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科研費が不採択だったら、開示された審査結果を分析して改善点を探そう

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科研費で採択された場合、どれくらい余裕でボーダーを超えていたのかがわかりませんが、不採択だった人には、審査結果が開示されます(2月末の採択通知になってからは、4月の上旬くらいの時期だったと思う)。それを見れば、落ちた人の中でのおおざっぱな位置づけがわかります。

おおよその順位は「A」でした。なら、審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、上位20%に位置していた、ということです。とても惜しいですね。

おおよその順位は「B」でした。なら、審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、上位21%~50%に位置していた、ということです。改善の余地が大いにあります。

おおよその順位は「C」でした。なら、審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、上位50%に至らなかった、ということです。採択されるためには、劇的に改善させる必要があります。

採否が決まるのは「総合評点」によりますが、参考として、評定要素ごとの点数がつけられその情報も開示されます。評定要素は、①研究課題の学術的重要性、②研究方法の妥当性、③研究遂行能力及び研究環境の適切性 の3つです。総合評点は相対評価ですが、評定要素ごとの評点は絶対評価でつけられます。一人の審査委員が4点満点(1点~4点)で評点をつけ、若手研究や基盤研究(C)だと4人審査委員がいるので、合計点を4で割って算出した平均点が開示されます。採択課題の平均点は3点を少し超えるくらいです。3.25点だとすると3.25×4=13点、つまり4人の評点が(3、3、3、4)なら平均的な採択者になれます。平均点なので、もっと悪くても採択されている人はいるのでしょう。

自分の点数から、一番ありそうな審査委員4人の評点分布を予想してみる:

採択者の平均レベルに達するためには、3(良好である)は最低確保すべきで、一人くらいが4(優れている)をつけてくれればよいということになります。

平均点が2.25点だとかなり低いと感じますが、それでもみんなが2点をつける中で、3点をつけて評価してくれた人が一人はいたのだということがわかり、励みになります。

また、1や2をつけた審査委員は、さらに細かく何が悪かったのか、その項目に*印をつけて教えてくれます。

(2)【審査の際「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」と判断した項
目(所見)】

評点「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」が付された評定要素に
ついては、そのように評価した審査委員の数を項目ごとに「*」で示しています。(最
大4個)

評定要素 項目    審査委員の数

①研究課題の学術的重要性   

  • 学術的に見て、推進すべき重要な研究課題であるか   **
  • 研究課題の核心をなす学術的「問い」は明確であり、学術的独自性や創造性が認められるか
  • 研究計画の着想に至る経緯や、関連する国内外の研究動向と研究の位置づけは明確であるか
  • 本研究課題の遂行によって、より広い学術、科学技術あるいは社会などへの波及効果が期待できるか

②研究方法の妥当性     

  • 研究目的を達成するため、研究方法等は具体的かつ適切であるか。また、研究経費は研究計画と整合性がとれたものとなっているか   * *
  • 研究目的を達成するための準備状況は適切であるか

③研究遂行能力及び研究環境の適切性   

  • これまでの研究活動等から見て、研究計画に対する十分な遂行能力を有しているか   *
  • 研究計画の遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等、研究環境は整っているか

3.その他の評価項目の評定結果
研究経費の妥当性について
「研究経費の内容に問題がある」と評定した審査委員はいませんでした。

4.留意事項
人権の保護及び法令等の遵守を必要とする研究課題の適切性につい
「法令遵守等の手続き・対策等に不十分な点が見受けられる」と指摘した審査委員はいませんでした。

 

「研究目的を達成するため、研究方法等は具体的かつ適切であるか。また、研究経費は研究計画と整合性がとれたものとなっているか」というのは2つの異なる観点を含んでいるため、ここに*印が付いていた場合、前半と後半のどちらが該当するのかがわかりません。これはJSPSに改善してもらいたいものです。

上述した情報を踏まえて、あらためて不採択になった計画調書を読み返せば、計画調書のどの部分がこれらの低評価と対応するのかが、見えてきます。もし自分で見当がつかないのであれば、同僚などに頼んで読んでもらいましょう。

次こそは採択されたいというあなたへお勧めの記事

採択される科研費計画調書の書き方と申請書作成の戦略22のポイント

採択される科研費申請書を書くためのノウハウ集です。ネット上の有益なアドバイスを総まとめにしました。

 

落ちる科研費の申請書の典型例

問題設定がない

「論文報告がないので、本研究を行う」という論調で科研費申請書を書く人が非常に多いのですが、なぜその研究をやるの?という読み手の疑問に答えないままいくら実験の詳細を書いても、研究の価値を認めてもらえません。分野外の人が読んでもわかるような易しい言葉遣いで、当該領域の問題が何なのか、なせその問題設定をする必要があるのかをしっかり述べるべきです。問題提起をして初めてそれに対する解決策としての実験目的・実験計画が意味を為すのです。問題提起を丁寧に説明している申請書は、たとえ専門外の審査委員が読んだとしても、この領域は自分はよくわからないけれども、重要な研究みたいだということは伝わります。

独自性が独りよがり

「本研究に関しては他に論文報告がないので独自性がある」と申請書に書いてしまう人がとても多いみたいですが、それだけ書いても全く説得力がありません。これは採択されない申請書の典型的な書き方と言えます。

関連記事 ⇒ 採択される科研費申請書の書き方22のヒント

まずこれを読みましょう

多くの研究者が科研費の申請書の書き方に関する教科書を読んでおり、申請書のレベルは一昔前よりもあがっています。今どき、これらの本を読んでいなければ差は広がる一方なのではないでしょうか。

とくにシニアレベルの研究者で最近科研費が取れなくなっている場合は、古臭い書き方を続けているのが不採択の原因かもしれません。なぜなら科研費は、他の(若くて勢いのある研究者らの)申請書と比較されて採否が決まるからです。当然、見栄えも大事になってきます。ぱっと見で見劣りしたら負けます。

 

 

「科研費 獲得の方法とコツ」が定番中の定番ですが、今年2022年8月20日、あらたな科研費バイブルが登場しました。狙って獲りにいく科研費 です。審査委員がどうやって審査しているのかを徹底解説しており、落とされにくい科研費申請書とはどのようなものかを解説しています。科研費本も増えてきましたが、自分の感覚に一番近いのは、この、狙って獲りにいく科研費 かもしれません。

それと、実は「科研費改革と研究計画書の深化」というマイナーな本が自分は好みです。絶版なのかアマゾンでの中古の価格が高騰してしまっていますが、研究支援部署の大学職員の方が、長年の添削経験に基づいて書いており、非常に納得させられる内容です。読者ターゲットは研究者というより研究支援者なのかもしれませんが、当然のことながら研究者が読んで役に立つ内容です。

論理的とは?

申請書を論理的に書かない人は、論理的じゃない人。論理的じゃない人は研究できない人。研究できない人には研究費をあげられない、と思われると思います。

日本語からやり直そう

話すのと書くのは大違い。学会発表ができるから文章も書ける、ということは決してありません。日本語の文法や語法を守っていない人は論外ですが、理解できない、伝わらない文章を審査委員に読ませておきながらお金をくれというのはいかがなものかと思います。

何が悪かったの?

自分が書いた文章の欠点は、書いた本人はなかなか気付けないものです。誰かに読んでもらうのが一番。同僚、先輩、先生、部下、URA、研究支援部署の事務職員、国語力のある配偶者や親兄弟に頼めればいいのですが、適任が見当たらなければ、商業的な添削サービスを利用してみてはいかがでしょうか。

  1. coconala 個人のスキル・経験を、必要とする人に結びつけるプラットフォーム。「科研費チェック」、「科研費」などのキーワードで検索すると、科研費の添削サービスを個人で提供している人が見つかります。
  2. 科研費の添削.com 科研費の申請のプロであるURAによる添削サービス 添削支援の流れ
  3. 科研費.COM 申請書の添削サービス お申し込みの流れ
  4. アスナル 研究申請調書の第3者的視点からのレビューや様式点検、若手研究者等についてはテーマ探索や研究計画立案上の基本事項に係るアドバイスなど
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  7. educe 支援業務 概要一覧 申請書類のブラッシュアップを目的とした、個別のレビュー・添削を行います。
  8. 株式会社 早稲田大学アカデミックソリューション 学内のみ???

論文があれば

科研費は相対評価、競争なので、他の人よりも論文業績で劣っていたら、いくら申請書の質を上げても限界があります。

もう疲れた

科研費は博打に近いところがあるので、今の科研費のシステムが良いとは全く思えません。科研費を落としたら研究費がゼロなんて、恐ろしすぎます。

そうは言っても、科研費を獲り続けるのがしんどい人は、アカデミアで生き残るのは難しいかもしれません。

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