1000億円を使って実現させる夢のある(?)実現が無理そうな(?)研究を助成するムーンショット制度のテーマが発表されていました。これは研究者の自主性やユニークなアイデアが尊重される科研費のようなボトムアップ型の助成とはことなり、国策として選定された研究領域を重点的に支援するトップダウン型の研究助成です。
研究領域の設定を間違うと、やる価値のない研究に莫大な研究費を投入してしまって、全てが無駄になります。また、研究領域を設定する段階ですでに採択されそうな研究者が決まっている場合には、研究費配分の公正さに疑問が付きます。
以前、公募された中から絞られたムーンショット研究課題の候補を紹介しましたが(記事)、最終的にはどのような研究テーマが設定されたのでしょうか?
世の中の反響(ツイート)とともに紹介します。
目次
- 1 ムーンショット目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
- 2 ムーンショット目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
- 3 ムーンショット目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
- 4 ムーンショット目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
- 5 ムーンショット目標5:2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
- 6 ムーンショット目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
- 7 ムーンショット説明会日程
- 8 参考
ムーンショット目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」
人がカラダから解放されるというのは、脳を直接ロボットにでもつなぐのかなと思いました。しかし、脳からも解放するというので、だとしたら人間から「意識」を吸い出してそれを、人工知能にコピーするのかな。そうすれば、クラウド上に自分の意識が存在して空間や時間の制約からも解放されたことになりそう。しかし、電気代がかかるので、エネルギーの制約からは逃れられない。
あるいは、人間死んだらカラダからも脳からも空間からも時間からも解放されるってことか。2050年までに人類が滅んで、死んだあと霊魂になっていれば、霊魂の集まりとしての社会は存続できそう。
SFなのかオカルトなのかわからない、全く見通しのない研究テーマに思えます。
内閣府「あと30年で人間が身体・脳・時間・空間から解放された社会を実現する」って、ムーンショットの意味を宗教団体のお題目と間違えてねーか?そもそもそんな所を目指したい国民いるのか?
目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現https://t.co/KS4hJJw6is
— CDB (@C4Dbeginner) February 8, 2020
ムーンショット目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」
がんのリスクとなる遺伝はすでに多数同定されていることを考えれば、超早期に疾患の予測を行うことは、かなり現実的。予防にまでつなげるのはチャレンジですが、この研究テーマが一番内容がわかりやすく、かつ、実現が可能そう。
内閣府が発表したムーンショット計画の中に「超早期の疾患の予測と予防」ってのがあるのだけど、脳梗塞や心筋梗塞のような生活習慣病であれば、既にかなりの精度で予測できているし、治療法も確立されている件。問題は簡単な治療すら拒否する患者さんなんだけどね。 pic.twitter.com/tCulAI0wuK
— Ghostface melOn@3.1東京マラソン (@Ghostface_melOn) February 7, 2020
ムーンショット目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」
自ら学習し行動するロボットに何をさせましょうか。自分の代わりに職場に出かけていって仕事をするロボットとか。自分の代わりに東大を受験して合格してくれるロボットとか?(関連記事)
ムーンショット目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
資源ごみはリサイクルしましょうという運動の徹底か。
ムーンショット目標5:2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
未利用の生物機能ってなんでしょう?遺伝子組み換え作物をもっと市場に流通させることとか。
ムーンショット目標決定のお知らせ
https://t.co/edjlJFQn0k
「目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」したら「超早期に疾患の予測・予防」も「地球環境再生に向けた持続可能な資源循環」も「地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業」も不要では— あおとり (@bluebird_kndk) February 6, 2020
確かに目標1を達成すれば、他の目標に取り組む必要が無さそう。こういう場合には、目標1を全力で達成させることが肝要かと。
ムーンショット目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現したところで、経済、産業安全保障を発展させるのは所詮、人間の役割であって、別にコンピュータが何かしてくれるわけではないでしょう。コンピュータを使う人間の精神が発展していなければ、どうしようもありません。
誤り耐性型汎用量子コンピュータが、というより量子コンピューター自体がわからなかったので検索。ここはすごくわかりやすかった。https://t.co/s4GyEG7p9D
— Hanaca🍮 (@mocaful) February 6, 2020
目標6だけ「誤り耐性型汎用量子コンピュータ」と微妙に対象絞ってるのはなんでなんでしょ。他の目標の粒度に合わせるなら「計算機」くらいが妥当なような。
/ ムーンショット目標決定のお知らせhttps://t.co/EYG6OMlGSO— Mitsuo Yoshida; AI bot (@ceekz) February 6, 2020
1000億円を月に向かって放り投げるのではなく、1000億円を使って、研究の種を地面にまけばよいのに、と個人的には思います。地に足の着いた研究でない限り、発展は見込めません。
ムーンショット説明会日程
何しろ1000億円ですから、多数の研究者からの応募が殺到することが予想されます。
ムーンショットの仕事はしたくないけどムーンショットのお金はほしい
— arune (@arunecos) February 8, 2020
とはいえ、ムーンショットで何を実現したいのか全く意味不明のテーマが多くて、いったいどんな研究課題なら採択されるのかが、わかりにくいです。
内閣府「ムーンショット目標決定のお知らせ」
2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
…
この連中バカかね?https://t.co/5qGpmyUqVI— こなみひでお (@konamih) February 5, 2020
トップダウン型の研究助成ですので、まずその趣旨を理解することが採択のカギを握ります。ムーンショット研究の趣旨説明のための説明会が全国で開催されますので、お出かけしてみてはいかがでしょうか?
<大阪会場> 2月26日(水)10:00~15:15 |
新大阪丸ビル別館 10F 10-1号室 (大阪府大阪市東淀川区東中島1-18-22) ▶構想ディレクター(PD)登壇予定: ムーンショット目標1,2,3,6 |
<東京会場 ①> 2月28日(金)10:00~15:15 |
科学技術振興機構 東京本部別館1階ホール(東京都千代田区五番町7 K’s五番町) ▶構想ディレクター(PD)登壇予定: ムーンショット目標1,2,3,6 |
<仙台会場> 3月4日(水)10:00~14:35 |
TKPガーデンシティ PREMIUM仙台東口10階 ホール10A(宮城県仙台市宮城野区榴岡3-4-1) ▷録画映像放映 【注1】構想ディレクター(PD)の登壇はありません。 |
<福岡会場> 3月9日(月)10:00~14:35 |
TKP博多駅前シティセンター8階 ホールA(福岡県福岡市博多区博多駅前3-2-1) ▷録画映像放映 【注1】構想ディレクター(PD)の登壇はありません。 |
<東京会場 ②> 4月1日(水)10:00~15:15 |
科学技術振興機構 東京本部別館1階ホール(東京都千代田区五番町7 K’s五番町) ▶構想ディレクター(PD)登壇予定: ムーンショット目標1,6 【注2】 ▷録画映像放映 |
要申し込みです。
→ 参加申し込みフォームのウェブページ(JST)
参考
- MOONSHOT ムーンショット型研究開発事業(JST) :JSTが管轄するムーンショット研究に関するウェブサイト