Category Archives: 科学プレゼンテーション

レジデントノート2月号(2019年)の特集「学会発表にトライ!」

レジデントノート2月号(2019年)の特集は、「学会発表にトライ! 研修医のうちに身につけたい、一生モノの知識とコツを伝授します!」でした。ボリュームたっぷりに、学会発表のやり方から研究の進め方まで、臨床医向けのノウハウがぎゅーっと詰まっています。

臨床医向けの内容ですが、分野を問わず共通する部分も多く、印象深い言葉を紹介します。

そしてその基本中の基本とは、メッセージを伝えることであり ー そしてそのためには、まずメッセージを自分自身に対して明らかにすることが重要、かつ実はそれが結構難しいことなのです。(学会発表の基本とは? 特集にあたって 佐藤雅紹 レジデントノート2019年2月号 2708頁)

自分は一体聴衆に何を伝えたいのかが自分で明確になっていないと、良いプレゼンテーションにはなり得ないということですね。

abnormalを知るためにはnormalを知らなければならない(発表テーマを決めよう 井上堯文 レジデントノート2019年2月号 2713頁)

逆もまた真、「正常を知るには異常を知るという方法が有効」(俯瞰と徹底 分子から細胞、発生へ 御子柴 克彦 JT生命誌館)。

 

文献の探しかた

臨床系の論文に特化した文献検索法が紹介されていました。Clinical Queriesの結果は、”limited to specific clinical research areas”とのこと。

PubMed Tools の4番目にある「Clinical Queries」です。ここをクリックした後にテーマとなるキーワードで検索すると、関連する最近の主要文献が出てきます。ここから選ぶとはずれが少なく、効率的に文献検索ができます。(先行文献を探す 井上堯文 レジデントノート2019年2月号 2715頁)

 

1メッセージ

この発表で言いたいことは何ですか?という質問を自分に投げかけて、1文、いや1フレーズで答えられなければなりません。(1発表1メッセージ  井上堯文 レジデントノート2019年2月号 2716頁)

これは症例報告の発表ということですが、通常の学会発表やセミナーであっても、トピックやメッセージは1つに絞ったほうが、聴衆の印象に残りやすいと思います。

いざ発表テーマが決まり、抄録やスライド作成にいそしんでいるときに、「あ、この検査値がない」「この画像があれば」という思いにかられることはよくあります。(データ取集、先に立たず  井上堯文 レジデントノート2019年2月号 2720頁)

これは臨床報告の発表にかぎらず、普通の基礎研究をやっていても同様です。論文を書くときになって、ストーリーを作るうえで必要なデータ、あるいは、必要な対照実験のデータがないことに気付いて後悔することがあります。

メッセージと関係ないデータはすべて容赦なく切り捨てなければいけないのです。(データは集めた、さてどれを使おう  井上堯文 レジデントノート2019年2月号 2723頁)

せっかくのデータだから人に見せたいという気持ちになることはよくあります。学会発表はメッセージが弱まることはしてはいけないでしょう。ただ論文となるとちょっと事情が違うかもしれません。ストーリーを強めないデータは一切使わないという人もいるかもしれませんが、せっかくのデータをお蔵入りにさせるくらいだったら、付け足して出してしまおうということもありだと思います。

発表原稿をまず一度つくってみることをお勧めします。最終的には原稿を見なくても発表できるところまで練習するのがよいですが(スライドと原稿の擦り合わせ 佐藤雅紹 レジデントノート2019年2月号 2753頁)

どんな順番で情報を伝えれば一番わかりやすいかを考えるためには、原稿を全部作るのが良いと思います。無駄な言い回しを省いていくだけでも、数十秒は軽く節約できるので、限られた時間内で効率よく情報を伝えるためには、使う言葉を吟味したほうがいいのです。

 

効果的な科学プレゼンテーションをつくりあげる方法

Susan McConnell (Stanford): Designing effective scientific presentations

  • 0:00 Intro
  • 3:05 Font style/size
  • 5:29 Color contrast
  • 8:50 Layout (heading, text, lists)
  • 11:19 Use of empty space
  • 12:20 Simple image on each slide
  • 13:51 How many slides to show
  • 14:57 Avoid busy slides
  • 19:10 Data: Don’t overdo it
  • 21:21 Minimum essential components
  • 25:19 Structure of a good talk 良いトークを構成する方法
  • 26:30 Use of home slide 「ホームスライド」を使うのが効果的
  • 29:27 Meat & Taters; Keeping the audience’s attention
  • 31:45 The specificity dive
  • 35:07 Conclusions
  • 37:40 Conclusion/Q&A slide
  • 38:33 Conclusion of this actual presentation

今まで誰も教えてくれなかった「人前で話す極意」鴨頭嘉人 (かもがしら よしひと)の話し方教室 

研究者にとってプレゼンテーションの能力は非常に大切です。しかし今までなかなかシステマティックに学べる機会がありませんでした。学術的な内容はさておいて、プレゼンで聴衆を魅了する方法について解説されているYOUTUBE動画が大量にあるので紹介します。

鴨頭嘉人著『今まで誰も教えてくれなかった 人前で話す極意』(かも出版 2017年)という本を買って読んでいるのですが、研究者にも絶対に役に立つと思います。プレゼンをやる機会のある人なら誰にでも役立つのですが。デール・カーネギーの話し方入門が現代の日本で蘇ったのかと思うような印象を自分は持っています。

あがり症を克服する方法

初めての学会でも落ち着いて話ができる学生もいますし、緊張して頭が真っ白になって途中で止まってしまう学生もいます。緊張してしまう人とそうならない人の落差は非常に大きいものがあり、性格的に損をしている人が多いと思います。研究者という職業にプレゼンテーションはつきものです。あがり症を克服する方法はあるのでしょうか?

「意識の矢印を自分に向けるのではなく、相手に矢印を向けること」が必要です。(18ページ)

恐怖を感じない、感じたとしてもそれに負けないようにするために大切なことは”準備”です。… しっかりとした準備とは、決して質ではなく、量でもなく、「今の自分にできることをやりきった」という実感を持てるような準備レベルのことを指します。(18~19ページ)

(◇不安や恐れに負けない強さあ、あなたの「準備レベル」が創り出す 第1章 よくある話し方の9つの悩み 1-1 人前に立って話をすると緊張して手足が震えて、頭が真っ白になってしまいます。緊張しない秘訣はありますか? 鴨頭嘉人著『今まで誰も教えてくれなかった 人前で話す極意』かも出版 2017年)

緊張は悪いことじゃない?〜講演家が教える人前で緊張しない方法〜 (Youtube 11:21)

  • 0:00~ あがり症診断シート(身体編)①手や足が震える ②頭が真っ白になる ③口が渇く ④冷や汗が出る ⑤胃酸が出る ⑥声が震える ⑦早口になってしまう⑧「え~」や「あの~」が多くなる ⑨赤面してしまう ⑩顔が引きってしまう

緊張して頭が真っ白になった時の対処法 (Youtube 7:38)

  • 3:00~ そして3つめの魅力は、
  • 4:27~ (失敗したときに失敗したと)言えばいいんです。

人前で話すのが怖くなくなる『究極のあがり症克服セミナー』(Youtube 21:08)

  • 2:52~ 「人前で話すとき緊張しますか?」「はい」…95%
  • 11:10~ あがり症診断シート

 

アイコンタクトの重要性

あがり症の人がしゃべるときの特徴は、聴衆と目を合わせずに上のほうを見てしゃべってしまっているそうです。緊張して不安になってしまわない方法は、観客ひとりひとりと目を合わせることだそうです。下の動画で、1つだけ気をつけれるならの答えは、一人ひとりと目を合わせながら話しなさいということでした。意外ですね。緊張すると怖くて目が合わせられなくなりそうなものですが、実は、目線を合わせることで緊張や不安が和らぐのだそうです。

人前で話すのが死ぬほど緊張する人が1つだけ気をつけるなら… (Youtube 9:30)

  • 1:54~ (櫻井翔)「一人でも多くのファンと目を合わせる」

 

場数を踏めばトークは上達するものなのか?

学会発表のうまさはやはり慣れも大事だと思います。何回も発表していればだんだんと要領がつかめるようになるからです。しかし、単に場数を踏めばよいというものではないようです。

世の中には、「場数を踏めばスピーチがうまくなる」という人がいますが、それは大きな間違いです。場数を踏んでもスピーチ力は高まりません。何度も何度もスピーチの構成を練り直し、聞き手の思いに寄り添えるよう準備を繰り返し、積み重ねることによって、スピーチ力は高まります。(鴨頭嘉人『今まで誰も教えてくれなかった 人前で話す極意』134頁)

 

同じ研究成果のネタを何十回喋っても自分でずに面白くしゃべる秘訣

自分の研究成果を学会やセミナーでずっとしゃべっていると、古いネタを何回もしゃべるときにだんだん自分で飽きてくることがあります。聞き手が初めて聞いてくれている場合には、もったいない話です。だからついつい最新の成果をしゃべらなきゃという気持ちになるわけですが、何十回もしゃべってきた古い研究成果をいつでも感動的に聴衆に伝えるための心構えはどういうものなのでしょうか?鴨頭嘉人氏のこの説明が非常にしっくりきました。

結婚式 友人スピーチに使える 心を動かす・感動スピーチの授業 (Youtube 2:50)

  • 0:58~ 同じエピソードを700~800回くらいしゃべっていても、(自分で飽きもせずに)毎回同じように感動的にしゃべることができる理由。

参考

  • 講演家の方は、同じエピソードを繰り返し話していて、自分で飽きてしまわないのでしょうか?(第2章 講演会でよくきかれる13の質問2-1 鴨頭嘉人著『今まで誰も教えてくれなかった 人前で話す極意』かも出版 2017年 78頁~)

 

聴衆とインタラクティブにセミナーを進める方法

話し方講座 – 聴衆を一瞬で引き付けるとっておきのコツ (Youtube 4:05)

  • 0:00~ スピーチの「間」が持つ凄い効果
  • 1:40~ 間が効果的な理由:相手に聞く状態ができる。

 

聴衆をコントロールする方法

口下手な人は知らない 人を動かす話し方の極意 (Youtube 10:15)

  • 7:20~ オープニングの重要性
  • 9:22~ 場の支配力

 

質疑応答の時間をうまくやる方法

セミナー講師必見!〈鴨頭式〉質疑応答の極意 話し方の学校 (Youtube 4:09)

  1. 質問してくれた内容を取り違えてはいけない 「質問してくださってありがとうございます。今聞かれた内容は私にはXXと捉えられましたが、あっているかどうか確認してもよろしいでしょうか?」
  2. 知ったかぶりをしないこと 「わからない」と答える勇気
  3. 質問者と知識で競わない

(Q&Aの時間が、実は怖くて仕方ありません。何かコツはありますか?(第2章 講演会でよく聞かれる13の質問 鴨頭嘉人著『今まで誰も教えてくれなかった 人前で話す極意』かも出版 2017年 160頁~)

 

参考(その他のYoutube動画)

参考(著書)

  • 鴨頭嘉人 著『決定版! あがり症克服の教科書』 2018年7月30日