平成30年(2018)度小学校・中学校「学力テスト」の結果と各都道府県の順位

平成30年度(2018年度)全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果が公表されました。
 

 
競争心を煽る目的はないはずですが、地方新聞(地方版)の記事の見出しや、一部の知事の反応を見ると、煽られている感がありありです。

文部科学省が31日に公表した全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果は例年同様、基礎的な知識を問うA問題と応用力をみるB問題で平均正答率に大きな差が出た。今年度から小中学校で先行実施されている新学習指導要領には、B問題に反映される「思考力・判断力・表現力」の育成が盛り込まれ2020年度の大学入試改革でも同じ要素を重視する方針が決まっている。(全国学力テスト 小中、応用力なお課題 正答率「基礎」と大差 指導法は未確立 毎日新聞 2018年8月1日)

国立教育政策研究所は2018年7月31日、2018年度(平成30年度)全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。都道府県別にみると、小中学校ともに秋田県と石川県、福井県の好成績が目立った。(【全国学力テスト】H30年度、小中ともに秋田・石川・福井が好成績 ReseMom リセマム 2018.8.1 Wed 17:15)

 

学力テストの歴史

全国学力テストとは、小学6年・中学3年を対象にした「全国学力・学習状況調査」のことです。2007年度から全員参加式のテストとして始まり、民主党政権下で3割抽出方式に変更されましたが、2013年には4年ぶりに全員参加式に戻っています。(「全国学力テスト」成績公表、何が問題になってるの? THE PAGE 2013.10.31 12:08)

 

学力テストの問題点

テストというのは学力がついたかどうかを測定する目的で存在するのですが、それがひっくりかえって、テストで良い点を得るために勉強することが目的だと勘違いする子供が出てきます。テストを受ける子供だけでなく、テストを受けさせる大人までもが、そのような考え方に染まってしまうのが問題です。

競争心を煽られた地方自治体が、学校教育の本来の目的を忘れて学力テストで良い点を取るための「教育」に走った例がいくつもあります。今回も学力テストの結果が芳しくなかった大阪市の市長が学力テストの結果を個々の学校の先生の評価に反映させると宣言し、歴史が既に証明している愚行を大阪で再現しようとしています。

もう一度年代を整理すると、まず日本自身が1960年代に失敗していました。そして、イギリスが1980年代後半から1990年代にかけて失敗しました。そして、足立区が2000年代に失敗しました。そして、また大阪市が同じことを繰り返そうとしているのです。その結果は目に見えていると言わざるをえません。(大阪市長「学力テスト発言」が危険である根拠 日本は過去何度も同じ失敗を繰り返してきた 親野 智可等 : 教育評論家  東洋経済ONLINE 2018/08/15 6:00 )

上の記事では、学力テストの結果で個々の学校や先生を評価したとき起きた、教師による不正行為や、教育の荒廃の事例が紹介されています。

  1. 学力テスト対策のための徹底的なテスト練習
  2. 学力テスト対策のせいで本来の授業時間が減り授業が理解できない子供が増加
  3. 図工、体育、音楽、技術・家庭などの授業を削りテスト練習の時間を補充
  4. 休み時間や放課後もテスト勉強を強制
  5. テスト練習のための大量の宿題プリント
  6. 成績下位の子はテスト当日に欠席させたり保健室で休ませてテストは受けさせない
  7. テスト中に校長や教師が机の間を回って正しい選択肢を教える
  8. 教師が欠席した児童・生徒にかわって高得点の答案を作成し提出
  9. 成績上位の子と下位の子を隣同士で座らせ、下位の子にはカンニングをさせる
  10. 障害のある児童の答案をテストの集計から除外
  11. テスト前に過去問を繰り返し解かせて練習

驚くべきことに、これらのことは学力テストの歴史において繰り返し生じており、日本だけでなくイギリスの学力テストでも全く同様のことが起きています。

いくつかの自治体において本来の趣旨を逸脱し学力向上のために行き過ぎた取組が行われてきたことです。例えば、子どもたちに競争意識をあおるようなプリントを配付している自治体もあれば、学力調査の過去問をドリル練習のように解かせたりする地域もあります。さらにこれまで、成果を上げている学校長の名前を公表したり、果ては、公立高等学校の入試選抜の資料として子ども一人一人の結果を使う地域もありました。つまり、国の学力調査のねらいに反して、過度な競争意識から、学校での取組や子どもたちの意識をゆがめるような事例が後を絶ちません。(「学力調査10年 成果と課題」(視点・論点)NHK 解説委員室 2016年10月04日)

点数を上げることに血道を上げて、授業改善ではなく、他の授業時間をつぶして、過去問だけを解かしたりすることは本末転倒でしょう。 (全国学力テスト10年 成果と課題とは? BLOGOS 赤池 まさあき 2017年09月10日 16:06)

各教育委員会は「全国の平均点より上に」などと学校と教師をあおり、自治体独自の学力テストも広がりました。学校現場は子どもたちに過去の問題や類似問題を繰り返しやらせるなどの「学力テスト対策」に追われ、「本来やるべき授業ができない」など深刻な問題が起きています。(広がる点数競争の矛盾と弊害 しんぶん 赤旗 2018年4月16日)

学校教育現場にテスト成績重視の風潮、過度の競争をもたらし、教師の自由で創造的な教育活動を妨げ、文部科学大臣の教育に対する「不当な支配」(教育基本法16条1項)に該当する違法の疑いが強い。 (全国学力調査に関する意見書 日 本 弁 護 士 連 合 会 2008年2月15日)

 

学力テストの今後

ところで全国学力調査では、毎年出題される2教科についてはA・Bの両問題が課されてきました。… そうした新学習指導要領の趣旨を踏まえた指導の改善・充実に今から乗り出すため、知識と活用を一体的に問う形で調査を行うことにしたのです。なお、2018年度は3年ごとに行われる理科も実施されますが、こちらは12年度当初から知識と活用が一体で出題されています。(全国学力調査、なぜ来年はA・B問題を統合? ベネッセ教育情報サイト 渡辺敦司  2018/03/26)

 

北海道
青森県
岩手県
宮城県

8日開かれた県教委の定例会では、4月に行われた全国一斉学力テストの結果が報告されました。今回の学力テストでは全国の順位が初めて公表されましたが、仙台市を除いた宮城県内の小学生の平均正答率は全ての教科で全国最下位となりました。(小学生の学力向上へ 成功自治体に学ぶ TBC東北放送 2018/8/8(水) 19:54配信 最終更新:8/8(水) 21:11 )

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で宮城県の成績が低迷する中、大河原町は2017年度の小学校算数A、Bの平均正答率(A85%、B51%)が、全国トップレベルの秋田県(A84%、B50%)を上回った。町独自の学力テストを軸にした学習計画づくりが奏功し、県全体の水準を底上げするモデルとして注目を集める。 (<学力テスト>低迷する宮城県…その中で全国トップレベルの大河原町の小学生指導法とは? 県教委も注目 河北新報 2018年03月29日木曜日)

  1. 平成30年度全国学力・学習状況調査の宮城県の調査結果報告(速報)がまとまりました。宮城県 掲載日:2018年7月31日更新)

秋田県

文部科学省は31日、小学6年と中学3年の全員を対象に、4月に実施した2018年度全国学力テストの結果を公表した。3年ぶりに行った理科では、実験結果の分析や得られた知見について説明するなどの活用力に課題があった。国語、算数・数学も知識活用型問題が苦手な点は改善しなかった。 (全国学力テスト、地域差縮まる 秋田は11回連続トップ級 秋田魁新報 電子版 2018年7月31日)

山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県

中学校は国語、数学、理科の全3教科で全国平均を上回った一方、小学校は国語と理科はほぼ全国平均で、算数は下回った。 (中学 全国平均上回る 小学は算数伸びず 学力テスト 上毛新聞 2018/08/01)

埼玉県

  1. 全国学力・学習状況調査 結果概要 文部科学省が実施している「全国学力・学習状況調査」における、埼玉県の結果の概要について掲載しています。なお、本調査により測定できるのは学力の特定の一部分や学校における教育活動の一側面です。(埼玉県 掲載日:2018年7月31日)

千葉県

文部科学省が31日公表した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)の結果で、県内の平均正答率は小中学校ともに全国平均とほぼ同水準ながら、例年同様に算数・数学が比較的低い数値となった。 (全国学力テスト 算数・数学の低調続く 理科は中学で低下傾向 /千葉 毎日新聞 会員限定有料記事 毎日新聞2018年8月1日 地方版)

東京都
神奈川県

文部科学省が31日に公表した今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、神奈川県内では横浜、川崎両市の正答率が、多くの教科で全国平均を上回ったことがわかった。一方で、相模原市を含むこのほかの自治体ではほとんどの教科で全国平均を下回っており、地域間の学力格差が浮き彫りとなった。 (川崎・横浜「算数A」政令市1位、相模原最下位  YOMIURI ONLINE 2018年08月01日 17時47分)

  1. 平成30年度全国学力・学習状況調査における本県の状況 (神奈川県 2018年8月1日)

新潟県
富山県
石川県

文部科学省は31日、小学6年と中学3年の全員を対象として4月に実施した2018年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。都道府県別の平均正答率でみると、石川は全10科目のうち全国最多の5科目で1位で、その他も全て2位に入る過去最高の結果だった。小6は5科目中4科目で1位、中3は初めて理科で1位となり、全国トップクラスの学力を堅持した。(石川、最多5科目1位 全国学力テスト 北國新聞 2018/08/01 01:56)

福井県

文部科学省は7月31日、小学6年と中学3年の全員を対象に4月に行った2018年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。公立校の平均正答率を都道府県別にみると、福井県は中3の数学A、Bと理科が1位だった。国語Aは2位、国語Bは3位。小6は国語A2位、国語B6位、算数A4位、算数Bと理科が3位だった。10科目中6科目で順位を下げたが県教育委員会は「11年連続で全国トップクラスを維持できた」としている。 (学力テスト、福井県「上位維持」 中3数学A、Bと理科が1位 福井新聞 FUKUI SHIMBUN ONLINE 2018年8月1日 午前7時10分)

山梨県
長野県

長野県の平均正答率は、整数値での比較で、小6の算数A(62%)と算数B(50%)、中3の数学A(65%)と数学B(46%)がいずれも全国平均を1、2ポイント下回った。県内は算数・数学が全国平均を下回る傾向が続いており、県教委は「算数・数学重点対策チーム(仮称)」を近く内部に設ける予定。「授業改善に早急に取り組む」としている。(学力テスト算数・数学 県内低調傾向 県教委、近く対策チーム  信毎web 長野県のニュース 2018年8月1日)

岐阜県
静岡県

静岡県公立中3は全5種類のテストで全国の平均正答率を上回った。小6は知識の活用力を見る国語Bで全国を上回ったものの、そのほかの4種類のテストでは届かなかった。 中3が全種類のテストで全国を上回ったのは、テストが始まった07年度から11回連続(11年度は未実施)。今回は全国の平均正答率を1・5~2・2ポイント上回り、いずれも都道府県別の1桁順位を含む上位の好結果だった。 文科省は競争をあおらないようにするためとして17年度から平均正答率の小数点以下を四捨五入し、整数値(静岡県教委は小数第1位まで)で公表しているため、順位は確定できない。(静岡県 中3、学力テスト全5種で全国上回る 小6は4種届かず @S 静岡新聞 SBS 2018/8/1 07:45)

愛知県
三重県
滋賀県

全国学力テスト」の結果、5年連続、すべての科目で平均以下となってしまった滋賀県。県議会は9日、県に対して学力向上により一層の取り組みを求める決議を可決しました。(学力テストの結果受け 県議会が決議/滋賀 BBC びわ湖放送 / YAHOO!JAPANニュース 2018/8/9(木) 22:28配信)

京都府

京都府教育委員会は28日、2017年度の全国学力テストについて、府内の公立小中学校や特別支援学校の結果を公表した。平均正答率は小学6年、中学3年とも国語と算数(数学)の全てで全国平均を0・6~2・1ポイント上回り、全国順位は小6が前年度の11位から9位に、中3は前年度の17位から13位に上がった。質問紙調査では、児童生徒の主体性や社会への関心、課題解決型の授業実践などに課題が見られた。(京都府、順位アップ 全国学力テスト結果公表 京都新聞 2017年08月28日 22時00分 )

大阪府

テスト結果の向上だけを求めるゆがんだ学校になるんじゃなかと危惧している。吉村市長に方針を即刻撤回するよう要求する」大阪市教育委員会に対し抗議文を手渡したのは現役教師やOBらです。(学テ結果を「給与に反映」吉村市長発言に現役教師やOBが「即刻撤回」を求め抗議文 YAHOO!JAPAN ニュース 8カンテレ2018/8/7(火) 20:03配信)

林芳正文部科学相は3日の閣議後記者会見で、大阪市長が全国学力テストの結果を教員の給与に反映させる方針を示したことについて「大阪市には、調査の趣旨や目的を踏まえてほしい」と述べ、慎重な対応を求めた。(大阪市の学テ給与反映方針に「慎重対応を」と文科相 産経WEST 2018.8.3 11:54)

大阪市の吉村洋文市長は2日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績が政令市で最下位だった結果を受け、市として学テの数値目標を設定し、達成状況に応じて教員の手当を増減させる人事評価の導入を検討すると発表した。学テの結果を教員の評価に反映させた前例はなく、公正な人事評価を定めた地方公務員法に抵触する恐れもあり、学校現場の反発も予想される。(大阪市 学テ成績結果で教員の人事評価 手当増減を検討 毎日新聞 2018年8月2日 23時43分 最終更新 8月3日 01時50分)

兵庫県
奈良県
和歌山県

本年度の学力テストの成績では、5教科のうち「数学A」以外の4教科が全国平均に届かなかった。この4教科は2007年度の開始以来、一度も全国平均を上回っておらず、記述問題の正答率の低さは構造的なものと考えられる。その原因はどこにあるのか。 ヒントの一つがアンケート結果にある。「授業以外に平日、1日当たり何時間読書しているか」との問いに、40・8%が「全くしない」と答えたことだ。大阪43・0%、奈良42・1%に次ぐ数字で、全国平均の32・9%と比べ7・9ポイントもの差がある。 一方で、読書習慣のない生徒が一番少ない秋田県は19・6%。その秋田県が毎年、学力テストでトップを競っていることと合わせて考えると、読書習慣と学力の相関関係がうかがえるのではないか。(読書離れと中学生 読み書きが全ての出発点 紀伊民報 2018年8月7日更新)

鳥取県
島根県
岡山県

岡山県教委が独自に集計した同県内公立校の都道府県順位(国語、数学・算数)は、小学6年が31位(前年度19位)、中学3年が40位(同34位)だった。改善傾向だった前年度から一転、小中とも大きく順位を下げ、県政中期行動計画(2017~20年度)で「10位以内」としている目標には遠く及ばなかった。 (全国学テで岡山県の中3は40位 小6は31位、大きくダウン 山陽新聞 さんデジ digital 2018年07月31日 23時22分 更新)

広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県

県教委は31日、4月に小学6年生と中学3年生を対象に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の県内結果を公表した。県内の小6は算数の正答率が8位で、国語を合わせた全体の結果は16位(前年15位)だった。中3は全体が43位(同45位)で過去最高だったが、依然として下位が続いている。(全国学力テスト 小学算数、正答率8位 中学、全体43位下位続く /高知 毎日新聞 2018年8月1日 地方版 )

福岡県

県教委は31日、文部科学省が4月に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。小学校は全国平均を上回って調査開始以来最高。中学校は前年に続いて改善がみられたが地区格差があり、県全体の底上げの必要性が改めて浮き彫りとなった。 (全国学力テスト 県平均、小6「全国」上回る 中3は地区格差、改善必要 /福岡 会員限定有料記事 毎日新聞2018年8月1日 地方版)

佐賀県
長崎県
熊本県
大分県

九州7県では、大分が小学4科目、中学1科目で全国平均を上回った。熊本は小学の2科目、佐賀も小学の1科目で平均を上回った。中学では大分を除く6県が全科目で全国平均に及ばなかった。(学テ底上げ続く 九州の中学、大分除き平均未満 西日本新聞 2018年08月01日06時00分 更新 08月01日 06時47分)

宮崎県
鹿児島県
沖縄県

 

参考

  1. 全国学力テストはなぜ悪問だと言えるのか? (福嶋隆史 2017.03.25)
  2. 全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等) 全国的な学力調査の今後の改善方策について「論点の整理」(文部科学省 平成28年6月15日 全国的な学力調査に関する専門家会議)
  3. 誰のための「学力テスト」? “大阪のニンジン”vs“沖縄の汗”から学ぶべきこと。(YAHOO!JAPANニュース 河合薫 | 健康社会学者 2016/10/4(火) 13:00)
  4. 教委にケンカを売った川勝・静岡県知事 (前屋毅 YAHOO!JAPANニュース 2013/10/25(金) 13:51)

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