大学の研究室の形態:小講座制と大講座制の違い 教授退官後の新教授着任で起こること

教授が定年退官したあとで、下に残された准教授、講師、助教がどのような処遇を受けるかは、ケースバイケースだとは思いますが、その口座に残っている教員を新しく来た教授が追い出そうとしてトラブルになるという噂は、あまり珍しいことではなくて、自分も実際に聞いたことがあります。

新任教授が使えるラボスペースは限られているので、そこに、自分の研究とは無関係の教員が居座ってもらっては困るというのが新任教授の考えなのでしょう。また、新しく教授をリクルートする大学としても、できるだけ良い研究環境を新しい教授に与えて研究成果を挙げてもらう必要があるので、残ってしまった教員などのスタッフの処遇は悩ましいものがあると思います。残された教員は教員で、そもそも定年制の職に就いているわけですから、突然邪魔者扱いされて出ていけといわれても納得できないでしょう。

何が正解かわかりませんが、研究の世界ではどんなことが起こりえるのかを知っておくことは、これから研究の世界に身を投じる人間にとっては大事なことだと思います。大学によっても、当事者の人間の人柄や考え方によっても、そして、時代によってもいろいろなバリエーションがあります。

以下、ほぼ(AI による概要)です。

小講座制は教授をトップに、准教授、助教が上下関係をなす伝統的な研究室制度で、大講座制は学科全体を一つの大きな講座とみなし、教授と准教授がそれぞれ独立した研究室を運営する制度 です。

大講座制では、教員の増加や制度上の柔軟性向上を図る目的で1990年代以降に導入が進められましたが、制度の運用形態は大学によって異なり、中には旧来の小講座制の運営形態を維持している場合もあります。

小講座制とは?

構成: 教授を主宰者とし、准教授、助教といった教員が階層構造をなす。

特徴: 教授が研究室の運営を主導し、その指示・指導のもとで他の教員が研究を進める伝統的なスタイル。 メリット: 意思決定が速く、研究方針が明確になりやすい。

デメリット: 教授の権限が強く、研究の自由度が制限される可能性がある。

大講座制とは?

構成: 学科や研究センター全体を一つの大きな講座とみなし、その中に複数の教授・准教授の研究室が配置される。 特徴: 教授と准教授がそれぞれ独立した研究室を運営する。

メリット: 研究の多様化、教員の裁量拡大、民主的な運営の推進などが期待される。

デメリット: 研究室の立ち上げから運営まで、PI(研究主宰者)の負担が大きくなる場合がある。また、教員数減少により学生一人あたりの指導環境が悪化しているという指摘もある。

かつては「教授」「助教授」「助手」という階層でしたが、法改正により「助教授」は「准教授」と改称され、「教授を助ける」役割から「独立した研究者」という意味合いが強まりました。 制度の現実: 制度上は大講座制でも、実際には小講座制に近い形で運営されている場合も少なくありません。

小講座制における教授の退官に伴う「追い出し部屋」問題は、主に旧体制の継承者であるスタッフ(准教授など)が、新任教授や大学の方針によって研究環境を失うことを指します。以前の大学では、教授が研究室を主宰し、その教授が退官するまで研究室のメンバーの身分は安定していました(小講座制)。国立大学の法人化や、研究分野の変化に伴う大学の組織改革が進みました。これにより、講座制から分野横断的な研究組織へと移行する大学が増えています。組織再編により、定年退職した教授のポストが補充されず、別の教員公募に回されたり、ポストそのものが消滅したりするケースが増加しました。

「追い出し部屋」問題のメカニズム

  1. 教授の退官:小講座制の時代から続く研究室の教授が定年を迎えます。
  2. 新体制への移行:教授の退官後、研究室は解体されるか、別の教授が新たに主宰します。
  3. 旧スタッフの冷遇:新体制の方針により、旧体制に所属していた准教授や助教らが、研究室から事実上締め出される状況に追い込まれます。
  4. 研究環境の剥奪:具体的には、研究室スペースの縮小、研究費の削減、学生の配属停止といった措置が取られます。これにより、研究活動の継続が困難になります。
  5. 「追い出し部屋」:これらのスタッフは、窓際的な部署や、研究とは無縁の部屋に追いやられることから、「追い出し部屋」と呼ばれます。

最近の事例(北海道大学)

 

2024年に報じられた北海道大学の事例は、この問題の典型例として知られています。化学部門で教授が退職した後、残された複数の准教授が「旧スタッフ」として扱われ、研究室の環境悪化や学生指導の停止といった冷遇を受けました。准教授らは大学に抗議し、問題が報道されたことで、最終的に独立した研究室の設置と学生指導の再開が認められました。この問題は、単なるハラスメントではなく、旧体制と新体制の間の権力闘争、大学におけるポストの削減、終身雇用(テニュア)を持つスタッフの処遇といった、より複雑な構造が背景にあります。教員にとって、退官した教授のポストが維持される保証がないことが、こうした問題を引き起こす一因となっています。

  1. 「座敷牢のよう」記者に届いた訴え 北大「追い出し部屋」にみる悪弊 鳥井真平 毎日新聞 2025/7/24 11:00(最終更新 7/24 11:00) 有料記事
  2. 北海道大教員「追い出し」訴え 講座制の“純化”で歯止めかからず? 鳥井真平 毎日新聞 2024/6/21 06:30(最終更新 9/9 17:59) 有料記事