生成AIで科研費の申請書を書くことは可能か?生成AI利用の落とし穴

生成AIで科研費の申請書を書くことは可能か?という素朴な疑問を追求するために、前回、4つの生成AIを試してみました。

  1. 科研費の申請書を生成AIを4種(Perplexity、ChatGPT、Claude、GEMINI)で書き比べ

このときは、なんとなく「それっぽい」仕上がりになったように思ったのですが、もっといろいろ試してみないと、生成AIがどれくらい有用なのかがわからないので、引き続き別のテーマで試してみます。

生成AIの一つであるPerplexityに、「全身エリテマトーデスに対する新規治療戦略に関して研究助成申請書作成のためのたたき台をつくってくれない?」とお願いして、あとは分量を増やしてもらったり、箇条書きをやめてもらったりして、科研費申請書の下書きを作ってもらいました。具体的に何をやってほしいかに関してはノーヒントです。生成AIが数秒で作ってくれた申請書がこれ。


研究課題名: SLEにおけるIRF5阻害による新規治療戦略の開発

概要:

本研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成に重要な役割を果たす転写因子IRF5を標的とした新規治療法の開発を目指す。IRF5阻害剤の開発と、その治療効果の検証を行う。マウスSLEモデルを用いた前臨床試験、患者由来細胞を用いたex vivo解析、および臨床検体を用いたバイオマーカー探索を統合的に実施する。IRF5阻害剤の投与による治療効果を評価し、免疫細胞の機能変化を解析することで治療メカニズムを解明する。患者由来細胞を用いて、IRF5阻害の効果と個人差を評価し、治療効果予測因子を探索する。さらに、臨床検体を用いてIRF5活性化状態を反映するバイオマーカーを同定し、疾患活動性や治療反応性との相関を解析する。本研究により、SLEの病態メカニズムの解明と新たな治療法の確立が期待される。

(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」

SLEは自己免疫疾患の代表的疾患であり、多様な臓器障害を引き起こす難治性疾患である。現行の治療法では、ステロイドや免疫抑制剤を中心とした非特異的な免疫抑制が主体となっており、長期的な副作用や治療抵抗性の問題が存在する(Schmid et al., 2024, Breast Cancer Res Treat 12(3):345)。そのため、より特異的かつ効果的な治療法の開発が急務となっている。近年の研究により、転写因子IRF5がSLEの病態形成に重要な役割を果たすことが明らかになってきた。IRF5は、I型インターフェロン(IFN)の産生や炎症性サイトカインの発現を制御する中心的な転写因子であり、SLE患者の免疫細胞で異常に活性化していることが報告されている(Inoue et al., 2023, Cancer Res 83(15):2789)。本研究の着想に至った経緯として、我々の予備的研究において、IRF5阻害剤の開発に成功し、マウスSLEモデルにおいてその有効性を確認したことが挙げられる。この結果を踏まえ、本研究では以下の学術的「問い」を設定する:

  1. IRF5阻害はSLEの新規治療戦略として有効か?
  2. IRF5阻害による治療効果のメカニズムは何か?
  3. IRF5阻害の効果を予測するバイオマーカーは存在するか?

(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性

本研究の目的は、IRF5阻害剤を用いたSLEの新規治療法を開発し、その有効性と安全性を検証することである。本研究の学術的独自性と創造性は、IRF5という特異的な分子標的に着目し、従来の非特異的免疫抑制とは異なるアプローチを提案している点にある。独自に開発したIRF5阻害剤を用いることで、これまで困難であったIRF5の機能解析が可能となる。さらに、マウスモデル、患者由来細胞、臨床検体を統合的に解析することで、基礎研究から臨床応用までを見据えた包括的な研究デザインを採用している点も特筆すべきである。

(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ

SLE治療の分野では、近年、B細胞を標的としたベリムマブやT細胞共刺激を阻害するアバタセプトなど、より特異的な治療法が開発されている(Ohto et al., 2023, Nat Biotechnol 41(8):1023)。しかし、これらの治療法も十分な効果を示さない患者が存在し、新たな治療標的の探索が続けられている。IRF5に関しては、遺伝学的研究によりSLEの疾患感受性遺伝子として同定されて以来、その病態への関与が注目されてきた。しかし、IRF5を標的とした治療法の開発はまだ初期段階にあり、本研究はこの分野における先駆的な取り組みとして位置づけられる。

(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか

本研究では、以下の3つの側面から研究を進める:

  1. マウスSLEモデルを用いた前臨床試験:
    IRF5阻害剤の投与による治療効果(腎症の改善、自己抗体産生の抑制など)を評価する。また、IRF5阻害による免疫細胞の機能変化を解析し、治療メカニズムを解明する。フローサイトメトリーや単一細胞RNA-seqを用いて、IRF5阻害が各免疫細胞サブセットに与える影響を詳細に調べる。さらに、長期投与実験を行い、IRF5阻害剤の安全性と持続的な効果を検証する。
  2. 患者由来細胞を用いたex vivo解析:
    SLE患者の末梢血単核球にIRF5阻害剤を添加し、炎症性サイトカイン産生や自己抗体産生への影響を評価する。また、IRF5阻害に対する反応性の個人差を解析し、治療効果予測因子を探索する。さらに、患者由来の樹状細胞やB細胞を用いて、IRF5阻害が抗原提示能や抗体産生能に与える影響を詳細に調べる。
  3. 臨床検体を用いたバイオマーカー探索:
    SLE患者の血液サンプルを用いて、IRF5活性化状態を反映するバイオマーカーを同定する。プロテオミクス解析やメタボローム解析を組み合わせ、IRF5活性化に関連する新規バイオマーカーの探索を行う。同定されたバイオマーカーと疾患活動性や治療反応性との相関を解析し、IRF5阻害剤の効果を予測するバイオマーカーパネルの確立を目指す。

(5)本研究の目的を達成するための準備状況

本研究を遂行するための準備状況として、独自のスクリーニング系を用いて高い特異性と効果を持つIRF5阻害剤の候補化合物を同定している。また、MRL/lprマウスを用いたSLEモデルの系を確立しており、予備的な実験でIRF5阻害剤の有効性を確認している。さらに、SLE患者の血液サンプルおよび臨床情報のバンクを整備しており、倫理委員会の承認も得ている。解析技術面では、単一細胞RNA-seq、マルチカラーフローサイトメトリー、プロテオミクス解析など、最新の解析技術を導入済みである。これらの準備状況により、本研究を効率的かつ効果的に進めることが可能となっている。

(6)本研究がどのような国際性を有するか

本研究は、SLEが世界中で問題となっている難治性疾患であり、IRF5阻害という新規アプローチが国際的な自己免疫疾患研究コミュニティーの注目を集めると予想されることから、高い国際性を有する。研究成果は国際学術誌への投稿や国際学会での発表を通じて、世界に向けて発信する予定である。また、海外の研究機関との共同研究を計画しており、国際的な研究ネットワークの構築を目指している。さらに、将来的には国際共同臨床試験の実施を視野に入れており、本研究の成果がSLEの国際的な治療ガイドラインの策定にも貢献することが期待される。これらの取り組みにより、本研究は世界のSLE研究をリードし、国際的な医療の発展に寄与することが可能となる。


申請書を書いてくれたのはいいのですが、なぜ転写因子IRF5に注目したの?と思いました。

  1. プレスリリース 転写因子IRF5の阻害が全身性エリテマトーデスの新規治療法となる可能性を実験的に証明 AMED

なんのことはない、Perplexityが吐き出した研究内容と同じ結果がすでに研究成果として出ていたのですね。これは生成AIの落とし穴だと思います。不用意に生成AIを使うと、他人の研究成果を真似しただけのような計画書が出来上がってしまう恐れがあるというわけです。生成AIに相談を持ち掛けるにしても、自分独自の何かをもっていて、それを使ってさてどうするかで相談するのが良いのでしょう。最初から丸投げだと、他人のアイデアの盗用を無自覚にしてしまう危険があるということが今回わかりました。