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この社会、国の財政状況はおおらかではない

  2016/10/09    科学行政

朝日新聞の報道によれば、鶴保庸介・科学技術担当相が、「社会に役立つか役立たないかわからないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、国の財政状況はおおらかではない」という発言をしたそうです。どのような文脈でこのような発言が飛び出したのかは、この記事構成からはわかりませんが。 … 大隅さんの受賞決定を受け、松野博一・文部科学相は4日の閣議後会見で、運営費交付金の充実を検討したうえで、「競争的資金をどの程度伸ばすか、予算確保に向けて努力をしたい」と話した。だが、競争的資金は年限があり、息の長い研究には向いていない。 大隅さんは「この研究をしたら役に立つというお金の出し方ではなく、長い視点で科学を支えていく社会の余裕が大事」と話す。 海外との差もある。研究開発費に占める基礎研究の割合はフランスでは8割をゆうに超えるが、日本の大学では半分強にとどまる。 鶴保庸介・科学技術担当相は4日、「社会に役立つか役立たないかわからないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、国の財政状況はおおらかではない」と述べた。 また、ドイツなどの欧州では研究費が広く薄く行き渡るように分配されているとされるが、日本では競争的資金が有力な研究者に集中しがちだ。… (大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用 朝日新聞 DIGITAL 2016年10月5日05時00分) 日本の科学行政のトップのこの発言が、大きな波紋を広げています。 大隅君はインタビューで、基礎研究の重要性を訴え、現状を憂い、そして一億に近い賞金をあげて若手を育てるために役立てたいとコメントしています。それに対してマスコミや首相は応用面のことにしか触れず、文科相は競争的資金の増額というような見当はずれの弁、科学技術担当相に至っては社会に役立つかどうかわからないものにまで金を出す余裕はないという始末です。なげかわしい。これでは科学・技術立国など成り立つはずがありません。(隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して) 元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄 2016年10月07日) 以下、出典を示していないものはツイッター上の意見。 日本の科学行政のお粗末さを嘆く声 うわああ 何この発言 日本終了のお知らせですか? これが科技相の発言。ちょっと信じられない。 そりゃあそうなんだが、じゃあ科学立国とかゆうなよ わかってはいたつもりだけど、これが日本の科学技術行政やね。 これが科学技術担当大臣の発言な時点でこの国の未来が思いやられる。 って、この機会に基礎研究の重要性を社会に訴えるどころかこの言い様…… いやあ、そういうこっちゃないんですよ、マジ、この本を読んでみてよ。ということで紹介するのは、三宅泰雄『空気の発見』。大隅良典さんが影響を受けた三冊のうちの一冊だ。(ノーベル賞大隅良典「『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている」が伝わらない悲劇 エキサイトレビュー 2016年10月5日 18時00分 ライター情報:米光一成) 大臣の資質を疑う声 それでももぎ取ってくるのがお前の仕事じゃねぇのか。 自分の仕事をわかってない人間を大臣なんてやらせてていいの? ドアホ。将来そうする為の投資だろ。その為の予算も取れないならバッジ捨てろ あははははもう笑うしかねぇ。科学振興の匙投げるならそのポスト要らねえだろ辞めちまえよ 政府が判断することに対する不信感 「役立つかどうか」を判断できるほど政府は有能ではない。 お前に役に立つかどうかの判断が出来るのか?と聞きたい それ以前の話。 「社会に役立つか役立たないか」役人や政治家に判断は出来ない。 予算配分のバランスの悪さに対する不満 散々無駄遣いをしている政権のいうべきことではないだろう。 といって、「役立つ」と声高に主張する「役立たない」ところにばかりお金が行っていないかな? というなら,他の使途はどうなのさ.一般会計96兆円のうち基礎研究に使ってるのは何パーセントさ? …

2016年ノーベル化学賞は分子マシンの合成に

  2016/10/05    ノーベル賞

2016年10月5日に、2016年度のノーベル化学賞受賞者が発表されました。受賞したのは分子マシンを設計・合成したジャン=ピエール・ソヴァージュ(Jean-Pierre Sauvage)氏、ジェームス・フレーザー・ストッダート(Sir J. Fraser Stoddart)氏、バーナード・フェリンガ(Bernard L. Feringa)氏の3人です。 1983年にソヴァージュ氏がリングがチェーンのようにつながった分子カテナン(catenane)の合成に成功。 ソヴァージュ氏のインタビュー。 1991年にストッダート氏が、リングが車軸の上を動くような分子「rotaxane 」の合成に成功。これをもとに分子リフト、分子マッスル、分子コンピュータチップなどを合成。 ストッダート氏のレクチャー。 1999年にはフェリンガ氏が分子モーターを合成しました。また、分子で「自動車」も作製しています。下の動画は、Supplementary information from the paper “Electrically driven directional motion of a four-wheeled molecule on a metal surface,” authored by Tibor Kudernac, Nopporn Ruangsupapichat, Manfred Parschau, Beatriz Maciá, Nathalie …

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2016年ノーベル物理学賞はサウレス、ハルデン、コステリッツの3氏に

  2016/10/04    ノーベル賞

2016年10月4日に2016年度のノーベル物理学賞授賞者が発表されました。授与されるのは、物性理論の研究者デビッド・J・サウレス (David J. Thouless)氏、F・ダンカン・M・ハルデン(F. Duncan M. Haldane)氏、J・マイケル・コステリッツ(J. Michael Kosterlitz)氏の3名です。 参考 Press Release: The Nobel Prize in Physics 2016 (nobbelprize.org 4 October 2016) The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the Nobel Prize in Physics 2016 with one …

2016年ノーベル医学生理学賞は大隅良典氏

  2016/10/03    ノーベル賞

2016年ノーベル医学生理学賞はオートファジー(自食作用)の分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏が単独受賞 2016年10月3日11:30(スウェーデン現地時間)(日本時間は同日18:30)に、2016年のノーベル医学生理学賞がオートファジーの分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏に授与されることが発表されました。 細胞が自分で自分のタンパク質を分解してしまう「オートファジー」と呼ばれる現象がどのような仕組みで生じるのかは長年の謎でしたが、大隅良典氏はまずオートファジーという現象が酵母においても存在することを示し、次に酵母を用いた遺伝学を駆使することでオートファジーに関与する多数の遺伝子を一気に同定し、その後はそれらの遺伝子産物がどのように協同してオートファジーを生じるのか、その分子メカニズムを明らかにしてきました。 ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が東工大で会見(2016年10月3日) THE PAGE (大隅氏の言葉 3:25~) … ノーベル賞、わたしは少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は全くわたしの意識の外にありました。わたしは自分の私的な興味に基いて、生命の基本単位である細胞がいかに動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年、いくつかの問いをしてまいりました。 わたしは人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。1988年、今から27年半ほど前に、液胞が実際に細胞の中での分解に果たす役割というものに興味を持ちまして、そういう研究を東大の教養学部の私自身たった一人の研究室に移ったときに始める機会になり、それ以降28年にわたってオートファジーという研究に携わってまいりました。 オートファジーという言葉は耳慣れない言葉かと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると自分自身のタンパク質を分解を始めます。その現象を私は光学顕微鏡で捉えることができたということが、私の研究の出発点になりました。 馬場美鈴さんと電子顕微鏡でその過程を解析することで実はそれがそれまで動物細胞で知られていたオートファジーという現象と全く同一の過程だということがわかりました。 酵母は遺伝学的な解析というのにとっても優れた生物なので早速私たちはオートファジーに必須の遺伝子を探すことを始めました。幸い、これも大学院生としてJOINした塚田美樹さんという人の努力で、割りに短時間の間でたくさんのオートファジーに必須の遺伝子をとることができました。それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象の基本的な分子装置であるということがその後のわたしたちの解析でわかることになりました。 幸いこれらの遺伝子は酵母のみならず人とか植物細胞にも広く保存されているということがわかりました。こうしてオートファジーの遺伝子が同定されたということで、これまでのオートファジーの研究は、質が大きく転換をすることになりました。その後はさまざまな細胞で、オートファジーがどのような機能をしているかということが世界じゅうのたくさんの研究者で解析をされて今日に至っております。 私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。酵母の研究がですね、そのような基礎的な研究が、今日のオートファジーの大きなきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っております。 もちろん現代生物学は一人でやりおおせるものではありません。わたしもこの間、27年間わたしの研究室で研究にたゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、それからスタッフの方々の努力の賜物だと思っております。 それから、酵母から動物細胞のオートファジーへと展開してくれました、水島昇、吉森保、両氏がいま現在動物細胞におけるオートファジーの、世界を牽引している二人とも、私は今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。 今後、オートファジーって言う、タンパク質の分解っていうのは細胞の持っているものすごく基本的な性質なので、今後益々いろいろな現象に関わってくるということが明らかになってくれるということを、私も期待をしております。 ひとつだけ強調しておきたいことは、私がこの研究を始めたときに、オートファジーが必ずがんにつながるとか、人間の寿命の問題につながるということを確信して始めたわけではありません。基礎的な研究っていうのがそういう風に展開してくもんだっていうことを是非理解をしていただければと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思います。 これまで私の研究の場を与えていただきました東京大学教養学部、理学部、基礎生物学研究所、それから東京工業大学には厚く御礼申し上げます。(-10:09) … 東京大学教養学部生物学教室(現 生物部会)で初めて独立してラボを持った頃の2つの論文が、その後の全ての研究の流れを作り出しています。まず、遺伝学的手法が使える酵母においてもオートファジー現象が存在することを見出したのが原点です。 当時、液胞の内部で、何をどのように分解しているのかについては全くの謎だった。大隅は、まずは液胞内で起こっていることを何とか顕微鏡で観察できないかと考えた。そして、あるとき、1つのアイデアが浮かんだ。酵母は栄養がなくなり飢餓状態に陥ると、細胞内部を作り変えて胞子を形成し、飢餓を乗り切る。仮に液胞が分解機能を持つとすれば、その機能が最も活発に働くのは、胞子を形成する飢餓状態のときなのではないだろうか。その状態で液胞内での分解機能を止めることができれば、何が分解されようとしているのかがわかるはずだ―。そこで、さっそく液胞内の分解酵素が欠損している酵母の変異体を取り寄せ、飢餓状態の液胞内で何が起こるかを電子顕微鏡で観察し始めた。…「数時間飢餓状態にした酵母を観察したところ、液胞内にたくさんの小さな粒々が蓄積して、それらが激しく動き回っているのが確認されました。その粒々は液胞の周囲の細胞質の成分の一部を膜構造が包み込み、それが液胞内に取り込まれて、ブラウン運動をしている様子だったのです。酵母にはタンパク質がほとんどなく粘性が低いため、ブラウン運動が起っていたのです。大変感動し、何時間もその様子を見続けましたね」と語る大隅。液胞のオートファジー機能の過程を世界で初めて肉眼で捉えた瞬間だった。(顕微鏡観察がすべての出発点  顔 東工大の研究者たち Vol.1 大隅良典) そして、オートファジー研究の大きな潮流の源となったのは、大隅博士が修士課程の学生と二人で行った研究です。まさに宝の山を掘り起こした仕事でした。 大隅博士らは、まだ他にもオートファジーに必要な遺伝子があると考えた。しかし、五〇〇〇個の変異体を検査してオートファジーに異常があったのはわずかにapg1変異体だけである。そのまま続けていては途方もない仕事になる。ここで大隅博士らは巧妙な作戦を立てた。オートファジーができないと死にやすくなるという性質に注目したのである。いきなり顕微鏡で検査をするのではなく、まず飢餓で死にやすい細胞を選ぶことにした。…その結果、最終的にapg1を含めて十四種類のオートファジー不能変異体が同定された。この膨大で精緻な研究のほとんどは、大隅博士と当時修士大学院生であった塚田美鈴氏のわずか二名によって行われた。この記念すべき研究成果は一九九三年に「FEBS Letters」という雑誌に小さな論文として発表された。…しかし、この十四種類の変異体とそれにもとづく遺伝子の発見こそが、オートファジー研究の歴史を大きく変える事件だったのである。今ではこの論文はオートファジー研究史上最も価値ある論文のひとつとして世界中が認めている。(細胞が自分を食べるオートファジーの謎 水島昇 著 PHP研究所) Key publications (Yoshinori Ohsumi The Nobel Prize in …