Monthly Archives: January 2018

論文数世界ランキングで日本は6位に後退

全米科学財団(National Science Foundation, NSF)が、世界の科学技術の動向をまとめた報告書Science and Engineering Indicators 2018を発表しました。2016年の論文数世界ランキングで、日本は6位。論文総数が減少傾向にある国は日本だけで、その凋落ぶりが際立ちます。

論文数ランキング1位は中国 、以下、2.アメリカ、3.インド、4.ドイツ、5.イギリス、6.日本。7.フランス、8.イタリア、9.韓国、10.ロシア、11.カナダ、12.ブラジルの順。

(出典:Science and Engineering Indicators 2018)

中国の台頭は、総論文数だけでなく被引用数ランキングトップ1%論文のランキングで見ても、著しいものがあります。

(出典:Science and Engineering Indicators 2018)

 

ちなみに前回の報告書Science and Engineering Indicators 2016では、日本は3位でした。Science and Engineering Indicators 2018のレポートでは、ドイツ、イギリス、インドに抜かれて6位に転落したということになります。

(出典:Science and Engineering Indicators 2016)

 

10年前の報告書

日本が論文数2位という時代が、かつてありました。

(出典:Science and Engineering Indicators 2008)

 

報道

  1. 科学論文数、日本6位に低下…米抜き中国トップ (読売新聞 YOMIURI ONLINE2018年01月25日 15時13分):”【ワシントン=三井誠】科学技術の研究論文数で中国が初めて米国を抜いて世界トップになったとする報告書を、全米科学財団(NSF)がまとめた。 … 報告書は各国の科学技術力を分析するため、科学分野への助成を担当するNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だった米国を抜いた。日本は15年にインドに抜かれ、16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位。”
  2. 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査産経ニュース 2018.1.25 18:07更新)【ワシントン=塩原永久】各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。

 

Science and Engineering Indicators

  1. Science and Engineering Indicators
  2. Science and Engineering Indicators 2018 Chapter 5 Academic Research and Development > Outputs of S&E Research: Publications
  3. Science and Engineering Indicators 2016
  4. Science and Engineering Indicators 2014
  5. Science and Engineering Indicators 2012 (PDF, 592 pages)
  6. Science and Engineering Indicators 2010 (PDF, 566 pages)
  7. Science and Engineering Indicators 2008 DigestDigest PDF (36 pages)
  8. Science and Engineering Indicators 2006
  9. Science and Engineering Indicators 2004 (Archived page)
  10. Science and Engineering Indicators 2002 (Archived page)
  11. Science and Engineering Indicators 2000 (Archived page)
  12. Science and Engineering Indicators 1998 (Archived page)
  13. Science and Engineering Indicators 1996 (Archived page)
  14. Science and Engineering Indicators 1993 (Archived page)

 

参考

  1. 研究力向上 論点 平成29年11月 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)(PDF 41 pages)
  2. 論文の引用動向による日本の研究機関ランキング(Clarivate Analytics)本分析は、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)数をもとに、世界の中で日本が大きなインパクトを与えている分野における国内で存在感のある研究機関を把握しようという試みです。 研究機関や研究者個人が特定の集合の中でどのくらいの位置にいるのかを分析する指標として、高被引用論文などの相対的な指標による分析に注目が集まっています。
  3. 国立大学協会政策研究所所長自主研究 運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究~国際学術論文データベースによる論文数分析を中心として~ 平成27年5月鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康(PDF 148 pages)
  4. 論文数で日本は世界2位から4位に 複数国への特許出願数は1位維持 (Science Portal News 2017年8月17日):”科学技術・学術政策研究所が日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標2017」をまとめ、このほど公表した。そのうち論文については「科学研究のベンチマーキング2017」としてより詳細に分析した。公表資料によると、2013~15年の3年間に日本が出した論文数は、10年前の米国に次ぐ世界2位から4位に下がり、中国、ドイツに抜かれた。日本の科学研究力の低下傾向があらためて浮き彫りになったが、一方で特許出願に着目すると現時点ではまだ世界有数の技術力を維持していることがうかがえる。「科学技術指標2017」によると、2013~15年の年平均の論文数の世界一は20年前、10年前と変わらず米国がトップ。日本は64,013件で、03~05年の67,888件から減少している。これに対し13~15年の中国は219,608件。03~05年の51,930件と比べて約4倍も増えた。10年前より論文数が増えて13~15年の数が64,747件になったドイツにも抜かれて日本は世界4位に落ちた。日本の研究者数は2016年時点で66.2万人。中国、米国について3位で、論文数順位は研究者数順位を下回った。”
  5. 調査資料 – 262  科学研究のベンチマーキング 2017 -論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況- 2017年 8月 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術・学術基盤調査研究室  村上 昭義 伊神 正貫 DOI: http://doi.org/10.15108/rm262(PDF 230 pages
  6. 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標・科学計量学 » 科学技術指標 » 科学技術指標2016(目次) » 4.1.2研究活動の国別比較
  7. NISTEP科学技術・学術政策ブックレット Ver 2 日本の大学における研究力の現状と課題 科学技術政策研究所
    平成25年4月 (PDF 36 pages)
  8. 調査資料– 239  科学研究のベンチマーキング2015  -論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-  2015年8月 文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室 阪彩香 伊神正貫(PDF 199 pages)
  9. 論文データにみる日本の化学、アジアの化学 日本化学会春季年会2013年3月24日(日)トムソン・ロイター学術情報ソリューション棚橋佳子(PDF 33 pages)
  10. 科学技術政策研究レビュー 第3巻 研究レビュ- 3-1 研究活動の国際化 ~世界の変化を見る~ 研究レビュ- 3-1-1 OECD主要国中心の活動状況 ~論文生産における日本の位置の把握 国際共著論文にみる日本の位置の把握~ 科学技術基盤調査研究室 阪 彩香  研究レビュ- 3-1-2 論文の分析から見る開発途上国の研究活動と日本との国際共著 第1調査研究グループ 加藤 真紀  研究レビュ- 3-1-3 研究者国際流動性の論文著者情報に基づく定量分析 ~ロボティクス、コンピュータビジョン及び電子デバイス領域を対象として~ 科学技術動向研究センター 古川 貴雄 (PDF118ページ)
  11. 平成23年度研究開発評価シンポジウム~研究開発機関の現状分析に基づく研究戦略の在り方について~日本および世界の論文投稿状況の分析ー これからの方向性を探る ー東京大学評価支援室インスティテューショナル・リサーチ担当船守美穂2012年3月6日(PDF
  12. 平成22年(2010年)版科学技術白書  解説 論文成果に見る我が国の状況 国・地域別論文発表数(上位25か国・地域)1988年(昭和63年)ー1998年(平成10年)ー2008年(平成20年)
  13. 日本の「数学」研究の脆弱さ、露呈。 論文数の世界シェア、中国に抜かれ第6位! 旺文社 教育情報センター 18 年 6 月 文部科学省科学技術政策研究所(NISTEP; NationalInstituteofScienceand TechnologyPolicy)は先ごろ、諸科学の礎となる数学研究について、日本と主要国の現状及び他分野研究者の数学に対する認識などを分析、『忘れられた科学-数学』(POLICYSTUDYNo.12/2006 年 5 月)にまとめた。 (PDF 8 pages)

 

過去の報道

  1. 無残な科学技術立国、人口当たり論文数37位転落 (団藤保晴 | ネットジャーナリスト、元新聞記者 YAHOO!JAPANニュース 2015/5/10(日) 6:06):”科学技術立国を唱えてきた日本の無残な実情が見えました。人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落です。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れます。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用します。 “
  2. India ranked fifth in region in paper publication (K. S. Jayaraman nature INDIA Published online 13 April 2015 doi:10.1038/nindia.2015.47):”Indian scientists published far less science papers than China in 2014 and trailed behind Japan, South Korea and Australia, according to an analysis of scientific output from countries in the Asia-pacific region1. “

京大2017年入試物理でも出題ミスの指摘

追記

新しい記事 → 京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格が17名(うち、既に京大の他学科在籍者11名)になったことが2018年2月1日の記者会見で発表されました。

* * * 以上、追記 * * *

 

2017年阪大入試物理の出題ミスを2017年8月に指摘していた予備校の先生が、京都大学の2017年物理においても出題ミスがあったのではないかという指摘をしています。

2017年京都大学前期日程物理IIIの問題文

 

 

京都大学 前期日程 物理 Ⅲ 問題文(代々木ゼミナール)

 

京大に対する出題ミスの指摘

京大の2017年入試物理でも出題ミスがあるという指摘がなされました。

 

問題点の解説

 

割れている予備校の解答

(せ)の選択問題の解答が駿台は①、河合塾と代ゼミは②と割れています。

  1. 駿台の解答 大学入試解答速報 京都大(物理問題III) せ①
  2. 河合塾 2017年国公立大二次試験 解答速報 京都大学(前期)物理 解答例 物理問題III せ②
  3. 代々木ゼミナール 2017年入試問題と解答例 京都大学 前期日程 物理III せ②

 

新しい記事 → 京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格

 

京大の2017年入試物理IIIに関するツイート

ツイッター上の様々な意見を紹介します(*随時追加、変更)

  1. 京大の問題(車が壁に平行に走るときの波の干渉の部分だけ)を解いてみた。反射での位相の振る舞いは難しいかも。SEGの先生の「車の位置での波が云々」は、言いがかりに過ぎないように思われる。 / “卵と壁?あるいは京大の音波の問題を解…
  2. さらに言えば、縦波の音波の反射条件を指定するとき、固定端や自由端という単語を使うのは避けるべき。「反射の際、位相は変化しないとする」などの方が紛れがない。それにしても、反射の際疎密波の位相が反転する特殊な壁って現実的に考えられるのだろうか。京大2017物理入試問題ミス疑惑の件。
  3. @thunderbirdroid なるほど、反射波の干渉では音を変位波とするか密度波とするかで答えが逆になるのな 音が全方位に出てること、音源と観測点の距離がゼロなことから、出題意図は密度波に思われるが、それなら壁を固定端と表現するべきではなかった
  4. 返信先: さん反射については「固定端反射と見なす」と言ってるからその前提で考えれば良いけど、「(直接波と反射波の)音波が弱め合う」という条件が微妙といえば微妙。まあ大多数の受験生は「音波が弱め合う」=「定常波の節」と考えると思いますけど。
  5. 返信先: さん 固定端という表現をすれば、高校生は「位相が反転した」と解釈して、弱め合う条件を「経路差が波長の整数倍」と解きます。それは責められないでしょう。 個人的に疑問なのは、「固定端」という表現をしたとき、作題チームは正しく音波の反射を捉えていたのだろうか、という点です。
  6. よしだひろゆき‏ @y__hiroyuki 大阪大学の問題は問題としては一応成立していて,出題者が解答を間違えたのと,その後の説明が論理的,物理的に破綻しているのに対して,京都大学の問題は,問題自体が破綻している。21:49 – 2018年1月17日
  7. 高井隼人‏ @takaiphys6 阪大は6月の入試問題検討会に出席していたので,そこで指摘されているが,京大は出席していないので,話題にはなったが京大にその声は届いていない。阪大と同様,解答速報は駿台の解答速報のみ他と違う。青本でも指摘されている。だから赤本と青本で答えが違う。結局困るのは,過去問を解く受験生。4:04 – 2018年1月12日
  8. 早川由紀夫‏ @HayakawaYukio  京都大学入試2017年物理「空気中の音波の反射条件は固定端反射とみなすものとする」う~む。 13:00 – 2018年1月10日

新しい記事 → 京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格

 

報道

  1. 京大入試の物理問題「解答不能」と指摘 正解は非公表 (朝日新聞DIGITAL 2018年1月22日12時27分):”吉田さんは19日、「本来は全員に得点を与えるべきだ」と指摘するメールを京大に送付。20日には文部科学省に対して、指導を求めるメールを送った。吉田さんは大阪大の入試ミスでも、大学側に問題の不備を指摘した。この時にミスが判明した問題も、物理で音波に関する設問だった。文科省は、京大に検証を含めた対応を促した。 一方、京大は取材に「解答に至った経緯を含む思考力をも重視する問題が多く、一義的な解答を示せない問題の正解を示すことによる混乱を招かないよう、正解は一律非公表としている」とコメントしている。”
  2. 京大入試、物理に「解答不能」…予備校講師指摘 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月21日 08時36分):”京都大(京都市)が2017年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「条件が不足しており、解答不能ではないか」などの指摘が出ていることがわかった。 京大は解答例を公表しておらず、対応を検討しているという。 京大に出題ミスの可能性を指摘しているのは、東京都杉並区の予備校講師・吉田弘幸さん(54)。大阪大の昨年2月の入試についても、物理の出題ミスを8月に阪大に伝えていた。”
  3. 京大入試、解答不能と指摘 昨年2月、物理の問題 (共同通信社 2018/1/21 12:24):”京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「解答が不能ではないか」などの指摘が複数あったことが21日、大学側への取材で分かった。”
  4. 京大入試「解答不能」と複数の指摘 昨年2月、物理の問題 阪大の入試の誤りを指摘の塾講師も (産経WEST 2018.1.21 12:35更新)
  5. 京大 物理の問題に解答不能の指摘 昨年入試で (毎日新聞2018年1月21日 12時35分 最終更新 1月21日 13時36分):”京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「解答が不能ではないか」などの指摘が複数あったことが21日、大学側への取材で分かった。”

 

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阪大が2017年入試物理出題ミスを解説

阪大2017年入試「物理」出題ミスを2018年1月6日に公表した大阪大学が、正答が3つあるという主張に関して1月12日に追加説明を公表しました。模範解答および採点にあたっての考え方が、非常に詳細に述べられています。

しかし、”問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。”と言いつつ、”A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。”という説明自体、ロジックが完全に破綻しています。

矛盾した説明しかできないということは、つまりは、この説明は苦し紛れでつくっただけで、本当のことを伝えていないということでしょう

音叉とは、軸についている二本の腕が振動することにより、ある特定の振動数をもつ音波を発生する装置である。音叉の腕の振動の様子(モード) にはさまざまなタイプがあり、主に、二本の腕が互いに逆向きに振動するモード(以下、「逆位相振動モード」と呼ぶ、A-I. で設定した振動モード) と二本の腕が同じ向きに振動するモード(以下、「同位相振動モード」と呼ぶ) がある。音叉の基本的な振動モードは一般に逆位相振動モードであり、逆位相振動モードの方が実験的に観測されやすいと思われる。ただ音叉の振動を実験的に観測した著者による参考文献Russell, D. A. (2000). \On the sound eld radiated by a tuning fork.” American Journal ofPhysics, 68(12), 1139-1145. https://doi.org/10.1119/1.1286661 および同著者によるWeb ページhttp://www.acs.psu.edu/drussell/Demos/TuningFork/fork-modes.html によると、同位相振動モードで振動している様子も実際に観測されている。音叉を一つ定めたとき、同位相振動モードおよび逆位相振動モードはどちらもその音叉に対して可能な振動モードであるが、一般にそれぞれ異なる振動数の音波を発生する(前述の参考文献)。問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。

A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。しかし、問5においては同位相振動モードで振動していることを前提として問題が作られていた。

理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)(大阪大学) (一部を抜粋。太字強調は当サイト)

阪大がこのよう模範解答を公表したことは、非常に歓迎すべきで、高校生、受験生の物理の勉強にも有益でしょう。しかし、出題ミスの釈明部分に関して言えば、全くなんの正当化にもなっていません。

〔3〕Aの問題文中には、、音叉に複数の振動モード(同位相または逆位相)が存在するという記述はありません。この物理の問題は、音叉がどのように振動して音を出すのかという予備知識を受験生に要求しておらず、むしろ、A-Iで受験生を誘導するような形で、逆位相振動モードによって音が発生する様子を図で丁寧に説明していたわけです。音叉の振動モードの可能性を複数考えると答えが一つに定まらないため、出題者の意図として、この段階で問題の条件設定をそのように絞ったということのはずです。ですから、受験生にしてみれば、A-Iでの誘導に則って、A-III問4も音叉が「逆位相振動モード」で音を発生させているという前提で解くのが当然でしょう。

A-Iの中で音叉が「逆位相振動モード」で音を出すことを丁寧に説明して受験生を誘導しておきながら、突然、A-IIIでは「同位相振動モード」で考えた答えのほうが「正答」で、「逆位相振動モード」で考えた答えも追加で正答とする阪大の態度は、矛盾しています。当然、外部からの最初の2回の指摘を却下した理由として、「同位相振動モード」で考えた答え2d=(n-1/2)λが正答だからというロジックは成り立ちません。

この追加説明は、物理の説明に関する部分は納得のいくものですが、出題ミスに関する釈明としては全く説得力がないと思います。大問のなかで分かれている小問ごとに、実は問題設定はバラバラなんですよというのは、これまでの入試の出題方法の常識を否定するような主張です。

 

阪大の追加説明に対する世の中の反応

 

阪大はなぜ誤りを認めないのか

問5との整合性を考えて問4を同位相振動モードと考え直した受験生がいたであろうという配慮から、そのような答えに3点を与えるのはやむを得ないかもしれません。しかし、本来あるべき採点、すなわち、問4で同位相振動モードで考えた解答(=誤答)は0点(配点3点)、逆位相(=正答)で考えた答えに3点、問5は設問の矛盾から問題が成立しないので全員に4点(配点4点)として採点をやり直せば、1月6日の追加合格者30人以外にも、もっと多くの合格者が出るはずです。出題ミスに伴う変則的な採点方法のせいで、問4、問5を一番正しく答えた人の中に不利益を被る人が出たという批判を恐れるあまり、阪大は誤答を頑なに認めないのかもしれません。

210ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/12(金) 22:44:07.38ID:???
この言い訳見苦しすぎるよね。
素直に間違えちゃったゴメンちゃいって言えないのかと

 

214ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 01:11:11.78ID:???>>215
阪大さん恥の上塗りをしてしまったね。 都合のいい論文必死でググったんですね。

 

218ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 09:14:15.03ID:???
まあそうしないと、今まで正解した人を不正解にしなきゃいけないもんな。
そうすると合格のラインが下がって、新たな合格者が30人じゃ効かないw

 

227ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 12:05:09.78ID:???>>228
合格者を不合格にできないけど、それは表立って言えないから捻り出された理屈じゃない?

 

232ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 13:29:08.05ID:???
それまでの解答を不正解にすると、合格ラインが下がり、逆転合格者が
さらに増えることになる。それをふせぐために両方正解にし、30名で抑えた
というのが真相だろう。

 

279ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/15(月) 00:47:01.66ID:KVLUo8Ec
物理的正しさとは関係なく一度正答とし合格として入学を認め9ヶ月経過したものを不合格にはできん。むりやりのコジツケせずにそう弁明すればいいのに。

 

(引用元:阪大入試出題ミス https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/sci/1515285792/ 投稿の一部のみ)

 

参考

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて 大阪大学 2018年1月6日(土)(1月12日追記)
  2. 高校物理における音波の解説 (PDF) 2018年1月12日 京大理 佐々真一
  3. 仕方がないので,昨日の阪大の発表を受けた小論を作成しました。
  4. Vibrational Modes of a Tuning Fork (acs.psu.edu)

 

その他のツイート

上で紹介した以降も、阪大の1月12日の説明の矛盾を指摘するツイートが多数発信されているので、目に留まったものを挙げておきます。

  1. ぼくには(もちろん、ミスがないのがベストだが、ミスをしてしまったなら)A の方が B よりもずっとずっとマシに思える。 本気で B を主張するなら、今後、阪大の入試では全てが明示的に書かれていない限りは断りなく状況をどんどん変更するということにならないか?
  2. 阪大の追加説明では、 A「音の反射について勘違いしていたお恥ずかしい」 と認めればいいところを、 B「勘違いはしていない。問1で音叉の(通常の)振動の仕方を述べたが、問4,5では(極めて珍しい)別の振動の仕方をすると断りなく状況を変更した」 としている。
  3.   で音叉モードの説明が追加されているけど、仮にそれが通るとしたら、 今度は、なぜ問5を問題文の不整合と見なし一律加点扱いにしたかの説明が要るね。 追加説明の理屈では、問題5は問題1とは独立であり、前文と整合していれば良く、実際は整合している考え方に見える。
  4. モードによって振動数が変わるから阪大の言い訳は間違ってるわけだけど、おそらくこの調子だと「ⅠとⅢで音叉の振動数は同じと書いたが、同じ音叉を使ったとはどこにも書いていない。ⅢではⅠとは別の音叉を実験に使うことを前提として作問した」って言いそう(笑)
  5. なので阪大の説明は後付っぽくて、多分真相は「どっかの位相をπ間違えてました」なんだろう。そうすると2d=(n-1/2)λが不正解っぽくなってくるが、同相モードの別音叉を使っているという解釈をすると一応は辻褄が合うのでこれも正解にしたいということなのだろう。理由はともあれ採点方針は妥当と思う。
  6. 音叉の振動モードで残るのは基音と倍音だけ。それ以外は周波数も違うし、音量も少なく、すぐに減衰してしまう。 特に重心が動くモードの減衰はとても速いだろう。  
  7. Hal TasakiさんがMasaki Oshikawaをリツイートしました 強く賛成。 昨日の資料の(嘘であることが見え見えの)異常な言い訳に固執しても得るものは何もない。むしろ、あんな「バレバレの後出し」を認めたら試験、というか、論理的な対話そのものが成立しなくなる。
  8. 昨年の阪大入試物理の件、続報 阪大の見解が公表されていますが、問題の前半での導入と矛盾しています。常識的にも、試験という限定された舞台での「お約束」としても、これはあり得ないでしょう。こんな話が通るようでは(入試に限らず)試験というものが成立しなくなる。
  9. 公式暗記やパターン処理でも多くの入試問題は解ける。でもそのような表面的思考では解けず、現象を真摯に受けとめ基本法則から丁寧に考えなければ解けない問題が良問。今回の阪大のやつは実は良問だったのに、作題者自身がハマったとはね。
  10. 阪大物理入試採点ミスの件、当局の内容の解説として「音叉の二本の枝が逆位相で振動するモードと同位相で振動するモードがある」とされる過去の論文を論ってるが、オリジナルの解答を正解に含めるための強烈な後付け対策のような気がしてならない。
  11. まとめると,大阪大学が想定した同位相振動モードは,音叉部分の重心が左右に揺れるので,音叉がある別の物体に固定されていないと発生しないし,その物体と共振しないと音が減衰する.したがって,地面に反射壁と音叉とマイクロフォンが固定された状況では発生しない.力学的に無理.
  12. 返信先: さん あまり波動は得意でないので誤りかもしれませんが、リード文に「音叉は逆向きに振動する」と書いてある以上その下で解くべきですよね? だとしたらこの解説は模範解答を無理矢理正当化したように感じます
  13. 返信先: さん、さん それにモードが
  14. 異なると振動数が変わるはずなので,問5で500Hzが使えなくなります。
  15. 音叉の同位相モードを最初に前提していた、という説明をしたのね。逆位相モードをA-Iで問うていて続くA-IIIでは一転して暗黙に同位相を前提にするのは不自然すぎる。壁の反射と同じく、他の振動モードを考えるならもっと多様な位相ずれも同時に考慮する必要があるわけで、むーん。
  16. 大阪大学の入試の物理の問題。阪大解説では、音叉の振動モードを持ち出して、苦しい説明をしています。一番大きい振動は基本波で、逆相振動です。同相振動は、高次のモードで、振幅はかなり小さくなります。問題では、音が強くなる位置を問うているので、基本波で逆相振動以外には有り得ません。
  17. 阪大物理の追加説明 A-I で設定した仮定を A-III で逆にしても正解って、酷すぎる。
  18. 当の阪大が紹介している外部サイトで同位相モードの振動数は基本振動と振動数が異なる。で、大問の冒頭部で「500Hzの音を発する音叉」といわれたものが基本振動数500Hzのものと同位相モード振動数500Hzのものの少なくとも2つあって使い分けられているとか誰がまともに信じるかボケ
  19. 阪大から、「答えが二つあること」の解説がでた。 まさかの(僕が音叉のことをよく理解していないときに可能性の一つとして適当に書いた)表と裏での密度波の位相の反転を根拠にしていた。うーむ。
  20. 大阪大学の言い訳がひどいと物理屋の間で話題に(togetter)
  21. ”なおAとBは独立した内容の問題である。”と但し書きがある以上、Aの中の実験I,II,IIIで使われた音叉の振動モードは同一であると受験者が理解するのが当然。阪大の後出し説明は、詭弁ではないか。 阪大2017年入試「物理」出題ミスの真相

 

報道

  1. 阪大 入試ミス 「解説」ミス?でさらに疑念 物理問題 (毎日新聞2018年2月17日 01時21分 最終更新 2月17日 01時47分) 大阪大にミスを指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「条件の修正がない以上、問4も(1)のタイプしか考える余地はない」と指摘する。大学で物理学を研究するある男性教授は「前の問題文で示した設定を、続く設問で説明なく覆すのは、非常識を通り越して異常だ」と批判した。 さらに、(2)のタイプの振動は、根拠にした00年の学術論文などによると「(1)よりも振動数は低くなる」とあり、ここでも矛盾が生じる。東京大の押川正毅教授(理論物理学)は「冒頭で500ヘルツとあるので、この音波が全ての問題に適応されると解釈せざるを得ない」とし、大阪大の解説について「この理屈が認められるなら、問題で与えた設定と異なる勝手な条件で考えた解答も全て正解とせざるを得なくなる」と指摘した。
  2. 入試ミスの阪大、音叉の振動はAとBのモードあるのに… (朝日新聞DIGITAL 2018年1月13日07時21分 (会員限定記事)石倉徹也、後藤一也、合田禄):”大阪大が入試ミスで本来合格の30人を不合格にしていた問題で、阪大は12日、設問の誤りについての説明資料を発表した。一般的でないケースを前提に問題が作られ、その場合の解答のみ当初正しいとしていた。”

更新・変更 20180301 毎日新聞2018年2月17日の記事があることに気付いて追加

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阪大2017年入試「物理」出題ミスの真相

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説

2018年1月6日の報道によれば、大阪大学が2017年前期日程の物理の問題で出題ミスおよびそれに伴う採点ミスをしていたことが明らかになりました。

出題・採点においてミスがあった問題

注意:この問題を解くうえで、〔3〕のA.の問題文中の実験条件、および、問A-I,A-IIで説明されている条件設定なども重要になりますので、問題文全体(PDF)(10ページ~)をご覧ください。

 

大阪大学の説明

問4 には複数の解答が存在したが、採点時において特定の解答(下記「当初の正答」)
のみを正解として扱ってしまった(採点誤り)。また、問5 については問4 の特定の解答の
みを前提とした出題であったため、問4 の複数の解答(下記「検討後の正答」)と整合しな
いこととなった(出題誤り)。
問4:当初の正答 2d=(n-1/2)λ → 検討後の正答 2d=nλ2d=(n-1)λ2d=(n-1/2)λ
のうちのいずれか一つ
問5:問題の数値設定に不整合 → 全員に4 点を付与

(大阪大学 2018年1月6日(土))

 

しかし、物理の問題なのに、異なる答えがどちらも正解というのは不可解です。大手予備校はどのような解答を出していたのでしょうか?

 

大手予備校や大手出版社の解答例

注意:以下は、2018年1月6日の報道以前の解答です。報道後、リンク先の予備校の解答は修正・変更されたものがあります。

  1. 駿台予備校  2d=nλ  駿台 2017年度 大学入試解答速報 大阪大前期日程  物理 解答例 問題3
  2. 代々木ゼミナール  d=1/2 (n – 1/2)λ 代々木ゼミナール 入試問題と解答例 大阪大学 前期日程 物理 〔3〕(注:20180112に確認したところ、修正されていた)
  3. 河合塾2d=(n – 1/2)λ 2017年国公立大二次試験・私立大入試解答速報 大阪大学(前期)物理(注:20180111に確認したところ、阪大の説明に従い、誤答を正答としたまま本来の正答を追加していた)
  4. O文社の阪大の解答間違えてるな。教えてあげた方が良いかな。教えてあげた某塾はまだ直していない。怖いのは、阪大も誤答を正解としていること。— よしだひろゆき (@y__hiroyuki) 2017年8月7日

  5. いま確認したら,赤本の解答も旺文社河合塾と同じだった。— よしだひろゆき (@y__hiroyuki) 2017年8月12日

  6. 問5で与えられた数値から考えると、問4の僕の答えは誤りということになります。しかし、理屈としては僕の解答が誤っているとは思えなかったので、代々木ゼミナール、河合塾、駿台予備校、東進ハイスクール等の解答速報や旺文社の赤本の解答と照らし合わせたところ、旺文社代々木ゼミナール河合塾2d=(n-0.5)λ
    駿台予備校東進ハイスクール2d=nλというふうに、やはり解答が割れています。学校の先生にも訪ねては見たのですが、いまいち要領を得ず、高校の仲間数人と議論した結果やはり僕の解答に間違いはないように思われます。
    (以下の問題は今年度の大阪大学の前期入試問題なのですが、過去問演習の際、少し違和感を感じたのでご意見お聞かせいただけますでしょうか。YAHOO知恵袋 2017/9/19 18:23:45)

 

驚いたことに大手予備校や大手出版社の解答が、割れています。掲示板でもそれが話題になっていました。

 

掲示板での感想戦

778 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 22:57:56.02 ID:MpJ7Frr00

物理の波動の問4 駿台やと2d=nλで 代ゼミやと2d=(n-1/2)λやったんやけど
どっちが正解なん?

779 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:42:35.77 ID:mlXatSip0

>>778
駿台のが正解ちゃう?
代ゼミのは固定たん反射でかんがえてるんちゃうかな

780 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:48:07.06 ID:Aii/Xnwg0

>>778
河合も代ゼミと同じだった気が

781 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:48:50.13 ID:6wg68lH+0

>>779
問題に固定端ってかいてるで

782 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:55:05.03 ID:mlXatSip0

>>781
本間や
死んだ

(引用元の掲示板:【阪大】大阪大学理系★14【理系】https://tamae.5ch.net/test/read.cgi/kouri/1457517988/

177名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:06
>>176
そこの答え駿台と河合で違ったんだが…

 

178名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:08
>>176
それ、2d=nλやで、駿台の答えもそれ。
音波の強弱は光波と違って疎密で考えるから

 

179名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:09177
駿台が正しいよ あれは音叉が縦やから反射波と疎密が一致する。(1)でも誘導がついてるし。

(引用元の掲示板:2017年度大阪大学合格最低点予想スレ – 大阪大学掲示板 http://www.100ten.info/osaka/68/?sort=all

 

代ゼミ、河合塾、旺文社、赤本は大阪大学の「当初の正答」に同じで、駿台の答えが、「新たに追加された正答」と同じのようです。さて、物理の問題の答えとしては、どちらが正しいのでしょうか?

 

正答に関して議論しているツイート等

以下に紹介するツイート等は、2018年1月6日の報道を受けた議論です。

音波の伝搬においては変位,流速,圧力,温度,すべてが変化する。これらは単純な関係(微分とか)でつながっていて,ぜんぶ整合的に動く。変位に着目しようが圧力偏差に着目しようが,粗密に着目しようが音波という現象はひとつである。 ‥‥ 空気中を伝わってきた音波が硬い壁にぶつかる場合,圧力は同位相,変位や流速は逆位相で反射することが分かる。同位相・逆位相は着目する物理量によって異なるが,音波の反射というひとつの現象を,異なる視点から眺めたものに過ぎない。(引用元:阪大入試をダシに音波の話

‥‥ ということを、問題文の前半できちんと「解説・確認」しているからです。(この「この記述があるのに問4で間違えたのが解せないんだよね。という言葉に100%同意する具合です。ただし、こうした知識を持ち、丁寧に順を追った解説まで行う出題者が壁の”反射”を取り違えるような取り扱いをするとは全く感じられません。定義の取り違えではなく、単純な忙しさなどからくるケアレスミスなら理解できるのですが・・・) それに対して、出題者が壁を「境界条件」どのような境界条件で取り扱うかを間違えたということは、個人的には可能性は低いことだと感じます(引用元:大阪大学 2017年度前期日程「物理」を「面白い物理エッセイ」として読んでみる

 

阪大の対応に関するツイート等

阪大の発表だと、当初の正答は正答であり、当初は誤答とした解答も正解として認めるような言い方をしています。「物理として正しい正答」はどれなのか、「出題ミスを踏まえたうえで、採点、合否判定の都合上、やむなく点を与えると言う意味での正答」がどれなのかという区別がなされていません。阪大の説明を受け売りして、新聞も「正答が3つあった」と報道していますから、これでは、物理を勉強している高校生が混乱させられます。当初正答としたものが実は誤答だったという事実を認めない大阪大学の態度は、誠実さからは程遠いと思います。

(阪大に採点ミスを指摘した吉田弘幸氏)「物理という科目は、問題の組み立てがきちんとしていれば誰が解いても正解は1つになるが、今回の問題のような音の伝わり方については勘違いが起きやすい。誤って不合格とされ、1年近く、そのままにされていた受験生のことを思うと悲しい気持ちになる。外部からの指摘があった際、しっかりと検証できる体制を整えてほしい」(大阪大出題ミス ”検証できる体制を” 改善求める声相次ぐ NHK NEWS WEB 1月7日 19時31分)

 

問題作成ミスのまとめ

問題作成者が問4を(おそらく)誤答(2d=(n-1/2)λ)し、それに基づいて問5を作成したため、受験生がもし問4を出題者と同様に誤答(2d=(n-1/2)λ)すれば問5で矛盾が生じないが、問4を正解(2d=nλ)した受験生は、問5では問題設定(nは自然数)との矛盾(計算したnが自然数からかけ離れる)に遭遇する、ということのようです。この矛盾を気にせずに問5で問われている音速を計算することはできるため、問4の答えが異なる駿台と代ゼミでも、問5の答えの数値は一致しています。

なお、阪大は誤答だったとは言わずに、正答が複数あったという言い方をしているため、新聞やテレビでもそのように報道されていますので、注意を要します。

 

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説(←阪大は問4を誤答したとは認めていません)

 

大阪大学の謝罪記者会見

大阪大学30人追加合格 去年の入試でミス 3回指摘(18/01/07)

 

このミスにより本来であれば合格していた30名が不合格とされていたそうです。今更ながらですが、この30名に関して、大阪大は追加合格者として入学を認め、金銭的な補償も行う方針です。

昨年の入試で合格していたはずの大阪府内の男性(19)は現在、再び阪大を目指して予備校に通う。自宅に6日午前11時ごろ、電話がかかってきた。相手は阪大。追加合格を知らせる内容だった。(大阪大採点ミス 予備校通い、突然電話で「合格」に混乱 毎日新聞2018年1月6日 22時03分(最終更新 1月6日 23時27分)
 

追加合格となった30人の内訳は理学部が4人、医学部が2人、歯学部が1人、薬学部が2人、工学部が19人、基礎工学部が2人。(大阪大が昨年の入試で出題と採点ミス 30人の追加合格者を発表 3度目の間違い指摘で判明。ねとらぼ 2018年01月06日 19時30分)

 

入試問題ミス発覚時系列まとめ

(参考元:読売新聞2018年1月7日紙面、NHKウェブ記事朝日新聞DIGITALFNNニュース

  • 問題があった物理の入試問題作成には10人以上の教員が関与、開催された学内会議は15回以上。
  • 2017年2月25日 大阪大学入学試験前期日程 物理の試験を実施
  • 2017年2月28日 駿台予備校や代々木ゼミナール、河合塾の解答速報が異なることがインターネット掲示板で話題に
  • 2017年3月6日 駿台予備校や河合塾の解答速報が異なることがインターネット掲示板で話題に
  • 2017年3月9日 大阪大学入学試験合格発表
  • 2017年6月10日(外部からの1回目の指摘) 駿台予備学校大阪校物理講師 古大工(こだいく)晴彦氏が、「物理教育を考える会」(高校・大学教員、予備校講師らが近畿の大学入試について意見交換をする会)で、阪大の試問題作成責任者の教員に「解答が間違っている」と指摘。阪大教員は「本学の解答で良いと思う」と説明。
  • 2017年8月7日 予備校講師吉田弘幸氏が阪大のミスに気づいたツイートを発信

  • 2017年8月9日 (外部からの2回目の指摘)吉田弘幸氏が阪大に対して入試問題ミスの可能性を指摘するメール。阪大は、問4の正解として2d=(n-1/2)λと伝えるだけの回答を返信。それを見て吉田氏は、その「正解」(誤答)に基づいて阪大の採点が行われたことを危惧し、さらに詳しい説明を伝えるも、阪大からはそれに対して返答なし。
  • 2017年9月 吉田氏は文部科学省大学振興課にも「大学ではミスに気付かず、誤った解答例に基づいて採点・合否判定が行われたようです」と阪大の入試問題ミスを伝えるメールを送信。文科省からは「大阪大学に事実の確認などを行ったうえで、問い合わせに対して回答を行うことを促すことはできます」という返信があるも、それ以上の対処はなされず。
  • 2017年9月19日 ヤフー知恵袋で、高校生がこの問題に対する「違和感」を訴える
  • 2017年12月4日(外部からの3回目の指摘)入試問題ミスを指摘する(さらに別の人(大学教員といううわさ)からの)メールが阪大に届く。
  • 2017年12月19日 問題作成責任者以外の教員4人も加わって検討。入試問題ミスを認める。
  • 2017年12月27日~28日 合格判定のやり直し
  • 2018年1月6日 記者会見にて事情説明
  • 2018年1月 不合格者の状況や阪大への入学の意志などを確認する予定

 

入試問題ミスへの対応が遅れた原因

(参考元:読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第28面の記事)

  • 1回目、および2回目の指摘に対しては、問題作成責任者と副責任者の2名の教授のみで検討し、学内での情報共有はなし。
  • 大阪大学には、入試問題ミスを指摘された際の対応を定めたマニュアル等は存在せず。

 

大阪大学は意図的に隠したのではないのか

報道では、指摘を受けた教授らが学内で情報を共有しなかったため対応が遅れたということです。しかし、このような大失態が明らかになると文科省からの評価が下がるという懸念があったから、という可能性はないのでしょうか。2017年度を振り返ってみると、大阪大学は文科省から様々な評価を受ける機会がありました。

  • 2017年6月10日(外部からの1回目の指摘)
  • 2017年6月30日 文部科学省が「指定国立大学法人」を発表。東大、京大、東北大が選ばれる。大阪大学は選にもれ、「指定候補」どまり。(文科省
  • 2017年8月9日 (外部からの2回目の指摘)
  • 2017年8月23日 大阪大学が平成29年度「データ関連人材育成プログラム」に他3大学とともに選定される(PDF文科省)
  • 2017年11月30日 大阪大学が、「研究大学強化促進事業」中間評価で他4大学・研究機関とともに「S」ランクの評点(最高の評価)を獲得。(PDF 文科省)
  • 2017年12月4日(外部からの3回目の指摘)

 

責任の所在は何処に

人間に間違いはつきものですから、今回の問題を入試問題作成責任者個人の責任に帰するべきではありません。連絡を受けた文科省や大阪大学が適切な対応を直ちにとらなかったという「組織としての責任」が厳しく問われるべきでしょう。大阪大学は2018年1月の発表で、「正答が複数あったのに他の正答に点を与えなかった採点ミス」などと、体面を取り繕うような説明をしました。このような、最初の答えが誤答でないという印象操作をするのは、問題を矮小化しようとする組織の体質の顕れではないでしょうか。

出題ミスより深刻な故意の学術的ミス(実際の誤りの隠蔽と虚偽の弁明)を冒しており、教育的効果としては、こちらの方が格段に悪質 — レッドカード である。(http://www7b.biglobe.ne.jp/~fortran/wave/QT.html

大学入試における出題ミスというのは、今に始まったことではなく、何十年も前から存在する問題です。その問題を今までずっと放置してきた文科省や大阪大学のガバナンス(組織統治)のお粗末さが一番の要因だと思います。本来なら不合格とされた人たちに謝罪すべき立場の文科省が、上から目線で「遺憾である」などというのも無責任で、当事者意識が欠如しているようです。

大阪大学の入試ミスを受けて、文部科学省は全国の大学に対して、外部からの指摘で入試ミスの可能性が判明した場合は、直ちに組織的な体制で検証するなど再発防止を図るよう通知しました。大阪大学は、去年2月に行った入試の物理で出題ミスがあり、本来は合格だった30人を不合格としていたことを今月、明らかにしました。これを受けて、文部科学省は9日、全国の国公立と私立の大学に対し、再発防止を図るよう通知しました。(阪大入試ミス受け 文科省 再発防止へ全国の大学に通知 NHK NEWS WEB 1月10日 5時30分)

正答が3つというのは真実ではないわけで、真実に反することを公式発表した阪大は、ウソをついたと言ってよいでしょう。そのウソを、新聞社がどこもかしこも真に受けて報道するものですから、多くの人はそれをまた信じてしまいます。

朝日新聞 2018年1月12日05時00分 社説 ミスがあったのは音波に関する二つの設問で、一つは、解答が三つあるのに一つしか正答と認めず、これを前提に次の設問を出していた。

東京新聞 2018年1月11日社説 ミスが判明したのは、音波に関する問題だった。三つの正答があるのに、一つのみを正答として扱った設問があり、さらにその解答を前提にして次の問いが立てられていた。連鎖して誤りとなった

中日新聞 2018年1月11日社説 ミスが判明したのは、音波に関する問題だった。三つの正答があるのに、一つのみを正答として扱った設問があり、さらにその解答を前提にして次の問いが立てられていた。連鎖して誤りとなった

読売新聞 2018年01月10日 06時05分 社説 音波に関する問題で、正答が三つあるのに、一つのみを正解とした。この答えを基に数値を求める次の設問も成立しなくなった。

毎日新聞 2018年1月10日 東京朝刊 社説 ミスがあったのは物理で、最初の設問に三つの正答があるのに、正解を一つに限定していた。さらに次の設問はこの解答を前提に作られたため、関連して間違いとなった

京都新聞 2018年01月08日社説 ミスがあった問題は2問あり、1問は正答が三つあったが、阪大は一つのみを正答とした。この問題の正答を前提にもう一つの1問が作成されており、別の二つの回答では問題が成立しなくなった。

産経ニュース 2018.1.8 21:49 阪大によると、ミスがあったのは物理が必須科目の工学部、基礎工学部、理学部の一部学科の受験生など3850人が解いた問題。正答は複数あったが、特定の解答のみを正答としていた。この解答を前提にした次の問題も不適切だったとした。

日経新聞 2018/1/8 0:15 音波に関する数式を解答する設問に正答は3つあったが、1つのみを正答として採点。この解答を前提に数値を求める次の問題も成立しなくなった。

阪大は、外部からの再三にわたる指摘を長い間無視してきたうえに、この期に及んでまだなお真実を捻じ曲げた説明をしました。科学者を育てるはずの研究大学が、入学試験の時点ですでに科学的な真実をないがしろにし、受験生のことを顧みずに組織の保身に走っているのだとしたら、本当にとんでもない話です。来年以降もずっと、日本の高校生や阪大受験生は2017年のこの過去問を解くたびに、正答が3つもあるのかと混乱させられるのでしょうか。
 

高校生・受験生へのメッセージ

 

 

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説(←正答が3つという理由の説明)

 

参考

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて 大阪大学 2018年1月6日(土)
  2. 大阪大学大学入試の物理の出題ミス発覚の背景(1年間)(https://togetter.com/li/1187976) (吉田弘幸氏ツイートのまとめ)

 

報道

  1. 阪大入試ミス “1年遅れ合格”の経済的損失は1人1000万円超 (日刊ゲンダイ 2018年1月13日):”4大卒でサラリーマン人生を選べば、22歳から40年ほどの労働時間がある。一般的に、1年ロスすると、生涯賃金の2・5%を失うと考えられています。阪大卒業後、一流企業に入社し、年功序列で順調に出世。生涯賃金4億円と仮定すれば、1000万円は失ったことになります。”
  2. 阪大の問題作成者「本学解答で良い」 予備校講師指摘に朝日新聞DIGITAL2018年1月9日22時32分):”駿台予備学校の大阪校などで物理を教える古大工(こだいく)晴彦さん(56)は昨年6月、高校や大学の教員、予備校講師が近畿の大学入試について意見交換をする「物理教育を考える会」で、阪大の問題作成者の教員に「解答が間違っている」と指摘した。だが、教員は「本学の解答で良いと思う」と説明。”
  3. 大阪大、本来不合格の受験生合格 入試ミス問題で調査委設置へ (上毛新聞 2018/01/08):”大阪大が昨年2月に実施した入試の物理科目でミスがあり、本来合格していた30人を不合格にしていた問題で、本来不合格だったのに合格となった受験生が同数程度いたことが8日、大学関係者への取材で分かった。”
  4. 大阪大学入試ミス 合格通知が届いた学生“揺れる思い” (8カンテレ 1/8 20:36) :”「1年間、他の大学行ってたんで、悔しいっていうよりは、何やろうみたいな。まだ正直、今行っている大学に通い続けるか、阪大行くかっていうことは決めてないですけど、初めからやる苦しさっていうのを覚えてるんで、それもう1回やるんかみたいな。友達とか周りの人とかから意見聞いてるんですけど、ほんまに半々」”
  5. 追加合格の1人から転入の相談 大阪大、検証委も検討 (朝日新聞DIGITAL 2018年1月8日18時54分):”大阪大の入試の出題と採点に誤りがあり、本来合格の30人を不合格にしていた問題で、阪大は8日、追加合格とした30人全員と連絡が取れたと明らかにした。うち他大学に通う1人から阪大の2年次への転入について「説明を聞きたい」と相談があったという。…  阪大は30人について、今春の入学か、他大学で学んでいる場合は履修状況を確認した上で2年次に転入できるようにする方針を決めている。1月末までに転入学の意思を確認し、本人や家族と協議する。ただ、今年の入試の準備をしている浪人生もいるとみられることから、最終的な意思決定は3月末までとし、他大学を受験した上で決めることも可能とする。”
  6. 追加合格の男性「望んだ形でなかったが…」阪大入試ミス (朝日新聞DIGITAL 1/8 17:55):”男性は6日、阪大から電話で追加合格と謝罪の連絡を受けた。対応の遅さに怒りも感じたが、「うれしい気持ちが一番強かった」と振り返る。苦しかった浪人生活の努力が第1志望合格という目標達成に結びつき、「望んだ形ではなかったが、努力の成果を確認できたから」だという。…  男性は現時点では、阪大への転入学は考えていないという。いま、学びたいことが学べる環境にあるといい、「置かれた環境で精いっぱい頑張り、後に『やっぱりここで良かった』と感謝できるような大学生活を送ることを心掛けることが大切なのではないかというのが私の考え」と記した。”
  7. 不適切対応の経緯 調査委設置へ 追加合格30人と連絡、1人入学の意思示す (産経WEST 2018.1.8 11:24):”大阪大が昨年実施した入試の物理科目で出題と採点にミスがあり、受験生30人を不合格としていた問題で、阪大は8日、外部から複数回指摘があったにもかかわらず、適切に対応できなかった経緯などを調べる委員会を近く設置する方針を明らかにした。今後人選などを進める方針。… また阪大は8日、追加合格となった30人全員と7日夜に連絡が取れたと明らかにした。このうち他大学に通う1人が、阪大への入学の意志を示しているという。”
  8. 別の大学に入学、追加合格「今さら言われても」(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月08日 08時59分);”大阪大が2017年2月に実施した一般入試のミスで本来合格していた30人を不合格にしていた問題で、追加で合格になった男性(20)が7日、読売新聞の取材に応じた。 男性は現在、大阪府内の別の大学に通っており、「今さら合格と言われても、どうしようもない」と戸惑いを見せた。”
  9. 大阪大入試ミス 外部指摘を学内で共有せず、対応半年遅れに (日本経済新聞 2018/1/8 0:15):”音波に関する数式を解答する設問に正答は3つあったが、1つのみを正答として採点。この解答を前提に数値を求める次の問題も成立しなくなった。”
  10. 社説:阪大の入試ミス  救済遅らせた思い込み京都新聞 2018年01月08日掲載):”ミスがあった問題は2問あり、1問は正答が三つあったが、阪大は一つのみを正答とした。この問題の正答を前提にもう一つの1問が作成されており、別の二つの回答では問題が成立しなくなった。”
  11. 大阪大出題ミス 予備校講師語る (FNNニュース 01/08 06:23):”大阪大学によると、出題ミスがあったのは、2017年2月に実施された入学試験の物理の問題で、解答が3つあるのに1つの解答だけを正解とし、さらに、その解答を前提として、次の問題を出していた。この問題ミスを大学に指摘した予備校講師・吉田弘幸さんは、大学とのやり取りを「(問題について)設定が不自然ではないかと指摘させていただいて、(これに対しては)大学の解答ですね、結論、これだけが知らされてきました。出題者側に勘違いがあるのではと思い、その点をもう一度、メールで指摘させていただいた。これについては、大学からの回答はいただけませんでした」と語った。”
  12. 大阪大出題ミス ”検証できる体制を” 改善求める声相次ぐ (NHK NEWS WEB 1月7日 19時31分)
  13. 阪大入試ミス、30人追加合格…指摘2度スルー (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月06日 23時11分)
  14. 大阪大採点ミス 外部からの指摘、3度目で認める (毎日新聞2018年1月6日 18時18分 最終更新 1月7日 00時37分)
  15. 阪大、入試で採点などミス 30人不合格 (日テレNEWS24 1/7(日) 1:14):”出題や採点にミスが見つかったのは、昨年度の大阪大学の入試問題で出題された物理の問題2問。問題で得られる正解が3つあるにもかかわらず、1つのみを正解とするなどしていた。”
  16. 大阪大採点ミス 予備校通い、突然電話で「合格」に混乱 (毎日新聞2018年1月6日 22時03分 最終更新 1月6日 23時27分)
  17. 大阪大 去年の入試で出題ミス 30人が不合格にNHK NEWS WEB 1月6日 19時15分)
  18. 阪大で入試ミス、30人追加合格=外部の指摘2回見逃す (時事ドットコムニュース 2018/01/06-18:55)
  19. 阪大入試ミス30人追加合格 昨年の物理 指摘2度見過ごす(読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第1面):”物理の試験は3850人が受験。音波に関する二つの問題のうち、数式を問う「問4」(3点)で三つの正答があったのに、一つのみを正答として採点した。このため、問4の解答を前提に数値を求める「問5」(4点)が成立しなくなった。”
  20. 「受験生の人生狂わせた」 阪大入試ミス  作成者 「正しい」思い込み(読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第28面)

 

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説

 

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