小保方さんの成功を受けて、若い女性研究者の中から第2の小保方さんが出てくるように研究環境を整備しようという政府の動きがあります。小保方さんの活躍に刺激を受けた若い人も多いかもしれません。しかし今回の小保方さんの大発見は誰もが真似できるようなことではなく、研究者の生き方としてはあまり一般的ではない成功例と言えそうです。共同研究者として小保方博士のSTAP細胞発見に寄与した山梨大生命環境学部の若山照彦教授(46)が、小保方博士の成功の秘密を解説しています。
「小保方さんは今回、酸性溶液に浸すことで多能性の細胞を作ったが、酸性溶液という条件を発見する前、いろいろな刺激方法を模索していた。私は、小保方さんが作った細胞が多能性を持っているかどうか、マウスを使って判定する実験を2010年7月頃から手伝った。
小保方さんが博士課程の3年生で米ハーバード大に留学している時、共通の知人から『多能性の判定を手伝ってほしい』とメールが届いた。刺激だけで多能性を 獲得するのは動物ではあり得ないというのが当時の常識。だから、ハーバード大では誰に頼んでも判定の仕事を手伝ってくれる人が見つからず、若山に頼めば何 とかなると頼んできたようだ。最初は『できるはずがない』と思ったが、あり得ないことを試すのは自分も好きだったので手伝った。
判定の手法は、緑色に光るマウスが生まれてくれば多能性がある、光らなければない、というもの。当然、最初は全く光らなかった。同様の共同研究を私に持ち かけてくる人は多いが、一度失敗を伝えると、たいていの研究者は引き下がる。でも小保方さんは違った。だめだったと伝えると、更に膨大な量の実験をして失 敗の原因と次の作戦を考え、『次は絶対いけるのでお願いします』と別の方法で作った細胞をすぐ持ってきた。普通とは違う熱意を感じた。
(『できっこない』が『もしかすれば』に変わった瞬間は)なかった。情熱はあってもおそらく無理だと思っていた。彼女はまだ若いし、若い頃の失敗は後々のためには良いと思っていた。今回の発見は、それ ぐらい常識を覆す研究成果だ。2011年末頃、緑色に光るマウスの1匹目が生まれた時は、小保方さんは世紀の大発見だとすごく喜んでいたが、私はそれでも 信じられず、『どこかで自分が実験をミスしたせいでぬか喜びさせてしまったかも』と心配だった」
(小保方さんに続く若手研究者が今後出るのは)彼女は次元が違い、難しいかもしれない。小保方さんのように世紀の大発見をするには誰もがあり得ないと思うことにチャレンジすることが必要だ。でもそれは、若い研究者が長期間、成果を出せなくなる可能性があり、その後の研究者人生を考えればとても危険なこと。トライするのは並大抵の人ではできない。
(小保方さん、熱意違った…共同研究の若山教授 (2014年2月3日08時03分 読売新聞))
参考記事
- 小保方さんの理研、新法人に指定へ 文科相 (朝日新聞デジタル 2014年2月1日10時07分):新しい万能細胞を作製した小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーの所属する理化学研究所について、下村博文・文部科学相は31日の閣議後会見で、世界最高水準の研究開発を担う新制度の「特定国立研究開発法人」に指定する考えを明らかにした。再生医学の研究を加速させる。新法人は、優秀な研究者を高給で優遇するなど、資金を自由に使える。政府はこの制度を盛り込んだ独立行政法人改革の基本方針を昨年12月に閣議決定した。欧米では研究機関のトップに5千万円程度の年俸を出すケースがあるが、新法人の指定によって日本でも同水準の年俸の研究者が出る可能性がある。