Category Archives: 眼科学

シェーグレン症候群 (Sjögren症候群)とは

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患です。日本では1977年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました。 本疾患は主として中年女性に好発する涙腺唾液腺を標的とする臓器特異的自己免疫疾患ですが、全身性の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもあります。シェーグレン症候群は膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病) に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない原発性シェーグレン症候群に分類されます。(指定難病53 難病情報センター)

 

シェーグレン症候群の症状

一部の患者では、口または眼の乾燥だけがみられます。… 多数の臓器が侵される場合もあります。シェーグレン症候群では、鼻、咽頭、消化管、喉頭、気管、気管支、外陰部、腟の表面を覆っている粘膜が乾燥することがあります。(MSDマニュアル家庭版

  1. シェーグレン症候群 (SS)(MSDマニュアル プロフェッショナル版)

Sjögren’s syndrome 2014/02/25 Dr. Andras Fazakas

 

シェーグレン症候群の病態・診断・治療、診療ガイドライン

  1. シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版(130ページPDF) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班
  2. シェーグレン症候群:病態・診断・治療 (第 114 回日本内科学会講演会 超世代の内科学―GeneralityとSpecialtyの先へ― 本講演は,平成29年4月16日(日)東京都・東京国際フォーラムにて行われた.)
  3. 成人のシェーグレン症候群の特徴と治療(総 説 臨床リウマチ,29: 219~227,2017)

シェーグレン症候群の診断基準

シェーグレン症候群(SjS)改訂診断基準(厚生労働省研究班、1999 年)
1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)口唇腺組織でリンパ球浸潤が 1/4m ㎡当たり 1focus 以上
B)涙腺組織でリンパ球浸潤が 1/4m ㎡当たり 1focus 以上
2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)唾液腺造影で stage I(直径 1mm 以下の小点状陰影)以上の異常所見
B)唾液分泌量低下(ガムテスト 10 分間で 10mL 以下,またはサクソンテスト 2 分間 2g 以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見
3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつローズベンガルテスト(van Bijsterveld スコア)で陽性
B)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつ蛍光色素(フルオレセイン)試験で陽性
4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)抗 SS-A 抗体陽性
B)抗 SS-B 抗体陽性

診断    以上1、2、3、4のいずれか2項目が陽性であればシェーグレン症候群と診断する。(転載元

 

抗SS-A抗体と抗SS-B抗体

これらの自己抗体の名前の由来に関しては、下のレビューでわかりやすく解説されています。

Anti-Ro/SSA and anti-La/SSB antibodies were originally described in 1961 as two precipitating antibodies reacting with antigens contained in extracts from salivary and lacrimal glands of patients with SS, termed SjD, and SjT, respectively [9]. SjD antigen was reported to be insensitive to trypsin or heat, while SjT antigen could be destroyed by the same treatment. In 1969, Clark et al. described the presence of antibodies in the sera of patients with SLE that reacted with ribonucleoprotein (RNP) antigens present in extracts of rabbit and human spleen [10]. The authors named the antibody “anti-Ro antibody” after the original patient in whom the antibodies were identified. The same group also found antibodies to another soluble cytoplasmic RNA protein antigen, “La” [11]. At about the same time, Alspaugh and Tan noted the existence of autoantibodies in the sera of many SS patients, which react with antigens termed “SSA” and “SSB,” [12]. SSB antigen was described also as “Ha”, an antigen targeted by sera from patients with SLE and SS [13]. Later, Ro and La were demonstrated to be antigenically identical to SSA and SSB [14]. (Clinical and Developmental Immunology Volume 2012, Article ID 606195, 12 pages http://dx.doi.org/10.1155/2012/606195 Review Article Clinical and Pathological Roles of Ro/SSA Autoantibody System Ryusuke Yoshimi, Atsuhisa Ueda, Keiko Ozato, and Yoshiaki Ishigatsubo 著作権:CC BY 3.0)

抗SS-A/Ro抗体と抗SS-B/La抗体は共に非ヒストン核蛋白抗体のひとつであり,シェーグレン症候群と密接に関連している。しかし,抗SS-A抗体は多くの膠原病で陽性を示す。(抗SS-A/Ro抗体 SRL総合案内

異常値を示す主な疾患・状態・異常高値:シェーグレン症候群の50~70% 全身性エリテマトーデス(SLE)の40~60% 重複症候群の40~60% 強皮症の10~30% 多発性筋炎/皮膚筋炎の10~20% 関節リウマチの20~30%(抗SS-A/Ro抗体 FALCO臨床検査案内サイト

SS-A抗体はシェーグレン症候群70~90%と最も高頻度に検出されますが、疾患特異性は高くなく、全身性エリテマトーデス(SLE)強皮症混合性結合組織病(MCTD)関節リウマチなど他の膠原病でも広く陽性となります。RNAと蛋白の複合体に対する自己抗体で、対応抗原は細胞質に多く存在するため抗核抗体陰性でも抗SS-A抗体が検出されることがあります。 一方、抗SS-B抗体はシェーグレン症候群30~40%に検出され、特異性が高く、抗SS-B抗体陽性の場合、抗SS-A抗体も同時に陽性となります。RNAポリメラーゼIIIの転写産物と複合体を形成する蛋白に対する自己抗体で、対応抗原は核内に存在するため抗核抗体ではSpeckled型陽性を示します。(CRC)

  1. 抗 SS-A 抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き (2013 年 3 月 平成 22 年度~平成 24 年度 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)抗 SS-A 抗体は全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群(SS)で高率に認められる自己抗体であるが、無症候性の女性が保有している場合もある。抗 SS-A 抗体陽性女性から出生する児における NLE の発症率は約 10%、そのうち CHBは約1%(すなわち、全国での年間発症数は約100 例)と推定されている[2]。
  2. シェーグレン症候群患者が妊娠する場合に注意することはありますでしょうか?(FAQ 指定難病53 難病情報センター) 抗SS-A抗体という抗体をお持ちですと、新生児に房室ブロックという不整脈が出ることがまれにあります。また、新生児ループスといって、生まれた赤ちゃんにお母さんの自己抗体が移行し、真っ赤になって(赤ちゃんはもともと赤いから赤ちゃんなのですがさらに真っ赤に)生まれる事がまれにあります。
  3. Franceschini F, Cavazzana. Anti-Ro/SSA and La/SSB antibodies.  Autoimmunity. 2005 Feb;38(1):55-63. (PubMed) The Ro/La system is considered as an heterogeneous antigenic complex, constituted by three different proteins (52 kDa Ro, 60 kDa Ro and La) and four small RNAs particles.
  4. Ben-Chetrit E. Target antigens of the SSA/Ro and SSB/La system. Am J Reprod Immunol. 1992 Oct-Dec;28(3-4):256-8. (PubMed) The SSA/Ro and SSB/La antigens are polypeptides which serve as autoantigens in systemic lupus erythematosus and Sjogren’s syndrome. The SSA/Ro contains two major isoforms of 60 kD and 52 kD. The former is the main native antigen while the latter is a major autoantigen in its denatured form. The SSB/La is a single phosphorylated protein of 48 kD. 
  5. Elaine L. AlexanderThomas T. Provost. Ro (SSA) and La (SSB) antibodies. Springer Seminars in Immunopathology September 1981, Volume 4, Issue 3, pp 253–273

残念ながら根本的にシェーグレン症候群を治癒させることはできません。乾燥症状に対しては症状を軽くすること、他の臓器障害に対してはそれらを抑えることを目的とした治療を行います。(シェーグレン症候群 (Sjögren’s syndrome: SS) しぇーぐれんしょうこうぐん KOMPAS 慶応義塾大学 医療・健康情報サイト)

  1. シェーグレン症候群 Sjögren’s syndrome,SjS (順天堂大学医学部 膠原病・リウマチ内科)
  2. シェーグレン症候群の臨床~シェーグレン症候群は最も身近な膠原病~ 2004年

 

シェーグレン症候群を罹患した著名人

  1. 和田アキ子が告白した難病「シェーングレン症候群」の怖さ (2011.03.03 16:00 女性セブン / livedoor NEWS) 和田アキ子(60)が2月26日、自身のラジオ番組で、シェーグレン症候群にかかっている可能性があることを告白した。翌27日放送の『アッコにおまかせ!』(TBS系)では、「大丈夫。寝込むほどの病気じゃないから」と語っていたが、実はこの病気、東京都などの自治体が指定する難病のひとつだ。
  2. 菊池桃子 離婚前から難病「シェーグレン症候群」を患っていた (2012.3.2 10:58週刊朝日 AERAdot.) 1月28日、プロゴルファーの西川哲(43)と17年続いた結婚生活にピリオドを打ったことを発表した菊池桃子(43)。中学3年と小学4年の子どもを抱え、今後は女優業に本格復帰すると思われていた……。 そんな矢先に衝撃的なニュースが飛び込んできた。 離婚をする以前から菊池が難病に苦しんでいたというのだ。 本誌の取材によると、菊池が患った病は「シェーグレン症候群」。