2016年ノーベル医学生理学賞はオートファジー(自食作用)の分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏が単独受賞
2016年10月3日11:30(スウェーデン現地時間)(日本時間は同日18:30)に、2016年のノーベル医学生理学賞がオートファジーの分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏に授与されることが発表されました。
細胞が自分で自分のタンパク質を分解してしまう「オートファジー」と呼ばれる現象がどのような仕組みで生じるのかは長年の謎でしたが、大隅良典氏はまずオートファジーという現象が酵母においても存在することを示し、次に酵母を用いた遺伝学を駆使することでオートファジーに関与する多数の遺伝子を一気に同定し、その後はそれらの遺伝子産物がどのように協同してオートファジーを生じるのか、その分子メカニズムを明らかにしてきました。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が東工大で会見(2016年10月3日) THE PAGE
(大隅氏の言葉 3:25~)
… ノーベル賞、わたしは少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は全くわたしの意識の外にありました。わたしは自分の私的な興味に基いて、生命の基本単位である細胞がいかに動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年、いくつかの問いをしてまいりました。わたしは人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。1988年、今から27年半ほど前に、液胞が実際に細胞の中での分解に果たす役割というものに興味を持ちまして、そういう研究を東大の教養学部の私自身たった一人の研究室に移ったときに始める機会になり、それ以降28年にわたってオートファジーという研究に携わってまいりました。
オートファジーという言葉は耳慣れない言葉かと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると自分自身のタンパク質を分解を始めます。その現象を私は光学顕微鏡で捉えることができたということが、私の研究の出発点になりました。
馬場美鈴さんと電子顕微鏡でその過程を解析することで実はそれがそれまで動物細胞で知られていたオートファジーという現象と全く同一の過程だということがわかりました。
酵母は遺伝学的な解析というのにとっても優れた生物なので早速私たちはオートファジーに必須の遺伝子を探すことを始めました。幸い、これも大学院生としてJOINした塚田美樹さんという人の努力で、割りに短時間の間でたくさんのオートファジーに必須の遺伝子をとることができました。それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象の基本的な分子装置であるということがその後のわたしたちの解析でわかることになりました。
幸いこれらの遺伝子は酵母のみならず人とか植物細胞にも広く保存されているということがわかりました。こうしてオートファジーの遺伝子が同定されたということで、これまでのオートファジーの研究は、質が大きく転換をすることになりました。その後はさまざまな細胞で、オートファジーがどのような機能をしているかということが世界じゅうのたくさんの研究者で解析をされて今日に至っております。
私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。酵母の研究がですね、そのような基礎的な研究が、今日のオートファジーの大きなきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っております。
もちろん現代生物学は一人でやりおおせるものではありません。わたしもこの間、27年間わたしの研究室で研究にたゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、それからスタッフの方々の努力の賜物だと思っております。
それから、酵母から動物細胞のオートファジーへと展開してくれました、水島昇、吉森保、両氏がいま現在動物細胞におけるオートファジーの、世界を牽引している二人とも、私は今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。
今後、オートファジーって言う、タンパク質の分解っていうのは細胞の持っているものすごく基本的な性質なので、今後益々いろいろな現象に関わってくるということが明らかになってくれるということを、私も期待をしております。
ひとつだけ強調しておきたいことは、私がこの研究を始めたときに、オートファジーが必ずがんにつながるとか、人間の寿命の問題につながるということを確信して始めたわけではありません。基礎的な研究っていうのがそういう風に展開してくもんだっていうことを是非理解をしていただければと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思います。
これまで私の研究の場を与えていただきました東京大学教養学部、理学部、基礎生物学研究所、それから東京工業大学には厚く御礼申し上げます。(-10:09)
…
東京大学教養学部生物学教室(現 生物部会)で初めて独立してラボを持った頃の2つの論文が、その後の全ての研究の流れを作り出しています。まず、遺伝学的手法が使える酵母においてもオートファジー現象が存在することを見出したのが原点です。
当時、液胞の内部で、何をどのように分解しているのかについては全くの謎だった。大隅は、まずは液胞内で起こっていることを何とか顕微鏡で観察できないかと考えた。そして、あるとき、1つのアイデアが浮かんだ。酵母は栄養がなくなり飢餓状態に陥ると、細胞内部を作り変えて胞子を形成し、飢餓を乗り切る。仮に液胞が分解機能を持つとすれば、その機能が最も活発に働くのは、胞子を形成する飢餓状態のときなのではないだろうか。その状態で液胞内での分解機能を止めることができれば、何が分解されようとしているのかがわかるはずだ―。そこで、さっそく液胞内の分解酵素が欠損している酵母の変異体を取り寄せ、飢餓状態の液胞内で何が起こるかを電子顕微鏡で観察し始めた。…「数時間飢餓状態にした酵母を観察したところ、液胞内にたくさんの小さな粒々が蓄積して、それらが激しく動き回っているのが確認されました。その粒々は液胞の周囲の細胞質の成分の一部を膜構造が包み込み、それが液胞内に取り込まれて、ブラウン運動をしている様子だったのです。酵母にはタンパク質がほとんどなく粘性が低いため、ブラウン運動が起っていたのです。大変感動し、何時間もその様子を見続けましたね」と語る大隅。液胞のオートファジー機能の過程を世界で初めて肉眼で捉えた瞬間だった。(顕微鏡観察がすべての出発点 顔 東工大の研究者たち Vol.1 大隅良典)
そして、オートファジー研究の大きな潮流の源となったのは、大隅博士が修士課程の学生と二人で行った研究です。まさに宝の山を掘り起こした仕事でした。
大隅博士らは、まだ他にもオートファジーに必要な遺伝子があると考えた。しかし、五〇〇〇個の変異体を検査してオートファジーに異常があったのはわずかにapg1変異体だけである。そのまま続けていては途方もない仕事になる。ここで大隅博士らは巧妙な作戦を立てた。オートファジーができないと死にやすくなるという性質に注目したのである。いきなり顕微鏡で検査をするのではなく、まず飢餓で死にやすい細胞を選ぶことにした。…その結果、最終的にapg1を含めて十四種類のオートファジー不能変異体が同定された。この膨大で精緻な研究のほとんどは、大隅博士と当時修士大学院生であった塚田美鈴氏のわずか二名によって行われた。この記念すべき研究成果は一九九三年に「FEBS Letters」という雑誌に小さな論文として発表された。…しかし、この十四種類の変異体とそれにもとづく遺伝子の発見こそが、オートファジー研究の歴史を大きく変える事件だったのである。今ではこの論文はオートファジー研究史上最も価値ある論文のひとつとして世界中が認めている。(細胞が自分を食べるオートファジーの謎 水島昇 著 PHP研究所)
Key publications (Yoshinori Ohsumi The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2016)
- Takeshige, K., Baba, M., Tsuboi, S., Noda, T. and Ohsumi, Y. (1992). Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutants and conditions for its induction.Journal of Cell Biology 119, 301-311
- Tsukada, M. and Ohsumi, Y. (1993). Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cervisiae.FEBS Letters 333, 169-174
- Mizushima, N., Noda, T., Yoshimori, T., Tanaka, Y., Ishii, T., George, M.D., Klionsky, D.J., Ohsumi, M. and Ohsumi, Y. (1998). A protein conjugation system essential for autophagy.Nature 395, 395-398
- Ichimura, Y., Kirisako T., Takao, T., Satomi, Y., Shimonishi, Y., Ishihara, N., Mizushima, N., Tanida, I., Kominami, E., Ohsumi, M., Noda, T. and Ohsumi, Y. (2000). A ubiquitin-like system mediates protein lipidation.Nature, 408, 488-492
参考
研究内容
- Yoshinori Ohsumi The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2016 (Nobelprize.org Press Release 2016-10-03):”The Nobel Assembly at Karolinska Institute has today decided to award the 2016 Nobel Prize in Physiology or Medicine to Yoshinori Ohsumi for his discoveries of mechanisms for autophagy.”
- 顕微鏡観察がすべての出発点(顔 東工大の研究者たち Vol.1 大隅良典)
- オートファジーを長き眠りからめざめさせた酵母 (2012年9月19日 荒木保弘・大隅良典 東京工業大学フロンティア研究機構):”オートファジーは,タンパク質など細胞質成分のみならずオルガネラのような巨大な構造体を丸ごと分解する,真核生物に広く保存されたバルク分解系である.オートファジーの概念は最初に哺乳動物の系から提唱されたが,その分子実体が明らかになるのに40年もの年月を要した.このブレイクスルーは,もっともシンプルな真核生物のモデル系である出芽酵母によるものであった.ここでは,出芽酵母がどのようにオートファジー研究に飛躍をもたらしたかを,これまで筆者らが得たオートファジーの分子機構に関する知見を中心に解説する.”
- 酵母のオートファジー (馬場 美鈴, 大隅 良典 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 顕微鏡 Vol. 41 (2006) No. 2 P 73-76)
- 東京工業大学 大隅良典研究室ウェブサイト
- Yoshinori Ohsum. Historical landmarks of autophagy research. Cell Research (2014) 24:9–23. doi:10.1038/cr.2013.169; published online 24 December 2013
- Dr.Yoshinori Ohsumi speaks at Canada Gairdner Awardees Lecture
- THE 2012 KYOTO PRIZE COMMEMORATIVE LECTURE –Yoshinori Ohsumi
- 科研費について思うこと (大隅 良典 東京工業大学 フロンティア研究機構 特任教授 私と科研費 No.78(平成27年7月発行)):”私は、研究者は自分の研究が、いつも役に立つことを強く意識しなければいけない訳でもないと考えている。「人類の知的財産が増すことは、人類の未来の可能性を増す」と言う認識が広がることが大切だと思う。役に立つことをいつも性急に求められていると思うことで、若者がほとんど就職試験での模範回答のごとく、考えもなく“役に立つ研究をしたい”という言葉を口にする。直ぐに企業化できることが役に立つと同義語の様に扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは長い歴史によって初めて検証されるものだという認識が、研究者の側にも求められていると思う。”
報道
- Yoshinori Ohsumi of Japan Wins Nobel Prize for Study of ‘Self-Eating’ Cells (The New York Times OCT. 3, 2016, By GINA KOLATA and SEWELL CHAN):”… But his Ph.D. thesis was unimpressive, and he could not find a job. His adviser suggested a postdoctoral position at Rockefeller University in New York, where he was to study in vitro fertilization in mice.“I grew very frustrated,” he told the Journal of Cell Biology in 2012. He switched to studying the duplication of DNA in yeast. That work led him to a junior professor position at the University of Tokyo where he picked up a microscope and started peering at sacks in yeast where cell components are degraded — work that eventually brought him, at age 43, to the discoveries that the Nobel Assembly recognized on Monday….”
- <ノーベル賞受賞大隅教授>自他共に認める「へそ曲がり」 原点は故郷・福岡 (西日本新聞 10月3日(月)19時32分配信):”「競争するのは好きじゃないし、勝つ自信もない」。今年のノーベル医学生理学賞に決まった東京工業大栄誉教授、大隅良典さん(71)はそう語る。研究者らしからぬ発言だが、その真意は「人と違うことをやる」ということだ。…「たくさんの人がやっている領域は『俺が1番』と早さを競うしかない。でもそこに興味がない。誰も見たことがない現象を見るのが楽しいんです」。助手もいない中、独り顕微鏡と向き合った。それがオートファジー(自食作用)の発見につながった。”
- ノーベル医学生理学賞に大隅良典・東京工業大栄誉教授(朝日新聞DIGITAL 2016年10月3日21時38分):”大隅さんは1988年、単細胞の微生物である酵母の細胞で老廃物をため込む「液胞」という器官に注目し、世界で初めてオートファジーを光学顕微鏡で観察した。特殊な酵母を飢餓状態にすると、分解しようと細胞内のたんぱく質などが液胞に次々に運ばれていた。詳しい過程を電子顕微鏡でも記録し、92年に発表した。大隅さんはオートファジーに欠かせない遺伝子も15個発見した。これらの発見をきっかけに、世界中でオートファジー研究が広がり、ヒトやマウスなどの哺乳類、植物、昆虫などあらゆる生物に共通の生命現象であることがわかった。”
- ノーベル医学・生理学賞 東工大 大隅良典栄誉教授 (NHK NEWS WEB 10月3日 18時35分:”大隅さんは、酵母の細胞を使って、「オートファジー」の仕組みの解明に取り組み、平成5年にこの仕組みを制御している遺伝子を世界で初めて発見しました。その後も同様の遺伝子を次々と発見してそれぞれが果たしている機能を分析するなど、「オートファジー」の仕組みの全体像を解き明かしてきました。”
- ノーベル賞 医学生理学賞に大隅良典・東工大栄誉教授(毎日新聞2016年10月3日 18時35分(最終更新 10月3日 20時19分)):”大隅氏は生物が細胞内でたんぱく質を分解して再利用する「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる現象を分子レベルで解明。この働きに不可欠な遺伝子を酵母で特定し、生命活動を支える最も基本的な仕組みを明らかにした。近年、オートファジーがヒトのがんや老化の抑制にも関係していることが判明しており、疾患の原因解明や治療などの医学的な研究につなげた功績が高く評価された。 ”
- 【大隅良典さんノーベル医学・生理学賞受賞】受賞に妻「想像できないくらい驚いた」(産経ニュース2016.10.3 20:41更新):”萬里子さんは「(良典さんは)典型的な研究者で、研究が始まると、われを忘れてしまう。これから忙しくなると思うと、夫の体が心配」と気遣いを見せながらも、「皆さんのおかげで受賞できたので、いろんな人に感謝の気持ちでいっぱい」と語った。”
- 2016年ノーベル医学生理学賞、大隅良典氏-基礎科学の典型(1)(金善栄(キム・ソンヨン)ソウル大生命科学部教授 中央日報日本語版 2016年10月06日09時30分):”1945年生まれの大隅氏は、東京大で大腸菌を素材にたんぱく質の分解に関する過程を研究して博士を取得し、「職場を得るのが難しい」ため1974年末に米ロックフェラー大学のジェラルド・エーデルマン教授の研究室に行った。エーデルマン博士は抗体構造に関する研究で1972年にノーベル賞を受賞している。大隅氏が受けた最初のプロジェクトはマウスで体外受精を研究するというものだった。しかしこの研究に適応できなかった大隅氏は、1年半後に酵母のDNA複製を分析する課題に変更した。酵母はパンやビールを作る時に使われる単細胞真核生物だ。ここでも大隅氏は大きな成果を出せなかったが、一世一代の観察をすることになった。酵母の核を分離する過程で液胞を容易に集められることを知ったのだ。…1988年に43歳の年齢で助教授になり、大隅氏は初めて独立的に研究室を運営することになった。”
単独受賞に関して
- Medicine Nobel for research on how cells ‘eat themselves’ (nature.com Nature News 03 October 2016 Corrected:07 October 2016by Richard Van Noorden & Heidi Ledford):”Others have made key contributions to the field, and were considered to be contenders for a share of a Nobel. Biochemist Michael Thumm of the University Medical Center Göttingen in Germany, for example, also discovered autophagy genes, as did cell biologist Daniel Klionsky of the University of Michigan in Ann Arbor.“If they’re going to give it to just one, Ohsumi’s the one,” says Hall. “But it also would have been good to include other people.””
- Nobel honors discoveries on how cells eat themselves (Science News Oct. 3, 2016 , 6:00 AM By Science News Staff):””I think Ohsumi is the right person” to win the Nobel, says David Rubinsztein, who studies the role of autophagy in neurodegenerative diseases at the University of Cambridge Institute for Medical Research in the United Kingdom. “While there are many other people who have made important contributions to the field, he is justifiably considered the father of the field,” he says. “His lab was the first to identify yeast genes that regulate autophagy. Those discoveries have allowed us to then understand how autophagy is important in mammalian systems, because the yeast genes are very well conserved.” “Of course, this kind of research is not something only one person can do,” Ohsumi said today, thanking the graduate students, postdocs, and staff who “strove mightily” in his lab for 27 years. (Ohsumi is “a very modest man,” Haucke said at the Berlin meeting.) Some of the follow-up work on mammalian autophagy was done by people who trained in Ohsumi’s lab, such as Tamotsu Yoshimori at Osaka University in Japan and Noboru Mizushima at the University of Tokyo. Both have “really been influential,” Rubinsztein says.”
科学行政・研究環境に関する分析的な記事
- ぶっちぎりで単独受賞した大隅良典先生のノーベル賞受賞 (潮流 (No.79) 馬場錬成 2016.10.06 発明通信社)
- 2016年ノーベル生理学医学賞大隅良典栄誉教授の論文・特許および資金調達に係る予備的分析を実施しました (GRIPS 科学技術イノベーション政策研究センター (SciREX センター) 2016年10月05日)
- 韓経:「韓国の科学者、論文への執着を捨ててこそノーベル賞見える」(中央日報日本語版 2016年10月06日13時03分):”シェクマン教授は審査委員として活動したサムスン未来技術育成財団の基礎科学支援事業で、韓国の科学者の研究提案書を見て驚いたという。財団側はいかなる基準も提示していないにもかかわらず、多くの科学者が影響力の大きい主要学術誌に数件の論文を出すという内容を書いていたからだ。…シェクマン教授は成果主義文化の背後にサイエンスやセル、ネイチャーなど有名学術誌があると指摘した。シェクマン教授は「これら学術誌はほとんど興行のために論文を選択し、ジャーナルの影響力拡大に集中する」とし「今年ノーベル賞を受賞した大隅良典東京工業大教授が書いた論文さえもサイエンスやネイチャーに掲載されていない」と述べた。 “
- 再び日本がノーベル賞、「中国人は頭を冷やす必要がある」=中国報道 (ライブドアニュース/サーチナ 2016年10月5日 10時43分):”中国の国内総生産(GDP)は日本を上回ったが、中国はノーベル賞を受賞できるだけの研究や科学分野におけるイノベーションの点で日本に圧倒的に遅れを取っているのが現実であり、GDPで日本を超えたことでのぼせ上がっている中国人は頭を冷やす必要があると指摘した。さらに記事は、日本が多くのノーベル賞受賞者を輩出できる理由として、「日本の大学教授は評価のためだけに論文を書き、研究を行うわけではない」と指摘。中国のように功名心や野心が動機ではなく、あくまでも興味と好奇心が根底にあると指摘したほか、研究に打ち込むことのできる環境づくりも要因の1つだと指摘。”
- 紙幣を見て納得した! 日本がノーベル賞受賞者を輩出できる理由=中国メディア (Searchina 2016-10-10 08:39):”中国メディアの一点資訊は8日、大隅氏は自然科学分野でノーベル賞を受賞した22人目の日本人となったと伝え、この数字は英国やドイツ、ロシアを上回っていると紹介。さらに、日本がこれだけ多くのノーベル賞受賞者を輩出できた理由は「日本の紙幣」を見ればよく分かると伝えている。記事は、紙幣という「小さい」存在から、日本が「ノーベル賞大国」である理由が見て取れると伝え、日本の紙幣には他国のように国王や政治家などの肖像は描かれていないと指摘。確かに中国は1元札から100元札まですべての紙幣が毛沢東だが、日本の場合は「思想家や科学者、作家、教育家が紙幣に採用されている」と紹介した。”
- <ノーベル賞>日本人の女性研究者が出ない理由(毎日新聞 10月9日(日)9時30分配信):”毎年、ノーベル賞の発表の時期、夫にはノーベル賞、妻には受賞者の妻の地位という栄誉がもたらされます。晴れの舞台である記者会見で喜びをわかちあう夫婦の姿は、感動的です。しかし、その背後には、妻の長年にわたる葛藤や、キャリアへの未練、そして「家族の神話」があったのではないでしょうか。”
インターネット上の声
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東工大の全教職員と学生は、出張証明書に出先において同席した学外者2名からサインを貰わないと出張経費の精算ができない。もし大隅先生がノーベル賞授賞式に公費で行くとなると、貴重なサインの入った書類が生成されるかもしれませんね。 https://t.co/cKZSVjsoDx
— てるてる (@IWKRterter) 2016年10月3日
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ノーベル賞の中継見てたけど、教授が必死に基礎研究の一見役に立たなさと研究予算の無さを主張してたのに、アナウンサーが「とても嬉しそうでしたね」の一言で纏めてたのが印象的だった
— 小泉八雲 (@abiko131) 2016年10月3日
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東工大正門。ノーベル賞とはこういうことなのか pic.twitter.com/NmSaGMDOe5
— RT (@smile_1001) 2016年10月3日
お祝いの言葉
- 大隅良典先生のノーベル生理学医学賞2016受賞に寄せて (2016/10/5 中野明彦 東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 ニュースアーカイブ ):”… 大隅さんは,1977年,3年間のロックフェラー大学留学を終えて帰国し,本生物科学専攻の前身の一つである植物学教室の生体制御研究室,安楽泰宏教授の研究室の助手に着任しました。…理学部2号館で酵母の液胞の研究を10年あまり続け,かつては細胞内のゴミ溜めとさえ呼ばれていたこのオルガネラが,活発な膜輸送を通じて細胞質の恒常性維持に重要な役割を果たしていることを示した大隅さんは,駒場で独立したのを契機に,また新しいことを始めようと考えました。その一つが,液胞が細胞内の分解を担っていることを示し,その分子機構に迫ろう,ということでした。大隅さんは,液胞のタンパク質分解酵素をほぼ完全に欠損した多重変異体を手に入れ,飢餓状態で何が起こるか,顕微鏡で観察しているうちに,液胞内に小さな顆粒がどんどん蓄積し,激しく動き回っていることを発見したのです。これが,歴史に刻まれるべき酵母オートファジーの発見です。大隅さんが興奮気味に2号館にやってきて,どう思う?って写真を見せてくれました。「何ですか!これは? すごくおもしろいじゃないですか!」と私もわくわくしたのを覚えています。
その後,馬場さんの美しい電顕写真の助けを得て,この仕事の第1報をJ. Cell Biol.に発表したこと(1992)。塚田さんという大学院生が,ただひたすら顕微鏡を覗き続けてこの現象が起こらない突然変異株apg1の単離に成功し,続いて続々と変異株が取れるようになって分子機構の解明の端緒になったこと。一方,クローニングしてもクローニングしても,取れてくるのは何ともホモロジーが見つからない全く未知の遺伝子ばかりで,ぼくほど運の悪い男はいない(大隅),とずっと愚痴っていた時代。基生研の教授になって,助教授に吉森君に来てもらって動物細胞のオートファジーの仕事も始めようと思うけど,どう思う?と相談されたこと(もちろん全面的に賛成)。どんどんメンバーが増え,活気が増していった中で,水島さんがAtg12を中心とするユビキチン様結合システムを発見して,また一気に国際的な注目を得たこと。等々… いずれも,身近なこととしてリアルタイムにその興奮を感じることができた私も幸せ者だったのだと思います。…” - 隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)(元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄):”… こうして関西医大から吉森保君がやってきます。また東大の教養学部からついてきた野田健司君、それに東京医科歯科大からきた水島昇君が加わって、大隅研の態勢ができあがりました。…”
- 大隅良典先生のノーベル生理学・医学賞受賞を祝して(所長メッセージ) (自然科学研究機構 基礎生物学研究所 所長 山本 正幸 2016年10月03日):”… しかし当初、基礎研究にありがちなことですが、周囲はお仕事に大きな関心を示さず、また現象に関係する遺伝子を捕まえてきても、それらの遺伝子がどんな働きをしているのか皆目分からないという時期が続きました。先生はこうした状況に屈することなく、ひたすらオートファジーの全体像の解明に立ち向かわれました。1996年に基礎生物学研究所に教授として着任され、お仕事が深まり、さらに広がりが増していきました。13年間の研究所在職中に、先例がないために配列だけを見ても働きが分からなかったオートファジーに関わる遺伝子の役割を次々と解明され、また酵母で見つかったものと同様のシステムが動物細胞でも働いていることを明らかにされました。オートファジーは細胞が正しく機能するために不可欠な仕組みとして今日多くの研究者が研究するところとなり、オートファジーの異常と様々な疾患との関係も見えてきました。先生の一貫した研究に対するご熱意とご努力にいくらかでもお応えできるよう研究環境を整え、有能な若手研究者たちとともに研究を大きく発展させるお手伝いができたことを、基礎生物学研究所は大きな誇りに思います。…”
- 大隅良典先生(本学および基礎生物学研究所の名誉教授)のノーベル生理学・医学賞受賞をお祝い申し上げます(学長メッセージ)(2016.10.04 総合研究大学院大学長 岡田 泰伸):”… 大隅先生は、1996年に基礎生物学研究所に教授として着任されると同時に、同年総合研究大学院大学の教授ともなられ、オートファジーのメカニズムに関するすばらしい研究展開をされると共に、13年近く大学院生の教育・指導にもあたってこられました。今回の受賞のKey Publicationの4論文のうちの1つは、総研大生2名が第一および第二著書となったものであり、総研大としても大きな誇りと感じております。 …”
- 大隅良典先生が2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞されることになりました 2016/10/03 東京大学大学院理学系研究科長・理学部長 福田裕穂:”大隅先生は、東京大学の教養学部を卒業後、理学系研究科相関理化学専門課程に進まれ、1974年に理学博士の学位を取得しました。その後、アメリカ合衆国ロックフェラー大学で研究を行い、1977年より1988年まで東京大学理学部生物学科の安楽泰宏先生の研究室で助手、講師を務められました。”
- 祝 ノーベル生理学・医学賞受賞 大隅良典先生 2016.10.04 東京大学大学院総合文化研究科長・教養学部長 小川 桂一郎:”大隅先生は、本学大学院を修了されたのち、米国ロックフェラー大学に留学され、帰国後は理学部の安楽泰宏教授研究室で講師として酵母の「液胞」をご研究されました。昭和63年(1988年)、教養学部の助教授として独立した研究室をスタートされ、駒場の大学院生とともにオートファジーの研究を始められました。ノーベル賞受賞理由として引用されている4報の重要論文のうちの2報は、本学教養学部生物学教室(現在は生物部会)での研究業績です。”
- 祝 ノーベル医学・生理学賞受賞 大隅良典先生 (東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 生命環境科学系・広域システム科学系・相関基礎科学系 2016年10月 6日 14:20):”本専攻の前身である相関理化学専攻にて博士号を取得され、また 1988年~1996年に教養学部生物学教室(現在は生物部会)で助教授として研究室を主宰されておりました大隅良典先生(現・東工大栄誉教授)がノーベル賞を受賞されました。今回の受賞対象の「オートファジー」の研究は、東大駒場キャンパス大隅研の時代に開始・発見されたものです。心より、お祝いを申し上げます。”
- 大隅良典先生のノーベル生理学・医学賞受賞にあたっての総長メッセージ [受賞/表彰] (広報室) 東京大学総長 五神 真 2016年10月03日:”… 大隅先生は、東京大学教養学部を卒業した後、理学系研究科に進学、博士取得後、理学部にて助手、講師、教養学部にて助教授として研究・教育に従事されました。…”
大隅良典博士略歴((東京工業大学 東工大ニュース 大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞決定 より)
1967(昭和42)年3月東京大学教養学部基礎科学科 卒業
1974(昭和49)年11月東京大学大学院理学系研究科 理学博士号取得
1974(昭和49)年12月米国ロックフェラー大学 研究員
1977(昭和52)年12月東京大学理学部 助手
1986(昭和61)年7月東京大学理学部 講師
1988(昭和63)年4月東京大学教養学部 助教授
1996(平成8)年4月岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 教授
2004(平成16)年4月大学共同利用機関法人自然研究機構基礎生物学研究所 教授
2009(平成21)年4月東京工業大学統合研究院 特任教授
2010(平成22)年4月東京工業大学フロンティア研究機構 特任教授
2014(平成26)年5月~東京工業大学 栄誉教授
2016(平成28)年4月~東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授
大隅良典博士受賞歴((東京工業大学 東工大ニュース 大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞決定 より)
2005(平成17)年藤原賞
2006(平成18)年日本学士院賞
2007(平成19)年日本植物学会学術賞
2008(平成20)年朝日賞
2012(平成24)年京都賞
2013(平成25)年トムソン・ロイター引用栄誉賞
2015(平成27)年ガードナー国際賞
2015(平成27)年国際生物学賞
2015(平成27)年慶應医学賞
2015(平成27)年文化功労者 顕彰
2016(平成28)年ローゼンスティール賞
2016(平成28)年ワイリー賞
2016(平成28)年国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞
更新:2016/10/09 リンク等追加