日本で唯一保険適用のブレストインプラント自主回収で、多数の乳房再建中の患者に影響

日本で健康保険が適用されるアイルランド製薬大手アラガン社のブレスト・インプラント『ナトレル410』に副作用の報告があったため自主回収されたことにより、乳房再建中の多数の患者に影響が出ているそうです。エキスパンダー挿入の手術をうけ、インプラントまたは自家組織への入れ替え待ちで、現時点でエキスパンダーが入っている状態となっている患者数が、アンケートに回答のあった414施設で3,493名にも上るとのこと。

 

乳房再建を待つ患者数

乳がん手術後の再建に使われる人工乳房が副作用の報告で自主回収になった影響で、再建前に使う拡張器を体内に入れたまま治療の中断を迫られている患者が3千人以上に上るとの調査結果を、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が21日までにまとめた。… 再建前に皮膚を伸ばす拡張器を挿入する治療を受けている患者は3493人いた。(乳房再建中断、3千人超 自主回収の影響、学会調査 2019/9/21(土) 19:51 共同通信 YAHOO!JAPAN コメント494件

拡張器(エキスパンダー)と、シリコンの乳房ではまるで違います。エキスパンダーは皮膚を伸ばすために入れるので、パツパツの固さになるまで水を入れて膨らませるので硬いです。裏側は水を入れる注射針が貫通しないよう鉄板が入っています。個人的な感想ですが、エキスパンダーで確かに胸は膨らむけれど、胸という感じがあまりしません。シリコンに入れ換えてやっと「胸」という感覚になります。柔らかさもあります。(YAHOOコメント

  1. 乳房再建中断、3000人超 自主回収の影響 学会調査 (2019.9.21 20:23 産経新聞)自主回収されたのは、アイルランド製薬大手アラガンの「ゲル充填人工乳房」。
  2. 乳房インプラント関連4学会、人工乳房メーカー自主回収を受け患者向け文書更新版を公表 (2019.8.22 Aging Style

 

回答施設: 414 件 調査結果:

Q1. 貴院においてエキスパンダー挿入の手術をうけ、現時点でエキスパンダーが入っている状態 (インプラントや自家組織への入れ替え待ち)となっている患者数をお教えください。 3,493 名

(2019 年 8 月 20 日 緊急調査結果報告 一般社団法人日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 理事⻑ 朝⼾ 裕貴 PDF

 

アラガン社の製品の自主回収に関して

現在わが国で、健康保険を用いたブレスト・インプラントによる乳房再建の手術では、アラガン社ティッシュエキスパンダーインプラントのみが認可されています。2019 年 7 月 24 日、米国の厚生労働省にあたる FDA の指導のもとこれらの製品の全世界での自主回収が決定されました。これに伴い、日本でも流通が停止され、使用ができなくなりました。その理由として、近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-ALCL))という疾患が知られてきたことがあります。 …

現時点では、日本国内で健康保険で扱うことができるブレスト・インプラントは存在しません。

(2019 年 8 月 2 日 乳房再建用ティッシュエキスパンダーの手術を受け ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を待機されている方へ 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 日本形成外科学会 日本乳癌学会 日本美容外科学会(JSAPS)PDF)

  1. Allergan Recalls Natrelle Biocell Textured Breast Implants Due to Risk of BIA-ALCL Cancer (Content current as of: 09/12/2019 FDA)
  2. 製薬アラガン、人工乳房をリコール 安全性に懸念 (2019/7/25 7:36 日本経済新聞)
  3. The FDA Requests Allergan Voluntarily Recall Natrelle BIOCELL Textured Breast Implants and Tissue Expanders from the Market to Protect Patients: FDA Safety Communication (Content current as of:

ブレスト・インプラント関連 未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-ALCL))について

近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として、ブレスト・インプラント関連 未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-ALCL))という疾患が知られてきています。 この疾患はインプラントが挿入されている方のうち約 3800-30000 人に1人に発生すると され、T細胞性のリンパ腫と呼ばれるもので、乳がんとは異なる悪性腫瘍です。 海外からの報告では、インプラントを入れてから平均 9 年ほどで発生し、8 割の患者さん ではインプラント周囲に液体がたまり、大きく腫れてくることではじまるとされています。 ほとんどが表面の性状がザラザラテクスチャードタイプといいます)のインプラントを使 用した症例で発生しています。現在わが国の健康保険で許可され、乳房再建を目的として流 通している唯一のインプラントである、アラガン社のナトレル410テクスチャードタイ プに該当します。 日本では今年に入り 1 例の報告がありました。

(引用元:2019 年 6 月 ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房手術を受けた(受ける)方へ 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 日本形成外科学会 日本乳癌学会 日本美容外科学会(JSAPS)PDF

  1. 人工乳房で血液がん発症の衝撃 (榎木英介 2019/6/10(月) 17:51 YAHOO!JAPAN)
  2. ゲル人工乳房でリンパ腫 国内初、厚労省が注意 (2019/6/8 8:58 日本経済新聞
  3. 主流の豊胸バッグに発がん性 仏当局、メーカーに禁止を通達 (年4月4日 22時38分 AFPBB News ライブドアニュース

 

アラガン社のゲル充填人工乳房「ナトレル410ブレスト・インプラント」

ナトレル 410 ブレスト・インプラントはアナトミカル型(しずく型)の人工乳房で、固さの異なる2種類のゲルを採用している。表面の加工は、組織との結合性を高め、皮膜内でのインプラントの移動抑制、皮膜収縮のリスクを軽減するために凹凸をつけたテクスチャードタイプ

厚生労働省中央社会保険医療協議会は2013年6月12日、乳房再建術に使用するラウンド型インプラントの保険適用を承認し、7月1日から適用が開始。次いで11月29日、アナトミカル型インプラントの保険適用も承認され、2014年1月8日からその適用が開始された。

(アラガン・ジャパン 保険適用となるアナトミカル型ゲル充填人工乳房を発売 読了時間:約 1分13秒 2014年01月22日 PM01:12 医療NEWS)

  1. アラガン 新しい型のゲル充填人工乳房で承認取得 しずく形で (2013/10/18 03:51 ミクスonline)
  2. ゲル充填人工乳房「ナトレル® 410(フォーテン) ブレスト・インプラント」乳がんによる乳房切除後の乳房再建で保険適用 (アラガン・ジャパン2013年12月2日 14時02分 PRTIMES

 

乳房再建手術について

人工物(シリコンインプラント)による再建と自家組織(腹直筋皮弁、腹部穿通枝皮弁や広背筋皮弁法など)による再建の二つがあります。… インプラントによる再建はティッシュエキスパンダー(皮膚拡張期)を挿入する手順が一般的です。

  1. 乳癌手術後(同時(1次)もしくは乳腺手術半年後以降(2次))にティッシュエキスパンダーを挿入する。
  2. 外来でエキスパンダーに2-4週おきに生理食塩水を注入する。
  3. 皮膚とその周辺組織が十分に伸びたら(術後6-24ヶ月の間)、同じ傷跡から切開しエキスパンダーとインプラントを入れ替える。

(引用元:乳房再建「新しい乳房を手に入れるために」 日本医科大学武蔵小杉病院

  1. 乳房再建手術について(順天堂大学医学部付属順天堂医院 形成外科)
  2. 乳房再建術について(国立がんセンター 東病院)
  3. 乳房再建法の比較 (YANAGA CLINIC) 2019年7月25日インプラントの製造メーカーであるアラガン社から、テクスチャードインプラントの製造を中止し、世界的にテクスチャードインプラントを回収する知らせがきました。 また、インプラントが新しいスムースタイプインプラントに変わるとの知らせが来ました。新しいインプラントは10月18日以降に販売開始されるとのことです。

 

参考

  1. 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会