(技術用語解説 EPAとDHA 白井 展也 日本食品科学工学会誌 2013 年 60 巻 10 号 p. 614 J-Stage

  1. 倍数接頭辞 (nomenclator.la.coocan.jp)
  2. ドコサヘキサエン酸(ウィキペディア) 
  3. エイコサペンタエン酸(ウィキペディア)
  4. α‐リノレン酸(ウィキペディア)
  5. ω-3脂肪酸(ウィキペディア)
  6. 油のカタチとオメガの由来 脂肪酸の種類について ( j-oil.com)
  7. オメガ3のはたらき(マルタのえごま egoma-maruta.jp)

 

1日に必要なDHAの摂取量

  1. 1回に食べる目安量 (yonago-mc.hosp.go.jp)
  2. DHAを含む食材(マルハニチロ)意外とおすすめなのが缶詰

 

DHAの効果

血液サラサラ

  1. DHA・EPA (疑似科学とされるものの科学性評定サイト 明治大学科学コミュニケーション研究所)
  2. Omega-3 Dietary Supplements and theRisk of Cardiovascular Events:A Systematic Review  (Clin. Cardiol. 32, 7, 365–372 (2009) PDF
  3. From Inuit to implementation: omega-3 fatty acids come of age. O’Keefe JH Jr1, Harris WS. Mayo Clin Proc. 2000 Jun;75(6):607-14. ELSEVIER(本文は有料)This review summarizes the emerging evidence of the use of ω-3 fatty acids in the prevention of coronary heart disease.

肝臓の機能を高める

  1. A Metabolomic Analysis of Omega-3 Fatty Acid-Mediated Attenuation of Western Diet-Induced Nonalcoholic Steatohepatitis in LDLR-/- Mice. PLOS ONE 2013PUBLIC RELEASE: 

脳の働きを高める

Should Vegans Take DHA to Preserve Brain Function?

 

  1. Long-chain omega-3 fatty acids improve brain function and structure in older adults. Cerebral Cortex, Volume 24, Issue 11, November 2014, Pages 3059–3068, https://doi.org/10.1093/cercor/bht163
  2. Researchers discover how DHA omega-3 fatty acid reaches the brain DUKE-NUS MEDICAL SCHOOL PUBLIC RELEASE: 14-MAY-2014 eurekalert.org
  3. Benefits Of DHA For Your Brain (ProgradeNutrition 2012/11/15 YOUTUBE 3:02)

 

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DHAの作用と効能

なぜDHAは血液をサラサラにしたり神経の働きを良くしたりできるのでしょうか?もっと具体的にどのような作用に基づいてそのような効果が出ているのだろうと疑問に思いましたが、DHAの「柔軟性仮説」というものが提唱されているそうです。DHAは細胞を取り囲む膜、脂質二重膜の構成要素になっているわけですが、DHAが構造を柔軟に変化させることができる「柔らかい」分子であるため、膜の構成要素が変形するときの「隙間」をDHAが素早く構造変化させることにより埋めることができるのだそうです。

Antonny らは 2015 年網膜にあるロドプシンの構造変化と脂質との相互作用についてシミュレーションした結果を報告した 17)。それによると、網膜に入った光によってロドプシンの構造が大きく変化すると、それの周りにある DHA を含むリン脂質も大きく歪むがその歪みによって生じたスペース(ギャップ)を DHA の炭化水素鎖が埋めるように変化する。また膜の大きな曲率変化(Curvature)が起こると 18)、この場合も DHA がそこにあれば、生じたギャップを DHA の鎖が埋めるように変化して膜構造を安定化することができる。このように、DHA の構造が高度に柔軟であれば、膜の中に生じたギャップを補完するように DHAが適応的に変化できることが理解される。( <総説> DHA の構造的意味 吉田 敏 岐阜大学フェロー・名誉教授<総説> DHA の構造的意味 吉田 敏 岐阜大学フェロー・名誉教授脂質栄養学 第26巻,第 1 号(2017)PDF

 

DHAやEPHが中性脂肪を下げる効果について

It is well established that omega-3 fatty acids decrease serum levels of triglycerides, partly through reduced hepatic synthesis of very low-density lipoprotein and partly by boosting the degradation of fatty acids and accelerating triglyceride clearance from the plasma ().(Omega-3 Supplements and Cardiovascular Diseases Tanaffos. 2014; 13(1): 6–14. )

  1. 青魚に含まれるEPA・DHAには、中性脂肪値を下げる働きが!(ニッスイ)

 

生活習慣としてのDHA摂取の勧め

世界保健機関(WHO)の「食事、栄養及び慢性疾患予防」(報告書)

 

DHAとEPAのサプリ

⇒ DHAを含む機能性表示食品のリスト

 

DHAやEPAの副作用

  1. サプリ過剰摂取は「死亡率」を引き上げていた 青魚の栄養素もサプリだと、ほぼ効果なし(岡田 正彦 : 新潟大学名誉教授、医学博士 2015/11/26 7:00 東洋経済Online)

 

DHAサプリは効果がないという報告

DHA, EPA、魚油を摂取することが体に良いという論文が多数ある一方で、それらに効果はないという大変ショッキングな論文報告もあります。DHAの効果がまるで万能であるかのごとく喧伝され、DHAサプリがバカ売れしているという状況で、DHAの効果の有り無しに関して、どちらを信じればよいのでしょうか?

increasing EPA and DHA has little or no effect on mortality or cardiovascular health (evidence mainly from supplement trials).(Omega-3 intake for cardiovascular disease 30 November 2018 cochrane.org)

  1. New research shows little effect of omega 3 on risk of heart disease, stroke or death PUBLIC RELEASE: 18-JUL-2018 The Cochrane researchers found that increasing long-chain omega 3 provides little if any benefit on most outcomes that they looked at. 
  2. DHAサプリメントの効果はないと結論!(YOUTUBE 4:35)
  3. Fish Oil Claims Not Supported (by Research BY ANAHAD O’CONNOR MARCH 30, 2015 5:06 PM March 30, 2015 5:06 pm New York Times)
  4. n–3 Fatty Acids in Patients with Multiple Cardiovascular Risk Factors May 9, 2013 N Engl J Med 2013; 368:1800-1808 DOI: 10.1056/NEJMoa1205409 (web)

However, this recommendation was challenged in a review and meta-analysis published by Hooper et al. in 2006. They concluded that there was no clear benefit of additional amount of omega-3 fatty acids on cardiovascular events. In addition, the three recently published double-blind trials—the Alpha Omega, the OMEGA, and the SU.FOL.OM3—did not show an effect of an additional amount of EPA–DHA on major cardiovascular endpoints. (Fish oil and omega-3 fatty acids in cardiovascular disease: do they really work? European Heart Journal (2012) 33, 436–443 PDF)

 

参考

  1. Omega-3 Fatty Acids — The Ultimate Beginner’s Guide (by Kris Gunnars, BSc on May 28, 2019 healthline.com)
  2. DHA (Docosahexaenoic Acid): A Detailed Review (healthline.com)
  3. Essential Fatty Acids (lpi.oregonstate.edu)
  4. 中性脂肪 (日本健康増進財団 恵比寿健診センター) 食事中の脂肪が腸で吸収され、血液中にとり入れられたもの(外因性トリグリセリド)と、いったん肝臓にとり込まれた脂肪が再び血液中に分泌された中性脂肪(内因性トリグリセリド、主に超低比重リポ蛋白;VLDLとして存在する)の両者から構成されています。検査は、通常空腹時に行うもので、後者を測ることになります。
  5. 中性脂肪 / triglyceride / TG / (e-ヘルスネット 厚生労働省)肉や魚・食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質。単に脂肪とも呼ばれる。 twitterでシェアする facebookでシェアする 中性脂肪は肉や魚・食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質です。単に脂肪とも呼ばれますが、脂肪酸が3本、グリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしており、中性を示すことからこの名で呼ばれています。
  6. 市販ツナ缶は有用な n-3 系脂肪酸源にはならない J. Lipid Nutr. Vol.26, No.2(2017)PDF

 - 食品化学