日本の科学と技術

STAP細胞論文研究不正の後始末にかかった費用

STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)に対して理化学研究所が論文掲載料60万297円の返還を請求していましたが、7月初めに小保方氏の代理人が返還に応じる意志を伝え、2015年7月6日に入金が確認されたそうです。

英科学誌ネイチャーの論文掲載料合計60万297円の内訳は神戸新聞によれば、

アーティクル:32万3948円
レター論文:27万6349円

ちなみにSTAP細胞論文問題で理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費の総額は8360万円に上るそうです。その内訳は今年3月の毎日新聞の記事によれば、

二つの調査委員会          940万円
保存試料の分析          1410万円
検証実験(実験室整備費など含む) 1560万円
検証実験の立会人旅費        180万円
自己点検検証委員会          80万円
改革委員会             400万円
メンタルケア            200万円
広報経費(記者会見会場費など)   770万円
法律事項など専門家への相談    2820万円

また、理研が小保方氏に支給した研究費は約2年間で約4600万円とのこと(読売新聞)。

結局、「約1億3千万円+本人の給与」という金額が、「STAP細胞」というアイデアに費やされたことになります。

研究費4600万円を使って研究不正行為を働いても、論文掲載料60万円しか返さなくて良いという、現在の日本の研究不正処理が果たして妥当なものなのかは、議論が望まれます。

② 日米ともに、捏造、改ざん、盗用を研究不正と定義しており、表面的には同じように
見えるが、米国は研究計画の申請から研究成果の発表までを対象としているのに対して、
文部科学省の研究不正ガイドラインは研究成果の発表のみを対象としている。そのため、
特に改ざんの定義は異なったものになっている。
③ 日本では、米国の研究不正規律ではみられない再実験を、研究不正の調査方法として
位置づけているが、論理的にも現実的にもその有効性には疑問がある。

⑤ 日本では、研究者の倫理観や行動規範の立場から研究記録の保存を求める傾向がある。
米国では、研究記録の不存在は、研究不正の定義に基づき改ざんであり、かつ故意性の
証拠とされる。この違いは、研究不正を研究発表の段階に限定するか否かの違いに由来
する。…我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか

 

参考

  1. STAP論文:不正問題 調査に8360万円 理研、突出した代償に (毎日新聞 2015年03月21日):”STAP細胞論文問題で、理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費が総額8360万円に上ったことが分かった。”
  2. 小保方氏が論文掲載料の返還請求に応じる 理研口座に60万円 (スポニチ Sponichi Annex2015年7月7日):”小保方氏の研究費について理研は、実際に実験は行われ、不正に使われたとは言えないとしており、請求の対象は論文掲載料に限定した。STAP問題では検証実験や調査費用などに4千万円近くかかったが、規定などを理由に理研が負担した。”
  3. STAP細胞問題 小保方氏が論文掲載料60万円返還 (神戸新聞2015/7/7):”理化学研究所は7日、STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)が、論文掲載料約60万円の返還請求に応じ、理研が指定した口座に全額入金したと発表した。”
  4. 小保方氏、STAP論文掲載費60万円を返還 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年07月07日):”STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所は7日、4件の不正があったと認定した小保方晴子・元研究員から、論文掲載費約60万円の返還を受けたと発表した。”
  5. 小保方晴子ユニットリーダーの研究費は5ヵ年契約で1億円
  6. 【追悼】笹井芳樹(1962- 2014)
  7. 我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか(下) ―研究不正規律の反省的検証― (国立国会図書館デジタルコレクション PDFリンク)
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