アマミホシゾラフグ ミステリーサークルをつくる不思議な魚が2015年度「新種トップ10」に選出

      2017/09/28

何年も前から奄美大島の海底でダイバーらによって目撃されていたミステリーサークル。誰が一体何の目的でこのような不思議な幾何学模様を海底の砂場に作っていたのか、その謎が解けたのが2014年でした。ミステリーサークルをつくっていたのは、新種のフグ。このフグが「新種トップ10」に選ばれました。

「新種トップ10」は、米ニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所(State University of New York College of Environmental Science and Forestry (ESF))が毎年選び、分類学の父と呼ばれる植物学者リンネの誕生日5月23日に合わせて発表しているものです。

ESF: Top 10 New Species for 2015

Pufferfish: ‘Crop Circles’ under the Sea
Torquigener albomaculosus
Location: Japan

How it made the Top 10: Scientists recently solved a 20-year-old mystery under the sea and discovered a new fish. Intricate circles with geometric designs about six feet (2 meters) in diameter, found on the seafloor off the coast of Amami-Ōshima Island, were as weird and unexplained as crop circles. They turn out to be the work of a new species of pufferfish, Torquigener albomaculosus. Males construct these circles as spawning nests by swimming and wriggling in the seafloor sand. The nests, used only once, are made to attract females. The nests have double edges and radiating troughs in a spoke-like geometry. The design isn’t just for show. Scientists discovered the ridges and grooves of the circle serve to minimize ocean current at the center of the nest. This protects the eggs from the turbulent waters and possibly predators too. Yoji Okata, an underwater photographer, first observed the artistic behavior. Subsequently, a team of ichthyologists and a television crew carried out an expedition to record the phenomenon.

ESFによる説明を日本語に訳しておきます。

フグ:海底のミステリーサークル
Torquigener albomaculosus
場所:日本
トップ10に選ばれた理由:最近、科学者らは20年来の海底の謎を解き、新種の魚を発見しました。奄美大島の海岸沖の海底で発見された直径約2メートルの幾何学的なデザインをもった複雑なサークルは、ミステリーサークルと同様に奇妙で説明がつかないものでした。そのサークルは新種のフグTorquigener albomaculosusによって作られたものであることが明らかになりました。雄が、海底の砂場を体をよじらせて泳ぎながら、産卵用の巣としてこれらのサークルを構築します。その巣は、一度きりしか使われませんが、メスを誘い寄せるために作られるのです。その巣は、縁が2重になっていて、車輪のスポークのような幾何模様の放射状の溝があります。このデザインは単に見せるためだけではありません。科学者の発見によると、サークルにある畝と溝は巣の中心部分で潮の流れを最小にする効果があります。このことにより卵はかき乱すような水野流れや、おそらくは捕食者からも守られているのです。水中写真家の大方洋二氏が初めてこの芸術的な行動を観察しました。その後、魚類学者のチームとテレビクルーがこの現象を記録するための調査を行いました。

アマミホシゾラフグを紹介したBBCの番組。アマミホシゾラフグのオスがミステリーサークルを作るプロセスや、産卵行動が、美しい映像で紹介されています。

Japanese Pufferfish Masterpiece – BBC Life story David Attenborough (7分17秒)

Attracting attention is an essential part of winning a mate. The world’s oceans are filled with brilliant colours,…all designed to make their wearers conspicuous. Unfortunately this small, Japanese puffer fish is dull,…almost to the point of invisibility but to compensate,…he is probably nature’s greatest artist. To grab a female’s attention, he creates …something that almost defies belief. His only tools are his fins. In his head, a plan of mathematical perfection. He ploughs the sand, breaking it up into the finest of particles. These shells aren’t just rubbish to be removed,…he uses them to decorate the bridges of his construction. He can’t rest for more than a moment, but must work 24 hours…a day for a week, or the current will destroy his creation. A final tidy up and his masterpiece is complete. Nowhere else in nature does an animal construct something…as complex and perfect as this. If this doesn’t get him noticed, nothing will. Now it’s ready for inspection. A female, swollen with eggs. To make sure she gets the best view, he encourages her into the centre. Inspection over,…she withdraws to await the final stage of the process. By the next morning all the softest sand is now in the middle. The centre of the arena has been flattened. Right on cue here she is. This is what she wanted. It’s a perfect bed for her eggs. The male now grasps her cheek and then fertilises her miniscule eggs. And with a quick flick of his fins, he buries them. They carry on like this until she has finished laying. An hour of his rough affection leaves a love bite on her cheek. Finally, she leaves. He stays to fan the eggs until they hatch,…while his extraordinary work of art fades away around him. (転載元Transcript)

番組のシーンの概略。

0:23 色鮮やかな他の海の生き物たちに比べると、アマミホシゾラフグはとても地味で目立ちません。しかし、おそらく自然界でもっともすばらしい芸術家なのです。
0:38 オスはメスを惹きつけるために、ほとんど信じられないようなことをします。
0:54 彼が用いる道具は、ヒレだけ。
1:55 彼は休むことなく、1日24時間、1週間働かなければなりません。そうしないと、潮の流れが彼の創作物を壊してしまうことになるでしょう。
2:22 彼のマスターピースの完成
3:42 メスが登場し雄がつくった作品をチェック
4:16 メスは一度退場し、最終工程を待ちます。翌朝までには、一番やわらかい砂が真ん中に集められています。アリーナの真ん中の部分は平らにされています。
5:08 メスにとって完璧な産卵の場ができあがっています。オスはメスのほほを噛み、メスが産んだ卵に精子をかけ受精させます。
5:25 オスはひれをパタパタと動かして卵を埋めます。メスが卵を産み切るまでこれらの行動が繰り返されます。
6:38 メスは去り、オスは卵の世話をするために残ります。

参考

  1. ESF: Top 10 New Species for 2015 On the list: agile spider, North American dinosaur and fish that makes circles in the sand (ESF, State University of New York College of Environmental Science and Forestry 5/21/2015)
  2. Keiichi Matsuura. A new pufferfish of the genus Torquigener that builds “mystery circles” on sandy bottoms in the Ryukyu Islands, Japan (Actinopterygii: Tetraodontiformes: Tetraodontidae). Ichthyological Research January 2015, Volume 62, Issue 2, pp 207-212 Date: 06 Sep 2014
  3. 奄美大島の海底にミステリーサークルを作るフグ「アマミホシゾラフグ」が世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました (PDFリンク)(国立科学博物館 平成27年5月21日):”独立行政法人国立科学博物館(館長:林良博)の名誉研究員、松浦啓一が2014年に新種として発表した「アマミホシゾラフグTorquigener albomaculosus Matsuura, 2014」が、国際生物種探査研究所(ニューヨーク州立大学)の世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました。”
  4. あのフグがついに新種!(ブログ 水中写真家・大方洋二の魚って不思議! 2014/9/7):”奄美大島の海底で発見されたミステリーサークル。NHK「ダーウィンが来た!」で長期ロケを行い、放送後にインターネットで情報が流れたために海外のメディアから問い合わせが殺到。あの BBCも取材に訪れたほど。”
  5. SBI講座『ミステリーサークルの謎』:”2014年2月2日、瀬戸内町公民館で「大島海峡ミステリーサークルの謎」についての講演会が開催されました。講演会の様子やミステリーサークルが出現する奄美大島海峡について、マリンステイションのダイビングスタッフ伊藤がお伝えします。…講師の松浦啓一さんは水産学博士で魚類分類学のスペシャリスト。…このミステリーサークルは2007年に清水で伊藤が初めて発見して以来、正体は謎のまま。まさにミステリーだったのですが、2011年に水中写真家の大方洋二さんとともに、フグとサークルの関係を確認しました。なんと大方洋二さんは今から20年程前にも嘉鉄でサークルを見た事があったそうです。”
  6. アマミホシゾラフグ フグ科 学名 Torquigener albomaculosus 奄美大島・瀬戸内町の清水と嘉鉄海域で発見された海底ミステリーサークルの作者である。(せとうちなんでも探検隊 奄美大島の瀬戸内町文化遺産活用実行委員会のプロジェクト)
  7. See the top 10 new species of 2015 – in pictures (The Guardian 21 May 2015):”A cartwheeling spider and a dinosaur dubbed the ‘chicken from hell’ are among the 10 most amazing creatures chosen by scientists from over 18,000 species new to science in the last year. Find out more on the SUNY College of Environmental Science and Forestry website”
  8. アマミホシゾラフグ:巣作り名人、「新種トップ10」に (毎日新聞 2015年05月21日):”同研究所は生物多様性の保全などを目的に08年からトップ10を発表。今回は昨年新種とされた約1万8000種から選んだ。”
  9. ミステリーサークル描くフグ「世界の新種」に (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月22日):”鹿児島・奄美大島で海底に美しい「ミステリーサークル」を描くフグが、国際的な研究組織が選ぶ今年の「世界の新種トップ10」に入ったと、国立科学博物館が21日発表した。…同館の松浦啓一・名誉研究員(66)らが新種と確認し、昨年、星をちりばめたような模様から「アマミホシゾラフグ」と命名した。…調査に参加した水中写真家の大方洋二さん(73)は、「何十年も潜って一番驚いた発見」と喜んでいる。”
  10. NHK ミラクル・スピーシーズ ダーウィンが来た!:”新種TOP10とは?アメリカのニューヨーク州立大学・国際生物種探査研究所は、毎年5月23日、分類学の父で植物学者のカール・リンネの誕生日にあわせて、前年度に発見された18000種にも及ぶ新種の中からTOP10を選出し、発表しています。”
  11. 海底のミステリーサークルができるまで。
  12. NHK総合「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」 – 世紀の発見!海底のミステリーサークル – 放送日 2012年9月9日(日) 19:30~20:00 (gooテレビ番組):”シッポウフグの仲間がやって来た。フグは地面を掘ったり、海藻を抜きながらミステリーサークルをつくっていた。胸びれや尾びれなど、体全体を使って、発見から6日目にミステリーサークルができていた。さらにフグは、貝殻の欠片を集めて、丸くて真ん中に細かい砂があり、スジ模様や起伏などのある形を作っていた。”
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