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東京大学医学部不正疑惑論文調査の懐疑点 

東京大学分子細胞生物学研究所は解体か、などというショッキングな記事が出る一方で、東京大学医学部に関する調査結果が全く報道されていません。多くの人の頭の中でさまざまな疑問が渦巻いているようです。     東大の研究不正の件はこないだのちっちゃなニュースで終わりなのだろうか。正式な記者会見ぐらいはして欲しい。 — enju (@enju0425) 2017年6月28日   東大は2年前の大量疑義事件の時に医学系の予備調査の結果をすぐに公表したが、今回は公表しない。不正を認定したのか、不正なしの理由の公表が不都合だからだろうか。https://t.co/FXxPGbAM33 — 世界変動展望 著者 (@lemonstoism) 2017年6月25日 東大の公式発表を待たずになぜ分生研の渡邊教授の不正認定だけがニュースとして出てくるのかが非常に謎。何かオカシくね?なぜ東大医学部論文の不正認定の有無がニュースにならないんだろう。こんなハチャメチャなことやっているのに。東大の意図は? https://t.co/bhYH3q0wbr — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2017年6月22日 University of Tokyo scientist hit by anonymous allegations fights back https://t.co/aHOfaca5xg 分生研渡辺氏の論文疑惑Scienceで報じられてしまった。医学部の方が深刻な問題なのに! — Green Flash (@EastSNW) 2017年6月22日 東大は分生研解体するなら医学部もじゃない。 — arune …

データ捏造論文が生まれる瞬間 現場を知る研究者による分析

  2017/06/25    論文データ捏造

以前も紹介しましたが、2008年12月 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 記録全文『今こそ示そう科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題-』(PDF)の中の、夏目徹氏による分析を再び紹介したいと思います。現場を知る研究者にしかわからない、データ捏造の心理メカニズムを理解する一助になります。 不正論文が告発され調査委員会が不正の有無を認定し報告書をまとめる際、単に個々のデータに関して不正の状況を明らかにしてお終い、では誰も納得しません。研究組織を改編したところで、中にいる人間の中身が変わらない限り同じことが起きます。ここに示されたような徹底的な心理分析を行ってその結果を公表しないと、真に効果的な再発防止策は生まれてこないでしょう。 (以下、本文部分は議事録中の夏目氏の発言の一部を転載したもの。見出しは当サイトによる)   データ捏造の心理メカニズム 捏造が生まれる瞬間、捏造の温床、それから、まさに捏造が発覚する瞬間というのをですね、まあ幸か不幸か、自慢にも何にもならないんですが、結構な数を見てしまいました。それを見てしまってですね、その後、何が見えてきたかということなんですけども、だいたい私の見るところによると、捏造というのは4つのパターンに分類されます。   捏造レベル1 基本的には、まずボトムアップ型というのが非常に基本的ですね。ボトムアップ出来心。あなたが実験をやったとします。「ここに、バンドが出ればなぁ…」、「この濃淡がひっくり返ってくれたらなぁ…」なんて思いながらですね、ついデータをいじってまった。これは全く遊びでやったんですけども、やってるうちに何か妙に熱中してくるんですね。「この濃淡、意外に自然じゃないか」とかですね。悪いことにですね、それをボスに見つかっちゃうんですよ。「お、A君、やったな、とってもいいじゃないか」、「いや、先生これは…」、「よくやったな。君はいつかやってくれると思ってたんだ」、なーんてやってるうちにデータが一人歩きしてですね、言い出せなくなってしまう。で、それがパブリッシュされる。それがたまたま某プレミアムジャーナルで、記者会見までしてしまって・・・。最悪のパターン。これはボトムアップ出来心型という、一番レベルの低い捏造です。   捏造レベル2 レベル2というのはですね、ボトムアップ確信犯型というやつですね。レビューアーから「確かめの実験をしなさい。ここの再現性をもう少し見なさい」、あるいは「このデータは数値が少し差が少ない。もう一回確認しなさい」。これはもう何回やったって同じだと。でもしょうがないからやろう。やろうと思ったんですが、それをやるにはですね、抗体が要るんですが、「あっ、抗体が切れてる。ストックが尽きた。しょうがない、ハイブリドーマを起こさなきゃいけないな」。そしたらですね、もう正月休みだったんですね。正月返上で、レビューアーが、「リバイズしなさい」。誰もいない正月の研究室で、ストックを開けてみたらですね、液体窒素が切れてるんですよ。(笑)ハイブリドーマ全滅。どうしようと途方に暮れてる時に除夜の鐘がボ~ンなんて鳴ってね。僕がやったんじゃないですよ。そこで、ですよ。ところが、それで仕方ないと途方に暮れてエクセルに向かってですね、カシャカシャ…。そこに立ち話をしにボスが来たっていうのも知らないのに、やってしまった。というのもあるんですね。これがボトムアップ確信犯型です。どうせバレない。これは非常にたち悪いです。最近ハイテク化したので、こういうのをほぼ生業としているプロの方もいらっしゃって、皆さん「えっ?!」と思うような、ものすごい手口があるんです。それはなかなか見破られません。   捏造レベル3 それから、次のレベル3は、もっとたち悪いですね。ボトムアップがあるということは、当然トップダウンもあるんですね。トップダウン恫喝型というのがありますけれども。これはですね、ボスが非常に思い込みの激しい情熱家だったりする場合が多いんですけども、このストーリーの実験でこういうデータが出るまで絶対許さない。データを出さない限りは家にも帰っちゃだめ。全くコントロールと差のないデータを先生に出しても、「心の目で見てみろ」とすごいことを言われて… 泣く泣く捏造に近いことを、なかば強制される。恫喝される。これをトップダウン恫喝型って言うんですね。で、これはレベル3です。   捏造レベル4 レベル4はどういうやつだと思いますか? トップダウン洗脳型というやつです。これはですね、これは私、見て本当に驚いたんですけども「捏造は悪ではない」。こんなのやったってやんなくても変わらないようなものはやる必要はない。それによってコストと人件費を大幅に節約できるのだと。「だからバレそうもない捏造は大いにやりなさい」というようなことを激励するような人を、私はたった1人ですが、見たことがあります。(笑)   研究不正を防ぐためにPI(研究室主宰者)ができること 実はボトムアップというのも、出来心っていうのもですね、これは、実はボスの責任ですね。PIの責任ですね。そんなうかつにいいデータが出たのを喜んじゃいけないんです。きちんとしたモラルがあれば、こういう捏造というのは未然に防がれるはずです。それからですね、先ほど非常にたち悪いと言いました確信犯型ですね。ボトムアップ確信犯型。もう全然最初からモラル、ある一種の精神異常者に近いと言われてますけど、犯罪が嬉しいんですよね。で、そういう人たちというのも、実はですね、ボスの目から、PIの目からは見えないんですけども、そういうことをやる人間ってやっぱり、何となく雰囲気がおかしいので、周りの人間には何となく伝わってるんです。ということは、ボスがですね、周りの人間によく話を聞いて、データが出た時、ビッグデータが出た時、それをいろんな人間に意見を聞いて検証すれば、これも実は未然に防げるんです。 私の意見としては、鉄則としてはですね、若手の方に「モラルを持って良心を示せ」というPRをもっとしっかりしなきゃいけない。それからですね、先ほども議論があったと思うんですけども、恫喝型の捏造をやむなくしなかった人というのは、ものすごい苦しかったと思うんですね。やっぱり告白する場所がないというのが非常に大変で、ましてや洗脳されなんかしたりすると、悪い宗教に引っかかっちゃったようなもので、抜け出すの大変ですよ。ということは、4つのタイプの捏造も、実際はそのミックスのタイプなんですけども、だいたいの原因、捏造を生む温床というものは、まあ我々自身、研究所のスタッフがつくっている。というふうに私は思ってですね、全然趣旨のない、関係のない話をしました、どうもすみませんでした。 引用元:http://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/doc/081209_wakate_sympo_all_final.pdf   同じカテゴリーの記事一覧

東大分生物研渡邊教授が論文不正疑惑を説明

NHKニュースなどによれば、東京大学分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授はOrdinary_researchersによって告発された論文に関して、コメントを発表しました。また、告発で指摘された図表に関して説明した文書、および、雑誌編集者とのやり取りなど論文の訂正に関する対応状況を説明した文書を、関連分野の研究者らに対して開示しました。   写真:NHKニュースサイト(既にリンク切れ)の画面のキャプチャー     Corrections in our papers コミュニティーの皆様へ                           2017.6.17 このたび東京大学に対する匿名の論文不正の告発があり、私どもの研究室から出された7報の 論文について全てのデータに渡る詳細な調査を受けることになり、研究室を上げて全面的に調 査に協力してきました。8ヶ月に及ぶ調査の結果、5報の論文において、いくつかのデータの表示 において不適切な操作およびミスがあったことが調査委員会により指摘されました。私は今回の 調査結果を真摯に受け止め、これらの論文の責任著者として、論文に正確さに欠ける図表が 載ってしまったことに大きな責任を感じております。指摘を受けたいずれの記載も、当該論文自体 の科学的な結論に影響を与えるものではないと考えておりますが、論文の訂正あるいは取り下 げに関しましては、掲載誌と相談した上で最も適切な処置を速やかにとらせて頂く所存です。私 どもの論文疑惑が関連分野の研究者の皆様をいたずらに惑わすことのないように、委員会より 不適切の指摘を受けた記載についての詳細な情報と、それに対する生データに基づいた修正を、 以下に開示いたします。このたびの私どもの軽率な行いにより、研究者コミュニティーの皆様には 大変なご迷惑をおかけしましたことを心より陳謝いたします。 東京大学分子細胞生物学研究所 染色体動態研究分野 渡邊嘉典   追記(20170622):Science誌のニュース欄で、渡邊氏が開示した文書Corrections in our papers全文のリンク(link on a personal website)を含む記事が報道されています。 Watanabe goes through the 23 allegations one-by-one in …

不正疑惑渦中の東大医学部論文 および東大分生研論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法

DIY: Exposing hidden error bars in Nature papers ネットには真偽不明な情報が氾濫しています。正反対の主張を目にしたとき、どちらを信じればよいのでしょうか? Ordinary_researchersの主張 東京大学は、この夏に2回にわたって届いた研究不正の告発書を受けて、規程に従って予備調査を行い、正式に調査に入ると9月20日に発表した。医学部を中心とした6つの研究室から出ている合計22本の論文で、不自然な点があるという。6つの研究室の主宰者は、いずれもその分野では名前の知れた大物教授ばかりだ。国から受けている研究費の額も大きい。 (ヤフーニュース 2016/10/15) 告発された東大教授らの一人の反論 “This is a totally groundless and false accusation by a faceless complainant,” Kadowaki told ScienceInsider in an email. “We have absolute confidence in all of our data,” …

ジャーナル・インパクト・ファクターが発表

  2017/06/16    研究力強化

ジャーナル・インパクト・ファクター(Journal Impact Factor)は、学術雑誌の影響力を測る指標で、対象年における引用回数を、対象年に先立つ 2 年間にそのジャーナルが掲載したソース項目の総数で割ることによって計算されます(インパクトファクターについて  Clarivate Analytics)。 The Impact Factor of journal J in the calendar year X is the number of citations received by J in X to any item published in J in (X-1) or (X-2), divided by …

不正がなかった場合は原則結果は公表しない 東京大学

東大新聞オンラインによれば、生命医科学論文22報に関する不正告発を受けて東京大学が行っていた本調査は、5月31日に終了したそうです。 不正があった場合は調査結果を公表するが、不正がなかった場合は原則結果は公表しないという。(東大新聞オンライン2017年6月10日)   また、東京大学は調査結果をまだ発表していませんが(2017年6月15日現在)、多数の人にツイートされている医薬経済社(RISFAX)の記事見出しによれば、「分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授の論文について、学内の調査委員会が不正を認定」したそうです。 東大 分生研・渡邊教授の論文で不正 | 医薬経済社 https://t.co/vfKr2bCoKZ 「分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授の論文について、学内の調査委員会が不正を認定」 — 山形方人(nihonGO) (@yamagatm3) 2017年6月13日   東大医学部の論文に関する告発内容を見ると、誰もがきっと驚愕するはずです。なんと、エラーバーを棒グラフの裏に隠して短く見せている図が多数あることが判明したのです。これがデータ捏造・改竄でない可能性を考えることは、第三者にはおそらく不可能でしょう。東京大学は、実験ノートやこれらの図表作成に用いられた全てのデータポイント(数値)を公表して、本当に正しく実験が行なわれていたのかどうか、何のソフトウェアでどんな処理をすればこのように不可解極まりない図表が作成できるのか、研究者コミュニティや国民に対して説明する責任があります。 (告発文3.pdfより。ネイチャーのウェブサイトの発表論文の原図 Figure 1 a,b と比べてみてください)   告発文の一部を紹介します( .. は中略を示す)。是非、リンク先のPDFで全文をお読みください。 いうまでもなく,科学論文においてはデータが真正であることが絶対必要条件となる.科学は過去から蓄積されたデータをもとに新たな知見を積み上げていく営みであり,データは未来へと受け渡していくべきものである.データの捏造・改竄は先人たちや将来の仲間たちへの裏切り行為といえよう.特に生命科学分野は,患者をはじめとする社会からの期待が大きく,その影響は基礎科学の範囲に留まらず,事態は深刻である... 昨今,不正論文の大量訂正を行う研究者,それを許容する雑誌が一流誌にも見られる.しかし,多くの研究者はそのように訂正された論文が信用するに価し得ないものであることを知っている. .. 我々が今回これらの論文を対象にしたのは,研究者のあいだでは以前から再現性の無さが指摘されていたからである. .. 東京大学は日本最高峰の大学であり,海外から見れば日本を代表する大学である.その東京大学の医学部に良からぬ噂があるのは,我が国すべての生命科学研究者にとっても恥ずべきことである.  我々が今回指摘した疑義は,論文の根幹にかかわる深刻なものであるが,いずれも生データと照合すればすぐに検証可能なものでもある. .. あらぬ疑いをかけられている研究室の潔白を証明する良い機会になるか,それとも膿を出すことになるか,どちらにしても東京大学にとってのみならず,日本の生命科学研究にとって良い方向へと進むきっかけになるはずである. .. きわめて遺憾なことに,東京大学がかかる告発を有耶無耶にするように扱ったり,隠蔽しようとしたりする,あるいは告発者に何らかの圧力をかけようとするなどといった話も耳にする... こうした風聞がただのくだらない噂であることを示してもらいたい... 論文として公表されたものは,性善説に基づいて真正なものと認識され,優れた研究であれば予算もつく.データが捏造や改竄であれば,再現を試みる研究者の時間と資金と労力を無駄に消費するだけでなく,研究予算が投じられることで,本来はその予算が回るはずだった他の研究から資金を奪うことになる.何より忘れてはならないのは,ここであげた論文のように疾患をテーマにした研究の場合は,治療や新薬の開発を待ちわびる患者がいると言うことだ... 若者は公正さ,清廉さに対しては特に敏感である.職業倫理が低下し,正直者が馬鹿を見るような職にだれが就きたいと思うだろうか...  (2016年8月14日 Ordinary_researchers 告発文1 5cvq.pdf より)   …