STAP細胞に関するNATURE論文のさまざまな不審点が指摘されていながら、理研は実験ノートや生データの調査結果を公表することもせず、研究不正の可能性に目をつむって論文の「修正」で逃げ切ろうとしました。これは理研が自ら出した平成17年の不正防止宣言に背く行為です。
理研は3月5日にSTAP細胞の作製手順書を公表し、その中でNATURE論文の主張をひっくり返すことまでして研究不正追求の矛先をかわそうとしました。すべては”ささい”な間違いでしたという言い訳で済ませようとしたのです。
その曖昧決着のシナリオを突き崩したのが小保方博士の博士論文の図がNATUREの図に流用されているというインターネット上での指摘でした。図の取り違えという言い訳を許さない、決定的な研究不正の証拠がネイチャー論文の中に存在していたのです。これを見たNATURE論文共著者の若山博士はショックを受け論文撤回が妥当と考えるに至りました。
驚くべきことに、NHK NEWS WEB(3月13日 19時20分)の報道によれば笹井芳樹理研CDB副センター長はこの博士論文からの図の流用問題を一ヶ月前にすでに把握していたとのことです。しかし、外部の有識 者も入った調査委員会に対して理研CDBはこれを「図の取り違え」としか説明していなかったそうです。これが事実なら、理研CDBは研究不正の隠蔽工作を組織的ぐるみで行おうとしていたと考えられます。
小保方博士らには論文データ捏造の疑惑が持ち上がっているのですから、 今、その張本人に実験を許している理化学研究所の対応はおかしいといわざるを得ません。本気で研究不正を調査する気があるのなら、実験室への出入りを禁止し て実験 ノートや生データの提出を要求するのがまともな対応というものです。若山博士だけがマスコミの取材に対して真摯に対応している中で、理研CDB所属の著者た ちは一切表に出て説明責任を果たそうとしていないことから、理化学研究所がこの問題に本気で取り組んでいるのかどうか疑念が湧きます。
理化学研究所は3月14日に記者会見を開くことを発表していますが、理化学研究所の調査委員会が理研CDBからの自主的な報告に基づいて調査結果をまとめるだけだとしたら、真実は何も明らかにならないでしょう。
また、早稲田大学の博士論文で剽窃を行い、過去の発表論文でもデータを捏造し、論文実績が全くなかった小保方氏を 理化学研究所のユニットリーダーに据えるという尋常ではないな人事を行ったことに関しても、理研CDBには大きな責任があります。
参考
- 「STAP」写真流用把握も問題と説明せず(NHK NEWSWEB 3月13日 19時20分):NHKが関係者に取材したところ、およそ1か月前には、小保方さんと、研究チームの中心メンバーで研究所の副センター長がこの問題を把握していたことが分かりました。さらに外部の有識者も入った調査委員会のメンバーには、この問題が単なる画像の取り違いと伝えられ、流用の疑いもある重要な問題だとは説明されていなかったということです。
- STAP細胞:理研、対応が後手に 「単純ミス超えた」(毎日新聞 2014年03月11日 22時57分 最終更新 03月11日 23時38分):理研は調査開始時から「成果は揺るぎないと判断している」と強調、指摘には「単純ミス」で済ませるような姿勢だった。
- 研究活動の不正行為等の定義(文部科学省):(1)捏造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること。(2)改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。(3)盗用:他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。
- 2014 年3 月11 日 理事長声明『STAP 細胞論文等への対応についての再要望』特定非営利活動法人 日本分子生物学会理事長 大隅 典子:著者の一部から、プロトコールという形で3月5日に実験方法の一部詳細が発表されました。しかし、その内容はむしろ論文の結論に新たな疑義を生じるものでした。…また多くの作為的な改変は、単純なミスである可能性を遙かに超えており、多くの科学者の疑念を招いています。…日本分子生物学会は、以下のことを理化学研究所に強く要望します。…1 Nature 論文2報(Nature 505, 641-647, 2014; Nature 505, 676-680,2014)に関する生データの即時、かつ、全面的な開示、および、同論文に対しての迅速かつ適切な対応(撤回、再投稿などを含む) 2 このように公正性が疑われるような事態を招いた原因に対する詳細な検証
- 「小保方晴子さんを魔女狩り気持ちが悪い!佐村河内守とは次元違う」テリー伊藤擁護(JCASTテレビウォッチ2014/3/12 12:46):広報室長は「(小保方さんは)STAP細胞作製の再現性の確認 など研究を進めています。(精神的には)一般的に見て大きなストレスになっていると思う。連絡は取れています。要望は本人にも伝えます」などと答えてい た。理研は14日にも会見を開き経過を説明するが、小保方さんが同席する予定はないという。
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小保方氏の上司“裏道逃亡劇”の理由は12日の法人指定会議?(東京スポーツウェブ 2014年03月12日 16時00分):11日、生命科学などの分野で功績のあった研究者に贈られる上原賞の授賞式が都内で行われ、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が出席した。笹井氏は「STAP細胞」の論文の共著者の1人で、小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の上司。すべてを知る人物といわれているのだが…。…論文への疑惑は数多い。上司として見抜けなかった笹井氏の責任は重いが、責任を認めれば、笹井氏の理研内での立場は危うくなろう。論文撤回がすんなり決まらない背景には、政治的な事情もあるという。
- 理研に大ダメージ 研究成果「揺るぎない」から「プロセスに疑念」 対応も後手に(産経ニュース2014.3.12 22:01):理研は2月18日に調査委員会を設置。委員長ら理研側2人、弁護士を含む外部有識者3人の計5人で構成され、小保方氏らへの聞き取りや実験 ノートの確認などを行っている。…小保方氏は一連の疑問点が指 摘された後も、研究室で再現実験を続けているという。理研のガイドラインでは、不正の疑義が生じた研究者に対し、証拠保全のため出勤停止や研究室の一時閉鎖を行うことができる。こうした措置を取っていないことについて、理研は「再現実験の手順書作成や調査への対応のため。証拠隠滅の可能性もないと判断した」としている。