⇒ 2014年4月1日STAP細胞NATURE論文調査委員会最終報告で小保方氏のデータ捏造・改竄の研究不正を認定
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の研究ユニットリーダー小保方晴子博士(30)らは、非常に簡便な方法で体細胞を万能細胞に転換させることができることを発見し、それを報告する2つの論文が英国科学誌ネイチャーの今週号に掲載されました。
今回小保方晴子博士らが発表した方法は、「分離した体細胞を弱酸性の溶液に30分間浸すだけ」で多能性を持つ細胞が作れてしまったという画期的ものであり、iPS細胞作製では必須の遺伝子操作が全く不要になります。遺伝子操作により細胞に導入された外来性の遺伝子が将来予測のつかないような不都合な働きをしてしまうかもしれない、という不安を抱えなく済むのです。今回発表された方法があまりにも単純なため、これはアーチファクト(人工的な操作に由来する見かけ上の産物)ではないかと周りの研究者やネイチャーの査読者らに思われたようです。アーチファクトなどではなく、確かに体細胞が全能性を持つ細胞に変化したのだということみなに納得させるためには確固たる実験的証拠を積み上げる必要があり、論文掲載に至る道のりは非常に険しいものでした。
今回の発見は生物学的に大きな意義があるだけでなく、再生医療における応用面でも画期的な新規技術です。再生医療のための多能性細胞作製という目的を達成するための手段として現在主流なのが山中伸弥教授が開発したiPS細胞作製技術ですが、今後は小保方博士らが発見したこの簡便な「STAP細胞」作製法がそれに取って代わる可能性が大いにあります。生物学上の常識を覆しただけでなく、日本だけでなく世界の再生医療の研究のあり方を一変させてしまうほどのインパクトを持った大きな研究成果です。
iPS細胞を開発した山中伸弥京都大教授の話 「重要な研究成果が日本人研究者 によって発信されたことを誇りに思う。今後、人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞が作られることを期待している。マウスの血液細胞に強いストレスを 加えると多能性が誘導されることを示した興味深い研究であり、細胞の初期化を理解する上で重要な成果だ。医学応用の観点からは、iPS細胞のような細胞の 新しい樹立法ともとらえることができ、人間でも同様の方法で体細胞において多能性が誘導された場合、従来の方法とさまざまな観点から比較検討する必要があ る」(http://sankei.jp.msn.com/science/news/140129/scn14012921170001-n1.htm)
岡野栄之慶応義塾大学教授の話「クローン技術やiPS細胞に続く、細胞を初期化して多能性を持たせる技術として発展する可能性がある。遺伝子を導入せずに、血液の細胞を初期化した点が興味深い。」(http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2901R_Z20C14A1EA2000/)
英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのクリス・メイソン教授の話「また日本人が万能細胞の作製法を書き換えた。山中伸弥氏は4つの遺伝子で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ったが、STAP細胞は一時的に酸性溶液に浸して培養するだけ。どれだけ簡単になるんだ!」(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG3000P_Q4A130C1CR0000/)
小保方晴子博士の言葉(http://sankei.jp.msn.com/science/news/140129/scn14012921250003-n1.htm)
- 「誰も信じてくれなかったことが、何よりも大変だった。」
- 「周りの研究者からは『きっと間違いだ』と言われ、当時の実験データだけでは証明することができず、くやしくて、泣き明かした夜は数知れない。」
- 「お風呂のときもデートでも四六時中、研究のことを考えていた。」
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「(昨年春、ネイチャーに投稿した際)過去何百年の細胞生物学の歴史を愚弄していると酷評され、掲載を却下されました。」
- 「(実験室で白衣でなく祖母からもらったかっぽう着を着るのは)おばあちゃんに応援されているような気がするから。」
参考
- Obokata et al., Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 505, 641–647 (30 January 2014) doi:10.1038/nature12968
- Obokata et al. Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 505,676–680 (30 January 2014) doi:10.1038/nature12969
- Acid bath offers easy path to stem cells (David Cyranoski博士による解説記事 Nature誌 29 January 2014)
- 細胞外からの強いストレスが多能性幹細胞を生み出す(独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター 2014年1月30日)
- 小保方晴子研究室(理化学研究所神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター)
- 刺激だけで万能細胞―日本人研究者ら、マウスで簡単に作製 (ウォールストリートジャーナル 2014年 1月 30日 19:02 JST)
- 小保方晴子 ハーバード留学体験記 (実践的化学知NEWS ここがよかった!GCOE):私は博士課程の1年の夏から2年の冬までの間、アメリカのボストンにあるハーバード大学医学部に留学させていただきました。たった1年と数ヶ月の留学でしたが、人生何年分にもあたる刺激的な出会いの連続でした。
- 小保方晴子さんをリーダーとする研究チーム、STAP細胞開発に成功 2011年先進理工学研究科博士後期課程修了(早稲田大学ニュース&プレスリリース 2014/01/30):小保方さんは理工学部のAO入試の1期生として入学後、早稲田大学理工学研究科応用化学専攻に進学。学部在学時にはラクロス部に所属し文武両道を実践。博士課程では早稲田大学先進理工学研究科生命医科学専攻での研究を東京女子医科大学との医工融合研究教育拠点である先端生命医科学センター(TWIns)にて継続。博士課程1・2年次には早稲田大学グローバルCOEプログラム「実践的化学知」教育研究拠点の支援を得て、ハーバード大学へ留学。そこでの研究成果が今回の発表の礎となりました。
- 小保方晴子さんについて、当時の指導教員常田聡教授がご質問にお答えしました(USTREAM動画へのリンク)
- 早稲田大学常田聡研究室: 常田研究室は1996年4月に理工学部応用化学科内に誕生しました。その後,2007年4月の理工学部再編に伴い,理工学と医学分野との融合を図るミッ ションを持って,先進理工学部生命医科学科/大学院先進理工学研究科生命医科学専攻に移ることになり,新しく生まれ変わりました。また,2008年4月に は,東京女子医科大学の隣接地に新設された先端生命医科学センター(通称TWIns)に研究場所を移しました。