不採択になる科研費計画調書を書くためのポイント10個

必ず採択される科研費申請書を作成するのは難しいと思います。やはりライバルが強い審査分野だと、完璧な申請書であっても論文業績で勝てなかったりして不採択になる可能性があります。しかし、こう書いたら必ず落とされるだろうという申請書があります。そんな、採択されない科研費計画調書の書き方を考えてみます。

 

1.計画調書のページが空白だらけで中身がスカスカ

法令の遵守に関するページは、実験方法によってはほとんど書くことがないかもしれませんが、研究目的や計画のページがスカスカで半ページ以上も空白があったりしたら、やる気がないものとみなされて即落とされると思います。そんな申請書を出す人がいるのか?と不思議に思うかもしれませんが、最初から通るつもりがないのに出すだけ出す人がいるそうです。大学に出すことを義務付けられていたり、出せばとりあえず大学からの評価が上がるような場合に、こういう馬鹿げたことが起きます。採択されたいという気持ちがない人は申請するのは止めましょう。審査委員の方には申し訳ないですし、大学の恥になるだけです。

 

2.指示に従わずに書く

いまどきの科研費の計画調書は、この欄にはこれこれを書きなさいとという指示が至れり尽くせりの細かさです。それは審査委員が評点をつけやすいようにという配慮があるのだと思います。ですから、その指示を無視して、書くべきことを書くべきセクションに書いていないと、評点をつけにくくなるので、結果として評価が下がるでしょう。

正直言って、現在の科研費計画調書のセクション分けが良いとも思えないのですが(内容のダブり、順序の点で)、審査の手引きなどを参照し、評点の付けられ方を意識しながらうまく書くしかありません。

 

3.論理が破綻している

論理の破綻は、計画調書の中でいろいろな形で現れます。例えば、学術的な問いに答えるための研究目的なのに、全然問いに答える目的が設定されていない。あるいは、研究目的を達成するための研究計画なのに、その研究計画に則って実験して仮に成果を得たとしても、研究目的を達成することにはならない、つまり目的と計画にズレがあるといった具合です。

「相関関係」と「因果関係」の区別が全くついていない人も即、不採択になることでしょう。因果関係を明らかにするのが研究目的だといいつつ、相関関係しかわからないような研究計画だと、採択のしようがありません。

 

4.日本語が破綻している

日本人だから正しい日本語が書けると思ったら大間違い。人間は思い込みの動物ですから、うっかりヘンな日本語を書いていても自分ではなかなか気づけないのです。「本研究の目的は~する。」といった文を平気で書いていると、研究能力を疑われます。「本研究の目的は、~することである。」などと、主語と述語はきちんと対応させないといけません。誤字脱字も論外です。自分が書いた文章を見直しもせずに、忙しい審査委員に読ませる気だとしたら、そうとう傲慢な態度ですからバッサリ切り捨てられても文句をいえないでしょう。

 

5.計画が単純すぎる

研究目的を達成するために何をするのか、を研究計画の欄に書くわけですが、実験のアイデアが一つしかないとそれがポシャったらお終いです。実験なんてほとんどが期待通りにいかないわけですから、アプローチが一つしか書かれていないと目的を達成するのは無理だろうと思われます。やはり、いろいろな実験的アプローチを用意して、どれかがダメでもどれかが上手くいって、結果として設定した研究目的は達成できるということを審査委員に納得させなければなりません。

 

6.不要なものが存在する

どんなに思い入れのある過去の研究成果だったとしても、今回の研究計画に無関係なのであれば紹介する必要はありません。無駄なものを書くと、きれいなストーリーにならないので、計画調書の説得力が落ちます。

図も要注意です。その図を載せることで何を伝えたいのか?この質問に答えられないのなら、その図は不要です。不要な図を載せていると、空白を埋めるための安易な行動だとみなされるか、論理的にモノを考えられない人だと思われるのがおちです。

 

7.予備実験データを見せない

科研費の審査では、研究計画の実現可能性があるかないかが問われます。いくら素晴らしい研究計画であってもその実現可能性を裏付けるような予備実験データがないことには、信じようがありません。世の中には口だけ達者な人がいくらでもいますから、根拠を示さないとダメでしょう

 

8.業績欄に業績を書かない

2018年度科研費までは「業績欄」というものがありました。ところが、2019年度から名前が変わり、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」となっています。このセクションの呼び方がぼんやりしてしまったので、2019年度以降の様式しか見たことがない研究者は、業績欄と言われてもピンとこないかもしれません。

研究計画の実現可能性を測るために、審査委員は研究業績(パブリケーション)が申請者にどれくらいあるかを非常に気にします。計画調書を頭から読まずに、真っ先に業績欄をチェックする審査委員も少なくありません。それほど重要な業績欄なのですが、科研費申請の初心者の人で、業績欄に業績を書いていない人がいます。ファーストオーサーの英文査読付き論文が一番重要ですが、共著でもいいし、学会発表でも、なんでも書きましょう。空白にしておくのが一番まずいです。何も研究をやっていない人とみなされます。もちろん、論文業績がたくさんある人は、学会発表を書くスペースがなくなるでしょうから書く必要はありません。

 

9.審査のポイントを知らずに書いている

審査員には「審査の手引き」があり、そこには、評点の付け方が示されています。申請書を書く側からすれば、これを利用しない手はありません。おのおののポイントを落とさないような書き方をすれば良いのです。

審査の手引(平成31(2019)年度)(JSPS)

基盤研究(B・C)(一般)、若手研究(PDF)

 

10.学術用語を正しく使えていない

人間は使う言葉で判断されます。研究者の世界では学術用語が正しく使えていない人は、研究者ではないと判断されるでしょう。

 

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