選挙の投票はなぜ鉛筆?

素朴な疑問:なぜ鉛筆?

鉛筆だと原理的に消しゴムで消して書き直せるので、投票のように書き換えられたらこまる場面で筆記用具は鉛筆しか使ってはいけないというのは不思議に思えます。

 

光学式マーク認識 (OMR)が開発される前は、電気伝導性感知方式が利用され、 マークシートの読み取りが行われていました。 電気伝導性感知方式は、鉛筆の芯の黒鉛の電気伝導性を感知して、 マークの位置を直接認識する仕組みです。 しかしながら、19世紀後半以降、 電気伝導性感知方式から光学式マーク認識 方式(OMR)に取って代わり現在では、電気伝導性感知方式は使われていないマークシート採点の仕組みとなりました。(マークシート採点の仕組み。OMR・OCR・スキャナの違いを解説 2022.08.25 by ㈱CSC 情報システム事業部)

 

投票用紙の素材は樹脂をベースにした合成紙。白くて不透明で、書き込みや印刷ができて、という紙のような特性を持っていながら、実は石油から作られるプラスチックの一種でもあるのです。‥ 紙と違い、インクが浸透しないため、水性のボールペンなどで筆記するといつまでもインクが乾かず、こすれてしまうのです。そのため、筆記には鉛筆やシャープペンシル、または油性のペンを使いましょう。(不思議な書き心地の投票用紙。同じ素材で作られたノートがあるって知ってた? 2021.12.21 KOKUYO )

投票用紙:ユポ

投票用紙は紙かと思いきや、材質は紙ではないのだそうです。

  • 選挙の投票用紙は、合成紙「ユポ」に印刷などの加工を施して製造されています。ユポとは、株式会社ユポ・コーポレーションの独自製法によって開発された、フィルム法合成紙です。
  • ユポを使った投票用紙は、折り畳んで箱に入れても自然に開くため、開票作業がスムーズにできます。
  • ユポは、天然紙よりも水に強く、万が一水に濡れてもふやけたりせず、形状が変わることもありません

選挙の投票用紙に使われている素材「ユポ」とは?メリットも解説 2024年03月13日 ユポ・コーポレーション )

使用するのは、「ポリプロピレン樹脂」で、これに無機充填剤を混ぜて熱で溶かし、紙のような厚さになるまで引き延ばす。そうすると、微細な穴が無数に開いたフィルムができる。この穴に鉛筆の黒鉛が削れて入ることできれいに黒が移る仕組みになっている。これが、投票用紙に使われる合成紙「ユポ」の正体だ。(選挙の投票用紙、実は「紙ではありません」…文具マニアも熱視線 2022/05/21 11:45 読売新聞オンライン)

ユポ開発の歴史

  • 68年、科学技術庁(現在の文部科学省)が消費増による森林資源枯渇への危機感と、石油化学の勃興を背景に「合成紙産業育成に関する勧告」 を発表
  • ユポ・コーポレーションの前身は三菱油化(現三菱ケミカル)と王子製紙(現王子ホールディングス
  • ユポ(YUPO)は三菱油化(「YU」)と王子製紙(「O」)を、「Paper」(紙)で結びつけるという意味
  • ポリプロピレンに、少量の添加剤を混ぜ、熱で溶解した上で、紙同様にシート上に薄く伸ばして製造
  • 投票用紙表面の摩擦係数を表と裏で変え、ムサシ製の選挙機器が正しく票数を計測できるよう工夫
  • 素材名は企業名と同名の「ユポ」で、共同開発した、選挙機器メーカーのムサシ(東京都港区)から「開く投票用紙」という名称で販売されている。

実は「紙」じゃなかった! 書き心地“半端ない”「投票用紙」の正体と開発秘話 誕生から35年 2022年07月10日  ITMediaビジネスONLINE )

 

  1. !投票用紙の”秘密”を探る公開:2022年6月15日(水) (津放送局 中野七海) ※2021年10月27日公開の記事を再掲 NHK 投票箱に入れるときは、半分に折るという人も多いと思います。箱に入ったあとの投票用紙は、中で自然に開いているんです。
  2. 「ユポ紙」が選挙の投票用紙やポスターに使われる理由 2023.05.26  ヒラメキ工房 選挙ポスターは屋外の掲示板に貼られていることが一般的です。普通の用紙だと雨に打たれた時点でポスターは破れてしまいますが、耐水性のあるユポであれば雨に打たれても問題ありません!
  3. 投票用紙交付機 投票用紙自動交付機 テラック BA-10 ムサシ 投票用紙を1枚ずつ正確かつ迅速に交付します。

 

投票用紙の読み取り

投票用紙に書かれた候補者の氏名の読み取りは人間が行っているのではなく、機械によって自動的に読まれるのだそうです。

「毎分660票を識別」機械が投票用紙を振り分け 様変わりの開票作業 THE PAGE(ザ・ページ) チャンネル登録者数 37.3万人 2014/12/13 投票用紙「読取分類機」は、投票用紙に書かれた候補者の名前を瞬時に読み取り、候補者ごとのラックに振り分けていく。この読み取りの処理速度が毎分660票で、天地裏表など票の向きも揃えてくれる

投票用紙読取分類機 テラックCRS-VA /株式会社ムサシ 株式会社ムサシ公式チャンネル チャンネル登録者数 111人 投票用紙に書かれた手書き文字(漢字・ひらがな・カタカナ)を毎分660票のスピードで識別し、候補者別 (政党名別) に自動分類します。

  1. 投票用紙読取分類機 テラック CRS-VAnの特長 ムサシ 手書き文字(漢字・ひらがな・カタカナ)を毎分660票のスピードで識別し、候補者別 (政党名別) に自動分類 候補者が多い選挙では、増設ユニットを連結することで分類棚の数を増やすことが可能です。(最大125段)

投票用紙の計数機などでトップシェアを誇る「株式会社ムサシ」に聞いてみました。‥ 候補者の「漢字」はもちろん、有権者の方によっては「カタカナ」や「ひらがな」、「漢字とひらがなの組み合わせ」等で書かれる方もいますので、様々な表記を事前に設定しておきます。投票用紙の「裏表」や「上下」がバラバラでも自動的にそろえることもできます。(「集計の機械が、投票用紙を書き換えている」ネットで噂される「開票 陰謀論」はあり得るのか?メーカーに聞いてみた 2018/7/20 選挙ドットコム)

陰謀論「票の書き換え疑惑」について

SNSなどでは「ムサシのシステムが一定の政治勢力の影響を受けて操作されている」とか「票が書き換えられる」とする偽情報が10年以上前から広がっています。選挙などのたびに関連する投稿が拡散、多いときには3万件近くみられます。(不正選挙? 選挙に関する“偽情報”を調べてみると… 2024年4月27日 15時58分 NHK)